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アドバンスドリベンジ
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質問卓
最終発言2016/05/09 05:03:07 -
相談卓
最終発言2016/05/09 00:49:21 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/06 12:36:24
オープニング
●状況説明
「大変な事実が発覚した」
司令官アンドレイは君たちを会議室に集めると。さっそく状況の説明を開始した。
「プリセンサーの予知があった。郊外から外れた、自然公園美術館に愚神と従魔が放たれるところから惨劇が始まる」
それは残虐の一言だったという、食欲に支配された愚神が人々を食べる。
そしてその愚神は同時に放たれた従魔を食しながらその能力をどんどん獲得し、やがて絶大な力を持つ愚神になる。
そんな未来。
「その愚神は成長する愚神なんだ。他の愚神や従魔を捕食しその能力を得る力を持っている、その力に際限はないという、奴がまだ生まれたての今しか、倒す機会はない」
だが今回の作戦を行うにあたってネックが一つあるという。
「プリセンサーの予知にあった従魔。それはどうやら美術館で沸いたものではないらしい」
プリセンサーの予知のなかでわずかに見えたのは数台のヘリコプター。そのヘリコプターから投下されるコンテナ。
「誰かが、美術館に従魔を投下したのだろう。まったくあれだけ特異な能力を持つ従魔たちをいったいどこから拾ってきたっていうんだ……」
予知の中で見えた従魔の数は合計十体だ。
「それぞれ強力な『個性』を有している、それらすべてを取り込めば、今までにない多彩なスキルを持つ愚神になるだろう」
アンドレイの顔は焦りに歪む。
「全ての従魔を吸収した愚神はケントゥリオ級に成長し、あたり一帯をドロップゾーンを作成する、自分の狩りに適したフィールドに、そうなれば奴は本当に手が付けられなくなる」
だが、まだ今の段階では少し変わった愚神程度の戦闘能力しかない。
早急にけりをつけてほしい。
そう君たちにアンドレイは語った。
「ここにプリセンサーの証言から作成した資料をまとめた。各自目を通してほしい」
●戦いのための資料
1 従魔の種類
<ハーチェット>
Hはハーチェットと読む
このシリーズは妖精のような見た目をもつ。全長100センチ程度であり、リンカーを見ると逃げる傾向にある
<マウス>
Mはマウスと読む
体長120センチ程度のネズミ、力は弱いが好戦的であり、また素早い。
<ティラノ>
Tはティラノと読む
二メートル程度に縮小した恐竜のような見た目である。戦闘力が高い
〈イマーゴ級従魔、六種類〉
H・ウイング 他のHシリーズより早く自由に飛べる。また素早くとらえがたい
H・トリガ 空を飛びつつ背中についたマシンガンで攻撃してくる
H・ロンド 歌と舞に特化しておりほとんど無害だが、音のせいで耳が痛くなる
ロックM 体が硬く物理に耐性がある。また他のMシリーズより体が一回り大きい
ダークM 真っ黒なマウス、邪悪な思考回路をしており凶暴、魔法に強い耐性をもつ。
トリオM 体に鏡状の鱗があり、それのせいで分身しているように見える
〈ミーレス級従魔、三種類〉
ヒューマンT 知能が高く人語を理解するT 愚神が食べると人語を話せるようになる
バイオT 周囲に存在するだけで毒を振りまく、近づくとステータスが低下する
フレアT 炎を吐いて遠隔攻撃する。また魔法に対して耐性がある。
2、戦いの舞台
自然公園美術館。
四キロ四方の広大な敷地に作られた美術館である。。
四つのエリアに区切られている。
<北> 自然公園エリア
大木や花が咲き乱れた丘などがあり、マウスやハーチェットが集まりやすい。
<南> 近代芸術エリア
絵、彫刻、映画やアニメを投影するスクリーン、噴水などが設置されており、見晴がよい。
ティラノが集まりやすい
<西> 美術館エリア
モネやらなにやら、有名絵画がずらっと並べられた建物がたくさんある。ハーチェットやティラノが集まりやすい。
またイービルイーターのスタート地点である。
<東> 芸術建築エリア
見上げるほどの、よくわからない建築物が大量に置いてある。アスレチックが多く子供に人気のエリアである。
リンカーたちのスタート地点。マウスシリーズが集まりやすい
解説
目標、従魔および愚神の討伐。
今回はいかに愚神の成長を抑えながら従魔と愚神を倒すかが問題となります。
・愚神を抑えている間に従魔を倒す。
・愚神に食べられる前に従魔を全て倒す。
等。
作戦目標を決め。その目標をクリアするための筋道を決めましょう。
事前の準備、連携が重要になると言えるでしょう。
《イマーゴ級愚神 イービルイーター》
二メートルのナマケモノのような見た目、意外と俊敏で腕の力が強く逃げ足が速い。
特性は食べた従魔の能力を奪い強化すること。
すでに嗅覚の鋭い従魔を取り込み、鼻が利くようになっている。
攻撃手段は初期段階では腕で殴る程度である。
ただし、従魔を補足することによって新たに戦闘手段を獲得する。
従魔を捕食する時間はMシリーズなら30秒。Hシリーズなら一分程度。Tシリーズなら三分程度の捕食時間が必要。
また従魔たちはイービルイーターの配下というわけではないらしく、イービルイーターに協力することもなく連携することもない。
四体捕食することでミーレス級。
八体捕食することでデクリオ級になる。またこの段階になると体長が五メートル程度の大猿に変化する。
二体以上の従魔を倒せばケントゥリオ級には成長できないはずだ。
《従魔》
今回登場する従魔は九体
その従魔は三つの種類に分かれている。長いので上記にすべての特徴をかいておいた。参考にしてほしい。
リプレイ
アドバンスドリベンジ
進化とは業の深いものだ。
環境を行く抜くための生存競争に勝つために、他者を淘汰し時にはその力を奪い取らなければならない。
踏み台にした命が多ければ多いほどその生命は強くなれる。
であれば人間はどれほどの命を犠牲に、ここまでやってきたのだろう。
「車両はここに全て間違いなく届いていますね。ありがとうございます」
そうH.O.P.E.からの支援品、車両の点検をしながら『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は言った。
その隣で『卸 蘿蔔(aa0405)』は無線機の感度をチェックしている。
「聞こえていますか?」
『廿枝 詩(aa0299)』がそれに答える。
「聞こえてますよ」
「各自、どこにどの従魔がいるのか、愚神はどこにいるのか、逐一確認しながら進むこととしましょう」
「わかりました」
『月(aa0299hero001)』はクラリスの言葉に頷いた。
「みなさん、よければこっちに来てくれますか?」
そうリンカー全員に声を駆けたのは『蔵李・澄香(aa0010)』。
バイクの座席にマップを広げ、全員に、それの縮小版を配った。
そして全員の初期地点や、その後の行動を示し合せる。
「ここで私から一つ」
クラリスが手を上げる。
「人為的な要因があるなら、彼等はこの事件を見ている筈です」
「わざわざヘリまで繰り出して来る辺り、それなりの背後があるって事か?」
『赤城 龍哉(aa0090)』が言う、その言葉に『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』は顔をしかめた。
「愚神商人のような存在もありますし、可能性は高そうですわ」
「ええ、だからそのことに関して調査を。ただ私たちは交戦中手が離せないのでH.O.P.E.の捜査員に監視してもらいますが……」
クラリスは考え込むように唇に手を当てる。
「なにか気が付くことがあればその情報についても共有を。隠しカメラについても同様に……」
「従魔を取込み強化する愚神、自体は珍しくはないが……配下じゃないと来たか」
『レオンハルト(aa0405hero001)』クラリスに言う。
「ええ……その上自分と同等、はたまた上位の存在からも可能となると……厄介ですね」
蘿蔔は獲物を抱きしめ、目を細める。従魔がらみの作為的なもの、人為的なそれを感じていい顔をする人間はいないだろう。
「とは言え、まずはばら撒かれた連中を片付けないとな」
龍哉が拳を打ち付け言った。
「では、解散で。皆さんの健闘を祈ります」
そして全員がレンタルした車、バイク、自転車に乗り込んでいく。
――では行きましょう。
「魔法少女クラリスミカ以下略」
そう黒光りする大型バイクにまたがる澄香ちなみに運転はクラリスに任せる予定だ。
その後部座席にちょこんと乗る『イリス・レイバルド(aa0124)』すでに『アイリス(aa0124hero001)』とは共鳴中である。
――ヘルメットはいらないのでは?
「髪が長いと顔に張り付くよ?」
――悩ましいな……
その隣に競技用マウンテンバイクで乗り付けて龍哉は言う。
「エンジン音を立てない方が、警戒されにくいはずだ。だから俺は別ルートだ」
むしろエンジン音で逃げるハーチェットシリーズなどを狙うつもりだった。効果的な策だと言える。
そして用意された車に乗り込むのは『ガラナ=スネイク(aa3292)』
「巧遅より拙速ってな。愚神に突っ込むぞ。着いてくんなら乗れ」
そうガラナは荒っぽく少女たちに声を駆ける。
「シートベルトしろよ。チャイルドシートはいるか?」
「子供扱いしないで」
『アリス(aa1651)』が抗議の声を上げた。
「そーだそーだ」
『ギシャ(aa3141)』が同調する。
「ていうか、ギシャ、何だそりゃ」
――おいしそー
『リヴァイアサン(aa3292hero001)』が反応したそれはギシャのバスケットの中身で、その中にはフルーツ盛り合わせやら、クッキーやらが仕込まれていた。
「そして荷台にはマグロ…………。俺たちは何をしに行くんだ?」
そう額を抑えるガラナ。まるで親戚を遊びに連れてくお兄ちゃんみたいになってる。
「お、いいもんもってんじゃねぇか」
そんな調子でギシャの荷物内を眺めているガラナ、その中に煙草があったため手をかけようとする。するとギシャに怒られた。
「全部愚神ようだよ!」
「なに?」
「いぶりだしたり、匂いで誘い出したりするの!」
――そっか、お腹すいてそうだもんね。
リヴァイアサンがいった。
「ミもフタもなく、一匹も食べさせずに倒しちゃおー。はらぺこパニックは止めるねー」
――戦場は広く敵も多いが、皆と協力すればいいだけだ。きちんと協力して皆の動きを学んでおけ
拳を振り上げ気合十分のギシャに『どらごん(aa3141hero001)』が言う。
それに続き『Alice(aa1651hero001)』が助っ席に乗り込んだ。
「……獣は嫌い。だから」
「始めよう、狩りを」
「ここが誰の狩場で、誰が獲物なのか……」
「……教えてあげるよ?」
「あー。共鳴するか後部座席に二人で乗ってくれるか?」
そして車組は直接愚神を打つべく西方面、バイクと自転車の部隊は南方面に出発した。
● 犯人は北に逃げる
「まったく、美術館に従魔を放り込むなんてどんな悪戯だ……」
バイクのエンジン音が轟く、静寂と静謐を切り割いて、一車線の道路を一人の男が疾走していた。
彼の名前は『雁間 恭一(aa1168)』
リンクコントロールでレートを上げながら先を急ぐ。
そんな彼の無線機が突如けたたましいノイズを吐いた。その奥から声が聞こえる。
「そちらはどう? 雁間さん」
無線機越しに詩の声が聞こえる、彼女は周辺警戒しながら自転車で周囲を探索するようだった。
「何にも、気ままなドライブだ」
「こっちは、さっそくH・トリガーをみつけたけど、射程外だったから様子を見てる」
「そうか、そのままこっちに追い込んで……いや、ちょっと待てよ。こっちも黒いネズミをみつけた」
「ダーク・M?」
「ああ、想像以上にでかい、ってか。でかいネズミって気持ちわりぃな」
恭一はバイクを止め、その従魔を見据えながらバイクを降りる。
そこにはいわゆるダーク・Mが佇んでいた。とにかく真っ黒で目が真っ赤なネズミ、それが両足で立って、鼻をクンクンと小刻みに動かしている。
恭一は威嚇のためにバイクを唸らせてみたのだが、奴はおびえるしぐさも見せない。
小さい手をちょこんとたれ下げて、ひたすら鼻とひげを動かしていた。
「…………おまえ」
にらみ合う男とネズミ。
はたしてこのネズミは何がしたいのか、とりあえず倒してしまっても構わんだろ。そう恭一が武器を手に取った瞬間。
信じられない跳躍力を見せてマウスが恭一にとびかかってきた。
「うおっ!」
突如、耳に押し当てていた詩の無線機から轟音。がりがりと擦るような音が聞こえる。
「どうしたの! 雁間さん」
返事はない。
『あ、ハーチェットが逃げる!』
月が叫ぶ。
「え?」
あわてて追う詩。グレートボウを構え膝立ちになる。狙いを定め矢を放つ。
しかしそれに気がついたH・トリガーは空中で華麗に宙返り、反撃とばかりに銃を乱射してくる。
「あれはさすがに打ち落とせない!」
詩はあわてて木の陰に隠れる。
放たれる雨のごとき銃弾は、気の幹を削っていく。
『イマーゴ級って弱いのは相当だけど、今回はどうかな』
おかしそうに月は言う。楽しんでいるのだろう、この状況を
「代わる?」
詩が苦笑いしながら問いかけた。それがどんな事態を引き起こすのかは、まぁ想像できていたが。
『……遊んでいる場合じゃないな。任せるよ』
月はしばらく考え込んだのちそう答えた。
「ああ、了解、実際強さは並だしね」
その時、H・トリガーの銃弾がやんだ。
妖精リロード中。
その隙を見計らって詩は木陰から躍り出る、そしてその手の弓で射る。
二撃目は羽に突き刺さった。
一方恭一は、落した無線機を拾い、唐突に飛びかかってきて、それから逃げたマウスを追う。
「逃がすか!」
なめた真似に怒り心頭の恭一である。腕輪の射撃で走行ルート妨害。芝生が穴だらけになるのも構わずマウスを追った。
「雁間さん、雁間さん!」
突如拾った無線がしゃべりだした。詩からのつうしんである。
「無事ですか!?」
「あ? 無事に決まってんだろ、そしてアイツを殺す」
「ちょ……冷静に、私トリガーと交戦中で、そっちいけないです」
「ダーク・Mと交戦中だ、西に向かってる、愚神と会う前に片付ける」
恭一は東エリアへ逃げようとするマウスをインサニア片手に追いかけた。
●一方東エリアでは
このエリアは前衛的な建物がいくつもある、その中の一つで、ジグザグとした。大理石なもので掘り出された稲妻マークのような形のオブジェがあるが。
その一番上に座り、狙撃手たちは周辺警戒をしていた。
「風がつよいですね」
『ゼノビア オルコット(aa0626)』はすでにと共鳴済みだ。はためく髪を抑えな
がら、さらさらとそう紙に書き蘿蔔に見せる。
それを蘿蔔が受け取ろうとした瞬間、紙は風に乗りどこかへ飛ばされてしまった。
「あ。すみません」
えへへと、はにかむ蘿蔔に、そんなこともあるよねと笑うゼノビア。
穏やかである、天気もいい。このまま任務なんて忘れて横なれればどれだけいいだろう。
しかし今は任務中。二人は背中合わせに座り温めあいながら全方位をカバーしていた。
――ゼノビア、一匹も逃がすなよ
『レティシア ブランシェ(aa0626hero001)』がそう念話を飛ばす
「わかってる、です」
そう言う意味で、ゼノビアはこくこくと首を振った。
さっそく敵が。こちらに向かってくる、ゼノビアは素早く静かに建物の陰に降り立つ。
「ロック・Mですね」
体が岩石のように覆われているマウスは相当物理耐性が高いらしい。
「どうします? 一応本を持ってきているのです」
ゼノビアは首を振る。
――実力的にごり押した方が早いだろ。十分引きつけてから。
スナイパーライフルと九陽神弓を構える。ゼノビアは取り出すとともに素早く目標をスコープに収める。そして、ファストショット。
その弾丸が甲高い音をしてマウスにはじかれる。だが一瞬動きが止まった。
あわててきた道を戻ろうとするマウスへ蘿蔔が矢を射った。
「……どこに行こうというのですか?」
――蘿蔔こわい……
交互に銃声と矢が風を切る音が響き、そしてマウスは蜂の巣になってしまう。一切の抵抗が許されぬまま。
「他愛ないですね……」
蘿蔔は満足げに不敵な笑みと、弓の構えを解き春の風に長い髪の毛を揺らした。
「仕事が終わりました」
――まだ終わってないよ
その瞬間、背後からこっそりと近づいていたトリオ・M、ゼノビアへととびかかってきた。だが。
――気づいているさ
レティシアが冷たい声を投げる。するとゼノビアはすでに片手に握っていたPride of foolsを狙いも定めず撃った。
それは空中で体制を変えることのできなかったマウスにあたる。
はずだった。しかし手ごたえがない。
次いでゼノビアが跳躍、空中で振り返りながら着地、銃を構えるとそこには無傷のマウスが三体いた。
――分身だ!
三体のマウスは群のように塊りゼノビアに襲いかかる。
――蘿蔔、よく見るんだ、分身が本体より早く動くわけはない。
レオンハルトは蘿蔔に対して静かに告げる。蘿蔔は目を細めマウスたちを注視した。
――模倣なんだ、本当に少しだが動きにラグがある、そしてその体がぶれるはずだ。
その言葉に蘿蔔は心の中で頷き、そして、弓を放つ。
それはトリオ・Mの体に突き刺さり。
一瞬分身が消えた。
「当たりました」
蘿蔔はガッツポーズをとる。
そして蘿蔔は次射装填。その間にゼノビアの構えた銃がリズムよく跳ね上がる。マズルフラッシュが交互に瞬いて、容赦なくマウスに弾丸を浴びせていった。
分身していようがたかが三体ならば、全てに弾丸を叩き込んでしまえばいい、そう言う結論だった。
結果地面にたくさんの穴は開いたものの二人は特に大きい外傷もなく、敵の波状攻撃を切り抜けた。
「あの子たちは……誰かに作られたものなのでしょうか。実験台のようにも見えますね」
蘿蔔はつぶやく。
――従魔も……階級の割に強い気もする。
そして周囲に適性体も見当たらない、ゼノビアは無線のスイッチを入れた。
しかし話すのはレティシア
――東エリア、ぶっ倒したぞ。このまま待機して辺りを調べる。何かあったらまた呼んでくれ
「蘿蔔ちゃん、やりました、ねっ!」
そうゼノビアと蘿蔔はキャッキャと笑いあってハイタッチ。
――いや、まて。あの茂み、何かおかしい。
鋭くレオンハルトが言った。確かに、レオンハルトの言う通り、何かいる、誰か出てくる。
突如無線がけたたましくノイズを吐き、たたきつけるような声が聞こえた。
――東班警戒しろ!、そっちに愚神が。ハーチェット咥えて向かってる!
● 時は少し巻戻り、西
ガラナは車を飛ばしていた。流れていく景色が美しい。
美術館内の自然は綺麗に手入れされており、鮮やかな緑がフラストレーションを和らげてくれる。愚神討伐任務でなければ最高のドライブとなっただろう。
だが今はそんな景色をゆっくり眺めている暇はない。
「厄介な力持ってようが、メンドクセェ事になる前に、とっとと潰しゃいいだけだろ」
――そうと決まれば狙いは一つね! 一気に突っ込むわよ。
そうリヴァイアサンが叫んだ直後である。
突如森の方面から火球が飛来した。
「な!」
「うわわわわ」
「あー。まずいねぇ」
後部座席から緊張感のない声が響いてくる。
あわててハンドルを切るガラナ。火球はわずかにそれ車道を焼くにとどまったが。
「ガラナ! 前! 前!」
ギシャがあわてて叫ぶ。そこにはのんきにパタパタと飛んできたハーチェットがいて。
それに車は激突。
悲鳴を上げて弾き飛ばされるウイング・H。車も衝撃を受けて横倒しになり車道を、スーッと滑っていく。
「くっそ!」
車が停止するとガラナはハンドルを一度叩く、そして怒りにまかせ扉を蹴りあけ思い切り外へ。
すると目の前には赤々とした鱗を持つ恐竜、フレアTがこちらを睨んでいた。
「やろう! 細切れにしてやる、覚悟しやがれ」
そんな怒り心頭のガラナを制し、ギシャが前に出た。不敵な笑みを浮かべ、アリスとガラナを一瞥。その後空中宙返りを決め横倒しになった車に着した。
「ズバッと参上! ズバッと解決! さすらいのヒーロー、ギシャ登場!」
――……なんだ突然? あと、人の車の上に立ってポーズを決めるな
「かっこいいエージェントの勉強中。てれびってすごいねー」
――いいからさっさと行け
「りょーかい」
ぽかんとそれを見つめる一行とティラノ、そんなのお構いなしにギシャは森の中で痛そうに頭抑えうずくまっているハーチェットに突貫した。
あわててハーチェットは空に退避。
その隙にと炎を吐くティラノ。
「残党程度が手間取らせんじゃねぇよ、とっととくたばれぇ!
鋸歯大刀を盾に接近、その手の刃をティラノに叩きつけるガラナ。
その支援のためにアリスは雷上動にて狙撃。ティラノの動きを封じにかかる。
「ねぇねぇ、妖精が逃げてきたってことは、あっちにいるんじゃないかな?」
ギシャが森の奥をじっと見つめる、気が付いていたのだ、そちらから視線を感じる、そしてギシャの耳にはあわててこの場から遠ざかろうとする何者かの逃走音が聞こえていた。
「何が?」
アリスはハテナマークを浮かべる。
「愚神が」
「とりあえず、私が足止めするね」
アリスは器用に火球をよけながら、狙いを定め、爆ぜる雷の矢を放つ。それがティラノの背に突き刺さり焼き切れた鱗があたりに散った。
「じゃあ、よろしく!」
そうギシャは手をすちゃっと上げて森の中へ。草木をかき分け、幹を足場に枝に手をかけ飛ぶ。
そのまま木の葉をまき散らしながらパチンコ玉のように跳ね、その音を追う。
「見つけた」
ギシャは静かにそうつぶやいた。その大きな背中。そこにギシャはとび蹴りを加える。
吹き飛ばされる愚神、イービルイーター。
奴は半狂乱になりながら、ギシャと同じように木々を足場に飛びながら逃走を図る。
しかし、それはすでにギシャの思惑のうち、道路に誘導されてしまったイービールイーターはばったりとアリスと出くわすことになる。
アリスは待っていましたとばかりにその顔面に香水をビンゴとぶちまけた。
「あら? ごめんなさい?」
悶える愚神、その目の前にガラナが立つ。
「逃がしゃしねぇぞ……まずは足を潰す!」
あわてて立ち上がる愚神。ガラナはまるで抜刀するかのように鋸を構え、敵の懐に入り込む。
そして疾風怒濤、その喉を切り付け横転を狙う。
だがそれを愚神は身をひねって回避。
「ちょっと下がってて」
白虎の爪牙を光らせ急接近、蹴りと織り交ぜたコンボによって。まとわりつくように攻撃を加える。
愚神もその拳を振り上げて抵抗するが、まるで当たらない、かすればいい方だ。
不利を悟った愚神は車道を疾走する。
「はええ!」
ガラナが叫びをあげる、あれは追いつけない、自分の弐倍の速度だ。
ガラナは早速おいて行かれた。
アリスも早々にあきらめ、目の前のティラノ討伐に専念する。
この愚神は足が自慢の愚神である、故に逃走の一手をとった時点でイービールイーターの顔には余裕が見受けられた。
だが、その肩が叩かれ振り返った時にはその余裕は消え去っている。
愚神の後ろを笑顔でついてくるギシャ。
「うきゃあああああ!」
悲鳴と共に拳を振り上げる愚神、でも当らない。
「ふふーん。命中・回避に特化したシャドールーカーのいやがらせ力を見よ!」
愚神は生まれて初めて、この世界には相性というものがあることを知った。
確かに相手の攻撃は決定打にはならない、この愚神はある程度の防御力を備えている。しかし。
こちらの攻撃は当たる気がしない。
ということはだ、一方的に攻撃を受け続ける構図が成り立つ。
ギシャの処理にいったいどれだけの時間がかかるのか。
さらに自慢の移動力も、ギシャとさして変わらない、これでは捕食しようと動きを止めた瞬間に追いつかれてしまう。
ただ時間が過ぎれば不利になるのは愚神である。おまけに初撃受けたのは毒刃、その体毛をじんわり染め上げる血液、じわじわと体力が削られていく。
精神と体力を擦り減らす鬼ごっこが始まった。
「追いかけるぞ」
そうガラナは倒れて光へと変わっていくティラノを一瞥、車を起こそうと歩み寄る。
「ほら追うぞ、車起こすの手伝え」
アリスは、目の前のハーチェットを打ち抜きガラナを手伝うために戻る。
その直後だった通信機越しに大きな声が聞こえる。
ギシャの声である。
「ああああああああ」
「どうしたの?」
車を起こすので忙しいガラナに変わってアリスが通信機をとった。
「たまたま目の前に従魔がいて、持ってかれちゃった」
「何が連れて行かれたか分かる?」
「あの北エリアと西エリアの境目。たぶんH・ロンドだと思う。踊ってたから」
つまりこうだ、気持ちよく空を謳いながら待っていたハーチェットは、突如通りがかった愚神に拉致されてしまった。
あーーーれぇぇぇぇという感じである。
アリスは焦った。
このままではまずい、愚神に歌を歌う能力が追加されてしまう。
「あら? 本当にそれはまずいことかしら」
「メンドクセェ事になりやがった……悪ぃが手ぇ貸せる奴は愚神のとこまで行ってくれ!」
車を起こし終えたガラナは通信機で全員に告げる。
「東に向かったよ、東!」
ギシャは言った。
「そっち方面に逃げやがった!すぐに向かう!足止め頼むぞ!」
そしてアリスが車に乗り込み、ガラナは勢いよくアクセルを踏んだ。
● 並行して南
西班が愚神を追い詰めている最中、南班は弐体のティラノと交戦していた。
澄香は書を構えながら高く飛ぶ、あたりにキラキラが広がるが、そのキラキラが収束。一瞬しぼんであたりを吹き飛ばす大爆発に替わった。
ブルームフレアである、その向こうから煙を払い一歩踏み出したのはバイオT
その体から噴き出す緑色の毒霧を纏い魔法少女クラリスミカへ突貫する。
その突撃をイリスは盾で止め、その隙に龍哉が矢でその巨体を射抜いた。
するとバイオTは力尽きたのか、その巨体が横たわり光の粒となってティラノは消えていく。
そしてその巨体の消滅を確認後イリスは全員と向き直る。
アイリスは告げた。
――どうやら愚神は、ロンドを捕獲したようだね。
情報管理をしていたアイリスの口からそう告げられる。
「歌って踊れるようになったわけだ」
澄香が言う。
「色々食べてパワーアップとか、ゲームの影響かよ」
龍哉はうんざりとしたようにつぶやいた。
――ここまでの情報から、現在想定される能力は嗅覚と歌ですわ……。脅威性を感じられませんわね。
「これ以上うろつき回られるのも面倒だ。ケリ付けるか!」
龍哉は愚神を追うことに決め、マウンテンバイクにまたがる。
「私たちは調べたいことがあるので、少しだけあたりを見て回りますね」
そう澄香がバイクに乗り込もうとした瞬間だった。
突如森の中から大木が放たれた。
回転するそれに澄香はからめ捕られ、澄香は弾き飛ばされた。
「そこか!」
そう龍哉の放った矢をかわすようにそれは車道に躍り出る。
その体部分は恐竜のそれだった、だが頭だけが人間の顔。ヒューマンTである。
――知恵か……
アイリスはつぶやいた。
――本来、多才な能力を取り込んだって、経験までは取り込めないものさ。
「だけどそれを生かせる経験が得られれば脅威になる_」
――ああ、そうさ、そして経験を補うのが知恵だ。こいつは考え学習する、だから特殊な力がなくとも脅威だ
その瞬間ティラノは雄たけびをあげ澄香へ突貫した。
だがそれをイリスが盾で遮る。
「お姉ちゃんは歌って気を引いて……なんかこう、闘志が湧き立つような歌を」
――うん、イリスが望むなら構わないよ。
そうアイリスの歌が周囲に響く。荘厳にして華麗なその歌にティラノの意識は奪われる。
「ボクは殺気を放って相手の闘争本能を刺激してみる」
イリスは盾と剣を構える、イリスの澄香を守るという思いが従魔へ恐怖を刻み込んだ。
その横から九陽神弓で龍哉はティラノへと狙いを定める。
「ヴァル、任せるぜ」
――狙い撃ちますわ!
ヴァルトラウテの気合と共に放たれた矢はティラノの胸へと突き刺さる。
それを見届けた後龍哉は素早くブレイジングソウルへと武装を変更
ティラノへ近接戦闘を挑む、その間にイリスは澄香を救出した。
次いで龍哉はその巨体を引き倒し、その刃を突き立てていた。
それを好機とばかりにイリスは剣を地面に水平に構える、その刀身が輝きを帯び、周囲に蛍のような光が散った。
その輝きは増し、やがて極光となり爆ぜる。その瞬間イリスは飛んだ。
その輝きを剣を振るとともに解放、無数の刃の軌跡、それは黄金色の輝きを纏い、ヒューマンTへ致命傷を与えた。
「まって、イリスちゃん」
そう澄香は二人を制する。澄香には目的があった、話を聞きく必要があった。
「こんなところに連れてこられて、餌扱いだよ。悔しくないの?」
ティラノは当然何も言わない、従魔に自我は存在しないからだ。
「見逃すわけには行かない。ごめんね。だけど、君を此処に連れてきた人には、必ず報いを受けさせるから」
だがその時ティラノの瞳の色が変わる。
「貴方を此処に連れてきた者の中で、一番偉そうな奴の名前を教えてほしいな?」
従魔は話すことはできない、だが意思表示はできる。従魔はある方向を指さした。
その先にかける澄香、そこにあったのはコンテナだった。
そのコンテナには大きくグロリア社のロゴマークが刻み込まれている。
澄香は息をのんだ。
● エデンの東
「うわ、こっちきたです」
蘿蔔、そしてゼノビアはあわてて身を隠す。
現れた愚神は自分がつかまえたハーチェットの羽をむしり、さっそくその体に口をつけようとしていた。
しかしそれをみすみすやらせるスナイパー達ではない。理不尽な射程にまかせた一方通行の戦闘が始まる。
愚神はその身に銃弾を受けながら身を翻し森に戻ろうとする。
しかしその横っ面に蘿蔔のテレポートショットが命中した。
「蘿蔔ちゃん、目閉じて!」
ゼノビアがとっさに声を上げる。フラッシュバンの光が愚神の視界を焼いた。
その場で身悶える愚神。その背を踏みつけてあたりを見渡すのは北エリアからあわてて引き返してきた恭一だ。
「美術品鑑賞はお静かに願うぜ。他の客に迷惑だからな」
愚神はとっさに恭一の足を払いのけ、四足歩行で離脱を試みる、しかし恭一のインサニアが振るわれ、愚神の顔面を強打した。
ライブスリッパーだ、しかしそれだけでは意識を奪うに至らない。
『戦闘じゃなくて射撃がしたいんだけれど』
それを遠巻きに眺めていた月が言う。
「わたしがやってるじゃない」
『そうだね、有難う』
「どういたしまして」
愚神の背に歌は弓を打ち込んだ。
愚神は満身創痍だったようで、対にその命が尽き果てた、愚神は無力に横たわり光の粒となって消えていく。
「えー。もう倒しちゃったの?」
そこには、途中で愚神に撒かれたギシャが佇んでいた。
● エピローグ
アリスは転がる愚神を見つめ、哀れそうにつぶやく。
「自分が狩る側だと思っていたかは別として……やられる前にやらないからそうなる」
その言葉にAliceは答えた。
「いつ狩る側と狩られる側が入れ替わるか分からないのにね」
風が愚神の死体からあふれ出た霊力を攫う。
美術館にふさわしい静寂がこの場に戻ってきた。
「ったく、悪食野郎が。面倒になるもん食ってんじゃねぇってんだ」
そうガラナが消え損ねた従魔の死体に武器を突き刺して消えるのを速めている。
そこにギシャが話しかけた。
「愚神が食べたがってた従魔……おいしいのかな?」
「……ピンきりじゃねぇか、食べた奴もいるらしいしな」
「せっかくの美術館だから、そちらに興味を持て。腹ではなく、心を満たしていけ」
そうドラゴンがやれやれと手を振る。その言葉にギシャは頷き手を振りかえして駆けて行った。
「あすれちっくだけは楽しそうだから行ってくるー」
「あ、食べるがどうとか言ってたらお腹減って来たわね、ガラナ、何か食べてかない?」
リヴァイアサンがそう髪を揺らしながら微笑みかけた。。
「……相変わらず呑気だな。お前はよ」
そして駆け抜けていくギシャをうらやましそうにゼノビアは眺めている。その隣に共鳴を解除したゼノビアが立っている。
その手のメモ帳にゼノビアは文字を書き込んでいった。
「こういう遊具、遊んでみたい、です」
「お子様だな」
「うるさい、ですよ!」
そんなゼノビアはただ美術館を眺めているわけではない、蘿蔔と一緒にコンテナやカメラを探しているのだ。
ただ、二人にはそれらは見つけられなかったが。
直後バイクをふかして澄香が帰還する。その顔は青ざめていた。
「どうしたのですか?」
「シロ……」
澄香はそこにいる全員に自分が見たものを打ち明ける。
コンテナがあったこと、そしてグロリア社のロゴマークが刻まれていたこと。
「そんな……遙華がそんなことするはずないです」
「私もそう思うよ、だからこそ慎重になるべきだよ」
澄香は言った。
「コンテナはあったのか?」
そうクラリスに問いかけるレティシア。
「いえ、まだ見つかってはいません」
そう答えるクラリス。
「数台のヘリで運んできた、ってことはコンテナいくつか持ってきたってことか?たった一つ運ぶのに、何台もヘリ飛ばしてたんじゃ目立ちすぎだろ」
そう言うとゼノビアもその会話に混ざる。
「……もし、この愚神をコントロール、できたら……いろんな、従魔を食べさせて、最強の愚神を作れるわけ、ですよね……。誰かが、そういう試験をする、ために投下していった……? 考えすぎ、かなぁ」
いや、それは考えすぎではない、そうクラリスは思った。
十分あり得る話だ。だがその判断はこのパズルの全体を見渡してみなければわからない。
まだピースが足りない、そうクラリスは頭を悩ませる。
一度ロクトと話をする必要がある。そうクラリス考え航空会社に連絡を入れた。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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