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エルスウェア連動

《ランナーズ》~駆ける者たち 3

上原聖

形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 無制限
英雄
4人 / 無制限
報酬
普通
相談期間
14日
完成日
2016/04/08 12:00

掲示板

オープニング

●現状報告
・アリススプリングスのスチュワートスタジアムに発生したドロップエリアは、市内に到るまで広がっている。
・《愚神》と思われていた『風駆ける者』は、実際は《英雄》であり、四年前、《ランナーズ》を開催する為にMr.スペンサー(リチャード・ジョルジュ・カッパー)とスポンサー契約を結んだが、彼の《愚神》シェリー・スカベンジャーに《愚神》になることを強要され、《能力者》風間翔一を守る為に自分を《愚神》にしない代わりに彼女の生み出した《愚神》にライヴスを送り込んでドロップエリアを作ることになってしまった。
・恐らく初期は嫌々やっていて罪悪感も感じていたであろう風駆ける者だが、彼女に預けられた《愚神》の影響か、少しずつ《英雄》の誇りも薄れてきて、翔一さえ無事で走る事さえできればそれでいいと考えるようになっていたと思われる。
・スタジアムをドロップ化していたのはシェリーに生み出されたゴールテープ型の《愚神》で、シェリーの命令によりドロップエリアを拡大した《愚神》ゴールテープ(仮名)は風駆ける者を《愚神》とし、ドロップエリアのちょうど中央、スタジアム中心でライヴスを溜め込んだエージェントを待っている。
・風間翔一は契約破棄によりドロップエリアから救出されたが、かなりのライヴスを奪取されて絶対安静状態。今回の戦闘には出られないと思われる。
・《愚神》ゴールテープは《愚神》風駆ける者とほぼ同体化して、ドロップエリアの中心であるスチュワートスタジアムで、数千人の観客のライヴスを吸い殺すと宣言。
・エージェントが来なければこのままアリススプリングス全域をドロップエリア化する、それが嫌であれば自分を倒せと《愚神》ゴールテープは告げている。

解説

・基本的に今回は戦闘シナリオです。
・調査系の行動もやろうと思えばできますが、少なくともここで《愚神》ゴールテープ(仮名)を倒さなければ、アリススプリングス全域がドロップエリア化し、オーストラリア全域ドロップエリアに一歩近付きます。逆を言えばゴールテープを倒せば、少なくとも他の地域はアウトでもアリススプリングスだけは生き残る計算です。
・《愚神》ゴールテープ自身は特に大した力のない、ドロップエリア化させるだけの存在です。が、ゴールテープが同一化した状態で《愚神》となった風駆ける者は、受けた攻撃の風を操って相手をカマイタチで切りつけつつ自分を中心にしたエリアから敵を弾き飛ばすという能力「風刃乱舞」を持っています。ゴールテープは遠慮なくその力を使うので、ご注意下さい。
・今回のルールは「鬼ごっこ」で、基本的に《愚神》が直接攻撃を仕掛けてくることは少ないと思われます。しかし《従魔》は皆さんにとっての鬼として襲ってきますのでご注意下さい。
・風駆ける者を助ける方法は、今のところ判明していません。そもそも《英雄》でありながら《愚神》を育てた風駆ける者をどうすればいいのか。それは皆さんの判断によると思われます。
 敢えて選択肢は出しません。仲間と協力するも良し、一人で立ち向かうも良し。それぞれの考えでゴールテープを倒して下さい。

リプレイ

●H.O.P.E.
「良く来てくれた」
 H.O.P.E.の担当は、六名の女性を前に、頭を下げた。
「佐藤 咲雪(aa0040)、カグヤ・アトラクア(aa05535)、橘 由香里(aa1855)、ティナ(aa1928)、添犬守 華紅(aa21155)、ギシャ(aa3141)ヴィラン達の騒動でアジアも忙しいというのに、集まってくれて感謝する」
 担当の言葉に、カグヤは胸を張って答える。
「戦力には限りはある。が、全力を尽くそうぞ」
「このままではオーストラリアがドロップゾーン化してしまうかもしれません。少なくともこのアリススプリングスは危険です。どうするのですか」
 由香里の質問に、担当は頷いた。
「市民に今すぐ退去命令を出してアリススプリングスから脱出させ、ノーザンテリトリー近辺にいるエージェントをかき集めている。今も《愚神》の興味を惹かない人数ずつスタジアムの観客を脱出させている。残る観客も君たちが《愚神》と戦っている隙を突いて救出し、北に移動させる」
「しかし、《ランナーズ》であれほどの力を見せつけていた風駆ける者[ウィンド・ランナー]から隙を突くのは、難しいのでは」
 担当の横にいた係官に、担当は首を横に振った。
「正確には風駆ける者ではない。風駆ける者を操っている《愚神》ゴールテープだ」
「冗談だと思っていましたが……」
「冗談ならもっと質のいいものを望むよ」
 今まで風駆ける者と風間翔一[かざま・しょういち]のペアが何度も切ってきたゴールテープ。あれが諸悪の根源とは。
「君たちがゴールテープの目を惹き付け、《従魔》の目を惹き付け、スタジアムを走り回ってくれれば、エージェントたちが観客を連れ出せる。観客を助けなければ逃げないと明言している住人もいるんだ。今我々ができるのは、住人と観客を無事ノーザンテリトリーから脱出させることだ」

●スチュワートスタジアム
 随分餌の活きが弱ってきたようだ、と《愚神》は思う。
 完全に風駆ける者を支配した。
 しかし今までライヴスを吸い取ってきた観客はほとんど「生きているだけ」になってしまった。
 まあいい。
 もうすぐH.O.P.E.のエージェントが新鮮なライヴスを持ってきてくれる。
 それを吸い取って、アリススプリングス一帯をドロップゾーンと化し、自分の生みの親であるシェリー・スカベンジャー[−・−]の命令通りにそれを広げてオーストラリア全土をドロップゾーンにする。
 ……ん?
 ドロップゾーンを出入りする存在に、《愚神》は気付いた。
 ゾーンから餌を持ち出している?
 まあいい。
 今の餌を持ち出されても痛くも何ともない。自分はドロップゾーンを広げるだけの力を手に入れたし、足りなければ今から自分を倒しにやってくるはずのライヴス豊かなエージェントから吸えばいいだけだ。
 だから、《愚神》はドロップゾーンから観客を連れ出すエージェントを無視した。
 もっと強い相手から奪えばいい。
 それは精神まで完璧に支配したはずの風駆ける者の影響があったかも知れない。

●出陣を前に
「より一層大きくなっておるの」
 カグヤの呟きに、《英雄》クー・ナンナ(aa0535hero001)が眠そうな顔をしてドロップゾーンを見上げた。
「まあよい。風駆ける者ととは一敗一分。次の試合では勝ってみせるから、邪魔者には消えてもらおうかの」
「でも……」
 クーはあくびをかみ殺しながら呟いた。
「ゴールテープを倒せても、今まで風駆ける者がやってきたことが許されるとは思わないけどね」
「くふふ。お子様は何も分かっておらんの」
 含み笑いをしてから、カグヤは共に《愚神》を倒す為に集まったエージェントたちを振り返った。
「で? 何か策はあるかの?」
「カグヤは友達だし、作戦があるなら協力するよ」
 初めて現れたギシャが手を挙げた。
「鬼ごっこでしょ〜? 鬼を殺して宝を奪え♪」
「……まあ、鬼退治である事に変わりはないか」
 《英雄》どらごん(aa3141hero001)が溜息をつく。
 ずんぐりむっくりした可愛らしい三頭身の緑竜で、一見して着ぐるみにしか見えない。トレンチコートにソフト帽を被ってハードボイルドを気取っているが、どうしてもゆるキャラにしか見えない。ティナが匂いを嗅いで中の人を探っているが、もちろん中の人などいない。
「で? ギシャはどうするんだ」
「まずは《従魔》退治だね。《愚神》を倒すのに《従魔》は邪魔だし?」
「……正論だな」
 しかしそれが難しい、とどらごんは唸る。
「あたしもサポートするよ。ギシャ君の言う通り、《従魔》を倒さなきゃ《愚神》勝負に邪魔になる」
 華紅も頷く。
「ティナ、手伝う。連携。風刃乱舞、止める」
 四つん這いで座って、犬のように足で頭を掻きながらティナも頷く。
「でもねえ……」
 由香里が渋い顔をした。
「どうしたのじゃ。不安材料があるのか?」
 《英雄》飯綱比売命(aa1855hero001)に問われ、由香里は頷く。
「ギリギリまであの風刃乱舞を破る策を考えていたのだけれど」
「けれど?」
「これと言ってないようね。攻撃の時の風の動きですら自分の攻撃に変えてしまうのだから厄介だわ」
「随分と投げやりじゃなぁ……」
 飯綱の返事に、由香里は軽く肩を竦める。
「思うのだけれど、風駆ける者の走る事への情熱というか、走る事が楽しい思える感覚を、再び呼び覚まして《愚神》と分離させるのが、迂遠に見えて勝利への最大距離ね」
「随分と乱暴な結論じゃが、その予測にこの会場にいる観客の命運を賭けてよいものか?」
 飯綱の言葉に、由香里は首を振った。
「無駄な攻撃を仕掛け続けるよりはマシよ。H.O.P.E.のエージェントも観客の解放に動くと言っているし、どのみちこの戦力で力押しは無理なんだから。やれることをやるしかないわ」
 そして由香里は咲雪を振り返る。
「あなたはどうなのかしら?」
 振られた咲雪は、眠そうな目で呟いた。
「……ん。なんか……気に……食わない」
「何が気にくわないの」
 《英雄》アリス(aa0040hero001)の言葉に、咲雪は半分夢の中にいるような表情で答えた。
「勝ち逃げ……された」
「勝ち逃げ?」
「この間は……勝ったけど、普通にやれば……自分たちが、負けてた。だから……もう一度、走りたい。なのに……あのゴールテープが……再戦、させてくれない……それが……気にくわない」
「《愚神》に直接攻撃を仕掛けるのはカグヤさんと咲雪さんでいいのかしら?」
 由香里の言葉にカグヤはチラリと一同を見回した。
「そのようじゃの」
「一緒に走ったから……もう一度、走りたい。その為には……ゴールテープを……切らなきゃ、いけない」
「じゃあ、私たちの役割は、二人の妨害をするであろう《従魔》を倒すことね」
 由香里は頷く。
 と、ティナがくんくんと鼻を鳴らした。
「あれ、何」
 数人のH.O.P.E.のエージェントが、何人かを背負ったり抱き抱えたりしてスタジアムを出入りしている。
「ああ、あれ?」
 不思議そうにそちらを見るティナに、由香里が説明する。
「オーストラリア各地でも《愚神》によるドロップゾーン化が進行しているの。そして対抗できるエージェントは少ない。だから、それ程力のないエージェントをかき集めて、スタジアムの観客を脱出させているのよ。同時にアリススプリングス付近の住人の避難も」
「ティナたち、倒す、できない、思ってる?」
「人数が少なすぎるのよ」
 由香里は溜息をついた。
「ゴールテープに囚われた風駆ける者は、《ランナーズ》で見た限りじゃかなりの強さを持っている。大体、卑怯すぎるわよ。こちらが攻撃に使った風でも操って自分の力にしてしまうなんて」
「風刃乱舞。じゃが、風がなく、風を起こさぬ攻撃であれば意味はない」
 にぃ、と口角を上げてカグヤは呟いた。
「対抗策……あるの……?」
 咲雪の言葉に、カグヤは笑った。
「どこで《従魔》が盗み聞きをしておらぬとも限らぬのでこれ以上は言えぬがの。咲雪はあるのかえ?」
「……わからない」
 咲雪はぽつりと呟いた。
「……助ける、方法……分から……ないから斬る」
「それも正しいだろうな。風駆ける者を助ける方法も、ゴールテープを倒す方法も、分からない。分からない限りはそれぞれが正しいと思うことをやるしかない。それが良い結果をもたらすと信じて」
 呟いたどらごんを、華紅がじっと見ている。
「どうした」
「いやあ……真面目なことを言うなあって思って。着ぐるみみたいと思っていたけど」
「失礼な」
「あ、ごめん。怒らせる気はなかったんだ」
「まあいい、よく言われることだ」
「気にしてた?」
「この姿と言動が合わないと言いたいのだろう? 何度も言われてきたことだしもう慣れた。好きなように言えばいいし呼べばいい」
 ハードボイルドに呟くどらごん。言われ慣れた言葉と、契約者ギシャが華紅と何処か似たような雰囲気を持っている為、真剣に怒る気にもなれない。似ていると言えばティナも何処か似ている。類が友を呼んだのか。
「で? 風駆ける者を救命するためにも、観客を助ける為にも、俺たちが中に入らなければならないのだろう? 敵のテリトリーに入る準備と覚悟はできたのか」
 振り向いたどらごんに、カグヤは大きく頷いた。
「これで三度目じゃ、覚悟はできておる」
「ボクは、カグヤが行くから、行く」
 クーは目を擦りながら答えた。
「ティナ、初めて。でも、できてる。覚悟」
 ティナの自信に、華紅がちょっと苦い笑みを浮かべながらも言った。
「あたしは多分一番弱い。だけど覚悟はできてるよ」
 咲雪は眠そうな目で、言った。
「今度こそ……勝ちたい。だから……行く」
「本気ね?」
 アリスに言われ、咲雪は小さく頷く。
「ギシャはいつでもオーケーだよ?」
 ギシャが楽しげに白虎の爪牙を光らせた。
「覚悟ができてなければここまで来てはいませんわよ」
「そうじゃ。わらわたちは、《愚神》に一杯食わせる為に集まったのじゃ」
 由香里と飯綱の締めくくりに、一同は顔を見合わせ、笑い合った。
「風駆ける者を……助けたい」
 咲雪がぽつりと呟いた。
「だけど……分からない……分からないから、倒す」
「では、ゆくぞ、皆の衆。クー、リンクするぞ」
 カグヤがクーとリンクして、胸を張ってドロップゾーンに入る。
 面々も次々リンクして、中に入っていった。

●ドロップゾーンの鬼ごっこ
 スタジアムの外まで広がったドロップゾーン。
 道を歩き、スタジアムの中に入る。
 スタジアムの中央に、全身に布を巻いた風駆ける者……いや、風駆ける者を支配した《愚神》ゴールテープがいる。
「やっと、来た」
 舌っ足らずな言い方で、《愚神》が言う。
「さあ、始めよう。僕は、君たちの、ライヴスを、奪う。君たちは、僕を、追い、かける。《従魔》は、君たちを、追い、かける。それで、いい」
「風駆ける者を解放する気は……ないようじゃの」
 カグヤの呟きに、《愚神》は答えた。
「風駆ける者を、解放したら、君たちの、ライヴスを、くれると、言うの、なら」
「そういうわけにはいかなくてよ」
 由香里が鉄扇を構えた。
「あなたを……倒して……風駆ける者を、解放する」
 咲雪もシャープエッジを構える。
「じゃあ、ゲーム、スタート」
 《従魔》たちが一斉に襲いかかってきた。
「カグヤさん、咲雪さん、《愚神》はお任せしましてよ!」
『由香里、十分に気を付けよ。《従魔》にやられてわらわたちが彼女らの足手まといになれば意味はない』
「分かっていますとも!」
 襲いかかってきた、テレビカメラや座椅子などに取り憑いた《従魔》を叩き潰して、由香里は飯綱に言い返す。
「ウーッ!」
 集まる《従魔》に威嚇のうなり声を上げ、ティナはエストックを構えて襲いかかる。真っ直ぐ走っていくティナに、背後から《従魔》が牙をむく。
 ティナが気付いて振り返ろうとした瞬間に、《従魔》が弾き飛ばされていた。
「ティナ君、後ろに気を付けて!」
 ショートソードで《従魔》を切り裂いた華紅に頷き、ティナは両手両足で方向転換し、華紅が仕留めきれなかった《従魔》にとどめを刺す。
「みんな頑張ってるね♪ 結構結構♪」
 楽しげに呟いたギシャに、どらごんが内面から窘める。
『俺たちもやらなければならないんだぞ、ギシャ』
「わーかってるって!」
 対《従魔》の中では一番レベルの高いギシャは嬉しそうにソウドオフ・ダブルショットガンを構える。
「さーあさあ、鬼さんこちら♪ 地獄へ落ちろ♪」
『観客席に《従魔》を向かわせるな。観客の脱出を邪魔させてはならない』
 どらごんの言葉にギシャはチラリと観客席を見る。この戦いに参加すらできないエージェントたちが、それでも恐怖をこらえて観客を運び出している。
「よーするにっ、派手に暴れればいいんでしょー?」
 ショットガンを連発し、駆け回る。接敵すれば白虎の爪牙や虹蛇で切り裂く。
「すっごーい! ギシャ君てば強ーい!」
 華紅の感嘆にギシャはへへんとぺたんこの胸を張る。
「感心している場合ではなくてよ、華紅さん。《従魔》を倒すのが役目ならば、それに集中しなくては」
 由香里の言葉に華紅はごめんごめんと謝り、再び《従魔》に向き直る。
『今までのところは順調じゃの』
 飯綱の言葉に、由香里は鉄扇を構えながら応じる。
『今までのところは、ね。問題はこれからよ』
『確かにの。今のところは由香里の想像通りに動いておるが、問題はこれからじゃ』
 ここでの仕事は《従魔》を倒すことではない。《従魔》を攻撃する時の風を《愚神》にまで届けないことだ。
 空気の動きは、全て《愚神》の力となる。
 今のところは《愚神》に風は届いていない。だが《愚神》が積極的に行動しようと思えば、ここへ来るしかない。
 《愚神》が風を手に入れようとすれば……。
「ぎゃんっ!」
 獣めいた叫び声に、華紅はそちらを見る。
 ティナが弾き飛ばされていた。
 そして、その眼前に、《愚神》が。
「風を、起こせ。もっと。もっと。踊れ。踊れ。もっと。もっと」
「ティナ君っ」
「へ……へー、き……」
 ぐるる、と喉を鳴らして、ティナは起き上がった。だがダメージは結構大きそうだ。
「無理しないでティナ君、悔しいけど……今のあたしたちじゃ、《愚神》と真っ向勝負は無理だよ」
 華紅はティナを抱えて《愚神》から少し距離を置く。
「うわあっ!」
 再びの悲鳴に華紅もティナもそちらを見る。《従魔》と相打ちになってギシャが倒れたのだ。
「嘘……ギシャ君まで……」
「華紅さん、そんな暇はないでしょうっ!」
 由香里は鉄扇で《従魔》を倒しながら叫んだ。
「絶望に浸る暇があるならば一体でも《従魔》を倒しなさい、それが《愚神》に勝つ唯一の方法なのだから!」
「ぐるるるる……」
「……そうだね。それしかないね。あたしたちにできることを、全力でやるしかないね」
 華紅とティナは《愚神》と距離を取りながら、《従魔》と戦う。
 そのうち、由香里は一つのことに気付いた。
 倒れたギシャにとどめを刺しに行く《従魔》がいないことを。
『そうだわ……!』
『如何した、由香里』
 飯綱の問いに、由香里は確信を持って答えた。
『ルールは変わっていない』
『ルール?』
『《従魔》のルールは、ランナーズの時からほとんど変わっていない。ある一定以上のスピードで動くものにしか《従魔》は攻撃を仕掛けない。変わっているのは、《愚神》自身に攻撃をしないということくらい』
『ふむ』
 飯綱は由香里の目に映る観客席を見る。
 数人ずつ、無理をしないようにそっと観客をドロップゾーンから連れ出すエージェントたちを、確かに《従魔》は敵と見なしていない。
『じゃが、それが分かったとして何とする? 《従魔》を倒すには攻撃を仕掛けねばならぬ。カグヤと咲雪が《愚神》に攻撃を仕掛ける時はある一定以上のスピードが出るであろ。《従魔》が押し寄せれば、あの二人への負担は大きくなる』
『そうじゃなくて、つまり……こう言うことができるのよ!』
 ぴたり、と由香里は足を止めた。
 攻撃を仕掛けようとした《従魔》は、由香里を見失ったかのように動きを止める。
 由香里は攻撃目標を見失った《従魔》を容赦なく打ち据えた。
『なるほど』
 飯綱が感心したような意識を送ってくる。
「ティナさん、華紅さん、移動しながらの攻撃は無意味よ! 攻撃に移る時は一旦停止して! それで相手からの反撃はなくなる!」
「や、やってみる!」
 華紅は足を止めた。敵を目の前に動きを止めるというのはかなりの恐怖を感じたが、由香里の言う通り、《従魔》は動きを止めた。
 その隙に華紅はショートソードで従魔を刺し貫く。
「できた……!」
 華紅はショートソードを見て、消滅していく《従魔》を見て、呟いた。
「がるっ!」
 観客席ギリギリまで走ったティナは、両手両足を使ってブレーキをかける。速度を失った敵を見分けられず、次の敵を探しに行こうと背を向ける《従魔》をエストックで切り裂く。
「何故、風が、起きない? 《従魔》、では、無理、なのか」
 《愚神》が呟く。
 そして、手を動かす。
 僅かながら風が生み出された。
「行かなければ、風が、出ない? 仕方、ない。行こう」
 《愚神》はついにスタジアムに降り立った。

●《愚神》
「来たの」
 それまで動きを止めて体力を温存していたカグヤは、スタジアム中央に進み出た《愚神》を見た。
「今度こそ……あなたを、倒す」
 咲雪も得物を持って、《愚神》に近付く。
 《愚神》は、にやりと風駆ける者の顔で笑った。
 そして、その場で回転を始めた。
「……風……!」
『咲雪、投擲ナイフを牽制に。相手の直上から飛び込んで密着して斬りなさい』
「……ん、分かった」
 リンクしているアリスの言葉に頷いて、咲雪はジャンプする。
 《愚神》の上空へ。
 だが、《愚神》は咲雪がジャンプしたのと同じ高さまで舞い上がった。
「風刃乱舞」
 空中で繰り出された風の刃は、ほぼ同じ目線であった咲雪を切り裂く。
「あうっ」
「咲雪!」
 カグヤの叫び。
 そのまま咲雪は地面に叩き付けられた。
 《愚神》は後を追って着地する。
「さあ。ライヴスを、もらう。そして、オーストラリア、全土を、ドロップ、ゾーンに」
「飛べるのであれば、上空からの攻撃はほぼ不可能かえ……」
『カグヤ、このままじゃ』
 クーの声に、カグヤは舌打ちする。
 だがその時、気付いた。
 潜伏している存在を。
 《従魔》に倒された振りをして、チャンスを伺っていた存在を。
 そう、《愚神》が再び風を集める為着地したその瞬間、動いた存在を。
「縫止!」
「ギシャか!」
 《従魔》に倒されたように見せかけて、全員の目が《愚神》に向いた瞬間に潜伏して《愚神》に近付き、縫止し……。
「こーれで、大人しくしててねっ!」
 猫騙で《愚神》の動きを封じたギシャは、すぐにカグヤに視線を送った。
「ようやってくれた!」
 カグヤは一気に《愚神》との距離を詰めた。その全身には巻物「雷神ノ書」が巻き付いている。
 そして、《愚神》を抱きしめた。
「さあ、我慢比べと行くかの。どちらが音を上げるまでの勝負じゃ」
「何、を」
 《愚神》を抱きしめたまま、カグヤは「雷神ノ書」を発動させた。
「ぐ、あああ、あああ」
「ふふ、ふふふ」
「カグヤ」
「来るでない!」
 得物を構えて接近しようとした咲雪に、カグヤは怒鳴った。
「でも」
「雷神ノ書から《愚神》を通じてわらわに到るダメージは、《愚神》を100とすればせいぜい20! 全力攻撃してもわらわは安全じゃ!」
 確かに、カグヤは笑みすら浮かべる余裕があるのに、《愚神》は苦しがっている。
「手助けならば風駆ける者にしてやるのじゃ! 彼女が内側から束縛を敗れるように!」
 20でもダメージはダメージ。しかしカグヤは叫ぶ。《愚神》に囚われた風駆ける者に。
「風は縛られて淀むものではないはずじゃっ! そなたの、本気で挑む力を、見せてみぬか!」
「無駄、だよ」
 《愚神》はダメージを受けながらも、風駆ける者の口で答えた。
「彼女は、絶望、した。二度と、パートナーと、会えないと、思った。二度と、思い通りに、走れないと、悟った。その時、風は、繋がれた。そう、この、僕の、束縛、に」
「ならばそなたを引きはがすまで!」
「《従魔》よ。来い。この、女、引き、はがせ」
 自分でカグヤを引きはがすのは困難と感じた《愚神》は、《従魔》を呼び集める。
 だが。
「ダメ」
 咲雪が《従魔》をノーブルレイで絡み取り、切断した。
「風駆ける者の戦いは、邪魔させない」
『咲雪……いいのね? 風駆ける者をカグヤ様に任せても』
「いい。あたしには、あの方法は、思いつかなかった。ゴールテープごと切り裂くのじゃなくて、無風のダメージで、《愚神》を引きはがせるかも知れない方法は。だから、カグヤさんに、この戦いの要を任せる」
 カグヤを振り払おうとした《愚神》にギシャが再びの猫騙を喰らわせる。
「まだ、電流が足りぬかえ?」
「ぐう、うう、うう」
『カグヤ、思ったよりいけそうだね』
『そうじゃの、クー。こちらにはまだ、ライブスフィールド、ヒールブリーズでのリジェネレーション継続回復、ケアレイがある。あちらには防御の手段がない。わらわ以上のダメージを、《愚神》には与えておるはず』
 カグヤは更にライヴスを注ぎ込む。
「《従魔》、《従魔》、《従魔》!」
 《愚神》は自分に従う化け物を呼び集める。
 だが、四人のエージェントが、《従魔》を刈り取る。
「ルールは、同じ?」
「ええ、《愚神》が文字通り愚かなのか、面倒だったかは分からないけれど、スピードの遅い者に《従魔》は襲いかからない。《愚神》が命ずる相手なら別でしょうけど、今のところ、《従魔》は『一定以上の速さを出さないエージェント』を攻撃しない」
 由香里の説明に、咲雪はすぐに状況を理解する。
 常に眠そうでやる気もなさそうに見える咲雪だが、生まれて初めて、気に入らない《愚神》に出会った。再戦したいと……完璧に勝ちたいと思った風駆ける者を自分から奪った《愚神》に。
 もう一度戦えるなら戦いたい。《ランナーズ》というルールの中で。ひたすら速さを追い求めた敵と、彼女を追い詰めようとした仲間たちと。
 だから、その邪魔をする者を排除する。
 この場で一番動きが速いのはギシャだ。しかし彼女はカグヤのサポートで動けない。ならば自分がやるしかない。
 《愚神》に近付く《従魔》に一気に距離を詰め、自分を意識させたところで、制止する。攻撃に移ろうとした《従魔》が混乱したところで、切り裂く。
「《愚神》に……味方するの……全部、敵」
『咲雪、後ろっ』
 内面でのアリスの警告に、咲雪は振り返りつつノーブルレイを繰り出す。
 そのまま動きを少しだけ止めて、引く。
 《従魔》はばらばらになった。
「大分……減ってきた、ね」
 華紅が息を切らしながらもショートソードを握り直し、《従魔》に目をやる。ティナもあちらこちらに視線をやって頷く。
 スタジアムに跋扈していた《従魔》は相当数を減らしていた。
 そして、観客も。
 名もなきエージェントたちが数日前から必死に行動してくれたおかげで、《愚神》が一番手っ取り早くライヴスを吸える対象を奪えたのだ。
 もう《従魔》も観客も残るのは僅か。
 そしてカグヤと《愚神》の対決も、終わりに近付いていた。

●戻ってこい!
「まぁだ諦めぬのか、しつこいとおなごに嫌われるぞ?」
「《従魔》、《従魔》、《従魔》!」
 カグヤの含み笑いに、《愚神》は叫ぶ。だが、《愚神》の叫びに応じる《従魔》がほとんどいない。そのことにすら《愚神》は気付けていない。
「戻ってこい、風駆ける者!」
 電流を受けながら、カグヤは叫んだ。
「そなたと戦いたい者が大勢いるのじゃ! 《愚神》ではない、《トップランナー》のそなたたちと! そなたの走りを見たい者はもっと大勢いるのじゃ! そなたの本気に、そなたの走りに魅せられた者たちが! いつまで己の内にこもっているつもりじゃ!」
「コ……」
「?」
「ん?」
 空気を震わせる小さな声。
「……ロシ……テ……」
 その言葉は、風駆ける者の口が紡いだ言葉だった。
「風駆ける者!」
「ダメだ、君は、僕の、ものだ」
 風駆ける者の全身に巻き付いた白い布が、更に束縛を強くした。
「僕の、体として、君を、使う。それが、約束、だった、はずだ」
「《愚神》の約束など守る必要はないわ!」
 カグヤが叫んで、一層電流を強める。
「ぐう、ううう」
「殺して、じゃと? 甘えるでない! 殺して欲しければ戻ってこい!」
「僕が、いる、限り。風駆ける者は、戻らない」
「じゃあ、あたしたちが、斬る」
 《愚神》は気付いた。
 愚かにも自分に挑んできた《能力者》たちが自分を取り囲んでいる。
 いや、違う。
 どちらか愚かなのか?
 風駆ける者は確かに愚かだった。
 《英雄》としてやってはならないことをやった。シェリーとの契約に頷き、翔一を守る為に自分にライヴスを渡した愚か者だった。
 だが、愚か者が呼んだのは、愚かではない者たちだった。
 戦法を考え、《愚神》たる自分を倒す為、僅かな人数で挑んできた……勇者。
 ショートソードを向け、鉄扇を構え、エストックを握り、ノーブルレイを掴む。
 その時初めて《愚神》は感じた。
 恐怖という感情を。
 世界を変えることができる自分にたった六人で挑み、そして、自分にとどめを刺そうとしている女たちを相手に。
 その時《愚神》が取った手段は。
 一番原始的な手段だった。
 しゅるり、と布がほどける。
 そのままゴールテープは上昇しようとして……。
 ノーブルレイに引き戻された。
『やめろ、やめろ、やめろ』
「誰、やる?」
 咲雪の言葉に、ようやく電流を解いたカグヤも、ギシャも、そして由香里も、華紅も、ティナも、お互いの顔を見合わせて。
 それぞれが、それぞれの得物を持って。
「やめろ、やめ、やめ、ややややめめめめめろろろろろろろ」
 必死のゴールテープの懇願も、彼女たちは聞き入れなかった。
 全員が一斉に動く。
 薄い布は呆気なく切り裂かれ、塵となった。

●最後の《トップランナー》
 塵となった《愚神》を、六人ともぼんやりと見ていた。
 一同はリンクを解いて、ぐったりとスタジアムに倒れた。
「……つっかれたー!」
 ギシャが叫ぶ。
「どらごん、お腹すいたよ、何か食べたい」
「まだ全部が終わったわけではない」
 どらごんがギシャに言い聞かせる。
「なんでー? 《愚神》は死んだんでしょー?」
「まだ、彼女がいる」
 実体のない、金の髪の女性。
 風駆ける者。
 カグヤがその元へ行った。
「これでそなたは自由じゃ。《英雄》として再び翔一と契約を結べば良い」
『……無理……よ……』
 空気を微かに震わせて、風駆ける者は呟く。
『私は……翔一を騙した……。Mr.スペンサーの援助を得る代わりに《愚神》を育てた……。そのうち、罪悪感もなくなり、ただ《愚神》を育てる為に翔一を使った……。翔一を助けるつもりが、翔一からもライヴスを吸い取って、餌にした……』
「やり直す……ことは、できる……、と、思う」
 咲雪の言葉に風駆ける者は首を横に振る。
『私は……《英雄》としてやってはいけないことをやった……。再び《英雄》として、しかも翔一の《英雄》として、走る事は……できない。あなたたち《英雄》なら分かるでしょう……? 私は、一番大事な存在を、裏切ったのよ』
 アリスも飯綱もクーもどらごんもそっと風駆ける者から目を背ける。
 《能力者》と共に在る為に覚悟を決めた彼らだから分かる、彼女の罪。
 だけど、同じ状態に置かれたら、自分ならどうするだろう。
 《能力者》の期待に応えたかった。それだけなのに。
 風駆ける者は、そうしたいだけだったのに。
「……どうする気なのじゃ?」
 飯綱に聞かれ、風駆ける者はほろ苦く笑った。
『このまま、消滅するわ。全ては私が悪いことにすればいい』
「《トップランナー》の名を汚してもか?」
「《ランナーズ》が始まった最初から、その名は汚れていたのよ。……ああでも、翔一は違う。翔一は悪くない。翔一は《愚神》に操られたことにしておいて。事実そうなのだし。悪いのは全部私」
「翔一はどう思うかは、考えないのか?」
 風駆ける者は翠の目でどらごんを見る。
「だって、全て私が悪いのだもの。《愚神》を倒す為に、《英雄》としてこの世界に来たはずなのに、《愚神》を育て、《能力者》を利用した。もう私に存在理由なんてないの。風は、止まったのよ」
「じゃあ、じゃあさ」
 華紅が言った。
「皆で走ろう? 風駆ける者さんの最後の走り。実体がなくても走れるでしょ? 皆で走って、そして決めよう? 《トップランナー》を」
 今一番相応しいのは、走る事だと思うから。
『じゃあ、北へ』
 風駆ける者は立ち上がった。
『オーストラリア各地でドロップゾーン化が進んでいる。この街が解放されたとしても、それ以外の場所では《愚神》や《従魔》が動いている。このノーザンテリトリーから脱出しないと、あなたたちはアリススプリングスに閉じ込められる……。住民や観客はほぼ脱出できた。残るはあなたたちだけ。ここから、あなたたちを導く為の、私の、最後の走り』
 風駆ける者の実体のない足が、確かに地面を蹴る。
 ギシャは起き上がって、追いかけた。
 咲雪もその後を追う。
 カグヤも、ティナも、華紅も。
「由香里は行かずとも良いのかえ?」
 飯綱に問われ、由香里は立ち上がって、ゆっくりと歩き出した。
「いいのよ。ウイニングランは本当に走るのを楽しんだ人のものだから。私は自分の任務を果たした。それだけよ」
 今までの《ランナーズ》と違うのは、風駆ける者が先頭を切って走っていること。
 ドロップゾーンを抜け、北へ、北へ。
 アリススプリングスを抜けるその時に、風駆ける者は振り返って皆の顔を見た。
 心底嬉しそうな顔。
 全てを失って、消え去る瞬間であっても。
 風駆ける者は、風と共に走る存在だった。

 そうして、金色の光と化し。
 風駆ける者は、消滅した。

 ……ありがとう。

 その言葉を残して。

●《英雄》が消えた《能力者》
「風姉は……消えたんだな」
 由香里が尋ねたオーストラリア北部の病院で、風間翔一はようやくベッドから起き上がれるようになっていた。
「ええ」
 由香里は何もかも包み隠さず話した。恐らく風駆ける者は全てを自分のせいにしたかっただろう。だが、由香里は話すべきだと思った。だから、話した。
「オレは……風姉と、一緒に、走りたかった。足の速さしか取り柄のないオレだけど、風姉と一緒だったらもっと走れると思ったから。でも……それが風姉の道を、踏み外させたんだな」
「それは、分からない」
「オレ、馬鹿だから」
 同年代の女子の前で、男としての矜恃もかなぐり捨てて、翔一は呟いた。
「オレは走りたいだけだったんだ。風姉もそうだったんだ。だから二人一緒だったらどこまでも走っていけると思った。そして、走る事で守りたいものを守れるって聞いて、嬉しかった。嬉しかったんだ。とっても。オレが馬鹿みたいに喜んでた時、風姉は、何て、思ってたんだろう。《愚神》に、取り憑かれて……」
「じゃあ、失礼するわ」
 由香里は背を向ける。
「最後に一つ……聞いて、いいか」
「何?」
「風姉は……風姉だったか?」
 謎掛けのような問いに、由香里は、ほんの一瞬、考え。
 そして、答えた。
「ええ。風駆ける者は、最期の一瞬まで、風駆ける者だったわ」
「ありがとう……」
 由香里は病室のドアを閉める。
 その一瞬、小さなすすり泣きが聞こえた。
 だが由香里は聞かなかった振りをしてドアを閉めた。

●その後
 各地でのH.O.P.E.のエージェントの活躍で、オーストラリアを襲った未曾有の危機はひとまず避けられた。
 とは言え、オーストラリアには未だいくつかのドロップゾーンが残っており、《愚神》や《従魔》も残ってはいる。全ての戦いが終わったわけではないのだ。
 そして、その戦いはあまりにも激しく、H.O.P.E.のエージェントだけでなく、一般人にも大きな被害が出た。アリススプリングスのスタジアムに《愚神》の餌として囚われていた観客たちの中にも、今も意識が戻らない者がいる。
 スタジアムだけでなく、各地を跋扈した《愚神》《従魔》の爪痕は各地にくっきりと残されている。アリススプリングスでも、スタジアムは半壊。《従魔》が取り憑いて破壊した街並み。戻ってきた住民は、そこからの復興の厳しさに溜息をつくしかなかった。
 更に、黒幕とみられる《愚神》シェリー・スカベンジャーも、撃破がかなわず、その後の行方も不明のままだった。

 だが、自分たちは生きている。
 生きているからこそ、できることがある。
 《ランナーズ》という観光資源、収入源を失ったこの都市も、いずれは新たな道を模索して立ち上がるだろう。
 だが、風駆ける者が関わった全ては、消えた。
 《愚神》と呼ばれる風駆ける者は、望み通り、全ての汚れを受け入れて消えた。

 そして、風間翔一は、アリススプリングスに、二度と戻る事はなかった。
 いつかは別の《英雄》と契約を交わし、《能力者》として《愚神》を倒したいと由香里に語ったのを最後に、《トップランナー》は、一人、消えていった。

 風の行方を、誰も知らない。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 野生の勘
    ティナaa1928
    人間|16才|女性|回避



  • エージェント
    添犬守 華紅aa2155
    人間|13才|女性|命中



  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
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