本部

広告塔の少女~新型AGW開発局~

鳴海

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/02/13 21:56

掲示板

オープニング

『西大寺遙華 (az0026)』さんからの招待メール


『みなさんごきげんよう。いかがお過ごしでしょうか。西大寺遙華 です。
 突然ですが今回は、私から直接お仕事を依頼したいと思い連絡いたしました。

 グロリア社日本支部はここ最近、いろいろやっています。
 テレビ番組を企画したりボランティアをしたり。クリスマス企画では大変お世話になりました。
最近ではVBSなどご協力ありがとうございました。
 ですが、最近手広く活動を広げすぎて、私たちの会社がどのような会社だったか、よくわからなくなっていると思います。
 なので本題に入る前に、まずは私の会社について軽い説明をさせていただきたいと思います。
 
 グロリア社は1900年代に創立されました、最初は製糸工業だったそうです。創業者はアルフレド・スミスという人物で、とても奇妙な人物だったと言い伝えられています。
 そのグロリア社ですが、紆余曲折を経てライヴス技術に着手、その業界で有数の企業となりました。。
 ワープゲート技術の実用化にもグロリア社は多大に貢献しましたし、AGW開発など功績が認められ、それ以来H.O.P.E.様とはとても親密なおつきあいをさせていただいています。
 
 さて、そんな私達グロリア社の主な販売筋はAGWです。
 最近では日用品、装飾、服飾まで幅広く手を出していますが。
 今こそ本業に力を入れるべきだと思うのです。
 なので、AGW開発に協力していただきたくこのようなメールを送らせていただきました。
 ぜひ参加していただけると嬉しいです」


 この誘いに、快く承諾したあなたは達はグロリア社の研究所に向かう。


「ああ、よく来てくれたわね、ありがとう。こちらよ」
 そう君たちを出迎えてくれたのは『ロクト(az0026hero001)』だった、彼女は普段とは違い白衣を羽織っておりメガネをかけている。
「私も研究に協力させてもらっているのよ、今日は社員としてあなた達を案内します」
 ロクトは歩きながらリンカーたちに概要を説明する。
「今日は新型AGWを全部で四つ、試作運用してもらうわ」

 一つ目がAI搭載型の長剣AGW『バルムンク』。
「AIを搭載することによって敵の攻撃軌道を分析して音声で伝えてくれるわ。特に効果を発揮するのは遠距離からの攻撃ね、これが実用化されれば魔法攻撃を切り払ったりできるようになるわ。
 実験は共鳴状態のリンカーが二人一組で行っていただくわ、切りあってもらう。一応刃はないけどそれでも油断すると怪我をするわよ。
 熱くなるのもいいけどほどほどにね」

 二つ目が透視スコープ搭載型アンチマテリアルライフル『ハートレスアンカー』。
「遮蔽物を透視して物陰に隠れた敵を超火力の砲弾をもってして打破するというコンセプトのライフルなの。コンクリート壁を用意したわ。実際に透視がうまくできているか、射撃精度はどうか確認をお願い。射撃役とおとり役に分かれる必要があるわね。これも二組」

 三つ目が大図書館『アルスマギカ』
「シリコン製の本で、ひとたび開けば、膨大な情報がホログラフィックで表示され。さらに脳に直接情報を送り込んでくるので、膨大な種類の魔法を行使することが可能よ。ここでは魔法の打ち合いでもしてもらおうかしら」

 そうロクトは実験場を次々と紹介していく、それぞれ専用のエリアが設けられているが、敷居はなく屋外に設置されたスペースだった。この三つのスペースは歩いて移動が可能。

「検証に必要なものがあれば自由に申請してね、限りはあるけどなるべく用意をするわ。スイカとか。あの日本刀でよく切っているところを見かける……。藁の……あれとか」
 そしてロクトは最後に一際大きな実験場にリンカーたちを案内した。
「そしてこれが、グロリア社の次期主力商品になる予定のパワードスーツ。『グロリアンアーマーVerΩ』よ」
 そうロクトがモニターの電源をいれると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「たすけてー。ろくとー」
 そこには、パイプのような外骨格、それを黒いラバーカバーで覆った体長二メートルくらいの不格好なロボットが、がしょんがしょんと動いていた。
「リンカーの耐久力をもってすれば、パワードスーツもある程度無理がきくの、音速一歩手前までの速度でかけることができるし。四体集まればビルも持ち上げられる馬力を誇り。耐久性も、過去の愚神のパワーを測定し再現してみたけど、デクリオ級の攻撃にも耐えられるわ。これが実用化できれば、かなり戦闘が楽に……」
 その時ロクトは言葉を失った。ちょうどそのタイミングでパワードスーツがその機動力を試すために、フィギアスケートのように軽やかにすべり出した瞬間だった。
 そのパワードスーツを着込んでいる人物が半分白目をむいて、ぐったりとスーツの、なすがままに振り回されているのが見えたのだ。

「たすけてー。ろくと~」

「って遙華!? ちょっと止めて、だれか! あのパワードスーツを」
 すぐ近くにいた研究員が言う。
「それが、停止信号を送っているのですが。……受け付けず、破壊するしかないですね」
「二時間もまえ、どうりでヘロヘロになっているわけね。……可愛い声あげちゃって」
「ろくと~」
「これから、取材が来るのに遙華がこんな調子では格好がつかないわ、何とかあれを止めて遙華を助け出してちょうだい。あ、AGWを使うと実験のデータも取れていいわね、そうしましょう」
 ロクトは呆れたようにつぶやいた。
「取り合えず、これ以上あの子の負担が増えるのは困るから、共鳴だけはします。早めに助けに来てくれるとうれしいわ」
 そうロクトは意気揚々と実験場に向かった。

解説

目標 試作AGWを使用し『グロリアンアーマーVerΩ』を破壊する。

 今回AGWの戦闘データをとってもらうのですが、残念ながらすべてに欠陥があります(後述)
 このAGWはリンカーにはダメージが入らない仕様になっています。
 AGW全種類を使う必要が相談をお願いします。
 戦闘フィールドは、障害物の多い射撃場、整地されたアリーナ。で構成されており、一辺三キロ程度の広大な運動場です。

*欠陥
『バルムンク』
 これしゃべります、勝手なことをしゃべりますし気分屋さんで。気分を損ねると嘘をつきます。つまり嘘の攻撃軌道を教えてきたりします。
 痛覚が無いくせに叩きつけると痛がるし。邪魔な機能しかありません。
 耐久度と攻撃性能が知りたいので、剣で打ち合ってください。

『ハートレスアンカー』
 このライフルは銃自体はちょっと威力が強いだけですが、スコープが問題です。
 このスコープ確かに障害物を透視できるのですが。人の体と、なぜか下着は透視しないので、このスコープを通してみると、全員が下着姿で歩いているように見えます。
 与えられた弾丸は八発。これで命中精度の確認をしてください。

『アルスマギカ』 
 これは脳内に流れてくる情報が膨大すぎて、リンカーがちょっとしたハイになりますね。普段とは違って理性がきかなくなります。
 あと、口が軽くなり、普段言えないことを言ってしまったり、思ったことをすぐ口に出したりします。
 これは普通の魔法系装備と比較してどれだけ出力が上がったか見てもらいます。 

『グロリアンアーマーVerΩ』
 実を言うと、ちょっと強い従魔程度の能力しかありません。両手に防御壁を張る機能があるので。物理防御も魔法防御もかなり高めに設定されています。あと機動力が高いので、追いかけるのか待ち伏せするのかなど、作戦を立てた方がいいと思います。
 
 
 

リプレイ

 『斉加 理夢琉(aa0783)』と『アリューテュス(aa0783hero001)』は協力依頼メールを受け、グロリア社の送迎バスに乗りこんだ。
「遥華さん、頑張って仕事してるんだ。私も……うん、頑張らなくっちゃ」
「英雄ロクト、契約者を前向きにさせただけでなく理夢琉まで……凄いな」
 最近つらいこと続きだった理夢琉ははたして、今回の件で元気になれるのだろうか。
「ふむ、やったついたか」
『カグヤ・アトラクア(aa0535)』はバスから降りると、グロリア社の実験施設を見上げた。
 広大な敷地に所狭しと詰め込まれた科学技術の祭典、今からこの中に潜入し数々の技術を持ち帰ることができると思うと心が弾んだ。
『クー・ナンナ(aa0535hero001)』は隣で不敵に笑うカグヤを見て不安げな表情を浮かべている。
「グロリアの開発局へと招待か……くふふふふ、技術の宝庫じゃな。得られるモノはすべて頂くとするかの」
「獅子身中の虫。グロリアは利害得失が大変だ」
  
   *   *

「また癖のある代物を色々と……」
『赤城 龍哉(aa0090)』は茫然と立ち尽くしていた。並べられた武器を眺め観る。性能説明があからさまに怪しい。
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』はそんな彼に同意する。
「面白い事を考えますわね。どこまで狙ってやったものかはともかく……」
「さ、西大寺さんが大変なことに!」
 たいして『蔵李・澄香(aa0010)』は大慌てである。今にも飛びだしたい、そんな勢いで説明書もろくに見ないまま手近にあった魔導書を手に取った。
「急ぐよクラリス! くらリンク!」
 直後アルスマギカが怪しく光った。
「あばばばばばばばばばあああああ」
――あれ? 澄香ちゃん、大丈夫ですか?
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』が異常事態に気が付いたのは、もう共鳴をしてしまった後だった。
「魔法少女スミカマドカ! 16歳でこんなの絶対おかしいよ!」
 異様なテンションで実験場に飛び出していく魔法少女、それに続いて他の面々も実験場に向かう。
『五郎丸 孤五郎(aa1397)』は『黒鉄・霊(aa1397hero001)』の隣に立ち、すごく遠くにいるグロリアンと、悲鳴を上げる遙華をずっと眺めていた。
「グロリアン、やっぱり過去の世界からやって来たんでしょうか?」
「お前そういうネタどこから仕入れてくるんだ?」
「あ、こっち来ますよ」
『 卸 蘿蔔(aa0405)』がインカム越しに指示を出す。
「……えっと、カグヤさん、孤五郎さん、最接近までカウント5デス」
「OKじゃ、追いこみ役はまかせよ」
カグヤが返答を返すと、孤五郎は立ち上がり、黒鉄にハートレスアンカーを手渡す。
「今回も私が主人格で行くんですね」
「スラスター全開でかっ飛ばしながらの精密攻撃を私にやれと?」
 黒鉄はライブスラスターを全力で吹かせてグロリアンに追随する。
 その隣を同じくライブスラスターで加速したカグヤが並走する。
「黒鉄、手はず通りにまずは、澄香譲のいるあの射撃場まで追いこむのじゃ」
 見れば射撃場の障害物の上で魔法少女がそよそよと手を振っている。
 その隣には理夢琉がたっているが、何やら暗い面持ちでぶつぶつとつぶやいている。
「彼女は何をさっきから言ってるんですか?」
 蘿蔔が尋ねる。
「え? 呪文」
 代わりに澄香が答えた。
「魔法少女に呪文はつきもの」
「そうです! 私の前世は魔法少女だったんです」
――さらっと現場の空気に流されるなよ!
 そしてアリューテュスは察する。
 おかしい、最近ふさぎ込んでいて、その反動だとしてもこの謎のテンションはおかしい。
 澄香と理夢琉は楽しそうに会話を繰り広げている、しかし、よく聞くと話がまったくかみ合ってない!
――なにが起きているんだ……
「では、作戦を開始しますよ」
 黒鉄は魔法少女たちには触れずハートレスアンカーを構える。カグヤはアルスマギカを携え突貫、攻撃を浴びせた。
「なに、心配するな。どうやらリミッターがかかっておりダメージは通らないようになっているみたいじゃから、まぁ心配ならせいぜい全力でグロリアンだけを狙うのが良いじゃろう」
「なんでそんなことわかるんですか?」
 黒鉄が問いかける。
「ちょっと中身を解析した」
「……え? 解析ですか? いいんですかそんなことして」
「ばれなきゃいいんじゃ、もうまんたい」
「ばれてますよ! 今、自分で言ったじゃないですかもう手遅れです!」
 会話自体はインカム越しに全て共有されているので周知の事実に、今なった。
「しかも記録はこの優秀な脳髄と眼球のカメラで記録しておる、万事OKじゃ」
「ロクトさんが許さないと思いますよ?」
「その時は、あの遙華のあられもない姿をネタに脅迫をする。隙はない!」
 そう高らかに言い放つとさらに加速しグロリアンの背後につく。
「あんな人でしたっけ……」
――うーん、いつもと少し違うような、違わないような……
 孤五郎は首をかしげるが、そんな暇ももうない、敵を射程距離内にとらえた。
 グロリアンは見れば、オリンピックの短距離走選手よろしく美しいフォームで実験場をかけている。
 その中に納まっている遙華は疲労でもうヘロヘロだ。
「走行状態からの精密射撃、なかなか難しいですが」
 そうスコープを覗く。だが。
――どうした? ゼン、照準は合ってるぞ。
「いえ、これは。ああそう言うことですか……」
 黒鉄は不意に視界にとらえてしまった遙華への配慮のため。スコープを握りつぶして捨てた。
――何を!
「いえ、邪魔だなと思って」
――ゼンにかかれば、スコープもなしにこれくらい簡単ということか?
「え? まぁ。はい…………。そう、ですね。ええ、そうそうそう、そうなんです楽勝です」
 何やら黒鉄は不穏なことを口にしつつ引き金を絞る。それは見事四肢に命中するが、耐久度が高いせいか、シールドのせいかはじかれた。
「遙華よ。鎧の行き先を制限するので、多少は我慢せよ。あと、流石にシェイクされ続けてマズそうじゃから回復する。わらわに心から感謝して色々と融通するのじゃ」
「しゃい、りゃかしましや。あああああ」
「いろいろとカメラで録画しておったりしてるが。いいかの?」
「りゃいじょーぶれふ」
「さっきエントランスにあった、でっかい霊石持って帰ってもいいかの?」
「りゃい」
「ふ……」
 手遅れだったか、そう悲しい笑みを浮かべるカグヤ。
 並走するカグヤのアルスマギカからケアレイが飛んだ。スキル強化能力があるのかもしれない。遙華は一瞬で正気に戻った。
「は! あの霊石はだめよ! あれを海中から引き上げるのにどれだけ手間取ったと! あれ? というか私は何を、っていうか、何でこんな状態!」
 遙華が叫んだ直後。
「私と一緒に魔法少女やろうよ!」
 そう頭上から声が降る。
「その声は、澄香ね」
 真上を見上げてみればそこには、理夢琉と澄香。
 不敵な笑みを浮かべながら遙華を見下ろしていた。
「澄香?」
 遙華は気づく、二人の目が一昨日食卓に並んだ魚のように濁った眼であることに。

  *   *

「いいぞ、順調に追い込まれている」
 ポイントAつまり射撃場付近で『メイナード(aa0655)』そして『麻生 遊夜(aa0452)』は待機していた。
 おニューのライフルは二人の心を躍らせ、無駄に装填しては排莢したり、各種パーツを念入りに眺めて見たりしている。
「さて、スコープの精度を見てみようじゃないか」
 そう意気揚々とメイナードは銃を構える。しかしすぐに目を離す。
「なんだ今のは」
 信じられないものが映っていた。
「色・フィナーレ!」
 スコープの先には澄香。彼女は周囲に色とりどりの魔法をばらまいている。
「正気の沙汰じゃない!」
「あははははは」
――澄香ちゃん煩い。出力は120%向上。次はスキルへの補正ですね
 確かにハイテンション魔法少女の存在はそれはそれで普通じゃないが、メイナードが問題視しているのはそれじゃない。
 見えるのだ、下着が。あっちを向いてもこっちを向いても。ハートレスアンカーのスコープを通してみた世界では、誰も服を着ていない。
 下着姿のままうつる。
「なんだ、これは……」
 冷や汗がメイナードの頬を伝う。しかし目は離せない。 
 特に、何だあれは、刺激が強いぞ! 澄香の今日の下着は黒だ!
 しかも紐みたいに面積が少ない。
 普段からこんなのつけてるのか!
 だとしたらけしからん!
「平常心よ、戻ってこい」
 そう願うメイナードの隣でうかつにも共鳴状態の遊夜がスコープを覗く。
「さて、最新技術を試させてもらうとしますかね」
「……ん、楽しみ、だねぇ」
 そう穏やかに笑う『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』
「いかん遊夜君!」
 そしてその時にはすでに遅い。
 もうすでにその目が引きつけられ、そして目が離せない。
 ああ、彼の目にも映ってしまった服が! 服が透けて見える!
 視線の先にはカグヤ。
 彼女は残念ながら肌襦袢着用だったので露出は少なかったが、彼女はこの場の女子の中で貴重な要素を持っている。
 それは大人の魅力。
「透過してるのか?」
――……ん、確かに透過してるねぇ
「……そうだな」
 カグヤはその視線に気が付いたのだろう、器用にライブスラスターで加速する中、セクシーポーズをとって見せた。
「巨乳死すべし!」
 澄香が拳を突き上げる。
「慈悲はなし!」
『Alice:IDEA(aa0655hero001)』もあわせて拳を突き上げる。
――……ん、下着姿だね、嬉しい?
 笑うユフォアリーヤ。しかし、明らかに声が笑ってない。
「……ノーコメントで」
 遊夜は頭を抱える、体の震えが止まらなかった。
 視線が共鳴中で、そんなもの本来ないはずなのに突き刺さる、どうしよう。
「……って。うああああ」
 突如メイナードが悲鳴を上げた。
「なんだ。いったい、どうしたっていうんだ」
 狂乱のメイナード、それに半狂乱の遊夜が続く。
 惜しまれるべきはスコープを覗いたままメイナードの方を見てしまったこと。
「うああああ」
 それもそのはず。そこにいたのはIDEA、いつものピッチピッチのボディースーツを着用しているわけだが、それがあかんかった。
「下着は透けないってはずだ!」
「肌襦袢でさえ透けないんだぞ、他の子も透けてないじゃないか」
「このスーツの下に下着なんて着込む隙間あると思います?」
 彼女は何か勝ち誇った笑みで二人を見ていた。
「まさか、そんな、はいてない!」
 保護者のメイナードですら知りえなかった真実が、今ここに発覚した!
「ぐおおお、なんだこれは。確かに透過してるけど欠陥品にも程がある!
女性がスコープに入る度に機嫌が悪くなっていく、俺の命も欠陥しそうだ!
男の下着姿が清涼剤とか勘弁しろよ、どのみち最悪なルート一直線じゃねーか!
これ、スコープ越しに見たら半裸のおっさんが下着姿の少女に組みかかろうとしてるように見えるんだぞ! 警察は何処だ!?」
「……ん、色々と駄々漏れだね?」
 いつの間にかユフォアリーヤが目の前に立っていて、微笑んでる。微笑んでるんだけど笑ってない。目の奥に謎の光がある。
「な。なんで……」
 遊夜が小首をかしげると、頭の上に乗ったアルスマギカが、ばさりと堕ちる。
「こっちも欠陥品かよ!?」
「これはもうやっていられない! 私は放棄させてもらう!」
「メイナードさん!」
「なんか、すごく楽しいことになってますね」
 そんな様子をそれこそハートレスアンカーのスコープで眺めていた蘿蔔は、冷静に思った。あそこにいなくてよかった。
「なるほど。これで潜伏してる敵、ヴィランズ拠点の見張りの配置や人質の場所、変装。果ては他人の生活、特殊な下着の着用等の性癖まで、丸っとお見通しなわけですね」
『レオンハルト(aa0405hero001)』が呆れた様子で声をかける。
――後半戦闘と関係ないじゃないか
「というか、特殊すぎる『はいていない勢』が現れるとは思ってもみませんでしたよ」
――……視覚共有してることは忘れるなよ……。あの、俺も事故は起こしたくない。
「じー」
 合流予定ポイントで待機している。理夢琉を見る。
「うさぎさんですか」
――やめろ!
「便利なものは悪用する人が現れますからねぇ、これどうなんでしょうね、はたして」
「さて、そろそろまじめにやりましょう。遙華の一大事ですし」
 そう言うと蘿蔔はハートレスアンカーを構える。そしてテレポートショット。ズドンと重たい音が響く。
 無数の的を塗って進む魔弾はグロリアンに的確に命中していく。
「障害物が透視できると、わりとなんでも狙えるんですねぇ」
 ズドン。
「ん~。威力が高いとやはり反動が大きいですね。」
「初めて扱うのもあるしな。普段使ってるのとどっちが当てやすい?」
 蘿蔔の攻撃に気が付いたのか盾を構えるグロリアン。しかしその隙間を狙う射撃に盾は意味をなさない。
「その調子で盾を抑えててくれると助かるのですよ」
 その裏側からも長距離射撃が飛ぶ。龍哉だった。
―― 問題点はあるようですけれど、性能的にはそう悪くはないようですわね。
 ヴァルトラウテは言う。
「そうだな、やっぱり透過は便利だしな」
 龍哉のスコープはぴったりと遙華を捉え続けている。
「あー、透けて見えるってのはこういうことか。とりあえずお嬢の下着はさておいて」
「やめてよ! さておかないで、不安になるじゃない!」
「お嬢、もうちょっと年相応の物をつけた方がいいんじゃねぇか?」
「冷静な批評なんていらないわ!」
 なんなんだよ、そう頭を悩ませる龍哉。
――女というものはそう言うものです。
 ヴァルトラウテが、諦めなさいと諭した。
 そして龍哉の放った弾丸がついにグロリアンの脚部を破壊。火を噴いた。
 あと少しで止められる、そう誰しも思ったその時。
「これ以上の暴挙は許さん、グロリア社!」
「まるで悪役!」
 どこからともなく躍り出たメイナードがグロリアンを取り押さえにかかる。
「うわあああ、悪夢が現実に!」
 遊夜の悲鳴、それを無視してメイナードは全力でグロリアンを抑え込む。
 脈動する筋肉、浮かび上がる欠陥、滲む汗。食いしばる歯、血走る眼。
「アレを止めるのは俺だぁ!」
 アルスマギカを装備しているわけでもないのにハイテンションになる龍哉。この場のおかしな空気に飲まれ、バルムンクを片手に突貫する。
「こいつは耐久力を試せば良いんだったな。お嬢、怖かったら目を閉じてろよ。すぐ、そっから出してやるからな!」
「わたしが怖いのは、むしろあなた達よ……」
「切りますよ、ちょっとどいてください」
 黒鉄が左右にスライドしながら接近、燃料タンク、バッテリーと言った急所部分を的確に切り裂いていく。
 しかし、ここで一つ問題が。
 突如上から降ってくる魔法少女、澄香と理夢琉がべったりグロリアンに張り付いた。
「いかん、君たち逃げるんだ!」
 こういう状況になれているメイナードが警告の声を上げる。
「お願い、澄香、正気に戻って……」
「私も一緒にいてあげるよ。サダカ」
――誰ですか!?
 クラリスが驚きの声を上げる。
「西大寺遙華の略です。一人ぼっちは寂しいものね」
「めが、死んだ魚の目になってる!」
「行くよ理夢琉……」
「同じ魔法どうしで検証すればいいんですよね! わかりました師匠!」
――理夢琉! 戻ってこい、お前まで魔法少女にならなくていいんだ!
「唯一の良心だったのに、何でこんなことに!」
 遙華が叫んだ。その時にはもう、二人は魔法を発動させていた。
 世界が光に包まれる。三千世界あまねく照らす極光が、グロリア社の隅まで届き、そしてその身に降りかかる熱量を感じながら。澄香は微笑んだ。

「 ひとりぼっちは、さみしいものね 」

 優しいその声が、遙華の胸に心地よく響いた。

   *   *

「遙華。大丈夫……ではないですね」
――俺が背負ったほうがいいんじゃ……
「少し揺れますけど我慢してください」
――爆発でのダメージはないだろう
「心に深い傷をおったから介抱が必要なんですよ」
 誰の声だろう、遙華は思う。朦朧とする意識の中記憶を手繰り、それが蘿蔔の声であることを突き止めた。
「蘿蔔……」
 目が覚める、ぼんやりとしか見えないが目の前には蘿蔔がいた。
 遙華はとても安心したように笑う。
「怖かったわ」
 よしよしと遙華の頭をなでる蘿蔔。
 そこにカグヤと龍哉がやってくる。
「お嬢、調子はどうだ」
 場所は医務室。柔らかいベッドの上に遙華は寝ていた。
「みんな、ありがとう、助けてくれて」
「まぁそれはよい、無事か? おかしなところはないかのう」
 医術にも長けたカグヤは手早く遙華を診察していく。
「で、これからどうすんだ? やめるか?」
 龍哉が実験停止の進言をする、しかし遙華は首を横に振った。
「いえ、まだデータをとり足りないと……」
 遙華は一つため息をつき、社畜がよく浮かべる諦めと自虐が混じった笑みを浮かべた。
「ロクトが言ってるわ」
 鬼だ、その場にいる全員が思った

   *   *

 暗い部屋の中にバンと音がし、ライトが灯る。
「これから質疑応答を始めます」
 そのライトの中心にはIDEAが、そして椅子にしばりつけられ、ぐったりとしたメイナードがいた、彼の顔にはアルスマギカが固定されている。
「カグヤさん始めてください」
「よいのじゃな、わらわは……ゴクリ。どうなるか知らんぞ」
 今から行う人体実験に興奮を隠せないカグヤは。アルスマギカに繋いだコンソールを器用に操作していく。
「あばばばばば」
「出力を上げてくださいカグヤさん」
「こ、これは、まさか次は俺なのか」
 遊夜は簀巻きにされて転がされていた。
 なぜこのような事態になっているかというと。
 睡眠薬や惚れ薬等を開発した人物に物申そうと探索、発見したはいいがIDEAとユフォアリーヤに睡眠薬を使われ捕獲に失敗、逆に捕獲されて二人は現在に至る。
「……お土産に睡眠薬をくれた、みんないい人」
 ユフォアリーヤが言う。
「おいおいおい、なんてことをしてくれたんだ。っていうか、これ生きて帰れるんだろうな!」
「……ん。大丈夫、優しくしてあげる」
 その言葉に、遊夜の本能が警告を鳴らす。
「おおおおお! IDEAさん、うちの子が悪影響を受けるからやめてくださいませんかねぇ!」
 IDEAはそんな声を無視して、カグヤに声をかける。
「出力あげてくださーい」
「よかろう、出力330%」
 直後メイナードがガタガタ震えはじめた。
「おおおお、オーソドックスに、お尻が! 好きです!」
「なんか口調までも変わってる、これ絶対やばいって」
「ほかには? ほかにもあるでしょう、だっておじさん女の子を見る時、視線が同じところを行ったり来たりしていますもん」
「……ん、すごい、見習わないと」
「うちの子に変なことを教えるのやめてくださいませんかね!」
 そんな話をしているすきにどんどん出力は上がっていく。
「もう勘弁してください」
 メイナードが言った。
「と、言っておるぞ、どうするIDEAよ」
「出力を上げてください」
「あばばばばばば。あと! 太ももです!」
「ほかには!」
「わきも好きです。大好きです!」
「これ以上はやめておこう。これ以上はまずい、あ……」
「あ。ってなんだよ!」 
 遊夜の額に冷や汗が流れる、そして彼に向けられたカグヤの満面の笑み。
「止まらぬ……」
「ええええええ! メイナードさーん!」
 技術進歩のための犠牲が、また一人増えた瞬間だった。
 
  *   *

「ん?」
 場所は実験場、そこで理夢琉とバルムンクを二本使った戦闘実験を孤五郎は行っていた。
 そんな孤五郎がふと、耳をピクリと動かして遠くを見る。
「どうしたんですか?」
「いやね、悲鳴が聞こえたような気がして」
「ああ、ほのぼの空間はいいわね。もうドタバタ空間はこりごりよ」
 そんなわけのわからないことを言いながら。遙華はバルムンクを振るう全員をみて回っている。
「AIですか……」
 蘿蔔が興味深げに振るうと。
『きちんと目標に向けて振るいましょう』
 そう言葉が返ってくる。
「接近戦は素人だけど、剣が補佐してくれるなら有り難いね」
 そう澄香と蘿蔔は、えい、やー、たーと剣をぶつけ合う。
 二人とも普段は剣を全く使わないので、持ち方からしてカワイイ女のスタイルになっている。
『右斜め45度に構えてください』『五秒後、直線の攻撃を予測』
 そんな風にアドバイスが出ても二人はとっさに反応できない。
『三秒後、下から切り上げ……チッ』
「あれ? いま舌打ちが聞こえたような」
 澄香が言う。
「気のせいじゃないですか?」
 蘿蔔が言う。
――もっと踏み込んで。というかそもそも剣の持ち方が……
 レオンハルトはへたくそな蘿蔔をいっぱしの剣士にしようと指導を重ねるが、一向に上達しない。
「こ、こうですか?」
――銃を撃つときと変わらないぞ、インパクトの瞬間だけ力を入れて。
「こうかな?」
 その指示をきいて澄香も真似をしてみる、まるでダンスを踊っているように二人はリズムをとりながら剣をぶつけ合った。
『っていうかなんだよそのへっぴり腰、もっと重心を前にだな』
「え? 今のレオン?」
「俺は何も言ってないぞ」
 蘿蔔は黙って剣を見つめる。
『へたくそ!』
 澄香も剣を見つめる。明らかにさっきから音声アナウンスがおかしい。
「気のせいだよね」
「そうですよね」
――ほら、また持ち方が違う。そんなにもち幅が狭いと振りづらいだろ。
『なんだそんなに筋力ないのか、腕立てしろ。ほらくるぞ直撃コース!』
「黙ってもらえません!? 目の前の攻撃くらい自分で見極めてみせますって!」
 そう蘿蔔が叫んだ瞬間。
『いまだ!』
 澄香のバルムンクが叫んだ。それに合わせて剣を振るうと、見事蘿蔔の頭に命中。
「あいた」
 蘿蔔は首をふる。
 のーかんのーかん
 そう言う。たいして澄香も首をふる。
 わんかんわんかん
 二人の心に火がついた。スキルも使ったガチバトルに発展していく。
「バルちゃん後でいっぱいナデナデしてあげるから痛くても頑張るんだよ?」
 その二人の隣で理夢琉は剣を手玉に取っていた
『え、ちょ、おれは別に……』
『いいなぁ、いいなぁ!』
「おいおい、剣の相手だけじゃなくて俺の相手も頼むぜ」
 そう龍哉が言う、彼を対戦相手に、双剣の扱い方を黒鉄が見る手はずだ。
 そして剣が素直にナビゲートすることもあり、なかなかの戦闘力を発揮する。
『俺たちも何だったらあっちの方がよかったな』
『なぁ、変わってくれよ』
 たいして蘿蔔と澄香の剣は素直ではなく。
「うるさいです」
 しまいには剣を投げ捨ててしまった。
「耐久度調べないとね!」
 澄香に至っては岩にガンガン叩きつけるしまつ。
――アイドルがそんなことしてはいけませんよ
『ぎゃあああああああ』
 こちらの実験もてんやわんやのうちに幕をおろした。
 
  *   *

 一通り実験が終わると一同は会議室に通された。そこでレポート作成、報告会を行っていた。
「西大寺さん、大変だったね。でも、メールありがとう。頼ってもらえて嬉しいです」
 澄香が言う。
「こちら。レポートです。後、お土産にございます」
「ああ、ありがとう、ってこれ『お姉さま聖水』って……」
「なんで持ってきたのぉ!?」
 澄香が叫んだ。
「西大寺様、広告係として、こういった方面での展開は如何でしょう?」
「駄目だよ!」
 そんなやり取りを続けている脇でロクトはまじめにカグヤの話を訊いていた。
「アルスマギカじゃが、多機能性はいいが使用者が魔法を選択する専門知識が必要な為、一般能力者は扱いきれないじゃろ」
「ふむふむ」
「情報が使用者の意識を圧迫するので、尋問用に器具に作り直すとよいと思うぞ」
「ああ、尋問したのね、理解したわ。あ、それと。映像データは置いて行ってね」
「……いくら出す?」
 不敵に笑いあう二人、大人の戦いが始まった。
「はぁ……疲れました」
 ひとしきりレポートを書き終えた蘿蔔が進言する。
「そうだ、この後皆さんでお茶しません? 意見交換も兼ねて」
「いいわね、それ、じゃあ経費で落とすからみんなでご飯に行きましょう」
 そう遙華はバスの手配をしに廊下へ出る。その隙を狙ってクラリスがロクトに耳打ちをした。
「それと、今回の西大寺様のお姿、是非映像として公開すべきです。消費者の為に最前線を往く、気高きトップの姿なのですから」
「はい、もちろんです」
 ロクトとクラリスは笑顔で握手を交わす。
 本当であればこのあとの食事会でも、アルスマギカの影響が残った人とたちで一悶着あるのだが。
 これはまた、別のお話。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 危険人物
    メイナードaa0655
    機械|46才|男性|防御
  • 筋肉好きだヨ!
    Alice:IDEAaa0655hero001
    英雄|9才|女性|ブレ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 汝、Arkの矛となり
    五郎丸 孤五郎aa1397
    機械|15才|?|攻撃
  • 残照を《謳う》 
    黒鉄・霊aa1397hero001
    英雄|15才|?|ドレ
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