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【白刃】大規模作戦慰安旅行インW&H諸島

昇竜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~15人
英雄
12人 / 0~15人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/01/07 15:30

掲示板

オープニング

●大規模お疲れ様でした!

 生駒山を舞台にした大規模作戦は終了した。

「激闘を生き抜いたエージェント達に束の間の休息を」

 こうした声より、H.O.P.E.は幾つかの協力企業に協力して貰い、エージェント達へ慰安旅行をプレゼントすることにした。たった1日の休暇であっても命を洗い、生き残れた喜びと、次の戦いへの決意を。H.O.P.E.の配慮を受けたエージェント達はそれぞれ、慰安旅行へ申し込むことに。

●新たなる戦場へ

 年末? そんなものあなたには関係ない。

 賭博……それは季節も時間も問わない聖戦――ホーリーウォー――。

 H.O.P.E.から軍資金として与えられたチップは3枚。これをいかにして増やすか、それがあなたがたに与えられた任務(ミッション)だ。気合いの現れとしてか、はたまた忘れただけか、あなたがたは誰一人として財布を所持していない。そう、ギャンブるしかないのだ。

「皆さぁぁ~ん、大規模作戦慰安旅行インW&H諸島へようこそっ♪ 私は観光案内人、気軽にバズガとお呼びくださ~い!!」

 W&H諸島とは太平洋に浮かぶ絶海の諸島である。都会の喧騒から離れ、バカンスを優雅に過ごしたい……そんな富豪たちの願いを叶えてくれる、近年頭角をあらわしてきたリゾート地だ。バックボーンにはAGW開発などに欠かせないライヴスストーン鉱山などが関連しているわけだが、そんなことは今回どうでもよい。一行がやってきたのは諸島最大のカジノ『グランドライトハウス』である。

「ご存じの通り、この島はヴィランズの支配するキレイな無法地帯でございますぅ。イカサマにはトンでもないリスクが伴いますのでご遠慮あそばせ!」

 やたらせくしぃでウルサイ添乗員が乗っているのも慰安のうちだろうか。彼女は物騒なことを言っているように聞こえるが、確かにここは海賊が統治する特殊な島。霊石の供給を受ける代わり、H.O.P.E.はこの島でのヴィランズの台頭をある程度黙認している。とはいえセレブご用達エリアであることからも分かるように、治安自体は非常に良い。

「私共……ゴホン、ヴィランズの定めた法を侵さなければ、素晴らしいゲームとお酒が皆さまを心尽くしに歓迎させて頂きますわ! 飲みすぎたおバカさんは帰りのフェリーにぶちこんでやるますからお覚悟を! ホホホ」

 どうやらカジノのバーは飲み放題のようだ。このぶんなら、夜通し楽しく遊んで何不自由なく明日の昼まで過ごすことができるだろう。

●と、思いましたか?!

「ざぁんねん、皆さまにはこれから明日の昼までこの中で飲まず食わずで過ごして頂きますわ! ああ、飲み放題ですから、正確には空腹だけガマンして頂くということですわね!」

 この世の贅沢の限りを尽くしたようなカジノの内装にハシャギ倒す一行に告げられた衝撃の真実。ある者はやっぱりな……と己の幸運Eを呪い、またある者は夕方5時を示す時計などを見て既に空腹を訴える己の腹具合に絶望する。

「ホホホ、H.O.P.E.に平身低頭で頼まれたからと言って、私共海賊が……ゴホン、この島の観光協会がほぼ無償でお前らを招くなんてそんな甘っちょろいコトあるわけがないのですよ! 腹が減ったなら稼いだカネでレストランをご利用くださりやがれ!」

 ああ、億万長者への夢が遠のいていく……だが、あなたはここで死ぬわけにはいかない。何としても今夜の食費ことセレブ価格のレストランでの夕食代を稼ぎ出し、生きてこの島を脱出しなくては。

「あらあら、ひもじそう~な顔をしますのねぇ、心が痛みますわぁ。そんなバズガから素敵なアドバイス、グランドライトハウス一階テラスは海に面しておりますの。幸いここは常夏の楽園、寒くないですから釣りでもしてサバイバルに挑戦してみてはいかが?! 優しいバズガが釣り竿を用意しておきましたわ、ホホホホホ」

解説

概要
慰安旅行でカジノに来ましたが、お店選びを間違えたようです。食事を提供する気がないようなので、軍資金(チップ3枚)を使って食費を捻出し、生きて帰りましょう。飲み物は無料、種類豊富です。

目標メニューと必要チップ数
・とりあえず死ななければいい!(パンやブイヤベースなど)=5枚
・折角だから良いもの食べる!(牛ヒレ肉ロッシーニ風やトリュフパスタなど)=10枚
・豪遊する!(VIPルームでフルーツタワーとか付ける)=30枚
※支払いはチップのみとなります。所持金がないものとします。

ゲーム
・バカラ(2d13)
AサイドとBサイドにトランプ2枚を配り、どちらの合計値が大きいか予想するゲーム。合計値は一の位だけを見る。(13+13=2「6」よりも、8+9=1「7」の方が強い)
倍率は同サイドに賭けた人が多ければ下がり、少なければ上がる。タイ(引き分け)に賭ける場合は8倍。
・ルーレット(1d37)
回転する円盤に球を投げ入れ、0~36の何番の穴に落ちるかを予想するゲーム。
倍率は以下の通り。0が出た場合、賭け金は全て没収。
数字1種(1~36):36倍
数字2種(連続する数字):18倍
大中小(1~12、13~24、25~36):3倍
前後(1~18、19~36):2倍
奇数偶数:2倍
・スロット(1d100)
ボタンを押して同じ絵柄を揃えるだけの簡単なゲーム。めんどくさい人向け。
絵柄(目標値)と倍率は以下の通り。
チェリー(40):2倍
ヘルローチ(20):3倍
スリーセブン(5):7倍

注意事項
・ゲームは簡略化されており、実際とは異なります
・ベットはチップ1枚から可能です
・ドレスコードあり(H.O.P.E.からレンタル可能)
・未成年の方は釣りしてみましょう(観賞魚みたいなのが多く釣れますが、一応食べられます)
・成年者の釣りは難易度上がります。また、ゲームをする時間はありません
・イカサマやATM利用は命取りです!!

リプレイ

●行きはよいよい

「樹、樹ー」
「? どうしたの? やっぱり釣りは嫌だった?」
「んーン、そっチはだいじブ。あのネ……ハイ」

 フェリー客室にて。佐倉 樹(aa0340)がドレスに着替えていると、シルミルテ(aa0340hero001)はシルクハットから三角形でフカフカしたものを取り出して両手に乗せ、笑顔で差し出してきた。泰然とした満面の笑み。悪びれること何一つないといった満面の笑み。

「「……」」

 談話室では、守矢 亮太(aa1530)が前日を思い返す。

『え!? また勝手に申し込んだの!?』
『今度は大丈夫ヨ!! ホープ主催慰安旅行ヨ!! 大変な事ニならぬアル!』

 例のアレの挽回を目指し、李 静蕾(aa1530hero001)はまたもやらかしていた。守矢と違って李は深紅のチャイナ・ドレスで上機嫌だ。

「デジャヴを感じる」
「グラサンもあるヨロシ、準備万端ネ。財布忘れたくらい何カ」

 いやな予感に守矢はショートパンツの膝を抱いた。ときにカトレヤ シェーン(aa0218)のイブニングドレスは大胆なデザインだ。今宮 真琴(aa0573)は彼女や奈良 ハル(aa0573hero001)の艶やかさに感嘆の声を漏らす。

「わぁ、みんなもハルちゃんも綺麗だねぇ……カトレヤ姐さん色っぽい……」
「高級カジノだからな、正装しなきゃな。紅花、用意出来たか?」

 カトレヤは全身黒で統一されておりとてもセクシーだ。彼女が呼びかけると、王 紅花(aa0218hero001)がカーテンをバッと開けて姿を現した。彼女のチョイスは黒地に赤い紅花柄の振袖、かなり着崩していて目のやり場に困る。カトレヤは得意げな王を客室へ追い返した。

「どうじゃ、きまっておるじゃろ」
「着替えろ、俺がコーディネートするぜ」
「な、何故じゃ!」
「バカンス、楽しみだねーハルちゃん!」
「ん、まぁ疲れを癒すのも仕事のうちじゃからな」

 今宮は奈良ににっこりと笑いかけた。男性陣の客室からは真壁 久朗(aa0032)と齶田 米衛門(aa1482)が現れる。真壁はスーツに革靴と至ってスタンダードな正装。セラフィナ(aa0032hero001)とスノー ヴェイツ(aa1482hero001)も一緒だ。齶田は備品の新聞に真壁の写真を見つけ、ふと思う。

「やっぱ、真壁さんは大物っスね」
「……?」

 真壁は彼が何を見たのか気付き、仲の良い友人に笑った。

「ヨネのおかげだろ……お前が傍にいてくれて良かったよ」

 齶田は苦笑する。もっと頼ってほしいのに、彼は頼らせるばかり。齶田は真壁をもう何言われてもやろうってなる位に信頼している。真壁もまた彼を自身の右腕のように思っている。二人はまた一歩互いの心の深い所まで歩み寄れた気がした。戦いを振り返る彼らの傍へ、エナメルパンプスがかつかつ近づく。

「お待たせ。くろー、なに?」
「……お前なんか胸腫れてないか? 大丈夫か?」

 佐倉は尊大な笑みを浮かべ、宿敵の弁慶の泣き所をガッスと蹴り上げた。声なき悲鳴をあげうずくまる真壁。イブニングドレスをきちっと着こなした佐倉、なんだかんだ胸パッドもしっかり着用中。ただし本人は別に貧乳を気にしてなどいない。

「でも胸ネタは有罪なんスね」
「ヨネさんなにか言いました?」
「樹……それ化粧か?」
「そうだけど?」

 彼女が華やかなメイクをするのは珍しいようだ。彼女と真壁は気楽な間柄、なんだかんだ本当にずっと一緒だった。そして今日も。

「……なんだかお前、いつも横にいるような気がするな」

 ふと思い出したように真壁は言った。さて、佐倉のパートナーは大好きな友人の姿を見つけてそちらに駆け出していく。

「セラフィナー! スノーチャン!」
「おっ、来たなちみっこいの!」
「わあ、どうしたんですかその頭?」

 シルミルテは自慢(?)のうさ耳を目の固いリボン結びにされ、口をタコのようにしている。理由は言わずもがな。

「よしよし、手製のパインオレンジ飴をやるぜ……真琴もな!」

 子供好きのスノーはシルミルテと、後ろで物欲しげな顔をしていた今宮にも飴を渡した。彼女、実際は真壁と齶田を見ていただけである。視線の先にいる二人は顔を見合わせた。佐倉は奈良の毛並みに興味深々。

「オイ最近、身の危険を感じるっス」
「自分の思うままに生きてる感じが……敵わないよな、本当」
「え、腐女子?」
「言ってねえよ!」
「すごい……今日、超もっふもふ」
「嬉シいンじゃなイ? みんな帰っテこれたカラ」

 シルミルテが言うと、誰ともなく笑顔が零れた。ここにいるのは、生駒山で共に戦った仲間たちだ。

●いい話だと思いましたか?!

 残念、かくかくしかじかでサバイバルなのであった! 全貌を聞いた守矢と李は「またかー……」と両手を組み頭を下げて落ち込み、Alice:IDEA(aa0655hero001)は悔恨に震える。ただし、メイナード(aa0655)は別の意味で拳を握った。彼の中ではメリットが上回ったようだ。佐倉は彼をしっかり者だと思っていたが、時折はっちゃけてることに今頃気付いた。

「わたしとした事が……! ヴィランな上に乳のデカい女な時点で疑うべきでした……!」
「えぇっ酒が飲み放題だって!? イャホゥ」
「騙されたー! 俺ちゃん超お腹すいたー!」
「……まあ、賭け事は好きじゃないから調度良いか」
「釣りでもしてくるでござるよ。御神殿、伊邪那美殿馬鹿はほっといて一緒に行くでござる」
「いいよ行ってきなよ。覇気の無い二人に代わってボクが豪華食事を手にしてみせる」
「何言ってる、見た目子供が賭博場に入れるわけないだろう……千颯、悪いが伊邪那美の代わりに遊んでやってくれないか」

 御神 恭也(aa0127)は伊邪那美(aa0127hero001)のチップを取り上げ、それを虎噛 千颯(aa0123)に渡して白虎丸(aa0123hero001)とテラスの方へ出ていく。

「ふん、神の一柱たるボクの手に掛かれば幸運を呼び寄せるなんて簡単な事なんだから」
「伊邪那美ちゃん本当は何歳なの……とりあえず、どこに賭ける?」
「ルーレットで奇数、偶数、偶数、奇数の順に賭けてね。チップが10枚になったら……」
「ちょ、待っ、メモ……賭け事熱くなるタイプだったんだ?」
「チマチマ掛けてたんじゃ見返りも少ないからね、常に総チップの半分を賭けて。目指すは40枚、恭也と二人で豪華な食事を楽しみたいんだ。じゃあ、ボクは外から見てるから」

 カジノフロアは海を臨む大パノラマだ。虎噛は先に預かりものを何とかするためルーレットへ。シックな三つ揃いのブラウンスーツを着た虎噛は黙っていればそれなりで、女性客が何人も振り返る。ただし、今宮の興味はアレだけだ。

「なんか様子おかしいと思ったら……」
「なんとまぁさばいばるな感じじゃのぅ。まぁこちらはまかせとけ、お主も頼むな? 無理せんように」
「……大丈夫! 大きなマグロ釣るよ!!」
「マグロは無理じゃな」
「釣りやったこと無いけど教えてもらう! んでマグロ!」
「だからマグロは無理なんじゃよー」

 今宮が異常なこだわりを見せるその傍で、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は肉に対するそれを発揮していた。尻尾をブンブンされて麻生 遊夜(aa0452)もたじたじだ。

「……お肉!」
「やってくれるぜ、リーヤはもう肉しか目に入ってねぇっつうのに」
「……ん、お腹すいた」

 そして麻生を見るのだ。ジッと見るのだ。レストランの肉料理を目撃してからずっとこの調子である。

(ギャンブルは性に合わないんだがな……失敗は出来ん)

 外したら喰われる。色んな意味で。仕方ない……麻生はブラックスーツのネクタイを引き上げた。リーヤの黒ドレスのリボンは緩めてあげる。

「……やーん」
「ま、これなら行けるかね? 動きにくいだろうが肉まで我慢だ」
「麻生サマ、残念ですけれど彼女は入れませんわ。公共の場所ですから」
「わかってるさ。一人で行動……は、出来そうにないな。ほれ、行くぞー」
「……ん」

 入口で観光案内人に止められ不満気のリーヤにやれやれと息を吐きつつ、麻生は英雄を抱き上げた。今日ばかりは無礼講、甘やかすのもいいだろう。リーヤはちょっと嬉しそうにして、大人しく幻想蝶へ戻った。

「……慰安旅行、なんだよな?」
「エージェントはいつでも前途多難ですね!」
「一難去ってまた……か。ヨネ、俺はスロットに行くぞ」
「よくわがらねぇんで、オイはルーレットで。球が入る所を予想するんスべ? んなばオイでも出来そうッスな」

 麻生に続くのは齶田と真壁。セラフィナは多難など何のその、初南の島にワクワクだ。彼がシルミルテとテラスへかけていくのを見送り、佐倉は受付の前を過ぎる。

「これはこれは佐倉サマ、麗しゅうございますわぁ」
「どーも。通っていいですか?」
「いけませんわ。書類では未成年となってますもの」
「……」
「樹。どうした?」
「ダメだって。だからコレ、施してあげる」
「そうか……あいつら頼むな」

 案内人に阻まれ、佐倉は仕方なく真壁にチップを贈与し英雄の後を追った。紫紺の旗袍を着た宇津木 明珠(aa0086)はその横を通り、案内人に問う。

「生魚のダメな方もいるやも知れませんし、寄生虫などの危険もありますので、調理をしたいのですが、お手を煩わせるのも申し訳ありません。ですから、こちらが自由に調理出来る所をお借りしてもいいでしょうか?」
「構いませんわよ。無論、制限はありますが」

 この交渉は旅の仲間のためであり、宇津木自身は薬を飲むための水さえあれば食事はどうでもいい。が、金獅(aa0086hero001)は彼女よりよっぽど人間らしい感覚を持っていた。

「ええ、結構です。金獅は島を散策に。釣りが出来る程魚がいるのなら、岩礁があるはずです」
「はぁ? 俺は腹減ってんだぜ、飯食いてぇ」
「そこで魚を獲ってきて下さい。獲り方は任せます。あぁ、もし面白そうなモノを見つけたら教えて下さい」
「……いいけどよ。ガキ、何企んでやがる」
「然様、この島では我々が絶対ですわ。ワガママは御慎み下さいまし~」
「……仕方ありませんね。金獅、釣り竿を」

 微笑む案内人は目が笑っていない。勝手なことをさせるつもりは毛頭なさそうだ。彼女同様、六万 唐津(aa2368)とキオーン ジャーマ(aa2368hero001)もアダルト組。

「あー、何だ、騙されたなぁ……ワシ、ギャンブルだけは苦手なんだがよ」
「ふむ、貴様は馬鹿なのだから遊べばいいのではないか?」
「んだと? ま、その通りだわ……んじゃま、素寒貧になるかね」
「我も巻き込むな、一先ず酒を貰おう」
「お? 飲み放題か! 酒飲みながらやろうぜキオ!」
「……たまには良いか、唐よ、珍しいのを持って来い」

 六万は先にバーに辿り着き、所狭しと並ぶ酒を背に相方に向き直った。

「珍しいのだぁ? ……お前にとっちゃ全てが珍しいんじゃねぇのか?」
「確かに」

 頷くキオーン。カウンターでは李がルビー・カシスを煽っているが、その香も嗅いだことがない。

「モこうなりゃ稼ぐアル!! 目指すはVIP、いざ行クヨ!!」

 だが李はその前にこのジュースを守矢へ届けなければ。彼女は入口の近くで皆に追いついたカトレヤらとすれ違う。王は深紅のイブニングドレスに着替え、小物も赤系だ。

「赤か。まぁ、これならのう。さっきの方がきまっておると思うがのう」
「あれじゃ極妻だぜ。飯抜きって言うけどな、俺は酒が飲めりゃかまやしないぜ」
「何を言う、賭け事は女子の嗜みじゃ。女は度胸じゃ」
「美しいお嬢さん、僕とご一献いかが?」
「うむ、よかろう」

 王はカトレヤと店内見物を楽しむうち、いつの間にか店の奥へ消えて行った……

「っておい、こら。知らないおっさんについて行くな!」
「お、おおうぅ」

 カトレヤがいなかったら危なかった。彼女は王の首根っこを捕まえカウンターまで引っ張っていく。クール黒ドレス美女と奔放赤ドレス美女の登場にバーテンダーはどんなカクテルでも任せろと咳払いしたが、カトレヤの注文は男前だった。

「バーボン、ダブルで。いいか。このチップ3枚、おまえに任すぜ。ルーレットにいって、前後か大中小ぐらいにしときな。いいか、ボールの動きをよ~く見るんだぜ」
「我にまかせるのじゃ!」

 去る王を後ろから見ていると、どれだけの男が振り返るか面白い。とても目が離せないので、カトレヤは監視がてら酒を楽しむとする。空のロックグラスが置かれると、バーテンダーが二度見した。

「おかわりで」

●ギャンブる

 ルーレット卓。虎噛は伊邪那美の言う通り4枚目を奇数にベットした。1回は勝ったがこれを外せば全部スッってしまう。前後の後に賭ける李も同様だ。ディーラーが球を投げ、いざ運命の刻。カラカラ……11番。全ロスした李は膝をつき、手で顔を覆い天を仰いだ。

「ジーーーザス!!!」
「伊邪那美ちゃん、いい勘してるなー」

 テラスに手を振る虎噛はこのときまだ知らなかった、彼女の本当の実力を。一歩引いて眺めるのは既にチップを失った齶田と王、二人とも全て偶数に賭け最速一文無しコースである。横にいるのはキオーンだが、彼は負け犬ではない。

「カトレヤの言うとおりにするのは癪じゃと思って……面倒くさいのもあったが、我は偶数が好きなのじゃー……」
「割れる数って単純で好きなんスよ……ストレート負けしても、オイは偶数が好きなんスよ……」
「キオ……んだこのチップは? まさかお前、」
「勝ったぞ。球が落ちるのを予測するだけとは他愛ない遊戯だ。我は次に全部5に賭けるが……」

 キオーンはバニーガールからドイツリキュールのトレイを取り上げると、たくさんのショットグラスの一つを自分で煽り、一つの上にチップを3枚乗せて六万に渡した。

「あちらの卓が気になるのだろう。行ってきたらどうだ」
「へっ……お前のはビギナーズラックってやつだぜ。やってやるよ、5枚でいいな? 生きてりゃ良いんだ、生きてりゃよ」

 六万は口数少ない相方の挑戦に乗り、酒好きに任せてガンガン飲みまくった。ただでさえ声がデカいのに笑い上戸も加わって煩いし、潰れにくいのに翌日がひどい。それを分かって飲ませる方もアレだが。片っ端から飲み散らかし、六万はバカラへ。王はバーへ戻ることにし、齶田は酒豪たちを見てひとりごちた。

「もっと長く楽しみたかったがのう……仕方ない」
「いいもの食いたかったスな……へば、折角だし酒っこ飲みでぇ」

 彼もまた酒が好きな男。ちなみに酔いは早いが、若いので翌日に引きずったことはない。ときに正直どうでもいいと思っていたキオーンの方がゾロ目2種賭けで18倍を叩き出すあたり、物欲センサーは実在するのだろう。一方バカラ卓はなんとまあポンコツ揃いだ。まず六万は不運に自覚があるらしく、天地がひっくり返っても勝ちは巡ってこない確信がある。

「頭使わなくて良いんだろ。頭脳なんぞ物凄くツイてないワシには関係ないな! デカイ方に賭けまくるぜ!」
「ふむ、要はどっちが大きい数値かを当てるのか……考えるのはメンドイな。全部引き分けの8倍狙いで行くかの」

 奈良の考えでは軍資金は即霧散必至である。もちろん間もなくそうなるのだが、彼女にとっては外のテラスにいる今宮を肴にタダ酒を呑むことの方が重要だった。

「真琴は……頑張っておるようじゃの。見よメイナード、真剣な眼じゃ……可愛いもんじゃのぅ」
「イデアも一緒だね。何か怒ってるみたいだけど、気のせいだろう。あぁ、素晴らしい……私にとって最高のリゾートだよ! どれ、気分転換にそろそろ勝負しようかな」

 メイナードはぐびぐび飲むが、こう見えてタバコもクスリもやらない、泥酔状態でもないと賭け事はしない男だ。彼はようやく気分が良くなってきたのかテーブルにチップを置く。恐るべきは傍の空瓶の量である。その頃スロットコーナーでは麻生がカクテル片手に括目していた。ぽちぽちぽち、チェリーが揃う。

「よしよし、悪くねぇな。目押しは得意だ、稼がせてもらうぜ……!」

 麻生はギャンブルが得意ではないが、今日は必死だ。色んなものがかかっている。手堅く10枚は欲しいが、出来れば大当てして皆とVIPルームで豪遊したい所だ。せっかくの旅行だし、それに……フルーツタワーならぬ肉タワーでリーヤのご機嫌取りがしたい!! だから彼はこの困難を酒の勢いで乗り越えてしまいたかった。しかし残念なことにしばしのち、彼に残されたのは2枚のチップとほろ酔い気分だけ。

「……ゲームを変えるべきか? やれやれ、他の人は稼げてんのかねぇ?」

 ふと周囲を見回すと、野次馬のいる一角がある。息抜きに観戦しに行くのもいいかもしれんな、と麻生は席を立つ。覗いてみると、中心にいたのは他でもない真壁であった。2回目のスリーセブンを射止めた彼のスロットマシンはびかびか光り輝いている。

「お、俺はただ……セラフィナにまともな飯を食わせたくて……」

 彼には何の面白みもないと思っていた人もいるが、真壁のチップは20枚を越えている。彼は佐倉から施しを賜っていたので元手も多かったのだ。思わぬ注目を集めて変に喉が渇いたのか、彼はボーイが運んでいたノンアルコール・カクテルをひょいと取って一気に飲み干してしまった。実は本当のカクテルだったのだが気が付いていないようだ……いたたまれなくなったのか違うゲームへ移動するも、人ごみも一緒に動く。麻生もルーレット卓まで連れてこられてしまった。戻るのも面倒だ。

「好きな数字を選ぶのか……どれが良い?」
「……ん、26。その前に、6」
「OK……さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 麻生はテーブルにチップを置き、ごくりと生唾を呑む。幻想蝶から、リーヤがクスクス笑うのが聞こえてきた。

「……ん、この数字が取れないはずがないの」
「? ……ああ、」

 そういえば、6、26は俺の誕生日だ。麻生はリーヤの考えに気付き、遠い目をした。……外したら機嫌悪くなるんだろうなぁ……
 ルーレットが回り始める。傍では30回まわし続けた末にベットを降りた虎噛が、ガラス越しに伊邪那美に泣きついていた。

「俺ちゃんもうやだよ! 呪われてるんじゃないのっ?!」
「うーん、悔しいけど6枚で手を打つよ」

 彼女のチップは大きく増えることはなかったが、黄泉比良坂伝説の如きしつこさで絶対になくならなかったのである。一方でバカラ卓までやってきた真壁は、佐倉の言葉を思い出していた。

『基本的に全部勘だけど……』

 そう言って、彼女はバカラの勝ち筋予言メモを残していたのである。もう飯は確保も同然、あとはどれだけ増やすかだ。真壁は佐倉の勘を信じてチップを置く。騒ぎを聞きつけてすっかり出来上がった齶田と見事破産してヤケ酒を煽るメイナードもやってきた。

「いやぁやっぱギャンブルなんてやる物じゃないね! しかし意外だよ、久朗君がラッキーマンだったとは」
「真壁さん~~スロット? ってのはもういいんスか?」
「こ、こんな事ならヨネのとこで鍋食ってた方が良かったかな……ああ、ヨネ」
「ハイ!!」
「こういう場所は落ち着かないよな……?」
「はい?」
「……体はもう大丈夫そうか?」

 真壁は大規模で重体になった齶田を気遣っているようだ。いや嬉しいのだが、タイミング等諸々おかしい。齶田がまさかと思った瞬間、真壁はえづいて床に崩れ落ちた。さすがは超下戸、もう酔いが回ってきたのか今にも泣きそうだ。

「あっは、大丈夫だが?! 返事ばせじゃ久朗!!」
「お、おれ……おれはあっ……」
「ぷっ、あっはっは! 医務室……はねぇべし、もう適当にどっかで飲むべさ! メイナードさん、あとはよろしぐ頼むっス!!」
「ええっ私かい?」

 酔っ払いに介抱されつつ、真壁は公衆の面前で恥を晒す前に退出していった。ざわっ……! 彼に代わり、バカラ卓には新たな伝説が舞い降りる。

「ふ……二択ならばこの選択の魔術師と呼ばれた俺ちゃんの力、みせてやるぜ!」

 彼がそんな名で呼ばれたことは一度もないが、自信だけはあるようだ。と見せかけて目標はチップ10枚とチキ……手堅い。ただ伊邪那美のために円盤を見つめ続けたせいか、お酒が大好きなために高級シャンパンをたくさん飲んでしまったせいか、正常な判断ができていないようだ。

「バカラ必勝法見えたぜ! これは両方に1枚ずつベットすればいいんだぜ! そうすれば片方が負けても片方が勝つから勝率は同じ! ふっ……我ながら天才的なひらめきだぜ!」

 タイが起こる事もベット数が多い方がかった場合戻りが元手以下になる可能性も考えていないのだろうか。後継者メイナードと虎噛との闘いが幕を上げたが、終幕は早くも4ターン後に訪れた。

「これが俺の最後の一枚……女神よ俺に微笑め!!」

 ベットの少ない方に賭けた虎噛だが、ディーラーが彼の前に配ったカードは相手サイドより弱い。ああ目の前でチップが消えてゆく。

「お……俺ちゃんの飯が……白虎ちゃん! 白虎ちゃんはどこー! 俺ちゃん死んじゃう!」

 虎噛は釣りをする相方を探して駆け出したが、グラスを持っていくのは忘れない。一方女神はメイナードに大爆笑、チップは無事に30枚を越えた。とっくにルーレット1種賭けでスッていたキオーンが、とっくにバカラ爆散していた六万に問う。

「あの下戸男はなぜ酒を口にしてしまったのだろうな」
「そりゃお前、人見知りが注目浴びててんてこまいになっちまったんだろう」

 ……そのカンの鋭さがなぜ博打に活かされないのか。一方バーでは不貞腐れていた王がやっと機嫌を直し、カトレヤに話しかけたところだった。

「……結果を聞かんのか」
「高笑いが聞こえなかったからな」
「ハッハッハッハッハ、我に感謝するのじゃな。フィーバーじゃ! とかやってみたかったのに……」
「『ははぁ~』って平伏させたてみたかったのか? もう飲め。飲んで、腹をふくらませろ」
「そうじゃ、左手を腰に、右手を高らかに挙げてな……くそっ。全部、空けてやるのじゃ!」
「お酒なら炭酸割りを飲むと高い満足感が得られますよ」
「……聞いたか」
「うむ」

 二人に飲み物を勧めたのはカウンターの反対に座っている宇津木だった。彼女はトランプの山から一枚引き、それを表に返す。

「High――私の勝ちですね。慣れないゲームはどうも。分かりやすいゲームにして下さってありがとうございます」
「いえいえ、美女の願いですから。3回だけなのが残念です。砂糖と卵、でしたね」

 艶っぽい宇津木にバーテンダーの鼻の下は伸びきっている。彼女が持ち掛けたのはハイアンドロー、カードを引いて2枚目の数字がが1枚目より大きいか小さいかを当てるだけの簡単なゲームだ。対価としたのは彼の職権が許す範囲にある食材である。

(食事の確保、簡単でしたね……あとで調理しに行くとしましょう。うちの英雄が面白いモノを見つけられれば、もっと交渉の余地があったのですけど)

●釣り

「まったく、まったく! おじさんったらホントにもう!」

 折角のバカンスがメイおじさんと離れ離れな上、空腹でご機嫌ななめのぷんすかイデア。メイナードは酒をかっくらって楽しそうなのでますます面白くない。イデアは竿を投げ出し、御神に釣りを教わる今宮の方へ行ってみる。

「あ、イデアさん」
「釣れません……つまんないです」
「うん……でも、いきのこらなきゃ。それにしても、釣りする人が随分多いね。恭也さんは?」
「……賭け事をするよりはのんびり釣りをしていた方が性にあっている」

 御神は釣果が悪い場合は銛から手作りして素潜りも視野に入れていたが、幸いにも魚は釣れた。黄色や青のいかにもな熱帯の観賞魚ばかりだが、まあ食べられるだろう。

「恐らく伊邪那美はおけらになるだろうから最低でも二人分は確保しないとな」
「おけら?」
「一文無しという意味だ」

 チョコバーをもぐもぐしつつ、今宮は御神をすごいと思った。釣りもできて物知りだ。ふと見ると部屋中で奈良がこちらを遠目にしている。今宮が手を振ると、彼女はますますにやにやした。

(ハルちゃん頑張ってる……ボクも頑張らなきゃ。でも、これで本当に釣れるのかな?? ハルちゃん鯛好きだもんなー釣れるかなー)

 実際には奈良は別の事に夢中なのだが、今宮は彼女に好物の海鮮を食べさせようと必死だった。御神が沖の魚を狙っている影響で、慣れない手つきながらぷひゅっとルアーを投げるその姿の健気さ。

「そういえば、樹さん大丈夫だったかな? お化粧すればダイジョウブっていってたけど。ボクもお化粧すればあんな風になるのかなー……っ」
「はぁ、おじさんと一緒ならきっとこの時間も楽しいのに……真琴さん、どうしました?」
「あ……え……なんか動いてる! 動いてる! どうしよう!?」
「きたか。慌てるな、巻け」

 わたわたする今宮を御神がアシストし、また一匹がざぱーと釣り上がった。その瞬間、近くにいた白虎丸が括目する!

「来た! ……でござる!」

 と言っても被り物のせいで分からないのだが。彼は召喚者のギャンブラーとしての腕前には毛ほどの信頼も抱いていない。釣りこそ生命線だ。糸を垂らし、かかる迄微動だにせず待つ――そしてこの一瞬に、全てを込める!

 ちゃぷん。

 釣り糸からは餌だけが綺麗になくなっていた。何故だ……小物でも、食べられればいいのに。一方守矢は静蕾の持ってきてくれたジュースを一気飲みし、ジャケットを脱いで気合いが入っていた。彼女の分もご飯を作らなきゃ……ただ、釣りはしたことがない。隣の白虎丸を見よう見まねで針に餌をくくり、海へ投げ入れる。その涙ぐましい努力を無下にする魚はなく、彼の竿にはすぐ手ごろな大きさの獲物が掛かった。

「釣れた! やったっ!」

 守矢は魚から針を外すのに四苦八苦しつつも嬉しそうに熱帯魚をバケツに入れ、鼻歌交じりに釣りを続ける。テラスの端の砂浜には佐倉が座っていた。近くでシルミルテがセラフィナと貝殻集めに興じている。うさ耳は結ばれているとすこしへちょっとしてやや元気が足りなかったのだが、セラフィナが解いてくれてからはいつも通りぴんぴんしている。ぱしゃぱしゃと波をかきわけるセラフィナの気分は海水浴だ。それでも互いの能力者を案ずることは忘れない。二人はこそこそと耳打ちしあう。

「あの2人、こういう場所でも相変わらずでしたね」
「そうダネー。樹、せっカく化粧シたのニ」
「あっ、お魚! このお魚なんでしょう、綺麗ですね」
「本当ダ! きらきラしてル!」

 シルミルテは魚を追いかけて、セラフィナは一休み。佐倉の横にちょこんと腰かける。

「クロさん、大規模作戦のときからずっといっちゃんいっちゃんって言ってますよ」
「へえ、どんなふうに?」
「そうですね……『背中から思いっきり爆風当てたり、超重力の中でぶん投げたり……あいつは俺の事物扱いし過ぎだろ』とか」
「うんうん」
「『あの後しばらく首が動かなかったんだぞ』とか」
「そっか……じゃあ縁起担いで今度から大きな戦いの度に爆風当てたり投げたりすることにしよう」
「アーーッ! 樹、セラフィナ返しテ!」
「はいはい。遊びもいいけど、そろそろ料理しなくちゃね」
「お腹空かせたクロさん達の為にも、張り切ってやらないと! ですね」

 佐倉が釣果の入ったバケツを持って立ち上がると、セラフィナに抱き付いていたシルミルテはそっと一歩離れたが、敢えて止める気はないようだ。そこへ釣りには速攻飽きていたスノーが呼びに来る。

「おーい、ちみっこたち。キッチン押えてくれた人がいたんだぜ! オレは食い専なんだ、早く捌かせろ、飯食わせろ~」
「それは良かった……スノーさんはカジノは?」
「アレは駄目だ、うっかり掏っちまうからなぁ……んな事より、大物釣れたか?!」
「大物というほどのは……」
「ナイネェ……」
「かとは思ったよ。飯作るんだったら適当に手伝ってやるぜ」
「え、お料理されないんですか?」
「できるからってやる必要ねぇだろ、めんどくせぇしな!」

 スノーは旅経験があり、サバイバル料理も得意なのだ。テラスへ戻ってくると、伊邪那美も御神のところに帰ってきたところだった。それからおけらになった虎噛。

「大見得切っといて6枚でした」
「そうか……たぶんだが、俺達は賭け事には向かないんだ。気にするな」
「うん……神はボクを見放した」
「自称神で、日本神話における創造神に当たる存在じゃなかったか?」
「渾身の冗句を真面に返さないでよ……余計に悲しくなるから」
「何と言うか……すまん」
「えっこれしか釣れてないの?! 俺ちゃんの飯は?!」
「千颯のぶんはないでござるな……」
「あ~千颯、こちらは伊邪那美の勝ち金があるから、魚を貰ってくれるだろうか?」
「こっチもイッパイ釣れタヨ。みンなでワケッコ!」
「み、みんな……!」
「御神殿……シルミルテ殿……かたじけないでござる」

 一行はバケツを手に手にキッチンへ向かって行った。守矢もその後を追おうとして気が付く、彼は料理もできないのだ。調理風景を思い出しながら頑張るしかない……守矢をチラッと見て、スノーはその肩にぽんと手を置いた。金獅も釣りを終え、バケツの中から稚魚を掴んで海に戻す。しかし、見れば見るほどに派手な魚である。

「小さいのはでかくなったら食ってやるからな。こいつらどんな味すんだろうな」

 料理はスノーが未経験の少年やダークマターをサラッとフォローして食える物にしてくれたので特に問題はないだろう。中でも白虎丸とシルミルテのためらいなく手慣れた魚捌きはすごかった。

「マダ、魚ノ形してルだケマシだヨ」

●ディナータイム

「景色がいいね! いやぁよかった、イデアが餓死しなくて」
「もう一歩も動けないほど瀕死でした」

 メイナードはまだ飲んでいる、そろそろお店の人が泣くかもしれない。VIPルームでは子供たちが入れないため、真壁の稼ぎによってこの砂浜を貸し切りにしたのだ。結局全部スッた麻生だがリーヤに魚を食べさせることができ一安心だ。が、首を傾げられると及び腰になる。

「何とかなったか……俺の運も捨てたもんじゃねぇな」
「……ん、お肉……ないの?」
「……すまん」
「……そう、じゃぁ喰べていいよね?」
「……やっぱギャンブルなんか、するもんじゃねぇな」

 クスクス笑うリーヤに麻生はやれやれと息を吐く。虎噛は白虎丸に勝手に料理を配分されて絶叫しているがグラスは放さない。そして宇津木が運んできたお菓子に今宮が色めく。

「ひゃっほー飯だ飯だ! じゃんじゃん食うぜー俺ちゃん腹減ってたんだー! 飲めや歌えでレッツパーリィーだぜー!」
「うむ、美味でござる。千颯の分も皆に分けておくでござるよ」
「ぎゃー! 白虎ちゃん何で?! それはもうこの間プーホーでやったネタでしょ! 俺ちゃんお腹すいてんのー!」
「!! メレンゲ……!」
「即席ですけれど、どうぞ。金獅、魚の味は?」
「……白身だ」
「慰安、かぁ? これ?」
「骨休めとやらにはなっただろう」
「次はどこ行こうかね、相方さんよ」
「愚問だな。どこだろうが我は行くと知っての質問か、唐よ」
「へぃへぃ、んじゃ適当に行くかね」

 キオーンと六万は少し離れたところに座って酒を飲んでいる。へべれけな六万の明日が心配だ。李は守矢が一生懸命頑張って作った魚料理に涙が出そうになる。セラフィナの壊滅的料理スキルに日夜晒されているであろう真壁は泣いている。

「ごめんヨ……負けちゃったネ」
「しょうがないよ。お魚食べよ?」
「……ソネ! いただきますスルネ!」
「クロさん、小骨、取っておきましたから」
「セラフィナの料理が……食べれる……」
「……なんか楽しかったね。また釣りやりたい、いこう?」
「とんだ慰安旅行じゃったが……魚食えるのなら依存は無いな」
「ちょ、ハルちゃん人前!」
「まぁ気にするな」

 奈良に抱きしめられて、今宮は顔を真っ赤にした。それを眺めるいつもと違った装いの佐倉を、齶田はずっとぺっぴんさんだと思って見ていたのだが……最後まで見ているだけに終わりそうだ。スノーはもう明日のことを考えている。

「なんだかんだで乗り切った。それでいいじゃない」
「次はなんにすっかなぁ」
「なんでも、これからも、よろしくお願いしますッスよ!」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 暁光の鷹
    王 紅花aa0218hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • 危険人物
    メイナードaa0655
    機械|46才|男性|防御
  • 筋肉好きだヨ!
    Alice:IDEAaa0655hero001
    英雄|9才|女性|ブレ
  • 我が身仲間の為に『有る』
    齶田 米衛門aa1482
    機械|21才|男性|防御
  • 飴のお姉さん
    スノー ヴェイツaa1482hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • エージェント
    守矢 亮太aa1530
    機械|8才|男性|防御
  • エージェント
    李 静蕾aa1530hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • エージェント
    六万 唐津aa2368
    機械|40才|男性|防御
  • エージェント
    キオーン ジャーマaa2368hero001
    英雄|28才|男性|ブレ
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