本部

プーホー業界マルハダカ第三回

昇竜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/12/17 22:08

掲示板

オープニング

●「さあやって参りました、天宮すみよしのプーホー業界マルハダカのお時間でございます!」

 金曜夜のとあるチャンネルでは、ライヴスリンカー番組『プーホー業界マルハダカ』が放送されていた。この番組はまだまだ怪人的・超能力者的な偏見の残る『ライヴスリンカー』という存在を身近に感じてもらうことを目的として制作されたバラエティ番組だ。MCを務める天宮はシャイニーズ事務所所属のライヴスリンカーアイドルである。観覧席に集まったのは主に天宮ファンの女性たちだ。

●「師走だよ! 今年も残すところ一か月、と!」

「年忘れですからね、今月は忘年会企画で行くと聞いてますけども? 本日の企画、じゃじゃ~ん」

 天宮がお馴染のシールボードからめくりを剥がすと、観覧席からはキャ~という悲鳴があがった。現れたのは『くそみそすごろく』の文字である。天宮はMCの必需品、ピコピコハンマーを手近なADめがけてぶん投げた。が、ADはそれを素早く回避しカンペを繰り出す。

「てめぇな! 人の黒歴史ほじくり返して楽しいか、あぁ?! え、ナニ? "年末なので初心に立ち返ってパンスト被ってください"? 年の瀬に見たいかそんなもん!!」
『見た~い!!』

 観覧席からそんな歓声が聞こえたので、天宮は四つん這いになって涙を呑んだ。説明しよう! くそみそすごろくとは、エグい罰ゲームが目白押しの耐え難いすごろくである。天宮は不遇時代の深夜番組で毎週コレをやらされていた。お気づきの方もいると思うが、天宮のファンはファンというか腰の低いいじめっ子である。

「俺悔しいっ……! 彼香クンは今頃音楽番組出てるのにっ……なんで俺ばっか!」
「天宮さん、天宮さん」
「……え?」

 声をかけたのは古株スタッフだ。深夜番組時代はADだったが、今はディレクターだ。思えば罰ゲームにストッキング被りを導入したのも、タバスコ洗顔や激マズジュースを提案したのもこいつである。諸悪の根源が"巻きでお願いします"のハンドサインをする。

「チクショウ覚えてろよ! それでは本日のゲストこちらの方々ですどうぞ!」

 天宮のゲストコールはいつになく投げやりだ。

解説

概要
TV番組に出演し、番組を盛り上げてください。

企画内容「くそみそすごろく」
全部で40マスあり、うち罰ゲーム20マス、ご褒美10マスです。(残りは一回休みなど)
誰かがゴールマスに止まらない限り永遠に続きます。同じ罰ゲームに何度も止まることもあります。
心身ともにズタボロになって、最後に一言コメントしましょう。「なんて日だ!」とかですね。

罰ゲームの一例(詳細はPL情報です。突然スタッフに取り押さえられ、執行されます)
1ストッキング(頭から被り、終了まで脱げません。どんな美男美女もパンストの前には無力です)
2タバスコ洗顔(洗面器に顔を突っ込みます。しばらく涙が止まらないでしょう)
3ゲキアツ闇おでん(何が出るかはお楽しみ。アチチ!とか言ってる場合じゃないかも)
4サルミアッキジュース(甘さとアンモニア臭に噴き出そうとも許しません。イッキコール付き)
5萌え?(~だからぁ、~なのぉ、~でしょお?、ンモウ!と喋る。ぴんくツインテのカツラ付き)
6赤ちゃんプレイ(ダァー!、ウ~、ビエー!、ママァ~!と喋る。よだれかけとおしゃぶり付き)
7筋肉男(突然現れた青いツナギの男と強制ポッキーゲームをさせられる)

ご褒美の一例
1銀座高級寿司(甘エビ、ウニ、マグロなど)
2永田町ホテルブレッド(クロワッサン、イゾセルなど)
3麻布高級焼肉(シャトーブリアンなど)

天宮すみよし
マイページもありますが、詮索されるのは好きではないようです。

リプレイ



 虎噛 千颯(aa0123)と咲山 沙和(aa0196)の足取りは軽いが、白虎丸(aa0123hero001)とシュビレイ・ノイナー(aa0196hero001)は辟易している。

「いえーい! 天宮ちゃんこの間俺ちゃんいなかったから寂しくなかったー?」
「むしろ清々していたでござろう」
「そ、そうそう、煩いのいなくってせーせーしたよ……そちらのお嬢さんは、どこの深窓の令嬢かな?」
「ちわっすー咲山沙和だよー。こっちはパートナーの英雄シュビ君」
「うわ俺見る目なさすぎ?」
「アハハ、あまみ~ってば何言ってんの?」
「……俺はテングウだけど」
「ダサ~いあまみ~の方が絶対いい~」
「オーケー顔面詐欺女と鬼畜眼鏡ね、バッチリ覚えた」
「違います」
「そうだよーシュビ君は超愛想無くてマジ陰険眼鏡野郎だけど、ええっと……多分良い奴? だからねー。よろよろー」
「最悪の紹介ですね……訂正させていただくと私はシュビ君等というふざけた名前ではありませんので。シュビレイです」
「一回出てみたかったんだよね~プ~ホ~毎回見てて~ノリで受かるとは思わなかったし~ヤバイ嬉しいみたいなー」
「私はこの女に勝手に書類を送られていました。もう既に帰りたいです」

 ワクテカする咲山に対し、シュビレイの冷ややかな視線は標準装備だ。まるで死んだ魚のような濁った目をした彼の心中はさっさと終わらせてさっさと帰りたいの一言に尽きる。同じような目をした男がもう一人いた、そうツラナミ(aa1426)である。

「……また、ここか……」
「3回目……レギュラー?」
「止めろ。マジで止めろ」

 相変わらず無表情で言う38(aa1426hero001)に訴えるもそれは現実逃避でしかない、証拠に彼の表情は全てを諦めきっている。黒髪に染め伊達メガネをかけ、セーターとジーパンという何時も通りのだるだる姿が余計にくたびれて見えた。天宮はお馴染サヤのファッションチェックに入る。

「サヤちゃんは今日コートなんだね!」
「寒い……から」
「ああ、なんつったか。あー……」
「天宮……さん」
「そう、天宮くんだ。あんたも大変だな、このメンツで……ごくろうさん」
「ツラさんが良識的なこと言ってる……だと? しっかしオジさんは、またそんなもの着て」
「えへへー、来ちゃった♪」

 三鷹 オサム(aa1522hero001)はルンルン声だ。『天宮激LOVE』と書かれたハッピを着た彼の横で鵠沼 龍之介(aa1522)は英雄を睨み付けすぎて白目を剥きそうになっている。

「天宮さん……俺がこいつを抑えますから、もしもの時は全力で逃げて下さい」
「え? 俺狙われてんの? ちょ怖い怖い……っと、ごめんね!」
「あっいえ!」

 にじり寄る三鷹から逃げる天宮は守矢 亮太(aa1530)にぶつかりそうになった。目がパッチリしていてはつらつとした印象の彼だが、緊張しているのか耳が赤い。

「初めまして、だよね。天宮澄良です。名前は?」
「も、守矢亮太です、よろしくお願いします!」
「あ~最近難のある少年にしか会ってなかったから癒されるわ~。そちらのチャイナなお姉さんが英雄さんかな?」
「ソウヨ、李静蕾言うネ! 今日はよろしくヨ!! この番組好きデよく見るネ……確かあれヨネ!」

 李 静蕾(aa1530hero001)は笑ってカメラに手を振ったので、天宮は油断した。その隙を突いて李は天宮にぐいっと近づくや否や壁際まで追い詰め、後ろの壁に勢いよく手を着いた。ダァン!

「っヒ……」
「天宮さんにカベドンするのヨネ!」
「じ、静蕾多分それ違うと思うよ」

 李は突然のことに硬直する天宮の顔を覗き込み、シニヨンから零れた碧髪が彼の頬を擽った。守矢は李の服を引いてやめさせたが、スタジオは笑いに沸く。そんな中一人黙々と思考に耽ってこそ枦川 七生(aa0994)である。

「ふむ……双六とは一番早くに上がるのが勝ち、というのが前提の遊戯の筈だが」
「先生、お願いですから次に依頼を受ける時は僕に相談してからにしてくださいね」

 キリエ(aa0994hero001)の言葉が彼に届く日は来るのだろうか、その視線は眼前の遊戯に釘付けだ。聡い彼は知っている、今回のような場合ゴールへの到達は勝利条件でないと。

「いや、勝利条件には変わりないのだろうが、目的としては勝敗を決めるというよりも……。キリエ、どう思う。この構成、罰ゲームマスにより多く止まった者が勝ちだと言われているようにも」
「そんなもの糞食らえです。何が何でも一番にゴールしましょう、先生」

 キリエが何時になく殺気を漲らせるのも無理はない。

(こんな罰ゲーム先生にさせられない、とは言え僕がやると言っても絶対嫌がる。落ち着け……考えろキリエ、どれだ、どこが先生にさせられるギリギリラインだ?!)
「あの、キリエくん。取り込み中悪いんだけど、そろそろ始めてもいいかな?」

 天宮に言われ、盤面を熱心に見ていたキリエはハッと我に返った。枦川はそんな英雄の様子にひとつの結論を見出す。

「ああ、成程……良いだろう、勝利に貪欲な事は悪ではない。何が何でも勝つ、そう言いたいのだな」
「先生……やっと僕の気持ちをわかっ」
「お前も罰ゲームを体験し、その何たるかを理解したいのだろう。馴染みない経験だ、私も是非とも……キリエ? なに怖い顔をしているんだ」

●「ジャンケンポン。順番はチーちゃん、咲山サン、ツラさん、守矢クン、龍ちゃん、センセ、俺だね」

「ちょっと待って、こんな番組だなんて聞いてないよ」
「あれ、言テなかたケ?」
「出演自体、今朝聞いたのに」
「ワタシもすごろくまでは知らなカタネ、マ大丈夫ヨ!」

 静蕾はノリノリだが、亮太は苦笑いだ。天宮はキリエが呪文の詠唱を止めないので心配している。

「いける。定期的にご褒美マスを踏み先生の口に物を詰め込み無駄口を封じる。あの人罰ゲームだったらどうせ何でも良いんだ、それでもだめになってきたらあの辺りの猫耳とかモノマネとか……やれる……やれるぞ僕……ここで負けるわけには」
「キリエくん、大丈夫?」
「最初は俺ちゃんだぜー! えいっ」

 虎噛の投げた大きなサイコロがコロコロとスタジオを転がっていく。出た目に従い、天宮が謎の絵が描かれた虎噛の駒を進めた。虎噛は白虎丸ゆるキャラ推し営業に余念がない、テレビ出演をいいことにこれでもかとPRする。

「一回休みかぁ、しょっぱなから幸先悪いねー……てゆーかナニこの絵?」
「フフフよくぞ聞いてくれました、それはH.O.P.E.非公認ゆるキャラの白虎ちゃんだぜ! 天宮ちゃんも白虎ちゃんが公認される様に応援してなー!」
「だから俺はゆるキャラでは無いと言っている! 千颯はいい加減にするでござる!」
「本人嫌がってるじゃん……」
「次はあたしだね~、ぽいっ……ゲゲーッ何これサルミアッキ? あっちょっれでぃーを取り押さえるなんてアンタら……?!!」
「不本意ながら聞いたことがあります、確か北欧の薬草菓子でその臭気は塩化アンモニアによる……??!」

 咲山とシュビレイは番組スタッフたちによってナニを鼻先に突き出され、その猛烈なアンモニア臭に凄まじい拒絶反応を示した。二人とも涙を浮かべているが咲山のは泣き笑いで、シュビレイのは生理現象だ。観覧席からは息の合ったイッキコールが聞こえる。

『イッキ、イッキ、イッキ!』
「マジで? これ飲むの? ていうか飲めるの?」
『イッキ、イッキ、イッキ!』
「……!!」

 スタッフは有無を言わさずモノを二人の喉奥に流し込んだ。仕事と割り切りできる限り淡々と激マズ汁を飲み干すシュビレイだが、仰け反らされた喉は否応なくゴクゴクと鳴る。それを見て咲山は笑いが止まらなかったので、溢れた褐色の液体が首を伝った。

「んぶっんぐぐっ……ンマッズい!」
「くっ……屈辱的な味ですね……!」
「次は俺の番か……」

 スタジオ大興奮の中ツラナミは賽を放ろうとしたが、サヤの無表情に喜色を感じ取り、その役目を彼女に譲った。サヤはサイコロを受け取って少し嬉しそうだ。出た目に従い、天宮がツラナミの駒をストッキングマスに置く。

「……あの、無理しなくても」
「そう思ってるのはあんただけだろうな」

 ツラナミはただただ無機質にスタッフに包囲されるのを見ていた。ズアッシュパァ! ……次の瞬間、ツラナミとサヤは頭からストッキングを被せられ、スゴイ面長の人みたいに変貌していた。着圧に表情筋が引っ張られまるで満面の笑みのようだ。天宮はブフーッと吹き出し、サヤの足元に崩れ落ちる。

「ごめ……っサヤちゃ、ごめ……」
「俺にも謝れよ」
「つ、次はボクだね」

 爆笑する天宮にツラナミは淡々とキレたが、サヤは楽しそうだ。続いては守矢の番である、出目に従い彼の駒がタバスコ洗顔マスに置かれた。天宮は胸が痛み、守矢から目を逸らす。洗面器を持ったスタッフは無慈悲にもその背後に迫った。

「ごめん。俺には、どうすることも」
「え? え?」

 バシャア! 守矢が水音に英雄を振り返ると、李は真っ赤な洗面器に顔面をぶち込まれており、ザバァ……と顔を上げて今わの際を残した。

「コレ、辛イ……」
「じ……静蕾ーッ!」

 バシャア! ……その後しばらくはらはらと涙を流す二人を見て誰もが思った、ここのスタッフ人間じゃねぇ、と。三鷹の戯言に取り合いつつ、次なる犠牲者・鵠沼が賽を振る。

「ねえねえ、オジさんアレやりたいなぁ」
「ふざけるな、そんなことが……あって……」

 鵠沼がたまるか、まで言えなかったのは三鷹の祈りが神(メタ的な表現)に届いたからである。彼が止まったのは強制的に服装口調が男女逆転するその名も性転換マス。瞬時にスタッフに取り囲まれる鵠沼と三鷹。

「そんなバカな……お、俺は絶対にやらんぞ!」
「もー龍ちゃんてば、ほら、ルールだからルール♪」
「うぐっ……」

 その言葉に逆らえない鵠沼のタチを知ってのこの仕打ち、さすがは三鷹そこに呆れる反吐が出る。なし崩しに鵠沼は三鷹と共にスタッフによってメークルームに引きずり込まれ「なっ何をする!」「ヤメロ!」のような恥じらう声と怪しいBGMがスタジオを支配した。デーレレッテッテー・アーン! 謎のSEに続いて、鵠沼は三鷹の見繕ったロリロリドレスとガーリーメイク姿で観客の前に姿を現す。彼は解放されるや否やガクリと膝から崩れ落ちた。

「俺はもうダメかもしれない……父さん母さん、すまない……」
「龍之介クーーン!!」

 天宮が鵠沼を助け起こすも、容体は深刻なガチヘコみだ。無理もない、分厚い胸板を包むフリフリの胸元は今にも張り裂けんばかりに引き伸ばされて○○が見えそうになっているし、引き締まった男らしい腕はサテンのロンググローブに捻じ込まれてパンパンだし、チークも濃すぎてお世辞にも似合っているとは言い難い。いや全く似合っていない、これはひどい。

「そ、そこまで言わなくても」
「これ楽スィ~~♪ テンちゃんどぉどぉ? ちょっとはドキっとしたかな?」
「そんなわけ……あ、るか、」

 天宮は振り返って愕然とした。ヒゲを剃りハーフアップも下ろし、ワンショルダーのセクシーなドレスを着た三鷹は一見すると女性にしか見えなかったからだ。多少肩幅がある点に目を瞑ればモデルのようだと言っても過言ではない。

「すげぇ……」
「あーんそんなに見られるとオジさん照れちゃうっ」
「ええい、気持ち悪いわ!」
「あ~龍ちゃんが規律侵してるー。ダメなんだーちゃんと女の子言葉使わないと~」
「う、うるさい……のよっ」
「ふむ、次は私の番かね」

 サイコロは枦川の手に渡り、彼の出した目は守矢と同じ――その末路はタバスコ洗顔である。ガタッ! キリエは立ち上がった、今こそこの身体を張るときだ。

「スタッフの皆さん、僕はタバスコ濃度が2倍になろうとも……いえ、その上目の下にカラシを塗りたくられようとも構いません! どうか先生を助けてやってください!」
「何だキリエ、私は別に構わn」「お願いします!」

 最早キャラなどどうでもいい、このキリエ金髪の美青年()と呼ばれようとも先生には指一本触れさせない。触れさせないとも! 捕縛されたキリエのカッと見開かれた目の下に、容赦なくカラシがべっとりと塗られる。間髪入れずドロリとした真っ赤な液体で満たされた洗面器が彼の顔面を迎え入れた。

「っあ゛痛ッ! あっ痛! ワアあああ」
「な、ナンテ恐ろシネ……」
「オサム、罰ゲームが楽しいと言ったな? あれも狙ってみたらどうだ?」
「んーこれは医者に止められてるんだよね♪」
「いや都合よすぎんだろその身体!」
「まーまー、ホラ次はテンちゃんの番!」

 天宮は憮然としつつ賽を振る。ころころ……出かかった目は2であった。出目が2ならばご褒美マスだ、天宮がガッツポーズを決めかけたその瞬間、近くにいた三鷹がサイコロを軽く蹴り飛ばすのを彼は見逃さなかった。

「オイ今ちょっと蹴ったろ?!」
「え~やだな~テンちゃん、僕がそんなことするはずないでしょ~?」
「4カメさん! ねぇ! 4カメさん!!」

 一部始終を捉えていた4カメであるが、初手からご褒美など面白くない。訴えは無情にもスルーされ、天宮はツラナミと同じマスに止まって無事ストッキングを被せられた。くるりと振り返ったその圧縮顔面を見てスタジオは爆笑の渦。「天宮ちゃん不憫でかわいそう()」とは虎噛の弁。

「その含みのあるカッコはいらないよ!」

●第8周目

「って何でご褒美のお寿司白虎ちゃんが食べてるの!? 俺ちゃんのは!!?」
「千颯よくやったでござる。千颯の分も美味しくいただいておくから千颯はそっちを食べてるといいでござるよ」
「可笑しいですよ白虎丸さん! 俺ちゃんも食べたいー!」

 涙ぐむ虎噛は目隠しをされている……彼が入手したのは闇オデン。何も見えなくても、暴力的な熱気を放つナニカが彼に近付いてくるのが湯気で分かった。

「んあ゛っつぁ!! あっつ、熱いし口に入ってないって! ナニコレ甘っいやしょっぱ?! 白虎ちゃんNGだからって俺ちゃんだけって酷くない!?」
「うむ美味い。油が乗ってるでござるな!」
「次は沙和にゃんだにゃ! シュビにゃんサイコロ振るのにゃ!」
「うるさい、わかってますよにゃ」

 激熱ジャムちくわを執行される虎噛はストッキングを、猫化マスを踏襲した咲山とシュビレイは猫耳猫尻尾を装着済だ。多少恥ずかしそうな程度の咲山に対し、シュビレイは人でも殺してそうな顔をしている。放たれる殺気たるや普通ならやらせた側が申し訳なくなるぐらいなのだが、そんな神経の持ち主はプーホーには一人もいなかった。彼らを襲った新たな罰ゲーム、それは筋肉男だった。

「き……? うっ」
「シュビにゃーん!」

 一人羽交い絞めにされたシュビレイはケラケラ笑う咲山と突然現れた青いツナギの男に威圧の視線を送った。だが筋肉男は「やらないか?」とか言い出しそうなお面を付けているので効果はない。ポ○キーを咥えさせられたシュビレイの顔に照れなどなく、ひたすら不機嫌そうである。異様な光景だった、緊迫した雰囲気の中ポ○キーが両端からパキ、パキと削り取られていく。途中、シュビレイにはお面の中の人がハァハァするのが聞こえたので、あまりの不愉快さに咥えたモノをバキィとへし折ってしまった。その途端、観覧から『あ~』と残念がる声が聞こえ、絶対零度の視線がそちらへ向けられる。

「だーぶだぶだぁー? だぁーだぁーだぶあぶあぶ。あぶぶ」
「……何か問題でも?」

 観覧は一斉にブンブンと首を横に振りながらも、その横で赤ちゃんプレイするツラナミに噴き出すのを必死で堪えた。言われたままに辱めをこなす罰ゲーム処理機と化したツラナミ。恥ずかしがるなら笑えるところをこの男完全無表情である。シュールすぎる。何言ってるか分からないのがせめてもの救い、かと思ったら。

「こんな感じか? これ言ってることわかんの? 意志疎通できねえじゃねえかよ面倒くせえな……って、言ってる」
「ちゃあだだぶだぁー? あばぶぁー」
「お前、なんで分かってんの? 軽くドン引きなんですけど……って、言ってる」
「サヤちゃんは通訳しなくていいよ! ちょっとツラさんはご褒美パンを幻想蝶に放り込むのヤメて!」
「あうぶあううあ、ンママァ」
「固いこと言うなよ天宮くん……って、言ってる」
「ふええ、俺もうやらぁ」

 サヤはまるで新しい遊びを見つけた子供のように少し目を輝かせている。相変わらず協調性は投げ捨ててきたようだが、これぞ能力者と英雄のKIZUNAパゥワだろう。観覧席の腹筋が全滅しようとも収録は続く……束の間の幸福に浸るのは守矢と李、その表情は地獄で仏を見たような安堵と喜びが入り混じった笑顔だ。

「好吃! 高級焼肉はやっぱり最高アル!」
「本当。良かった!」
「次は僕の番ですね。ここで1を出せば一番で抜けられる」
「キリエ、お前はこれを遊んだことがないから知らないのかもしれないが、双六は」
「先生ちょっと黙っててください、ほら、闇オデンでもらったシュークルートでも食べて、ほら」
「む、ぐ」
「キリエくんんんキャベツ詰め込むのやめたげてぇ」

 忘れないで欲しい、キリエを止める天宮の頭にはストッキングが被せられていることを。結局この回で枦川はゴールを通り過ぎ折り返しとなった。ゴールマスぴったりで止まらない限り、このゲームが終わることは決してない。

●第14周目

 混沌――カオス――この状況はまさにそれだ。虎噛はピンクツインテセーラー服ござる女語尾と属性過多だが楽しそうなのでまだいい。問題はタバスコ塗れになっている咲山とシュビレイだ、高級寿司を頬張って嬉しそうに顔を輝かせる咲山の男装の麗人具合はともかく、異様に似合うオフィスレディ風に変身させられたシュビレイはものすごい三白眼で黙々と咀嚼を続ける。

「これんま~い!」
「タバスコのせいで味なんか分かりません……わ」
「どうどう、女装したうえ白虎ちゃんの真似する俺ちゃんも可愛くない? 何でも似合うとか超やばくな~いでござる?」
「お、俺ちゃん、瘉し系だし……でござる……千颯の真似は恥ずかしいのぉでござる」
「俺ちゃんまじ萌キャラでしょお~でござる?」
「いろいろゲシュタルト崩壊してみんなの性別ワケわかんなくなってきた」
「次はボクだね……」
「頑張るヨ、リョタ!」

 白虎丸は女語尾を全く使いこなせていなかったが、天宮にツッコむ気力は残されていなかった。ツラナミはサイコロを投げる守矢を見つつ頼むから早く終われと念じる。半開きの口とおしゃぶりの隙間から今にも魂が飛び出してきそうだ。同じ仕打ちを受けていても三鷹の煽りスキルは高い。サヤのエンジョイスキルも高い。

「あぶぅー。ばぶぅー。ばぶぶ」
「あ、はい。ソーデスネ。……いや、分かんねえよ。んな目で見ても分かんねえから。こっち見んな」
「しょおなんでちゅかぁ、サヤちゃんはおめめキラキラするくらいたのちいんでちゅかぁ」
「オチャム! おまえはどうしてそう火に油をしょしょぐような……大丈夫でちゅか、ツラナミさん。ツラナミさん? 生きてまちゅか?」
「アイヤ!」
「ううっ……」

 嫌がる守矢と李がストッキングを被せられ、これでほぼ全員ストッキングマンである。想像して欲しい、OLシュビレイもピンクツインテ虎噛も実はストッキングなのだ。かわいそうな守矢は幼稚園女児のコスプレをさせられて顔を赤らめているのにげっぞりとしている。先ほど食べた闇オデンのカイコがよっぽど堪えたのだろう、やせ我慢でなんとか食べきったが、思い出しても絶句する。

「後からクるタイプヨ、ヒドイえぐみダタネ」
「それにしてもテンちゃんはまた筋肉男でちゅか。筋肉男専用みたいになってまちゅねぇ」
「おほあ、ふひゃひほぉ」
「オジさんうるさいよ! ……って言ってる」
「………」
「私もやってみたい……じゃないです先生、ちょ、頼むから大人しくしてて、あー、もう!」

 口を押える守矢たちをよそに、これで5回連続筋肉男と当たった天宮の通訳をサヤが務めた。一方無言の枦川の通訳は満身創痍のキリエ。彼は枦川のためにあらゆる罰ゲームを必要以上に享受してきた。そんなキリエは今、ゴールにリーチをかけて賽を振る。2だ、2を出せば全てが終わる。もう何でもいい、何でもいいから早く終わってくれ!

「こいやァァァァァ!!!」

 その願いはようやっと天に届いたようだ。出た目は2、終わりを待ち望んでいた者は歓喜の雄叫びをあげた。ツラナミに至っては安堵のあまり泣いてたかもしれない。

「ウワアアアアアアアア」
「ぃやったぁ、やったよぉ」
「ふむ、遊戯に思考は時に悪手となる……と思ったのだが。これは興味深い結果だ」

 キリエが一番にゴールしたことで、エージェントたちに屈辱の極みを見せたくそみそすごろくは決着したのである。



「もう絶対来ねぇからな!!!」
「こら、キリエ。なんだ、いきなり大声を上げて」
「ねえねえ次回はいつ? もっとキワドイ罰ゲーム案があるんだけどぉ」

 キリエはかつらを床に叩きつけ、オサムはホクホク顔でスタッフとそんな話をしていた。まともな者はSAN値ピンチで満足に動けないほど疲弊している、特に最初から目がイッていた3人。

「俺はもう、何も考えたくない」
「そうだな……なんとなしだが、飲みに行くか?」
「いいですね」
「シュビ君、抜け駆け禁止~!」
「沙和は絶対に来ないでください」

 彼らの精神が負った傷は深い、回復には静かに飲むのが最適だろう。むしろあれだけガリガリSAN削られてよく正気を保てたなとツラナミが感心していると、サヤがその袖を引く。

「ツラ。これ、今度、うちで」「やらねえよ?」
「辛イも沢山有タけど面白カタあるネ!」
「次はちゃんと内容確認してから参加しよ、静蕾……」
「みんな……お願いだからホントまた来てね……!」

 まだ元気な李に力なく守矢が言い、天宮はストッキング姿のまま出演者に懇願する。彼らの哀れな姿は多くの視聴者の飯を美味しくし、視聴率は18パーセントの高水準をキープした。守矢が身長差を補うため恥じらい顔で筋肉男の胸倉に縋ってポッキーを食べた瞬間の視聴率は20パーセントを記録したが、コンスタントにキャラ崩壊をぶっこんできたキリエの活躍は特筆すべきものだっただろう。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 黒白月陽
    咲山 沙和aa0196
    人間|19才|女性|攻撃
  • 黒白月陽
    シュビレイ・ノイナーaa0196hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 学ぶべきことは必ずある
    枦川 七生aa0994
    人間|46才|男性|生命
  • 堕落せし者
    キリエaa0994hero001
    英雄|26才|男性|ソフィ
  • エージェント
    ツラナミaa1426
    機械|47才|男性|攻撃
  • そこに在るのは当たり前
    38aa1426hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 家庭派エージェント
    鵠沼 龍之介aa1522
    人間|27才|男性|攻撃
  • カレーな防衛アルコール系
    三鷹 オサムaa1522hero001
    英雄|35才|男性|ジャ
  • エージェント
    守矢 亮太aa1530
    機械|8才|男性|防御
  • エージェント
    李 静蕾aa1530hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
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