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広告塔の少女 ~霊石採掘の旅~
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休暇なのかー?
最終発言2015/12/08 02:04:24 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/04 20:35:48
オープニング
霊石をご存じだろうか。
ライヴスの触媒として極めて有益な特殊鉱石であり。
ライヴス出現後、これまで何の変哲もなかった石ころや鉱石の中には、ライヴスの伝播能力をもつものや、強いライヴス抵抗を示すものなどが発見された。
これらの特殊資源を総称して霊石、ライブストーンと呼称する。
この霊石を輸入するためにグロリア社は世界各国と交渉しているわけだが、この度問題が発生した。
「私もびっくりしたわ。だって、信じられる? 神話に出てくる龍が飛んできたかと思うと、船を掴んでもちあげてしまったのだから」
『西大寺遙華 (az0026) 』カメラの前で椅子に座り、その時の心境を厚く語る。
「そして私が唖然としている間に、その龍は船を掴んだまま飛び去ってしまったの」
ことの経緯はこうだ、
南アメリカのとある一体で大量の霊石が発掘され、その霊石を買いたたきに遙華が向かうと突如その付近にドロップゾーンが出現した。
そこから巨大な龍のような愚神が現れ、霊石をつみ終った船を持ち上げ、持ち去ってしまったのだ。
「けれどアメリカのH.O.P.E.支部もバカではないわ、ドロップゾーンが展開されることを察知したH.O.P.E.の戦闘員がすぐさま駆けつけて、龍を打ち落としたの、けどね」
その後が問題だった。船は海の上に盛大な音を立てて落ち、爪などで船体に穴が開いていた船は沈没。その大量の霊石は海底に眠ることになる。
「あれはまいったわ、思わず笑ったもの。でもね、実際それは笑い事じゃないの。あの霊石が届くことを前提に進められている研究がいくつもあるもの」
だからこそ、今回彼女はH.O.P.E.協力の元、霊石救出の特別チームを編成した。
「私達はこれから、海底に眠る霊石をとりに行く、失敗は許されないわ、この作戦次第で人類の未来が変わるもの」
そう遙華氏は語り、遠い目をはるか未来に向けた。彼女には見えているのだろう、この資源がグロリア社の手に入ることによってもたらされる輝かしい未来が。
「今回はそんな私たちの熱い戦いをドキュメンタリーとしてお送りするわ」
そうカメラに向かってきりっとまじめな表情を向ける。
* *
そんなワンシーンを撮り終えた遙華は楽屋に戻り鏡の前に座っていた。
「どうロクト。私ドキュメンタリー風に上手くやれたと思う?」
そう遙華は化粧を直されながら『ロクト(az0026hero001)』に問いかける。
「うーん、どうでしょうね。ただ一つ言えることは、海外ドラマの見すぎだと思うわよ」
「……ん?」
そしてハテナマークを浮かべる遙華。
「それにしても、よく考えたわね、足りないサルベージ資金をTVの協力を取り付けることで得るなんて」
「当然よ、私を誰だと思っているの?」
「そうだったわ」
そう遙華は小さく笑いこれから赴く南アメリカの海岸を思い浮かべた。
* *
ことの経緯としては、ほとんど遙華が説明したとおりである。
霊石を輸送するはずの船が愚神の襲撃を受けて船が沈没してしまった、その船に積まれていた霊石をサルベージするのが今回の任務である。
しかしサルベージ資金が本部から降りなかったのでロクトがTVの取材を受ける代わりに出資を募ったのだ。
その話が転がり転がって、結局はリンカーたちの霊石サルベージを主題として、ドキュメンタリー番組を作成することになってしまった。
その番組において遙華だけでは出演者が足りない。
なのであなた方に白羽の矢が立った、どうかお願いできないだろうか。
解説
目標 霊石のサルベージ
場所は南アメリカのとあるビーチから始まります。ビーチでバカンス中のリンカーや英雄たちの絵をとった後に、サルベージ作業に向かうリンカーや英雄たちをとるという二段構成です。
前半 プライベートビーチにて。
他の人は全くいない、あなた達だけのプライベートビーチです。海にもっていきたいものがあれば事前申告していただくとテレビ局が用意してくれます。太っ腹ですね。
テレビ局からのオーダーは下記の通り。
・水着の絵(女子は特に)
・みんなで仲良く遊んでいる絵(休日を海で過ごすような自然な感じで)
・普段こなしているミッションでの苦悩やリンカーゆえの苦労話
(こちらはインタビュー形式)
*補足 インタビュー内容はPLが作ってもいいです、こんな質問をされてみたいというのがあればぜひ
後半 深海にて
深海にはダイバーズスーツと酸素ボンベで潜ってもらいます。船の位置を特定し、アンカーを引っ掛けるだけであとは作業員が勝手にやります。
テレビ局からのオーダーは下記の通り。
・コバルトブルーの海に潜っての感想(カワイイおさかなや、イルカと戯れるような感じで)
・船への侵入シーン(慎重に、危険な船内に侵入するという心持で)
船ですが、入り口が無いので船体のどこかに穴をあけたりする必要がありますし、霊石の置いてある倉庫へのルートは番組的に面白いという理由で公開されていません。
さかさまになった船の中を探索してもらいますが、中には水で満たされた部屋もあれば空気のある部屋もあります。ちょっとした冒険感覚で探索してみてください。
ちなみに問題の愚神ですが、すでに討伐されていてドロップゾーンも消えています、従魔もいないのですが。
従魔がいた時のためという名目で皆さんが招待されています。
それでは任務という名のバカンスをどうか楽しんでください。
リプレイ
この海へは東京のプライベートジェットで離陸、近くの空港に着陸し、サルベージ機材と共に海路でここまでやってきた。
船のヘリに張り付き、興味深げに『Iria Hunter(aa1024hero001)』があたりを見渡している。
『ロクト(az0026hero001)』は今回のミッションの概要を説明しているそれを
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』、『R.I.P.(aa1456hero001)』『セバス=チャン(aa1420hero001)』『Arcard Flawless(aa1024)』が熱心に聞いていた。
「このビーチは入り江状になっているわ。生活必需品はこの船とコテージにあります」
『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』は局のカメラマンと一緒に機材の整備をしながら話を訊いている。
「撮影協力ありがとう雅さん」
「いいえ、こっちこそ。こんなリゾートただで来れる機会なんてないからね」
自慢のカメラセット一式を広げ点検をしている。
「さぁ、見えてくるわよ、あれが『クレセントガーデン』よ」
そう言った瞬間視界が開け、コバルトブルーの硬質な海の向こうに、輝くような白い砂浜が見えた。
新緑の森の鮮やかさが眩しく、近くにはしっかりした作りのコテージが見える。
「お嬢様がた島が見えましたよ、あと十分程度で下船できるそうです。準備はいいですか?」
そうクラリスがアナウンスした瞬間、船内の女子更衣室では歓声があがった。
「あらあら。楽しそう」
R.I.P.がうれしそうに微笑む。
「僕たちも着替えないと、おいでIria」
ArcardがIriaの手を引き船内への階段を下りる。
「ん?」
* *
そして船が到着する直後、はじかれるように船を駆け下りる少女たち。
『小詩 いのり(aa1420)』は一番乗りで駆け出した。
水着はアイボリーのホルターネック。腰の両サイドにリボンの装飾が付いている。
二番手は『アル(aa1730)』だった。水着色はエメラルド。たっぷりのフリルでキュートさが強調されている。
「青い空と海!」
それに続いたのは『西大寺遙華 (az0026) 』だ。彼女は水色を基調としたビキニ、それにパレオを装着している
「ボク寒がりでさ、一度で良いから常夏の国って所に行ってみたかったんだ」
突如アルは振り返り遙華を眺めた。
「……でも水着がなぁ……水着、うん……。何さあのワガママボディーは!!ボクからしたら皆相当ワガママだよけしからん!羨ましい!」
「そんなことを言われても…………」
困ったように遙華は頬をかいた。
たいして比較的おとなしい二人を見ておこう。『蔵李・澄香(aa0010)』は『魅霊(aa1456)』の手を取り、のんびりとした足取りで浜辺を歩いていた。
「まだなれないかな?」
「姉さん、なんで私はこんな恰好を?」
「可愛いでしょ?」
そう澄香は微笑む、二人はおそろいのデザインの水着を身にまとっていた。
澄香は薄いピンクと白の魅霊は黒と灰色の対になったデザインであり、二人が並んで歩く姿はとても絵になる。
そしてカメラが次の被写体を探している間に、一人の少女に視線を奪われた。
いのりだった。
浜辺で拾った貝殻を耳に当て、その潮騒を楽しむ。まるで海に包まれているような感覚、うるんだ瞳を海に向けると、その美しい瞳が淡い青色に染まった。
風が柔らかく吹き髪が流れる、それを抑え。いのりは立ち上がる。
「なになに?」
カメラが自分をとっていることに気が付き、いのりは微笑みを向けた。
そして画面にテロップが表示される。
Qアイドルエージェントってどんな感じ?
「そうだねー」
少し考えるように頬に指を沿えるいのり。
「愚神たちと戦うのも大事なお仕事だけどそれだけじゃないと思うんだ。ボクの目標は歌やダンスで沢山の人に夢と感動を与えること!」
そしていのりは口をつぐんだ、潮の寄せては返す音がただ流れる。
「まだまだだけどね」
そしてどこか遠く、空の向こうに焦点を映した、その時。
「いのり! こっち」
彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、うん、ちょっとまって」
呼ばれる声に導かれるままに、いのりは貝殻を砂の上に置き走り去ってしまう。
後には少女たちのはしゃぐ声が残された。
* *
『麻生 遊夜(aa0452)』はパラソルを設置し、トロピカルジュース片手にロッキングチェアに座っていた、設置したロッキングチェアの数は二つ。遊夜は準備の遅い相棒を待っている最中だ。
「ベタなネタではあるが……やってみたかったんだよな、これ」
「ユーヤお待たせ」
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』は黒のチューブトップに白のパーカー羽織り遊夜の前でくるっと回って見せる。
「どう?」
「似合ってるよ」
そうそっけなくそっぽを向く遊夜の顔は赤く染まっている。
「ありがとう、ユーヤも似合ってる」
遊夜は水着は黒のトランクスタイプの水着を身に着けていた。
「……ん、ユーヤ、遊ぼう?」
そうユフォアリーヤは自分のチェアを無視して遊夜へ飛び込むと。
「ゴッハァ!?」
勢いを全く殺せなかった遊夜がうめく。
「待て、待つんだ。おっさんの回復力は高くない、高くないんだぞ?」
「……ん、待つ」
そうユフォアリーヤは遊夜のドリンクを飲み始めた。
そのユフォアリーヤの目は遠くではしゃぐ少女をぼんやりと眺めている。
遊夜はその視線をなんとなく追う。その先ではIriaがスクール水着を身にまといはしゃいでいた、その後ろを露出少なめのビキニに薄手の上着のArcardが続く。
Arcardはその視線に気が付くと遊夜へと歩み寄ってきた。
「ビーチバレーをやるらしいよ、遊夜さんユフォリーヤさん」
Arcardがコテージの方を指さすと、やる気満々の少女たちが予行練習だと言わんばかりにボールをついて遊んでいる。
「リーヤ行って来いよ、きっとたのしい」
「一緒じゃないといや」
そうますます遊夜にすり寄るユフォリーヤ。
「なんでも優勝者には景品がでるらしい、それが何かはわからないが」
「なに?」
遊夜の目つきが少し変わる。
「なら、いくか。少し大人げない気もするが、孤児たちが喜ぶものな気がする」
* *
「第一回、ドキッ英雄だらけのビーチバレー大会、ポロリもあるかも!」
そうクラリスは黒いビキニに包まれた豊満な肉体を見せつけるようにポージングをとりながら解説していく。
可憐な声を拡張機なしで響かせながら、カメラに向かってアピールをする。
「ルールは簡単、ボールを打ち合って落としたらダメ、最初に八点得点を入れた方が勝ちです」
その声に聞き入る参加者は合計八名
「優勝したチームには豪華景品、それでは張り切ってまいりましょう」
チーム編成はくじ引き。そして第一回戦
「東、Iria アルのちびっこペアー」
アナウンサーはR.I.P.に替わっていた。
なんで? 場がざわめく
「西、クラリス 遙華企画者ペアー」
「参加するの!」
澄香の突っ込みがどこからともなく聞こえてきた。
そんな意外な組み合わせを披露したAブロックの逆サイドでは、同時進行で試合がもう一つ行われる。
遊夜、ユフォアリーヤペアと魅霊、いのりペアの試合だ。
「魅霊、頑張ろうね」
それに真剣そうに頷くと魅霊、試合は彼女のサーブから開始だった。
その時場の空気が変わった。魅霊が纏った空気が原因だ。
その指運びにすら緊張感がのり、自身で空に放ったボールを目で追う所作からまるで遊びらしさが感じられない。
遊夜がまずいな、そう思った時には時すでに遅く。ボールに合わせて高く舞い上がったと魅霊は渾身の一撃として、遊夜めがけ叩き込んだ。
「おおお!?」
それを遊夜は間一髪で回避、砂が巻き上げられクレーターが生まれた。
「ええええ! 魅霊? ねらった?」
いのりが絶句する。
「うん、点数をとればいい」
「そうだけど」
「よけさせるって斬新だな……」
遊夜が立ち上がりずれたメガネを持ち上げる。
「手加減はなしなようだ。良いだろう、オッサンの生き様を見るがいい! リーヤ、行くぞ」
「うん、全力で……」
「うふふ。ほどほどにね」
そんなR.I.P.のマイク越しの忠告もそっちのけで、死闘が始まった。
* *
「やってるやってる」
そんなエージェントたちの様子を雅はカメラに収めている。
子供たちが遊んでいる間に準備をするのは大人の仕事、そう言わんばかりにそこには保護者たちが集まっていた。
バーベキュー用の炭をおこしているのは、セバス=チャン、Arcard。
そして臨時のアナウンサーの仕事を終えて帰ってきたR.I.P.とロクトで食材を切っていく。
澄香はもまた、保護者側の一員として、食材を切ったり盛り付けたり下準備に奔走している。水着の上からエプロンをかけ、忙しそうに飛び回る彼女はとても絵になる。
そんな少女をカメラがクローズアップした。
画面に質問内容が表示される。
Q:女の子なのに戦うのは怖くないですか?
澄香が答える。
「怖いです。覚悟のないまま戦いなんかに出るんじゃなかった」
その瞬間映像が差し替わり。澄香が浜辺をゆっくり歩きそれにカメラが追随する映像に替わった。
澄香は物憂げな表情で、砂を掴みとりこぼれていくそれを見て、切なげに微笑むと、澄香の声が流れてくる。
「私は弱くて、守りたい人たちは私よりずっと強くて、敵は酷いことをして」
彼女は思い出していた。先日の大規模戦闘、そこで戦ったという記憶。イヌのこと。そしてさめざめと涙を流す。
その涙が風に攫われ舞った、夕焼けの光をうつし、燃えるような煌きとなって散る。
「私が戦うのは自分が納得をする為だけです。それが恥ずかしい」
涙を拭い、真剣な表情でカメラを見据える。映像は終わり、エプロン姿の少女が映し出されていた。
「でも、私よりも小さい子たちが必死に戦っている。なのに逃げ出すのはもっと恥ずかしいと思いました」
* *
英雄や能力者の並外れた身体能力がいかんなく発揮されたビーチバレー大会は、大波乱の後に魅霊、いのりペアだった。二人には景品として、きらびやかな浴衣が送られる。
「これで今晩の花火大会撮影ね」
そう遙華が解散を宣言したと同時に。バーベキューの準備が整った。
「わーいお肉大好き!」
そうせっせと肉をさらに運ぶいのり。
「野菜もきちんとお上がりなさいませ」
そうセバス=チャンに野菜を盛られる。
「わかってるよう」
セバス=チャンにならい、遊夜も給仕係だった。周囲の人間に焼けた肉を回していく
「焼けたぞ。ほれ、食え食え」
「…ん!」
尻尾を大きく揺らしながら、肉を待つユフォリーヤにも忘れずに分け与えていく。
そんな遊夜にカメラが接近、質問が投げられる。
リンカー特有の苦悩についてだ。
「苦悩ねぇ……やはり後手後手に回ることかね」
遊夜は思い出していた。かかわった数々の事件、乗り越えてきた苦難。
「プリセンサーが予知する場合もあるが大概事件が起きてからしか動けんからな」
遊夜はトングをわきに置き、カメラを見据える。
「所詮人間、万能でない事が切ない限りだな。故に、手が届く範囲くらいは守り切りたいもんだ」
そう言ってちらりと向けられた視線の先には、おいしそうに肉をかむユフォリーヤの姿があった。
続けて隣で佇んでいたArcardにカメラがよる。
それを一瞥したArcardは戸惑いがちに口を開いた。
「見てる皆に、知ってほしいことと頼みがある」
普段の飄々としている表情に少し、真剣みや苦みと言った複雑な要素が加わる。
「ボクを含め、エージェントは力を持つ。でも、個々を見れば誰もが人なんだ。だから」
映像がさし替わる、それはArcardが共鳴し、両手に大剣を握りしめ真っ直ぐ何かを見据える姿。
そして武器を振るい訓練をする日常風景。
「それぞれが考えを持つ。戦いに抵抗を持ったり、愚神を怖れる人も中にはいる」
映像がビーチに戻る。そして元の飄々とした雰囲気に戻った彼女を映しとる。
「そういった姿も、できれば受け容れてほしいんだ。」
「うなっ」
その時だったArcardの視線が何かに囚われる、自分の相棒であるIriaが、あたりの肉をかっさらい皿に盛っているところだった。
「ま、今回の仕事 霊石のサルベージはきっちりやって見せるさ。ボクらがここにいる意味! この子達がどれだけ優秀な―、ん?」
そしてIriaはそれを遙華の元へ運ぶ。しかし途中にくぼみでもあったのか、体勢が崩れ、振り返った遙華の顔に大量の肉をぶちまけることになった。
「……優秀な。なんだっけ」
あわててArcardは遙華のフォローに向かう。
カメラはArcardのいなくなった椅子を映し続け、
画面の外からArcardとIriaと遙華の話声が聞こえてきた。
「すまない、Iriaが……。大丈夫か?」
「いいのよ、わけてくれようとしただけだものね」
* *
腹ごしらえがすんだ後、一行はミッションの準備を始めた。
クラリスが船のデッキで海域の地図、船の見取り図を公開する。
「このあたりは海流が強く流れているから、気を付けて、あとはクラゲね」
ロクトが言葉を続ける。
「毒は強くないけれど、おとめのお肌に傷はつけたくないでしょ?」
それを全員が真剣な顔をして聞いている、先ほどの遊びの空気は一切なく素晴らしい切り替えと言えた。
「船内は薄暗いから、ライトを持っていって、それじゃあ、ミッションスタートよ」
そしてダイバーズスーツに身を包んだエージェントたちが次々と水に飛び込んでいく。
海の透明度は高く、視界は良好。小さな魚たちが群をなし泳ぎ、煌く太陽光で水は温かかった。
その中をいのりとアルが泳いでいく。その脇を魔法少女姿の澄香が通り過ぎていく。幻影の衣装は水の中でも光の滴を飛び散らせ、小魚の群れと戯れながら進む。
「海、すごくきれいだった」
アルのインタービューシーンが挿入される。そのシーンは海をバックに岩の上で体育座りをして佇む絵から始まり、膝に頬を押し当て、けだるそうに微笑むアルは普段と少しちがい、その姿は妖艶だ。
水に反射し蒼く照り返す光が無機質さを与え、時折胸が突かれるような人を引き付ける表情を見せる。
なぜ能力者として生活を?
そうテロップが流れると、アルは首を振って笑った。
髪を濡らしていたしぶきが舞う。
「もらった力は使ってこそだからね!」
そしていつものように元気に笑って答えた。
「アイドルになったのも同じ理由。戻ってきた音に恩返ししたいんだ」
そのつぶやきはどこか、カメラに向けられたものではなく、自分自身に向けられたような言い方だった。
そして映像が切り替わる。
今度は沈没した船へ先導するロクトが映る、カメラに先へ行くように促し、指示に従って進むと、その先には沈没船が見えた。
魅霊、共鳴状態のArcardが船体を一周し内部構造をしらべ、ハンドサインで相談、そして安全であろうと判断した場所に二人で爆薬を設置した。
そして、その影響を受けないほど離れてから起爆した。
内部の空気が一気に抜け出し視界が白く染まる。
それでも船体には多くの空気が残っており、一応呼吸はできる状態だ。
その船内にリンカーたちは続々と入船していく。
その中に遊夜とユフォリーヤの姿もあった。
天井が床に、床が天井になっていることに奇妙な感覚受けながら、今は天井となってしまった大窓から海を見上げる。
「これはまた、綺麗なもんだな」
「……ん、真っ青。…………? アレなに?」
ユフォリーヤが指をさし、問いかけ、首をかしげた。
「おお、イルカか。こっち来てんぞ?」
「むむ?」
そんな初めて見る海洋生物に目を奪われる二人を尻目に、全員が潜入した。
全員がライトをともし、霊石を探す。
「年長の、男としての意地と言う奴だな」
そう遊夜が戦闘を切って歩く。
その後ろを歩く澄香は依然として魔法少女の姿だ、それでも恐怖を拭い去ることができないのかその手は震えている。
「大丈夫、姉さん。私も いるから。」
そう魅霊が澄香の手を握る。
「ありがとう。魅霊」
そう澄香が言葉を返した瞬間だった。
「うわっ!?」
いのりの叫び声が船体に響く。
「なに」
「……なんだお魚かあ、びっくりした」
扉を開いた瞬間、何かがビチビチと音を鳴らし、それに驚いたいのりは、腰を抜かしたようにその場に座り込んでいた。
「ここで行き止まりみたいだな」
そう遊夜があたりをライトで照らしながら見回っていると。
唐突に扉が閉まってしまう。
「こんどはなに?」
アルが悲鳴じみた声を上げ地団太を踏んだ。
そして鍵のかけられる音。何者かの手によって、閉じ込められてしまった
「うそ」
澄香の顔が一気に青ざめた瞬間。
唐突にライトが消える。
「きゃ」
「なに」
あたりは一面暗闇に包まれた。
「これは、どういうことだ?」
「怖い、魅霊……」
「大丈夫、澄香姉さん。私がいる。安心して……」
その部屋の中央うずたかく積まれた段ボールから光が発せられ始めた。
「これは」
祈りが近づき中を調べてみると。そこには光を放つ正八面体の結晶が無数に入っていた。
「いのり、危ないよ?」
澄香が不安げに問いかけるのも構わずに、いのりはその結晶を手に取り空にかざして見せる。
「これが霊石なんだね。へー、キレイだなあ」
「これが?」
その場にいる全員が手にとる、そうするとなんとなく、力がこみ上げてくるような、温かいような、そんな感じを受けた。
「これでミッション完了だな」
アンカーをその部屋に打ち込み。任務は完了。このあとアンカーの信号を頼りに霊石を吸い上げるらしい。
一体何をどうするかは企業秘密らしく、明かされることはなかった。
* *
サルベージ作業が完了し、全員が浜辺まで帰ってきたときにはすっかり夜になっていた。夕食はコテージで済ませると遙華は花火があると全員に告げた。
「その前に、いのりさんと魅霊は浴衣に着替えて、ツーショットね」
そうロクトが言い放ち二人をコテージの一室に引っ張っていく。
その衣装替えを待つ間に、外には大掛かりなたき火が設置された。
それを中心に保護者たちが酒を持ち寄り、一足早く酒盛りを始める。
Arcard、雅、セバス=チャン。ロクト。遊夜、R.I.P.である。
「後で焼き増ししてミニアルバムにして配ったげるから、楽しみにしてて」
そう雅はArcardとグラスをうちならし。ウイスキーからラムからワインと次々にあけていく。
「安心して、男連中の写真もあるから」
その言葉に男二人は苦笑いをかわす。
その一方で子供たちはというと、いのりと魅霊が来るまで、花火の準備をしていた。水をくみ、ろうそくをたて打ち上げ花火を設置する。
遙華は邪魔にならないようにIriaを抱えて、座っていたのだが。
「がう!」
「花火をするのは初めて? きっと気に入るわ」
やがて、変身を終えたいのりと魅霊が登場し写真撮影を終えて、花火が始まる。
浜辺は昼間のような少女たちのはしゃぎ声であふれることになった。
その中で一人、花火というものをどう楽しめばいいか分からない、そんな面持ちで、火のついていない花火を片手に立ってた魅霊へ、カメラが近寄る。
そして本日最後のインタビューを開始した。
Q:女の子なのに戦うのは怖くないですか?
「いえ、全く」
そう浜辺を照らす、花火の明りを見つめながら魅霊は言った。
「目的もはっきりしてるし、守りたいものもある。そのために戦うだけ だから。」
しかし、そう言い切った後に、表情が少し陰る。
「……ただ」
そう言いよどんだ魅霊、その手に持たれていた、花火にR.I.P.が火をつける、そして応援するような笑みを浮かべ、カメラ外に退避した。
やがてバチバチと爆ぜ始めた花火の明りで彼女の表情が明るく照らし出される。その表情は、とても美しかった。
「身近な人が『戦いが怖い』と言っても、それがわからないのは……、つらい かな」
その時、魅霊は何かに気が付いたのか、身をこわばらせ、花火を投げ捨てた。その視線の先には、Iriaがねずみ花火をばらまき、それから逃げ惑う澄香の姿があった。
魅霊はインタビューそっちのけで澄香に駆け寄り、ねずみ花火特有の予測しがたい動きの前に立ちすくんでいる澄香の手を引いて助けだす。
「ありがとう魅霊。今日は助けられてばかりね」
その時だった魅霊は不意に目を閉じて、無防備な澄香の頬に唇を合わせた。
それを笑いながらR.I.Pが見ている。
「その……親愛と御礼の証だ って、クラリスさんが……」
そして一通り花火が終わった後に大人も一緒になって線香花火をした。
日本では夏の終わりを感じる行為だが、ここは常夏、夏が終わる気配はなく、悲しいことなど何もない、しかし条件反射なのか、少しだけ場が静かになった。
バカンスはこれでおしまいという悲しさもあるのかもしれない。
そうしてリンカーたちは日常に戻っていく。
最後に夕陽に向かって出航する船をバックにENDの文字。
そしてスタッフロールまで確認すると、画面の電源を切り。遙華が振り返って全員に尋ねた。
「こんな感じの仕上がりになったわ、感想はどう?」