本部
広き東の恵みをあなたと
- 形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- 参加費
- 500
- 参加人数
-
- 能力者
- 18人 / 1~25人
- 英雄
- 15人 / 0~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/06/20 22:00
- 完成予定
- 2018/07/01 22:00
このシナリオは2日間納期が延長されています。
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/06/20 07:21:22
オープニング
●繁華街
まばらながらも人の流れが途絶えない通りに面したその店は、道に面した壁が取っ払われているのをいいことに昼光色の明かりを爆発させ続けていた。あなたは看板を確認して、または鼻をくすぐる香ばしい匂いにそそられて、或いはほんのふらりと気が向いて、幾分天井が低いその店に足を踏み入れることとなる。
広東料理店『龍龍亭(ろんろんてい)』。
店主の名前にちなんだその店は、来客の満足を最優先とすることをモットーに掲げている。
●店内:カウンター付近
ふわふわの黒い髪を靡かせて、店長の女――劉(リュウ)が料理と飲み物を運んできた。
「はい、酢豚と焼売、ハイボールね」
「はいはい、どうもどうも」
カウンターに掛ける中年の男――御厨(みくりや)はひとつひとつを両手で受け取り、自分のテリトリーに並べていく。割り箸を取って料理に軽く会釈、キンキンに冷えたハイボールで喉を潤すと、海老の香りを振りまくぷりぷりの焼売を頬張り、長いこと、ゆっくり咀嚼して味わう。そしてこの間、店内はそれなりの賑わいであったにも関わらず、劉はずっと御厨の前から動かなかった。
「相変わらず結構なお手前で」
「お口に合いましたようで何より。毎度の御引立て厚く感謝致します」
「似合ってませんなァ、寒気がしますワ」
「死ね」
フン、と鼻を鳴らし、劉はカウンターの内側、御厨の向かいに腰を降ろし、売り物のコーラの瓶を開け、そのままぐい、と煽った。
劉も、御厨も、エージェントであり、ふたりはチームである。それなりに長い時間を共にしており、そこそこの数の死線を潜り抜けても来た。互いの事情をまあまあ把握しており、しかし最後の一歩は踏み込まない。でもたまに店を開けようとすれば連絡を入れるし、連絡が入れば軽い洋菓子を手土産に訪れる。よく言えば落ち着いた、悪く言えば煮え切らない間柄だった。
ひと息ついた劉が御厨を軽く睨み付ける。
「あんまり湿布の臭いは油の香りに合わないわね」
「面目次第もございませんや。どうにも熱が出ちまいましてね」
御厨はフォーマルな服装で来店したものの、今は背広とシャツを脱いでタンクトップ一枚となっている。その下には袈裟のように包帯を巻いていた。馴染みの店であるし、どうせなら今日という夜を楽しみたいので、壁際に掛けるということで、無作法を失礼している。亜熱帯特有の、絡みついてくるような湿気にも抗えて一石二鳥、と御厨は笑う。劉の表情はピクリとも動かなかった。
御厨は咳払い。
「特に毒だとか、特別深かったとかってわけじゃないらしいんですがね。どうにも治りが悪くて、へへ、寄る年波にゃ勝てませんワ」
「何言ってるの。まだまだ働き盛りでしょうに」
「まあ、そりゃあそうなんですがね。いろいろ考えちまいますワ」
「娘さん、まだ学生なんでしょ」
「今年受験、でしたかね。息災だといいんですが」
「会えてないの?」
「会わせてもらえてないんですワ」
「……ごめんなさい」
「あいよ」
無言で衝き出した空のジョッキを、劉は無言で受け取り、ハイボールを注ぎ直して静かに置いた。どうせ酔えないとわかっているのに、劉は少し濃く作ったし、御厨はそれも承知で、いつもより深くハイボールを喉に流し込んだ。
●店内:中央
「ね゛え゛え゛え゛え゛え゛姐御おおおおおおおおお!!」
声を荒げたのは金の短髪と三白の碧眼をした少女である。彼女について特筆すべき点は、エージェントであり御厨らのチームの一員であること。加えて、その、すりこぎ棒のような体型には少し過分な、スリットの深い紅色のチャイナドレスと、小脇に抱えたシルバーのトレイ、そしてびっしりとメモが書かれた手帳。
「ひと息ついてないでいい加減仕事してくださいよ姐御! あたしメニュー取るので手一杯なんですから!」
「雇われが何店長に文句言ってんのよ」
「若い頃の苦労は買ってでもしろ、って言いますぜ」
「忙しすぎて売れねーっつってんの!!」
わいわい、がやがやと賑わう店内のど真ん中で少女――成島(なるしま)は怒鳴った。怒鳴ったのだが、誰も彼も自分たちの時間を満喫しており、振り向いたのは数名に留まる。そのうちの半数は、ああまたやってらあ、とけらけら笑い、逆に成島に睨まれる始末。よく言えばアットホーム、悪く言えば無秩序。
「ほら姐御、調理お願いしますよ! 今日はここ最近で一番混んでるんですから!!」
「だ、そうですゼ。繁盛何より」
「馴染みのジジイ共がテーブル持ち込むから無駄に混むのよ……」
「ま、気持ちはわかりますがね」
肩を引くつかせて笑い、御厨は酢豚を口いっぱい頬張った。まったくもう。大げさに肩を竦めて劉は立ち上がる。すぐに成島が駆け寄ってきた。うっすら汗をかいており、店内を走り回っていたのだと容易に想像できる。
「えっと、あっちのお客さんが海鮮チャーハンで、あそこのお客さんがサイダー。で、あのテーブルはみんなフカヒレのスープだって」
「……」
「姐御?」
ずびしっ
「痛(ぃいった)ッ!! え、何!? なんのチョップっスか!?」
「気が利かない」
「ぇあ? よく聞こえない――」
「何でもないわよ。ほら、厨房入りなさい」
「あ、ちょ、ちょっと待ってくださいよーっ!」
どたばたと店の奥に入っていく二人を見送り、御厨は最後の焼売を口に運んだ。程なく厨房から聞こえてくる調理音に耳を傾け、ハイボールを飲み干そうとして、半ばで留めた。次を頼むのは少し後になるだろう。銜えた紙巻に火をつけ、文庫本を栞から開き、背中に壁を預けて、御厨は深まる夜に身を任せていく。
●
活気、とでも言おうか。人が物を食べるときに放たれるエネルギーが、そこには充満していた。客の表情には差がある。笑っている女もいれば、涙を浮かべている男もいて、しかし無表情の者は誰一人いなかった。
ようやく席を見つけたあなたは、店内を見渡して従業員を探した。だがそれらしい者が見つからず、困惑していると、さっきまで酒を煽っていた女がカウンターの内側からおしぼりと水を持ってきた。どうやらそういう店のようである。会釈をして、あなたは受け取った。
黄色を基調としたメニューを開く。料理名の横には写真が添えられていた。確認しながらページをめくっていくと、いい具合に腹も減ってくる。
他の客が大声を張り上げると、厨房から金髪の少女が飛び出してきた。少しきょろきょろしてからあなたと目を合わせ、頭を下げてから駆け寄ってくる。
「すいませんーお待たせしました! ご注文は?」
さあ、ご注文は。
夜はまだ、始まったばかりである。
解説
場所を限定したフリースタイルのシナリオです。
決闘から愛の告白までなんでもやってみてください。
●状況
夜8時から10時程度まで。晴れていますが、街の明かりで星は見えません。
アジア某所の広東料理店【龍龍亭(ろんろんてい)】にて過ごしていただきます。
テーブル席とカウンター席があります。店内はかなり混み合っていますが、座れないことはありません。
料理は焼売、ワンタン、酢豚、チャーハン、油淋鶏、マンゴープリン辺りが売れ筋ですが、他の広東料理も注文していただけます。
全席喫煙可。飲み物については1杯1000円以下が相場のものは取り揃えられているものとします。
●判定
故意の備品破損、過度の暴力などがない場合、大成功とさせていただきます。
●お手伝い
アルバイト、というほどでもないのですが、大繁盛であり従業員の手が足りていない為、任意で臨時のお手伝いをしていただくこともできます。
僅かではありますが報酬が出ます。
●喫煙・飲酒について
本シナリオでは【公認である基礎設定で成人以上であると明確に記載されている方】のみ可能とさせていただきます。
●環境
全員にBS【場酔い】を付与します。
プレイングで宣言した直後から、アルコールを飲んでいなくても、むしろ何も飲んでいなくても、その瞬間から酩酊に酷似した状態になります。これは任意に解除、再開できます。
●その他
・質問にはお答えできません
・納期延長をいただいております。恐れ入りますが、なにとぞご容赦ください
マスターより
ご検討いただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
リプレイ公開中 納品日時 2018/06/28 21:39
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最終発言2018/06/20 07:21:22