本部
遺跡とミイラ
- 形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~8人
- 英雄
- 6人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/19 12:00
- 完成予定
- 2018/05/28 12:00
掲示板
-
相談卓
最終発言2018/05/19 11:38:38 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/05/13 23:18:32
オープニング
ダマヌールの東にある遺跡は、最近になってイギリスの教授が発見した遺跡として話題になっていた。
その奥は洞窟となっており、巨大な石室となっていた。かつてファラオを納めていたであろうそこは、残念ながら既に墓荒らしにあったらしく、天窓のように陽の光を取り入れる砕けた天井と、空っぽの石棺が転がる殺風景な部屋だ。
冷える砂漠の夜半、石棺に腰を下ろして佇むキターブは、響く足音に耳を傾けていた。
まだここは殆ど調査の手が入っていない。発掘員でも殆ど足を踏み入れておらず、天井の穴からならともかく、まともに谷の入り口から入ってくれば迷路のような道を通らねばならない。
淀みなく響く足音。それは規則的で迷いがなく、まるでこの場所への道を熟知しているように思えた。
そして足音の主を、キターブは満面の笑みで迎えた。
「お待ちしていました。魔術師殿」
煤けたローブを纏う痩せこけた体。落ち窪んだ眼窩で光る鬼火のような眼は、カイロの警察署で遭遇した時と同じものだった。
「……発掘が本格化したと聞いたのだがね」
魔術師が呆れたように新聞を放った。そこにはダマヌールの遺跡で大量のミイラが発見され、大々的な調査が行われることが載っていた。
これは警察署の襲撃からすぐ、キターブが新聞社に持ち込んで半ば無理やり書かせた記事だった。見出しにも『未発見のファラオの墓か』とか『大量のミイラが出土』など煽るように書かれている。
「発掘はもう始まってますよ。すでにミイラはレイネス教授が自身の大学に搬送しています」
「発掘物を運び出したのか」
「ええ。そうしなければバレてしまいますからね。あれが現代人のミイラだと」
キターブはダマヌールで発掘した新しいミイラがマフィアの商品であることを察していた。そこで大々的な調査が行なわれれば、当然ミイラの年代測定が行われる。
それで困るのはミイラを作成した魔術師であり、彼の弟子のヴィランたちだ。
「ミイラが見つかると困る。それは分かるんですよ。でも正直、賭けだった。捕まっているあの三人を見捨てて逃げられれば、俺にはどうしようもなかった」
「私が弟子たちを見捨てると」
強く頷き、キターブは続ける。
「魔術師としてはそれが自然なんです。だがそもそも、あなたほどの魔術師がマフィアと組んでまで金策に奔走する事情が推測できないんですよ。というか、俗世にこうも関わると言うのがそもそも解せない」
それがキターブには気になっていた。魔術師の徒弟など程度の差はあれ、互いに自身の魔導を極めんとするために利用し合うような関係だ。この魔術師然とした男がどうしてそこまでするのか、彼は聞いておかねばならなかった。
「――私の弟子の三人は、知っているな」
「はい。口が堅くて弱りましたよ」
「あの三人は墓守と言っていたがな、実際は違う」
「そんなことは分かって――」
「あの方々は、王家の末裔だ」
聞いてしばらく、キターブは口を開けたまま呆けてしまっていた。
「……ご冗談でしょう。プトレマイオス十五世まで遡れるとでも?」
「いや、パルミラ帝国の女王ゼノビアの係累になる」
ゼノビアとは紀元三世紀頃にあった帝国で、その女王ゼノビアはプトレマイオス王朝の末裔であると自身で語っていたとされている。
「いずれにしても傍流も傍流でしょう。この現代に意味があるとは思えない」
「あるよ、意味は。私のような墓守には」
魔術師の目が、どこか遠くを見つめるように虚ろを帯びる。
「確かに私は世俗などどうでもいい。だがあの方々がスラムで虐げられながら暮らしているのを知っていて、それを見過ごすほど恥知らずでもない」
それが墓守だ、魔術師はそう言い切った。
世俗を捨てた魔術師。無論、現代社会との接点もごく僅かだろう。そんな中で手っ取り早く金を稼ぐのに犯罪を行なうのは自然な流れと言える。彼らを保護するのに魔導の知恵ではなく、まずは金銭が必要だったのだろう。
「あなたの事情は分かりました。同情してあげたいところだが、これだけの殺人に加担した人間を野放しにはできない。しかしH.O.P.E.は常に人手不足だ。才能ある人間を遊ばせる余裕はない。どうでしょう、ここは取引といきませんか?」
本題を切り出したキターブに、魔術師は冷ややかな視線を送る。
「殺人容疑を取り消す代わりに、H.O.P.E.の走狗になれと?」
「要はそんなところです。あの三人についても無罪放免。警察にはとりあえずロシアンマフィアを摘発させれば花を持たせられる」
「……そこまでして、私に何をさせたい?」
「まあ、ちょっとした仕事を頼みたくてね。了承していただけませんか」
キターブが身を乗り出して訊ねる。しかし魔術師はつまらなそうに顔を背け、ローブの裾から枯れ枝のような腕を差し出した。
「……君は危険だ。魔術師の私から見てもそう思うよ」
掌で俄かに風が起こる。恐らく警察署でも放った渇きの風だろう。
「光栄ですよ。魔術師殿」
笑いかけながらも僅かに腰を浮かせるキターブ。ポケットに入れたスマホからは、既に周辺に待機してもらっているリンカーに連絡を飛ばしていた。
「警察署の時より落ち着いている。またリンカーとやらかね」
「そんなところです。俺がお相手できず申し訳ない」
「構わんよ。全員を始末した後で、君には責任を取ってもらう」
「素敵な言葉です」
既にリンカーにはこちらに向かっている。いざとなれば洞窟に逃げ込んで時間を稼げばいい。問題は魔術師が逃げてしまわないかだが、全員を始末などと威勢のいいことを言っているのならその心配もない。
ここまで御膳立てしたのだ。魔術師は絶対に逃がさない。いずれにしてもマフィアたちを摘発するにも協力者である彼の証言が必要だ。今度こそ捕え、彼にこそ責任を取ってもらう。
没薬と砂と、濃密な魔術の気配をいっぱいに吸い込んで、キターブは満足そうに微笑んだ。
解説
・目的
魔術師の捕獲。
・敵
魔術師。渇きを伝播させる共感魔術を用いる。
・場所
ダマヌールの谷にある遺跡最奥の石室。
・状況
石室の天井には穴が開いており、突入に適していると思われる。谷の入り口から最奥の石室までは複雑な迷路となっており、逃亡された場合に捕捉が困難になると思われる。
マスターより
まんまと魔術師を誘き寄せたキターブ。彼は魔術師をH.O.P.E.に引き入れたいようです。
マフィアたちを摘発し、魔術師に責任を取らせるためにも、彼を捕獲を優先してください。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2018/05/26 19:44
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