本部

戦闘

夜を蝕む病

大江 幸平

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/02/19 22:00
完成予定
2018/02/28 22:00

掲示板

オープニング

●その女は血の香りがした
 ――少女は、夜が嫌いだった。

 暗い夜。静かな夜。
 吐く息の白さだけが、その恐ろしい暗闇の中で、ただ唯一の光だった。

「夜は嫌い。私だけが世界で一人ぼっちのように思えるから」

 薄暗い路地の片隅で、ぼんやりと虚空を見つめる日々。
 誰でもいい。誰でもいいから私を救って。
 皮肉にも、心のなかで呟くたびに。孤独はなお深く少女の世界を蝕んでいった。

『哀れなレイナ。可愛いレイナ。貴方にとっておきの"おまじない"を教えてあげる』

 そんな少女の前に『彼女』が現れたのは果たしていつのことだっただろう。
 幻想的に輝く銀髪。吸い込まれそうな真紅の瞳。
 男性のように背は高く、脳がとろけそうなほど濃密な甘い血の香りを纏った女。
 美しいというよりも、どこか怖ろしい。
 自らを『クローフィ』と名乗った女は、いつしか少女の友となり、孤独から逃れるための『ある方法』を吹き込んだ。

『レイナ。難しく考えなくて良いの。貴方は、ただ……愉しめばいいのよ」

 その日から、街の片隅にはこんな噂が流れ始めた。
 暗い夜。静かな夜。
 一人で路地を歩いていると、この世のものとは思えない美しい女に呼び止められる。
 その甘美な声で女は言う。自分と友達にならないか、と。
 だが、そこで返事をしてはいけない。それは異形の者なのだ。
 誘われるままについていけば、永遠の夜に囚われるだろう。
 恐怖を感じて逃げ出せば、永遠に夜を恐れ続けるだろう。
 逃れる術はただ一つ。
 光を灯せ。そして二度とこの街の暗闇に近づくな。
 神に祈るのは、きっと朝陽を拝んでからでも遅くはないはずだ。

「――ねぇ、クローフィ。私、なんだかコツを掴んできたみたい。……最初の一人はちょっとだけ失敗しちゃったけれど、他の人たちはちゃんと壊れずに上手く出来たもの」
 無邪気に喜ぶレイナ。その口元はわずかに赤く染まっている。
 それを愛おしげに眺めながら、クローフィは微笑んだ。
『ふふ……すごいわ、レイナ。貴方は本当にお友達づくりが上手なのね』
「ううん、クローフィのおかげよ! ……大好きなお姉ちゃんもできて、お友達もいっぱいできて……こんなのって、まるで夢みたい!」
 月の明かりだけが照らし出す、惨めでボロく薄汚い家。
 かつてはレイナだけが暮らしていた寂しい隠れ家も、今では夜に沢山の『お友達』が集まる賑やかな場所になっていた。
「それに最近はすごく身体が元気になった気がするの。前までは上手く走ることもできなかったのに。……本当に"おまじない"ってすごいのね」
 少女はもう孤独ではなかった。
 世界から見捨てられた少女は、あんなに嫌っていたはずの夜の中に、初めて自分の居場所を見つけたのだ。

『ねぇ、レイナ。私ね、どうしてもお友達になりたい人たちがいるのよ』
「え? クローフィが? ……どんな人たちなの?」
『……そうね。とっても強くて、とっても怖ろしくて――』

 レイナに聞こえないほどの小さな声で、クローフィは付け加える。
 それに、とっても――邪魔な人たち。

『その人たちにね、すごく興味があるの。レイナが協力してくれれば、きっと私もその人たちとお友達になれると思うんだけど……』

 レイナにはクローフィの正体も、彼女の考えてることも、正直よくわからなかった。
 しかし、そんなことはクローフィが自分に与えてくれたものを思えば、すべてどうでもいいことに思えた。
 クローフィは孤独だった自分を救ってくれた。
 今度は自分がクローフィを助ける番だ。
 そう考えたレイナは無邪気な笑顔を浮かべて、勢い良くクローフィに抱きついた。

「もちろん協力するわ! クローフィのためだもの……なんでも言って!」
『ほんとう? とっても嬉しいわ。ありがとう、レイナ。それじゃあ……』

 銀髪がきらめき、甘い香りに包まれる。

『あなたの"身体"をちょうだい』

 ――そうして。少女の意識は、蠱惑的な夜の中に取り込まれた。

解説

●目標

・夜明けまでに『レイナ』を無力化する(殺害禁止)

※以下は達成しなくても失敗にはなりませんが、成功度には反映されます。
(特殊目標)
・愚神『クローフィ』を倒す

●登場

・『レイナ』
 クローフィに取り込まれた状態の孤独な少女。意識は愚神に奪われている。
 圧倒的に強化されてはいるが、身体はレイナのまま。
 戦闘不能になれば、愚神との共鳴状態は解除されるだろう。

特殊能力:
《吸血》単体。肉体系BS【減退 1d6】付与。
《血華旋風斬》範囲。自らの血で生成した鎌を振るい周囲を切り裂く。レイナの身体にダメージ。
《夜の棘》影に紛れて飛来する真っ黒なトゲ。離れた場所からでも正確に対象を捉える。
《甘い誘惑》甘い香りで包み込み、少しの間だけ対象を自らの意のままに操る。

・『お友達』
 クローフィとレイナにライヴスを奪われ、自由に操られている街の人たち。
 総数はそこまで多くないが、獰猛かつ攻撃的でリンカーたちの邪魔をしてくるだろう。
 言うまでもなく彼らはただの被害者なので、手段は問わないが『無力化』すること。

●状況

・ロシアの小さな街。時刻は夜で辺りは暗闇に包まれている。
・街は愚神に操られた『お友達』が徘徊している。彼らはリンカーを見るとすぐに襲い掛かってくる。
・愚神に取り込まれたレイナは暗闇に潜みながら、リンカーたちを狙っている。
・街の人たちは異常に気付いて家の中に閉じこもっている。『お友達』もリンカー以外は攻撃の対象としないため、避難誘導などをする必要はない。

「関連任務」(読まなくても問題なしです)
http://www.wtrpg0.com/scenario/replay/3226
http://www.wtrpg0.com/scenario/replay/4976

マスターより

 いまだに年末年始ボケが治らない大江です。
 地味にですが続いていきますよーということで今回も吸血鬼です。
 よーし孤独な少女を救ってやるぞーという紳士な皆様のご参加をお待ちしております!

リプレイ公開中 納品日時 2018/02/26 19:55

参加者

  • 【晶砕樹】
    雁屋 和aa0035
    人間|21才|女性|攻撃
  • お天道様が見守って
    ヴァン=デラーaa0035hero001
    英雄|47才|男性|ドレ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 閉じたゆりかごの破壊者
    紀伊 龍華aa5198
    人間|20才|男性|防御
  • 一つの漂着点を見た者
    ノア ノット ハウンドaa5198hero001
    英雄|15才|女性|ブレ

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