本部
飛んで火にいる
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 6~6人
- 英雄
- 5人 / 0~6人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/27 12:00
- 完成予定
- 2017/07/06 12:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/24 00:43:57 -
相談卓
最終発言2017/06/25 22:01:17
オープニング
●打ち払う羽
「この辺でやめておいたほうがいいと思うけど?」
大村立羽は周囲を取り囲む男たちを睨みつけた。
彼女の足下に群衆と同じジャケットを着た若い男が倒れていた。正当防衛だ。夜食を買ったコンビニを出てすぐ、たむろしていた男たちがまとわりつくように彼女へ近づき、そのうちひとりが制服の上から彼女の華奢な体を触ろうとした。
不埒な手を払いのけ、慎重に手加減して拳を叩き込む。倒すのは簡単なことだった。
悪党どもは口々に威嚇や罵声を浴びせてきた。隠し持った刃物を取り出すものもいた。
それでも立羽は眉ひとつ動かさなかった。感情から恐怖が抜け落ちてしまったかのようだ……あの夜から。
「まあいっか」
立羽はブレザーの裾をさすった。そこに身につけた腕輪を。わずかにそれを目で見て、学校指定の肩掛け鞄を放り投げると、適当な半身の構えをとった。
「あんたに頼るまでもない」
いきり立った数人の男子が飛びかかった。立羽には止まっているように見えた。
●顎を鳴らす徒党
違う夜、別な場所で、立羽はまたも悪辣な雰囲気の男たちに包囲されていた。
彼らに浮ついた熱狂はなかった。刺すように冷たい視線と、そして不気味な怒りを伴っていた。
建物の壁を背にして立羽が睨み返すと、何人ものごろつきどもは一斉に左右へ分かれ道を空けた。リーダー格と思しき男がむさ苦しい花道の中央を歩いて来るところだった。
男の顎は鋼に覆われていた。鋼鉄の下顎だけが人間の顔に新たに付け加えられ刺々しくしゃくれていた。
「ふん、顔は悪くねぇらしいな」
男が鼻を鳴らした。少しもいい気分はしなかった。
「何? あんたたちに用なんてない」
「言ってくれるぜ。俺の手下が世話になったじゃねぇか。あの辺りは俺らの縄張りなのさ」
男は毒々しいネオンを反射しながら威圧的に指さした。その手も鉄でできていた、袖の奥まで金属かもしれなかった。
立羽は気がついた、男たちのジャケットは撃退した痴漢が羽織っていたものと同じだった。一文字に一枚、分厚いステッカーで『緋色雀蜂』とある。
「あれだけヤンチャしといて、お前、ただで済むと思うなよ?」
鉄顎の男が大股で詰め寄った。立羽は身構え、男は一度立ち止まった。
「抵抗しようなんて考えるんじゃねぇぞ。なんたって俺は……天下無敵の能力者だからだ!」
男はこれ見よがしに片腕にはめ込まれた宝石を見せびらかした。幻想蝶、超常の能力者に許された輝きを。
立羽は驚き、そして軽蔑した。この男も同じだ。ある日突然世界の常識を覆す力を手に入れたのだ。立羽は世界に醒めてしまったが、この男は貪り食うことを選んだ。
「わかったか? 抵抗すれば殺す。どっちにしても楽しませて……」
「もういいよ」
「あん?」
立羽は制服の袖をまくった。白い肌の上に、女児の喜ぶおもちゃのような腕輪がついている。英雄を宿した幻想蝶を抱く腕輪が。
「そうか、お前も。お前も能力者か」
男は急に機嫌をよくして、歪な笑みを浮かべて近づいてきた。立羽は手を添えて腕輪を構えた。緊張が熱を帯びて背中を昇り、短い髪の先までちりちりと漲った。
「面白い。お前、俺の仲間になれ。いくらでも可愛がってやる。仲間にならねぇなら始末するぜ。たっぷりといたぶった上で、な」
「……やってみろ!」
心の中で英雄に呼びかけると、煌めく光が羽ばたいた。立羽は英雄とひとつになった。
●飛ぶが如く
「市街地で暴動を起こしているヴィランの鎮圧に向かってください」
H.O.P.E.の職員は画面に表示された町並みを指で辿った。
「特徴的な外見から、主犯格は『緋色雀蜂』を名乗る小規模なヴィランズのリーダーと思われます。能力者を含む大量の配下を引き連れ、現在街中に勢力を展開して一人の少女を追い立てているようです。幸い一般人の被害は確認されていませんが、建物の壁や信号機などを巻き込みながら攻撃が行われ、危険な状態です」
機械的な顎を持つ男と、学生服を着た少女の画像が画面に追加される。
「エージェントの皆さんはヴィランズを拘束し、可能であれば彼女を保護してください」
画面は動画に切り替わった。設置された防犯カメラの映像だ。制服のスカートを翻し、驚くべき身のこなしで追っ手を振り切る少女の姿が映っている。
「彼女も、おそらく能力者でしょう。移動力、回避能力から、シャドウルーカーの英雄と共鳴しているものと思われます。接触の際にはご注意ください。彼女は街の外へ向かって闇雲に走り回っているようですが、逃走経路はある程度予測可能です」
逃げる少女と追う蜂の群れ。周囲を顧みない追跡のために時間が経つほど被害は広がっていく。いずれ一般市民が巻き込まれるかもしれないし、もちろん追いつかれたら少女も終わりだろう。
市民の安全のため、行動は迅速にお願いします。職員が会議を締めくくった。
解説
●目的
市街地で暴走しているヴィランの鎮圧。大村立羽の保護。
リーダーと配下の能力者は大村立羽の追跡に向けて行動している。彼ら以外の敵は警察でも対処できる一般人であり、能力者に該当する敵をすべて無力化した次点で鎮圧は達成となる。
●現場
茨城県某所の住宅街。
大村立羽の家と学校の間にある様々な建物や交差点が密集した地域。
一般市民は自主的に避難したか、屋内に籠もっている。建物を巻き込む攻撃は、無関係な市民に被害が及ぶかもしれない。
●大村立羽(おおむら たては)
つい最近シャドウルーカーの英雄と契約した人間の女子高校生。無愛想で反抗的。学校では身だしなみのよい優等生。「まあいい」「もういい」が口癖。
英雄の力を得て日常に醒めてしまい、危機感の麻痺と超常の過信が今回の事件を招いてしまった。
全力移動を繰り返し逃げ切ることだけを必死に考えている。エージェントを見ても逃げようとするだろう。強引に取り押さえると抵抗するかもしれない。繁華街を離脱されると追跡はほぼ不可能となる。
●ヴィラン
鉄顎の男。ギャング崩れのヴィランズ緋色雀蜂のリーダー。両腕と顎を機械化したアイアンパンクの男性。契約対象が英雄か愚神かは不明。
ライヴズを介した義手、強い力を持つ顎による物理攻撃を得意とする。回数に限りがあるが強力なシールドも備えている。
手下の能力者は八人。半数が刃物、半数が銃で武装している。手下の戦闘力は低い。
マスターより
どうも、長男です。
オオムラサキという蝶は、餌場に群がるスズメバチなど他の昆虫を羽根で叩いて追い払って食事をするそうです。
蜂を攻撃する蝶。なんと勇ましい生き物でしょう。一度でいいから見てみたいですね。
とはいえ、人間が人間に同じことをしたら衝突は避けられません。そして今回この蝶は案の定ひどい目に遭っています。
蝶の羽根が折られる前に、無軌道な若者の喧嘩を止めてあげてください。
皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
リプレイ公開中 納品日時 2017/07/02 21:28
参加者
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最終発言2017/06/24 00:43:57 -
相談卓
最終発言2017/06/25 22:01:17