本部
澄んだ鏡の向こう側
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/02 19:00
- 完成予定
- 2017/05/16 19:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/27 21:28:08 -
質問卓
最終発言2017/04/27 23:17:25 -
対ムラサキカガミ相談卓
最終発言2017/05/02 14:47:50
オープニング
●とある先生の物語
「おのれ……貴様!」
山羊頭の愚神は、槍を支えにやっと立つような有様で吼える。全身にはライヴスで作られた刃がいくつも突き刺さり、脈々と血が溢れている。その正面に立つのは、白い法衣の上から聖銀の鎧を纏う一人の青年。鎧はあちこちに穴が空き、法衣もぼろぼろだ。こちらも杖を支えにようやく立つような有様である。
「貴方を……この先へと通すわけにはいかないのです。この先には大切な子等がいるのですから」
「こちらにも使命がある。はいそうですかと、引き下がれるか!」
槍を地面から引き抜くと、倒れ込むように槍を突き出す。青年は避ける事もままならず、その槍に貫かれる。口から血を溢れさせ、青年はその身をくの字に折り曲げる。しかしその目に宿る必死の炎は消えない。既にリンクバーストも行い、身も魂も限界まで酷使している。だが、この青年は死んでもくたばらない生命力でこの世にしがみつき、教会で暮らす小さなみなしごを守るために愚神の前に立ち続けた。いくら手練れでも、ケントゥリオ級の愚神と一人で相対するなど無謀だというのに。
「いい加減に、死ねぇッ!」
焦れた愚神は、ついに槍を高々と振り上げ青年を真っ二つにしようとする。血を溢れさせて俯く青年がそれを防ぐ術は、最早ないかと思われた。――しかし。
「その言葉、そっくりそのままお返しします……!」
青年は振り下ろされた槍に向かって手を掲げる。その手に集まった光は鏡となる。ライヴスミラーだ。
「そんな、ものォッ!」
しかし、愚神は強引に槍を振り下ろす。鏡に剛力が叩きつけられ、見る見るうちに鏡はひび割れていく。青年は歯を食いしばり、唸る。
「させない……させない!」
刹那、鏡は紫色の輝きを帯びる。同時に鏡からは黒々とした影が飛び出し、巨大な槍を振り上げ愚神の心臓へと突き立てた。
「……! ば、馬鹿な。貴様、一体、何を……!」
「神の敵は、滅びる運命……」
愚神は断末魔の叫びを上げ、弾け飛んだ。どす黒い血が、聖職者の青年に降り掛かる。そしてまた、彼も限界を迎えた。ゆらりと傾ぎ、倒れる。
「……良かった。これで、彼らは守られた……」
青年は静かに目を閉じる。このまま共鳴は解け、能力者たる青年は、英雄たる青年は、満足の内に死出の旅へと赴く。その筈だった――
●鏡を見よ
夜、ようやく教会の扉は開いた。愚神が出ると聞き、隠れながら震えていた子供達はそろそろと姿を現す。様々な子達がいたが、脚を引きずる子もいれば、顔に大きな火傷の跡が刻まれた子もいた。皆、ひどい虐待を受けて逃げた子達であった。そんな彼らが唯一頼りにしていたのが、この教会で孤児院を営む美佐和彦だったのである。
「……ミサ先生?」
ぼろぼろのローブを纏い歩くその姿は、一瞬先生のように見えた。しかし直ぐにそうであり――そうではなかったと気付く。
「あ、ああああっ!」
少年少女は悲鳴を上げる。そこに立っているのは紛れも無く愚神だった。闇で出来た身体を持ち、紫色の光で出来た目が彼らを真っ直ぐに捉えている。彼らは悲鳴を上げ、不自由な身体でどうにかその場を逃れようとする。そんな彼らを、愚神は不思議そうに見渡した。
「……どうしたのですか? もう愚神はおりませんよ。怯えることはありません」
「ば、ばば、ばけ――」
「酷い顔ですよ。落ち着きなさい。……ほら、この鏡を見てみなさい――」
「馬鹿な。馬鹿な、馬鹿な!」
膝をつき、ムラサキカガミは絶叫した。鏡を通して見た己の所業に絶望して吼えた。鏡から現れた影は、あろうことか子供達を捉え、喰らったのである。彼らの中にある根源的な恐怖を取り除くために。そして彼は己が為そうとしている”救い”の意味に気が付いた。所詮は愚神の食欲に任せ、目についたもののライヴスを喰らおうとしていただけなのである。己の意志に関わらずに。
「違う! 私は、私はあの子達を守りたいだけだったのに! 目の前にて苦しむ人々を救いたいだけだったのに! どうして。何故! 私は誰をも救う事が出来ない!」
「それは、貴方が愚神となってしまったからなのですよ」
ムラサキカガミは息を呑む。顔を上げると、そこには影が立っていた。黒い衣を身に纏い、黒い杖を携えた。かつての己の影。ムラサキカガミが、まだ美佐和彦だった頃の残滓。懺悔を聞き遂げる司祭のように、牧師のように、彼は祭壇の前に立って彼を見下ろしていた。
「貴方はもう愚神だ。この世界に仇為すものだ。いくら貴方が人を救おうと願っても、もたらすのは混沌と破滅。貴方が最も憂い、忌み、嫌ってきたものです」
「……やめてください」
「いい加減に認めなさい。己を。己自身のある意味を。人を助ける真似事に何の意味があるのです。愚神なら大人しく世界を破滅へと導きなさい。それが貴方が今この世にあるべき意味です」
「やめてください!」
ムラサキカガミは悲痛な声で叫ぶ。その瞬間、背後から足音が響き渡る。やってきたのだ。彼に引導を渡すべく、エージェント達が。
「さもなくば、倒されなさい。彼らに」
「……神よ。貴方は私をお見捨てになられたのですね」
ムラサキカガミは己を理解した。この世の、敵であると。
●堕天せし者も救い手とならん事を望む
「何故なのですか」
目の前に立つ己の影と向き合いながら、ムラサキカガミは静かに声を絞り出す。
「私はこの苦難溢れる世の中で、心の闇に囚われ光を見失った方々を救いたかった」
その言葉に嘘偽りは感じられなかった。エージェント達には、誠心誠意の訴えと聞こえた。
「それなのに、何故私の手は誰も救う事が出来ないのでしょうか。何故誰もが、私の手にかかれば、闇に囚われそれっきりになってしまうのでしょうか。それは皆の心が弱いからなのでしょうか」
こちらには振り向かぬまま、肩を怒らせムラサキカガミは声を絞り出す。その姿は、まるで懺悔する罪人のようだ。
「……違うでしょうね。私は愚神であるからなのでしょう。私がもうこの世ならざる者であるから、私は誰も救えない……」
不意にムラサキカガミは振り返る。兜の隙から、紫色の涙が溢れている。
「何故なのですか!」
「何故私は手を差し伸べて人を破滅させる」
紅色の盾を構え、ムラサキカガミは苦しげに唸る。
「何故あなた方は手を差し伸べて人を救える」
蒼色の杖を掲げ、ムラサキカガミはエージェントを睨みつける。
「私も、あなた方も、苦しむ者を救いたいというこころは同じはずなのに!」
紫色のストラを振り乱し、ムラサキカガミは声を荒げた。それはムラサキカガミとしての叫びなのか、“ではなかった”者としての叫びなのか。
「教えていただけませんか……」
ムラサキカガミは呻くように声を絞り出し、よろよろと前へと進み出る。その隣には彼が彼であった頃の残滓が黙して立つ。愚神は杖を掲げると、絶叫した。
「あなた方が希望の名を冠するに相応しき者たれる理由を!」
解説
メイン ムラサキカガミの討伐
失敗条件 戦闘区域から全員が撤退する
エネミー
ムラサキカガミ【飢我】
己自身を鏡に映したことで絶望した愚神。自暴自棄となってエージェントに立ち向かう。
ステータス
攻守F、生命S、命中A、回避D、その他B-C
スキル
紅の破魔鏡
最終ダメージを90%軽減する。【紅or紫の因縁】を持つPCの攻撃は60%軽減する。
蒼の天来光
交戦中のPC4体まで対象。目標の物攻or魔攻を加算してダメージを与える。【蒼or紫の因縁】を持つPCには加算が無効。
紫の聖職衣
【『無情』の因縁】を持つPC以外のBS付与を無効にする。
Tips
蒼の天来光によるターゲットは完全にランダム。
今回は逃走する気は無い。死ぬまで戦い続ける。
己の自我を認めたため、固有の攻守ステータスが発生している。
Speculum
ムラサキカガミの心の闇。『彼ら』がリンカーだった頃の残骸。ムラサキカガミと共に戦う。
ステータス 邪英化生命メディック(65/30)相当
スキル
聖槍×4
ブラッドオペレートの強化版。減退(1)→(2)
復活×4
リジェネーションの変異版。リンクレート分→10
殉教
絶たせぬ術の強化版。100%上昇→150%上昇
審判
プリベントデクラインの強化版。【減退】【封印】→全BS
Tips
スペクルムが倒れた場合、ムラサキカガミの生命力が半減する。
ムラサキカガミが倒れた場合、スぺクルムは消滅する。
フィールド
廃墟の教会。
椅子や祭壇の残骸が転がっており、脚を取られてしまう場合がある。
広さは15sq×20sq。
壁は攻撃すると崩れる。崩落の危険があるため注意。
Hint
・エピローグ
戦闘終了後に挿入。関連依頼に登場したNPCに会って話を聞く事も可能。
マスターより
影絵企我です。
ムラサキカガミとの因縁もここで終焉です。全力でぶつかってください。実質シリーズの最後という事で、相応のギミックを用意させていただきました。描写としては『我を通す』という形でスキルを無効化する事になるので、格好いいプレイングを期待しております。スキルなど変わっていますが、情報の落とし込みなどは必要なしです。
軽く調査を行う事で、OPでのムラサキカガミの回想を推測程度ですがPC情報に落とし込むことが出来ます。エピローグを入れる予定なので、そのあたりで生かして頂ければ嬉しいです。
格好良く葬ってくださることを期待しております。
ではでは。
リプレイ公開中 納品日時 2017/05/08 16:46
参加者
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/27 21:28:08 -
質問卓
最終発言2017/04/27 23:17:25 -
対ムラサキカガミ相談卓
最終発言2017/05/02 14:47:50