本部

戦闘

命も凍る嵐のなかで

星くもゆき

形態
ショート
難易度
難しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/10/30 22:00
完成予定
2016/11/08 22:00

掲示板

オープニング

●囲まれて
 西シベリアの都市スルグトは、異常な事態に陥っていた。
 なんの前触れもなく大量の従魔たちがスルグトに向けて進軍を始め、あっという間に都市の周縁に異形の包囲網を形成されてしまったのだ。白い野に、すきまなく従魔たちが集まっているのは壮観であり、とてつもない恐怖だった。これが地獄の光景だと言われれば、誰もが納得しただろう。
 すぐにロシア軍はスルグトを防衛するための戦力を配備し、H.O.P.E.に救援要請を出したが、従魔の大群に攻め寄せられては大被害は免れないと思われた。
 しかし、見渡す限りの従魔たちはすぐにスルグトを攻めつぶすということはしなかった。都市の外へ出ていこうとする者には逃亡は許さじと襲いかかったりしたが、ほかに特に都市を攻撃するようなそぶりは見せていない。
 ただ、包囲している。遠巻きに都市を眺めて、時折脅かすような咆哮をあげて。
 スルグト周辺に異様な雰囲気がただようなか、時間だけが足早にすぎていった。

●急襲
 ロシア連邦軍が防衛のための戦力を都市スルグトに展開したために、さながら街は戒厳令下の状態だった。
 従魔の大群と相対する都市外縁にくらべれば、スルグトの中心部は静かであるとは言えた。もちろんのどかに時をすごすなどできるはずもないが、それでも視界に従魔の姿がないというのは精神的には大きなことだ。
 おかげで、敵の侵攻にそなえているロシア連邦軍の兵士たちは、少しの立ち話をするぐらいの余裕を持つことができていた。
「しかし、どうなってんだろうな、こりゃ。多勢で押しかけてきたのに、何をするでもなく囲んでいるだけってのは……」
「知るかよ。化け物の考えることなんて。攻めるつもりがないならさっさとお帰り願いたいがね、俺は。じっとこっちを見続けてるなんて気味が悪すぎる」
「だよなぁ。俺もそう願うよ。望みは薄いかもしれんが……心変わりして家に帰ってくれたら万々歳だ」
 そんなことを話して、互いに乾いた笑いを発した兵士たちは、ふと上空をなにかがよぎったのを感じた。鳥でも飛んでいったのかと一瞬頭に浮かんだが、体のほうはもっと違うなにかだと訴えていて、彼らは体が命じるままに持っていた小銃をかまえた。
 次の瞬間には、吹き荒れる寒風が兵士たちの体をあおっていた。身を切るような冷気だった。ついさっきまで晴れた寒空が見えていたのに、今は強烈な雪嵐のなかにいるようで、数メートル先でさえはっきりとは見えない。
「……この程度の戦力で、守っているつもり、なら……ロシアの連中も、たいがい頭が悪い」
 低く、くぐもった声が聞こえた。声帯から這い出るような、歯切れの悪い声だった。
 兵士たちはその声へ向けて銃口を向けたが、引き金を引く前に長い鎖が彼らの腕に降りかかった。衝撃に小銃は手を離れ、鎖をあやつる者の力に耐えきれずに兵士たちは地面に叩きつけられた。
 そして、近づいてきた人影を、彼らは見た。
 異様な風体だった。形はひどく長身な人間の男だったが、冷気のなかにもかかわらず上半身は露わになっており、白い肌にボディペイントの青色がいやに映えている。地に届くほどの白い長髪で顔はよく見えず、左腕の肘から先は妙に肥大化していた。鉤爪付きの手甲をつけたその異質な腕を見るだけでも、人間でないことはよくわかった。よく見ると、兵士たちを押さえつけている鎖も、彼の首輪から伸びている。
 愚神に襲われた。それを察した兵士たちは急いで戦おうとする。だが鎖を乗せられた腕がぴくりとも動かない。それどころか動かそうとする感覚すらもない。
 目を向けると、鎖に触れた腕が完全に凍結していた。びっしりと白い霜に覆われて、何も感じない。
 悲鳴をあげた。だが声は出なかった。その時になって、兵士たちはようやく気がついた。
 霜は腕だけでなく、肩から胸や首へとひろがっていた。凍っていたのだ。なにもかも。
「……おまえらでは、なんの楽しみも、ない」
 巨大な左腕が振るわれると、氷像と化していた兵士たちの体が粉々に砕けた。血の一滴も流れずに、ただ破片として散らばったそれは、とても人間の体だったものとは思えない。
 愚神が地に下ろしていた鎖を振りあげて右腕に巻きつけ、踵を返してどこかへ向かおうとすると、異状に気づいた増援の部隊がちょうど次々と到着してきていた。
「……仲間想い、だな。あの世まで、付き添ってやるのか」
 愚神が1歩進むと、ロシア軍の放つ銃撃の音がけたたましく市街に響いた。
 しかしものの数秒も経てば、その音も完全にやんで、辺りには大小の氷塊が無数に転がるのみだった。
 命を奪うその暴嵐は、そのままスルグトの市役所に向かって突き進んだ。市役所近くには市民会館があり、ロシア軍はそこにスルグト防衛のための指揮所をしつらえている。
 一気にロシア軍の頭を狩る。愚神の目的がそれであることは、予想するにかたくない。

●命奪う嵐
 スルグト防衛の依頼を受けていた『あなた』たちは、敵を目指してスルグト市内を疾走していた。連鎖的に発生している銃声や砲撃音を聞けば、敵の侵入は明白だったし、移動ルートをたどるのも難しくはなかった。
 敵の気配に接近するほど、寒波が猛烈に勢いを強めていた。天候不良、であるはずがない。これは敵が引き起こしているものだということは肌で理解できていた。
 確実に敵に近づいていくなか、オペレーターからの通信が入る。
「簡単に状況を説明します。敵の数は1体、おそらく愚神です。市街の中心部に突然、上空から降下してきたようです。市街地の寒波も同時発生していることから敵の特質である可能性大。現在は、ロシア軍指揮官が詰める市民会館に迫っています。理由は不明ですが、指揮所を落としての一気の制圧を狙っているのかもしれません。ロシア軍が応戦していますが、食い止められるとは思えません、迅速に敵の迎撃にあたって下さい!」
 オペレーターの説明を聞きながら、『あなた』たちは市民会館まで到達した。寒波はさらにひどくなり、辺りには吹雪が舞っている。
 そしてその吹雪の向こうに、すらりと大きな男が動いていた。その周りにもいくつかの影が動き、銃火が閃いている。ロシア軍の兵士だろう。
 寒波のなかであろうと、やはりロシア軍兵士たちの戦闘に乱れはなかった。確かな訓練が生む緻密な連携で、迅速に目標を攻撃していた。
 しかし、愚神が一度腕を振るっただけで、その強靭な命は次々と散っていった。土くれを崩すような容易さで。人はおろか、配備された戦車すらも愚神は軽々と弾き飛ばしている。
 蹂躙されていた。圧倒的な暴力で。
 身を押しつぶすような威圧感を感じる『あなた』たちの耳に、さらにオペレーターの声が飛んできた。

「また、敵の推定戦力はトリブヌス級! 繰り返します、敵はトリブヌス級!!」

 想定を超えた嵐が、『あなた』たちの眼前に迫っていた。

解説

■概要&クリア目標
 エージェントたちは、従魔の大群に包囲された、西シベリアの都市スルグトに救援に向かう。
 だが従魔たちは都市を包囲しながらも積極的に攻勢には出ず、戦況はじっと膠着状態が続いていた。
 そんななか突如として、1体のトリブヌス級愚神が防衛線を無視したかのように市内中央に出現する。
 そのまま侵攻する愚神の攻撃目標は、ロシア軍指揮官が詰める指揮所だった。急に単騎で攻めてきた理由は不明だが、敵は一気にスルグトを陥落させるつもりであると考え、エージェントたちは愚神の迎撃にあたる。
 課せられる任務は『指揮所(市民会館)の防衛』と『トリブヌス級愚神の撃退』である。また周囲にはロシア軍兵士も多数生き残っているので、できることなら彼らを生存させてほしい。

※愚神は一定時間が経過or一定ダメージを与えることで撤退する。(PL情報)

■敵
・トリブヌス級愚神『???』
 2メートル近い、すらりとした長身の男。喋り声ははっきりとしないが、会話は可能。
 近接型パワーファイターと推測される。物理攻撃が極めて高い。回避は低い。
 右腕の鎖を敵に巻きつけて拘束したり、手甲のついた左手での殴打などをしてくる。他の攻撃方法は不明。
 だが、あらゆる攻撃に強烈な冷気をともなうことは判明している。凍結してもリンカーなら動けるが、移動や命中、回避に悪影響が出るだろう。(クリアレイやラウンド経過での回復は可能)

■状況
・現在位置は市民会館の正面。PCたちが突破されれば指揮所は陥落するだろう。
・状況が悪すぎるので、指揮所機能の移転などは不可能。
・市街地のため、遮蔽物は多い。
・周辺にはロシア軍兵士の生き残りが多数存在。一般人ではないので、機を見て自力で退避することはできるだろう。ただし愚神に攻撃されればまず命を失うだろう。

マスターより

 どうも、星くもゆきです。
 今回はトリブヌス級愚神を相手にした防衛線となります。
 スルグトの街は従魔の大群に包囲されており外側も大変ですが、こちらは内側の戦いです。
 愚神へのダメージと、ロシア軍や自分たちの被害軽減が成功度につながります。
 よくばると失敗するかもしれないので、ほどほどに。

 それでは、お気をつけて。

リプレイ公開中 納品日時 2016/11/12 19:41

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 傍らに依り添う"羽"
    アトリアaa0032hero002
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 挑む者
    秋津 隼人aa0034
    人間|20才|男性|防御
  • ブラッドアルティメイタム
    aa0034hero001
    英雄|11才|男性|バト
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
    人間|19才|女性|命中
  • 妙策の兵
    レティシア ブランシェaa0626hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • HOPE情報部所属
    百目木 亮aa1195
    機械|50才|男性|防御
  • 生命の護り手
    ブラックウィンド 黎焔aa1195hero001
    英雄|81才|男性|バト
  • 我が身仲間の為に『有る』
    齶田 米衛門aa1482
    機械|21才|男性|防御
  • 飴のお姉さん
    スノー ヴェイツaa1482hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • 死を殺す者
    クレア・マクミランaa1631
    人間|28才|女性|生命
  • ドクターノーブル
    リリアン・レッドフォードaa1631hero001
    英雄|29才|女性|バト
  • 慈愛の『盾』
    四童子 鳴海aa4620
    人間|26才|男性|防御
  • 無慈悲な『剣』
    緑青aa4620hero001
    英雄|23才|女性|カオ

掲示板

前に戻る
ページトップへ戻る