本部
逃れ得ぬもの
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 7人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/07 15:00
- 完成予定
- 2015/10/16 15:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/10/07 10:58:04 -
相談卓
最終発言2015/10/07 11:21:33
オープニング
●運命
実に都合の良い言葉だ。
我が身に降りかかる、ままならぬありとあらゆる事象を、人はそう名づけた。
それだけでは飽き足らず、やがて神格まで与え、時に讃え、賛美した。
なんと素晴らしき発明か。
奪われ、貶められ、傷つけられ、蔑まれ、生の苦しみは尚、続く。
だが、この世のあまねく不満は、彼女が一身に引き受けてくれる。
たとえ怨敵に欠いたとて、彼女を目の仇として憎む事が許される。
あるいは状況が好転したのなら、掌を返して崇め奉る事さえ、認められる。
とはいえ、さる叙事詩によれば、幸と不幸では後者が二倍あるのだそうだ。
やはり、彼女に向けられるべき感情は多く、負のそれなのだろう。
「そうだな? カルミナ」
「ええ、フォルトナー」
満席のヴィンヤードホールの中央で初老の紳士が問えば、傍らで縁起の悪い色をしたドレスの女が素っ気なくいらえた。
その豊かな黒髪は総て額に纏められ、ヴェールの如く、目許はおろか顔全体をすっぽりと覆い隠している。
髪間から時折覗かせる細い顎の生っ白さと、無表情な真紅の唇が不気味だ。
紳士――フォルトナーはカルミナと呼んだ女から目を逸らし、タクトを振るう。
次いで首から上が鴉や黒猫といった胡乱な姿をした楽団員達が一斉に、あるいは後を追って、指揮に沿って繰り広げる。
人の悲運を、運命を、痛ましい調べに乗せる。
楽曲が盛り上がるたび、カルミナの周囲から円環がしなり飛ぶ。
聴衆の幾人かの首も飛ぶ、返り血も飛ぶ、悲鳴も飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。
「お前のせいだ」
「ええ」
タクトがなびく、独唱が響く、カルミナを中心に甲高い音が鳴り響く。
音は波となって放射され、客席の最前列から順に、矢継ぎ早に、数多の聴衆の体内の爆ぜる音色がなめらかに、ある種の心地よさすら伴って響く。
「お前のせいだ」
「そうね」
この不毛なやり取りを交わしたのは何度目だ。
否、たちこめる血煙に麻痺しかけた頭脳が浮かべた疑問こそ、不毛。
そうとも、不毛だ。この世の何もかも。如何に練磨し、売り込み、出し抜こうとも、結局は運命に従うしかないのだから。
破滅とは、ある日突然、何の前触れもなく訪れるものなのだから。
だから、コンサートに突如舞い降りたカルミナを、フォルトナーは運命として受け入れた。
結果、長年付き添った楽団とは死別する事となり、代わりに、いつしかカルミナの元へと集った怪しき者どもが、彼の楽団となった。
その後の事は、よく覚えていない。
何年も経ったような気もするし、まだ一夜明けてすらいないのかも知れない。
確かな事は、彼女は何もしないという事。
楽団員とて、フォルトナーが指揮を執らなければ同様だ。
だが、フォルトナーは『誓約』という名の運命に従い、タクトを振るい続けた。
ゆえに。
「でも」
この殺戮は。
「貴方のせいよ」
助けて! 誰か!
●神意ですらない
「皆さん、クラシックはお好きでしょうか」
オペレーターは、まずそんな事を言った。
「ドイツはライプツィヒの、とあるコンサートホールに愚神が出現しました。名はカルミナ。彼女は自身の影とでも呼ぶべき者達を従えて、聴衆を次々手にかけた……と言うのとは、いささか趣きが異なるのかも知れませんけれど」
かと思えば、今度は煮え切らない。何か特段の状況でもあるのか。
「現時点での生存者は一名。指揮者のフォルクハルト・フォルトナー氏です。彼はどうやら能力者の素質を持ち合わせていたらしく、コンサートの最中、なんらかの弾みで、無意識的にカルミナを召喚してしまったものとみられます」
殺戮の起点となるのは、そのフォルトナーがタクトを振るう時なのだそうだ。これに応じて楽団が演奏すると、人が死ぬ。カルミナの周囲から放たれる、『暴力』によって。
また、影の楽団員は、害意のある者がカルミナ本体やフォルトナーに近づけば、演奏の手を止め、行く手を阻もうとするだろう。更に、間を置けば従魔を呼び寄せ、新たな犠牲者を招き、ドロップゾーンの拡大へと繋がる。
「少なくとも今すぐに向かえば、氏以外のの生存者の事を気にせず戦えます。前述の理由から、彼が襲われる可能性も低いでしょう。幸い……なんてお世辞にも言えませんけれど」
――目的は愚神カルミナの撃破。
「フォルトナー氏の処遇に関しては……そうですね、皆さんにお任せしますよ」
HOPEとしては逮捕が望ましいのだろうが、状況が状況ゆえの判断か。
「改めてお尋ねします。クラシックは、お好きですか」
好むと好まざるとに関わらず、誰かがやらなければならない。それでも、あえてオペレーターは再度問うた。
「もし、多少なりと感じるところがおありでしたら――どうかよろしくお願いします」
これ以上の被害が出る前に。
解説
【目的】
愚神カルミナの撃破
【ドロップゾーン】
中央に舞台を配し、その周囲を階上の客席が囲む、いわゆるヴィンヤード型のコンサートホール。
ホールへの侵入口は、一階の舞台を前後から挟んだ二ヶ所と、二階客席壁際の四方に配された四ヶ所。
最初の犠牲者達の亡き骸が散乱し、血の海と化しています。
【カルミナ】
黒尽くめのケントゥリオ級愚神。
フォルトナーの傍から動かず、自らは喋る以外何もしません。
以下、特殊能力。
(※発動は彼女の意思ではなく、指揮に伴う楽団の演奏によって起こります)
・『舵』(遠距離攻撃)
射程内の一定範囲をまとめて薙ぎ払います。
発動しない間はカルミナの周囲を漂い、接敵時の攻防を自動的に担います。
・『歌』(攻撃力:中)
フォルトナー以外のリンカーや人間全てを高周波音で攻撃。
直撃を受けると一時的に耳が遠くなり、音を頼りに行動し難くなります。
・『友』(特殊)
カルミナの抜け毛から自動的に発生。後述の影の楽団がそれにあたります。
【影の楽団:戦闘開幕時36体】
『友』によって発生した、鴉や黒猫などの顔をした紳士淑女達。
通常は演奏に徹し、カルミナやフォルトナーに害意を持つ者に、各種楽器を鈍器にしたり投げつけるなどして攻撃します。
一撃でも浴びせれば消滅しますが、数が多く、更に増える可能性もあるのでご注意を。
【フォルトナー】
初老の紳士。指揮者にして能力者。
カルミナの『舵』『歌』は彼の指揮が起点となります。
マスターより
藤たくみです。
クラシック音楽はお好きですか?
藤は好きですが、実のところちっとも詳しくありません。
というわけでお詳しい方はどうぞお手柔らかに(すいません)、そうでない方もお気軽に。
でも、戦闘はきっちり判定しますので、その点はお気をつけくださいね。
それでは、ご参加お待ちいたしております。
リプレイ公開中 納品日時 2015/10/16 18:47
参加者
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/10/07 10:58:04 -
相談卓
最終発言2015/10/07 11:21:33