本部

戦闘

“ごっこ”の果てに

和倉眞吹

形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/25 12:00
完成予定
2016/05/04 12:00

掲示板

オープニング

「能力者ごっこすーるもーの、こーのゆーび止ーまれ!」
「はいっ」
「はーいっ」

 夕暮れ時に差し掛かった廃寺の境内に、幼い子供の声が木霊する。
 境内には、十数人の小学校中学年くらいの子供達が集まり、楽しげに駆け回っていた。

「じゃあ今日も一夫が愚神な!」
「えーっ」
 一夫、と呼ばれた少年は、明らかに気分を害したように、顔を顰めた。
「もうヤだよ。僕、昨日も一昨日もその前の日も、ずーっと愚神だったじゃん! 何で僕だけいつも愚神なんだよぅ」
 すると、少年の中のリーダー格も眉根を寄せて反論した。
「仕方ないだろ。ジャンケンで決めるんだから、いつも負ける一夫が悪いんだよ」
「そうだ、そうだ」
「仕方ないよねぇ」
 共に遊んでいる少女達も、クスクスと笑っている。
「ホラ、早く散れ散れーっ! 一夫は早くドロップゾーンの場所を決めろよ!」
 一夫は、暫し渋面でいたが、唇を尖らせて廃寺の建物に歩み寄る。
「今日はこの中がドロップゾーンだ。ここに入ってタッチされたら、そいつが今度は愚神だからな」
「えー、それじゃ詰まらないだろ。能力者ごっこ、する意味ないじゃん」
「そーだよ。もっと広い所使えよ」
「それに、触ったら終わりなんて、ただの鬼ごっこじゃあるまいし」
「対戦して一夫が勝ったら、今度は負けた奴が愚神だ」
「じゃあ、始めるぞーっ! 女子は愚神に捕まった一般人な」
 一方的に決めてしまうと、リーダー格の耕一は、他の少年達を誘って境内の方々へ散らばった。

 世界蝕から、早二十年。
 能力者、愚神、従魔、HOPEという言葉が一般社会にも浸透して随分経つ。必然、子供社会の間にも、時折こういった“ごっこ遊び”が流行ることもあった。
 だが、連日自分だけが愚神の役をやらされるのにうんざりしていた一夫は、溜息を吐いて、境内を出る階段へ歩を進める。
「あれ、横溝君、どこ行くの?」
「違うわよ、今は愚神じゃない」
 背後でヒソヒソと話す女子の声さえも、一夫には鬱陶しい。
「能力者はいませんかぁーっ! 愚神が逃げますよーっ!!」
「うるさいな、僕はもう帰る――」
 勢いよく振り返った一夫の目に映ったのは、数人の女子だけではなかった。女子達と、一夫の間に、身体から仄かな光を放つ少女が浮いている。
 年の頃は、一夫達と同じくらいだろうか。
 ストレートの黒髪をツインテールにして、巫女の衣装を身に纏っている。格好は違うものの、まるで日本人形のような容姿だ。
「妾(わらわ)を呼んだのは、そなた達か?」
「は……?」
「呼んだであろう。それとも、能力者を呼んだのか?」
 一夫も女子達も、唖然としてまともな言葉を返せない。何が起きているのかも、うまく把握できずにいた。
 そんな一夫達には頓着せずに、黒髪の少女は嫣然と微笑んだ。
「愚神を捕らえるのであろう? 能力者がここにいるのなら、早く助けを呼んだらどうだ?」

「おい、愚神! いつまで待たせる気だ?」
 境内に散ってから、かれこれ三十分は経った。いくら何でも、間が空きすぎだ。
 そう思った耕一は、境内に小走りで戻りながら大声で呼ばわる。しかし、返事はない。
 一夫の奴、折角人が楽しく遊ぼうって言ってるのに、ノってこないなんて。
 ブツブツと内心でこぼしながら、境内の広場へ戻った耕一は、唖然とした。女子六人と一夫の姿はない。代わりに、巫女の格好をした少女の後ろ姿が見えた。
「おーい、耕一。どうした? 愚神はまだ見つからないのか?」
 ごっこ遊びの延長のつもりでいる仲間の呼び掛けに答える余裕は、耕一にはなかった。背後から声を掛けてきた少年も、耕一の前に立つ少女に気付いたのか、口を噤む。
「そなたらは、能力者か?」
 不意に、口を開いた少女が、ゆっくりと振り返った。
 確かに見知らぬ少女の筈なのに、彼女の顔には、どこか見知った面影が重なる。
「一夫……?」
「そうか。この身体の主は、カズオと言うのか」
 クスリ、と笑った少女の中に、一夫の顔が見え隠れした。
 見た目は確かに巫女姿の少女だが、身体は一夫のものなのか。いや、分からない。一体、何がどうなっているのか。
「そなた、これなカズオを“愚神”と扱うて痛め付けていたであろう?」
「あ……」
 何故、それを知っているのか。訊きたいが、言葉にはならない。
 逃げなければ、と本能が警鐘を鳴らすのに、震える足は踵を返すことすらできなかった。
「能力者になりたかったのか。愚神を、倒したかったのか?」
「あ……ああ……」
「なれば、本物の愚神である妾が相手になってやろうて。そなたは強いのであろう? いつでも掛かってくるが良い」
 言い終えるなり、少女はすうっと何もない空間に腕を水平に差し伸べた。彼女の周囲や伸ばされた掌の中に、閃くように炎が顕現する。
 それは、彼女が“自称”愚神ではなく、正真正銘、本物のそれである事を示していた。
「う、うわぁあああーっっ!!」
 瞬時に事実を呑み込んだのだろう。悲鳴を上げたのは、耕一の後ろにいた少年だった。どうにか視線だけを巡らせると、彼の後ろ姿だけが視界の端に映って消えた。

「父ちゃん、父ちゃんっっ!!」
 埼玉県某市にあるHOPE支部に、事務職員として勤めていた柳沼竜二は、息子の巌(いわお)が叫びながらエントランスに転がり込んで来たのに目を剥いた。
「静かにしなさい、巌。ここで父ちゃんは遊んでる訳じゃないんだぞ」
 声を潜めて言うも、興奮しているらしい息子の耳には入らなかったようだ。
「それ所じゃないよ、父ちゃんっ! 愚神が、愚神が出たんだよぅっ!!」
「愚神?」
 それを聞いて、受付カウンターにいた何人かもこちらへ目を向ける。
「巌。能力者ごっこなら、いつも通り友達と余所でやりなさい」
「本当に出たんだってば! 一夫が中々来なくて探しに境内に戻ったら、女子がいなくて知らない女の子がいて炎が出て」
「少し落ち着こうか? で、能力者役の子は皆やられちゃったのかい?」
「だから、遊びの話じゃないんだってばっっ!!」
「――穏やかじゃありませんね」
 すっと巌の背後から手が伸びて、女性職員が柳沼に視線を向ける。
「嘘だと決め付けないで、柳沼さんこそ落ち着いて、少し息子さんに詳しい話を聞かれたらどうでしょうか」

「――という経緯で、皆さんに集まって頂きました」
 ミーティングルームに召集されたエージェント達を見回して、女性職員が続ける。
「現在、ここから一キロ程離れた廃寺の境内で、近所の小学校の四年生が十数人で遊んでいました。女の子が全部で六人と、横溝一夫君が行方不明。柳沼巌君の証言によると、北口耕一君という少年が、愚神と見られる少女と対峙していたそうです。他の少年三名については、安否は分かっていません」
 最早、コトは一刻を争う。
「至急、現場へ向かって頂けますか」
 子供達の命が掛かっている。否やを唱える者など、その場にはいなかった。

解説

▼目標
・一夫を含めた少年五名を保護
・可能なら愚神の討伐

▼登場
炎朱(えんじゅ)…愚神。この世界に顕現した時はミーレス級だったが、少女六人を捕食し、一夫の身体を乗っ取った事でデクリオ級に。
好戦的な性格。
容姿>本体は、黒くて長い直毛をツインテールにした、日本人形のような外見。巫女姿。見た目は十歳前後。一夫の身体を乗っ取る事で実体を得たが、今現在の容姿も本体が基本。
戦闘>ライヴスを炎状にして攻撃。火の玉状にして投げる、炎で囲んで焼く、等形状は多彩。それ故に水での攻撃には弱い。
つい先刻この世界に顕現したばかりで、戦い慣れしていないところも弱点と言えば弱点。

横溝 一夫…愚神に身体を乗っ取られてしまった、小学四年生。
仲間内の能力者ごっこで、いつも愚神の役にされるのを不満に思っていた。

北口 耕一…一夫のクラスメイト。ガキ大将タイプで、いつも能力者ごっこではリーダーの役。ジャンケンで決めるので、いつも一夫に愚神の役が当たってしまうのも公平な事だと思っていた。愚神の目の前に取り残されている。

柳沼 巌…耕一、一夫のクラスメイト。父親の竜二がH.O.P.E.の事務職勤務。父親の職業柄、能力者ごっこの言い出しっぺは彼。

▼PL情報
◆境内は、敷地面積三百平方メートル。
ほぼ中央に本堂があり周囲は鬱蒼とした森と見紛う木々に囲まれている。
本堂の正面は百メートル程石畳が続き、その先は階段。五十メートル程下った所で道路に出る。
少年達は、森の中に各々隠れているらしいが、あまり広くはないので、愚神に見つかるのは時間の問題。
敷地の外も木の生えた山が続き、特に境界線や柵はない。逃げようと思えば逃げられない事もないが、少年達には裏手方面の土地勘はない模様。
境内下の道路は、ごく偶に車が通るというくらいの田舎道。敷地外から半径五百メートル前後には民家もない。

◆内原 尚人、玉手 将吾、武下 雅昭…所在不明の少年達

マスターより

こんにちは。和倉眞吹です。

今回は、『中二病×2……』と唱えながら考えたOPですが、イマイチ中二病になり切れない感じに仕上がりました(そも、“中二病”の何たるかを正しく理解できているかは不明です、念の為)。
敢えて言えば、『中二……病?』みたいな。

小さい事件ぽくなりますが、いつも通りプレイングはできるだけ詳しく、で宜しくお願いします。
皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております。

リプレイ公開中 納品日時 2016/04/29 21:01

参加者


  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 魔の単眼を穿つ者
    繰耶 一aa2162
    人間|24才|女性|回避
  • 御旗の戦士
    サイサールaa2162hero001
    英雄|24才|?|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • エージェント
    風深 禅aa2310
    人間|17才|男性|回避
  • エージェント
    虚空aa2310hero001
    英雄|13才|女性|シャド
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 生の形を守る者
    アリス・レッドクイーンaa3715hero001
    英雄|15才|女性|シャド

掲示板

前に戻る
ページトップへ戻る