本部
クモは空に流れ
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/21 19:00
- 完成予定
- 2016/04/30 19:00
掲示板
-
スパイダーハイジャック
最終発言2016/04/21 12:03:23 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/04/19 07:08:59
オープニング
●関東上空・687便客室
「見てよアキラ、雲が視界の遙か下だわ」
旅客機の小さな窓から、眼下に広がる雲海を見渡し、イルミア・フローレント(az0015hero001)は子供の様にはしゃいだ声を上げる。
「落ち着けよイルミア」
隣に座る和波アキラ(az0015)は、窓際ではしゃぐイルミアを小さな声で窘めた。ここは修学旅行へ向かう旅客機の中。周りの席はほぼクラスメイトで固められている。クラスでも目立つ存在のイルミアの行動は、必然的に周囲の目を引いた。
「そんなにはしゃがれると、こっちまで恥ずかしいだろ」
聞こえてくる小さな笑い声に、アキラは少し頬を赤らめる。
「……ていうか、なんでイルミアが修学旅行についてきてるんだ?」
「修学旅行って、クラスのみんなと行く旅行でしょ?」
「一応修学とは言ってるけど……まあそうかな」
「なら、私もアキラと同じクラスなんだから当然じゃない」
「いや、その理屈は……」
イルミアはアキラと同じ学校に通っているし、学校側もそういうものだと思っているのか特に何も言わないが、イルミアは生徒というわけではないと思うのだが……。
「アキラ君、イルミアさんを置いてくつもりだったの?」
アキラを挟んでイルミアと反対側の席に座るリナが、やや非難する様な口調で言う。イルミアとリナはもうすっかり打ち解けていて、ともすればアキラは二人の勢いに流されそうになる。リナ一人の時にはなかった事だ。
「そういうわけじゃないけど……」
最近は家でも学校でも、イルミアと四六時中一緒だ。それが不満というわけではないが、アキラも思春期の少年。以前のように静かな時間が欲しい時もあった。
「英雄が契約者とずっと一緒に居るのは、当然でしょ? それにもし一人で居る時敵に遭遇したらどうするの?」
「まさか」
イルミアの言葉をアキラは笑う。確かに、先だっては温泉でたまたま愚神と遭遇したが、そう言う偶然がそうそう続くはずもない。
「いくらあいつらが神出鬼没だからって、そんな続けて出てこないだろ」
●687便・操縦室
「機長、前方に巨大な積乱雲の反応があります」
「積乱雲?」
副操縦士の言葉に機長は不審な顔をする。前方の視野は良好だ。雲海は遙か下方に有り、前面には薄い雲しか見えない。
「見間違いじゃないのか?」
「いえ、確かに」
機長の言葉に、副操縦士ははっきりとそう答える。だが、窓の外を見直してもその様な物は確認できない。
「ふむ……?」
計器の故障だろうか、だとすれば運航を中止せねばならないが……そう考えた瞬間。突然良好だった前面の視界が雲の様な真っ白な物体に覆われた。
「なんだ!?」
間髪置かず、操縦室の前面を覆う強靱な風防が砕かれた。仮に巨大な積乱雲に突入したとしても、このような事態が起こる筈はない。起こり得るとすれば……。
「ガッ……!?」
有り得べき唯一の可能性に思い至った機長の首に、割れた風防の向こうから飛び出した黒い槍の様な物が突き刺さる。
「機長!?」
真横で起こった突然の惨劇に副操縦は驚愕の声を上げ、喉を貫かれた機長の方を見た。機長の体は貫かれた首を起点に吊しの服の様にぶらぶらと揺れ、力を失ったその体には鮮血が流れている。脈を取るまでもない、即死だ。
「なんだ……こりゃあ!?」
機長の首を貫いたのは、うねうねと動く関節と無数の鋭い突起を持った黒光りする外殻。副機長はそれに、子供の頃に見た気味の悪い節足動物の足を想起した。
「おっと……殺しちゃったか」
軽い声と共に、雲……ではなくい。雲に見えたのは、羅紗の様に折り重なった細い糸。その向こうから、パンクロッカーの様に肌を露出した細身の男がぬるりと姿を現わす。男の背からは、たった今機長の命を奪った奇妙な突起が、八本も伸びている。
「なんだ……お前は!?」
「しまったなぁ……フルミネ様に怒られる」
男は副機長の問いを無視して頭を掻くと、機長を突き刺した脚を勢いよく振った。振り払われた機長の体は、濡れ雑巾の様に操縦室の壁に叩き付けられ、グシャリと嫌な音を立てた後、血の跡を残して床に落ちる。
「まあいいか……餌はまだいっぱい居るもんね」
そう言うと、男は初めて副機長の顔を見た。
「ひっ!?」
短い悲鳴を上げる副機長。男はにっこり微笑むと、陽気な声で言う。
「痛くないよ、眠るのと同じさ……目は覚めないけどね」
男の手首から白い糸が吐き出され、それはあっという間に副機長の体を包み込む。彼の言葉通り、副機長は痛みを感じる間もなくその意識を失う。
「さて……ご飯はこの向こうか」
男……『流雲のアラニア』はそう呟くと、客室へと続くドアを見つめ小さく笑った。そして白い糸に覆われた操縦室の窓を見返る。
「お前達も、お腹が減ったろう?」
その言葉に応えるように、窓を覆う糸の隙間から体長1m程の巨大な蜘蛛が這い出す。蜘蛛達はカサカサと蠢き、客室へと続くドアの前に集まった。
「わぉ! やる気満々だね……だけど」
アラニアは八本の足の爪をドアに掛ける。
「ごめんね、食べちゃ駄目なんだ……お土産だからね」
そう言うと、アラニアはドアに掛けた脚を両側に開く。鋼鉄の隔壁が紙のように引き裂かれ、操縦室と客室が一連なりとなる。と、同時に、集まっていた蜘蛛達は客室に躍り込んだ――。
●再び客室
「わからないじゃない、あいつらどこにだって現れるんだから」
「まあね……でも、ここは大丈夫だろ?」
反論するイルミアに、アキラは苦笑いしてそう応える。地上ならともかく、ここは高度一万メートルだ。流石にこんな所まで……言おうとしたその瞬間、轟音が響く。
「な、何だ!?」
アキラは思わず立ち上がった。その目に入ってきたのは、無残に引き裂かれた隔壁と、パニックに陥る乗客達……そして。
「蜘蛛!?」
リナが悲鳴を上げる。引き裂かれた隔壁の向こうから巨大な黒い蜘蛛が飛び出した。次々と飛び出す蜘蛛達は乗客へ飛びかかり、その首筋に噛み付く。乗客はぐったりと力を失い。蜘蛛達は力を失った彼らを白い糸で包み込む。
「アキラ!」
裂帛したイルミアの声に、僅かな時間呆然としていたアキラは我に返った。
「リナみんなを誘導して急いで後部に逃げろ! ここは僕が食い止める!」
「……うん、わかった」
リナは素直に頷く。自分が居ても足手まといにしかならない。急いで席を立ち上がると、パニックを起こしているクラスメイト達の方へ向かう。
「それにしても……本当にどこにでも沸き出てくるな、あいつらは!」
苦々しげにそう吐き捨てると、アキラはイルミアの方に向き直り、彼女の手を握る。蜘蛛がこちらに来るまでそう時間は無いだろう。まずその侵攻を防がねばならない。
「そうね……でも、私達が居る限り、どこに現れても無駄だって事を教えてやりましょう!」
イルミアはそう言うと、繋がれたアキラの手を力強く握り返した。
解説
●目標
『流雲のアラニア』及び『蜘蛛』の撃退。飛行機の着陸。
●登場
デクリオ級従魔『流雲のアラニア』
痩身の青年の背中から八本の脚が生えた愚神。脚は八本ですが同時攻撃は二体までです。射程は2。攻撃力は控えめですが、ヒットすると『毒刃』と同じ効果を発揮します。
本体は『縫止』と同じ効果を持つ糸を飛ばしてくる事がありますが、直接攻撃力はありません。
戦闘中は無意味ですが、糸を使ったバルーニングで空を飛ぶ事も出来ます。
ミーレス級従魔『蜘蛛』×8
大きな蜘蛛です。麻痺毒を持っていますがリンカーには効きません。攻撃力は並。こちらも糸を出しますが、気を失った相手しか拘束できません。
和波アキラ&イルミア・フローレント
愚神の存在には気づいていません。彼の優先順位は愚神の討伐よりも乗客(クラスメイト)の避難です。LVは25程。
●状況
操縦室と客室を隔てる壁は破壊されています。アラニアは操縦室の方におり、客室の蜘蛛を見守っています。リンカーの存在には気付いていないので余裕の観戦。ただし、異変があれば客室に乗り出してくるでしょう。
戦場は飛行機の機内ですので、周囲の被害を鑑みない攻撃は悪い結果(外壁破損で即墜落……等と言う事はありませんが)を招くかも知れません。
最前列から最後尾までは30スクエア。客室の幅は2スクエアです。初期スタートの座席位置は任意で選択して下さい。前方10スクエアまでは飛び出してきた蜘蛛と即交戦となります。和波達は前から15スクエアほどの位置に居ます。20スクエアの位置に隔壁があり、一応一般人の避難が可能です。
操縦室の前面は蜘蛛の糸で覆われている為前面視界は0です。ですが、ガラスが割れている現在、気圧差の影響を防いでいるのもこの糸です。視界を回復したい場合は気圧差に留意して下さい。
訓練を受けた人間なら計器飛行でも何とか不時着可能ですが、PC達には難しいでしょう。
マスターより
お久しぶりです。大分間が空いてしまった白田熊手です。
今回は蜘蛛さんと空の旅です。ハイジャック物は映画でも定番のネタなんですが、これという物がない(個人的感想)ジャンルでもあります。蜘蛛映画も余り……。
今回の和波君達は一応戦力に数えてもいいとは思いますが、例によって愚神相手には些か力不足です。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2016/04/28 19:03
参加者
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スパイダーハイジャック
最終発言2016/04/21 12:03:23 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/04/19 07:08:59