本部
GO!GO! 温泉旅館!
掲示板
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旅のしおり卓
最終発言2015/12/03 23:06:13 -
女子専用会議室
最終発言2015/12/04 13:46:46 -
男子専用会議室
最終発言 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/04 01:23:06
オープニング
●篠丸日温泉旅館
国内某所、篠丸日(しのまるひ)温泉旅館。
山奥といっていい場所にあり、立地の不便さ相まってなかなか客足の乏しい旅館ではあるが、ごく一部の通にはこの秘境っぽさが人気なんだとか。
もっとも、今回は客はいない。従魔騒ぎが片付くまでは、一般人を呼ぶことは出来なかったのである。
「いやあー、リンカーさんたち。本当にありがとうございました。よかったらゆっくりして行ってください」
旅館の主人と数名の従業員は、わざわざ山奥まで出向いてきて従魔を倒したリンカーたちに頭を下げた。能力者たちは、この旅館の裏手に現れたミーレス級従魔を難なく倒したところである。
旅館の主人は、夜も遅いし、せっかくだから是非泊まっていってくれという。
かくして、能力者たちはこの篠丸日温泉旅館に泊まることとなったのだった。
報酬が少ない代わりに、宿泊の料金は無料である。
宴会場の支度が整うまでは、と、宿の主人に露天風呂をすすめられたリンカーたち。ここから先は、彼らの自由時間だ。
解説
●目標
温泉旅館を満喫する。
特に裏のない日常系の依頼です。
宿の備品を故意に破壊する等、旅館に著しい迷惑をかけなければ成功です。
おおまかに、仕事終わりから
・風呂に入り
・食事をして
・就寝
といった流れになります。
●登場
旅館の主人ほか従業員数名
リンカーたちに好意的。行動が過ぎれば申し訳なさそうにたしなめることもあるが、基本的にニコニコしている。
話の前に倒されたミーレス級従魔
今回の相手は、巨大化した化けガエルのような格好をしていた。
それほど手ごわい相手ではなかったが、山の中を器用に逃げ回ったために討伐には時間がかかった。
●状況
ミーレス級従魔を倒した後、温泉旅館に泊まる。
従魔騒ぎからか、能力者たちの外に客はいないようだ。
夕方ごろです。
●設備
・露天風呂
ごく普通の露天風呂。男湯と女湯で分かれているが、声は届くようです。
※性別を伏せたいなど、特殊な事情がある場合などは、プレイングにてご一報くだされば、どちらにいるのかなどをボカします。また、必ず露天風呂に入らなければならないわけでもありません(露天風呂に入ると書かなければ、別のパートからの登場になります)。
※覗きは、だいたい判定なしに失敗します。
・売店
牛乳、ラムネやおつまみ、謎のご当地ストラップが売っている売店。
常識的な範囲の買い物は、経費で落ちるようです。
・ゲームコーナー
ビリヤードやスマートボール、コインゲームなどがあります。マッサージチェアもあるようです。
・食事
宴会場『希望の間』にて食事が振る舞われます。
基本的に和食で、カニすきやお刺身、天ぷらなど。日本酒もたしなむことができます。能力者と英雄、両方の分があります。
人数分のみしかないため、同じものをおかわりは出来ませんが、厨房に小腹がすいたと頼めば軽食やおにぎりなんか作ってくれるでしょう。
・就寝
それぞれの部屋で就寝です。宴会場で飲み明かすこともできます。
リプレイ
●……厳しい戦いだった!
「蛙気持ち悪かったね」
《うむ、なんかべとべとするしな》
今宮 真琴(aa0573)と奈良 ハル(aa0573hero001)は、従魔との戦いを振り返る。
今回の従魔は逃げ回るわ、粘着質な液を吐くわで、なかなか厄介な敵だった。
「いやー、捕まえるのに一苦労でしたね」
唐沢 九繰(aa1379)はそう言って周りを見回した。エージェントたちは、みなそれぞれにへとへとである。
「ん、終わった……」
『ほら、依頼主さんにご挨拶!』
アリス(aa0040hero001)が佐藤 咲雪(aa0040)を促し、依頼主にぺこりと挨拶をさせる。佐藤が頭を下げたはずみで、普段の制服にたすき掛けになったカバンで胸がより強調される。本人は気にしていないようではあるが。
「よかったらゆっくりして行ってください」
「ええっ、いいんですか!?」
宿の主人の申し出に、唐沢は、ぱっと顔を輝かせた。暖かい露店風呂と食事の用意。疲れ切った体を癒すのにはぴったりだ。
「お客さんもおりませんので。おかげさまで、早いうちに営業を再開できそうではありますけれどね」
「温泉、ですか」
エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)は、じっと古い温泉旅館を眺める。
「温泉……おまんじゅう」
甘いものに目がない今宮は、土産物に思いを馳せているようだ。
《まぁ休息も必要じゃな……月見酒といくかのぅ》
奈良は空を見上げる。夕暮れ時の空には、薄らぼんやりと月が浮かんでいる。今日はちょうど良い月が出そうだ。美味しい酒が飲めそうな予感がする。
「おおっ、いいですね! お酒。一緒にどうですか」
「いいねえ。言っておくけど、俺は強えからな!」
シウ ベルアート(aa0722hero001)の誘いに、カイをはじめとする酒に強そうな面々が盛り上がりを見せる。
(カイはお酒に目がないもんね)
彼女の英雄カイは、かなりの酒豪である。御童 紗希(aa0339)は思った。
「お仕事終わったら、温泉入って酒呑みたいとかゆってた巳勾大勝利ーー☆ な展開じゃん?」
「良かったなー巳勾! 俺も折角だからのんびりするんよ」
はしゃぐ巳勾(aa1516hero001)の背中を、桐ケ谷 参瑚(aa1516)がぺしぺしと叩く。
(……全身が汗や粘液でベトベトのドロドロです……服も透けてしまって、恥ずかしいです……)
頬を染め服をより合わせる廿小路 沙織(aa0017)を意に介さず、ご機嫌なヘルフトリス・メーベルナッハ(aa0017hero001)、通称ヘルフィはあられもない姿の廿小路をパシャパシャとスマートフォンのカメラに収めていく。
「うふふふ。素敵なものをたっぷりと見れましたわ♪」
御手洗 光(aa0114)は、廿小路の在籍していた先輩であり、言葉巧みに彼女をこの依頼に誘った張本人でもある。御手洗自身もべたべたと汚れているのではあるが。御手洗はそんなことはお構いなしに、廿小路をはじめとする周りの面々を楽しげに見守っている。男女は特に問わないようである。
「修学旅行みたいでワクワクするね。マコちゃん以外にお友達も出来るといいな」
「黒絵と年の近い子が多いみたいだし、直に仲良くなれるよ、あ、ほら」
桜木 黒絵(aa0722)に、シウは微笑ましそうに答え、冬月 晶(aa1770)とアウローラ(aa1770hero001)の組を見た。
「結構疲れましたー。山の中をかき分けるなんてドラゴンはしないですよ」
アウローラは、元の世界ではドラゴンの姿をとっていた英雄である。ふるふると頭を振って、温泉旅館を見上げる。
「ここに泊まるんですかー」
「温泉旅館なんて子供のころに家族で来て以来か。今回は……いや、女連れなんて色っぽいもんじゃなくてな。……子連れ??」
冬月はアウローラをしげしげと眺める。
「まあいい。同じくらいの年の子が多いし、遊んで来い」
女性陣がきゃあきゃあとアウローラを歓迎する。自己紹介をする早瀬 鈴音(aa0885)の傍でN・K(aa0885hero001)はそれを優しげに見守っているのだった。
●レッツ温泉!
「とりあえず、走り回って汗かいたし……風呂行くかね~。戦闘で調子悪ぃとこないか、機械部分先にメンテだけはしとくか……」
桐ケ谷は、自身の機械部分を手早く確かめる。幸いなことに故障などはしていないようだ。
部屋に荷物を置き、いち早く温泉へと向かった早瀬が先陣を切り、女湯ののれんをくぐった。
「どれ、汗を流すか」
「どれどれ、入りましょう」
アウローラは、ひょこひょこと冬月のあとに続く。
「……って、ついて来ちゃいかん。お前はあっちだ」
きょとんとするアウローラに、冬月は女湯の赤いのれんを指した。
「えっ? 私はあっちなんですか??」
「おいでおいで!」
桜木が手招きをすると、アウローラは素直にそちらへ向かう。
「いいか、湯船に入る前に体を洗っておくんだぞ。湯船の中での潜水なんかもいかんからな」
冬月の言いつけに、アウローラはこくこくと頷いた。微笑ましい光景だ。アリスやN・Kらは、どことなく自身の契約者を思い出したかもしれない。
そして、女子更衣室にて。
(ひゃー……)
唐沢は心の中で感嘆の声を上げる。みな、信じられないほどスタイルが良い。ギャルのような外見のヘルフィはとても誘惑的な外見をしているのはもとより、佐藤はスタイルと年齢の割に胸が大きいし、廿小路に至っては規格外である。本人はそれを気にしてはいるものの、フランス人ハーフの御童は彫りの深い美形であるし、御手洗は三流モデルなら裸足で逃げだしそうなほどのプロポーションだ。
その他にも見どころはたくさんあり……。
『体操を頑張っていますし何とかなりますよ』
「わーわー、そういうのは言わなくていいですから!」
ちらちらと周りを見ながら、胸を気にする様子の唐沢に、エミナが憐みの顔文字とともに言った。唐沢は慌てて押しとどめる。
「……ん、湯船に、タオルを持ち込む、のはマナー違反」
そう言って、咲雪は堂々と裸身を晒していた。手に持つのは身体を洗う為のハンドタオル。
咲雪はアイアンパンクだが、体表に露出している機器は神経系の接続用コネクタであり、しっかりと防水加工も施されている。
「咲雪、入る前にかけ湯をするのも忘れないように」
咲雪の傍に同じような姿で控えるアリスがそう告げる。彼女はナノマシン群体……端的に言えば機械ではあるが、人間の体細胞がナノマシンに置き換わっただけで、人体としての機能は人間と遜色のないモノを備えている。
アウローラも、そんな仲間たちの様子にならって服を脱いでいく。
「防水加工ですか! そういうのもいいですね」
唐沢はお風呂の前に、普段の外装を外して、耐熱防水の物に付け替えていた。唐沢は屋内用のソールなど、多種多様なパーツを持ち歩いている。
「いちいち付け替えるのがめんどくさい……」
「ちょっとは見習いなさい」
そんなやりとりがなんだか微笑ましくて、唐沢はふふ、と笑った。
「はぁ……仕事後の温泉、最高だねー」
『こういう時は早いのね、鈴音』
仕事の最中は先陣なんてもっての外なのをN.Kに苦笑いされつつ、早瀬は湯船から英雄を手招きする。ふわりとした髪をまとめて湯船に浸かるN.Kを、早瀬はどこか心配そうに見つめた。
エージェントとはいえ、早瀬は一般的な学生である。戦うことは、それほど得意ではない。
(勢いで何とかする私より、N.Kの方が無理して疲れてるんだよね。私も戦いとか好きじゃないけど、彼女に比べればマシ)
せめて、めいっぱい癒されて欲しい。そうは思っているのではあるが、N.Kはにこにこと早瀬をいたわる。
『あ、鈴音? 怪我したでしょ、染みない?』
「さっき治したじゃん」
『肩まで浸からないと寒くない?』
「それが良いんだってば」
ふふふ、とN.Kは笑った。どうにも、N.Kがお姉さんであるようだ。何となく気恥ずかしくて目をそらす。
「お・ん・せ・ん・だぁー!」
《走るなー! あとテンション高いな?》
今宮は元気一杯に温泉へと駆け込んでいく。
「おー、でっかいお風呂ですよ!! アキラさーん、なんかすごいですよー!! 壁越えてそっち行っていいですかー??」
「いやいや、こっち来るな」
わんわんと声が響き渡る。隣接しているだけあって、男湯にも声だけは届くようだ。アウローラは不思議そうに壁を触っていたが、女性陣に手招かれて近くの方へと戻る。
更衣室で他の女性陣の裸体に目を輝かせていた御手洗は、スポンジを手に廿小路の元へと向かう。
「ほら、沙織さん。わたくしが洗ってさしあげますわ」
「お願いします。……って、あ、あのそんな処までは。い、いえ自分で洗えますから……」
「ちゃんと此処もしっかりと洗いませんと。ほぉら♪」
「ひゃあん♪」
廿小路は思わず甘い声を上げる。御手洗は、沙織の身体を入念に、隅々まで、執拗なまでに洗ってゆく。
「こーんなに広くて見晴らしの良いお風呂なんてぇ、初めてですぅ♪」
レイアは初めての温泉を楽しんでいるようである。
御手洗と廿小路がお互いに身体を流しあっている横で、その英雄、レイアとヘルフィもまた互いに洗いっこを始めた。
「えいえい!」
「きゃははぁっ♪ くすぐったいですぅ~」
泡だらけになってきょろきょろとあたりを見回すレイアは、自分の胸を見下ろした。
「レイアちゃんもぉ、おっぱい大きくなれますですかぁ?」
どうやら、契約者をはじめとするほか、大きい胸に憧れているようである。ヘルフィはにこにこと笑ってそれに答える。
「レイアったら大きなおっぱいに憧れてるんだねぇ♪ こうやってマッサージするか誰かにしてもらえば、5年もすればすっかりばいんばいんだよー」
「きゃはは♪ やーん」
「わー広いー! ハルちゃんボクたちも流しっこしよう」
《お主ももうちょっと成長してたら良かったのにな?》
「……ちょっとどこを見て言ってんの?」
奈良の言葉に、今宮は口をとがらせる。
《やはり露天で月見酒とは風流なもんじゃな。独りで呑む酒も美味いが交流も深めるか。シウ殿やカイ殿とも呑むかね……愚痴りそうな予感じゃが》
奈良はのんびりと湯に浮かびながら今宮を眺めて言った。
「……胸が……らく」
咲雪はゆっくりと温泉につかっていた。年齢の割に豊かな少女の胸は、現在進行形で成長中だ。温泉に浸かっている間は、浮力で胸部にかかる重量が軽減されている。一部の女性を敵に回すが、これ以上大きくなると困ると咲雪は考えていた。
どうしても目に入るその光景をちらちらと気にしながら、今宮はぷかぷかと湯船に浮く。
(咲雪さん……肌綺麗ー本当に同い年!?)
《真琴ー》
(わわっ黒絵さん細っ あれ絶対ボクより軽いよ!?)
《おーい真琴?》
(九繰さんスタイルよくていいなーモデルさんみたいー)
《聞いてないのか?》
(をぉう鈴音さんおっきぃ……これはもう……するしか……)
《眼が怖いぞ》
(ハルちゃんもスタイルいいけど人外っぽいからなー年齢近くてこれだけ差があるとへこむ……)
《聞けやっ!》
奈良の振るうハリセンの音が温泉にこだまする。
「あぅ…ハリセン……? なんでこんなとこに」
《……戻ってきたか? 眼が怖くてつい》
「……なんとか戻ってこれた」
奈良はハリセンを脇に置くと、ため息をつく。
《アレを考えるときと同じ目をしてたぞ?》
アレ、とは、奈良にとって度し難い今宮の趣味のことである。
「あー……そんな感じ」
《普段引っ込み思案なくせに変なところでぐいぐいくるのぅ》
「マコちゃん、大丈夫?」
心配そうに言う桜木に、今宮は頷く。
「うん。大丈夫……」
目を逸らしても、耳に4人組の華々しいじゃれあいが聞こえる。どうしろというのか。
「……アリス?」
アリスは佐藤に声を掛けられて我に返った。
「な、なんでもないわ」
一方そのころ、男湯では。
女湯の壁の向こうからはきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえる。
「うーん、あいつ、こっちの世界に来たばっかりの時は風呂に入れるのも一苦労だったんだがなぁ。ずいぶん馴染んだな……」
アウローラは向こう側でうまくやっているらしい。時折、楽しそうな声が聞こえる。
「心配な気持ちもわかりますよ」
「……まあ、マリももうちっとな、気を付けて欲しいってときもあるな」
「あ~ワカルワカル。やっぱ俺っちがいないとだめじゃん? みたいな、な!」
保護者達がのほほんと保護者談議に花を咲かせている。桐ケ谷と巳勾の場合は、どちらかといえば大体苦労話に実感を持って頷いているのは桐ケ谷の方にも見えるのであるが。
「といいますか、やっぱり皆さん、いい体してますね」
いつのまにか、シウの一言で話は肉体美自慢に移っていった。
「鍛えてるからな」
「エージェントなんてやってると、まあ……一般の人よりは……」
「んだな」
とくに、2m近い体躯を持つカイは圧巻である。
ガタッ。壁の向こうで何かが反応した気がして一同は動きを止めたが、気のせいかと再び雑談を始める。
「あれ、巳勾さんは?」
男湯の端では、巳勾が動きを見せていた。
「おーい、巳勾……命が惜しけりゃ覗きは止めとけなー」
桐ケ谷の静止を聞かず、巳勾はごそごそと足場を探る。
「露天風呂とくりゃあ、男がやる事は一つじゃねえかい? 男の浪漫って奴さァ」
「浪漫とか知らねーですし……枯れてんじゃねえわ、分別があるだけだわ俺はなー」
桐ケ谷の言葉を気にせず、巳勾は次々と桶を積み上げると、足場を作った。
「今回、女子の方が圧倒的なんよ? つまり……ここまで言えば分かるな?」
「女は見られて美しくなるって言うだろうが。聞いたろい? あの楽しそうな声を」
「俺は止めたかんねー知らねーよ、もーー」
巳勾は壁の上から身を乗り出し、堂々と女湯を覗こうとしていた。
「お嬢さん達、おじさんと美について語り合わないk」
足場を積み上げてよじ登ろうとした瞬間、両側から鋭く桶が降り注ぐ。
(南無)
案の定撃墜されてる英雄を見て、桐ケ谷は手を合わせる。
リンカーたちの狙いの正確な投げに、見る間もなく巳勾は元の場所に戻る。どちらかといえば男湯からの攻撃のほうが激しかったのは気のせいだろうか。
「あら、残念」
御手洗は余裕の笑みを浮かべるのだった。
(……しかし真琴よ、本当にやるのか?)
その少し前。今宮は動きを見せていた。
(温泉といえば覗きが定番…らしいけどまさか男湯を除きにいくとは思わないよね……つまりガードが緩い! 今後のためにも確認しないと……アレは想像力強化あってこそ……!)
今宮はエージェントの嗅覚は、ちょうど良い感じに古くなった壁を見つけた。
(……ふふっ思ったとおりこっちからいけば……イケル!)
今宮が行動を起こそうとしたその時だった。湯気がもうもうと立ち上り、ほとんど見ることはできなかったが、それでも……。いや、見えないからこそなのか。
降り注ぐ風呂桶とともに、鮮烈な光景が脳裏に焼き付いた。
●お風呂上り!
《真琴、ワタシは宴会場にいくぞ》
奈良の呼びかけに、今宮は気もそろぞろにこたえる。
「……わかった……ボクもうちょっと温泉で落ち着かせて来る……」
《……顔真っ赤だ……?》
「言わないで……」
想像以上だった。あの光景がなんとも頭から離れない。今宮は再び温泉に浸かって、気を静めようとする。
「あー…もう、目覚めてみりゃ参瑚もどっか行ってるし湯当りするし……人ってな薄情だねェ……」
男湯側では、巳勾がソーダを飲みつつやさぐれているところだった。エージェントたちは、お湯からはあらかた引き上げてしまったようである。
売店には、昔ながらの瓶入りの飲み物が並んでいる。
風呂から上がったシウは、売店で売っていた飲み物を皆にふるまう。自分はフルーツ牛乳、桜木はコーヒー牛乳を選んだようだ。ふたを開けて普通に飲もうとする黒絵に、シウは手を腰に当てて一気に飲み干す、正しい飲み方をレクチャーした。これぞ温泉、といった風景が広がっている。
「お風呂上りには牛乳!」
唐沢はフルーツ牛乳をごくごくと飲み干す。何らかの効果にちょっぴり期待していたりもするようだが、エミナは、そんな唐沢を生暖かく見守っていた。
(お約束お約束)
桐ケ谷はコーヒー牛乳を選んだようだった。
ふと、唐沢は売店のご当地ストラップに目を止める。桐ケ谷も同じものを買おうとしているようで、目が合った。
「こういうのっていいですよね!」
「な。思い出だな」
二つづつつまみ上げたのを見て、お互いに笑った。唐沢の二つ目はエミナの分だが、桐ケ谷は自身の兄へのものだ。
桐ケ谷は温泉饅頭などの定番商品を買い込み、お土産にも余念がない。
「シウお兄さん強い……」
シウは笑って、ひらひらとラケットを振る。
シウたちは宴会までのわずかな時間、卓球で盛り上がっていた。器用に、そして的確に玉を返してくるシウは、なかなか手ごわい相手である。
「むむ……こうですか?」
アウローラはラケットの握り方からだ。最初はおぼつかなかったものの、冬月が教えてやると、天性の運動神経で時々鋭いサーブを返す。桐ケ谷も誘われて卓球に加わっていたが、隙を見て叩き込む正確なショットは、なかなか手ごわいものである。
「ふふふ♪」
温泉での余韻からか、どこかぼーっとする廿小路の横で、御手洗は卓球を観戦していた。動きに従ってはだける浴衣を堪能しているようである。
●宴だ!
宴会場に早めに顔を出した桐ケ谷は、ずい、と巳勾を前に押し出す。
「もーね、うちの英雄がご迷惑おかけしてすんませんね。おっさんなのに元気過ぎて困るから。殴り足りないならドウゾ」
「えー……これ飯の前に懺悔の空気な?」
巳勾はきょろきょろと周りを見回すと、頭を下げた。
「誠に申し訳アリマセンデシタもうしません。……だから俺っちにもお酒くれい……」
素直に謝ると、なんとなく許してやるか、と、場の空気は和やかになるのだった。
「わぁ~い♪ レイアちゃん、特等席なのですぅ♪」
レイアはヘルフィに膝抱っこされながら、料理に舌鼓を打っている。
「はい、あーん♪」
「えへへ……」
「ほら、沙織さん? 折角のお料理が冷めてしまいますわよ?」
廿小路は、御手洗に声を掛けられてびくりと身をはねさせた。
「! あ、は、はい……」
廿小路は入浴時の余韻でどこか茫然自失に陥っている。そんな廿小路をを侍らせながら、御手洗は女子組と話を交え、料理を堪能してゆく。
「わ、なんか家じゃ見たこと無い食べ物がいっぱいですよ!! なんです、これ??」
「そいつはカニすきだ。いやまあ、カニはちと財布に厳しいからな。なかなか出せん」
はしゃぐアウローラに、冬月が答える。
「わー、おいしそうですね!」
唐沢は豪勢な料理に感嘆の声を上げる。
『九繰、カニが。カニがあります』
エミナは、カニをじっと凝視している。
『カニ。人心を惑わす魅惑の食材……しかし私はこの程度では揺らぎません』
無表情でひたすらカニを頬張るエミナであるが、小窓にはキャーキャーと顔文字が咲き乱れ、たいそう大歓喜の様子である。
「エミナちゃん、エミナちゃん。ダダ漏れですよ」
唐沢はぷっと笑いつつ、自分の右手の甲をトントンと指さして一声声をかけた。
『……』
その瞬間、エミナは無表情のまま、サッと凄い速さで左手で右手を隠す。ただし、そんな時でも、カニは離さないのだった。
アリスは、男性陣に時折ちらちらと視線を向けている。ハッとしてすぐに逸らすと、同じように視線を向ける今宮がいた。
宴会が始まり、ちらほらと盃を傾けるものも出始めていた。
カイは、先ほどから日本酒を飲んでいるようである。水と見まごうばかりのペースであるが、カイが飲んでいるのはれっきとした酒だ。宣言の通り、相当酒には強いらしい。
「お酒こっちにも下さい、泡出ないやつ。違う違う、私じゃないよ」
早瀬は席を立ち、従業員に話を付けると、透明な地酒を受け取って、そっとN.Kに差し出す。N.Kは気が付いていないようで、にこにこと杯をあおる。
『このお水美味しいね』
「湧き水みたいのとかなんじゃない?」
うとうとしていたN.Kは、眠そうに目をこする。
「おっ、酒と米と刺身。黄金の組み合わせじゃないか。どれどれ、酒を貰うぞ」
アウローラが興味を持ったのか、じっと冬月を見る。
「うん? お前も飲んでみるか?」
「はい!! ちょっと飲んじゃいますよ!!」
そう言うアウローラに、冬月は酒を注いでやる。
「……。……なんか気持ちいいですよー。にゃーん♪」
アウローラは酒に酔ったのか、ごろごろと喉を鳴らしながら、すりすりと冬月に顎を乗せる。
「……アウローラ、酒弱かったのか。それとも飲みなれないからなのか」
しばらくすると、アウローラはすやすやと寝息を立て始めた。
(仕方ないから寝かしてくるか)
冬月は立ち上がると、アウローラを運んでやることにした。一通りの食事が終わると、ちらほら疲れて眠るものたちも出てきたようである。
うとうとしたN.Kが、こくりこくりとまどろむ。
(一杯で眠れる位だから宴会は無理だし。ゆっくりオヤスミしてもらお)
少しずつ人が引き上げていき、宴会を続行する大人たちが宴会場に残ったようだ。女子勢は、なにやら別の動きを見せていたが……。
●酒宴!
《そもそもあいつの趣味はおかしい!》
奈良はぐびぐびと酒を飲みながら、絡み酒をしている。
《のぅ? 聞いておるか?》
自身の英雄に、よっぽど普段思うところがあるらしい。
カイとシウの前にあるのは、真っ赤なオニギリ。唐辛子で味付けされた、旅館特製の激辛オニギリである。勝負の方法はテキーラショットの一気飲み。敗けたほうが激辛オニギリの一気食いである。
周りが囃し立てる中、度数の高い酒を飲み干していく二人。途中までは互角だったが、半分ほどグラスが空になって、カイはみるみるうちにペースを上げる。
グラスを先に置いたのは、カイだった。ぷはあ、と息を吐きながら豪快に笑う。
「バ~カめぇ! 酒で俺に勝とうなんざ100年早いわ!」
「負けてしまいました。約束ですからね。仕方ない」
火を噴かんばかりの激辛オニギリをほおばり、カイはげほげほと咳をしながらも水で流し込んでいく。
「よ、男前!」
「もう一回どうですかあ! 次は負けませんよ!」
「もう一回だとお!? なめてんのかあ! 受けて立とうじゃないか!」
二度目となれば、いくら酒に強いとはいえ、先ほどのようなペースを保つことはできない。今度オニギリをほおばることになったのは、カイであった。
「か、辛ええええ~~~~!」
「よっ、日本一ぃ!」
巳勾がやんややんやと囃し立てる。
口を押えながら火を噴かんばかりのカイに、宴会場は大盛り上がりだ。
●消灯!
「沙織さんは、わたくしが責任をもってお連れしますわ」
御手洗は野獣の眼光を輝かせ、廿小路の手を取った。当然、タダでは帰さないという意気込みが見える。
「だ、ダメですぅ……っ♪ だ、誰か助けて下さいぃ……♪」
廿小路は弱弱しく助けを求めたが、本気で嫌がっているようには思えない。拒絶の声の中にも、期待が混じっている。振り払おうと思えば振り払えるはずなのだが、足は御手洗に従って進んでいく。
「‥‥レイアちゃん、もぉ‥‥一緒に、行くですぅ‥‥」
「レイアはあたしと一緒に寝ようねー…って、レイアったらすっかりおねむだねぇ」
大あくびをするレイアを、ヘルフィがゆっくりと支えて部屋に連れていく。
(レイアを寝かしつけたら、あたしも沙織のコト……♪)
ヘルフィもまた、わきわきと期待を膨らませている。
「体がぽかぽかです。ついでに眠いれす。んー、ここは私のお布団ですねー」
部屋に運ばれたアウローラは、眠そうに辺りをきょろきょろ見回して、冬月がいることを確かめると、にこにこ笑う。
「疲れているところで温泉入っていい物食べて緊張が解けたのかね……」
「ん? アキラさん、一緒に寝ますかー??」
「何言ってやがる。早く寝ろ寝ろ」
「んー……」
「……どうだ、楽しかったか?」
冬月の問いに、アウローラはにっこりと答えた。
「んふふー、楽しかったですよー」
布団をかけてやり、ぽんぽんとやわらかく背を叩く。アウローラは幸せそうに眠りに落ちていった。
アリスは部屋に戻ると、原稿用紙に猛烈な勢いで妄想を描きつけていた。内容は所謂男同士の仲睦まじき、だ。浴衣着用で妄想力は通常の5割増し、業の深い文化である。
「ふむ……」
一方のエミナは部屋で、九繰からノートPCを借りて、顔文字検索にいそしんでいた。彼女たちの英雄は、今もまだ寝ていないのだった。
●就寝? まだまだ!
(大人は宴会真っ最中。子供は早くねる……わけはない)
酒飲みが宴会にふける中、女性陣は、再び温泉へと集まりだしていた。早瀬は冷たい飲み物やアイスを持ち込み、長期戦の構えである。
「シウさんは?」
早瀬が尋ねると、桜木は小首をかしげた。
「シウお兄さんはカイさん、ハルさんと夜通し飲むって言ってたから一緒じゃないよ」
「上等上等。まずはー……」
女性陣はずいと今宮に迫る。温泉で彼女が何を見たのか、非常に興味があるようだ。
「で、実際どーだったわけ? 何ていうか……詳しく」
「あ。あー。ええと……そのー……」
今宮はおろおろと視線をさまよわせた。
「あまりはっきりとは見えなかった……けど、うん……すごかった……かな……」
女性陣はほうとため息をついた。
「惜しかった惜しかった。次があるよ」
英雄のこと、学校のこと……。話題は尽きない。年頃の女の子たちである。年代も近い。自然とガールズトークに花が咲く。
「で、例の日が近いわけだよね?」
話題は、いつのまにか目下のクリスマスのことになっていた。
「幸せ者はいるのかなー?」
早瀬はにこにこと面々を見回す。佐藤が首を傾げた。
「ん……特に予定はない」
「えー、綺麗だし可愛いし、沢山お声がかかってそうです!」
眠たげにそう答える佐藤に、唐沢は驚きの声を上げる。
「そういうそっちは?」
早瀬に、唐沢は苦笑した。
「男子にはやたらと馬鹿にされたりしてますし、ご縁は当分なさそうです」
そんなことないんじゃないか。気が付いていないだけじゃないか。そういう相槌を交えながら、女性陣のトークは盛り上がりを見せる。
「わ、私のとこは年離れてるし恋愛対象とかって英雄とじゃどうなのかなって……」
御童はおろおろとした様子で答える。
「きっと大丈夫だよ、すごく仲良さそうに見えるもん」
「ねー。そういえばアウローラちゃんってどうなんだろう?」
「どうなんだろうね! ねー」
「あの4人組は?」
ご飯のあと、御手洗が廿小路の部屋に入って行って、それから姿を見ていない。
「そういえば、シウお兄さんって意中の人とかいるのかな? ちょっと気になるかな」
「気になる! 気になるかあ!」
桜木の言葉に、早瀬はきらきらと目を輝かせる。人の幸せは、やっぱり何より好きなのだ。
「クリスマスは一緒じゃないの?」
「一緒……だといいかな。紗希ちゃんは?」
「う~ん、うちは家でチキンとケーキかなぁ?」
「カイさんと一緒?」
「た、たぶん……!」
進展があったら教えること、と、彼女らは誓い合うのだった。
「あ、雪……」
今宮の言葉に、彼女たちは空を見上げた。ひらひらと舞い落ちる雪が、地面に落ちてすぐに溶けていく。
「わー、きれいだねー!」
●消灯、その2
雪だ。
(……兄貴と来たかったよな。きっと喜んだろうに)
眠くなるまで、と、桐ケ谷はぼんやり景色を眺めて過ごしていた。部屋に戻ると、快活さがどこか引っ込んだようである。
「なんでえ、眠れねえのかい小僧。おっさんが子守唄でも歌ってやろうかい?」
巳勾はどこか茶化すように言うが、参瑚の意は承知の上だ。
紗希が温泉から上がってくると、カイの部屋から光が漏れている。軽くノックして入ってみると、カイは部屋で一人でまだ呑んでいるようだ。
「お、マリか? 何だお前こんな時間に」
御童は皆と温泉に入っていたことを話し、しばらく2人で窓の外を見ながら雑談をしていた。
「そういえば、雪が見えたんだよ」
「へえ?」
御童はカーテンを引く。
「……あれ? あの光なんか変な動きしてない?」
「ああ?」
「ほらジグザグに……あ! 6個に分かれた!」
カイは慌てて立ち上がると、光を凝視する。
「おい、あれってひょっとしてUFOじゃないのか!? マリお前スマホ持ってただろ! 動画で撮れ!」
「あ、わわわわわ」
シャッターがぱしゃぱしゃと連射される。
「うっわ! 馬鹿! 至近距離でフラッシュ焚くんじゃねー!」
「ゴメン! 慌ててて!」
その間にUFO(?)はもう消えていた。取れた写真は、確かにそれらしき光が映りこんではいるのではあるが……いまいちピントがボケていた。皆は信じてくれるだろうか。とりあえず、少なくとも二人はUFO(?)の目撃者となったのである。たぶん。
従魔を倒したあとの、安らぎのひととき。
思い出を共有し、エージェントたちの夜は更けていく……。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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