本部

柊の嫉妬

紅玉

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/12/21 20:36

掲示板

オープニング

●破壊衝動
 まだクリスマス前なのに、イルミネーションや小さなサンタクロースの置物などで雰囲気を出してるのは長野県A市にある広場。
 昼間は、人が居ないのにイルミネーションが点る頃の夜には幸せそうな家族、幸せそうな恋人などで広間は埋まっている。
 賑わっている夜の広場で、緑色の着物を着たフランス人形の様な容姿の少女が一人広場の中央に立っていた。
 人々は、そんな少女が見えてないのか、もしくはイルミネーションに夢中で視界に入らないのかもしれない。
 少女は淡い紅色の唇を動かす。
「幸せにはさせない……」
 鈴の音を転がしたような美しい声で少女は呟いた瞬間。
「ウォォォォン!」
 上半身は馬で下半身は魚の従魔が、人の間をかき分けながら広場の外から走ってきた。
「獲物狩り……始まり……」
 少女がそう呟くと従魔達は嬉しそうに鼻を鳴らし嘶いた。
 広場にいる人々従魔の姿を見て驚きと恐怖が混ざった叫び声を上げた。

●H.O.P.E.会議室
「緊急事態よ!」
 急いで会議室に集められたアナタ達は一斉に事務の女性の方を向いた。
「30分ほど前に、長野県A市にある広場で従魔が暴れている事件が起きたわ」
 女性は素早く資料をアナタ達に配った。
「地元の人の目撃情報を急いで纏めたモノだから……確実な情報は得られなかったわ。しかし、今は緊急事態よ!急いで現場に向かって一般人の避難誘導と、暴れている従魔と従わせている者を討伐するもしくは、撤退させるのが任務よ!」
 女性は軽く深呼吸をした。
「皆を信じているわ。良い報告を待っているわね」

解説

●人物
事務の女性:【ティリア・マーティス】29歳独身

●目標
 広場から一般人を全員退避させ、デクリオ級『柊』と従魔の討伐もしくは撤退させる。

●登場
デクリオ級『柊』
 フランス人形の様な美少女。柊の葉が武器。
 無口だがなんとか会話が可能。
 遠距離撃力と素早さが高め。接近戦は苦手。
・先見の明
 5分に一回だけ1m先に瞬間移動ができる。
・祝音
 鈴を鳴らして対象者の傷を癒す。
・鬼の目突き
 柊の葉を四方に投げる。(範囲:直径4m)

ミーレス級従魔『ケルピー』3体
 柊の指揮下にある従魔。開始時は柊を護るように前にいる。
 見た目は上半身が馬で下半身は魚。5mほどの大きさがある。
 凶暴。知性はケモノ並み。
 物理攻撃力とスピードは優れてる。
 前足で踏みつける、体当たり、尾を振りまわして攻撃する。

一般人
 イルミネーションを見に人が沢山来ていますが、到着した時点では、まだ会場から一般人を避難させている最中です。

●状況
 長野県A市にある広場。広い。
 時間帯は夕方。晴れ。

リプレイ

●避難
「流石にクリスマスは終了しました宣言をしたいだけの子供には同情出来ません。殲滅有るのみです」
 エステル バルヴィノヴァ(aa1165)は青い瞳で柊達を見つめながら手をぎゅっと握りしめた。
「……エステル」
 泥眼(aa1165hero001)はエステルを紫の瞳で見つめ、両手を胸元で握りしめ桃色の髪を揺らしながら頷いた。
「うわぁぁぁん!」
「子供? 親とはぐれたのでしょうか?」
 エステルは鳴き声に向かって走った。
「わぁぁぁん!」
 少女が地面に座って泣いていた。
「大丈夫? こけたの?」
 エステルは優しい声色で言いながら手を取った。
 少女が涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて小さく頷いた。
「歩けるます?」
 エステルの問いに少女はふるふると首を横に振る。
「それじゃ、お巡りさんのところまで送ってあげます」
 エステルが笑顔で両手を広げると、少女は少し戸惑いながらも抱き付いた。
「パパ、ママ……」
 少女が不安そうな表情で声を震わせながら呟く。
(絶対に……)
 エステルは唇を噛みしめた。
 少女を警察に預けてからエステルは援護する為に広場の中央へ向かった。

「情報が少ないって言ってたけど……」
 黛 深墨(aa0536hero001)が周囲を見回す。
「一目瞭然ね。まずは避難が優先よ、手分けしましょう。離れすぎないでね?」
 瑠璃堂 藍(aa0536)はパニック状態の広場でケルピーを見つけてため息を吐いた。
「仰せのままに」
 深墨は藍に一礼した。
「皆さん、落ち着いてね。あの従魔はエージェント達が惹きつけますので」
 藍は落ち着いた口調で一般人に避難指示を出す。
「光源が有るのは助かるが、人が多そうだな」
 避難誘導しながら御神 恭也(aa0127)は広場を見回した。
「避難が終わるまで、従魔達が大人しくしてくれれば良いんだけど」
 伊邪那美(aa0127hero001)は不安げな表情で言う。
「本来であれば伊邪那美に頼んだ方がスムーズに事が運ぶのだろうがな」
 恭也は従魔を警戒してリンク状態にした。
「従魔達を相手している皆を信じない訳じゃないけど、念のためにね」
 那美は恭也に優しく言った。
 しかし、従魔退治より避難作業は大変だった。
 警察や有志により順調かと思われたが、ケルピーとの戦闘音に対し一般人は恐怖でパニックを起こしていた。
「いやよ! 死にたいくないわよ! さっさとアレを殺しなさいよ!」
 恐怖で正常な判断力が失われ、何も出来ないであろう有志の人に向かって叫んでる人がいた。
「落ち着いて、大丈夫だ。エージェント達が討伐してくれるからな?」
 恭也はパニック状態の人を落ち着かせようとする。
「そんな人たちがなによ!」
 パニック状態の人に救急車から降りてきた看護師が押さえた。
「こういうのは私達に任せて下さい」
「分かった。避難に集中しよう」
 看護師の言葉に頷き恭也は避難を続けた。
「やっと広場の中央が見える程度か」
 恭也は広場に中央に佇む少女に視線を向けた。
「落ち着いているけど、迷子は出ていそうね」
 那美の言葉に恭也は頷いた。
 恭也は警察に迷子の話が出てないかを聞きに行った。
「迷子ですか? まだ、全員避難してないので分かりませんが……はぐれてしまった話が多いです」
 警官はファイルを取り出してた。
「あと、この混乱ですので怪我して逃げ遅れている可能性もあります」
「そうか、ならば広場内を探し回ってみるか」
 恭也はその場を離れ、広場を歩き回り始めた。
 遠くから戦闘の音が響いてくるそんな中に、誘導の列から離れて周りを見回す少女が居た。
「どうしたんだ?」
 恭也に声を掛けられた瞬間、少女は数センチ飛び上った。
「え、あ……その、弟とはぐれちゃって……」
 少女は口をもごもごさせながら言う。
「どの辺ではぐれたんだ?」
「え?」
「探すのが仕事だ」
 恭也の言葉に少女は嬉しそうに微笑んだ。
「さっき『トイレに行く』と言って列から離れてしまって……」
 少女は俯いた。
「分かった」
 恭也は頷き広場のトイレに向かった。

●柊とケルピー
「……散」
 柊は赤い瞳でエージェント達を確認すると手を上げた。
「ヒヒィーン!」
 ケルピー達は嘶くと三方向に分かれて走った。

「あれはケルピーかしら?」
 藍は走ってくる従魔を見て言った。
「ケルピー?」
 深墨は藍に聞き返した。
「水辺に現れる、人を惑わす幻獣よ。うまく乗りこなせれば名馬なんだって、呪いをかけられるけど」
「ふーん、詳しいね」
 嘶くケルピーを深墨は見上げた。
「次はケルピーが出てくる本を教えてあげるわ。それよりも、あの娘。愚神とはいえ、あんな子と戦わなくちゃいけないなんて」
 11歳位の柊を見て藍は顔を曇らせた。
「ま、あまり思い詰めないように。それと怪我しないように」
 藍は深墨の言葉に頷き黒漆太刀を握り締めた。
「近くで見ると大きい」
 と、藍は呟いた。
 それもそうだ、ケルピーは藍の身長より2.5倍くらい高いのだから。
 戦わなければならない、人を守るために……藍は首を横に一振りし、鞘から刀身を引き抜いた。
「ブルルッ」
 太刀を抜かれ、刀身を見たケルピーは鼻を鳴らし前足で地面を叩いた。
「たぁっ!」
 藍はジェミニストライクで作られた分身と共に駈け出した。
 鮮やかな太刀捌きでケルピーの体に傷を作るが、しかし――……
「チリィーン……チリィーン……」
 美しい鈴の音が鳴る。
「フーッ……」
 先ほど付けた傷の大半がケルピーの体から消えた。
「回復させれるのね……厄介ね」
 ぎりぃと口を噛み締めながら藍は、ケルピーの後方にいる柊を見た。
「援護が来るまで耐えれるか?」
 深墨の言葉に藍は小さく頷いた。
 今回の作戦は一般人避難が優先、ケルピーと柊は撤退させれば良い事なのだが……倒したい、と深墨は思った。
 ケルピーは自分の尾を鞭のように振ってきた。
「でも、無理は……できないっ!」
 最小限の動きで藍は攻撃を回避した。
「ヒヒィーン!」
「あっ……」
 ケルピーは嘶くと素早い動きで突進し、藍を軽々と空へに投げた。
 空へ舞う藍、飛ばされた後は地面に落ちるまで一瞬なのに遅く感じた。
「かはっ!」
 幸い人工芝生がクッションになり藍は打撲程度で済んだ。
「彼等は愚神を守ろうとするのかな?」
 エステルはコンパウンドクロスボウの矢を柊に向けて撃った。
 柊は素早く葉を集め盾にし矢を防いだ。
「……厄介ね」
 ケアレイで藍を癒したエステルは、柊の行動を見て苦虫を噛んだような表情をした。
「接近仕掛けても難しい可能性があるな」
 深墨は静かに言った。
「どうしてなの?」
「防衛は出来る、回復可能……1対1に持ち込める状態だが、ケルピーに騎乗したらどうなるか?」
 深墨の言葉に藍は伝承の言葉を思い出す。
「呪いをかけられるよね?」
「それは、人の場合じゃないか?相手は愚神だ、従えてるのであれば乗れる可能性もある……憶測だけどな」
 深墨は肩を竦めた。
「なら、まずはケルピーを倒せば良いってことよね」
 藍は立ち上がり、様子をうかがっているケルピーを見据えた。
「援護します」
 エステルは二人の話を聞いて頷いた。

「もうそんな季節なのね。暴れている相手を片づけて、早くゆっくりしたいものだけど」
 水瀬 雨月(aa0801)は黒く長い髪を風に靡かせながら呟いた。
 アムブロシア(aa0801hero001)の寝息が幻想蝶から聞こえる。
「ケルピー……」
 鮮やかな水色の馬が雨月を見つめていた。
「ばらばらに行動とは、愚神が嫉妬バカって事じゃないのね」
 ヘカテーの杖の先をケルピーに向けた。
「やれやれ……どういう理由か知らないが、折角の雰囲気を化け物けしかけてぶち壊すのは感心しないな。さてと……、あまりにもおいたが過ぎる“子猫ちゃん”には……きっちりと痛い目を見て貰おうか…。派手にぶち壊してくれたんだ……相応の報いを受けて貰うぞ」
 ヴィント・ロストハート(aa0473)は柊を横目で見る。
「折角イルミネーションが見られると思ったのに……。おまけに相手が相手なだけに、ヴィントはヴィントで例のアレが発病しちゃってるし……。でも、犠牲者が出る前に食い止めないといけないですね。ゆっくりとイルミネーションを楽しむ事が出来る為にも、目の前の愚神達を倒しましょう」
 ナハト・ロストハート(aa0473hero001)はため息を吐いた。
 後ろから来たヴィントを雨月は横目で見てマビノギオンを取り出した。
「ブルルッ」
 ケルピーは体を震わせた後に前足で地面を軽く蹴った。
 雨月は、マビノギオンから生成された魔法の剣をケルピーに向かって射出する。
「フンッ!」
 ケルピーは尾を振るい魔法の剣を弾いた。
 その瞬間にヴィントがライオンハートを尾に向けて振り下ろした。
 ケルピーの尾に奇麗な切れ目ができ、傷口から鮮血があふれ出す。
「ヒヒィーン!」
 ケルピーが嘶くと傷が塞がっていく。
「鈴の音がします」
 ナハトは声を上げた。
「ケルピーの傷が癒えたという事は……治癒能力があるのね」
「厄介ね」
 雨月の言葉を聞いてナハトは呟いた。
 持久戦、という言葉がナハトの脳裏に浮かんだ。
「一般人の避難優先で、撤退させれば良いのよ。だから……」
 雨月は魔法の剣を生成する。
「今は、ケルピーを抑えるだけよ」
 魔法の剣は射出された。
「俺は子猫ちゃんに痛い目に合わせたいだけだ」
 口元を吊り上げたヴィントは地面を蹴って走りだした。
 ヴィントに合わせケルピーも走り出した。
 魔法の剣が刺さるが、ケルピーは怯みもせずにヴィント目掛けて走る。
 ヴィントはケルピーの足を狙ってヘヴィアタックを放つ。
「ブルルッ……」
 ケルピーの足を切れたが。
「チリィーン……」
 鈴の音が鳴る。
「フーッ」
 足の傷が癒されていく。
「全ての傷が癒されているようではないね」
 ケルピーを射るように見ている雨月は言う。
「やはり、頭部を狙うしかないか。幸いにもケルピーは一般人を襲う様子はないしな」
 ヴィントはケルピーの頭部を見た。
「知性はケモノと同じ様だしね」
 雨月はヴィントの言葉に頷く。
「次は倒しますよ」
 雨月が持っているマビノギオンから魔法の剣が生成される。
「さっさと終わらせる……」
 ヴィントは赤い目でケルピーを睨む。
 ケルピーは白いたてがみを風に靡かせ赤い目で睨みかえす。
「フーッ……」
 ケルピーの口から出る息が白い煙の様に吐き出される。
 ヴィントは地面を蹴り走り出した。
 ケルピーも走り出した。
 雨月の魔法の剣がマビノギオンから射出される。
 しかし、魔法の剣はケルピーのたてがみを掠り地面に突き刺さった。
「ヒヒィーン!」
 ケルピーが嘶くと同時に前足を上げた。
「ふんっ!」
 ヴィントがライオンハートを振るうが、ケルピーの前足で弾かれてしまった。
「その為のもう片方だ」
 反対の手で弾かれたライオンハートを掴み、ケルピーの喉へ剣先を向けて突き上げた。
 鮮血が宙を舞う。
「ガッ……ゴボッ……」
 ケルピーは鳴き声を上げようとしても口から血が出るだけだった。
「さて、これで子猫ちゃんと遊べるな」
 ヴィントは、ライオンハートをケルピーの首から抜き広場の中央を向いた。

「湧いて出たと思えばやる事がこれかよ」
 赤城 龍哉(aa0090)は手で頭をかく仕草をしながら言う。
「人々の幸せを妬み、水を差す浅ましい振る舞い。愚神滅すべし、ですわ」
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)が凛とした表情で言う。
「ま、確かにこういう野暮はいけねぇな」
 龍哉は走ってくるケルピーを横目で見た。
「まずは馬モドキか。俺たちが相手をしてやるぜ!」
 ヴァルキュリアを肩に担いで龍哉は声を上げた。
「参ります!」
 ヴァルトラウテも負けじと凛とした声を響かせた。
 正面から走ってくるケルピーに龍哉は、距離を縮める為に走り出した。
「はぁっ!」
 ヴァルキュリアを振るいヘヴィアタックを叩きこもうとする。
「フンッ!」
 ケルピーは前足を上げ自分の尾を鞭のように振った。
 切断される前足、龍哉が吹き飛ばされた鈍い音。
 龍哉は、ケルピーに向かって立ち上がると前足は何事もなかったかの様に再生していた。
「チリィーン……リィーン……」
 微かに聞こえる鈴の音と、ケルピーの前足を見て瞬時に龍哉は理解した。
「回復か」
 龍哉は素早く地面を蹴って走った。
 ヴァルキュリアを振るい、ケルピーの尾が振られるのを待った。
「ヒヒィーン!」
 ケルピーが嘶き、前足を上げ尾を鞭のように振った瞬間にヘヴィアタックで尾を切り離した。
 鈴の音は鳴るがケルピーの尾は治らない。
「トドメだ」
 ヴァルキュリアを軽く振り剣先をケルピーに向けた。
「ブルルッ」
 人工芝生を赤い血で染め上げながら、ケルピーは前足で立ち上がり龍哉を睨みつけた。
 龍哉も睨みかえす。
 少しの間。
 龍哉が地面を強く蹴り走る音が響く。
 ケルピは嘶く。
 ヘヴィアタックで横一閃。
 ケルピーの頭が人工芝生の上に落ちる。
 切断部分から血が溢れ出て周囲を赤く染めた。
 龍哉はヴァルキュリアを強く上から下へと振り、剣を鞘に戻し広場の中央に視線を向けると柊の姿が無くなっていた。

「どうして……?」
 藍は目を見開く。
 エステルと一緒に攻撃するのだが、ケルピーの傷はたちまち癒えてしまう。
「愚神っ!」
 エステルは声を上げた。
「帰る……」
 ケルピーの背に柊が座って言う。
「逃がしません!」
 エステルはコンパウンドクロスボウの引き金を引こうとするが、ケルピーの行動の方が速かった。
「っ!」
 ケルピーは尾のヒレの部分でエステルの手を叩いた。
「連絡をっ!」
 と、藍が叫んだ。
「此処を襲った理由はなんだ?」
 避難誘導を終えた恭也が柊に問う。
「……ライヴスのため、それと……いや、話すことではない」
 柊は恭也の問いに答えるが首を横に小さく振った。
「子猫ちゃん、簡単には逃がさないからな」
「今は、時では、ない」
 ヴィントを見て柊は瞼を閉じ小さく頷くと、ケルピーは走り出した。
「にがっ……っ!」
 エステルは声を上げ攻撃態勢を取るが、柊の葉が舞い視界を遮った。
 攻撃しようとしても射程範囲外だ。
 追おうと思ってもケルピーは素早い、あっという間に広場の外へ消えて行った。
「あの愚神、何がしたかったのでしょか?」
「分からない」
 ナハトの言葉に誰もが首を横に振るだけだった。
 何も無かったかの様にイルミネーションの光は夜の広場を彩るだけだった。
 ヒイラギ、日本では鬼除けとして家に植えられてたり、イワシの頭とセットで門に飾る風習があった。
 彼女「柊」はもしかして……

●完了?
 柊が撤退後、エージェント達は「愚神と従魔は撤退した」と報告し広場は再び人で溢れた。
「それにしても、愚神の中には偶に今回みたいなのとか、妙なコミュニケーション取れる奴とかいるな」
 龍哉はベンチに座った。
「気にしたら負けですわ」
 ヴァルトラウテは静かに瞼を閉じた。

 深墨は本部に待機しているティリアに連絡をした。
「無事、終わりました。折角なので、こっちに来て一緒にイルミネーションを見ませんか?」
「なに? どさくさに紛れてナンパ?」
 深墨の言葉に藍は驚きの声を上げた。
「まー、折角だし! というか、お前と二人でイルミネーションなんて……」
 深墨は藍から目を反らした。
「……ないわね」
 藍は眉間のしわを寄せた。
『あら、お誘いいただきありがとうございますわ。直ぐに向かいますわね』
 お誘いは断られる覚悟で言った深墨だが、あっさりとティリアは承諾してくれた。
「ティリアさん、ありがとうございます。広場の出入り口で待ってます」
 藍と深墨の2人は顔を見合せて微笑んだ。

「綺麗だね……」
 那美は一番大きなイルミネーションを見て呟いた。
「随分と今日は感情的だったな」
 恭也はイルミネーションを見上げながら言った。
「そう? きっと気のせいだよ……」
 那美は瞼を閉じてゆっくりと開けた。

「ディタ、今日の愚神を見てどう思いました?」
 エステルは夜空を見上げた。
「彼等は自分の欲望に正直……いえ、欲望の奴隷なのでしょうね。私は………ごめんなさい」
 泥眼は表情を曇らせた。
「大丈夫です。ディタは最初の頃とは全然違って来てます。だってエージェントに登録した時なんて職員の方に愚神の説明を聞いただけで大変になった事を覚えて居ます」
 エステルは泥眼を見て微笑んだ。
「そうかな……分からないわ」
 自然と早くなる足。
「むしろちょっと早過ぎる位ですね。ゆっくり行きましょう……綺麗な光ですね」
 エステルは立ち止まり泥眼の方を向いた。
「ふぎゃっ!」
 豪快な音とともに聞きなれた声がした。
「あぁ! ティリアさん大丈夫ですか?」
 藍が慌ててこけたティリアの元に駆け寄った。
「あ、マーティスさん!」
「あ、エステル様。今日はお疲れ様ですわ」
 ティリアはエステルを見て笑顔で言った。
「そうそう、お土産があります。はい、マカロン」
「まぁ! いつもありがとうございますわ」
 エステルが差し出した箱をティリアは笑顔で受け取った。
「それでは、エステル様も楽しんでいってくださいませ」
「ええ」
 藍に支えられながらティリアは人ごみの中へと消えた。
「ティリアさん、何もないところでこけるのでビックリしました」
 藍は小さくため息を吐いた。
「楽しくて、ついですわ。藍様、深墨様、ありがとうございますわ」
「お礼を言いたいのは俺達の方です」
 ほほ笑むティリアに深墨は言った。
「ふふ、お互い様ですわね。あ、私飲み物を買ってきますわ」
「あ、そんな私が買ってきます」
 ティリアの言葉に藍は目を見開いた。
「それでは、一緒に買いに行きましょう。好きなモノが分らないのでコレが一番ですわ」
「はい、人も多いですのでそれが良いです」
 藍は笑顔で頷いた。
「それに、一人に出来ないです」
 深墨は、さっきの光景を思い出しため息を吐いた。
(神様、出会いをありがとうございますわ……)
 ティリアは心の中で呟いた。
 もしかしたら、ティリアが深墨の誘いを受けたのは柊のお陰かもしれない……花言葉は「歓迎」。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • エージェント
    瑠璃堂 藍aa0536

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 恐怖を刻む者
    ヴィント・ロストハートaa0473
    人間|18才|男性|命中
  • 願い叶えし者
    ナハト・ロストハートaa0473hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • エージェント
    瑠璃堂 藍aa0536
    人間|22才|女性|命中
  • エージェント
    黛 深墨aa0536hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
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