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アイドルに扮装せよ
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相談卓
最終発言2015/11/29 21:56:34 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/11/28 09:04:58
オープニング
●とある会社からの依頼
「現在、アイドルのステージを狙った悪質な能力者がいることはご存知でしょうか?」
その話題性からワイドショーでも取り上げられ、大抵の者であれば一度は耳にしたことのあるニュースである。
「解っているのは、共鳴した犯人の姿は男なのではないかということ。それもあくまでそういう目撃情報が多く上がっているという程度ですから、正しいかどうかは定かではありません。ですから、元の姿が女なのか男なのか若いのか老いているのか等は一切が不明です。しかし、その犯人は悪質なことに、アイドルのステージに攻撃を仕掛け、それを台無しにするという行為を度々繰り返しています。現在大きな怪我をしたという被害は出ていませんが、その行為によって各会社の損害は計り知れません。それどころか、今後もっと大胆に活躍することによって、擦り傷切り傷程度では済まない怪我を負う人達が出てくることでしょう」
それはその通りである。これまで重傷者が出なかったことの方が不思議なのだ。一番大きなものであったらステージが半壊し、次点では証明が全て割れて破片が会場全体に降り注いだりしたということもある。その他にも、一歩何かが違えば大怪我を負う者が出てくる筈の被害は相次いでいる。
「犯人は愉快犯なのか、アイドルや芸能界に恨みを持っているのかもわかりません。しかし、このまま犯人を野放しにしておくことはできません。そこで、言葉は悪いですが、皆様の中から囮を出していただいて新人アイドルということでステージに上がっていただきます。他の方には警備や裏方仕事などしている姿を装い、犯人の確保をお願いします」
解説
●目的
→アイドルのステージを台無しにする犯人を捕まえること
●補足
→囮役は何人でも構いません。また、男女どちらの性別でも構いません。
但し、囮役の方はステージに立つわけですから、何らかのパフォーマンスは必要です。
狙われているのはアイドルなので、歌やダンスが披露できるとベストです。観客を盛り上がらせましょう。
→囮役の他に、こまめに動いても不自然ではない仕事をする担当も出してください。
警備や照明など、上手く紛れ込めそうな仕事を選んでください。
→戦闘になっても構いません。また、その際ショーの一部のように扱うのもありです。
但し、お客さんに被害を出したり、怖がらせたりはしないようにはしてください。
パニックになると別の意味での被害が出かねないので、その辺りは注意をしてください。
リプレイ
●開演前
開演に向け、正規スタッフが準備に追われて慌ただしく動く中、これからの動きの最終確認をしていた。
「ステージなんて初めてだし、おもしろそーなのよっ! 歌とダンスもレッスン通りにやれば問題なさそーかしら?」と、アイドル達の間ではノリノリの声が上がっている。
その結果……
ステージに上がる→イリス・レイバルド(aa0124)、(アイリス(aa0124hero001)幻想蝶にIN)、言峰 estrela(aa0526)、(キュベレー(aa0526hero001)共鳴中)Alice:IDEA(aa0655hero001)、灯永 礼(aa0942hero001)、小詩 いのり(aa1420)、鈴宮 夕燈(aa1480)、上遠野 あげは(aa1661)、アシュリィ(aa1661hero001)、アル(aa1730)
客席→蔵李・澄香(aa0010)、(クラリス・ミカ(aa0010hero001)共鳴中)
持ち物検査と入口付近の警備→藤 匡(aa0445)、隣偽(aa0445hero001)
舞台袖(上手側)→メイナード(aa0655)
音響(監視カメラの映像解析)→マック・ウィンドロイド(aa0942)
映像(記録係)→セバス=チャン(aa1420hero001)
裏口や搬入口の確認等→Agra・Gilgit(aa1480hero001)
舞台袖(下手側)→雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)
と、いうことで決まった。
一応は犯人の説得がメインであり、戦闘はなるべく避けるという方向性である。また、犯人説得用にクラリスが司法取引の書面も準備済みである。
行動も決まったことであるし、それぞれが担当の場所へと移動を始めた。
「どうにか説得できないでしょうか?」と、隣を歩くクラリスに澄香は眉根を寄せる。
『そうですね。それにこちらも役に立てば良いのですが……』と、既に目星を付けたリンカーは情報収集済みである。犯人の行動を見るに、落としどころがある筈なのだ。そこをつけるかどうかが、鍵だろう。
二人は共鳴をし、ゴスロリの格好で入場者の列に加わった。
アイリスの話を聞き、「えっ……お姉ちゃんも一緒にステージに上がらないの?」と、イリスは不満げな声を上げた。
『全員が統一しているのならともかく1人だけこんな羽を背負っていたら目立つだろう? それに歌えない者がステージに上がるわけにはいかないだろうさ。安心したまえ側にいるのは確かなのだから。では頑張りたまえよ』
『一儲けできそうじゃの』と言う隣偽の言葉に、匡は「俺たちの仕事は物品販売じゃなくて警備ですからね」と訂正を入れる。
『匡と一緒に行動せんといけぬのか』
「じゃあ、舞台に上がりますか?」
その言葉に、間髪入れず『嫌じゃ』と隣偽は返した。
『……付き合ってやれんぞ…』「恥ずかしいの?」『……見世物にされるのは好かん』「でも犯人もエージェントっぽいし……今日だけはねっ? お願いっ」『……お前は私のマスターだ…命令と在らば従うまでだ』「もー、もっと今を楽しめばいいのにぃ」「あっ、姿が変わる奴でいこうと思うから !ちゃーんとリンクよろしくねっ?」『……了解だ、マスター』
そんなやり取りをし、estrelaは共鳴した。
「イデアがアイドルか……嫌な予感しかしないが、まぁ他の皆がカバーしてくれるだろう……。何が目的かは知らないが……本格的な被害が出る前に止めなければね」と言うメイナードの横で、イデアは「アイドルですか……わたしが……えへへー。仕方ありません、今日だけおじさんだけの物ではなくみんなの物になるとしましょう」と、存外ノリノリで、メイナードは「大丈夫かね」と肩を竦めた。
『さて、この電子のアイドル礼ちゃんのオンステージだ。私のパフォーマンスに酔いしれるがいい』と、アイドル活動ができることに気分が高揚している礼に、勝手に依頼を受注されたマックは「もうどうにでもな~れ……」と、投げやりに溜息を吐いた。
この件で礼の名前が売れるかどうかはわからないが、アイドルに興味のないマックは礼にされるがままに、彼女が満足するまで付き合うことになったのだった。
「犯人さんはどうしてこんなことするのかな? 出来れば荒っぽいことにならないといいな」
いのりの言葉に、セバスは『そうでございますね』と頷いた。
「犯人、絶対に捕まえるよ。 名前を売るのはついでかな」と、やる気のいのりに、『仰せのままに』とセバス綺麗な一礼を決めた。
「犯人さんってやっぱり「アイドル」に対して、憧れとか、好きな気持ちがあったりして、でも何かあったから……とか、動機って言うてもうちにはピンとは来ぃへんけど……なんやろ、本当は一緒にステージ盛り上げたいとかあったら一緒出来たらよかっちゃけどなぁって思うと、何か切ないやんーその辺聞いて、話し合えたらよかなぁ……」そう言う夕橙に、Agraは『それを知る為にも、犯人は捕まえないといけねぇな』ぶっきらぼうに返した。
「憎しみとか妬みとか……そういう感情なのかな……」『あげは、考え過ぎ』「アシュっち……。そだね、犯人がどうしてこんな事するのか分からないけど、あたしに出来る事は一つだし!」『アシュも、じゃーまね、がんばるんばー』「頑張るのは良いけど……衣装は控えめにおねがいね……」『おっけーちゃん』
軽い言葉と共に親指を立てたアシュレイに、あげはは溜息を吐いた。
「舞台上って、意外とお客さん達の顔がよく見えるんだって。視線や表情に違和感のある人を探すね。おねぇさんも見つけたら連絡頂戴!」
やる気満々のアルに、虎視眈々とシャッターチャンスを狙っている、ある意味でやる気満々のマルシアは『わかっているわ』と頷いた。
「できたら、説得できると良いね」
●会場入り口
「最近、怖い事件が多発しておりますので、ご迷惑をお掛けしますが、持ち物の検査をさせていただいています。ご協力よろしくお願いします」
他のスタッフに混ざり、匡と隣偽も持ち物検査に当たる。
そして、英雄に反応するゲートとハンディ式センサーを用意した。但し、偽物の為、ばれないように当人達に英雄であることを自己申告してもらい、事情を話し、能力者と英雄の席を離させてもらうように徹底する。
「多発している事件の対策と致しまして、英雄のお客様には自己申告をお願いいたしております。また、ご迷惑をおかけいたしますが、お席を能力者のお客様と英雄のお客様で離させていただいております。誠に申し訳ございませんが、ご理解の方を宜しくお願いいたします」
『よろしくお願いするのじゃ』
頭を下げながら、荷物の中を確認させていただく。時折反論のようなことも言われるが、周囲の目がある状態で頭を下げて下手に出る人間を頭ごなしに否定できる者など殆どおらず、多少の揉め事はあるが、それでも何とか誘導をすることができた。
しかし、不意に隣偽が服の裾を引いた。
「今の……」
●裏口
『よう、お疲れさん』
あたかもスタッフの一員であるかのようにAgraは他の人間に声をかける。あまりにも堂々としている為、誰もが違和感を覚えることなく「お疲れさまです」と挨拶を返す。
『ちぃっとばかし聞きたい事があるのだが、良いか?』
そこで他のスタッフに今日搬入されてきた物品を聞き出し、それの確認へと向かう。
移動の途中にも怪しい場所がないか目を光らせるが、特に目につくところはなさそうであった。
●舞台1
『歌を歌おう。ダンスも踊ろう。綺麗な服も着よう。私というキャラクターを人間たちが一斉に共有するんだ。素晴らしい』
まるで謳うような口ぶりで口上を述べ、礼は朗々と歌いだした。
彼女の歌は寧ろ、ヒューマンビートボックスに近い。口から8bitサウンドをひねり出す事ができるのだ。
それに合わせて得意のロボットダンスも披露し、観客の目にその存在を焼き付けた。
●音響
舞台裏で音響に見せかけて、マックは監視カメラの映像を解析していく。
「さて、わかりやすいやつだと助かるんだけどねえ」
絞り込むポイントは幻想蝶の光、ステージではなく周囲を警戒する人間、顔をわかりづらくしている人間その辺りだろう。それは一見簡単のようであるが、実は膨大なまでも仕事だ。だが、こういうことは専門であるマックはその目を光らせた。
●舞台2
ステージの上にイリスとアルの可愛らしい二人組が立っている。二人とも金色の髪をしているし、まるで姉妹のようだ。
観客席から「かわいー」という声が聞こえてくるが、その度にイリスはびくりと肩を震わせ、宥めるように幻想蝶から『頑張れ』と小声で応援があった。
だが、舞台慣れしているアルはサイバー系の衣装に身を包んだまま、「ボクの歌を聴けぇぇ!」と叫んだ。それに合わせ、曲がスタートする。
アルは歌って踊りながらも、観客席の中に怪しい人物がいないかを探す。ステージの上からは案外見えるものである。そして舞台袖のマルシアをちらりと見て、心の中で(…名は体を表すって言うけど、絶対そんなことないよねぇ)と思った。
そんなアルの横で、イリスも必死に歌と踊りについていく。気合と根性で乗り切ろうとしている姿がまた微笑ましさを誘い、観客席は既に可愛いものを見るような保護者の視線へとなりつつある。
子供とは思えない堂々としたアルと、幼さはあるが案外通りの良い声のイリスはステージの上で堂々と一曲を終えた。
●舞台袖・下手側
曲が始まるとシャッターチャンスを狙い、マルシアはカメラを構えた。だが、いざという時はすぐに動けるように警戒は怠らない。
にやにやとしながらステージを見ていると、不意にアルと視線が合った。そして、声にこそ出ていないが何を言わんとしているのか察し、(……アルちゃんなんで笑ってんの! 何が「雅(物理)」よ失礼しちゃうわね! 良いじゃない別に!)と拳を握った。
●舞台3
対し、次のステージはestrelaとIDEAのセクシーコンビである。
観客を「子ブタちゃん」呼ばわりするestrelaと、ダンスの合間にセクシーなポーズを大胆に織り交ぜているIDEAである。
主に男性からの受けが良いようで、野太い声が上がっている。
「あーら? ……私の美しさに吸い寄せられた憐れな子ブタちゃんがこんなにもいるのね…! いいわっ……! みーんな私が踏んで、ア、ゲ、ル。もっと良い声で鳴きなさぁい?」
その言葉に興奮した観客がステージに上がるが、上がってきた客の足をヒールで踏むと「なぁに? 子ブタのくせに、私達におさわりする気ィ? 生意気なブタねぇ……?」と蹴とばした。普通なら問題だろうが、観客は「ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です」と倒れたのだから、全く問題ないだろう。
IDEAはIDEAで挑発的なポーズを決めていて、観客の目は釘づけである。少し過剰なまま歌は佳境まで進み、観客からは「IDEA!」コールが巻き起こる。
その声に合わせ、ダンスは更に過激になるが、それでも観客の状態はきちんと目で確認していた。
●舞台袖・上手側
セクシーなダンスを披露するIDEAに少しハラハラしつつも、メイナードは「マネージャーよりアイドルへ。犯人の目星を付ける為に、観客の目を釘付けにできないか?」と指示を送った。それに合わせ更に大胆になるIDEAとestrelaを横目で見ながら、ステージに集中していない観客はいないか視線を滑らせた。
●舞台4
「うちも頑張るから、応援したってぇ!」
曲が流れ出し、歌いながらステップを決める。
本人はプロアイドルの中での行動に少し引け目を感じていたが、開き直ってからの思い切りが凄い。駄目で元々という考え方があるからこそ、一層切れの良いダンスが披露できている。
曲の間奏の合間に独特の喋りでトークすれば、すぐに「夕燈」コールが巻き上がる。
●舞台5
「今日はこんなに沢山集まってくれてありがとー!!」
あげははアシュリィとステージに上がり、観客に語り掛けるように口を開いた。
「最近ちょっと、悲しい事件が起きている事天…皆も知っていますか? その人が今怒ってるのか悲しんでるのか、あたしにはわかんないよ。でもね、どんな人でも、どんな気持ちの時でも……あたし達とそしてここに居る皆と一緒に盛り上がって、キラキラ素敵な気持ちになって欲しいって思う。それがあたしの目指す『アイドル』だから!」
そこまで言うと、アシュリィの方を見て、「アシュっち、行くよ! あたし達の戦いだ!」『いえー。今日のアシュリィチョイスー』と共鳴した。
共鳴が終わると同時に曲が流れ出し、語り掛けるような自作の曲が披露される。
●観客席
ステージの人が変わる度に観客に混じり「いのりー! アゲハ先輩! 言峰先輩! アルちゃん、かわいー!!」といった、声援を澄香は飛ばす。クラリスもクラリスで『イデアちゃん、イリスちゃん、礼先輩。鈴宮さん、素敵ー!』と、友達に声援を飛ばしている。
しかし、楽しんでいるようでも警戒は怠らない。いざという時はすぐにでも動ける準備はしてある。
周囲の観客にはばれないように、そっと仲間達と連絡を取り合った。
●舞台6
「こーんばんはー! ボクは小詩いのりだよ! 今日は楽しんでいってねー!」
踊りながら、観客席のチェックは怠らない。
普段からステージに慣れているだけあって、周囲に目を向けるということに対しても随分と余裕があった。笑顔のまま、違和感を抱かせることなくこなせている。
このまま何事もなく終わるのかと思った矢先だった。
観客席にふと目が留まった人物がいて、仲間にそっと合図を送った。
●舞台裏
カメラで舞台を撮り続けていたセバスは、いのりの合図に従い、そのレンズを一人の観客に照準を当てた。
他の観客は舞台に熱中しているが、その人物は明らかに苛立たし気な――いうなれば冷めた目をしている。
『これはどうやら、当たりかもしれませんね』
●ステージにて
突如、ステージ上のスポットライトが割れた。
そのことで観客達はパニックに陥るが、いのりの合図でその人物へと注意を向けていた面々は、銀の魔弾を撃ったのだということに気が付いた。つまりは、既に共鳴状態にあるということである。
「あー、そこのキミ。ちょっと待ってね」
ステージ上の呼びかけとともに、スポットライトがその人物に当てられる。
男だ。
特に特徴のないようにも思えるが、共鳴状態だからその人物が本当に男なのかどうかは定かではない。ただ、目だけが違っていた。目だけが強烈なまでに憎悪を訴えかけているのだ。
男は再び銀の魔弾を放った。しかし、それはゴーストウィンドウによって阻まれる。
スポットライトが当てられる。
「魔法少女アイドル・クラリスミカ! 貴方のハートをくらくらりん!」
「戦うギャル系アイドルリンカーの本領見せちゃうよ!」
戦闘モードに入った二人を筆頭に、逃げられないように周囲を固める。しかし、唯一開いていた方へと男は逃げる。
その先はステージだ。
ステージ上に居たいのりは、「キミはどうしてこんなことをするの? アイドルに何か嫌な思い出があるのかな?」と語り掛けた。
それに男は「黙れ!」と激昂するが、「これだけ執拗に狙ってるんだ、君にもちゃんと理由があるんだろうね。教えてほしいな。無関係の人を巻き込むのはいただけないから」とアルも諭すように口を開いた。
観客席の方では、これはあたかも演出であるかのように、匡がメガホンでアイドル達の応援コールを呼びかける。すると、初めは戸惑いがあったが、次第に大きなものへと変わった。
声は力だ。声援は糧である。
男は振り絞るような声で「五月蠅い!」と喚いた。
「けど、この数を相手に逃げられると思うのかな? ここに上がったのが運の尽きだよ」
「これで悪行も終いにしましょう。こんなことをして何になるというのですか?」
「司法取引で、無償での奉仕活動により贖罪とするということで話が付きました。貴女のことを知る方からも口添えがあり、このような処罰で済むのですよ?」
その言葉に男は顔を上げた。
「キミはアイドルになれなかったんだね。辛かったね。でもさ、今のキミ自身を振り返ってご覧よ。とっても悲しくないかい?」
その問いに、男は「お前に何がわかる!」と叫んだ。それは魂の叫びのようであり、その瞬間に共鳴が解けた。
否、弾けたといってもいい。
感情の発露と共に、想いが弾けたのだ。
そして姿を見せたのは、まだ十代の少女。その少女の姿を見て、観客席の方から「おい、あれって」「えっ、まさか」といった、少女のことを知る声が上がった。それに続き、「うわー、俺、ファンだったんだよ」「可愛い」「本物か?」と言う声も上がっている。
それを見て、「すごいなぁ」という声が自然と漏れた。感心したような声に、少女の視線も向く。
「いやだって、それだけ貴女のことが記憶に残っているということやろ。それって本当に凄いことだと思うわぁ。うちからすると、「あーこう言うん憧れるよなぁ、素敵やんなー」って感じやもん」
裏表のない言葉に、少女の頬を一筋の涙が伝った。
「あなたが……どんな気持ちなのか、どうしてそんな事をするのか、ちゃんと教えて?」
再びの問いに、少女は唇を噛み締めた。そして、「私ばっかりこんな目に遭っているのに、アイドルとして活動してキラキラとしている子達が妬ましかった」と言った。その言葉を笑う者なんていなかった。
「私は確かにアイドルをやっていたよ。けどさぁ、身に覚えのない中傷をされ、私は全部を滅茶苦茶にされた。やったのは同じアイドルだよ。しかもさ、その子は私のことを蹴落としておいて、今もトップアイドルとして活動しているんだよ。そんなことがあったというのに、どうして許せるというの。どうして、そんな汚いことをしたあの子が脚光を浴びているわけ。おかしいじゃない!」
悲鳴のような悲痛の声に、『それで、こんなことをしたの?』と声をかける。
「そうよ。だって、不公平じゃない。私だってやっとアイドルとして顔が売れて、これからもっと沢山みんなの笑顔を見れたのに、何で私ばっかりこんな目に……」
「けど、貴女のマネージャーさんは悔いていましたよ。自分の力のなさに」
「嘘ばっかり。だって、私のことを見捨てたじゃない!」
「違いますよ。今回、貴女の処罰に対して掛け合ったのはあの方です。あの方のおかげで、貴女は無償の奉仕という処罰だけで済むのです。そして、これが今回の処罰になります」
受け取った書類を手に、少女は「嘘っ……」と声を震わせて涙を流した。
そこには、無償奉仕としてアイドル活動をすることが記されていた。
「貴女のマネージャー、凄く頑張ったんじゃないかしら? それなのに、貴女はそのまま子ブタちゃんのままで良いの?」
「一緒にステージに立とうよ。ボク達と一緒に」
「……私がまた、ステージに立っても良いの?」
震える声の少女に、「当たり前だし!」と答えた。
「アイドルはみんなを笑顔にするのが仕事だよね。それなのに、貴女は今回の件でいっぱいみんなに迷惑をかけた。じゃあ、今度は貴女がみんなをそれ以上の笑顔にしてあげるのが筋っていうものだよね?」
「私、また、ステージに立ちたい!」
力強い言葉に、観客からも「待っているよ」「応援にしている」「絶対に行くよ」といった声が続く。
その言葉に少女は立ち上がった。
●その後
少女を交え、アイドル達は再びステージを行い、それは大盛況だった。アンコールの声と拍手がいつまでも鳴り止まなかった程である。
男性陣もステージに上がり、一曲を披露した。どちらかというとジャズ系の音楽ではあったが、アイドル達がお色直しをしている間の時間をばっちりと稼ぐことに成功した。
そして今はそのステージを終え、舞台裏ではそれぞれをねぎらう打ち上げが行われている。
「もう、こんなことをしたら駄目だよ」
その言葉に、何度も何度も少女は頭を下げた。
「絶対にしないわ。だって、アイドル活動ができなかった時、本当に死にたくなるような思いで、またその活動ができるのだったら、何でもする。頭だって何度だって下げるわ」と、少女は反省し、しっかりと奉仕活動をすると約束をした。
他のメンバー達はそれを応援し、大成功だったステージについて盛り上がっている。大人組は酒を片手にすっかりと出来上がっているし、二十歳未満組はステージについてきゃあきゃあと語り合った。
「夕燈もこのままデビューしちゃわない?」「そうですよ。凄く良かったですよ」「うちはもう、いっぱいいっぱいやっただけやもん。みんなの方が凄すぎたわぁ」「だって、アイドルだもの」
「お疲れ様。リンカー業が無ければこのまま皆でデビューしてもいいくらい素晴らしかったよ」『一応これで、元アイドルって事になるんですかね?元アイドルの英雄ですよ、おじさん』
『これで、私もアイドルだね』「いや、そんな簡単になれるものなのかな?」
「ワタシの今日のステージ、なかなかだったでしょ?」『…………そうだな』
「お疲れさま。上手くいって良かったですね」『そうじゃのう。丸く収まったようじゃな』
「お姉ちゃん、ボク頑張ったよ」『そうだね。上出来だったよ』
そんな風に話は弾み、年少組が疲れて眠る頃に漸くお開きとなった。
……ちなみに、セバスが撮った映像は上手いこと編集されており、少女の悪行を広めさせることなく、感動的な纏め方で放送がされた。そして、ステージに上がった新人アイドル達にも注目度が上がることとなった。結果的に、今回のステージにより、知名度がアップしたのだった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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