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雪山を甘くみることなかれ
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最終発言2015/11/22 21:53:41 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/11/21 22:15:03
オープニング
●山の麓にて
「お願いします、どうか助けてください」
スキー旅行に訪れた一行が能力者の集団であることを知ったのか、男は土下座をする勢いでそう言った。
現に、除雪されても尚振り続ける雪で、アスファルトには10㎝以上積もっているのにも関わらず、膝を着こうとした男を慌てて止めた。
取り敢えず話を聞いてみると、「ここの雪山には立ち入り禁止とされている区域があります。しかし、大学生の5人組がそれを無視して足を踏み入れたようなのです」と言う。
そこまで聞けば、山狩りでもすれば良いのではないかと思うのだが、男は更に「この山の深部には従魔が出るのです」と続けた。
「5人の内1人は命からがらこちらに戻って来たのですが、その時彼が、化け物に遭ったと言いました。つまり、従魔と遭遇したということです。こうなっては、こちらとしては手が出せません。猟銃を持った所で、返り討ちに遭うことは目に見えています」
そこまで言い、男は更に頭を下げた。土下座は阻止したが、90°どころか180°の角度で頭を深くまで下げる。
「こちらに遊びにいらっしゃった皆様には本当にご迷惑をお掛け致しますが、何卒残りの4名の救出を宜しくお願いいたします」
解説
●目的
→大学生4人の救出
●補足
→救出が目的なので、敵と遭遇した場合に必ずしも倒す必要はありません。逃げられるのなら逃げてもOKです。
→使えそうな道具は申請してください。一応、スキー旅行に来たので必要でしたらスキーでの移動は可能です。
→現れる従魔は猪にも似たキャノンボアです。一撃が強烈ですし、群れと遭遇した場合はなかなかに困難になります。中に他の個体よりも大きくて強いリーダーがいますので、遭遇した場合に備え、きちんと対策を練ってください。
山の深部に生息していますが、スキー場の辺りまでは滅多にやって来ないので、その辺りでの遭遇はありません。
リプレイ
●スキー場にて
スキー場の事務室に通され、御神 恭也(aa0127)は「吹雪になる前に事を終わらせたいな」と呟き、伊邪那美(aa0127hero001)も『早く終わらせて、炬燵に入りたいよ』と頷いた。
その傍で、『さむいし、蝶の中に居る……』とLe..(aa0203hero001)は東海林聖(aa0203)の幻想蝶の中に引っ込んだ。彼女を妹のように思っている林聖は「わかった。けど、いざという時は頼むからな」というスタンスでいくようである。
話を聞いた一同の表情は険しい。
「スキーが雪山登山に変わったか」と言うカトレヤ シェーン(aa0218)の言葉には誰も否定できず、王 紅花(aa0218hero001)も『早く終わらせたいものじゃ』と同意を示す。
しかし、中には初めて雪を見るのにテンションが上がり、『雪なの。すごいの、つめたいのー』と何処かはしゃいだ夜帳 莎草(aa0468hero001)を、無音 彩羽(aa0468)は「猫がコタツで丸くなるのは昔の話か……、遊ぶのは仕事が終わってからだからな」と宥めた。
「まーったくもー、立ち入り禁止なのになんで入っちゃうのかしらね~?」と肩を竦める言峰 estrela(aa0526)に、『……自業自得だろう。捨て置け』とキュベレー(aa0526hero001)は言うが、「…って言ってもねえ? エージェントである以上、やることは決まってるでしょ?」に尽きるのである。
大学生の話を聞き終えると、『なんだ、モニカ。本業じゃないか』と耳打ちしてきたヴィルヘルム(aa1020hero001)に、「…だね、残念だけど」とモニカ オベール(aa1020)は不服そうに頷く。
それに同意するように、趣味のスキーを楽しみにしていた弥刀 一二三(aa1048)も、「…また勝手しおったスキーヤーかい!」と不満そうに唸った。
そしてその横でも、「まさか退役後に雪中行軍と山岳訓練のスキルが活きるとはと」クレア・マクミラン(aa1631)が溜息を吐き、リリアン・レッドフォード(aa1631hero001)『クレアちゃんの休暇って、昔から何か事件が起きるよね~』と呟く。
大学生の要領を得ない話に「……もう、眠い」と不知火 轍(aa1641)は欠伸をするが、『?! 睡眠欲もここまで行くと最早狂気ですよ!? 家に帰ればお布団が待ってますから、ほらシャンとしなさい』と雪道 イザード(aa1641hero001)に諭され、「……分かった、倒す、寝る」と頷いた。
「何のための禁止か勉強になったことでしょう。生きていれば、ですけれどね♪」という、紅鬼 姫乃(aa1678)の言葉はもっともだろう。その言葉に大学生は俯いた。
「万一に備えて周辺の詳しい地図、あるよね。貸して!」
切り替えていこうと言わんばかりのモニカの言葉に、男は慌てて地図を取りに出た。
男が戻ってくるのを待つ間、「取り敢えず、救護班と、警戒または攻撃班は分けるべきではないだろうか?」という話になった。
その結果
救護→カトレヤ、estrela、モニカ、クレア、彩羽、姫乃
警戒・攻撃班→恭也、林聖、一二三、轍
ということになった。
男が戻ってきてからも話し合いは続けられ、「救急車と……あとヘリ。雪山遭難者が出たときの基本でお願いね? 無線とGPSも持ってくから発見次第連絡するわ」と、時には男と交渉しつつ必要な物を揃えた。
●雪山にて
立ち入り禁止と書かれた看板の前で、「ここか」と誰ともなく呟いた。
ここから見るに、新雪が随分と積もってしまっているようだ。山の天気は移ろいやすいとはよく言ったものだが、随分と吹雪いている。それなのに、こんな急な斜面を行くなど、自殺行為も等しいことだ。
事前に無線機は借り、それぞれ荷物を整えた一同は散開した。
かんじきを履いた恭也は那美と注意深く辺りを見回し、跡がないかを探していく。
『ねえ、ボク達もスキーとかスノーボードとか借りなくて良かったの?』
那美の疑問に恭也は首を振る。
「移動速度は速いが、攻撃する時に踏ん張りが効かんからなかんじきの方が好みだ」
『……単なる年寄り趣味じゃなかったんだ』
林聖はスノーモービルを運転しながら、辺りを探っていく。後ろに取り付けたソリが勢いでバタバタと揺れて引きずられる。
首元の防寒具を引き上げた。
寒いからという理由でLe..は幻想蝶の中に居るが、確かにその方が好都合だ。こんな天候が悪い中、彼女を寒い目に遭わせるのはあまりにも忍びなかった。
考え方が似ていたカトレヤとestrela、一二三は途中まで一緒に向かうことにした。
この三人とパートナーは大学生が保護された場所から立ち入り禁止区域に足を踏み入れている為、他のメンバーから少し離れた場所に居る。
コンパスで方向を確かめながら、地図と照らしながら進んでいく。
「木々に、引っ掛けた跡や落し物がないだろうか?」
『うむ、我も探してはおるがなかなかそのようなものはないようじゃ。そもそも、どの辺りでばらけたのかも定かではないようじゃしな』
「まぁ、こうゆうのは焦ったらあきまへんって。地道に捜しましょ」
「そうだな。それに、こう天気が悪いと、シュープルも消えてしまっている可能性が高いしな」
「そうそう。他の方が見つけてくれはっている可能性もありますさかい、うちらはうちらでやれることをやればええんどす」
口調こそおどけて聞こえるが、言っていることは間違っていない。「そうだな」とカトレヤは頷いた。「そうだよ~」とヘッドライトをしたestrelaも言う。
「準備は万端なのよ。大丈夫だよ~」とやる気のあるestrelaに対し、キュベレーは『捨て置けば良いのに……』と呟いた。それを聞き、estrelaは「もう、それ禁止」と注意をした。
「運転してると、あまり周りを見てるわけにもいかないから、捜索は任せるぞ」
スノーモービルを運転する彩羽にくっつきながら、『わかったのー』と莎草は返事をした。
こちらもソリが付けられていて、見つけたらすぐにでも搬送が可能だ。
「従魔がいることがわかってて討伐依頼が組まれてないってのは、HOPEに未報告なのか、条件もろもろが整ってなくて後回しにされてるのか、はたしてどっちかね……」
「……よく周囲を見ろ、あたし……こういう時、遭難者はどこへ向かう……?」
シュプールを見つけられず、モニカは独り言のように呟いた。そんなモニカにヴィルヘルムは何か言いたそうな視線を向けるが、モニカは思考する。
山スキーで移動しながら捜索し、「あ、歩きながら細工できる?」と指示を出す。
『何をすればいい?』「ボルトにザイル取り付けといて」
「…………以上です。判断に迷ったら私に連絡を」
定期連絡を終えたクレアは無線をしまった。まだ発見はできていないようだ。
無理もない。全員シュプールを探してはいるが、雪山は広い。その上、吹雪の状態で見つけるのは至難の業だ。
『まだ誰も見つかってないの?』「あぁ。けど、見つけてみせるさ」『うん、その意気だよ』
「……天気が、これ以上酷くなる前に終わらせようか」
『雪山は危険ですからね、寝ないで下さいね?』
有無を言わせないイザードの言葉に、「……分かってるよ」と轍は頷いた。
『何ですか、その間は。本当に大丈夫なんですよね? 寝ないで下さいよ』
「……大丈夫。……多分」
スノーモービルを乗り回しながら、姫乃は進んでいく。時々、雪が不自然にへっこんでいる所を見つけては止まり、スコップで誰か埋まっていないかという確認も忘れない。
「本当に、どこにいらっしゃるのかしら? 猪も見つからないことですし」
おっとりと呟きながらも、何処となく好戦的な感じを滲ませつつ、姫乃は再びスノーモービルに跨った。
●山中にて
『ねぇ、これ……』
雪に埋もれてはいるものの、微かな足跡が見える。それも複数。だが、明らかに人間のものではなく、動物のものである。
「大型の動物のようだ。だが、これだけ密集しているのは不自然だ」
『それはつまり、キャノンボアの可能性があるということ?』
恭也はそれに頷いた。どうするのかと問う那美に、「危険に遭わないよう、様子見程度に追うことにしよう」と答え、二人は十分に警戒しながら先へと進んだ。
その先でやはり数頭のキャノンボアを発見した。そして目を凝らして周囲を見回すと、木の上の方に一人の青年がよじ登っているのが見えた。
死角になっているのかキャノンボアには気が付かれていないようだが、見つかるのも時間の問題だろう。
ただ殲滅するのならわけもないが、青年を守るという負荷があるのなら至難の業だ。
現状を把握すると、恭也はすぐに仲間に連絡を入れた。
無線を受け、林聖はすぐに恭也と那美の元へと向かった。あまりにも近づくとスノーモービルの音で気が付かれる恐れがある為、適当な距離で置いてきた。その際、途中で会った姫乃も加わった。
「あそこか?」
救護対象とキャノンボアを認め、静かに頷き合う。
「二人が戦い、その間に一人が救出するというのが妥当なのか?」
互いに顔を見合わすが、「なら、私が救出をやっても構いませんわ」と姫乃が名乗り出た。
「じゃあ、そういうことで。終わったら、猪肉パーティーだな」
林聖の言葉に、頷き合う。
「おい、ルゥ! 出番だ」
『……出番なの……?』
「おう、そうだ。必要最小限を、最大限に行くぜルゥ!やるからには全力でぶっ飛ばす!!」
『……全力なのはいいけど……寒いから早くして』という言葉を受けながら、林聖は共鳴した。それとほぼ同時に恭也も共鳴する。
行くぞと二人はキャノンボアの前に飛び出した。突如現れた乱入者の前に、当然ながらキャノンボアは排除へとかかる。
それを二人は避け、注意を引き付けている間に姫乃が気配を消して木へと近づいた。
「ご機嫌よう、生きているかしら?」
話しかけられた大学生は寒さと恐怖に震えながら、必死に頷いた。それでも動けないのを見る限り、自分で降りるだけの体力が残っていないのだろう。そう判断し、姫乃は彼を木から下した。
「早く暖かいところへと参りましょう」
笑顔で言いつつ、「寒さが少しでもましになりますように」にカイロを貼ってあげた。
比喩ではなく、凍り付いた身体にとってはかなりの熱感であり、呻くような声を出した。
視線を向けるとまだ戦闘中である。だが、スノーモービルまで少し距離があることだし、もう少し注意を引き付けておいてもらうことにした。
そして彼も乗せると、二人に合図を送った。
『頂上側に居た方が、有利になるんじゃ無いの?』
「猪は前足が短いから下り坂は苦手なんだ。上手く行けば避けるだけで麓まで一直線に転がり落ちていく」
常に麓側に居るように調整しつつ、恭也はストレートブロウを放つ。それにはキャノンボアの巨体でも耐えきれず、雪と相まって吹雪のようにして叩きつけられる。
そのすぐ傍では怒涛乱舞により、敵の注意を引き付ける林聖もいる。
こちらも時にはストレートブロウを放ち、上手く距離を保ちながら戦闘を繰り広げている。
今回は殲滅というよりも、時間稼ぎが目的だ。上手く撒くという方が重要なのである。それよりも、ここで大きな行動を起こすことにより、救助対象を巻き込んだり、または雪崩になったりする方が余程厄介なのである。
その点、林聖の戦い方は時間を稼ぐのに余程効率的の方法であった。
姫乃から連絡を受けると、「なるべくなら後顧の憂いを無くす為に殲滅したかったのだが」『ボク達の目的は救助だよ。無理は禁物だから』と会話を交わす恭也と共に撤退を開始する。
林聖は再びストレートブロウを放ち、今度は煙幕のように目くらましにするとその場を立ち去った。その際、猪肉パーティーと言っていたように倒したキャノンボアの内、最も近くにあったものも引っ掴んだ。
カトレヤと一二三はestrelaと別れた後、場所の把握の為に近くの木に印を付けながら進んでいく。
「大分奥まで来たな」
「必死に逃げているとはいえ、こない奥まで来るのは結構難しいとは思うんやけど……」
二人で話していると、『あれは、木ではなさそうじゃが……』と紅花が指さした。
確かに木にしては妙な形の物が突き刺さっている。
近づいて雪をほろってみると、プラスチックが覗く。
スキー板だ。
縦に刺さっていた為に雪には完全に埋もれなかったのだろう。よくよく観察してみると、
もう片方は雪に埋もれるようにして斜めに刺さっている。
まさかと思い顔を見合わせると、持ってきたスコップやストックや他にも使えそうな物を使って慎重に掘り出していく。
すると、その中から人が出てきた。
「これは、件の大学生のようだ」
「そのようやね」
意識はないが、口元に耳を近づけると、微かながら息を確認できた。しかし、このままでは時間の問題だろう。
カトレヤが持参した寝袋の中に入れると、ソリの要領で彼を引いていくことにした。
しかし、突如荒い息が聞こえてきた。
キャノンボアだ。
だが、どうやら一体だけのようである。
「カトレヤはんは、彼を連れて先に行ってくれなはれ。取り敢えず、うちが上手いことやりますわ」
その言葉に逡巡するが、それは一瞬のことだ。大学生の状態を考えると、刻一刻を争うのは明確である。すぐさま彼を連れ、カトレヤは離脱した。
残された一二三はキャノンボアと向き合う。
突進してきたのを上手く交わすと、その側面にライヴスブローを撃ち込む。抉るような強烈な一撃に敵はよろめくが、それでも決定打にはならない。
怒るように襲い掛かるキャノンボアを上手く避け、カトレヤが距離を稼げるだけの時間を稼ぎつつ、上手く誘導していく。
頭に血が上ったキャノンボアに周りはよく見えない。
勢い余り、雪山に突進すると埋まり、身動きが取れなくなったようだ。
「チャンスおすね」
そして、動けない所に止めを刺した。
『あ、あそこなんか動いたの』
莎草の声にスノーモービルを止めるが、指さした所には何も見当たらない。
「何もいないじゃないか、狸にでも化かされたか?」
『莎草はターヌーキーじゃーなーいーのー』
「いや、この場合は莎草のことを狸といってるわけじゃないからな?」
そんなやり取りをしていると、微かだがうめき声が聞こえた。
『あ、あそこなんか動いたの』
再びの言葉に近づくと、「おーでかした。良く見つけられたな」と今度は本当だった。
「けど、ちょっとまずいかもしれないな」
『危険がいっぱいなの?』
無線で連絡を受け、近くに居たクレアとリリアンが二人に加わる。
『クレアちゃんは外傷、私はバイタルチェック。よろしくね』
「了解、ドクター」
実に手際よく分担し、手当てを進めていく。
『大丈夫なの?』
『任せて。これでも私、お医者さんなのよ』
笑顔で答えながら処置を続けていくと、彼は気が付いたようだ。
『大丈夫ですか? 気分が悪いところはありませんか?』
優しく問いながら、その間にクレアは準備した白湯を渡す。阿吽の呼吸と言うべきなのか、相方の出方がわかっているかのようなタイミングである。
「これも口にすると良い。気分が落ち着くはずだ」
彩羽は持参してきたチョコレートを渡した。
『危険は終わりなのかな?』
「そうですね」
『そうなる為にも、下山しましょうか。ここでできたのは応急処置までだし、病院に行った方が良いわ』
「それなら、私はスノーモービルで来ているから、私が運ぼう」
「じゃー、ワタシ達はこっちを探してくるわねー」と別れた後、ヘッドライトでしっかり確認しつつ怪しいところプローブで埋没者がいないか捜索を始めた。
『……そもそも私達は此処へ何をしに来たのだ?』
「えっ、スキーじゃないの……あれっ? スキーって何かしら?」
その言葉にはあときゅうべーは溜息を吐き、『場の雰囲気に呑まれるから面倒ごとに巻き込まれるのだ』と言うが、「はいはい、もんく言わなーい!これもエージェントの仕事って奴なのよー」とestrelaは答えた。
「あら、あれは……」
捜索範囲がかぶっていたようで、右手の方からモニカとヴィルヘルムやって来たのが視界に入った。
合流し、他の三人が救助されたことを話しながらも視線は周囲を見回していく。
『洞穴か……』
岩の間に亀裂が入り、ちょっと頑張れば人が入れるような穴が開いていた。
そして、その手前で埋もれるようにスキー板が投げ捨てられているのが見える。余程慌てていたのか、スキーブーツも放り出されている。
「これって……」
中を覗き込んで見ると、暗くて視界が利かないが息遣いが感じられる。
ヘッドライトで照らして見ると、ひっと息を呑んだ男がいた。
「あたしはアルプスの山岳救助隊員、そしてHOPEのエージェントだよ。もう大丈夫だからね」と、モニカが相手を安心させようと極めて穏やかな声音で話しかけると、「助けに来てくれたのか」と応えがあった。
「怪我はしていないかしら? 温かいコーヒーもあるわよ」
「チョコレートもあるけど、お腹空いていない?」
話している間に安心したのか、亀裂から這い出て来た。
他のメンバーに最後の一人が見つかったことを無線で連絡する。
まだ気が高ぶっている男になるべく話しかけ、宥めていると、『……敵か……』『大きいな』と警戒した声がかけられる。
威圧感のあるキャノンボアである。明らかに、図鑑に載っているものよりも大きい。
『戦えるか?』
「マズいかも。何とか撒きたいんだけど……」
守りながらの戦いは随分と不利だ。武器を構えて備えていると、縫止が発動する。それにより、キャノンボアの動きが阻害された。
「うぜぇ、止まっとけよ猛進共が」
荒々しい口調で轍が現れた。それにハッとし、「さっきヘリを要請していたよね。あたし達でどうにか巻くから、先に行って」とモニカはestrelaに男を連れて離れるように言う。
『……ここは言葉に甘えた方が良いのではないか? 足手まといの男がいるから、上手く動けず共倒れになるかもしれないぞ』とキュベレーに諭され、三人は足早に立ち去った。
会話をしている間にキャノンボアは砲弾を撃ち込んできたが、轍はすかさず盾に切り替えてそれを防御した。
「厄介だな。足止めするから、その間に攻撃でもするか?」
だが、その言葉にモニカは首を振る。
「それだったら、地形を利用した方が良いよ」
轍が縫止で上手くキャノンボアを誘導している間に、地図を見ながらモニカが誘導していく。
「うぜぇんだよ」と悪態を吐きながら、上手く相手を誘い込んでいく。
「……そこ、雪庇だ」『まずいぞ、仲間が踏み込む』「ううん、そのまま! そいつを連れて行って、足場崩さないように!」
その声に従い、轍は雪庇に誘導した。すると、キャノンボアの重みに耐えられなく崩壊した。
轍はタイミングよく上に跳ぶと、そのまま毒刃を纏い、キャノンボアの首元に宛がった。そして重力の任せるままに押し付けた。
そしてキャノンボアを踏み台にして上まで跳び上がると、追い撃つようにモニカのクロスボウが刺さった、
下の方で激突した時、キャノンボアはもう動かなかった。
●下山
保護した大学生たちは全員病院へ行くことになり、依頼を達成した一同は倒したキャノンボアの解体を始めた。
解体が得意なヴィルヘルムと、趣味のハンティングで技術を培ったクレア、姫乃と那美が手際よくバラシていく。
『……ねぇ、本当に従魔なんて食べるの?』「なに、ジャングル演習で食べた虫の数々よりは美味しいだろうさ。ドクターも何でも食べれるようにしておくべきだよ」「私にも解体をさせて頂けます?今まで生きていた生物の肉、骨を裂く感触が好きですの♪」『まだ、ボク一人でするのは心配だから他の人から教えて貰おう』と、女子班は賑やかに解体していき、ヴィルヘルムはこれぞ本職とばかりに黙々と解体していく。
肉は勿論鍋でということになり、残りのメンバーは鍋のセッティングやら野菜の手配なんかをした。
そして楽しい(?)鍋タイムである。
「ルゥ、てめぇ……前回も腹壊さなかったからって今回も平気とは限らねぇぞ?」『…ルゥ、へーきだし……』と、他のメンバーよりも大量に肉を摂取するその横で、『恭也って滑れるんだ……。ボクは出来ないのにズルい』「お前の中の俺はどれだけ年寄り趣向なんだ?」とか、「……あー、寝れる」『まだスキーを教えてくれてないですよ?! 滑りましょう!』「……銭湯行きたい、マッサージチェアの抱擁を受けたい」『骨休めです! 行きましょう!』「……はいはい、僕はスノボーだから教えるっても基本動作な」『臨む所です!』とか、「やっぱりレジャーに限りますね、雪山は。彼らも今回の件で規律の重要さを思い知ったでしょう」「そうどすね。今回のこれで懲りはるやろ。良い薬になったんやない?」とか、これからの予定について話し合う者もいる。
スキー旅行はまだまだ始まったばかり。これからが楽しい時間の始まりだ。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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