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壊された日常
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作戦掲示板
最終発言2015/11/18 13:49:21 -
説教(物理)の会!(
最終発言2015/11/18 21:25:19 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/11/16 00:18:57
オープニング
●手にしてしまった力
「ああ、こりゃすげぇ」
「嘘みたいだ……俺達がこんなことできるなんてよ」
とある都市の路地裏。
3人の男達が、逃げていく十数人の男達を見送っていた。
逃げる相手が持つのは金属バットに小ぶりのナイフ。
「へへ、見ろよ。俺達を馬鹿にしてた連中も逆らえねぇぜ」
1人の男が笑い出す。
釣られるように、残りの二人も笑い出した。
「今の俺達ならなんだってできるぜ。なぁ、日常なんてぶっ壊してやろうぜ?」
その言葉を聞くと、彼らは一斉に笑い出した。
●壊された、日常
「我ら、デスポートがこの施設は制圧した!」
「直ちに我らの要求通りに10億の資金を持ってこい!」
「でなければ人質の命は無い、刻限は日が落ちるまでだ!」
よく晴れた日の昼過ぎ頃。
とあるデパートタイプの商業施設に『デスポート』を名乗る武装集団が現れ、施設内部で暴れ出した。
警察が慌てて出動するものの、3人の能力者を含む10名のグループに対抗することが出来なかったのだ。
「デスポート……暴君だとでも……力を得ただけの子供が……っ!!」
首都郊外にあるこの施設にはまだまだH.O.P.E.の手が届いておらず、それ故に狙われたのだろう。
いつも通りに開店すると同時になだれ込んだ男性グループが暴れ出したのだ。
急ぎ、警察が出動するものの、相手はただの人間ではなかった。
「ヴィラン……」
負傷した警官が呟いた。
犯罪能力者『ヴィラン』。
愚神に操られた能力者と、自らすすんで反社会・犯罪行為に手を染める能力者達の総称。
今回に関しては愚神は関わりなく力を手に入れたにも関わらず犯罪行為に手を染めてしまったのだろう。
「……今すぐ、突入したいものだが」
しかし、その手段は選べない。
現に一度対抗しようとしたものの、警察は英雄の力を悪用する3人組に撃退され、甚大な被害を追っている。
更に一般人、警察問わずに人質も取られてしまっており、30名程が施設内部に取り残されているようだ。
「来てくれましたか!」
だが、次の瞬間この場にやってきたアナタ達を見るなり警察は感極まった顔をする。
たどり着いてくれたのだ、この場をどうにかしてくれる、希望が。
「状況は説明します。貴方達の力で…捕らわれた人々を助けだしてください」
「ええ、私達も全力で、出来る事をさせていただきます。何かあれば言ってください!」
到着したアナタ達を見て、警察達は次々と協力を申し出る。
同時にH.O.P.E.別働隊が忙しく展開し、周囲の人々の誘導と道路封鎖を開始してくれた。
後は、アナタ達が店内の脅威を排除しするだけだろう。
「どうか……お願いします。道を外した若者にお灸を据えてやってください」
自分の力ではどうする事も出来ないと把握しきっている警察は、アナタ達に頼みこむようにそう告げました。
解説
■依頼内容
貴方達に依頼された内容は、商業施設に立て籠もった『デスポート』を名乗る集団をどうにか排除し、人質を救出する事です。
■武装集団について
・商業設備に立て籠もった集団は全員男で10名、年齢は18~22歳程度で構成されている
・そのうち、リーダー各の3人組は何れも能力者でドレッドノートであることが確認されています
・また、どこから入手したかはわかりませんが3人の能力者はAGW(剣)で武装しています
・その他7名も同様に暴れていたようですが、能力者ではないようで金属バットやナイフで武装しているようですが、雑魚と言っても差し違えありません
■商業施設内部について
・吹き抜けのある3階建ての商業設備で、人質と武装集団以外は退避している
・人質は30名程が残されている様子
・人質は全員1階の大広間に当たる場所に集められている
・建物内部には柱や商品棚が多く、隠れる場所は多い
■潜入経路について
入り口のシャッターは全て閉じられていますが、以下の経路が使えそうです
・リーダー格が交渉の為の出入りに使っている屋上からの入り口
・スタッフ用の手動の出入り口
また、無理やりシャッターを壊して突破も考えられますが、間違いなく異変に気づかれます
■敵の配置について
能力者である3名は、1時間ごとに屋上のロックを開けて外部に声明を出しています
作戦開始から1時間たてば再びロックを外して屋上へと現れるでしょう
1時間の間は、店内の商品を好きに漁ったりしているようです
他のメンバーのうち3人は人質の見張り、残り4名は店内を見回っているようです
■現在の状況について
・商業施設周囲地域の道路封鎖や避難誘導は完了している
・装着型の無線機の借用が可能、その他物品についても、無理のない範囲であれば借りることが可能
・現在時刻は午後15時。約束の時間まではまだまだ猶予がある
『●手にしてしまった力』のシーンはPL情報となりますのでお気を付けください
リプレイ
●作戦展開
「計画性も感じられませんし、名前も聞いた事がありませんし、素人でしょうかね」
到着するなり、警察から事情を聴いた填島 真次(aa0047)はそう呟いた。
傍に佇む英雄であるエコー(aa0047hero001)は言葉を発さず、警察から借り受けた無線機とイヤホンマイクの調整をする真次の様子を眺めていた。
「だろうね。そもそもこんな状況であんなに強気に出れる辺りが素人だよね」
真次に答えたのは、同じように無線機を確認しながら施設の見取り図を広げるArcard Flawless(aa1024)だ。
以下に敵を無力化するか、思考を回転させるArcardの傍で笑みを浮かべるIria Hunter(aa1024hero001)は興味深そうに見取り図を覗き込んでいる。
最も、彼女は特に何かをするといった様子はなさそうだ。
「……うん」
思考の回転が完結し、Arcardの中で全てのピースが組みあがったと同時に彼は顔を上げた。
「今作戦の基本方針はあくまでも敵勢力の"無力化"だ」
先ほどまでのヘラヘラとした様子は、今の口調から一切感じ取れない。
まるで、部隊に指示を出す冷徹な指揮官のようだ。
「が、万一状況が悪化した場合は……それらの"排除"を此方から指示させてもらう」
最初に提示されたのは、施設を制圧したデスポートの無力化。
しかし、事態が悪化した場合は容赦なく排除するという方針のようだ。
その言葉に警察は動揺を隠せない様子だが、頼るしかない以上口を出そうとはしなかった。
「……作戦を提示しよう」
Arcardはマップを指さしつつ、淡々と作戦を提示していく。
「こちらは屋上で能力者の相手……と」
「はぁ…力の使い方を間違えた人達の相手ね」
屋上で能力者を相手に交渉と時間稼ぎをすることになったアヤネ・カミナギ(aa0100)が問い返すように自分の任を確認すると、その英雄であるクリッサ・フィルスフィア(aa0100hero001)は呆れたように呟いた。
「……みんな、しねばいいのに。ね、トラ」
ぎゅっ、と抱きかかえたぬいぐるみに話しかける様に獅子ヶ谷 七海(aa1568)はそう呟く。
彼女の表情からは強い嫌悪感が見て取れ、力に溺れた無法者達に恐怖と嫌悪を抱いているようだった。
「光り物握りゃ、振り回してみたくなるのが人間ってもんだ。ワルガキなんざどこの世界も変わらねえ」
だが、そんな彼女の横で英雄である五々六(aa1568hero001)はふっと鼻で笑う様に言い捨てながら、七海を肩車させる。
「そうそう、今回の作戦は連携が大事ですからね。連絡手段は確保しておいてくださいよ?」
真次はアヤネと七海にヘッドセットを渡してくる。
どうやら通信手段の確保は完了したようだ。
「助かる。手錠も確保用に、いくつか頼む」
「あらあら。準備は万端ですねぇ」
潜入後、巡回しているであろう相手を対応する八朔 カゲリ(aa0098)と魅霊(aa1456)が作戦の打ち合わせをしながら、無線機と手錠の準備をしている
傍ではナラカ(aa0098hero001)とR.I.P.(aa1456hero001)も同様に作業の手を進めているようだ。
「……力を得たと同時に安易な道を選ぶとは嘆かわしい限りだ。きちんと【教育】が必要になるな」
淡々と作戦の準備を進める水瀬 雨月(aa0801)とアムブロシア(aa0801hero001)の傍でレオン・ウォレス(aa0304)はそう言った。
「まあ、易きに流れるのが人の性みたいな所があるし、仕方ないのかもしれないわね。でも、【教育】が必要というのはあたしも同感。力の正しい使い方を教えてあげましょう」
作業を進める雨月の反応返事はなかったものの、彼の英雄であるルティス・クレール(aa0304hero001)は、彼らの行動を仕方ないと思いつつも同意するように答えた。
「電源掌握は、こちらでやる」
丁度打ち合わせが終わったところでArcardが力強く言うと、他の面々は顔を上げる。
時刻は着々と進んでいる、奴らが顔を出すのもすぐだろう。
―――作戦、開始だ。
●屋上にて
「エコー、今の内にリンクして置きましょう。小柄な方が隠れやすいですし、不測の事態が起こらないとも限らない」
「ん、了解した」
屋上駐車場付近。
施設内部への入り口がある場所の近くに備え付けられている室外機に身を潜める真次はエコーとの共鳴を行った。
二人の姿が一つとなると、真次の体は小柄な女性のものとなり、室外機に寄り添うように身を潜める事でその姿を綺麗に隠す事が出来ている。
「あれは私達では難しいわね、どうするのアヤネ」
「少し距離はあるが、周辺には車も多い。俺達はそこに潜むとするぞ」
真次の行動を見ていたクリッサも同じようにドア付近に隠れようとするものの、恵まれた体躯を持つ2人では身を潜めることが難しい。
それ故に、アヤネは少し離れた位置にある車の陰に隠れる事を選択した。
屋上のドアの前には七海を肩車した五々六の姿があるが、残りのメンバーは咎める様子はない、これも作戦のうちなのだ。
しばらくすると、ドアがゆっくりと開き、3人の男達の姿が現れる。
「む、何だお前は!」
七海と五々六の姿を視認した男は2人に向けて剣を構え、突きつける。
その動作はどこかたどたどしいものの、他の2人も同様だ。
「……成程、全員が能力者か」
物陰に隠れながら確認したアヤネは、彼らが持つのが全てAGWである事を確認する。
英雄とは既に共鳴しているようで、傍に英雄の姿は見えていない。
「俺は名もなき交渉人……子連れライオンとでも呼んでもらおうか」
「はぁ、何言ってんだよ。おっさんとクソガキ」
男達に問われた五々六は迷わずそう答えた。
出鼻を挫かれたのだろう、男達は完全に油断した様子で、見下すように二人を眺めている。
「まぁまぁ、話を聞いてくれや。暴力はなにも生まねえんだ。馬鹿なことはやめろ、故郷のお袋さんが泣いてるぜ」
「それはどうだろうか。現に我らは此処を物とし、10億の請求を行えている……暴力は色々なものを作り出せるぞ?」
10億。
五々六は少し揺れたのかもしれない。
かつて、戦う事で武功を重ね続けた彼だからこそ思ったのかもしれない。
「あ? 暴力は色々なものを作り出す? 10億? ……なあ、俺もそっち着いていいか?」
彼の言葉を聞いた五々六がそんな事を口にする。
それを聞いた七海は大きくため息を付く。
「……五々六、しねばいいのに。ね、トラ」
人形を抱きしめながら、そう呟いた。
「ふん、やはり話は通じそうにないな。お前達も倒してやる!」
五々六の話を聞いていたが、七海の言葉に反応すると正面の男は勢いよくその手に構えた剣を振りかぶり、振り下ろす。
「やっべ……!」
交渉決裂と同時に振り下ろされた刃、共鳴して戦おうとしていた五々六は距離を取ろうとするが肩車をした状態では存分に動けない。
だが、その刃は彼らに届くことは無かった。
「人質に取った者を殺すと宣言した上に、話を聞かずに攻撃した以上、自分達が同様に処理される覚悟は出来ているんだろうな?」
フラメアを構え、クリッサと共鳴したアヤネが割り込んだかと思うと、器用に穂先を振り回して男の剣を弾き飛ばす。
武器を弾かれた男は勢いに負け、大きく後方へと仰け反っていく。
「わかってんに、決まってんだろ!」
アヤネの言葉に激昂したのか、男は再び剣を構えて突撃してくる。
それは他の2人も同様だ。
アヤネは正面の男の攻撃を、槍の柄部分を用いて受け止めたかと思うと、その強引な一撃を受け流す。
「何故、こんな真似をしたんだ?話せるなら是非とも聞かせてもらいものだが」
そして、彼が発したのは問いかけだった。
何故、彼らがこんな真似をしたのか、何故今回の暴挙に及んだのか。
恐らくは力を得たことによる増長だろうとは思っていた。
「んなの決まってんだろ」
男はアヤネの言葉を聞いて、怒りを隠せぬ様に震えていた。
「力がある奴らが憎いんだよ! 奴らは全部、俺達から力で奪って行った! だから俺達も奪った! それがこの世界の原理だろうが!」
弱肉強食の理、それが憎いと言わんばかりに男は吠え、アヤネに向けて刃を振るう。
「成程、思った以上に考えはあるようだ……だが、その暴君と同じ事をしてる者に『俺達』は止められん。貴様等はこの場で壊す」
それでも、アヤネは刃を受け、流す。
「ハッ、やっぱ依頼はこうでなくっちゃな! 暴力最高!」
共鳴を終えた七海の体で五々六が叫ぶ。
アヤネの周囲に群がっていた男のうち1人が、七海の言葉を聞いて一気に駆けてくる。
冗談に振り上げられる剣。
だが、七海に向けてその刃が振り下ろされるよりも早く、彼女の真っ直ぐ振り切った拳が男の腹部を捉え、吹き飛ばす。
「おいっ! 数はこっちが上だ! 囲め囲め!」
「わかっ……がぁっ!?」
身を潜めていた真次がスナイパーライフルを構え、神速の三連射を行って男達の足を狙った射撃を行っていく。
一射目は男達の内の1人の足を的確に捉え、その場で転倒させる。
だが、取り回しの悪い長い銃身により照準はブレてしまい、続く二射、三射は掠めるのみに留まってしまう。
「外しましたか。ですが、十分です」
射撃を外したにも拘らず、真次は焦った様子を見せない。
想定とは違ったものの、相手は思った以上に仲間意識が高いのか、倒れた男を庇うように一か所に固まっていた。
「何言って……!?」
男達が気づいた時にはすでに遅し。
予め力を蓄えていたアヤネが、一か所に固まった男達の中心へと踏み込み、怒涛乱舞の勢いで槍を振り回す。
繰り広げられる槍の乱舞は、男達を纏めて吹き飛ばし、その手から剣を吹き飛ばした。
「おーっと、終わったか……」
少し暴れたりないと言った様子だが、七海も戦闘の構えを解く。
「一度きりの人生なんだ。悪党でもなんでも、好きなもんになりゃいいさ。だが、もし愚神連中に与するってんなら……次は殺すぜ、暴君さんよ」
七海の言葉に、男達は何か反論したように見えたが、彼らはあっさりと意識を手放し、戦いは終わった。
気が付けば、背後からかけてくる足音が聞こえる。
通信を繋げば仲間の声、終わったのだろう、暴君の暴威は。
●電源掌握
「見取り図に寄ればここかなぁ……?」
裏口から施設内部に潜入したArcardはIriaと共に照明に照らされる通路を進む。
目に留まるのは従業員室、倉庫、空調管理室等の部屋看板と扉。
幸い、ここにはデスポートの連中の姿は見られない、こっちまで気が回っていないのか、人手が足りないのかはわからないがArcardにとってはありがたい話だ。
「よしよし、あっさり行くのはボクからしてもありがたいね」
Arcardがそう言うと、傍のIriaも頷いた。
言葉は喋らないものの、同じことを思っているようだ。
「っと、ここだね……中には……うん、誰も居そうにない」
たどり着いた電源設備のある管理室の扉をそっと開け、中を確認するが内部には誰もいない。
するりと中に入るなりArcardは電源操作パネルを動かし始める。
「掌握は完了……後は」
モニタに表示されている時間は、後数分という所で作戦開始時刻だった。
それを確認するなり、彼はパネル操作の準備を始める。
「作戦、開始!」
練り上げられたArcardの策が、今動く。
●店内にて
「ったく、見回りって思った以上に退屈だなぁ」
店内を見回る男達。
彼らは一か所に集まるなり、ボソっとそんな事を呟いていた。
すると、バチンと音を立てて施設内部の照明が一斉に落ちる。
「なんだこれは……!?」
灯りのあった空間が、突如暗闇に包まれる。
人間の目では、突然の暗闇に耐える事が出来ず視界が一気に奪われ、まともに行動を行うことが出来ないだろう。
この場で、二人を除いては。
「行けますよ、カゲリさん」
ライトアイによって、特殊なライヴスを目に纏った魅霊とカゲリが暗闇のみが、この空間での活動を可能としていた。
二人は相手が困惑しているのを確認すると、英雄との共鳴を行い、戦闘準備を整える。
「距離を置いたか」
四人で纏まっていた巡回の連中は混乱の為か、各々に距離を取っている。
「なら……」
それを確認した魅霊の行動は早い。
大鎌、グリムリーパーを構えると、暗闇を駆けると同時に、鎌の刃が内向きであることを利用した刺突を足元目掛けて繰り出して体制を崩し、足を払う。
まるで、暗闇を駆ける死神のように、暗殺人形の如き無駄のない動きは1人の男の動きを確実に阻害する。
彼女は鎌の刃を倒れた男の首横に突き立てる。
「なっ……てめぇ!」
少し時間が経ち、目が慣れてきたのだろう。
近くに居た男がナイフを構えて吠えるが、魅霊が鎌を少し動かせば男は動きを止める。
わかっているのだ、彼も自分達がやった様に人質を取られてしまったと。
「おやすみ」
魅霊はそう一言だけ言うと、空いた手を大きく広げた。
放たれるのは、セーフティガスと呼ばれる特殊なガス。
柔らかな煙が男を包んだかと思うと、彼は力なく倒れ、その場で眠りについた。
「暴君とは、実に子供らしい。そして見通しが甘い」
魅霊と手分けをして、残りの2人に向き直ったカゲリはマビノギオンを片手にリンクコントロールを発動。
共鳴の安定感を増加させ、書を媒介に魔法の剣を生み出す。
生み出された剣は次々と男達に向けて放たれていく。
「ぐが……あっ……」
我も人、彼も人、故に帯刀とは基本。
互いは対等で容赦などする気もない、そして排除を考えていた彼の放った刃は、無慈悲に、男達の両足を、両腕を貫いていく。
「相応の報いを与えてやろう」
カゲリがトドメとばかりに魔法の剣を放とうとした時だ。
『もう、十分だ』
ヘッドセットから、仲間の声が響く。
目の前の男達は呼吸はしているものの、既に意識はない。
この状態ならば拘束は可能で、無力化も完了している。
「……」
H.O.P.E.は正義の組織だ。
警察がそうであるように、よほどの凶悪犯・よほどの止むを得ない状況で無い限り、いたずらに他者の命を奪うことは許されない。
カゲリは、その言葉を思い出すと事前に準備した手錠で男達の拘束を行っていく。
だが、これで巡回の排除は完了した、後は予定通り、屋上へと向かうだけだ。
●広場にて
「う、うわあああああああああ!?」
「たす、助けてええええ!!」
バチンと勢いよく照明が落ちると同時に、広間は混乱に包まれた。
突然襲ってきた暗闇に驚いた人質が一斉に怯え、騒ぎ出したのだ。
「何だこりゃ、うるせぇ、騒ぐんじゃねぇ!」
突然の混乱と暗闇に、焦りを隠せない男達も一斉に騒ぎ出す。
「さぁ、行くぞ」
共鳴を行い、自身と組んでいた雨月、そして彼女の英雄であるアムブロシアにライトアイを行い、視覚を確保したレオンはそう呟いた。
混乱極まるこの事態、少しぐらい喋っても相手に気づかれる様子はない。
「了解よ」
対して、一般人を相手にするという前提の為共鳴を行わなかった2人はそのまま暗闇に乗じてそれぞれ男達に向けて飛び出した。
共鳴をしていないとはいえ、能力者や英雄の力は一般人を軽く凌駕する。
その身体能力で接近した水瀬は男が接近に気づき、振り向くよりも早く背後から杖による打撃を叩き込み、体勢を崩させた所で勢いよく首を絞める様にして組み付く。
最初は抵抗する意志を見せるものの、ぎりぎりと首を絞めれば男はあっさりと手に持っていたナイフを手放すと力なく項垂れる。
「此方は問題なし…あっちは」
雨月はアムブロシアを見やると、あちらも接近と同時に鋭い拳で顎に一撃加える事で脳震盪を起こさせる事で速やかに無力化を成功させていた。
念のため、彼らの息を確認したところ、意識がないだけで命に別状がない事を確認する。
「お、お前らいつの間に!」
突然の混乱に目が慣れてきたのか、男はレオン達の接近に気付くと傍にいた子供に手を伸ばし、ナイフを突きつける。
「ど、どうだ! 下手に動けばこいつの命はねぇぞ!」
人質に取られた子供は勢いよく泣き始める。
あまりの恐怖にもう我慢ならない状態なのだろう。
だが、レオンは焦った様子を見せずに自らの手を広げる。
「降って湧いた力に溺れたのが、お前らの愚かさだ」
彼の手から放たれるのはガス。
それも、セーフティガスだ。
「ぁ……」
ゆっくりと体を蝕む煙によって、男は眠りに誘われ、力なく倒れこむ。
それは傍にいた子供も同じ。
「これで無事に……」
「あああああっ!?」
レオンが男を確保し、子供の安全を確認しようとするよりも早く近くにいた女性が叫びだす。
「わ、私の子は! 子は!! どうなったんですか!!!」
「無害なガスによって少し眠っただけ、特に問題は」
「いつ目覚めるんですか! それは本当ですか!!!」
だが、半ば狂乱状態になった女性はレオンの言葉を聞こうとしない。
「安全の確保は出来たなら、警察を呼ぼう」
「……だな」
淡々と確保した男達を運び出す雨月とアムブロシアの姿に安堵を覚えている一般人たちもいるようで、後は警察に任せてしまっていいだろう。
他のメンバーに連絡をすれば、全員無事に制圧を完了しているという事が伝わってきた。
これで壊された日常は終わったのだ、この施設に襲来した暴君は既に鎮圧され、僅かな時間が立てば再び平和という名の日常が戻ってくるだろう。
―――作戦、完了。
●帰ってきた日常
デスポートによる施設の制圧。
結果としては、能力者3名は無事確保、2名の重傷者が出たものの、民間人に被害はなく人質となった人達は無事解放された。
「自分のパートナーが力に溺れるのを見過ごすだなんって、あたしにとってはちょっと許し難いかな」
連れ出されていく男達を見てレティスはそう呟く。
男達の英雄は共鳴したままで、一切の姿は見る事も話す事も叶わなかった。
彼らがなぜ、力に溺れる彼らを見過ごしたのか、今となってはわかることは無い。
「……俺達は絶対ゆるさねぇ」
男達は、ふとH.O.P.E.の姿を見るとそう殺意を込めて呟いた。
その発言を聞くなり警察は彼らを小突いて運送を進めていく。
「他のエージェント及び警察関係者は僕の指示で動いてもらった。結果に責任が伴うのであれば、その責任は僕が負う。それが道理だ」
警察の前で、そういうのはArcardだった。
彼は今回の作戦を提案し、本部へ作戦行動の事後報告を行い、その責任を全て負うつもりで警察にも報告していたのだ。
「いえ」
だが、警察の1人はArcardの肩へ手を伸ばす。
「貴方達は私達の、助けられた人達に取っての英雄です。貴方達が責を負う事はあってはなりません、これは……私達警察の不祥事であり、責任です」
断固として、Arcardの提案を受け入れるつもりは一切ないようだ。
何度言っても、彼らは首を縦に振ることは無い。
「貴方達は、希望なのですから」
警察はそう笑い返すと、着々と報告書を纏める作業を始めて行った。
「力のあるものが憎い。奪うものが憎い……か」
「アヤネ?」
運送されていくデスポートの連中を見て、アヤネは彼らの言葉を頭で考え、それを見送っていた。