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弱虫と巨人の岩
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/11/21 16:55:05 -
少年達の冒険【相談卓】
最終発言2015/11/22 16:30:35
オープニング
●売り言葉に買い言葉
なんでこんな言い合いになったのかもう覚えていない。気がついたらガキ大将に叫んでた。
「じゃあ巨人岩にお前の名前と馬鹿野郎って書いた紙を張って写真にとってやるよ」
●後悔先に立たず
「どうしよう」
僕は肩を落とした。家へ帰る足取りはものすごく重い。
「どうしようって……お前何考えてるんだよ。巨人岩に行って写真撮るなんてさ。砂漠を半日歩かないと着かないんだぞ」
カルは呆れた顔をした。
「砂漠だぞ。迷ったら死ぬぞ」
「う……」
「その前に、場所知ってんのか。ガイド雇う金なんてないかんな」
「し、知らない。けど、弱虫なんて言われたんだからしょうがないだろ。へらへら認めるぐらいなら砂漠で死んだほうがましだ」
「そりゃ、そうだけど」
カルは立ち止まった。僕も止まる。
「なにも巨人岩にすることないだろ。ほかに証明して見せる方法なんていくらでもあるじゃんか」
「咄嗟に思いついたんだ」
カルはもう1度ため息をついた。ついて解決するなら僕だって100回ぐらいため息つくよ。
●求めよ。されば与えられん。
「でも、1人で行くって言わなかったのは唯一の救いだな」
カルは真面目な顔で言った。僕は顔を上げた。
「一緒に行ってくれるの?」
「もちろんいいよ。でも、今の俺たちだけじゃ無理だ」
いっぺんに心が軽くなる。カルは本当にいいやつだ。
「カルが来てくれるなら俺悩むのやめるよ」
「なんだよ。それ」
「まず場所だ」
カルの言葉はお構いなしに歩き出す。カルも慌てて後に続いた。
「場所がわかんなきゃ行けないもんな」
「半日ぐらい歩くことしか俺知らない」
「俺も。あいつに聞いてみよう。コーデ」
「名案」
コーデは引っ越してきたばかりだけどクラスで1番頭のよくて1番でかい家に住んでいるやつだ。知らなくてもなにかいいアイディアをくれるかもしれない。問題はあいつがひねくれ者だってこととあんまり話したことないこと。でも、そんなこと言ってらんないからさ。
●一難去ってまた一難
「ここだよ」
予想は大きく外れてコーデはあっさり教えてくれた。きれいな地図に惜しげもなく丸をつけてくれたし、細かい方位も教えてくれた。言ってみるもんだ。ひねくれものなんて悪いこと思っちゃった。
「ありがとう。助かるよ」
「お前、なんで知ってるの?」
カルが尋ねる。
「ちょっと興味があったから」
「お前も来る?」
誘ったけどコーデは首を振った。
「何で?」
「何でも」
カルに袖を引っ張られて「そっか」と言った。余計なことは聞くもんじゃない。
「お礼に巨人岩の欠片やるよ。後、秘密基地にも招待するよ」
これで行くことはできる。僕たちは立ち上がった。
「お前らこれだけ頼りに行く気か?」
僕とカルは顔を見合わせた。
「無理かな」
「無理だよな。やっぱり」
2人の性格の違いがよくわかった瞬間だった。
「万が一、従魔とかに出会ったら死ぬぞ。砂漠じゃHOPEに通報できないよ」
「従魔……」
そう言えば最近、結構ニュースになってる。
「能力者が絶対必要だ」
ものすごく大きな話になってきた。
「HOPEに頼むとか」
僕の提案に冷たい視線が2つ突き刺さった。冗談なのに。
「能力者、かあ」
僕らは肩を落としてコーデの家を出た。どうしよう。
●人事を尽くして天命を待つ
「ねえ、リンカー探してるんでしょ?」
コーデの家を出てすぐ、知らない女の子が声をかけてきた。
「君、誰?」
「コーデの妹」
「盗み聞きはレディのすることじゃないよ」
カルはたまに格好つける。今それどころじゃないのに。
「そんなことよりリンカーの知り合いがいるの?」
「3ヶ月前に病院で会ったの。連絡先知ってる。そのひとは全治半年って言ってたから多分無理だけど、もしかしたら知り合いにリンカーがいるかも。聞いてあげてもいいわ。私、そのひととすっかり仲良くなって困ったことがあったらおっしゃいって言われたの。
その代わり、お兄ちゃん連れてって。お兄ちゃん、ずっと行きたがってたから。でも体弱いし、勝手に遊びに行っちゃダメって母さんうるさいしで諦めてた。でもあなたたちと何人かリンカーがいれば大丈夫」
「君も行く?」
妹は首を振った。巨人岩なんかに興味ないそうだ。女の子ってわからない。
「わかった。必ずコーデも連れて行く」
「ありがとう。4人以上集まったら連絡する。後、私が言ったことお兄ちゃんには秘密よ」
「わかってる」
後は吉報を待つばかりと僕らはすっかり興奮してた。だから、今の会話を愚神が聞いていたなんて思いもよらなかったんだ。
少年たちが旅立って3時間後。
「プリセンサーに反応あり。愚神です」
解説
●目的
砂漠にある巨人岩へ3人の少年たちと旅をする。途中、出現する愚神と従魔から少年たちを守り、倒す(旅自体は少年たちが主)
●連れて行く少年たち
・ネフェ(僕)
ガキ大将と口論になり、弱虫ではない証に巨人岩の写真を撮ると宣言した少年。おっちょこちょいだが、機転が利く。
・カル
ネフェの親友。冷静で周りを良く見ている。
・コーデ
成績がよく研究熱心。ネフェ曰くひねくれ者。体が弱い。ドライで諦めが早いが、今回の旅はちょっと違うよう。
●敵(PL情報)
・デクリオ級愚神『オピーコス』
上半身は長髪の青年、下半身は巨大さそり。砂漠での移動に適しており、地面にもぐることも出来る。誰かの真後ろに出現する癖がある。
少年たちの話を聞き、砂漠に身を潜める。
主な技
・毒:尻尾の鋭い毒針で相手を刺す。刺されればリンカーでも1時間ほどで命を落す。
・鎌:右手を鎌に変形できる。
・ミーレス級従魔『ラヴン』×2
4つの翼を持つ鴉の姿。大きさは人程。空を飛び、嘴と鉤爪で攻撃する。普通の人間なら骨ごと握りつぶせる。防御面はもろい。
●その他情報
巨人岩
砂漠にある巨人のような形をした岩。子供たちの間でそこに行くのは勇気の証とされている。ほとんどの子供たちは場所すら知らない。
*砂漠は非常に危険なので子供たちは親に黙って旅に出ているが、リンカーたちにそのことは知らされていない。
依頼主のリンカー
現在怪我で入院中。入院中に仲良くなった少女に頼まれてツテのあるリンカーたちに少年たちのサポートを頼む。
リプレイ
●冒険の前
砂漠近くの小さな飲食店。
泉興京 桜子(aa0936)とベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001)が中へと入った。これから今回の依頼に関するミーティングだ。2人が中に入ると既に他のリンカーと英雄たちが集まっていた。虎噛 千颯(aa0123)と白虎丸(aa0123hero001)が2人に声をかける。
「桜子ちゃん砂漠だけどバテないようにな~。ベルちゃんよろろ~」
「泉興京殿、ベルベット殿、今回もよろしくでござる」
桜子とベルベットが挨拶を返し、席に座る。
「揃ったな」
真壁 久朗(aa0032)が言う。
「まずは情報交換から。俺らは依頼人のリンカーとHOPEに話を聞いた。毒を操る愚神の話が出た」
「あ、HOPEに申請して本部との連絡が取れるようにしておきました」
セラフィナ(aa0032hero001)が補足する。
「ここに来る前に、オフィスや周囲の掲示板などでざっと見た。毒の愚神と烏の従魔の情報が主だった」
ツラナミ(aa1426)が感情のない声で淡々と言う。
「移動用にとラクダを手配しようとしたんですがダメでした。そういう事情で他人に貸すのを嫌がったんですね」
セラフィナが言う。
「誰に聞いても危険の2文字が確実に出る場所か」
赤城 龍哉(aa0090)がうなった。彼らも事前の情報収集でほとんど同じ情報を得た。
「次に各人の持ち物と襲撃時の役割分担だが……」
●冒険開始
「暑いな……」
「砂漠ですからね」
「ま、修行の一環と思えば丁度良いか」
龍哉とヴァルトラウテ(aa0090hero001)の会話を聞いて千颯が白虎丸を見る。
「今更なんだけどさ。行くの砂漠だけど白虎ちゃん平気?]
「……心頭滅却すれば火もまた涼しだ」
白虎丸は格好よく言ったが、ちょっと声が震えている。
「おはようございます!」
リュックを背負った少年たちがやって来た。同行する少年たちだろう。真っ先に桜子が声をかける。
「わしは桜子と申す!」
挨拶をしてお友達になるのである! という意思がわかりやすく顔に出ている。
「僕、ネフェ。桜子ちゃんリンカーなの? すげー」
「俺はカル。今日はよろしくね」
「僕はコーデ。案内は僕がするから」
「うむ。冒険であるな!どこへ向かうのであるか!?」
『巨人岩』
少年たちは口をそろえて言った。ネフェが続ける。
「勇気の証」
自己紹介を終え、出発する。静かな砂漠が一度に騒がしくなった。
「砂漠初めてなんですー!広いです!砂がどこまでもいっぱいです!」
ぱんぱんなリュックを背負ったままセラフィナが走り回る。リンカーたちが用意したGSPと通信機を嬉しそうにつけたネフェもすげーと言いながら走り出した。
「ネフェは砂漠珍しくないだろ」
コーデが磁石を見ながら言う。
「でもこんな砂漠の真ん中いくの初めて。危ないって行かせてもらえないし」
カルが言う。
「ふふ、男の子なんだから多少は危ないことしないとねぇ?」
その様子にベルベットが目を細める。羽々姫(aa0048)もにかっと笑ってうなずく。
「うんうん、その度胸や良し! あんた達くらいの年頃ならば、一度くらいは冒険の旅に出たほうが良いんだよ。…その冒険の舞台がこんな砂漠だってのは、ちょっと予想できなかったけどな、ははは!」
本当の冒険の理由が理由なのでネフェとコーデはなんとか笑った。
「俺ちゃんの子供ももう少し大きくなったらこんな冒険したいっていうのかな~」
「子供は多少わんぱくな位が丁度いいでござる」
3人のすぐ後ろで千颯と白虎丸がしみじみ会話をしている。
ツラナミが歩きながらサングラスをかける。白い麻のフード付きコートとセットでなかなか近寄りがたい格好である。38(aa1426hero001)の何とも言えない視線にツラナミが言う。
「…日差しがな。きついんだよ」
「あ、そうだ!」
走り回っていたセラフィナが少年達へと方向を変える。
「あ、おいころ…転んだな。ほら、つかまれ」
久朗が注意した時には遅く、盛大に転ぶ。
「あわわすいません砂まみれになってしまいました」
セラフィナは久朗の手を取って立ち上がった。
「怖そうだと思ってたけど違うな。久朗さん」
「違うな」
ネフェとカルが真面目な顔でうなずき合う。
「どうぞ!」
少年たちの前にセラフィナのリュックが差し出された。中には菓子、菓子、菓子。
「セラフィナさん、入れすぎ」
●道中と休憩
最初はわいわいやっていたものの、次第に静かになって来る。疲れだ。休憩を何回か定期的に取っていたが、ここは砂漠である。リンカーや英雄たちでさえも水を飲む回数が増え、日傘を差す者も増えだした。気がつけば前にいたはずのコーデが後ろに来ている。不意に彼の体が揺れた。
「っと」
支えたのは久朗だった。
「少し休むか」
コーデは首を振った。額の汗を拭う。
「ネフェとコーデがせっかく頼ってくれたのに僕のせいで遅れるのは嫌だ。後1時間ちょっと歩けば巨人岩だ。ずっと行きたかったんだ」
「荷物貸せ。次の休憩まで持ってやる」
「……」
「道案内人が倒れては困る」
コーデはまぶしげに久朗を見た。
「ありがとう」
「休憩ー!」
桜子や龍哉達が用意したテントを張られる。その中で休憩していたネフェとカルの前に水と塩飴が差し出された。
「汗で塩分なくなっちゃう……から。舐めたほうが、いいって……あと、水」
ツラナミに言われて38が水と塩飴を配っているのだ。
「ありがとう。38さん」
「ツラナミさんもー! ありがとう」
2人が笑顔で手を振る。
「バテられても困る」
素っ気ないツラナミの言葉に2人は顔を見合わせた。
「それとこれとは別じゃない?」
「色々あるんだ。大人の世界」
どこかズレた感想に千颯が笑う。テントの奥では久朗とセラフィナが交代で眠っているコーデを扇いでいる。
「こう暑いなら頻繁に休憩取るのが正解ね」
ベルベットが尻尾を揺らめかせる。
「ならば 白虎丸殿はもっとつらかろう」
桜子は立ち上がった。
「どこ行くの?」
「白虎丸殿へタオルと水の差し入れである~」
白虎丸はテントから離れた所にいた。
「やはり暑いな」
被り物をぬぐ。
「!」
気配を感じて振り向くとカルがいた。白虎丸へか手に塩飴が握られている。
「これは内緒でござるよ」
やんわり言うとカルは真ん丸な目をしながらもうなずいた。
ちなみに見てしまったのはもう1人。
「びゃっこまるどのあたまがとれてしまったのである!!!」
「なぁああんですってぇぇ!!白虎丸ちゃんの中の人見たの!?うらやましぃぃいい!! 」
桜子のまさかの目撃情報にベルベットは心底羨ましがったとか。
●襲撃
休憩を終えて小一時間。全員がほぼ同時に足を止める。烏の鳴き声がした。
「今の、烏?」
「違う」
次の瞬間、ツラナミと38が共鳴した。他のリンカーたちも次々共鳴し、その姿を変える。
いつの間に現れたのか。一同の頭上に巨大な烏が2体旋回している。いや、あんな巨大な烏が存在するわけがない。カラスにあんな鋭い嘴も鉤爪もない。あれは。
従魔、ラヴン。
リンカーたちが一斉に動いた。桜子、久朗、千颯が少年たちを守るように囲む。ツラナミ、龍哉、羽々姫が三方向へ散らばった。
「そなた達!わしの前へ出るでないぞ!」
「俺ちゃんたちから離れるなよ」
少年たちへの指示をすぐに飲み込んだのはネフェだった。2人の手を取ると自分の方へ引っ張り込む。
「パワードーピング!!」
能力上げてちゃちゃと終わらせようぜ。
ラヴンが一声激しく鳴く。旋回をぴたりとやめた。
「来る」
呟いたのは誰だったのか。その言葉通り、2体同時に急降下する。その先には少年たち。
「伏せろ!」
久朗が叫びつつ少年たちへ覆いかぶさるように盾を構える。千颯は大きく踏み込むとグリムリーパーを一閃させた。ラヴンの足に傷を負わせたが地に落ちるまでにはいかなかった。ラヴンは再び、上昇する。
「こっちだ!」
羽々姫の声と共にもう1体のラヴンへと投擲斧が飛ぶ。ラヴンはなんとか避けたがバランスを崩し―
桜子の盾にひっぱたかれ、吹っ飛ぶ。その先にはツラナミ。ラヴンの絶叫が響く。毒刃で片鉤爪を斬り飛ばされたのだ。だが、ラヴンは素早く空へ舞い上がった。
「思ったよりよく避ける」
ツラナミが目を細める。鉤爪自体は軽々斬り飛ばせた。防御面はもろい。問題はどう当てるかだ。
そして問題はもう1つ。
「空からか。だが、あからさまだな。こりゃ本命が潜んでるクチか」
龍哉がつぶやく。
本命―毒を持った者の存在。
ラヴンたちが急降下がする。その先には龍哉。
「いいぜ。来い」
投擲斧を構える。その後ろの砂がもぞりと動いた。何者かが飛び出す。長髪の青年に見えただろう。上半身だけ見れば。下半身は完全にサソリのそれである。
「出たな。サソリ野郎」
龍哉はラヴンへの攻撃の手を止めもしない。
「烈風波!」
1体が攻撃を食らって地面に落ち、そのまま動かなくなる。
「我が名はオピーコス!」
怒りの声を上げて手を龍哉へと振りかぶった。その手は鎌へと変化している。
「名前なんぞどうでもいい」
ツラナミの声と共に幾重にも刃が飛ぶ。ラジエルの書構えだ。オピーコスは素早く砂に潜る。
「予想通り下から来た。逃げ足が早い」
「だが動きが読めないわけでもない」
「ああ」
砂の動きにさえ気を付ければこのスピードでも。
少年たちの後ろの砂が動いた。桜子はネフェの手を取り無理やり引っ張る。一瞬遅れてオピーコスが姿を現した。桜子に盾で引っぱたかれ情けない再び砂の中へ入る。久朗や早颯も攻撃したが当たらない。
「カル!」
ネフェが叫んだ。カルの腕から血が出ている。
「どうした」
久朗と早颯が駆け寄った。
「尻尾、かすった」
オピーコスの尾に毒がある可能性は高い。久朗はハンカチを出すと腕を縛った。
「気分は?」
「平気」
早颯はカルの傷口に手を当てた。
「でもま、一応な。クリアレイ!」
「これも飲め」
久朗が解毒薬を渡す。
「大丈夫?」
ネフェが言った。従魔や愚神が出てきた時よりも動揺している。千颯がネフェの頭に手を置く。
「大丈夫。戦いもすぐ終わる。もうちょい待ちなよ~」
かすかな動きだった砂が突如、ツラナミの後ろで盛り上がった。
「ツラナミ!」
龍哉が叫ぶ。ツラナミは武器を手に持ち、体を捻った。オピーコスのカマが斬り飛ばされる。
「くっ」
飛び退き、砂へ潜ろうとするがその前にツラナミに間合いを詰められている。
「!」
ジェミニストライクで二方向から攻撃され、砂に潜ることができない。
「くそっ」
尾をツラナミへ伸ばす。
「いいのか。1人を相手にしてて」
龍哉の声と同時にツラナミが大きく飛び退く。龍哉が片手斧を片手に踏み込んだ。
「この距離なら外さねえぞ」
オピーコスは断末魔すら上げることができずに倒れた。
残されたラヴンは少年たちへ一気に降下していく。ここ1番のスピードである。このスピードでぶつかれば盾も危ないだろう。だが3人は動かない。代わりに各々少年を小脇に抱える。
ラヴンが3人にぶつかる寸前、3人同時に飛びのいた。その先に入るのは笑みを浮かべた羽々姫。片手斧を構えている。
「ヘヴィアタック!」
勝敗は決した。
●巨人岩と約束
「あっ!」
少年たちが一斉に駆け出す。その先には青々とした空に厳然とたたずむ巨大な岩があった。見ようによっては威厳のある巨人に見えなくもない。
『……』
3人とただ巨人岩を見ている。なんと言っていいのかわからないのか、目をきらきら光らせるばかりだ。
「大きな岩ですね! 僕もひとかけら持って帰ってはだめでしょうか」
「もちろんだよ。はい!」
我に返ったネフェが岩の欠片を渡す。
「今日はありがとう! みんなも」
少年たちはリンカーと英雄たちに頭を下げた。
「写真撮らなくていいのか?」
言われて羽々姫にカメラを渡す。
「大馬鹿野郎って書いた紙、いいのか?」
「巨人さんに悪いだろ」
「なんでさん付けなんだよ。いいから早く撮ってもらえよ」
「お前も入るの」
メンバーを入れ替えながら少年たちは写真を撮ってもらう。
「みんなで撮ろうよー。これセルフタイマーあるからさ」
「よーし。みんな集まれー」
ツラナミや久朗もパートナーに押されて巨人岩の前へ立つ。
「はい。ちーず!」
「なんで巨人岩に行くことになったんだ?」
千颯の問いにネフェが答えた。
「クラスのやつに弱虫って言われて。言い合ってる内に巨人岩の写真撮ってみせるって言っちゃったんだ」
「あらあ」
ベルベットが笑う。
「要は売り言葉に買い言葉か。なあ、お前ら」
千颯の顔は真剣だった。
「自分の力で何とか出来ない事はやっちゃ駄目だぜ。勇気と無謀は全く違うんだ。そして今回のは無謀だ」
「だって」
言いかけてネフェは黙った。その視線はカルの腕の包帯に向けられている。その下には軽いが、愚神から受けた傷がある。ネフェは静かな目で千颯を見た。カルとコーデも同じ目をしている。
「今回のことは後悔しない。でも次は無謀じゃない冒険をする」
●帰り道
「帰ろ」
ネフェの言葉に「あと」と千颯が言う。
「砂漠に行くって親御さんには言ってあるのかい? っというかこんな無謀な事をしようとしたんだ。言ってないよな~」
千颯の言葉に3人はぎくりとした。
「親に内緒でか。やっぱりな」
「では、ちゃんと心配させた分怒られてくる事ですわ」
龍哉やヴァルトラウテも言う。千颯は満面の笑みで続けた。
「さぁ、楽しい楽しいお仕置きタイムだ!」
『ってえ!』
尻を叩かれて少年たちは涙目になった。
「千颯殿のお尻ペンペン痛そうなのである!」
「大丈夫、大丈夫」
だが、青ざめる桜子には格好をつける3人だった。
帰路について数十分。疲れているのかコーデの足元が怪しい。
「背負ってやる」
久朗がコーデの前にしゃがんだ。コーデが何か言う前にネフェが龍哉の前に、カルが白虎丸の前へと走った。
『おんぶ』
「ほら、お前も」
コーデは久朗の肩にそっと腕を伸ばした。
「ありがと」
数分後、白虎丸が立ち止まった。
「重くなったでござる」
「あらら。みんな寝てる」
「お疲れ様」
セラフィナが少年たちのポケットに従魔のカマを小さく割って布を巻いたものを入れる。ガキ大将に見せれば自慢のタネになるだろう。無謀なことはしたが、ご褒美があってもいい。
●冒険の後
「おい。弱虫」
野太い声に僕らは振り返った。子分を連れたガキ大将が仁王立ちしてた。
「巨人岩の写真はどうした」
僕らは顔を見合わせてにまと笑った。散々練習した格好いい仕草で写真を取り出す。途端に男子が集まった。コーデは来ないよ。だって持ってるんだからね!
数日後、HOPEを通して英雄たちに写真が送られた。巨人岩と少年たち、そしてリンカーと英雄たちが映っている写真が。