本部

【甘想】連動シナリオ

【甘想】ショコラッド・フェスティバル

絢月滴

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 4~10人
英雄
7人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2019/03/02 21:31

掲示板

オープニング

●甘い? しょっぱい? それとも?
 ロシア、エカテリンブルク。
 デースケ・トルストイ警部は甘い匂いに思わず足を止めた。そうか、もうそんな時期か。
 ショコラッド・フェスティバル。
 世界中から様々なチョコレートが集まり、その甘さに――時にはしょっぱい味に――酔いしれる祭り。
 会場となる広場では着々と準備が進んでいる。それにすぐそこの製菓学校では、当日色々なチョコレートが作れるようにレシピを整えているのだろう。野外ライヴ会場ではイノセンスブルーがラブソングオンリーのアコースティックライヴをするという。
 ――最近、この街では色々ありすぎた。
 だからこそ、この祭りだけは何事もないように――。
「……そうだ」
 せっかくだ、お世話になった彼らを招待しよう。



●Давайте есть шоколад!(さあ、チョコレートを食べよう!)
「わあ、凄いね純くん!」
 ノルン・ペオース(az0121)は豪華なイルミネーションに目を奪われていた。その横で、西原 純(az0122)はそうだな、と答えた。その表情はとておもリラックスしている。最近こんな空気を味わっていなかった気がする。
「あ、あのチョコ美味しそう!」
 笑うノルンに純は思う。今回は、とことん付き合ってやるか――。



「むむ、このチョコも捨てがたい……いや、こっちの塩キャラメルもまたっ……!」
 アルビヌス・オングストレーム(az0125)はメイン会場で色々なチョコレートを味見していた。もちろん目的は――。
「リヴィア様! 特上のチョコレートをお持ちいたしますっ!」


解説

ロシア・エカテリンブルクで開かれるチョコレートのお祭りに参加しましょう。


◆メイン広場……様々なメーカーのチョコレートが出品されています。全て試食可能です。また、ところどころにフォトスポットがあります。飲み物は無料ですがサンドイッチなどの軽食、アルコールは有料です(200G)

◆製菓学校……簡単なチョコレート菓子を作ることが出来ます。ラッピング用品も用意されています。

◆ライヴ会場……イノセンスブルーがアコースティックライヴを行います。

◆町外れの教会……ショコラッド・フェスティバルの日に、祭壇の前で愛を誓うと永遠に共に居られるという伝承があります。

◆会場に居るNPCは以下の通りです。絡みはご自由に。
 西原純とノルン・ペオース(広場を散歩中)
 アルビヌス・オングストレーム(チョコレートを物色中)
 イノセンスブルーのメンバー(ライヴ準備中)
 黒崎由乃(製菓学校でお菓子作り中)

リプレイ

●チョコレートの祭典!
 木霊・C・リュカ(aa0068)とオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は待ち合わせ場所へと向かっていた。
『……すごい熱気、だな』
「ふふーふ、そうだねえ」
 辺りを漂う甘い匂い。リュカは小さく笑った。
 ややあって、二人は目的の場所に到着した。そこには既に紫 征四郎(aa0076)とガルー・A・A(aa0076hero001)が揃っている。
「おまたせ、せーちゃん」
「はい」
『よぉ、リーヴィ』
『……あ、ああ』



 麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は祭りのメイン会場に来ていた。どこを見ても、チョコレート、チョコレート、だ。
「すげぇな」
『……お店、いっぱい』
 ユフォアリーヤは尻尾を揺らした。
「甘いもんはそこまで食えんがメーカーごとの違いは気になるな」
『……ん、合うのがあると……いいねぇ』



「キョウカちゃん、はぐれないように気を付けようね!」
 加賀美 春花(aa1449)は自分の後ろを歩くキョウカ(aa1449hero002)に話しかけた。キョウカは、はいっ! と笑顔で返事をする。
『春花お姉ちゃん! はぐれないように気を付けるのー!』



「ロザリー、何処へ行くの?」
 人混みを華麗に避けながら歩くロザーリア・アレッサンドリ(aa4019hero001)に、ウェンディ・フローレンス(aa4019)は言った。人に軽くぶつかってしまう。ごめんなさい、と謝った。
『何処って、面白いところ』
「もう少し具体的に」
『……着いてからのお楽しみ!』



「チョコだー! お祭りだーーーーー!!」
 メイン会場の入口で春月(aa4200)は叫んだ。そんな彼女にレイオン(aa4200hero001)は眉根を寄せて注意する。
『春月、落ち着いて……』
 しかしレイオンの言葉は春月に届かない。
「食べるぞー!!」



 獅堂 一刀斎(aa5698)と比佐理(aa5698hero001)は黒崎由乃と共にメイン会場を歩いていた。
「これがお祭りなのね!」
 楽しそうに辺りをキョロキョロと見る由乃に一刀斎は自然と笑みを零していた。それを見た比佐理も同じ表情を浮かべる。
「あ、あれ美味しそう! ねえおねえちゃん、買っていい?」
『はい、もちろん』



●チョコレート食べ比べ
 遊夜は口直し用にサンドイッチを買い、お茶も用意する。
「じゃあ行くか」
『おー』
 ユフォアリーヤが遊夜の腕を取る。ひとまず目についたお店へと立ち寄った。これは砂糖控え目のチョコレートです、いかがですか? と店員に差し出されたホワイトチョコレートを遊夜は口にする。
「お、これは中々……甘すぎず良い感じだな」
 メモしておこう、と遊夜はメモ帳を開く。ユフォアリーヤは隣の店の店員さんに勧められたチョコを試食した。いわゆるダークチョコレート、というやつだ。
『……んー、こっちは少し苦め、単体じゃなく……他との組み合わせ、かな?』
 悩みつつ、ユフォアリーヤは次々とチョコを口にする。抹茶が使われたもの、アーモンドやマカデミアナッツを使ったもの。彼女ほどではないにしろ、遊夜もお茶で適宜口内をリセットしながら、チョコを食べる。
「お」
『……ん、どうしたの?』
「日本酒を使ったチョコレートだ」
『わぁ、美味しそうだねぇ。あとビールが使われてるものも、ある。……でもうちには縁なし、だねぇ』
「興味深いことには間違いないんだがな」
 色々とメモしつつ、幾つもの見せを二人は回る。苺が入ったチョコレートにユフォアリーヤは味わった。チョコの中に入れるのはナッツ類やドライフルーツだけなのかと思っていたが、こういうのもありなのか。
『めもめも』
「あれは麹とせんべいを使ったチョコか……本当に色々あるんだな」
 感心する遊夜。と、チーズフォンデュとチョコレートファウンテンを並べた店が目に入る。
「ほぉ……チーズと一緒に食べるのが美味いとは聞いていたが」
 興味深そうに近寄ってきた遊夜に店員が小皿を差し出す。その上にはチーズを絡めたバゲットと、チョコがかかったマシュマロが置いてある。
「どうぞ食べてみて下さい! チーズからでも、チョコレートからでも! 自信作なので!」
「あ、ああ。戴こう」
 店員の熱に若干押されながら、遊夜はチーズを口にする。美味い。ついで、チョコを食べた。チーズの塩気がチョコレートの甘さとほどよく絡む。
「なるほど、確かにうまい」
『……ん、ボクも』
 遊夜と逆の順番でユフォアリーヤは食べる。チョコの甘さが残る舌の上へ、チーズの味。ユフォアリーヤは笑った。
「さて、子供達への土産はどうするかな」
『……ん、苦いのは……やっぱり、ね……甘すぎるのも、どうかと思うけど』
 虫歯とか心配、とユフォアリーヤは頷く。ここは無難なミルクチョコレートとちょっと苦いビターチョコレートを買うことで二人の意見は一致した。
「子供達にはいずれ自分で開拓してもらうとしよう」
『……ん、そうだねぇ』



「ね、見て見てキョウカちゃん! あのチョコレート可愛いっ」
 店先に飾られた赤いハート型のチョコレートに春花は釘付けになった。キョウカも可愛いの! と同意する。次に二人の目に飛び込んできたのは、シルクハットの形をしたチョコレート。添えられた大輪の花がこれまた可愛い。
「食べるの勿体ないなー」
『でもこれ、苦いチョコレートが使われているみたいなの』
 キョウカが示す説明文を見て、春花は眉根を寄せた。苦いのはあまり得意ではない。
「あ!」
『春花お姉ちゃん?』
「これ、お姉ちゃんへのお土産にしよう!」
『賛成なの!』
 チョコレートを購入し、二人は次の店へと行く。今度はキョウカがあ! と声を上げた。
『春花お姉ちゃん、 うさぎさんなのー!』
 唐突に走り出したキョウカを春花は慌てて追いかける。
「待ってキョウカちゃん! 走っちゃ危ないよっ」
 春花はキョウカに注意した。キョウカがしゅん、と元気をなくす。
『ごめんなさいなの……。でも、とってもかわいいの!』
 キョウカが示したチョコに春花も目を輝かせた。ホワイトチョコでつくられたウサギ。赤い目の部分に使われているのは何だろう。
「ホントだ。すっごくかわいいね~」
『ねー♪』
「お嬢ちゃんたち、食べてみるかい?」
「はい!」
 店員が差し出してくれたウサギのチョコを二人はじぃっと見つめ……可愛いなあ、と思いながら口にした。
『甘くておいしいの!』
「本当だ! これも買っていこうか」
『はいっ!』



「オリヴィエとガルー、教会の方へいったみたい、ですよ」
 リュカの手を引きながら、征四郎は言った。
「最近あんまり隠さないですよね……むむ、大人、なのです……」
「まあ、いいんじゃない? こっちはこっちで、楽しもうよ。せーちゃん」
「そ、そうですね!」
 並ぶチョコを端から試食し、征四郎はどれを買おうか考える。せっかくだから、イノセンスブルーへの差し入れも買おう。彼らに会うのも久方ぶりだ。好みは分からないから、色々な味が入っているのを買おう。あとは……。
「おや、そこに居るのは――アルビヌス君!」
 大量のチョコレートを抱えた小柄で軍服の男――アルビヌスがとても驚いた顔で振り返る。
「っ、何故分かったっ?」
「ねぇねぇ、何買うの?」
「お前には関係ないだろう! 重要なのはリヴィア様がどれを気にいって下さるかだ!」
 ミルクチョコレート、ビターチョコレート、ルビーチョコレート。これでもないあれでもないと、アルビヌスは言う。そんな彼にリュカはチョコを選ぶJKの気分で話かける。
「じゃあハートのでっかい奴とかにすれば?」
「そんなものリヴィア様に捧げられる訳がないだろう!」
「あとあとお花もね! 赤い薔薇。あ、勇気が無ければガーベラがお勧め!」
「ええい、黙れ!」
 わーわーとアルビヌスがリュカに反論する。それに対してリュカが再びちょっかいをかける。この隙に――と征四郎は少しだけ離れた店に行く。さっき試食して、一番美味しいと思った色と味の様々な一口チョコの詰め合わせを買ってラッピングしてもらった。



●チョコ作り
『由乃、一緒にチョコレートのお菓子を作りませんか?』
 製菓学校の前、比佐理は由乃に言った。その誘いに由乃は面白そう! と答える。
「……製菓学校か、確かに面白そうだな。では俺も一緒に――」
『ダメです』
 間髪入れず――しかも食い気味に――比佐理が断る。一刀斎はがっくりと肩を落とした。おねえちゃん? と由乃も若干驚いていた。
『あ……いえ、すみません。その……一刀斎様の器用さなら、きっとさぞや精巧なチョコができるのだろうと思いますが……今日は、由乃と私で行って来たい……のです』
 比佐理が由乃に寄り添う。それを見て、一刀斎は引くことにした。
「そうか。うむ、まぁ確かに……チョコ作りは女子の聖域やもしれぬな。ならば俺は、適当に散策していよう」
 離れていく一刀斎を見送り、比佐理と由乃は製菓学校の中に入った。一番簡単なトリュフチョコを作ることにする。
「えーと、まずはチョコレートを刻むっと」
『由乃』
「何、おねえちゃん」
 包丁を持った手をとめ、由乃が比佐理を見る。
『人形作りの極意は……素材を活かすこと、一つ一つの工程を丁寧に行うこと、そして何より……想いを、真心を籠めることだと……常々、一刀斎様は言っておられました。きっと、チョコ作りも一緒……です』
 比佐理の言葉に由乃も思うところがあったようだ。そうだね、同意する。
「……黒ネコとおねえちゃんのおかげで、由乃ちゃんはまたこうして”生きる”ことが出来てるんだもん。……心こめなきゃね!」
 よーし、と腕まくりをする由乃に比佐理は笑いかける。
『由乃と一緒にチョコが作れて、嬉しい……です。今日は……楽しみましょうね。由乃』



「……チョコ」
 春月は盛大に溜息をついた。
「食べたかった」
『お楽しみは後にとっておこう』
「なんでレイオンは最近、うちに料理をさせようと……」
『まあまあ』
 春月をなだめつつ、レイオンは改めて彼女にレシピを示した。作るのはビターとスイートチョコ、二種類使ったブラウニー。
『量さえ間違えなければ、あとは混ぜるだけだよ』
「混ぜるだけ……それなら簡単。やるっ」
 春月は計量スプーンを手にした……が。
「3、4gくらい気にしなくてもいいよねっ」
『気にしよう』
 大匙を山盛りにする春月をレイオンは止める。レシピ通りの分量を量らせた。それからバターとチョコを刻ませる。
『もっと細かく』
「えー。このくらい平気でしょ?」
 刻んだそれらをボールに入れ、春月は湯煎を始める。
「あれ、なかなか溶けないんだけど」
『……だから言ったじゃないか』
「まあいいよね! この隙に粉をっと」
 春月はふるいを手に取った。その中に盛大に薄力粉を入れる。そぉれ! と勢いつけてふるった。当然、粉は舞い上がる。周りでお菓子を作っている人たちの視線が春月に集まる。レイオンは思わず咳き込んだ。
「次は卵とグラニュー糖を混ぜるっと」
『春月、混ぜすぎては駄目だよ』
「うおおおおおおっ」
 レイオンの言葉は春月には届かない。レイオンは時計を見た。普通に作っていたらもうそろそろ焼く工程に入る頃なのに。まだまだかかりそうだ、とレイオンは思う。その予想は見事に当たった。気づけば、二時間が経過している。チョコレートを型に流し込み終わり、春月は机に突っ伏した。
「疲れたよー、あとは焼くだけ……」
『三十分焼けばいいから、その間に片付けをしよう』
「はーい」



●愛?を誓え
「面白いところに連れて行ってくれるということでしたけど……ここは……教会?」
 ウェンディは辺りを見渡した。正面には立派なステンドグラス。ベンチやカーペットには汚れが目立っているけれど、荘厳な雰囲気は失われていない。
『ねー、ここ評判の観光地らしいよー中々キレイだねー』
 興味深そうに周りを見るロザーリアを横目に、ウェンディはガイドブックのこの教会が掲載されているページを開いた。
(縁結びスポットですわね、ここ……祭壇の前で愛を誓うと永遠に結ばれるって……。毎度毎度、そういう趣味じゃないかと思わせられますけど……)
『いやー、ロシアの教会はイタリアとかフランスと趣が違うよね。ここにきて正解だったでしょ、ウェンディ!』
 どうだ! とロザーリアは誇らしげに胸を張る。
『チョコレートのお祭りもやってるんだって。後で行こうよー』
 祭壇に近づくロザーリア。その様子にウェンディはこう思う。ロザーリアはここの伝承をよく知らずにつれてきたのだ、と。
「はぁ……」
『……ん?』
 ウェンディの溜息に、ロザーリアは足を止める。どしたの? とウェンディに近づいた。ウェンディが顔を上げる。その瞳はどことなく、妖しく光っていた。
「ねえ、ロザリー」
 ロザーリアとの距離を一気に縮め、ウェンディは彼女の腕を取った。
「……ここ、カップルが結ばれるっていうスポットだそうですわよ」
『……え゛っ?』
「結婚式のスポットでもあるとか。……そんな所に連れてきて二人きりだなんて……」
 ウェンディはちょっとだけうつむき、もじもじと体を動かした。え、あ、とロザーリアはどう反応していいのか迷っている。
「わたくし、女性同士でも……真剣なら、構いませんわよ?」
『ひゃやややややっ?』
 ずざざざざっ、と大きな音を立ててロザーリアはウェンディと距離を取る。ウェンディは変わらない表情でロザーリアを見つめていた。
『……い、いや。ウェンディは好きだけど……好きってそういうつもりじゃなくってね?』
 ウェンディが真っすぐ――ただひたすらに真っすぐ、ロザーリアを見つめる。その視線に耐え切れず、ロザーリアはぷるぷると首を横に振った。
 沈黙が二人の間を支配する。
 それを破ったのは、ウェンディだった。
「はぁ……もう、どうせいつも通り深く考えずに連れてきたんでしょう」
『うー……』
「ほらほら、別に取って食べたりはしませんわよ」
『……むー』
 からかわれたことに気づき、ロザーリアは頬を膨らませる。ほら行きましょう、とウェンディは彼女を促した。



●愛を誓え
『……当日は、ホットチョコレートだけで、悪かったな』
 ガルーの横を歩きながら、オリヴィエは言った。計量が重要なお菓子作りは苦手だ。だから比較的簡単な物を作って食べてもらったが……。
『……好きなのあったら、買って渡すからな』
『ああ』
 ガルーは微笑みながら頷いた。と、不意にオリヴィエがガルーの袖を引っ張る。
『おいリーヴィ、どこ行くんだ?』
『っ……ついてくれば、分かる』
 二人は祭りのメイン会場から離れていく。そうしてたどり着いたのは教会だった。ギィ、と音を立てて扉を開ける。先客の姿はなかった。すぅ、とオリヴィエは深呼吸をする。そして口を開いた。
『え、永遠なんて……信じてるわけじゃない』
 いきなりなんだ、とガルーは言おうとした。だが言わないことにした。きっとまだ続きがある。
『世界が続いたのだって、気まぐれかもしれない。……でも、何だ。そのだな。真似事くらいは、しても、良いと思うんだ……が』
 くいくい、とオリヴィエはガルーを引っ張って祭壇前へと導く。
(誓いも何も式は式でやるんじゃねえのか。……でも、いいか)
『……そうだな。それまでを誓うのも悪くねぇか』
 祭壇の前で二人は向き合う。ガルーは着ていた白衣を脱いでオリヴィエに被せた。目を合わせるために、跪く。ぴく、とオリヴィエが震えた。
『病める時も健やかなる時も、ガルー・A・Aはオリヴィエ・オドランと共にあり、幸せにすることを誓います――こんな感じか?』
『あ、ああ……』
『リーヴィも』
『っ……病める時も健やかなる時も、はオリヴィエ・オドランはガルー・A・Aと共にあり、幸せにすることを誓います』
 オリヴィエが言い終わると同時にガルーは彼を引き寄せた。白衣のベールの中、そっと唇を重ねる。



 ――その様子をリュカと征四郎は椅子の陰から覗いていた。征四郎は顔を真っ赤にしている。この瞬間、飛び出したら面白いんだろうなーと思いつつも、リュカはそれを行動に移すことはしなかった。流石に野暮は分かるんだよ、お兄さん。何処か興奮している征四郎を連れて、リュカは外に出た。
「ほらせーちゃん。フォトスポットみたいだよ。写真撮ろう」
「あ、は、はい……そうですね」
 なんとか意識を取り戻したのか、征四郎がリュカと並び自撮りをする。それからまたメイン会場を周る。
「そういえばですね、せーちゃん」
「何ですか?」
「……なんとお兄さん今年、齢31にして……チョコ0なんです!」
「そうなのですか?」
「だから、せーちゃんが今くれたら何と今年初めてでたった一つになるのですが」
 リュカは征四郎を見た。征四郎は小さく笑って、先程ラッピングしてもらったチョコレートを差し出す。
「ふふ、そう言わなくても、ちゃあんと用意しているのです」
 リュカの手に征四郎はそれを握らせる。
「せいしろ――いえ。わたしからの、いつもありがとう、の気持ちです」
「こっちこそ、ありがとう。せーちゃん」
 リュカの優しい言葉に征四郎はうっかり泣きそうになってしまった。来年も再来年もリュカ達と遊びにでかけられる、ということに安心して。
「ふふーふ、この後一緒にライヴでもどうですか。お嬢さん」
「……はい、一緒に行きましょう、リュカ!」
 まだ子供だし、まだこの恋が実かは分からない。
 未来で待っていて。一足跳びで駆けていくから。



●生まれ変わっても
「祭壇の前で愛を誓うと永遠に一緒に居られる、か……こういう言い伝え、本当に好きだよなぁ」
『……ん、こういう伝承は……信じるのが、いいの……ロマンだから』
 くすくす、とユフォアリーヤは笑う。
 世界各地の縁結びや成就には出来る限り参加している。
「いったいこれで幾つ目だったか……」
『……626回目、かな? ……ほら、こっちこっち』
 嬉しそうに尻尾を揺らしつつ、ユフォアリーヤは遊夜の手を引く。そして祭壇の前に二人、向き合って立った。
「こう、色々なところを巡っていると……競合して機能不全起こしたり、内部で混沌とした宗教戦争とか勃発しそうな勢いだが、大丈夫だろうか?」
『……ふふ、いいのいいの』
 ユフォアリーヤは少しだけ目を伏せて――そして改めて遊夜を見た。
『……愛は無敵、なんだから……はい、どーぞ』
 ユフォアリーヤは手を広げた。そのアピールに遊夜はへいへい、と軽めに返事をして……だが、直後、表情は引き締めて。
「……一生の愛を貴方に捧げ続けることを誓う、例え生まれ変わっても」
 遊夜の言葉にユフォアリーヤは、綺麗に、純粋に、笑った。
『……ん、ふふ……ボクも愛してる、ずっとずっと……ね』
 ユフォアリーヤは遊夜に抱き着いた。その首元にすり寄った。そして、つま先立ちをして遊夜と目を合わせる。求められていることを瞬時に察して、遊夜は彼女に口づけた。



●お菓子完成
 一刀斎は製菓学校の前に戻ってきた。あれから色々なチョコを試食して回り――ウォッカを我慢しながら、二人の成長を喜んでいた。ぱたぱた、と足音がする。
「あ、黒ネコ!」
『一刀斎様、お待たせしました』
 比佐理が小さく頭を下げる。
「いや、ちょうど今来たところだ。問題ない」
『これを……どうぞ』
 比佐理はおずおずと綺麗に包装された巨大ハート型チョコを一刀斎に差し出した。
『ハッピーバレンタイン、です』
「お……おおおおおお」
 一刀斎は震える手でそれを受け取る。比佐理、ありがとう、いや感謝する、とちょっとだけ支離滅裂な感謝を述べた。そんな一刀斎に由乃もまた、包みを差し出す。
「初めて作ったから、その美味しくないかもだけど……あげる、黒ネコ!」
「く、黒崎っ……」
『一刀斎様、泣かないで下さい』
 咽び泣く一刀斎の肩を比佐理は叩く。あ、ああそうだな、と一刀斎は居住まいを正した。そして自分にチョコレートを贈ってくれた二人を見て。
「……なぁ、比佐理、黒崎。町外れの教会で愛を誓うと……永遠に共に居られる……という伝承があるそうなんだが。もし良かったら、今から三人で……誓いを立てに行かないか。愛とは……何も男女の愛に限らず、家族としての愛も含まれよう。無論、二人が嫌でなければ……だが」
 その言葉に比佐理は微笑み、頷く。
『私は……喜んで。由乃は?』
「もちろん!」
「では、行くか」



 春月はオーブンを開けた。甘い匂いが漂ってくる。出来た、と声を上げた。若干爆発しているところはチョコを載せて誤魔化そう。
「レイオン、これもう食べれるよね!」
『春月。ブラウニーは、できてから3日目が美味しいから』
「えー生殺し!」



●再びメイン会場
「あの子には、甘いのがいいのかなー」
 春花はお土産を探して、色々な店を見ていた。
『あの子、”フルーツのチョコが食べたいのである! かわいいのであればなおよしであるぞ!” ってゆってたの』
「フルーツのチョコか……」
 うーん、と春花は腕を組んで悩む。と、そこに凄い勢いでチョコレートを食べ、購入する春月が近づいていった。彼女の荷物の中に苺とメロンが描かれたパッケージを見つけ、春花はあ、と声を出す。春月に話かけた。
「あの!」
「ん、何?」
「その……苺とメロンのチョコ、何処で買ったんですか?」
「ああこれ? 向こうの白いテントのお店だよっ」
「ありがとうございます! 行こう、キョウカちゃん!」
『はいっ』
 ぱたぱたと走り去っていく彼女達を春月は手を振って見送る。――が、こうしてはいられない。まだまだ買いたいものはあるのだ。
「よし、一回レイオンのとこに戻って、これ持っててもらおう!」




「ライヴ、楽しかったのです!」
「ふふーふ、どうやらこのライブは毎年のお決まりになるみたいだね」
「……リュカ、来年も一緒に」
「もちろんですよ、せーちゃん」



『……ん』
『これは……蜂蜜酒のボンボンか』
『なんとか、見つけた』
『ああ、ありがとな。リーヴィ』



「ちょっと買いすぎたか?」
『……ん、重い? ……でも子供たち、喜ぶよ……』
「そうだな。プライスレスってやつだ」



『たくさん買えたのー!』
「お姉ちゃんも王子さまに渡す時が楽しみだね! もちろん食べるのも!」
『はいっ、楽しみなのー!』



『ウェンディ』
「なに、ロザリー」
『……お嫁さんは無理かもしれないけど、ずっと一緒にいられるなら……あたしは、ずっと一緒にいたいよ、大好きだもん』
「私も、大好き」



「買ったチョコも美味しいけど、自分で作ったのもなかなか!」
『また作って、今度は皆に渡してみたらどうかな』
「そうしてみるよ! あ! 今度は……ケーキとか!」
『やめておこう』



『一刀斎様。飲みすぎです』
「比佐理、黒崎……俺は、幸せ……写真もこんなに……」
『由乃、そっち支えて下さい』
「あーもう黒ネコ! しっかり歩く!」



 ――それぞれの甘い夜は、更けていく。


結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 守りし者
    加賀美 春花aa1449
    人間|19才|女性|命中
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    キョウカaa1449hero002
    英雄|9才|女性|バト
  • ガールズデート
    ウェンディ・フローレンスaa4019
    獣人|20才|女性|生命
  • ガールズデート
    ロザーリア・アレッサンドリaa4019hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • そうだよ、楽しくやるよ!
    春月aa4200
    人間|19才|女性|生命
  • 変わらない保護者
    レイオンaa4200hero001
    英雄|28才|男性|バト
  • 黒ネコ
    獅堂 一刀斎aa5698
    獣人|38才|男性|攻撃
  • おねえちゃん
    比佐理aa5698hero001
    英雄|12才|女性|シャド
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