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【ER】黄金の縁
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最終発言2019/01/18 23:27:19 -
相談卓
最終発言2019/01/20 06:15:23
オープニング
●よすが
「町の奴らの避難、終わったよ」
キンセールの一角にあるシーフードレストラン。その扉をくぐって入るなり、古式ゆかしい海賊衣装に身を包んだラウラ・マリア=日日・ブラジレイロが告げた。
「重畳。これで互いに気を取られず向き合えよう」
応えたものは人ならぬ、黄金の愚神ウルカグアリーである。髪先からつま先まで、体内で鼓動する心臓、さらには流れる血までもが黄金である彼女は、常の依り代――アバタではない。
「まさか“剥き出し”だとはね。コアを狙われるどころじゃあないな」
ソングと呼ばれるヴィランのボクサー、長い戦いの歌が苦笑交じりに拳を突き出した。
ウルカグアリーはそれを黄金のライヴスで弾き、薄笑みを返す。
「さりとて容易く触らせてはやらぬさ」
彼女の本体にコアはなかった。本体こそがコアであり、ゆえにこその「剥き出し」だ。
「常の依り代で対するべきではないのか? それならば勝つにせよ負けるにせよ問題はあるまいに」
ラウラ・マリアの契約英雄である男装の麗人、ジオヴァーナが眉をひそめて問う。
「それでは本当の本気とはなるまい? 命を賭せと縁者へ強いるのだ。妾が命を賭さずしてなんとする」
ウルカグアリーはチャーチワーデンに詰めたイングリッシュミクスチャーの渋煙を宙へと吹いて。
「“道”は次の満月の夜に開く。何処へ続くものかは妾にも知れぬが……人である汝が世界を渡る唯一のもの。ゆめ遅れるな」
「いっしょに手を繋いで行くのかと思ってたけどね」
かるく言い返したソングに、ウルカグアリーはすがめた目線を投げ。
「汝(なれ)の固めた拳でなにを繋ぐ? ――縁あらばまた巡り会うこともあろう」
「ずいぶんあっさりと行っちまったね」
ラウラ・マリアは壁の棚に並ぶ酒瓶の中からラムを引き抜き、栓を開けてそのまま呷った。無造作に見えて、どこかやるせない手で。
それを見たソングはくつくつ喉を鳴らし、かぶりを振る。
「君も女神様も情が深くていけないな。だから君はいつまでもここに居残ってるし、女神様はああして命を投げ出すんだ」
ラウラ・マリアは反論せず、代わりに問うた。
「じゃあ、旦那はどうなんだい?」
「僕? うーん、少しは影響されてるのかもしれないけどね」
手を開き、握るソングの様に、ラウラ・マリアは小さくかぶりを振る。
女神様と手をつないで行きたかったのは旦那だろ。あんたが悪役でいたいのもさ、結局は誰かと繋がってたいからなんだよ。
そして息をつき、「飲みなよ」と酒瓶をソングへ押しつける。
「思えばお互い、たくさんのものを失くしてここにいるんだね」
ためらうことなく瓶を傾けるソングに、ラウラ・マリアは胸中で返した。
ああ、そうさ。あたしらはいろいろ失くした果てに流れ着いて、波打ち際で重なっちまった澱だ。だから縁も切れずにくっついたまま居座り続けてた。結局はそういう縁を結んじまったってことなんだろうね。
だからあたしはあんたを見送るよ。思いっきり手ぇ振って、笑って。そうして真っ当にお別れできた相手がひとりでもいるって記憶は、きっと互いのよすがになるだろうからさ。
●情
果たして無人の町はドロップゾーンに押し包まれ、無尽の石場と化す。
「来よ、愛しき黄金の縁者よ。其の指先より伸べられし糸を手繰り、妾の元へ」
石に黄金を飲ませ、ウルカグアリーは夜空へ陶然と笑みかけた。
●念押
ここはドロップゾーンの際。
ボディガードとして前に立つテレサ・バートレットの後ろから、超高出力の通信機を繰る礼元堂深澪がエージェントへ声をかけた。
「プリセンサー総がかりで分析してもらった結果だけど、ウルカグアリーは10秒ごとに属性が変わるみたい。射的が1に固定されるのもわかってるから、それに合わせてスイッチしながら対応。ほかの人はウルカグアリーに邪魔させないようサポートする。それだけ忘れないでね!」
ぱん。深澪は手を打って一同を促し。
「中に入ったら回復役に回復してもらえるヒマとかないかもだよ。ちゃんと回復薬持ってる? ボクに戸板引きずって帰らせるのはダメだからね! じゃあ、また後で!」
解説
●依頼
ウルカグアリーを完全撃破してください。
●ゾーンルール
・AGW、スキルの別によらず、射程は1で固定。
・各属性に対抗しうる能力を備えていないエージェントの攻撃は、ウルカグアリー本体にダメージを与えられない。
・ウルカグアリーの属性によらず、以下記載の『ウルカグアリー補助行動』には全エージェントが対応可。
・会話は自由。
●ウルカグアリー補助攻撃
★以下の行動をメイン攻撃の他に2~3実行する(重複あり)。
・町の石を揺さぶって地震を起こす(エージェントの行動のファンブル率を上げる)。
・石の防壁を呼び出し、自分を狙うエージェントの行動や攻撃を阻害。
・石片を刃に変えて攻撃すると同時に視界を奪う。
・1ラウンドで消える石人形(防御力は低い)を1~6体生み出し、エージェントを襲わせる。
・石の間を渡っての移動(エージェントのポジションを無視して移動できる)。
●ウルカグアリーの属性
・1ラウンドごと、ランダムで以下の3種類に属性が変化する。同属性が連続することはない。
〈金閃〉
・魔法以外の攻撃無効。
・電撃(魔法)による攻撃を行う。
・全攻撃に低強度の衝撃BSが乗る。
〈金濡〉
・物理魔法問わず有効。
・四肢の端を溶かし、黄金の雫を飛ばす。
・触れたものに黄金(物理と魔法、共に含む)を浸透させ、高強度のBS(種別はランダム)を擦り込む。
〈金燃〉
・物理以外の攻撃無効。
・高熱を帯びた黄金刃(物理)による攻撃。
・全攻撃に低強度の減退BSが乗る。
●備考
・戦場は“町”。建物も道路もすべてそのままの形を保っている。
・ウルカグアリーは3属性とも個体攻撃と範囲攻撃のいずれも行える。
・ウルカグアリーは基本的に回避を行わない。
・ウルカグアリーはメイン攻撃を行わないことを選択できる。
・エージェントはウルカグアリーの3属性の別を見極め、チームとしてのバランスを考慮して英雄を選ぶこと。
リプレイ
●思い
礼元堂深澪に送り出されたエージェント10組は、それぞれの思いを胸にドロップゾーンの際へ立つ。
「ウルカは賢者の石を目ざしてるんだろうか」
踏み込む足を一度止め、ニノマエ(aa4381)は三白眼をすがめて内を透かし見た。
『実は己を錬成している途中なのかもな』
おもしろくなさげにミツルギ サヤ(aa4381hero001)が応える。戦を前に心を揺らす契約主につきあってやった形だ。
「賢者の石にはならなくても、万一コアになって転がるようなことがあれば回収してく。……倒れてらんねぇな」
ニノマエとサヤの会話を横で聞いていた赤城 龍哉(aa0090)はぽつりと漏らす。
「正真正銘の本体、か」
彼を余韻に浸らせるより早く、内のヴァルトラウテ(aa0090hero001)が釘を刺した。
『そこだけに気を取られていては足を掬われますわよ』
「ああ。ここは“石使い”が存分に力を振るえる舞台なんだからな」
これだけのお膳立てをしてきた以上はそれこそ力を尽くしてくるんだろう。油断してる暇なんざねぇよ。
「小細工は俺に任せて龍哉はウルカグアリーに集中しろ。この後に本命が控えてるんだ、互いに無茶はなしで行こうぜ」
イン・シェン(aa0208hero001)と共鳴したリィェン・ユー(aa0208)が、ライヴスを滾らせた龍哉の肩を軽く叩く。
『とはいえ無理は避けられまいがな』
インの言葉に「程度問題ってやつさ」、応えておいて、リィェンは踏み込んで行く龍哉の背をカバーした。
肚を据える龍哉とリィェンの脇をすり抜けて先へ進むを迫間 央(aa1445)。
その内でマイヤ サーア(aa1445hero001)が静かに声音を紡ぐ。
『これで終わりかと思うと、少しだけ名残惜しい。とんだ感傷ね』
『形はどうあれ縁を結んだ相手だからな。それでも、全部を踏み越えてふたりで往くと決めた道がある。その決意を示しに行こう』
「ラシル。親友が繋いでくれた道です。踏み外すことなく抜けましょう……そこで待っていてくれる彼女のところまで」
月鏡 由利菜(aa0873)の決意にリーヴスラシル(aa0873hero001)はうなずいた。
『ああ。還るのではなく、先で合流するぞ』
『ついに石塊との決戦というわけだが』
覚者(マスター)よ。ナラカ(aa0098hero001)の呼びかけに、八朔 カゲリ(aa0098)は小さくかぶりを振って応える。
「……言わなくていい、わかってるさ。悔いを残さないようにやり通せ」
共鳴体の主導をナラカへ渡し、カゲリは内へ引いた。
「ああ、覚者ならばそう言ってくれるものと思っていたよ。――さて、征こうか」
かくて成熟した女性体を顕現させたナラカは、自身が“天剱”と呼ばわる天剣「十二光」を手に進み出る。黄金にて繋がれた今世の縁を断ち、勝利を得るがために。
「お父様、ご存分にお戦いくださいまし」
こちらはヤン・シーズィ(aa3137hero001)と共鳴したファリン(aa3137)。
ウルカグアリーが町の住人を逃がしたのは、盾にする気がないというよりも邪魔をされたくない一点からなのだろう。ならば彼女とヤンの仕事は、友誼を結んだ仲間の戦いをウルカグアリーの搦め手に邪魔させないことだ。
『あの愚神は周囲の石を駆使してくるはずだ。高所より戦場を俯瞰し、跳び込む機を窺え』
申請して得た地図を今一度確かめて頭へ叩き込み、ファリンはうなずいた。
「かならず勝ちます。私たちの全力を尽くして」
『絶対負けない。ボクらの力を振り絞って』
柳生 楓(aa3403)と氷室 詩乃(aa3403hero001)は外と内で誓いを交わす。
前哨戦では他ならぬウルカグアリーに多くを指摘された。しかし今回は、あの愚神も教えるのではなく、楓も自覚している弱点を突いてくるだろう。
でも、これはチーム戦。力を合わせて攻めを繋いで、討ってみせます。
「私の宿縁を果たすために」
拳を握る楓の足元、ひばり(aa4136hero001)と共鳴した美空(aa4136)がふんす、同じく拳を握り締めた。
『今度こそ最後……なんですよねぇ』
おどおどとピッケルハウベの前立を波打たせるひばりへ、美空は内で『おー』と拳を突き上げた。
この戦い、回復が胆となるだろう。武器やスキルがもれなく射程2メートルに固定されているのだから、回復も当然、対象へ接近して行わなければならないのだ。
「やるンゴよ、角突きちゃん!」
『榊さんに、全部お任せ、するの』
それだけを笑みと共に告げ、泉 杏樹(aa0045)は榊 守(aa0045hero001)の内で眠りについた。
「お心遣い痛み入ります、お嬢様」
目を閉じてうそぶき、守は再び目を開く。礼儀を不敵に、誠実を酔狂にすげ替えた、執事ならぬ伊達男の様がそこにはあった。
絶対振り向いてくれないってわかってたから追いかけた。そんな俺につきあって、あんたは背中を見せ続けてくれた。
だから俺は安心して逢いに行けるんだ。俺たちの終わりを、俺たちらしく飾りにな。
●鬼ごっこ
ドロップゾーンを警戒しながら進むエージェント。
しかし、石造りの町は淡い金を帯びて彩づくばかり。彼らへ降り落ちることもないまま沈黙を保ち続けた。
果たして。
町の中心部にある広場、その噴水の縁に腰をかけた黄金の愚神は伏せていた金眼を上げ、呼ばわる。
「眼鏡」と央を、「三白眼」とニノマエを、「聖女」と由利菜を、「師範代」と龍哉を、「剣士」と楓を指し。
「傷は癒えたか?」
そしてこの決戦から加わった5組へ目線を移し。
「武辺」とリィェンを、「小桃」と美空を、「兎」とファリンを指して、守へ「顎髭」、最後にナラカへ「鳥」。
「縁深き者も薄き者も、この場に在っては妾が縁者。心ゆくまで別れを惜しもうぞ」
「惜しむような縁かは知れぬが、いいかげんに腐れた因縁を断つにはいい夜となろうさ――石塊」
ナラカが艶然と笑みを傾げ、ウルカグアリーへ天剱の切っ先を向けた。
「この場の規約は先に伝えたとおり。ゆえに妾が眼前にまで来よ。出迎える支度はとうにできておるゆえな」
と、ウルカグアリーの足元より迫り上がる石畳。壁は2メートルに達し、愚神の姿を完全に覆い隠す。
「あいつが迅いわけじゃないよな」
極のふたつ名を持つ屠剣「神斬」を振りかざしたリィェンが壁へ横蹴りを叩きつけ、その足に返ってきた反動を利して重刃を振り込んだ。
『待ち受けていたがゆえ、初手が早かったというばかりのことじゃろうさ』
インの返答の言葉尻を断ち割るかのごとく。一撃で崩された壁の向こうから6体の人形が溢れだした。長細い石を繋いだだけのものに見えながら、その動きはおそろしくなめらかだ。
「少し待ってろ!」
あえて名を呼ばず、体を拡げて石人形3体を引き受けるリィェン。それに続いたのはレーヴァテイン“断罪之焔”を正眼に構えた楓である。
『先手を取られてるからね、ボクらは迫間さんの道を拓くよ』
「わかっています!」
つかみかかってくる石人形の足をブーツのつま先で引っかけていなしつつステップイン。突き立てた踵を軸に回転し、バックハンドで紅蒼入り交じる焔刃を振り込めば、石人形は胴を砕かれて転がった。
「あと1体!」
壁の出現と同時にアサルトユニットを起動させたファリンは、前へ向かう仲間の間に降りたってフットガードの守りを与える。
『周りに集まった者以外へかけられんのは不便だが……それでも愚神の搦め手にかからぬ頭数を増やせることは意味がある』
ヤンに同意を示したファリンは左に佩いた薄氷之太刀「雪華」真打の柄を掴み、ユニットの出力を上げた。
『いそがしく飛び回ることになりますわね』
「感謝します!」
ファリンのスキルで守りを得た由利菜が、残る石人形にイリヤ・メック――銘“ナンナ”を直ぐに伸ばした。
リーヴスラシルが修め、由利菜へと伝えられたヴァニル騎士戦技の片手剣の型、その教本に綴られるままの軌道をなぞってはしった切っ先が石人形の喉を貫き、頭部を宙に舞わせる。
『これで終いだ』
姫冠フラズグズルに飾られた金の髪先が踊る中、内のリーヴスラシルがこのときを待っていた仲間たちを促した。そして。
央が石影に紛れてすべり出した。
『出遅れた時間を取り戻す』
『ここからは寸毫だって遅れない』
内でマイヤに返した央は石人形どもと壁の残骸とをすり抜け、奥で佇むウルカグアリーへ天叢雲剣を抜き打った。
「少しは舞踊も学んだか、眼鏡?」
ウルカグアリーは靄めく一閃を掌で受け、そのまま押し返す。
「見切れるようなら見納めていけ」
「存分に見ようぞ」
圧倒的な重量差で押し退けられた央は逆らわずに石畳へ転がった。
攻めを央に預けたマイヤは、その間に見切っている。
『始めから回避する気はないようね――なら、思うまま踊るだけ』
壁をパスして横合に回り込んだ龍哉は、霞に構えたブレイブザンバーの切っ先を巡らせ、ウルカグアリーへ打ち込んだ。体重を乗せた縦斬りならぬ撫で斬りを選んだは、央の初手に対してまるで回避する気配を見せなかった愚神の意図を探るためである。
「師範代。最後の機ゆえ、赤城波濤流を見せぬか?」
刃を掌で叩き落としたウルカグアリーが苦笑した。
『傷はつきますけれど、ただの金を斬る感触ではありませんわ。おそらくはライヴスに守られているから、ということでしょうね』
ヴァルトラウテの分析に『なら、タネ切れまで追い込めば一気に持ってけるってわけだ』と返し、龍哉は油断なくウルカグアリーとの間合をはかる。
「さすがにそれだけの芸じゃ終わらないだろう?」
「ああ。興じてもらえるよう尽くす心づもりよ」
「――できればその前に終わってもらいたいとこだけどな!」
龍哉の逆から突っ込んできたニノマエが、腰だめに構えた死出ノ御剣をウルカグアリーの腰へ突き立てたが……切っ先は数ミリで止まり、黄金の肢体を揺らがせることもかなわない。
「汝(なれ)はまこと変わらぬな、三白眼」
慈しむように金眼をすがめたウルカグアリーが、唐突にその体を崩した。
『石をくぐって渡ったか』
サヤに言われるまでもない。上体をかがめてニノマエはすぐに辺りを探る。
「どこだ!?」
『今は息を整えろ』
サヤに言われて我を取り戻し、ニノマエは油断なく三白眼を巡らせた。
グラスコフィン“あなたの美しさは変わらない”を引っ被ろうとしていた美空の背後に、ウルカグアリーが顕われた。
「ファー! 美空ンゴ!?」
ウルカグアリーといえばこれまで策を弄することはあれ、戦闘において回復役や後衛を優先して狙うことはなかったはずだ。
『ってことは美空、レアなウルカ姉さんを引き当てたのでありますね』
『そんなこと言ってる場合じゃないですぅ~!』
と。
『追うなら俺だろう、アガリー』
黒のスリーピースで身を固めた守がその身を割り込ませ、ウルカグアリーへ髪飾り型に改造したマイク「カンタービレ」の“sion”で語りかけた。
「傾いたな、顎髭」
『名前で呼んでくれよ。できれば守ってな』
ウインクしつつ、ウルカグアリーに傷が刻まれぬことを確かめた守は一同へ告げた。
『魔法攻撃が通らないのは確認した。しかしつれないね、俺の声がハートどころか指先ひとつ揺らせないなんて』
そして胸元へ潜り込んだ黄金刃を見下ろして。
「返事までつれないぜ」
こともなげに息をついてみせた。
その隙によじよじ匍匐前進して離れた美空は内でうそぶいた。
『まるで鬼ごっこでありますね』
追って追われる、どちらもが鬼の鬼ごっこ。それならば。
「ウルカネキ。美空、全力で鬼ごっこ仕るでありますンゴ」
『え~!?』
『あの移動能力、囲んでも意味がないかもしれないな』
そう言うカゲリに、リンクコントロールでリンクレートを押し上げたナラカは不敵な笑みを返す。
「まずは石塊の逃げの手を崩し、友を行かせるを第一に考えよう」
●決意
キィン! 央の刃が振り込んだ勢いそのままに弾かれた。
「魔法特化!」
ウルカグアリーへしかける中で、その体が三つの属性を切り替えていることは知れた。物理と魔法、対応する攻撃を選ばなければ傷を与えられないことも。
相手は食わせ者。攻め手を絞るは危険と見て、叢雲と共に英雄経巻を携えてきた。これにより、立体的且つ柔軟な攻めを展開、十二分に斥候役と先触れをこなす央だったが。
「ずいぶんと急くものだ」
肩をすくめたウルカグアリーに、央は口の端を吊り上げて見せ。
「茶を飲んで語り合うような仲でもないだろう」
ウルカグアリーが伸べる指をくぐってその胴を蹴る央だが、距離が取れない。
『吸収されたわ――ライヴスを切られて』
マイヤの言葉をなぞるように、ウルカグアリーは央の足形が穿たれた腹を元のとおりに成形し、まわりの建物からちぎった石片の雨を降りしきらせた。
「汝らに数で劣るのだ。この程度は赦されよう?」
『央、回り込んで』
マイヤの言葉が、後ろへ跳び退きかけた央の足を横へスライドさせた。そうだ。ここで退き、間合を与えてしまえば防壁を呼び出され、今度こそ完全に視界を遮られてしまう。
「後に備えろ!」
視界を塞ぐ石雨の中で目をこらし、警告を飛ばす央。
言葉尻に『石に紛れて愚神が姿を消すのじゃ!』、インが声音を重ねたが。
「打つは石雨ばかりと限らぬぞ?」
そのまま進み出たウルカグアリーが、咄嗟に転がろうとした楓の左腕を掴み、引き留めた。
「――っ!」
指先から迸る金雷が楓の腕を貫き、全身の神経を打ち据えた。
『龍哉、愚神が魔法特化なら私たちの役目は』
「拓くってことだ!」
ヴァルトラウテに応えた龍哉は、体重を乗せたブレイブザンバーの柄頭で目の前の壁を砕く。ブリーシンガメンの力で対せはするが、今は自分よりも魔法攻撃に長けた者を行かせるときだ。
『ウルカグアリーは時間稼ぎをしたいはずですわ。でしたら』
『それもわかってるさ』
秘薬を飲み込むついでに龍哉は背中越し、自らのフォローを買ってでてくれた相棒へ声をかけた。
「リー、頼む!」
「よし!」
散らばった瓦礫を蹴立てて後続への道を作りつつ、極の腹で肩を固めたリィェンが突っ込み、壊された防壁へ重ねてウルカグアリーが呼び出した防壁をぶち破る。
『壁を重ねてくるとはまた芸が細かいのう』
インが感心半分、腹立ち半分の顔で言った。
歴戦の彼女は戦術にも通じているので、こうした小技が意外なほど効力を発揮することは知っている。
『とはいえ数で勝るこちらが優位であることは変わらぬ。どうやらこれらの小細工も、一度に使える数には限りがあるようじゃしな』
『なんにしても、役割をきっちりこなして追い詰めるだけだ』
「……振り払わぬのか?」
エージェントの攻めをただその背で受け止めながら、楓の腕をとって笑むウルカグアリー。
楓は痙攣する右手で抜き出した聖槍「エヴァンジェリン」の石突を地へ突き立て、穂先のすぐ下を掴みなおして。
「逃げない。私と詩乃は、それだけを決めて来たから」
『この前愚直だって言われたけど、それ以外のことなんてできないし、やりたくもない。だからボクたちはやり通す!』
ウルカグアリーに掴ませた腕を支えに、聖槍の穂先を黄金の面へ叩きつけた。
「過ぎたる一途よな、剣士。子狼へ逢いたくば、命冥加に振る舞うべきであろうが」
額に食い込んだ穂先を楓の体ごと振り払ったウルカグアリーに、プリトウェンを押し立てた由利菜が跳び込んだ。
「聖女、今日の供は女騎士か」
「競り勝つのではなく、攻め勝つため、ラシルと参りました――!」
フォールクヴァングの裾をふわりと巡らせ、スピンした由利菜の手には、盾ならぬ聖槍「エヴァンジェリン」が握られている。腕を封じられていた楓とちがい、十全な体勢から突き込まれた穂先はウルカグアリーの横腹へ突き立ったが。
「まだ、妾が黄金は抜けぬよ」
浅くめりこんだ穂先を払い、由利菜を蹴り放した。
『攻めを重ねれば奴のライヴスは尽き、守りも崩れる。現状の問題はあの重さだが……』
ウルカグアリーの黄金の体はひどく重い。それはすなわち、体勢を崩すことが困難であるということだ。元の世界では多くの重装戦士との立ち合いを経験してきたリーヴスラシルであればこそ、それを実感する。
顔をウルカグアリーへ据えたまま、視線で仲間の位置取りを確認。由利菜は低く構えて秘薬を取り出した。
『私たちの強き絆に応えて輝きを増せ、グラトニル――シンフォニックハート!』
彼女の身を包むブレイブガーブ“グラトニル”がリンクレートの高まりによって色合いを変え、攻防の力をいや増した。
「攻めながら耐え、機を引き寄せます!」
そして。
由利菜の影からちょろちょろと駆けだした美空。楓を棺桶でカバーし、白鷺の穂先でウルカグアリーを牽制しながら「お姉様にタッチさせないやでー」。
そして必死に考える。ウルカグアリーはエージェントに囲ませぬよう移動し、しかしそのすぐ裏へと再出現している。つまりは彼女自身もまた射程に制限を課しているということだ。
「ウルカ姉さんも攻撃に射程制限かかってるンゴよ!」
敵に気づいたことを知られるよりも、前衛が少しでも傷を負う危険を減らしておきたい。攻めるには結局、ウルカグアリーの眼前へ踏み込まなければならないのだから。
「赦しを乞うておこうか。規約を課しておるのは妾の手ばかり。使う石には課しておらなんだ。多勢に無勢ゆえな」
「多勢だろうが油断するかよ」
その黄金の脚を狙い、横合いからニノマエが突っ込んだ。
「剣は通じぬぞ?」
ウルカグアリーが石畳を踏みしだけば、石を伝って拡がる唸りが共振。町そのものをぶるりと震わせた。
「っ!」
黄金の脚へ届く前に、足を取られて転がるニノマエだったが。
『言われるまでもない!』
サヤの言葉を追いかけるように、ニノマエはウルカグアリー脇を転がり抜けて裏を取った。そして手には御剣ならぬ三味線「葬々」の細棹が握られていて。
鬱々とした三味の音が、黄金の肢体を震わせた。
フットガードによって地震をやり過ごし、ウェポンディブロイによるAGWの瞬間換装から奇襲をかける――ニノマエが3秒で弾き出した奇策であった。
「頭も使うのだな、三白眼」
「突っ込むだけでぶっ壊れてくれんなら使わねぇさ」
その内でサヤはウルカグアリーを測る。
愚神のあの様、どう見てもあれは余裕だな。しかし邪気がなさすぎる。まるでこちらとの戦いを楽しんでいるだけのような。
いや。これまでの戦いを経て有り様は知ったつもりになっていたが、奴は愚神……深読みし過ぎているんだろう。
移りゆく戦局の様を見極め、サポートに徹するファリンは、美空と同じ結論を得ていた。
『自在にルールを設定できるはずのドロップゾーンで、ウルカグアリーはわたくしたち同様に制約を負っている……それは結局のところ、規約がなければ自らを保てない性によるものなのでしょうね』
ヤンはうなずき、言葉を継ぐ。
『自らの能力を俺たちに晒すのも、隠さぬことが矜持であり、自らに課した規約か。――見せてもらったとて、こちらが優位になるわけではないがな』
ファリンは助太刀として参戦してくれたリィェンを中心に、前衛をカバーリングできるようポジションを整えつつ、スーパーミカンキャノンを担ぎ構えた。
そのまま食用にもなる蜜柑弾が狙い過たずウルカグアリーの腹部へ着弾、柑橘の香りで愚神のポジションを他のエージェントへ知らせる。
『どこまで保つかわからんが、打てる手はすべて打っておくべきだ』
『今が魔法特化なら、どちらにせよ次は物理攻撃が通りますね』
まずはウルカグアリーが呼び出すだろう障壁や繰り出す人形を押さえ、攻撃力の高い前衛を先へ向かわせる。そしてウルカグアリーが強BSを擦り込む形態を取るなら、その攻撃を引き受ける。
「リィェン様、龍哉様、次はわたくしの後に続いてくださいまし!」
「ファリンがしかけるようだ。ケツは俺が持つ」
石人形の攻撃を肩で受け止め、極の柄頭で頭部を砕き落としたリィェンは、龍哉の前に転がった残骸を蹴り退けておいて。
「相棒は俺が作った道をまっすぐ行け。その代わり、きっちりしとめてこいよ」
ニノマエと挟み打つ形でウルカグアリーへ迫ったのはナラカだ。
「“そのとき”至るより先に攻め来てよいのか、鳥?」
黄金のライヴス噴く身を翻し、愚神の腕より取り戻した刃を後ろ手に突き込む。迷いのない刺突は愚神の黄金へと吸い込まれ、純金の火花を咲き散らせた。
「汝が本当の本気とやらになるまでのしばしを、粛々と繋ぐだけだ」
「それにしては騒がしい。別離こそ粛々と惜しまれるべきであろうに」
ウルカグアリーへナラカが返したものは、哄笑。
「はっ! 別離を粛々と惜しむ? ――否、否だろう! 汝を黄泉路へ送るならば、太陽の前には汝が黄金も溶けくすみ、流れ消えるかと嗤ってやろう。汝が私が送るのならば、そのときは同じく嗤え。私と汝は、そうしたものであろうがよ」
限りない強さと限りない慈しみを込めて、ナラカは刃を突き込む。
「鳥はいささか叙情が過ぎる」
かくて黄金相打つ最中、粋か無粋か知れぬ伊達男が割って入った。
『なかなか逢いに来てくれないから逢いに来ちまった』
マイク越しに語り上げ、空をノックしてみせる守。
「待ってもおらぬよ」
その顎先を、帯電した指先で弾いた。
ひりりとした痛みが守の体を一瞬硬直させるが、それだけのことだ。
『怒るなよ。なにせ女の背中を追いかけるなんて真似、したことがなくてな』
あんたには嘘ばかりついてる気はするが、これだけは本当のことだ。守は万感を込めてウルカグアリーを見据え。
「だから、捕まえかたもよくわからない。どうすればあんたが振り向いて立ち止まってくれるのか、そいつを今悩んでるところさ」
あえてマイクを通さずに告げたが、ウルカグアリーは肩をすくめて溶け失せた。
●響
ウルカグアリーが構えるよりも迅く、央は分身と共に彼女の裏へ回り込んだ。
「そう跳びまわられてはついてゆけぬ」
振り回された愚神の腕をダッキングで回避し、沈み込む反動に乗せて叢雲を伸べる。
『これで振り向けない』
マイヤの言うとおり、切っ先は振り向きかけたウルカグアリーの背を抑えていた。動き出すより先に抑えることで、体を動かす力の発動そのものを止める、暗殺術の応用である。
「このまま獲らせてもらう」
刃を支えに央が踏み込んだ、そのとき。
「こうした手もあるがな」
背だったはずのものが胸と腹へ、髪だったはずのものが面へと変じ、分身の攻めを受け止めたウルカグアリーは5体の石人形を呼び出した。
踏み込んだ足にしがみつかれた央は、その体術をもってかろうじて転倒を免れたが――
「ようようと捕まえた」
と、言い切れぬ内、アサルトユニットからライヴスを噴射、急降下したファリンの雪華が愚神の肩口を斬りつけ、追撃を阻んだ。
「跳ねるは眼鏡のみならず、兎もであった」
苦笑したウルカグアリーが刃を掴むとその指先が溶け出した。黄金は刃の雪結晶を穢しながら流れ来て、ファリンの手へまで至る。
「……跳ねるばかりではありませんわ」
鈍い苦痛を擦り込まれると同時、体を巡るライヴスを激しくかき乱されながら、ファリンは刃に自分とユニットの重さをかけて押し込んでいく。
「ああ、汝の考と目で、妾も多くを阻まれたものよ。ゆえにこそ惜しい」
なつかしげに言い、愚神は視線をファリンから引き剥がした。
と。ファリンの合図でウルカグアリーの属性を知った龍哉とリィェンが踏み込んでくる。
「汝ひとりと、ゆるりと対する時を持てぬことが」
「リー!」
「応!」
左右に割れ、挟撃の型を作った龍哉とリィェンは、ファリンを突き飛ばしたウルカグアリーへ斬りかかる。
「さて、届くものか」
横殴りの石雨がふたりを打ち据え、視界を塞ぐが、しかし。
「見えなくても嗅げるぜ」
龍哉よりも半拍先んじて踏み込んだリィェンが、ウルカグアリーへショルダータックルを打ちつけた。先にファリンがつけた香りは、薄らぎつつはあれど未だ黄金へ残されている。そこまでの間合を測ることは、武人にとって難しくはなかった。加えて。
『そちの重さがあれば、それを利して間合を取りなおすも、反動を得るも容易いことじゃ』
インの言うとおり、リィェンのタックルにはいくつかの意味と意義があった。第一は測った間合の確認すること。次いでそれが正しかった場合、通常であれば震脚によって生み出す反動を、ウルカグアリーという超重量をもって得ること。さらには長大な極の刃を振り込める間合を取りなおすこと。
「おおっ!!」
踏み止めた足を起点に勁を発し、渾身の重さを乗せた刃を低く横薙ぐ。ギン! 足首を打ち据えた極を伝い、硬いライヴスが弾ける手応えが返ってきた。
「妾と格別の縁を持たぬ汝、いかなる用向きで来やった?」
投げかけられた問いにリィェンは口の端を歪め。
「なに、友だちを手伝おうってだけだ。それに……俺にとってはなにより大事な人が、この戦場を繋いでくれてるんでな」
ウルカグアリーはくつくつと黄金の喉を鳴らし、リィェンを蹴り飛ばした。
「情に浸るか、嫌いではない」
『ここまで言えるようになったは成長じゃな』
内で肩をすくめるインにかまわず、リィェンは声を張り上げた。
「相棒、そのまま行け!」
了解したぜ、相棒。
胸の内で返した龍哉の手にブレイブザンバーはない。“皇羅”の銘を持つ鬼神の腕が装着されていた。
『試せる機会はここだけと決めてかかりますわ!』
青鈍と赤褐の闘気に染められた龍哉はヴァルトラウテにうなずき。
『ああ。迫間、ファリン、リーが繋いでくれたチャンスだ。ここから次に繋ぐのが俺たちの仕事だろうさ』
リィェンと同じように香を辿り、しかし、それを追い越すように踏み込んだ。たとえどれほど重い黄金であれ、ファリンの打ち下ろしとリィェンの足刈りでその重心は崩されているはず。
果たしてウルカグアリーの首へ腕を巻きつけ、リィェンが刈ったほうの足へ重心を傾けながら下へ引く。投げるのではなく、自らの体につまずかせるだけの、まさに柔の投術である。
背を石畳へ打ちつけたウルカグアリーは下から龍哉を見上げて薄笑んだ。
「痛いな。かような攻めは体に響く」
「ほんとなのか嘘なのか、今いちわからねえ」
『多分だけどほんとンゴよ』
美空からの通信が割って入る。
それは感想に過ぎないが、それほど長いつきあいとは言えなくとも、仲間の支援という立場で一歩引いた場所からウルカグアリーの有り様を見てきた彼女だからこそ言えることだ。
「――なら、もうちょい揺らすか」
龍哉の掌打は、溶け消えたウルカグアリーを通り越して石畳を叩いた。
『移動しましたわよ! 警戒を!』
ヴァルトラウテの言葉尻をかき消すように石雨が降る。
「そいつはもう予想済みだ、ウルカ」
ここまでウルカグアリーの視界遮断の発動タイミングはかぶりつきで見てきた。代償に支払った命の量はかなりのものだが、最初に想定していた防壁との組み合わせに加えて、特殊移動との組み合わせが多いことは掴んでいる。
『同胞よ、来たれ!』
無数の御剣がその刃でモザイクを為し、石を受け止めてエージェントの視界を確保した。フラグメンツエスカッション――盾持たぬカオティックブレイドの、刃なる防壁である。
『盾多く展開、次なる一撃を守護せん』
石と剣とが打ち合ってあげる、まさに金切り声の最中にサヤの鋭き声音が響く。
「先に言うたが、頭も使うものだな」
ニノマエの背後に顕われたウルカグアリーが満足気に言い、その背を背で押して踏み出した。
「っ!」
体勢を崩されたニノマエは振り返れない。
その間に楓へ向かったウルカグアリーは黄金滴る手を伸べた。
「はっ!」
仲間と連動してウルカグアリーを追い、その魔手がいつ襲い来ようとも対せるだけの心を固めてきた。
『狙われてるね、ボクたち。あの子のところに行かせたくないんだろうけど、でも』
そのライヴスをもって断罪之焔を燃え立たせた詩乃が促す。
「どいてほしいなんて言わない。私があなたを越えていく!」
霞に構えた切っ先を突き込まずにいた楓の眼前に、ウルカグアリーの掌がかざされた。
視界は完全に塞がれたが、楓は揺らがない。
『お姉様、来るンゴよ!』
すべては戦闘タイムをカウントし、戦局を伝えてくれる美空がいてくれたから。
もう次の属性に移ったことは知っています!
掌が引き、替わりに黄金刃が楓の喉元へ迫る。
目を見開き、前を見据えていた楓は、今こそ切っ先を突き込んだ――本体ならず黄金刃の腹へ。
果たして黄金刃は半ばから折れ曲がり、それでも上を向いた切っ先が楓の頬を裂いた。クロスガードの守りで浅手に留めたが、薄く噴いた鮮血が頬を伝い、流れ落ちる。
「私は」
『ボクは』
「『ここで倒されたりしない!」』
その血をすくいとった左手をウルカグアリーの目に叩きつけた楓。その体は呼び出された石人形に噴き飛ばされ、打ち据えられるが、彼女の瞳に灯った焔は消えず。
これが、それしかできない私が尽くした全力――!
ウルカグアリーが血を拭い払う間に、盾をかざして石雨の欠片を押し退けた由利菜がその眼前へ到達する。
「あなたは別離を告げに来たのですね」
生え替わったウルカグアリーの黄金刃へ浅い突きを繰り出して牽制し、由利菜は自らの言葉を継いだ。
「いえ、惜しみに来た。互いに至近距離でしか技を交わせない制限をつけて、敵であるはずの私たちとの別離を」
黄金を削らせながら、ウルカグアリーは黄金刃を構えた。
「此の世にて結びし縁を置き去るがため、来た。それまでの時を惜しむは必定であろう?」
『依代ならぬ本体を投げ打ってまで、おまえは私たちとの縁を確かめに来た。……思えばいつもおまえは情で動いてきた。それは此度も同じか』
静かに言の葉を注ぐリーヴスラシル。
「それなのにあなたはリュミドラを置いていくのですか」
黄金刃を切っ先で巻き取り、払った由利菜がもう一歩踏み込んだ。
「巣立ちを送るもまた情よ」
顎を突き上げてきた柄頭を、頭を振ってかわし、ウルカグアリーは逆の手先から伸ばした刃で由利菜の胸を突く。
「私は、ラシルと親友――ふたりから離れはしません。たとえなにがあったとしても」
鉄壁を貫いて心臓の直前にまで届いた刃。
それをライヴスの力で押し戻し、由利菜は唇を引き結んだ。募る思いをそれ以上こぼしてしまわぬように。
私の祈りも誓いも、そのときが来るまではこの胸に秘めておくべきものでしょうから。
石人形2体が守の脚へしがみつき、もう1体が硬い腕を額へ打ちつけた。
「……顔はやめろよ。傷がついたらアガリーに嫌われちまう」
眉根をしかめて舌打ちしてみせる様は、いかにも愚神への恋情に惚けた馬鹿男然としていたが、その裏ではクレバーに状況を見定め、仲間に逐一情報と考察を知らせていた。
「惚け者を騙る内は好いてやらぬさ。それよりも、傷を癒さずともよいのか?」
そんな守の裏腹を見透かして切り捨て、ウルカグアリーは石畳へと溶け消えた。
「俺に見せられる最高の誠意さ」
だってこの傷はあんたがつけてくれたんだ。捨てちまうわけにはいかないだろ。
「ウルカネキ、裏取ってきがちンゴ! 背中合わせで対処やで!」
仲間へ伝えつつ、美空はたたたーっと走ってとうっとジャンプ。ロケットアンカーを建物の屋根へ引っかけ、ターザンロープからの跳び蹴りで守へ取り付いた石人形を突き飛ばす。
「悪いな。これはお返しだ」
守のエマージェンシーケアが石畳スレスレに滑空する美空へ贈られ、彼女の背に刻まれた深い傷を癒した。
「ありがとニキー!」
新型迷彩マントを使ってのかくれんぼは、あっさりとウルカグアリーに見つかった。加えて回復スキルはすでにエンプティ。残された美空の力は、見かけによらない防御力ただひとつきり。
ウルカ姉さん。美空のファイナルアタック、見せつけちゃうでありますよ。
●寂寥
属性を変えながら、姿勢だけを変えずにエージェントと対するウルカグアリー。
その黄金は攻めを受けるごとに深みと輝きとをいや増していた。
盾越しに擦り込まれたダメージと黄金毒で侵された由利菜が膝をつく。
『ユリナ!』
「私は――倒れません」
リーヴスラシルに応えた由利菜は力を込めて立ち上がり、迫り来るウルカグアリーへ踏み出した。傷ついたその身をもって、仲間を呼び込むための陣の先端を為すがために。
「その意気は高く買おうぞ、聖女」
「売りものではありませんから、お気になさらず」
この心に値をつけていい者は由利菜自身とふたりの英雄だけだから。
「気高さに自信はないが、往生際の悪さなら俺もそれなりだぜ!!」
石人形の縛めを力尽くで抜けてきたニノマエが、黄金の背へ思いきり弾いた葬々の音を浴びせかけた。
「足元を狙い来るばかりと思えば、此度は背後か」
ウルカグアリーの手がニノマエの首を掴み、笑みの鼓動に乗せて締め上げた。
「……今日は、頭使う日なんでな」
抜け落ちそうになる力を無理矢理に引き出し、ニノマエは自らを縛めるウルカグアリーの手を両手で抱え込む。
「そのくせ多分に深手を負うておるようだが」
『そうしなければ頭を使うこともできぬのだよ、私たちは』
サヤが苦痛の内に笑みを閃かせた、そのとき。
「ニノマエ様、手を!」
ニノマエが手を離した次の瞬間、フルスイングされたファリンのデストロイヤーがウルカグアリーを高く打ち鳴らし。本来であれば周囲をも噴き飛ばすライヴスの爆発が押し詰まって、黄金の肢体を大きく泳がせた。
『少しでも回復しておけ』
やわらかなヤンの言葉に次いで渡された賢者の欠片を噛む中、仲間たちがウルカグアリーへ向かって行く。
『私たちも休んでいる暇はないぞ、ニノマエ』
「おう」
休むのは死んでからでも遅くねぇからな。生きてる内はせいぜい急ぐさ。
石の豪雨がエージェントの視界を埋め尽くした。
「ウルカネキ、リィェンさんの右斜め前に出たンゴよ!」
ターザンロープで戦場を行き交い、状況を確かめていた美空の体ががくりと止まる。
いつの間にか石畳から生えだしていた石人形が、彼女のちんまい脚を掴み止めていたのだ。
『これってすっごくピンチですぅ~!!』
『美空はまだやられるわけにはいかないのであります! やらせはせんのであります!』
内で大騒ぎする美空とひばりだったが、これまた唐突に縛めを解かれて滑空を再開する。
「美空さん、一度そのまま離れてください!」
かくて美空を捕らえていた石人形の首を断ち落とし、正眼に構えた切っ先を巡らせて、次に相手取るべきものを探す。
『ほんと、きりがないね』
詩乃がうんざりと漏らしたため息には、彼女と楓の流した血の臭いが染みついていた。
これはこれまでの激戦と、これからの死闘の臭い。
視界の端によぎる白き吹雪を追い払い、楓は賢者の欠片を噛み締める――どこか、氷雪を思わせる味がした。
防壁に背を打たれ、体が傾いだところへ黄金刃を突き込まれたリィェンが、極の柄頭をまっすぐ突き下ろして刃の腹を打った。
ライヴスを切られた刃は容易く曲がり、彼の体から抜け落ちたが、逆に切り口を拡げて鮮血を噴き出させる。
「ち、残しといてくれれば漏らさずにすんだんだが……」
傷をものともせず、ウルカグアリーを斬り退けたリィェンにファリンが賢者の欠片を手渡した。
「リィェン様、ご無理はなさらず」
「すまない」
一礼したリィェンは、血止めもそこそこに、龍哉の先を塞ぐ防壁へ向かう。
『彼の愚神、戦い始めよりも鋭さが増しておるぞ』
インの言葉に苦笑を返し。
『だな。が、俺たちの仕事は変わらない』
邪魔をしようとした石人形を踏んで跳び、極を高く振りかざした。
そのリィェンの下をくぐって跳び出したのは龍哉である。
「オンとオフが効くってのは、電気を使うおまえに似合いだがな」
再び皇羅へ換装した彼は強く踏み込まず、つま先を繰ってスピードと角度を変えながらウルカグアリーへ迫る。
「拳闘士とも異なる足遣い、波濤流か?」
「そう思ってくれていいぜ」
黄金刃を肩で押し退け、ステップイン。左フックを振り込んだ。
当然、ウルカグアリーは腕を差し込んでこれを阻もうとするが、龍哉が拳を途中で開いたことでその防御は顎先を行きすぎて――一拍遅れて届いた掌打で打ち鳴らされた。
「虚実をよく使うものだな、師範代」
打たれたまま薄笑んだウルカグアリーは、今度こそ龍哉を裂き、溶け消えた。
「っ!」
雷に穿たれた央が、壁へ打ちつけた背を力なくずり落ちさせた。
『央――』
マイヤのささやきが届いているものか、沈みゆく央の姿から見取ることはできなかった。
「……」
そう。ただひとり、その様を見送った守を除いては。
「少し痩せたか、石塊」
弾かれた天剱を体ごと巡らせて突き込み、ナラカが問うた。
「これほどに削られればな」
切っ先を掌で掴み取って引きずり寄せ、ウルカグアリーは逆の手より伸ばした黄金刃をナラカの腹へ潜り込ませる。
賢者の欠片を乗せた奥歯を噛み締め、ナラカは内で吐き捨てた。
『石塊、よもや私たちの攻めで自らを鍛えあげたか』
カゲリはうなずく。そう考えれば、回避を一切行わなかったウルカグアリーの有り様にも説明がつくからだ。
『思えば初めて会うのだ、依代ならぬ石塊とは。因縁ばかりはそれなり以上に長いはずなのだが』
腹と肚に力を込めて黄金刃を縛り止め、ナラカは自らの身を横へ振った。
いくらかの重さを損なっていたウルカグアリーの体が小さく傾ぎ、足が半歩分泳ぐ。
「こうなれば掴めまい」
逆手に握りなおした天剱がカウンターで突き込まれ、切っ先がウルカグアリーの腹へ届き――ぞぶり。明らかに今までとはちがう手応えがナラカへと返った。
「石塊、終わるのか」
「おお。もうじきにの」
自らの腹からは天剱を、ナラカの腹からは黄金刃を引き抜いたウルカグアリーが頭をもたげた、そのとき。
影から忍び出た央がウルカグアリーの背後へ滑り込んだ。
『虚を突くには実を捨てるしかないわね』
ここへ至るためにマイヤが告げた策は、普通であれば絶対に為し得ないものだった。
影渡からのザ・キラー。央とマイヤの切り札は、先の戦いですでにウルカグアリーに知られている。普通に回避し、裏を取るだけでは、特殊移動か表裏の反転で容易くいなされよう。
だからこそ、直前の魔法特化属性時から仕込んできた。深手を負った有様をあえて晒して雷に撃ち落とさせ、ウルカグアリーの注意を引き離した上で、影渡を発動。死角へ移動し、待ち受けたのだ。
それを為すために奇蹟のメダルを砕くことになったが……ゆえにこそ策は成った。
『俺は惜しまない。おまえとの縁を、対した時間を――』
内のうそぶきを濁した央は、霞に構えた叢雲を薙ぎ、ウルカグアリーの延髄を裂く。
『やわらかい』
寂寥に色づいたマイヤの言葉へ、央も同じ色を口の端にくゆらせ、応えた。
『ああ』
●別離
雷と雫とをまとったウルカグアリーの刃が夜闇を縦横にはしり、エージェントたちを斬り払い、突き抜き、侵す。
延髄には央が刻んだ深い傷がそのまま残り、鈍く重々しい黄金の輝きが溢れだしていた。
『この戦いの終わりも近いな。もっともそれまで俺たちが立っていられるとは思えんが』
厳しい表情で言うヤン。
ファリンは唇を噛み締める。クリアプラスを加えたケアレインで前衛を癒しはしたが、それが焼け石に水であることは誰よりも思い知っている。
央様の一手を繋ぐ次手があれば!
ファリンと同じく、美空はその一手についてを考えていた。
ただひとつだけ異なっていたのは、ファリンが絶望のただ中でも粘り強く、戦線の維持と支援に努めていたのに対し、美空は自らで一手を打つ機を狙っていたことだ。
ターザンロープでウルカグアリーへ突撃する美空。
「小桃」
ウルカグアリーが伸べた刃は美空のマントを裂き――胴に巻かれた爆導索を露わにした。
「マイトガールやでー!」
美空は黄金へしがみつき、圧縮ライヴスを爆ぜさせた。
「美空さん!!」
衝撃で宙へ飛んだ美空のちんまい体をキャッチした楓が、追撃の刃を翻した背で受け止める。
「ちゃんと見ていましたよ」
意識を失くした美空をそっと石畳へ横たえ、再びその身を翻して刃を抜き落とし、ウルカグアリーと対峙した。
至近距離からの爆発でひび割れた黄金。あと少しで、割れ砕ける!
『楓、行こう!』
「美空さんの奮闘を無駄にしません!」
「相棒、まだ行けるか?」
リィェンの問いへ、龍哉は最後の賢者の欠片を噛み締めるついでに口の端を歪め。
「あと30秒ってとこだな」
「正解は31秒後に確かめるさ」
『言うようになりましたわね、リィェン君』
『うむ、恋路は男に詩心を与えるものなのじゃ』
英雄たちの声は完全無視。リィェンは龍哉と肩を並べ、死地へと駆け込んでいく。
「お互いもう頭使ってる暇はねぇよな、ウルカ!!」
『刃にすべてを込めろ! ここが私とニノマエの分水嶺だ!』
サヤのライヴスを吸い込んだ御剣を八相に構え、まっすぐ斬りかかるニノマエ。
それをカバーし、ナンナを突き込んだ由利菜の内でリーヴスラシルが言った。
『魂の主導はユリナに託す。……ミオが言っていた戸板を引く者が必要だろうからな』
リンクバーストをせずに通常攻撃を続けることを示したのは、すでにそれをする者たちが先にあるからだ。リーヴスラシルと共に彼らを守る、そう決めた由利菜は強ううなずき。
「誰ひとり置いては行きません!」
エージェントの攻めが重ねられ、ウルカグアリーは損なわれていく。
その前へ、仲間のカバーに徹してきた守がついに至る。
「遅かったな、顎髭」
「さっきから考えてたんだが、あんたを満足させられるだけ誠意は結局思いつかなかった。しかたないから」
ライヴスソウルを握り潰し、リンクバースト。
「無粋を承知で俺が満足しに来た」
彼女の切っ先を自らの腹へ導き、深く貫かせて拘束。
「なんのつもりだ?」
「こうしておけば、あんたは俺だけを見てくれるってわけだ」
さらに一歩を進んだ守は、その左手で黄金を抱きすくめ。右手のリボルバー「バルイネインST00」の銃口をウルカグアリーの胸の中央へ押しつけた。
「扇でも髪飾りでもなく、銃とはな」
「銃は男の浪漫だろ? ハードボイルドに決めたくてな」
刃から染み出す毒と雷が、押し上げられたはずの守の命を凄まじい勢いで削り落としていく。
「共に行く心づもりか? 顔も合わさぬがままに」
望むでもなく、揶揄するでもなく、ただ興味深げに問うウルカグアリー。
首筋を揺らす声音を心地よさげに受け止めて、守はかぶりを振った。
「魅力的な申し出だがな、お嬢は連れてけない。それに顔を合わせちまうとそのまま眠っちまいそうだから――このままであんたを送る」
引き金に指をかけて微笑み。
じゃあな、アガリー。
そして。
胸を穿たれたウルカグアリーへ、ナラカが歩み寄る。
「今こそ別れを告げに来たぞ」
深く傷ついたナラカの胸に黄金刃が吸い込まれ、心臓にまで食い込んだ。
寸手で貫かれるを防いだナラカの袂の内、奇蹟のメダルが砕ける音が鳴り。次いでその手に握り込まれていたライヴスソウルが爆ぜる音が鳴った。
ナラカの流した血がリンクバーストで点火されたライヴスの奔流に吹き払われ、天剱の錆刃に浄焔を灯す。
「これが人型に縛められた汝の焔か」
その軌跡で空を埋め尽くすコンビネーションの連撃に打たれ、ウルカグアリーはその形を歪めながら笑んだ。
本来、この裁定は汝に下すものならぬのだよ。私は神々の王を滅ぼす者だからな。その思いが名残であることは知っているから、ナラカはただひとつの意志を込めて笑みを返すのだ。
「この光を標に黄泉路を渡れ、石塊」
せめて約のとおり、私は汝を笑んで送ろう。
●余韻
黄金が割れ砕け、石畳へ落ちていった。
「かくて黄金は討たれ、汝らとの縁は断ち切れる」
形を失いゆきながらウルカグアリーは歌うように語り。
「妾が遊戯と友誼とに付き合ってくれやった汝らへ、せめてもの心づくしだ」
黄金雨を降りしきらせ、エージェントに刻まれた傷を癒していく。
佇む央は眼鏡越しにその雨を見上げ。
「おまえは――愚神のくせに人間臭くて、義理だのしがらみだので動いていたな。正直、嫌いじゃなかったよ」
その一方でマイヤは静かにその目を閉ざす。
どうしてかしらね、雨が目に染みるのは。
彼らを包み込むように立つ由利菜は、雨へ掌を差し伸べて。
「ウルカグアリー……願わくば、愚神という呪縛から解放されますよう」
『生まれ変わったとしても、縁の糸へ自ら絡まりに行くのだろうがな。それでもしばしの安息が与えられることを祈る』
リーヴスラシルもまた、由利菜の心に心を重ねてうつむいた。
『これほど傷つけておきながら、と言いたくはなるがのう』
「ありがたく受けとこう。俺たちにはまだ刈りとらなきゃならない首が待ってるんだからな」
インへ苦笑を返したリィェンに、龍哉はうなずいて。
「なんにせよひとつ終わった。心置きなく次へ行こうぜ」
『ですわね。今日を越えて、明日の戦いへ』
ヴァルトラウテは前を見据え、強く紡ぎ上げた。
『雨に流されて、綺麗に溶け消えた』
万一コアが残されていないかと目をこらしていたサヤが息をつく。
「拾いに来る奴もなし。ほんとにいなくなっちまったんだな」
もう少し名残を引いてもいいだろうに。
『もう聞こえもしないだろうが――ウルカグアリー、おさらばえ』
別離を告げる六方詞に、ニノマエは先のサヤと同じように息をついた。
「美空さん。私たち、勝てましたよ」
美空の体をやさしく抱き起こした楓が告げれば、美空は「……ンゴ」、目を醒ます。
『ひばりたち生きてますぅ』
『よくわからないでありますけど、万歳三唱でありますね』
万歳した美空を見守る詩乃は、楓に低く告げた。
『次は宿縁に向かう番だね』
「切りません。あの子との縁だけは――」
『リンクバーストが解除されている。いや、バーストクラッシュ後に癒されたのか。どちらにせよ、それだけの力が残っていたならまだ戦えただろうに』
ナラカへ送ったクロスリンクもまた切れていることを確かめ、ヤンが小さくかぶりを振った。
『始めから決めてたんだろう』
「ああ。そうしたものなのだよ、石塊は」
ナラカは、常ならばカゲリが口にする言葉を当の本人へと返し、天剱を収めた。
その傍ら、ファリンはこの世界から消え失せたウルカグアリーの気配を辿るように視線を巡らせ、ついには振り切った。
ナラカ同様リンクバーストから解かれた守はひとり、取り戻された夜空の下を歩き抜けていく。
杏樹が眠っていてくれるうちに、この思いを噛み締めておきたい。確かにふたりきりだったあの時間を、ひとりきりで。
果たして黄金の縁は絶たれ、エージェントはそれぞれに進むべき明日へと進み行く――
みんなの思い出もっと見る
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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