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広告塔の少女~新たな門出~
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おとなの時間?秘密の談笑会
最終発言2018/11/29 00:51:16 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/11/29 10:45:26
オープニング
● 戻った二人。
「あの、遙華。あなた仕事で躓くごとに私に連絡してくるのやめなさい?」
ロクトはBARでの接客中、突如遙華からかかってきた電話に答えるために厨房に引っ込んだ。
「あなたこの前も上からの無茶ぶりで、こんな案件むりーって電話してきてたわよね?」
「だ、だって~。この仕事も、この仕事も、上はあなたがいることに慣れてるからそのまま仕事を振ってくるのよ、昔の気分で」
「私はもうグロリア社には戻れないって言ったでしょ。あとあなたうかつなことを話すと情報漏えいになるからね」
船の上で再会した二人はあれからいろいろ話し合った。
これまでのこと、これからのこと。
やっぱりロクトはグロリア社に戻ることはできないらしい、ただ財産は返してもらえたので、もともと稼いだお金でBARをのんびり営みながら暮らしている。
遙華は遙華でグロリア社のお仕事をマッハでこなしている身だ。
「あー、私も社畜から解放されたい」
遙華が告げるとロクトは少し笑った。
「あなたは苦労を買ってでもする時期よ。大きくなったらたっぷり休めるわ」
「そうかしら?」
「そうよ、私みたいにね」
その時ロクトの空いている方の耳がお店のベルの音を聴く。
「あら、お客様ね。きるわよ」
「え、ちょっとまって、ロクトもうちょっとゆっくり」
「話したいことがあるなら私のところに来なさい、未成年にお酒は出せないけどね」
告げて電話を切るとロクトは厨房から顔を出す。
「あら、来てくれたのね、歓迎するわ。こちらへどうぞ」
告げるとロクトは軽やかな笑みを浮かべて君たちをみせの奥に通した。
● BARカンタレラは健在。
今回はロクトの復帰回となります。皆さんはBARカンタレラに飲みに来てください。
もしくはスタッフとして駆り出されてください。
そしてみんなでお話ししようという回です。
今回の会話のテーマは秘密です。
皆さんが胸に秘めている、相棒に秘密にしていること等々暴露していただきます。
もしくはロクトが暴露するのでいろいろ聞いてみてください。
あの時どうだった? どんな気持ちだった? これからどうするつもり?
等々。
ロクトが特に聞きたいことは下記。
・戦いが終わったらどうする?
・もし英雄が消滅したらどうする?
・私の第一印象、どう思った?
● ロクトとゲーム
BARカンタレラ恒例のロクトとゲームするコーナーです。
ゲームの内容は。コップに水をはって、それに大中小のコインを入れていき、先に溢れさせた人がまけ。というゲームです。
今回の罰ゲームは二つ、どちらかを選べます。
1 秘密を話す。
話題とかぶりますがそれを助ける形の罰ゲームです。
自分から嬉々として言うものではない、何か後押しが欲しい方に向いてます。
2 好きな異性のタイプについて語る。
こちらは五分間という制約があるていですが、文章で五分がどれくらいか分かりにくいと思うので、とりあえず好きな異性について語ってください。
解説
目標 夜の時間を楽しむ。
今回は御酒を飲みながらの雑談会ですが、シナリオの後半には遙華も参加します。
遙華に対してもゲームを挑むことができ、さらに内緒の○○も行うことができるので、遙華に対して何かあればぜひぜひ。
リプレイ
プロローグ
綺麗な月夜の晩、その灯りに負けないくらい夜の街は光り輝いていた。
無法者に酔っ払い、そこそこ夜の深くなってきた繁華街をトラブルを避けるように歩く『希月(aa5670)』
行き交う赤ら顔の人々を見送って『ザラディア・エルドガッシュ(aa5670hero001)』は希月に声をかけた。
「めずらしーっすね。希月様がこんなところに」
「ええ、開店? 祝いにぜひと言われて。にしてもあ、あのザラディア様。私、お酒は飲めないのですが……」
どうしましょう。そう項垂れる希月に目的の看板を見つけたザラディアがその肩を叩く。
「大丈夫ですって、ノンアルコールくらいあるでしょうや。だめなら希月様の分まで俺が酒を飲んであげますよ」
豪快に笑うザラディアを見あげて希月は思うのだ。
「そ、それは、ザラディア様がお酒を飲みたいだけなのでは……」
そんな矢先、店の前の路地からフラッと姿を現す黒い影を見つけた。
それは希月がよく知る彼女の姿である。
「あ」
「あ……」
希月の姿を見つけ茫然と立ち尽くす『無月(aa1531)』
「おや、お二人さんも来ていたんだね」
『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)』が沈黙を破るように無月の肩を抱いた。
「せっかくだから、挨拶がてら飲みに来たんだよ、君たちは?」
「私たちもそんなところです」
苦笑いの希月。実際無月と仕事以外であうのは久しぶりなので半分パニクっている。
「ロクトさんはBARを経営していたのか」
無月が告げながら戸を押し開くとチリンとベルが鳴って温かい空気がこぼれてきた。
「いらっしゃいませ」
そう、うやうやしく一例をしたのは『レオンハルト(aa0405hero001)』
その目の前では『卸 蘿蔔(aa0405)』が突っ伏してうとうとしている。
「蘿蔔、お客さんだよ」
「ひゃい! すすすすみません、まだ全然人がこなくて、こちらです」
そうそそくさと蘿蔔はメニューと灰皿を持って奥の席へと四人を導いた。
確かに客はまばら、というか四人しかいなく、ロクトはでんわを切ると『麻生 遊夜(aa0452)』に向き直った。
「抜けた穴はまだまだ埋まりそうにねぇなぁ」
「……ん、優秀な分……どうしても、ね?」
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』がそうステーキにかぶりつくと遊夜はおかわりをたのむ。
「……ここも久しぶりだな」
そうグラスを煽る『柳生 鉄治(aa5176)』にロクトは告げる。
「お休みしてたからね」
「まぁ、心配しなかったと言ったらうそになる」
そう告げる鉄治の隣で『マリアンヌ(aa5176hero002)』がグラスを空にした。ロクトが新たな赤をつぐ。
「ていうか、すげえの飲んでるな」
鉄治も負けじとビールを飲み干した。
「そう? 精々一本であんたの年収くらいじゃない?」
そう高そうなラベルを眺めてマリアンヌは告げる。
「マジで!?」
「だいじょうぶ、うちにはそんなに高いのないから」
あってもでないしね、そう告げたロクトの表情は晴れやかであった。
● 続々と来店
「あ~、皆さんいらしてたんですね」
そう店内から明るい声が響く。『斉加 理夢琉(aa0783)』がアルコールに酔ったわけではないが、場の雰囲気に酔ったように『蔵李 澄香(aa0010)』や『小詩 いのり(aa1420)』を迎えた。
「あら、斉加ちゃん、というか見知った顔ばかりだね」
告げると澄香は視線を下ろす。足元では一緒に到着した『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』がちょこちょこパタパタと上着を片付けている。
「さむくなってきたねぇ」
「ふあ、澄香さんの手冷たい」
そう澄香に抱きかかえられるイリス。そんな澄香のかわりにいのりは抱えていた花をロクトに差し出す。
「はい、再開店祝い」
「ふふふ、ありがとう。二階に飾るわね。これは胡蝶蘭?」
「うん、花言葉知ってる?」
「なにかしら」
「花言葉は『幸運が飛んでくる』だよ。ホントは開店祝いに贈るものだけど、心機一転って意味で」
「ありがとう、私にぴったりね。あ。理夢琉さん、皆さんを二階に通してあげてくれる?」
ロクトの言葉に頷く理夢琉。一同席が決まりグラスを手にすると理夢琉の音頭で全員がグラスを打ち鳴らす。
「人間も英雄も関係なくみんなで笑いあえる、そんな未来を掴むために」
そのセリフに思わずいのりが苦笑いを浮かべた。
「そんな大げさな」
「いや、そうとも言い切れない」
『アリュー(aa0783hero001)』が淡々と告げる。
「もしかしたらこの中の誰かが……私が、ううん。この世界が消えてしまうかもしれない」
そうしんみりと告げた理夢琉だったが、顔をあげるとパッと笑みを浮かべる。
「けど、みんながいれば大丈夫だよね」
これまで数々の苦難を乗り越えてきたのだから。
「そうそう、私たち伝説のアイドルだし」
そう悪戯っぽく告げる澄香。その目の前にレオンが料理を並べていく。
「あら、レオ今日もバイトですか」
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は仕事を持ちこんでいるらしい、PCを眺めながら意識半分でレオンに声をかけた。
「上がったら参加するけどね」
そうしたの様子を窺いながら言葉を返すレオン。さっそく澄香が料理にかぶりつく。
「でも、アイドルやめちゃうんですよね?」
澄香が告げるといのりが頷いた。
「ボク達アイドルを引退するっていうのは前に話したね」
イリスがいのりを見上げるのでいのりはその頭をなでる。
「戦いが終わったら…………。もう秘密ってわけではないけど、アイドル引退した後は旅館の女将に戻るつもりではある」
澄香が言うとトイレに立った。
「でも、中途半端は嫌だから、やることを全部終わらせて有終の美を飾ってからだね。ロクトさんも応援してくれると嬉しいな」
パスタの皿を持ってきたロクトがその言葉に頷く。
「ええ、もちろん。それに遙華も今後どうするか考えてるみたいだし、いのりさんはやめたあとどうするとか考えてるの?」
「喫茶店での経験を生かして。澄香の旅館を手伝いたいんだ」
いのりは夢見心地で告げる。
「そのために今は接客サービスマナー検定とか、サービス接遇検定とか、販売士検定とか、経営に役に立ちそうな資格の勉強をこっそりしてるよ。調理師免許とかも取れれば良いなぁ」
「嫁入り?」
ロクトの言葉にトイレから戻った澄香が答える。
「婿入りかもよ?」
澄香の登場に慌てふためくいのり。
「はやいよ! え? 澄香には内緒だったのに。今の無し! うう、驚かせたかったのに」
「ははは、憂いやつじゃ~」
「おーい、ロクトさん、この酒あけていいのか?」
そう下から声がする。その声にあわててロクトは階段を下りた。
降りて見れば上の階のにぎやかさなど何のその、下はBARといった趣ある空気だった。ザラディアが一人酒dえ盛り上がっている以外は。
「君は混ざらなくていいのかい?」
ジュネッサが無月にそう問いかけると無月は首を振る。
「楽しい時間は楽しめる人たちと過ごしたほうがいいだろう」
その言葉にジュネッサは苦笑いを浮かべた。
「ボク達は、住む世界が異質すぎるしね」
頷き無月は平和を思う。こうして店の端で、皆が楽しく話をしているのを見ているだけで十分すぎるほど無月は楽しいし、幸せなのだ。
「幸せを分けてもらっている感じ、だね」
「そんなしみったれたことばっか言ってただだめですよ、おふたかた」
そんな無月の前の椅子を置くとザラディアが希月を座らせる。
ついでザラディアは降りてきたロクトに向けて瓶を振るう。
「おーい、ロクトさん、飲み比べしようぜ。つよいんだろ? なんでもウォッカ1瓶あけるとか」
「あけないわよ、私を何だと思ってるの?」
「優しく真面目な人、でしょうか」
希月が告げる。
「え? あ、ありがとう」
「真面目すぎるからあんなに思い悩んでまであのような危険な行為に及んでいたのか、と思っています」
「そ、それは感違いよ。あの子のためくらいにしかやらないと思うし」
「やはり、ロクトさんは遙華君の母親みたいな人だな」
無月がマスクをずらしてグラスの中身を口に含んだ。
「母親」
その微妙な響きに苦笑いを浮かべるロクト。
「遙華君の為なら命も投げ出しそうだと言う危うさも感じていた事は事実だ」
「それは的を射ていたわね」
「この世界からいなくなるとしたらどうするんだい?」
ジュネッサが問いかけるとロクトはザラディアの目の前にボトルとグラスを置いた。
「それは私のセリフよ。あなた達どうするの?」
顔を見合わせる希月と無月、そしてジュネッサ。
「とてもつらい気持ちになるだろうな」
無月の言葉に希月は頷いた。
「悲しいです、辛いです。ザラディア様には今まで何度も助けてもらいました。私のような未熟者が生きてこれたのもザラディア様が助けてくれたからです。だから……」
「大丈夫ですよ、希月様は一人でもやっていけますって。それに、消滅と言ってもこの世界から消えるだけですぜ。元の世界に戻っても希月様の事ぁ一生忘れませんよ」
「……そうですね。私もザラディア様の事は一生忘れません」
その言葉をきいて無月はロクトに言葉をかける
「我がの里にはいくつかルールがあるんだ。たとえば相手に敬意を払うこと」
ロクトが首をかしげる。
「ただ、私達は互いを呼び捨てにしている」
「そうだね、無月」
「実はこれは異例の事なんだ。私は全ての人達を守る使命を帯びた忍び。例え敵であっても救う相手だと考える以上、誰に対しても敬意と尊重の意を持って接する」
ロクトはこれまでの希月、無月の言動を思い出していた。
「だから、誰に対しても基本呼び捨てはしない。だが、ジェネッサは私の半身、もう一人の私だと思っている。彼女も同様だ、だから私達はお互いを呼び捨てにするのだ」
「お互い一つなんだから他人行儀な呼び方をやめよう、って言ったのはボクなんだ。まあ最初は呼び捨てにはぎこちなかったけどね」
ジュネッサはその時のことを思い出して吹きだした。
「もしジュネッサが消えれば半身がなくなるも同然だ……だが、それでも彼女は心の中にいる。心にいる彼女とは命尽きるまで離れはしない」
告げる無月にジュネッサがくすぐったそうな表情を返す。
「そのためには早々に戦いを 終わらせなければな」
「戦いが終わったらあなた達はどうするの?」
希月は真っ直ぐロクトを見すえて告げる。
「月の忍びとしての使命、罪なき人々を陰ながら守りたいと思っています。例え『王』との戦いが終わっても人々を脅かす闇が消える事はありませんから。」
無月が言葉を継いだ。
「『王』を倒しても全ての争いが終わり、平和になるわけではない。私達は今までどおり闇に生き、人々の平和と笑顔を守る為人知れず果てるまで戦うだろう。それは、誰かがやらねばならない事だ」
頷く希月。
「……ですが、私は一族の長の娘。いずれは里に戻らされるかもしれません。私自身は忍びの使命に殉じたいと思っているのですが……難しいかもしれませんね」
「そういえば、そうだったな」
そう無月がハッとした顔を見せる。ザラディアが一瞬それを驚いたように見て希月に視線を移す。
「俺としては、里に戻るのも悪くねぇと思っていますがね。使命に殉ずる、と言う事はいずれ戦いの中で死ぬ、と言う事ですからねぇ。ロクトさん、あんたはどう思う?」
「私は、生まれ持った使命って存在すると思うから、それも希月さんの道だとおもう。それに選ばされた道の中でも自分らしさは見つけられる者よ。
それより英雄のみんながどう思ってるか気になるけど」
その言葉にジュネッサが答えた。
「ボク達は未来へ生きる人達の捨て石。守った人達が平和に生きて未来を紡ぐ、それでボク達は満足なんだ」
ガルディアはしみじみと頷いた。
● もし戦いがおわったなら
二階の少女たちはわりと賑わっている様子。それを耳で聞いて遊夜は負けていられないと皿洗いを開始する。
そう今日は店内スタッフとしてここにいるのである。
ちなみにユフォアリーヤはウェイトレス。
「このままだとすぐ来そうだな」
「……ん、今のうちに……用意しておく?」
そう先ほどの遙華とロクトのやり取りを思い出す遊夜。お腹を空かせてくるだろうからお肉を焼いておこうという話になった。
食べなかったらユフォアリーヤが食べるし。そしてユフォが頼まれたドリンクを上に持っていくとイリスが神妙な面持ちで全員の前に立っていた。
「もし、戦いがおわったならどうするか! ですよ」
「私がいなくなれば、以前までのイリスなら人間として再起不能だっただろう」
「今でも再起不能だよ、お姉ちゃん」
「いや、そんなことはない。今は家族以外にも絆べたじゃないか」
アイリスがその場にいる全員を見渡す。澄香、いのり、蘿蔔、理夢琉。友達ならもっとたくさんいる。
「最低でも戦士として再起不能、社会復帰不可能くらいはつくかもしれないが」
「それはまずいねぇ」
澄香が苦笑いを浮かべた。
「だがそうと自覚していてもイリスは戦うのをやめないだろう」
そこまで告げてアイリスはふふっと笑みを浮かべた。
「まぁ、なるようにしかならないからね」
イリスは技術に関しては器用に立ち回るが、生き方はどうしようもなく不器用だから。
「できる範囲でなら、よりよくする努力をしていくつもりだけれども」
イリスは頬をかく。
「今からもしもに怯えて戦えないなんて笑い話にもならないからね」
はははといつものようにアイリスは笑った。
「英雄がいなくなったら、まあ、困るね。事務とかの面で」
そう告げるのは澄香。同じようにはちみつ入りヨーグルトを持ってきた蘿蔔も抗議の声を上げる。
「い、嫌です…………レオもなっちゃんも、いなくなったら…………私生きていけないです。それに…………英雄さんの友達もいっぱいいるのに…………」
蘿蔔は悲しそうな顔を見せると手を大きく振って話をうやむやにしようとした。
「だいたいこんな楽しい場所で戦いが終わったらなんて話は無しにしましょう。ほら、私も飲みの席に入りますから。はいすみちゃんあーん」
早口に話題をそらそうとする蘿蔔にレオンは溜息をつく。
「仕事がめんどくさくなっただけだろ?」
「違います! もうドリンクも食事もできったから忙しくなるまで休んでていいって言われたんです」
「なんでそんなにすずちゃんはこの話をするのが嫌なの?」
いのりがそう問いかけた。
「だって、あからさまに死亡フラグじゃないですか」
「でも将来を見据えるのは大事だよ?」
「特に。俺たちもいなくなるかもしれないんだ。その後のことをきかせてくれ。ろくに考えがないなら俺が考える」
レオンの言葉にもじもじと何かを口に出そうとする蘿蔔。
「いつか音楽教室開きたいなーって思ってまして。今も大学でお勉強してるのですよ。あ、学部は違うけど雨月さんも一緒の大学なのですよ。ね?」
「ええ、そうね、春からよろしくね」
その声を聴いて全員が飛び上がるくらいにおどろいた。
「水瀬さんいつの間に」
そういのりが問いかけると『水瀬 雨月(aa0801)』は少し怪訝そうな顔をする。
「ついさっき。というよりそんなに存在感ないかしら」
そう首をひねる雨月だ。
「まあ、そんな事になったらライヴス諸共消えそうな気もするから色々大変な気もするけど。英雄『だけ』消えるとも考え辛いし」
それは確かに、そう全員が黙りこくってしまった。予想より大変な世界がやってくるのかもしれない。
「でも、私戦いが終わったら旅に出てみようかとも考えているの」
雨月の言葉に蘿蔔が叫びをあげる。
「え! 大学はどうするんですか」
「さっそくだけど、休学?」
「お。お友達が雨月さんしかいないんですよ~」
そう、しなしなと倒れ伏す蘿蔔。
「そんな事よりはポジティブな未来を語ったほうが建設的だね」
アイリスが話題をかえた。
「戦いが終わっても一緒にいられたら……なにしよっか?」
イリスが問いかける。それも十分あり得る未来だ。
「特にイリスは戦い続きだったからねぇ。下手な傭兵とかよりも戦い漬けだ」
「いまさら普通の女の子になっていいよとか言われたとしても……こまるだけだよね?」
それは英雄が残れる可能性があるならそれをみすえて全力の努力をするという意味でもある。
「私も人間社会などとは感覚がずれているからね」
「けっきょく、今と一緒で家族そろってどこかの大自然の中かな?」
イリスが首をひねった。
「さて、アイドル業とかもあるしねぇ。私たちは少し特殊だが」
「おてつだいー、お~て~つ~だ~い~」
そう耳をふさいで声高にイリスが告げる。
「せかいはへいわになるのかな?」
「まぁ、ならないだろうね。別の原因で争うだけだよ。競い、挑むのは生物として健全なことさ……人間は少々派手に争うが」
「それもそうとは言い切れませんよ」
そう階下から言葉が響いた。ゆっくりと階段を踏みしめてあがってくるのは『魅霊(aa1456)』その肩を『R.I.P.(aa1456hero001)』が支えている。
「魅霊ちゃん」
澄香と蘿蔔が歩み寄ったが、魅霊はそれを笑顔でいさめる。
「大丈夫、まだ本調子ではないですけど。日常生活は送れるくらいに回復するそうです」
そう告げつつ魅霊はゆっくりした動作で席に座る。
「魅霊さん、調子はどう?」
ロクトがおしぼりとグラスをさしだす。
「色々と気遣うことが増えました」
淡々と魅霊は自分の状況について話し始めた。
「例えば火傷の多さ故か、今の私は高温に弱くなりまして。暑いと感じたらすぐに冷やさないと大変なことに」
「氷! 氷持ってきてください」
蘿蔔が飛び出そうとしたがR.I.Pに止められていた。
「その手……」
いのりが痛々しそうに表情を曇らせた。
「右手……今は義手ですが、元の腕の感覚は未だに残りっぱなしで」
ファントムペインというやつだ。これが厄介だと魅霊は笑う。
「物に触れようとするときには感覚のずれでよく苦労します。今やっているゲームも……」
そう義手を動かそうとする魅霊。
「この通り、細かいものはてんで掴めない。……まあ、物自体がよく見えていないというのもありますが」
「見えないの?」
澄香が問いかける。
「視力は辛うじて左目だけ、皆さんの大まかな輪郭が見えるだけ。表情などは……顔同士が触れそうなくらいに寄せれば、或いは」
そう魅霊は澄香にくっつきそうなくらい顔を寄せた。
「……素の私の目では、姉さんの笑顔を見られなくなった……というのは、少し残念です。ただ……どうしてでしょう。
これだけ喪うものが多かったというのに、今はとても気分がよいのです」
その言葉に澄香は首をかしげた。
「安心感というのか、心地よさというのか。……この世界で、私は生きていて……いいのですね」
「当たり前だよ、魅霊ちゃん」
そう澄香は魅霊の頭をなでる。
● 大人な時間
ちょうどロクトとゲームをやっていて負けた直後、このピンチをどうやって乗り切ろうか考え中であった。
「ふふふ、あなたが罰ゲームこなす自身が無いなら私が言ってあげましょうか」
「いや、待て、おい……」
「あらどうしたの?」
皿とグラスを片手に鉄治を見つめる。その視線の間にマリアンヌが割って入った。
「コイツ、生意気に年上の大人でハイソめなのが好きなんですって」
「おまっ!?」
マリアンヌの口をふさぎ損ねた鉄治。
「アレかしらね。人間は自分にないものを求めるってことなのかしら」
「そうかしら? 鉄治君はとってもいい男だと思うけど?」
赤面する鉄治である、思わず何も言えなくなる。そんな鉄治の耳元でマリアンヌハこうささやいた。
「…………骨拾ってあげるから、突撃すればいいのに」
「アホか!?」
「あなたロクトのこと見過ぎなのよ、で、なにがそんなにあんたをお熱にさせたわけ?」
「それは、その」
初めて会った時のデートが忘れられないとは口が裂けても言えない鉄治。
「ふぅん。なるほどねぇ」
しかしマリアンヌはその光景をスマホで眺めていた。あの依頼は企画でもあったためインターネットでみられるのだ。
「お、おい!? ていうか、何でお前がそれ知ってるんだ!?」
「何ででもいいでしょ。…………うわ、何あんた、モロに緊張してるじゃないの」
にたりと笑うマリアンヌ。
「…………うっせえ。」
「ははぁ、予想外にストライクゾーンど真ん中なのが来て焦ったってとこかしら」
「おまっ!?」
ロクトにはファーストインプレッションからやられっぱなしなのである。
「ロクトさんの印象かぁ」
その話を聞きながら遊夜がそうつぶやいた。
「第一印象か、キャリアウーマンだとは思ったな」
「……ん、実際……敏腕だったものね、色々と」
そうユフォアリーヤがくすくす笑う。
「それ以降はそうだな……徐々に苦労してるとこ見たり、遙華の姉だなぁとか思ってたな」
「ほんとう? うれしいわ」
そう微笑むロクト。
「……ん、付き合い長くなって……内面が見えてきたものねぇ」
「そんなロクトさんこそ、どうなのさー」
トイレで降りてきたいのりが肘でロクトの脇をつつく。
「どうって?」
「気になる人とか」
いのりの言葉で鉄治が背筋をしゃんと伸ばす。
「うーん、澄香……」
その時いのりの顔から表情が消えたという。
「さんが教えてくれたら教えてあげる」
トイレから戻ってきた澄香がきょとんとロクトを見つめる。
「そうだね、いのりとだったら結婚しても構わないね」
いのりの頭から蒸気がぽんっとでた。冗談なのか。本気なのかいのりは測りかねている。
「となると外国籍にならないとなぁ」
そう、はははとアイリスのように笑いながら澄香は階段を上がっていった。
入れ替わりに下に降りてきたのはアリュー、しかし足取りがおぼつかない。
すると突然アリューがロクトの手を取った。
「ロクト……この気持ちは何だと思う?」
アリューの言葉で鉄治が背筋をしゃんと伸ばす。その鉄治の背中を指でなぞると鉄治はその場に突っ伏した。
「遙華に会うのをためらっていた、弱いロクトを見たとき抱きしめて頭を優しく撫でてやりたいと思った」
「あなたは優しいのね。まるでユニコーンみたい」
なんだかいい感じの二人、不穏な空気を察して降りてきた理夢琉は額を押さえてため息をついた。
「こういう感情がわからない……。これはなんだ、俺はきっとロクトの事を放っておけない。だから」
誰もが固唾をのんで見守る中、アリューは告げる。
「俺の……お姉さんになってほしい!」
全員がその場でずっこけたと思う、理夢琉以外。
「アリューがちょっと変……」
「ちょっと変で済ませる理夢琉さんもへんだよね」
そういのりが苦笑いを浮かべる。
「ロクト、今日は大丈夫か? 辛いことはなかったか?」
そうロクトをじっと見つめるアリューを回収して理夢琉は言った。
「ああ、ごめんなさい、すぐ元に戻ると思うから」
「構わないわよ」
「でも、うまくいきそうなら言ってください、ウエディングドレス、作りますよ」
そう悪戯っぽく告げるとロクトが呆れたように言った。
「あら? あなた達が付き合ってるんじゃないの?」
「あら~、ロクト持てるわね」
そう茶々を入れたのはマリアンヌ、隣で鉄治が心労に耐え兼ねて果てている。
「そう言うマリアンヌさんは、どうなの? 鉄治君いい感じじゃない?」
「パッとしない男性はちょっと」
その言葉にとどめをさされる鉄治。
「ランスロ、シャルルマーニュ、トリスタン。生意気に私を振ったのもいたけど、みんないい男だったわ
「……誰だ、サッカー選手か?」
「…………」
侮蔑の表情で鉄治を見るマリアンヌである。その二人の様子にお腹を押さえて笑うロクト。
そのロクトの袖を引いたのはクラリスである。
「あら。何かしら」
「水を差すようで申し訳ありませんが」
そう裏でPCを広げて見せるクラリス。
「あなたは一度人類を裏切りました」
「そう言われると胸が痛いわね」
「しかしこれをガデンツァによる『自分の意思で裏切ったと思わせる精神支配』の『可能性』を挙げ、支配下の中でもこちらの勝利の為に抗った。と。
この見解をHopeで公表出来るように今動いています」
「だれと?」
「もちろん遙華さんとです」
「あなたにはいつも頭が上がらないわ」
実際この手の運動に関して、ロクトはしたくてもできない状況だ。
少しでも関与が知られれば世界の心証はよくない。
「いえ、見返りもいただきますよ。カンタレラをbarだけではなく、ミニコンサートができる会場として提供していただきたいのです」
「へぇ」
「新人アイドル達が気楽に使えるような場所を確保しておきたくて。勿論、コンサート会場の場合はお酒は禁止になります」
「それに関しては願ったりかなったり、うちも儲かるしね、ただ路線変更となると」
「改装費用ですか? わたくしがロクト様の為に動いた一連の労力と相殺ということで。本当、あっちこっちに働きかけたので今後は睨まれましたね」
お金は持っているのでしょう? とにっこり笑うクラリス。
さすが、どこまでも抜け目なく完璧だ。
そんな二人の密談の間に遊夜とユフォアリーヤがしみじみつぶやいた。
「心休まるのは何時になるやらだな……」
「……んー、取りあえず……遙華のお仕事、削減から?」
その時彼女が到着したらしい、本日最後のお客。遊夜が遙華を向かえた。
「お、ようやく登場だな」
告げると遊夜は遙華の頭をなでる。
「鞭の後には飴がないとな?」
「……ん、よしよし……頑張った頑張った」
ユフォアリーヤはそう冷たくなった耳を温める。
「ん? ん?」
まんざらでもなさそうな遙華であった。
● 子供の時間
「ところで何の話をしていたの?」
遙華がコートを脱ぎながらロクトに問いかけるとロクトはこう告げた。
「英雄がいなくなったらって話」
その言葉に驚いた遙華は麻生夫妻を交互に見比べこういった。
「あなた達が一番深刻なんじゃ」
その言葉に優しく頷くと遊夜は告げる。
「そうだな……今背負ってるものをキッチリ送り届けた後で、迎えに行くさ」
ユフォアリーヤを見つめて。
「……ん、あの世でも……未来でも、異世界でも……お互いに探して、また巡り合うの」
「うう、二人とも……」
そう遊夜とユフォアリーヤへ腕を広げて抱き着く遙華。
「あとはお互いの秘密をかけてゲームをしていたわ」
ロクトが告げてカードを捲ると蘿蔔の負けが確定したらしい、歓声がわっと上がる。
「遊びに混ざれない働き者のレオ君のために、罰ゲームの権利譲ってあげるね。秘密をどうぞ」
困った蘿蔔はめいいっぱいの可愛さをこめてそう告げた。
「……。この前蘿蔔が。罰ゲームは『好みのタイプ』で」
「ふふふ、どんな話を聞かせてくれるのかしら」
「好み……ね。深く考えたことなかったな。なんか…………そういうの、他人事というか。美人だなーとか思うことはあるけど」
蘿蔔がキラキラした瞳で見つめているのが気になってレオンはトレイを押し付ける。
「強いて言うなら…………蘿蔔みたいな生き物のことも、妹みたいに大事にしてくれる懐の深い人かな」
「それなら遙華じゃない?」
「私みたいな生き物ってなんですかね? 普通に蘿蔔でいいじゃん」
「ロクトさんも蘿蔔も同時にボケるのやめてくれ」
そのレオンの反応に満足したのか蘿蔔は遙華の手を握った。
「ちべたっ。さぁ……遙華の好みのタイプを吐くのです。というか、気になる人とかいたりするんですか?」
「あー、わたし誰かと付き合ってもいいの?」
「恋人ができたら、きっと寂しさのあまり泣く。めちゃくちゃ泣く」
「そうよね?」
そう両手を取り合って喜ぶ少女たち。
「あら、その輪に私も混ぜてくれないの」
「雨月!」
遙華が嬉しそうに雨月の手を取った。
「遙華お疲れ様、実は今から呼び出されたらどうしようかと思っていたわ」
「そんなことしないわよ、あなたがここにいるの知ってるし」
「ロクトさんを頼れなくなった分ね、誰かを頼るかと思って」
「確かにそれは……」
遙華の目がその場にその場にいる全員を見る。
「さて、遙華。駆けつけいっぱいじゃないけど」
ゲームをしましょうか。
そう雨月がトランプをシャカシャカする。
結果は雨月の負けである。
「うう、意外と強いのね」
「ふふーん、じゃあ、好きな異性でもおしえてもらおうかしら」
そう遙華がテンション高めに告げると雨月は「タイプね」と言い直していた。
「私は互いに尊重し合える。一緒にいて安心できる…………辺りかしらね。
他にもあるけど、それ言っていたらキリ無いわね。妥協できるラインというのが色々あるでしょうし」
「意外といろいろ考えてるんですねぇ」
蘿蔔が感心したように告げた。
「はたしてそれはどういう意味なの?」
「そして、遙華。あなたはさっきうまくはぐらかしたと思っているみたいだけど。逃がさないわよ。
遙華はどうかしら?令嬢なのだからお見合いとか社交場とかで何かありそうなものだけど」
「えーっと。その」
「異性が駄目なら同性でも良いわよ?」
と告げると遙華は高速で手を振った。
「いや! 私は、今は仕事が恋人だから」
「そうです! 遙華は仕事と付き合ってればいいんです」
蘿蔔はそう言って遙華を横取りするように抱きしめる。
「そう? その反応でもう同性だと言っているようなものだけど」
「もう! 助けて澄香!」
そんな最高潮の盛り上がりを見せるBARカンタレラ。
そのすみっこで『アムブロシア(aa0801hero001)』は蜂蜜酒をロックで揺らしている。
もの想いに浸りながら珍しくはしゃぐ雨月を見て小さく笑うのだった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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