本部

【異界逼迫】連動シナリオ

【界逼】アクエキ

雪虫

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 6~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/11/15 16:28

掲示板

オープニング


「いやーどうもお疲れさん。こんな雑魚ごときの為にはるばる超ご苦労様です」
 言って少年は男を踏む足にさらに力を込めた。仲間達も既に動く事もままならぬようで、踏み付けられてはいないにしろ、アスファルトに転がったまま起き上がる事も出来ずにいる。少年は、従魔に憑かれている、操られていると自称する少年は、厭らしさだけを押し固めたような表情でにやにや笑う。
「別に俺なんて放っておけば良かったのになあ。今すっげえ大物来てるらしいじゃん? 俺なんて雑魚後回しでもいいだろうに」
「そうは行くか……お前を放置すれば罪のない人々にどれだけの害を及ぼすか……!」
「だ、か、ら、そんな超少数なんて見捨てりゃいいじゃんって言ってんの。数人より世界が大事だろ? 世界の前には数人なんてごくごく些細なもんだろう? 数人にかまけて世界滅んじゃ本末転倒ってヤツだろう?」
 そうそう所でさあ、と少年は何かを取り出した。注射器らしきものが四本。その中身の正体を、男はすぐに知る事になる。
「狂化薬って、知ってる?」


 ステージ……従魔に憑かれていると自称する少年、逆萩真人が指名手配となってから一月が経過したある日、監視カメラがステージらしき少年の姿を捉えた、との連絡が入ってきた。たまたま近くにいたエージェント四名が現場へと急行したのだが、突如通信が途切れ、以後消息不明となった。
「任務は消息不明となった四名の確保だが、一般人が巻き込まれていた場合は彼らの保護も任務となる。十中八九ステージが関係していると考えられる。皆慎重に……」
「緊急連絡! 消息不明のエージェント四名が、市街地で暴れているとの事です」
「なんだと!」
 オペレーターが説明を止め映し出した映像には、確かに市民に襲い掛かるリンカー四人の……消息不明となっていた四名の姿があった。映像を凝視していた李永平が、顔をきつくしかめながらオペレーターに声を飛ばす。
「おい、狂化薬の解毒剤は用意出来るか」
「狂化薬?」
「以前マガツヒが使っていた正気を吹っ飛ばす劇薬だ。俺もパンドラに飲まされた事がある。アレをステージが持っていて、連中に使ったとしたら」
 狂化薬の解毒剤は当時完成し、更なる研究も重ねて持ち出しも可能となったが、すぐに用意出来るのは六本だけという事だ。エージェント達は送られてきた注射器をひっつかみ、現場へと向かうべく急いでバスに乗り込んだ。
 

 ショッピングモールは恐慌で埋め尽くされていた。血の匂い。呻きながら転がる人々。狂乱したエージェントはどうやら手当たり次第に暴れているだけのようで、一個人を集中して狙っているわけではないようで、死者は未だ出ていない。
 しかしあくまで「未だ」である。当たり所が悪ければ、傷付いた者達がもう一度でも攻撃されれば、彼らはあっという間に死者に変わってしまうだろう。既に永平と共鳴した花陣が内から声を漏らす。
『間違いねえ、狂化薬の症状だ。という事はステージのヤツが……』
「あ? 俺がなんだって?」
 そこに、逃げ回る人混みの中から、何の気負いもない様子でステージが姿を現した。面を外した、剥き出しの下卑た表情に、永平が怒りも露わに吠え猛る。
「お前がこいつらに狂化薬を打ったんだろうが!」
「知らねえよ。証拠もねえのに人を疑うのやめて頂けます? そいつらが勝手にトチ狂ってオタノシミしてんだろうが」
 などとステージは嘯いたが、何かを思い付いたらしい。ニヤッと厭らしく笑うとパーカーに両手を突っ込んだ。そして左右のポケットから注射器を一本ずつ見せて、またポケットの内へと戻す。
「それが狂化薬か」
「さあねえ。知りたきゃ奪って確かめろよ。でもまあ虎穴に入らざればなんとやらってなあ。手を突っ込もうとするなら、それなりのリスクは覚悟して然るべきじゃねえの?」
 言ってステージは手甲足甲を構えてみせた。あれが狂化薬であればステージに持たせている訳にはいかないし……何に悪用されるか分かったもんじゃない……奪えればステージが投与したという証拠に成り得るかもしれない。
 だが逆に狂化薬を打たれてしまう危険もある。ステージはそれを考えて、狂化薬を奪おうとする所を返り討ちにするつもりで、注射器を見せびらかすような真似をしたのだろう。乗るべきか否か。またエージェント達がステージに敗れた経緯も気に掛かる。ただ単に負けただけなのか、他にも従魔がいたのか、それとも。
「おいおいぼーっとしてる場合か? このままじゃマジで死人が出るし、罪のない一般人を救おうとした連中がヒトゴロシになっちまうぜ? つってもまあ赤の他人が死人になろうがヒトゴロシになろうが、お前らにはどうでもいいか」
 などと、顔をこれ以上なく歪めてステージは嘲笑する。挑発に乗る訳ではないが、確かに突っ立っている時間はない。
 床に転がる人々に、武器を振り上げる狂乱者に、そしてステージに、エージェント達はそれぞれ駆け出す。

●敵情報
 ステージ
 両手両足に従魔を憑けた「人間」で、従魔部分以外は生身(攻撃が当たると一撃で死亡)。リンカーのみ攻撃しようとするが流れ弾が発生する(一般人に当たる)可能性はある。狂化エージェント全員の暴走が止まるor手甲足甲の残数二体で逃亡。死亡すると……
・へらず口
 「逆萩真人」を「敵」とする/「殺害もやむを得ない」とする理論に穴があると反論
 
 手甲足甲
 アメーバ型従魔。両手両足合わせて1体ではなく個々に独立した従魔(計4体)。残数二体になるまでは逆萩真人への攻撃をカバーするが……
・優秀な細胞
 触れた対象(逆萩真人含む)か自身のBS回復
・壊造:未熟
 触れた対象か自身のステータスを強化or新たにスキル作成。1体につき1回使用可
・孕兆:跳
 細胞を飛ばし植え付け体内を少しずつ破壊。【減退(1d6)】付与。射程15sq。このスキルは重複する(例:減退1負荷中に減退2を喰らうと、重複して減退3になる)BS回復スキル以外回復不可
・衝撃吸収
 柔らかい肉で衝撃を吸収しダメージ軽減
・ヒトゴロシになる?
 牽制や足止めなど「殺害を意図していない攻撃」が、判定の結果逆萩真人を殺害し得る攻撃だった場合、攻撃者の脳に人間を殺害するイメージが投影され意識を奪われる(【洗脳】付与)(「殺害を意図した攻撃」の場合この限りでない)

 狂化エージェント
 狂化薬を飲まされ正気を失い、目に映る者を無差別攻撃する。構成は以下
・ドレッドノート×2/大剣/怒涛乱舞×1、ストレートブロウ×2、烈風波×3
・ジャックポット/弓/ストライク×3、トリオ×1、アハトアハト×1
・カオティックブレイド/銃/ウェポンズレイン×2、ストームエッジ×3、ライヴスキャスター×1

解説

●目標
・狂化エージェントの暴走を止める(一般人に死亡者が出れば失敗)
・ステージから狂化薬を奪う(奪取が不可能であれば破壊する)
・EX:ステージの逮捕

●戦闘区域
 ショッピングモール。処理上25×40sqで計算(場合によっては拡大する)。配置は以下の通り(左右には逃げ惑っている一般人多数)

□□□□□□□□□□
   ●○      ☆:PC初期位置
 ★    ●    ★:ステージ
     ○     ○:負傷した一般人(自力では動けない(計4人)
 ☆      ●  ●:狂化エージェント(計4人)
    ○●  ○  
□□□□□□□□□□

●狂化薬/解毒剤
 共に注射器型。サブで取り出しメインで使用/仕舞う場合はサブアクション。命中判定で失敗した場合は投与出来ない。狂化薬/解毒剤共に破壊されると以降使用不可
 PC/NPCが狂化薬を打たれた場合、徐々に正気が蝕まれ3Rで暴れ出す(敵NPC化)。そうなった場合は解毒剤を打つか戦闘不能にするか以外止める手段はない
 狂化された者に解毒剤を打った場合、徐々に動きが鈍くなり3Rで正気に戻る(狂化エージェントの場合NPC化)

●NPC
 李永平&花陣
 ドレッドノート。ステージ対応に当たろうとするが、PCの指示があれば従う
 武器:釘バット「我道」
 スキル:ストレートブロウ×2、烈風波×3、スロートスラスト×2

●その他
・解毒剤六本をどのように割り振るかは自由に決めて頂いて構いません
・使用可能物品は装備・携帯品のみ
・非共鳴時はステータスが「非共鳴状態」となり、スキルは使えません/ライヴス性の攻撃ではないため従魔・リンカーにダメージは与えられません
・能力者と英雄の台詞は「」『』などで区別して頂けるとありがたいです
・装備力超過にご注意下さい(詳しくはスポットルール【装備の注意点】)
・プレイングの出し忘れにご注意下さい

リプレイ


「逆萩兄弟の事を調べてもらいたい?」
 職員の言葉に沙治 栗花落(aa5521hero001)は頷いた。現場に急行しようという時の、解毒剤を待つわずかな間。
「構わんが、すぐには調べられないぞ」
 戻ってくるまでに分かればいい、と栗花落は付け足した。パンドラの器であった兄が死んでいるのは間違いない。
 ただ本人の、『逆萩真人』の言い分通りなら弟の方は生きた人間だ。
 これが何を示すのか。

 ショッピングモール。栗花落は周囲を見渡し人の多さに目を細めた。
『( 随分と人が多いな……意図的に此処を選んだのか? 巻き込まれると面倒だ)』
 温羅 五十鈴(aa5521)は栗花落の声に答える代わりに駆け出した。足を動かす前に、ステージを一瞬だけ見つめ。
 変わらず彼個人には敵意も嫌悪もない。
 ……ただ。聞きたい事は、ある。
 話が出来たら良いなと、そう思っている。
「(あなたの言うお兄さんの両手足の件。……分かりました、信じましょう。
 ……疑うのは、苦手で)」
 
 その心中が、当のステージに聞こえる事はないけれど。


「がァうぅゥッ!」
 獣のような声を上げ、中間地点のドレッドノートが武器を振り上げようとした。エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001)が、可憐な少女の装いで憂い気に青い瞳を細める。
『(戦闘不能にしてしまった方が早いのに、全員に解毒剤を投与なんて皆様お人好しですねぇ)』
 そして溜息を一つ吐く。
『(まぁ正気に戻れば人手が増えますし、利用価値があるので良しとしましょうか)』
 エリズバークは手をかざし、蹲る一般人の前にインタラプトシールドを構築した。一瞬で蹴りをつけたいが距離があるし、このままでは一般人が犠牲になるので仕方ない。
 しかしインタラプトシールドはダメージを軽減するスキルであり、ダメージを完全に防ぎきる事は出来ない。いくら軽減されたとは言え暴走リンカーの攻撃が、しかも負傷した一般人に命中すれば耐え切れる保証はない。
 だがもちろん、エージェントのターンはこれで終わらない。全力移動した木陰 黎夜(aa0061)が細い身体を割り込ませ、禁軍装甲を衝突させて狂化者の大剣を妨げた。インタラプトシールドによりダメージはさらに軽減される。ドレッドノートが大剣を押し付けながら吠え猛る。
「グァぁ……ガぁアッ!」
「……狂化薬……しばらく聞かないと思ったら……まだ存在してたんだ……」
 盾と剣が擦れ合ってガチガチと音が鳴る。アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)が黎夜の内から声を掛ける。
『黎夜、止めるぞ』
「うん……許しちゃ、ダメだ……」

「永平、共鳴解除して、左右で逃げ惑ってる一般人の対応をお願いしてもいいかな?」
 プリンセス☆エデン(aa4913)はそのように永平と花陣へと頼んだ。虎噛 千颯(aa0123)も快活な笑みを浮かべて言葉を重ねる。
「永平ちゃん、あっちは頼んだぜ」
 永平は一つ頷くと、花陣と身を二つに分けて左右へと走っていった。それを見たステージが嘲るように顔を歪める。
「共鳴解除して攻撃喰らったら一発で死ぬ可能性がある。それを分かった上でそんな事頼んでんだろうなァ!」
 ステージは永平に右の手甲を向けようとしたが、そこにスパーンシールドを構えたGーYA(aa2289)が躍り出た。孕兆を盾で受け止めながら注意を自分に引こうとする。無月(aa1531)が策を立てている。そのフォローのため、足止め役が一人だけと思わせるための会話と牽制。
「ステージ、お前、監視カメラ利用しただろ。命を物のように扱い殺すのがマガツヒなんだろ」
 命は心、奪うなら背負う覚悟で挑む。マガツヒにはそれがないと言外にそう告げる。
「逆萩真人、君は生きたいか?」
 ステージにでも従魔にでもなく『逆萩真人』に問い掛ける。返事はない。だがGーYAは思う。彼は従魔の檻の中絶望を見続けているだろう。(以前の俺の様に)。
「ステージ、それ渡してくれないか。真人に惨劇を見せ続けるのはやめてくれ」
 真人を救うために動く。GーYAはその想いでステージの濁った瞳を見つめた。対しステージは歯を剥き出して醜く笑う。
「従魔にそんなオネダリして、聞いてくれると思ってんの?」
 
「ぁガァアッ!」
 ジャックポットが叫びながら女性に弓を引こうとした。バルタサール・デル・レイ(aa4199)は一瞬思索する。フラッシュバンを使えば目潰しは出来るだろうが、目が眩んだとしても攻撃はしてくるだろう。
 故に、威嚇射撃で狙いを逸らす。同時に五十鈴が地を蹴って女性を背の後ろに庇った。威嚇射撃が功を奏し、ジャックポットの放った矢は明後日へと突き刺さる。

 エデンはカオティックブレイド目指して駆けていた。他の二人のように、いつ彼の持つ銃が弾丸を吐くか分からない。
「(狂化してるとはいえ、あまり強烈なダメージを与えたくないんだけど)」
『迷っている暇はありませんよ』
 Ezra(aa4913hero001)の声に「分かってる!」と短く返し、ライヴスを集中させる。リーサルダークなら長く気絶させられる。
「だから、ごめんね!」
 塗り潰す程の黒い闇がカオティックブレイドを覆い隠した。どうやら成功したらしく、銃を持ったままの腕が力なく垂れ下がる。
 日暮仙寿(aa4519)はすかさず距離を埋め、カオティックブレイドの腕に解毒剤を突き立てる。琥烏堂 為久(aa5425hero001)もまた、もう一人のドレッドノートを止めようとリーサルダークを打ち放つ。
 だが、こちらは上手くいかなかったようだ。ドレッドノートは闇の中から飛び出ると、喉が裂けんばかりに咆哮しながら怒涛乱舞を繰り出した。刃が男性へと迫る、瞬前、千颯が飛盾「陰陽玉」を繰って大剣と衝突させた。白虎丸(aa0123hero001)と同じ金色の眼が険を滲ませる。
『そう上手くはいかぬでござるか』
「でも、早く止めなきゃいけないんだぜ」
 
 無月は息を潜めていた。イメージプロジェクターで怪我した一般人に変装し、さらに潜伏で姿を隠して。
 助けなければいけない人達がいる。その身を賭して助けようとする仲間達がいる。私達は闇に生きる者の流儀で戦おう。
『ボク達だからこそやれる事を、ね』
 ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)の声を受けつつタイミングを見計らう。ステージ――逆萩真人の相手をする。先ずは狂化薬奪取が最優先。ステージの意識がGーYAに完全に向いたタイミングで、無月は少年の背後へと回り込む――
「一般人が、そんな早い動きをするかよ!」
 瞬間、ステージの言葉と共に左の足甲が飛んできた。潜伏が見破られたのか、ステージの目を通して発見されたのかは分からないが、ステージの左脚は正確に無月を捉えていた。
 だが蹴りが入る直前、無月の姿は影に溶けるように揺らめいた。そして次の瞬間にはステージの背後を取っていた。ステージのパーカーを強く引き、伸び切った先にナイフでわずかに傷をつける。そのまま服を裂こうとしたが、その前に今度こそステージの蹴りが叩き込まれた。
「おいおいアンタ、一体どこの追いはぎだよ!」
 ステージは脚を挙げたまま侮辱するように吐き捨てた。対し無月は、ジェネッサは、揺らぐ事なく己の信念を口にする。
「悪党みたいなやり方だ、だが、私達は自分を正義の味方だと思った事はない」
『ボク達は人の数だけある正義ではなく、不変の信念である愛のために戦うんだ』
 彼女達の目に淀みはない。その迷いなく強い言葉に、しかし少年はせせら笑う。
「愛のためならやり方は問わねえってか。はは、うちの親もそう言ってたわ」


 カオティックブレイドは完全に気絶していた。これ以上何もなければしばらくは目覚めないはずだ。
 仙寿はエデンにその場を任せ仲間の援護に向かいつつ、密かに真人をハンディカメラに収めていた。清十郎の力は愚神の力を意識ごと取り込んで得たものらしいが、真人はちゃんと従魔を御しているのか? 悪意の源は……やっぱり兄に関係するのか? 真人の狙いは狂化エージェントが人を襲う事、エージェントを攻撃する俺達を一般人に見せる事で、H.O.P.E.もマガツヒと変わらないと示す事か?
「え、ええー。どうしようー」
 エデンはきょろきょろ辺りを見回す。エデンも仲間の支援に向かうか、あるいは動けない一般人を避難させようと思っていたが、確かにカオティックブレイドを放置しない方が良さそうだ。
 だがそうすると一般人の避難が後回しになる。エデンはしばし悩んだ末、カオティックブレイドに付く事にした。けれど一般人を放置する訳にもいかない。パニックになってるかもしれないからと、エンジェルスマイルで安心感を与えながら話し掛ける。
「暴れている四人とあの男の子との戦いについて、分かる範囲でいいから教えてくれると嬉しいな」
「わ、分からないです。あの四人はいきなり来て勝手に暴れて」
 どうやらステージ達が事を構えたのはここではないらしい。つまり狂化エージェントは別の場所で敗北し、ここに連れて来られたという事だ。

「≪動くな≫」
 黎夜は眼前のドレッドノートに支配者の言葉を叩きつけた。だが効かなかったらしく、大剣を振り回して怒涛乱舞を浴びせ掛ける。
 エリズバークは咄嗟にプリトウェンに換装し、フラグメンツエスカッションを展開しながら傷付いた少女を我が身で守った。防ぎきれないダメージが滑らかな肌に赤を刻み、アトルラーゼ・ウェンジェンス(aa5611)が内から声を響かせる。
「大丈夫ですか、母様」
『もちろんよ。心配ないわアトル』

 もう一方のドレッドノートがストレートブロウを叩き撃ち、衝撃に飛ばされて千颯がわずかに後退した。
 為久は迷う。支配者の言葉を使うという手もあるが、これはステージ用に残しておきたい。一か八か羽交い締めてその隙に薬を打ってもらうか?
 そこに仙寿が到着し、ドレッドノートの腕に縫止の針を突き立てた。これでスキルは封じられ、移動力は減少する。千颯はドレッドノートの腕を取り解毒剤を打ち込んだ。これで迷う必要はない。為久は一般人を抱え戦域外へ走り出す。
『もう大丈夫ですよ。エージェントが皆狂化させられるとは……あなた方を盾に脅されたりしていましたか?』
 男性から帰ってきた答えはエデンと同じものだった。つまりやはり、戦闘場所はここではなかったという事だ。通信機を使って全員に共有し、一般人の避難に専念する事にする。他の一般人三人も出来れば連れていきたいが、その分時間が掛かるし、どう足掻いても運べるのは二人までが限界だ。まずはこの男性を送り届けようと駆け出す。

「見境なしとは面倒だな」
 バルタサールは移動しつつ再び「ドラグノフ・アゾフ」の狙いを定めた。狂化エージェントは目に映る者を無差別攻撃しているようなので、ジャックポットの視線を追い、自身の射線上に一般人がいない、かつフラッシュバンが届く位置で足を止める。そして放たれたフラッシュバン。閃光を目を瞑ってやり過ごし、五十鈴はジャックポットの視覚外から解毒剤を投与した。そのまま弓を奪おうとしたが、反応したジャックポットが矢を五十鈴の脚に突き刺す。
『(五十鈴)』
「(平気だよ、つーくん)」
 痛みがない訳ではないが、耐えられないものではない。拳をぐっと握り締めつつ五十鈴は気丈な微笑みを浮かべる。

 無月の狂化薬奪取の隙を作るため、GーYAはスパーンシールドでステージを押さえ込もうとした。迫る1.5mの盾をステージは身を捻って躱し、すれ違い様にGーYAの腹に蹴りと孕兆を叩き込む。
「ザコ従魔一体付けただけの一般人とは違うから! 悪いけどそんな簡単に捕まってはやらねえよ!」
 言いながらステージは別の方向に視線を向けた。視線の先にはエデンが……否、気絶したカオティックブレイドと、座り込む一般人がいる。
 ステージはニヤリと顔を歪めると、三人のいる方向へ孕兆を叩き撃とうとした。だがそれに気付いた仙寿が駆け出し、ターゲットドロウで標的を自分に移させた。飛び出したため今自分の背後に誰がいるか分からない。流れ弾を避けるため、受け止める事を選んだ仙寿の肌を孕兆が喰い破っていく。
「流れ弾を装って……一般人を狙ったのか」
「違ぇよ? 俺が狙ったのは『気絶したエージェント』だ。そいつ起こしたらどうなるかはアンタにだって分かるだろう?」
 つまりこういう事だ。一般人を庇えば気絶したエージェントを撃って起こして暴れさせる。気絶したエージェントを庇えば流れ弾を装って一般人を攻撃する。ステージは否定しているが当然、流れ弾を装って一般人を狙う可能性は十分にある。仙寿のエデンへの指示によりこのような状況となった訳だが、だがエデンが一般人を避難させていればカオティックブレイドは単独で放置され、ステージに攻撃され、暴れる危険性が上がっていた。つまりどちらにしろ最悪を避けるため、仙寿がターゲットドロウで庇わなければならない、という状況には変わりない。
「攻略法は後で教えてやるよ。とりあえず今はどう動くのがベストなのかを考えな!」


 バルタサールはロケットアンカー砲に換装し、クローをジャックポットへ放った。目晦ましの効果は既に切れている。拘束し攻撃の阻止を狙う。
 だが移動は制限出来ても、全身の動きを制限しきる事は難しい。ジャックポットはわずかに動く腕で弓を握ると、『自分の真下に向けて』アハトアハトを炸裂させた。集積されたライヴスは着弾点で爆発し、使用者自身もバルタサールも、周囲にいた五十鈴も一般人をも呑み込もうとする。
 寸前、五十鈴は女性を爆発の外へ突き飛ばした。衝撃波が押し寄せ、エージェント三人はそれぞれに吹き飛ばされる。
 
 千颯は大剣を飛盾で受け止め、リフレックスでダメージを反射させながら考える。近くにいた一般人は為久が退避させてくれた。ドレッドノートは縫止でスキルを封印されている。放置して他の仲間の応援に行くべきか、それとも一般人から離れるように引き付けておくべきか。
 千颯はこのまま抑えておく事を選択した。正気に戻るまでは暴れる危険があるし、ステージが狙ってくる可能性もある。
 エデンもその場を動けなかった。仙寿が庇ってくれるのであればと割り切って、背後の一般人を逃がすという選択もあるが、そうした結果がどのように転がっていくか分からない。無駄になるかもしれないが、もしものための抑えとしてここにいた方が無難だ。
 黎夜は眼前のドレッドノートにリーサルダークを撃ち放った。今度は成功しドレッドノートは気絶する。エリズバークが腕を取り、注射器の薬液を注入する。これで狂化者全員に解毒剤は投与された。それを見てステージは舌を打つ。
「ちっ、全員クリアされたか」
『よそ見してる暇はあるのかしら』
 まほらま(aa2289hero001)の声と共に、GーYAはスパーンシールドを被せるようにしてステージを押さえ込んだ。その隙に無月が腕を伸ばす。とにかく彼の手から狂化薬を確実に引き離したい。
 だがステージはスパーンシールドを手甲で殴り飛ばして躱し、勢いそのままに脚を上げ無月に足甲をめり込ませた。従魔を手足に付けているせいか動きはかなり俊敏だ。直接的なダメージはないが、埋め込まれた孕兆はじわじわ生命を蝕んでいく。
「同族だと言われれば否定はしない」
 無月は武器を収めつつ切り出した。それを聞いたステージは訝し気な顔をする。
「だが、一つだけ違う、それは私は全ての人を守り、救いたいと言う事。それは君もだ。忍びが味方でない君に素顔を晒す事がその証だ」
 そう言って自分のマスクを剥がし、無月は腕を伸ばしてステージを抱き締めた。ステージの腕を抱える形で拘束し、反撃される前に告げる。
「君に必要なのは人の温もりを知る事だ」
 そして唇に唇を重ね、口に含んだ睡眠薬を少年の口内へ流し込んだ。少年の身体は無月に抱えられたままぐらりと揺れる。睡眠薬は確かに少年に効いていた。
 だが次の瞬間、従魔のついた膝が無月の腹に叩き込まれた。手甲足甲は逆萩真人に憑いてはいるが、独立した従魔である。なので逆萩真人が気絶した所で従魔はそれ自体で動く。
 逆萩真人は意識がないのかだらりと首を垂れていたが、手甲足甲のいずれかが回復させてしまったらしい。眠そうに顔をしかめながらも少年は無月を睨み付ける。
「これも愛のためってか」
「完全な騙し討ちだな。しかし、誠意だけでは人は救えない。それは君自身がよく判っている筈だ。誰かが悪役にならなければならないのだ、そして、それは闇に生きる私達しかいない」
『笑顔、優しさ、そして愛は何としても守らなければならないんだ。たとえ恨まれても、悪魔と呼ばれようとも』
「……」
「私は君を救いたい、その想いだけは本物だ」
 素顔を晒し述べる無月に、しかし少年は醜く笑った。無月の想いなど、全く届いていないような笑顔で。
「誠意だけで人は救えないっつーのは同感だわ。でもさ、必要なのは悪役になる事でも想いがどうこうでもなくて、人をきちんと救える方法を実行する事じゃねえの? 悪役になろうが想いがあろうがやり方が間違ってたら、人は救えねえと思うけど?
 それはアンタ自身、よく判ってる筈だけど!」
 言い様、今度は気絶しているドレッドノートに手甲を向ける。仙寿は再び走り、ターゲットドロウで狙いを自分に引き付けた。後ろを確認している余裕はないため、これも自分の身で受け止めるより他はない。
 
 バルタサールがジャックポットを床に倒して完全に抑え込み、五十鈴がその間に武器を取り上げた。解毒剤が効いているのか先程よりは動きが鈍いが、それでも気を抜けばすぐに逃げられる程の力だ。
「ガァッ! あァ、あぁァアッ!」
『まるで野生の熊さんだね』
 紫苑(aa4199hero001)が冗談めかして言うが、野生の獣のようだというのは当たっている。バルタサールは引き締まった体躯の持ち主で、加えてリンカーだ。一般人程度であれば簡単に抑えられる。
 しかし今抑えているのは同じリンカーで、それも正気を失っている。完全に元に戻るまではこうしている必要があるだろう。
 エリズバークはブランケットを取り出すと、気絶したドレッドノートの頭に被せて押さえ込んだ。気絶してはいるものの、先のステージの行動から起こされる可能性は否めない。
 インタラプトシールドで孕兆を防げればいいのだが、インタラプトシールドはダメージを軽減する事は出来ても状態異常は防げない。例えば縫止の針をインタラプトシールドで防ごうとした所で、突き刺さった場所から干渉し使用者のライヴスを乱してしまう。孕兆でも似たような現象が起こる可能性は十分あるし、いずれにしろ『インタラプトシールドで状態異常は防げない』、これは確かだ。狂化者を起こされれば暴れ出す、一般人に当たれば死ぬという状況下で、勝率の低いギャンブルを行うべきではないだろう。
 黎夜は近くの少女を抱え戦域外へと走り出した。同時期、気絶していたカオティックブレイドが目を覚まし、傍にいたエデンを見た。エデンは咄嗟に宝典を構えたが、カオティックブレイドは慌てて手を振り敵意のない事を示す。
「だ、大丈夫だ! すまん、助けてくれたんだな、ありがとう」
「ステージに負けた理由、聞いてもいいかな」
「少年に憑いている従魔を二体まで減らしたんだが、そうしたら従魔共、少年を盾に攻撃を躱し始めたんだ。少年を殺す映像が脳に浮かんで、気付いたら同士打ちを……」
 エデンからの報告を受け仙寿は《やはり》と思った。《おそらく真人を盾にしたのだろうな》と、そう考えていた。
「余力があるなら一般人をお願いしても大丈夫かな。一緒にあなたも避難を」
 エデンは残っている一般人と、カオティックブレイドの負傷具合を見てそう言った。一方、五十鈴はしばらくジャックポットの様子を観ていたが、バルタサールに完全に押さえ付けられているし、正気には戻っていないにしろ徐々に動きが鈍ってきている。
「【ここはおまかせしても大丈夫ですか?】」
 筆談でそう確認し、バルタサールが頷いたので一般人の誘導に回る。ジャックポットの正気が戻り次第も考えたが、ついていなくても大丈夫そうだし、自分達の背後にいる女性を避難させる必要はある。ステージは気になるが如何せん人が多いし、孕兆の事もある。一般人と距離を離さなくては。
「【安全な場所まで連れていきます】」
 女性にメモを見せ肩を貸す。少しだけステージを振り返る。そして視線を前に戻し、五十鈴は女性を連れて戦域外に走っていった。


「はっ……はっ……」
 荒くなるGーYAの息に合わせてスパーンシールドがガチガチ揺れる。シールドで攻撃を、手甲足甲を、孕兆を受け止めてはいるものの、しかしそれは孕兆の効果を防いでいる事にはならない。何故ならスパーンシールドは……スパーンシールドに限らずAGWは能力者のライヴスによって構成、維持されているものであり、AGWで攻撃を受け止めるという事は、能力者のライヴスそのもので受け止めている事と同意義なのだ。故にスパーンシールドで孕兆を受け止めた所で、孕兆はシールドを通してGーYAのライヴスに干渉し、ライヴスを貪り喰っていく。
 一方、ステージはピンピンしていた。手甲足甲にもこれといったダメージはない。当然だ。GーYAと無月の行動は防御、押さえ込み、狂化薬奪取のみであり、攻撃は一度も行っていない。このまま続けても状況は変わらないだろうし、狂化者全員解毒剤を打たれた今、ステージがいつ逃亡してもおかしくはない。
「(狂化薬をこのままステージに持たせておく事はできない)」
『(リンカー同士の戦いを見せるのが目的かしらね)』
 GーYAの言葉にまほらまが推測を続ける。まほらまの言葉がステージの狙いであるのなら、狂化された俺を、仲間に倒してもらうという構図を面白がるはず。持っている注射器が二本だけとは限らない。だが確実に一本は取り上げたい。打たせて症状が出れば関与も確定できる。仙寿にはその場合も考えて一応事前相談している。注射器は腰ベルトの隠し収納にあると無月と仙寿に知らせてある。
「俺にその注射器の中身を打ってみたらどうだ」
 GーYAはシールドを幻想蝶に戻してステージへと切り出した。ステージは眉間に皺を寄せ、手甲を構えてGーYAに向ける。
「そう言って騙し打ちにするつもりだろ?」
「しないよ」
「だったらそこの忍びのお姉さん、ちょっと離れて。このお兄さんの後ろに行って」
 GーYAは指示に従うよう目で無月を促した。これでGーYA自身が邪魔になり、無月が即座にステージに何かする事は出来ない。ステージはポケットから注射器を取り出して、一本だけをGーYAの腕に投与する。
「まあいいけど、その前にアンタ倒れるんじゃねえの?」
 さもついでと言わんばかりに、ステージは孕兆をもGーYAの腕に埋め込んだ。ここが回復時と見て、千颯が狂化者を押さえながらケアレインを降り注がせる。クリアプラスを含んだ雨は無月とGーYAの生命を回復させるだけでなく、孕兆も体内から除去してくれる。すかさずGーYAから距離を取ったステージに、千颯はすまなそうに顔をしかめる。
「俺、ステージちゃんに謝らないといけないんだぜ。この間まで悪かったな……お前の言う事全然信じてやれなくて……」
 「くっ」と拳を握る千颯に、ステージは「何を言ってるんだこいつ」という顔をした。千颯は構わず、青春ドラマさながらにバッと顔を上げてみせる。
「今度からはお前の言う事ちゃんと信じるんだぜ! 何しろ、お前が俺ちゃん達の事をこんなにも『大好き(強調)』だなんて知らなかったからな!」
 一瞬の間があった。「(強調)」が絶妙な余韻を残していった。だがやはり千颯は一切構わず、熱血教師さながらの熱弁を繰り広げる。
「安心しろ! お前の大好き(強調)な俺ちゃん達H.O.P.Eが従魔から必ず助けてやるんだぜ! 前回も自ら答えを教えてくれたからお前の好き度はわかるんだぜ! 本当は俺ちゃん達がこの難問を颯爽と解決してくれることを望んでるんだろ。大丈夫だ俺ちゃんはわかってるぜ! だから前回はステージちゃんの期待に応えれなくてごめんな」
 敵だという事に穴があって反論するならステージを敵だと思わなければいい。
 ステージのどんな憎まれ口も大好きなリンカーが思ったように動いてくれない苛立ちからだと思えば可愛いと思う。
 徹底的にステージの言い分をプラスの意味で解釈。究極のツンデレと認識。大好きな相手に嫌われたら悪態もつきたくなるよな!
『なんと! そうでござったのか!』
 白虎丸の自覚のない天然がまた絶妙な余韻を生み出した。ステージはそれを聞き顔を伏せるように俯いたが、肩を震わせ、堪らないとでも言うように笑い出した。
「あ、あは、アハハハハッ! そう、そうそうそうなんだよ! 俺ってばアンタ達の事が大っ好きなもんだからさー。アンタ達が活躍する姿が見たくてこんな意地悪してんだ。ごめんな。もちろん今回だってアンタ達なら見事に解決すると信じての犯行だよ。当然じゃん。だって俺はアンタ達の事が大っ好きな大ファンだから!
 ……ってのも悪かねえけど、自称“敵”さんと被っちまうからな。キャラ設定としてはちょっと悩む所だぜ」
 ステージは歯を剥き出して孕兆を放とうとしたが、その背後に小烏丸に換装し、潜伏を使った仙寿が迫った。そのまま狂化薬奪取の援護のため『真人』を羽交い絞めようとする。
「だから無駄だっつってんだろうが!」
 ステージは仙寿に肘鉄を叩き込んだが、仙寿はそれを寸での所で回避した。先程の千颯のケアレインを仙寿は浴びる事が出来なかった。つまり仙寿の身体には孕兆がまだ巣食っている。これ以上孕兆を受けるのはさすがにまずい。そしてこの位置であれば避けたとしても流れ弾の心配はない。
 生まれた隙を見逃さず、無月は距離を埋めパーカーに手を掛け、今度こそ一気に引き裂いた。無論ポケットの中にある注射器が目的だったが、それよりも服の下から現れたものが一瞬無月の目を引いた。痣だらけの身体。ここ最近の傷ではない。詳細は分からないが数年前、いやもっと前からのものと思しき痣が、少年の皮膚をまだらに染め上げていた。
 引き裂いた箇所のポケットの中に注射器は入っていなかった。痣だらけの半身を晒しながら、ステージは左手の手甲を、握り込んだ注射器を掲げて嘲笑う。
「残念。注射器はそっちじゃねえよ。狙われると分かってていつまでも入れとくわけねえだろ」
『でもそれで、注射器の居場所ははっきりしたとも言えるよね』
 ジェネッサの言葉にステージは片眉を吊り上げた。確かに奪取は出来なかったがこれで目標ははっきりした。残ったポケットに入れるならそちらの服も裂けばいいし、手に持ったままなら奪い取る、無理なら破壊すればいい。
 武器を手に自分を取り囲むエージェント達に、しかしステージは余裕癪癪の表情で笑う。
「いいぜ、取れるもんなら取ってみろよ」
  

「正気に戻ったか」
 問い掛けるバルタサールにジャックポットは頷いた。拘束していた手を離してやり、ステージに狂化薬を打たれた経緯を尋ねてみる。
 回答は先のカオティックブレイドと全く同じものだった。軽傷程度と見て取って一般人の対応を頼みつつ、さらに声を抑えた上でジャックポットに耳打ちする。
「余裕があれば、ステージ逃亡阻止に協力してもらいたいんだが」
 一般人の避難は一応済んでいるし、まだ暴れているエージェントも大した怪我はしていない。方法としては警備室に行き、ステージが通りそうな場所のシャッターを閉じる、スプリンクラーを作動させ不意をつく。店売り品の網等があればステージ捕獲用に罠を張っておいてもらう。目潰し用の炭酸水を用意してもらう。ステージが滑るよう商品の油を床に撒いてもらう、など。
 ジャックポットは請け負ってまずは警備室へと駆けていった。その姿を見送らず、バルタサールはステージの方に意識を切り替える。エデンもまたステージ対応に走りつつ喉にライヴスを集中させる。
 ステージ――逆萩真人自身は人間のようだから、支配者の言葉を使っても洗脳する事は出来ない。故に従魔、それも足甲の方に、すぐに回復される可能性は承知の上で、捕縛の隙を作るためにライヴスを声に乗せて放つ。
「≪投降して!≫」
 エデンのライヴスを叩きつけられ右の足甲が震えたが、一瞬震えただけでそれ以上の変化は見られなかった。ステージが笑いながらエデンに理由を説明する。
「悪いなあ魔法少女、こいつアメーバだからそんな頭良くねえんだわ。『投降して』なんて言葉理解出来ねえよ」
『ではこれはいかがです。≪止まりなさい≫!』
 今度は為久が、同じ右の足甲へ支配者の言葉を放つ。問うまでもなく、この言葉なら効くというのは前回証明済みである。もっとも支配者の言葉の成否はその都度変わってしまうのだが、今回も、今度は、成功したようである。
 びたり、とステージの右脚が電池が切れたように止まり、GーYAが唇をきつく噛み締めながら肉薄する。狂化薬の効果は既に出始めているようで、意識が徐々に喰われていく。明滅する思考に向けてまほらまが励ましの言葉を掛ける。
『ジーヤ、しっかり』
「まだ大丈夫だよ、まほらま」
 自身の精神、体は二の次。とにかくステージの被害者を、『真人』を救出しなければとまた一歩、脚を踏み出し。
「行くぞっ!」
 少年に憑く従魔四体へ怒涛乱舞が放たれた。SHINGANN RODにより鋭くなった感覚は従魔だけを正確に捉え、左手甲の握っていた注射器も木っ端微塵に砕いた。
 だが衝撃はぐずぐずの肉に吸収され、従魔を撃破し真人を保護する、とまではいかなかった。その上攻撃をした事が後押しになったかのように、また一層狂気がGーYAの頭を蝕んでいく。苦し気に呻くGーYAの姿に、仙寿は解毒剤を打つべきだと判断した。ステージが偽物の狂化薬を打つ可能性があるため、そして現行犯逮捕に持って行くためと症状を見ていたが、これなら狂化薬と確定する事が出来るだろう。
『私達の信念は変わらないよ。人を従魔や愚神と同じように殺せたら楽だなんて思わない』
 狙いを悟られないようにするためにも不知火あけび(aa4519hero001)が話し掛けた。GーYAの様子では自分で解毒剤を打つ事も難しそうだし、解毒剤を出そうとした時点で狙われる可能性もある。自分達が行って解毒剤を受け取り、打った方が確実だ。
 『真人』はパンドラの逆を振る舞ってる。あけびはそのように考える。私達がマガツヒと同じだと証明したいのかと思ったけど、もしかしてその逆?
『真人を殺したら物凄く悔やむ。H.O.P.E.は混沌と絶望を望む清十郎とは違うから』
《お前は何を望んでいる? 良人に何があった?》
『従魔を剥ぐ。それからだよ。貴方を救う刃になる。あと良人の代わりにお饅頭を奢って貰う!』
「……良人じゃねえよ」
 ステージは黙って二人の言葉を聞いていたが、出し抜けに口を開いてそんな事を言い出した。仙寿を、その内のあけびを見る目は強い怒りに塗れている。
「良人じゃねえ。パンドラだ。アンタに饅頭持ってくって言ったのはパンドラだ! あいつの言った事を、なかった事にしてんじゃねえよ!」
 今までで一番感情を露わにし、ステージは明らかに標的を仙寿に、あけびに定めたが、駆け出す瞬前にバルタサールがウレタンをステージに吹き掛けた。個人的には元々『ヒトゴロシ』だったので、詰られようが、人を手に掛けようが何とも感じない。
 だが依頼としてはステージを殺さずに捕獲することが最上なため、AGWは用いず、一般人にダメージを与えない方法での捕獲を試みる。
 ウレタンはステージの上で一瞬は固まりかけたが、しかし『逆萩真人』にはともかく、手足の従魔に対しては拘束手段に成り得ない。手甲足甲がウレタンを破壊し振り払う。そこに紛れるようにして、無月が右の足甲に縫止の針を突き立てた。これで右の足甲のスキルは封印され、わずかだが移動も制限される。
 ステージはそれでも手甲を構えようとしたが、そこにエデンの声が飛んできた。「ステージって、すごいひねくれた子なんだね」という言葉に、少年はじろりと視線を向ける。
「ねえ、少しお話ししよ?」
「なんだよ」
「すごい絡んでくるってことは、なにか言いたいことがあるんでしょ。あたしたちにヒトゴロシだって認めさせて……謝罪がほしいの? それで満足できるの?」
「……」 
「エージェントはカミサマとかじゃないから、パーフェクトじゃないし、失敗もあるし、色んな性格の人もいるけど……それが人間だから。色々な意見を聞いたら気付きをもらって、次に生かしていくよ」
 エデンは真摯に言葉を紡いだが、ステージの態度は変わらなかった。相変わらず嘲るような、ひねくれた調子で言葉を返す。
「ああ、うんうんそうだな。人間だから仕方ねえよね。失敗したら次に生かす。まったくいい心掛けだよ。
 でもそれって、救う側の理屈だよな。救われないヤツの立場じゃねえよな。『失敗』されて『生かしてもらえなかった』ヤツは、一体どうすりゃいいのかな。人間だから仕方ないって、諦めて死んでいきゃあいいのかな」
『まったく本当に、躾のなっていないお子様ですこと。どうですか? 自分の策がことごとく砕かれたご感想は?』
 今度はエリズバークが声を掛ける。抑えてるドレッドノートは未だ正気には戻っていないが、同時に気絶しているので抑えておくのは容易である。ステージは今度はエリズバークに視線を向け、相変わらずの口調と表情とで「感想」を告げる。
「言っただろ。俺はアンタ達が解決すると信じてたって。本当アンタ達はよくやったよ。手っ取り早く狂化された連中を戦闘不能にしてくれたらさー、倒れた所を攻撃して殺してやろうと思っていたのに。そんでアンタらが横着したせいだって言ってやろうと思っていたのに」
 そして顔を歪めてくつくつ笑う。そこには好意なんて微塵も感じられなかった。エリズバークはその様を冷たく眺め、淡々と言葉を重ねる。
『ステージ、貴方はまだ人ですか?』
 彼の使うスキルはパンドラと同じものがある。
 人を狂わせるパンドラ細胞が彼にもある。そのようにエリズバークは推測する。
『だんだん狂っていくのでは? バルドルのように。そして……パンドラのように』
 もう手遅れではないかしら。
「こんなものを着けなくても人は簡単に狂っちまうさ。それはアンタが一番よく知ってると思うけど?」
 ドレッドノートが目を覚まし、同時に正気に戻ったようだ。ブランケットの中から「どこだここは」と声がした。けれどエリズバークの狂気は醒めない。エリズバークの狂気に解毒剤なんてものはない。ステージはそれを、見透かしたように笑う。
「手遅れなんて今更だろ? アンタも!」
 動き出した仙寿へステージは孕兆を撃とうとしたが、その前に黎夜が右手甲へ魔法弾を叩きつけた。狂化エージェントの言によれば、手甲足甲が二体に減った時点で真人を盾にしてくる。つまりそれまでは普通に攻撃しても大丈夫だという事だ。その事は先のGーYAの怒涛乱舞が証明している。
 とは言え「確実に」とは言えない。ましてやステージは注射器をまだ隠し持っている可能性がある。同士討ち以上に、洗脳されて狂化薬を打たれるような事態は避けたい。慎重に動きたい。それ故の選択だった。
「(……正直、いつもと違う動きだから、やりにくい……けど)」
 為久もまた左手甲へ黒猫「オヴィンニク」の炎をぶつける。肉が焼ける臭いの漂う中、GーYAに向かう仙寿の膝が崩れかけた。千颯が仙寿に手をかざす。抑えていたドレッドノートは先程正気に戻ったため、今は一般人の誘導へと走らせている。
「仙寿ちゃん!」
 ケアレインが降り注ぎ、籠められた清浄なライヴスが体内の孕兆を洗い流した。仙寿はGーYAの下に辿り着くと、GーYAの腰のベルトから解毒剤を取り出した。GーYAは痛そうに頭を押さえ、目がガクガク揺れている。これなら間違いなく狂化薬だと確定出来る――
「別に打ってもいいけど、それだと俺が打ったのが狂化薬だって証明出来なくね?」
 解毒剤を握った仙寿の腕をステージの声が遮った。どういう事だと問う前に、ステージが顔を歪めながら理由を告げる。
「そこのお兄さんに一体どういう症状が出てるんだか知らねえけれど、それがノーシーボ効果じゃねえって証拠はどこにある? ノーシーボ効果って知ってる? プラシーボ効果の逆。有害作用があるって信じ込む事でマジでその症状が出るってヤツさ。解毒剤打って治ったとしてもそうさ、ただの思い込みかもしれねえ。それが狂化薬だって証明するにはアンタが実際狂って暴れて、それから解毒剤を投与する必要があると俺は思うんですけど?」
 言ってステージはゲラゲラ笑った。既にGーYAの手によってもう一本の注射器は破壊されている。つまりステージの注射器が狂化薬だと証明するには、GーYA自身が証明するよりもう他に手は残っていない。まさかそれを狙って、わざとGーYA自身に注射器を破壊させたのでは、という推測が頭を過ぎる。ステージは思考も、反論の機会も奪うようにさらに悪意まみれの言葉を重ねる。
「意識が飛びそう? 今にも仲間を攻撃しそう? そんな気がするだけかもしれねえレベルのアンタの個人的主張だろ? そんなのだけが証拠なんて不公平だと思わねえ?
 なーんて。いいよ。そうしろよ。証拠はアンタの主張だけ。それでアンタのお仲間は納得してくれるって。そうやってさあ、今までも不確かな証拠だけで内輪だけの裁判やって、疑わしいヤツは全部クロって事にしてきたんだろ?」
 違う、と声を上げかけた、その一瞬が隙になった。ステージは孕兆を撃つと、仙寿の手の内にあった解毒剤を破壊した。
「どうせお前らの言う事なんて、上っ面の綺麗事さ」
 そして距離を取り壁際まで退避した。逃げ場のない壁際で何をするのかと思ったら、ステージは手甲で壁を殴って叩き壊す。
「悪いけどここからお暇させて頂くわ。暴れてたヤツら全員治ったみたいだし、大混乱の人ゴミの中逃げるとか面倒クセェし。それとも人ゴミに被害出しながら逃げた方が嬉しいか?」
 どうやらショッピングモール内は警戒されているらしい。バルタサールの声が聞こえたとは考えにくいが、戦域外には永平・五十鈴・回復したエージェント三人、計五名が向かっている。待ち伏せを警戒された可能性は十分にある。
「ああそうそう、約束だから今回の攻略法な。まず先に一般人を避難させるんだよ。余りの人数で俺と暴走連中を抑えてさ。それから暴走連中に解毒剤を打って、下手に暴れないよう抑えつつ手の空いたヤツらで俺を一斉攻撃。こうすれば一般人を守るのに手間省かなくて済むし、一般人を無駄に危険に晒す事もないし、流れ弾の心配をする必要もない。上手くいけば効率的に人手を増やして俺を一気に叩けたはずだ。
 ちなみに俺の攻略法だけど、まず従魔四体つけたまま押さえようとするのが横着なんだわ。反撃するのは当たり前だろ? だからまずは数を……っと、これ以上は喋り過ぎだな。そんじゃあ言い訳はまた次回……」
『その前に、質問いいか』
 立ち去ろうとするステージを、戻ってきた栗花落の声が呼び止めた。その横では共鳴を解除した五十鈴がぺこりと頭を下げた後、「質問よろしいですか」と言わんばかりに手を挙げた。本当は共鳴したまま手話で話し掛けようとしたのだが、手話がステージに通じるかどうかは分からない。筆談だと近付く前に逃げられる可能性がある。だから共鳴を解除し、距離は一応取った上で、栗花落に通訳を頼む事にした。
「なんだ」
 ステージは手甲を五十鈴に向けながら言った。近付けば即撃つという表示。同時に他のエージェントへの牽制でもある。五十鈴はエージェントに目配せした後指を動かし、栗花落がそれを代弁する。
「[こんにちは、ステージさん。お兄さんが手足を斬り落とされてと言っていましたね。それは、何時の話ですか? 何年前の話ですか]」
 『逆萩良人は数年前に行方不明になっており、逆萩真人という弟が――』、五十鈴は先日の職員の話を思い出していた。五十鈴としてはステージの話を信じての質問だったが、ステージはそのように捉えなかったようである。
「そういう聞き方はズルいなー。はいはい嘘だよ。俺の兄ちゃんは手足斬り落とされた事なんてねえよ。で? それで満足?」
「[マガツヒの構成員になったのはいつからですか。 愚神や従魔が憑いた後マガツヒに入ったんですか]」
 パンドラさんは、酷い怪我も治していたから。
 パンドラさんもステージさんもマガツヒの構成員だけど、じゃあそれは何時から?
 愚神や従魔が憑いた後マガツヒに入ったのか。《逆萩兄弟が》マガツヒに入った後愚神らを憑けたのか。
 それによって意味合いは変わってくる。
「良人にパンドラが憑いてから、マガツヒに入ったんだよ。俺はパンドラに連れていってもらったのさ」
 パンドラに連れていってもらった? つまりマガツヒに入る前にパンドラが良人に憑いて、ステージは、真人は、その後で――?
 しかしそれ以上の質問は出来なかった。獣のような声が辺り一帯に響いたからだ。GーYAは頭を抑え、脳が削り取られるような衝動と必死に戦っていた。ステージは背を向けようとする。それを見てGーYAは叫ぶ。
「救う……救ウゥ……君を……ッ」
「アンタらにそれが出来るのか?」
 小さな声だったがそれは確かに耳に届いた。ステージはエージェント達を見て、嘲るようにこう続けた。
「嘘つけよ。そんな気もないくせに」
 視界が黒に狭められる。ぼたぼたと涎が口から滴るのを感じる。嘘じゃない、という自身の言葉を最後に、GーYAは意識を完全に手放した。


 GーYAが目を覚ましたのはそれからしばらくの事だった。事情を聞いた所、意識を失くしてすぐに暴れ出し、取り押さえて為久が予備に持っていた解毒剤を投与したという事だ。
「ご迷惑おかけしました」
「気にするな。おかげで狂化薬だと証明出来た訳だし」
 仙寿がぽんぽんと肩を叩き、無茶するなよと言い残してその場を離れていった。どうやら片付けをしているらしく、無茶するなと言われたばかりだがGーYAも手伝おうと立ち上がる。そこに永平が通り掛かった。そういえば永平さんに挨拶してない、尊敬する人怒鳴っちゃったしな、と、遅ればせながら声を掛ける事にする。
「永平さん、どうも。あの、前に劉士文さんの事、怒鳴ってすいませんでした」
 GーYAの言葉に永平は記憶を辿った。それから「ああ」と呟いて、思いの外柔らかい表情を向ける。
「まあ、次やったらぶん殴るが、兄貴が怒っていないなら俺に何か言う権利はねえよ。それよかもう少し休んでろよ。無理すんな」
 と言って肩を叩いてその場を去る。体内に狂化薬が残っている様子はないが。GーYAは腕を組んで、一人首を傾げて呟いた。
「俺、そんなに無茶したかな?」

 栗花落が職員に頼んでいた、逆萩兄弟の調査結果は帰還後に告げられた。調査を進めた結果、行方不明になっていたのは逆萩兄弟だけではなかったらしい。逆萩兄弟の両親もまた行方不明になっていた。そのため当時は単なる一家失踪だと思われていたそうだ。
「だがマガツヒに入る前に良人にパンドラが憑いたのなら、両親の失踪にパンドラが関与している可能性も否定出来ないな。
 それから逆萩真人についてだが、実の母親に虐待を受けていた可能性があるらしい。当時兄の良人が学校や児童相談所に訴えていたそうだ。ただ母親が教師であり、良人が小学生だった事もあって、躾と判断して取り合わなかったそうなのだが」
 ちなみに良人は自分も虐待を受けている、とは訴えなかったそうだ。その話に無月はステージの身体の痣を思い出した。パンドラやマガツヒによるものの可能性も考えられるが、まさかあれは、実母からの虐待の痕?
「『連れていってもらった』って、言っていたね真人さん」
 戦闘中黙っていた琥烏堂 晴久(aa5425)が口を開いた。それはつまり、真人自身の意志だったという事か?
 連れていってもらった理由は、ついていく事を望んだ理由は、一体なんだ?
「あなたは一体、何を望んでいるの? 真人さん」


 少年はビルの端に座り、ぼーっと夜景を眺めていた。手甲足甲の傷は既に回復している。パーカーも新しいのを適当な所から奪ってきた。
「俺のヒーローはアンタだけだぜ。パンドラ兄ちゃん」
 手甲を口元に当てながら彼は呟く。その瞳は濁り過ぎて夜景の光も届かない。
「例えアンタに、俺を救おうなんて気持ちがこれっぽっちもなかったとしても」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • Peachblossom
    プリンセス☆エデンaa4913
    人間|16才|女性|攻撃
  • Silver lace
    Ezraaa4913hero001
    英雄|27才|男性|ソフィ
  • 奪還屋
    琥烏堂 晴久aa5425
    人間|15才|?|命中
  • 思いは一つ
    琥烏堂 為久aa5425hero001
    英雄|18才|男性|ソフィ
  • 命の守り人
    温羅 五十鈴aa5521
    人間|15才|女性|生命
  • 絶望の檻を壊す者
    沙治 栗花落aa5521hero001
    英雄|17才|男性|ジャ
  • …すでに違えて復讐を歩む
    アトルラーゼ・ウェンジェンスaa5611
    人間|10才|男性|命中
  • 愛する人と描いた未来は…
    エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001
    英雄|22才|女性|カオ
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