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特殊AGW改良試験 ~仮装ver.~
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/11/01 05:56:05
オープニング
●トリックでトリート!!
「諸君はサヴァゲェなるものを知っているか?」
……サバゲー(※サバイバルゲームの略)っすか?
依頼主である『特殊状況下を想定した特化型AGW開発部(略称・特開部)』主任の第一声がそれだった。
「いやなに、今回の『失敗作』を改良するための試験方法なのだが、私はいまいち疎(うと)い分野でな」
『失敗作』前提かよ!?
すでにH.O.P.E.内でも悪名高いAGW開発部からの依頼であったため、参加者も嫌な予感はしていた。
が、ここまで初っぱなからあけすけに『欠陥品』を使え、と言われては文句も出てくるもの。
「勘違いしてもらっては困る。今回、君たちに使用してもらうAGWは『安全』だから『失敗』なのだ」
……詳しく聞こうか。
「昨今の世界情勢は知っての通り、二度目の『世界蝕』が発生し人類未曾有の危機が身近に迫っている。H.O.P.E.を始め、グロリア社に所属する我々も協力しているが、それでも人手は全く足りていない」
アンタたち世界情勢知ってたのか。
というか、アンタたちに限っては一歩間違えればヴィラン並の迷惑かけてきたよな?
「故に、我々は現在『一般人でも使用可能なAGW』の研究開発を行っている。もちろん、主な用途は従魔・愚神・邪英・ヴィランへの自衛手段としての代物になる。悪用などの問題は多いが、生存率は高まるだろう」
――あれ?
この人たちがまともな話をしている?
「ただ、試作機を作ってみたはいいものの、やはり実用レベルには達しなくてな。現段階の問題点はズバリ、『出力不足』だ」
そうして主任が取り出したのは……エアガン?
「予算の関係でベースは市販のエアガンを改造している。もちろん、許可は取っていない」
違法じゃねーか!!
「仕組みは単純だ。従魔や愚神が倒されて世界に広がったとされるライヴスを取り込み、動力として流用する。『王』や愚神が行った『異世界化』侵攻作戦を、逆に利用する形だな」
……無駄に優秀なのがまた腹立つな。
「だが、やはり技術的にかなり厳しくてな。『王』の出現に至った現在のライヴス濃度でも、満足な出力が確保できない。理想が『一般人の運用』だと考えると、自衛手段としては役に立たないのだ」
何でも、現在の威力は最大でも『平手打ち』程度でしかないらしい。
低予算ながら1から理論を組み上げ、試験運用機として形にしたと考えれば驚嘆すべき話ではあるが。
「そこで、改善点を浮き彫りにするためにも、現状の試験機のスペック確認および問題点の抽出を行いたくて集まってもらった。危険はほとんどないが、いきなり一般人で試すわけにもいくまい?」
一応、納得できる理由はあったので集まったエージェントたちは了承を込めて頷く。
「では、早速これに着替えてもらおう」
そうして渡されたのは……ハロウィンの仮装用衣装。
一気に話がぶっ飛んだぞ、何だコレ?
「試験といっても、緊張感は必要だ。普通にやっては、ただのレクリエーションになりかねない。よって会議の結果、時期的にマッチするこちらの衣装を採用した」
説明になってない!
ってか、着替えて何で緊張感が?
「まず『空気銃(仮)』の弾丸だが、ライヴスを蓄積する特殊な包み紙であめ玉や一口チョコなどをくるんで利用する。そして、君たちに手渡した『ジョークコスチューム』はライヴスに反応して繊維が『透ける』」
え!?(男性陣の声)
あ゛?(女性陣の声)
「ハロウィンとはアレだろう? 『トリック&トリート』――『お菓子はくれてやるがイタズラもする』というイベントと聞いたが、何か間違っているか?」
『or』と『&』じゃぜんぜんちげーよ!!
「まあ細かい点はいい。この日のために徹夜して作ったAGWだ、是非これらを着用してサヴァゲェをしてくれたまえ。ちなみに、散らばったお菓子は記録係のスタッフがその都度回収するので、終了後に配布しよう」
こうして、お菓子と尊厳をかけた戦いが始まった。
解説
●目的(試験)
AGWの問題/改善点を発見
●目的(個人?)
制限時間内まで生還(=衣服の死守)
●登場
グロリア社の『特殊状況下を想定した特化型AGW開発部(略称『特開部』)』の主任及び職員
全員開発プロジェクトに携わっている技術者で優秀
基本的に研究・開発に没頭しており常識に疎く、頭のネジが外れている
●状況
場所はH.O.P.E.東京海上支部の屋外演習場
市街戦の訓練用に原寸大の住宅街を再現
被災時の救助訓練を想定した作りのため瓦礫が散乱
事前に資料等は配布されない
主任が司会進行とジャッジを担当
その他職員がデータ解析・PCの映像記録用スタッフを担当
PCは好きなコスチューム(プレ記載推奨)に着替えて参加
形式はバトルロイヤル形式で、能力者・英雄の別行動も可能
1PCにつき1人カメラスタッフがおり、戦闘模様は映像記録として保存(データ抽出後に破棄予定)
勝利条件→30R経過
敗北条件→下着姿に剥かれる
●試作AGW
・空気銃(仮)
汎用自衛型改造エアガンAGW(違法)
大気中のライヴスを利用して稼働
一般人の自衛を目的としているが、出力不足のため実用には遠い
性能
・命中=生命力-1(精神的ダメージが主)
・弾丸=お菓子(随時職員が回収)
・ジョークコスチューム
洋服型特殊AGW(?)
防御力は皆無で、ライヴスに反応し繊維が徐々に透過するギミック搭載(下着着用必須!)
吸血鬼・ゾンビ風・魔女・悪魔など、定番からキワモノまで種類豊富
特殊効果
・耐久力=10(10回被弾→下着姿)
・命中→袖や裾から透明化、耐久力残り1=タンクトップ+ショートパンツ風に
●その他
・結果判定時、生命力は能力者・英雄の総合ダメージを反映(最大-20)
・パロ判定あり(例:プレに『全損希望』など→リプで敗北確定)
リプレイ
●被害者のコメント
「よしオカシイ。こんなサバゲーオカシイよ!」
「ははは、いや、何というか……面白いことを考えるね」
主任の犯行動機にセレン・シュナイド(aa1012)は即座に不服を申し立てるが、今さら変更もできない。
かたやAT(aa1012hero001)は愉快さと呆れを半分ずつ込めた笑いで流す。
「……ただお菓子が貰えるだけなわけがないと思っておったが……」
「トリック・オア・トリートにゃー♪ せっかくだからそれらしい依頼も受けないとにゃよ♪」
ただ、例によって『お菓子がいっぱい貰える』とだけ聞いてきた音無 桜狐(aa3177)はすでに投げやり。
面白そう、と勝手に登録した猫柳 千佳(aa3177hero001)のとても楽しそうな背中にぽつりとこぼす。
「……まあ、千佳にぜんぶ任せるのじゃ……」
桜狐の放った投げやりは、はしゃぐ千佳にぶっ刺さった。
「桜狐ちゃんと千佳ちゃんもいるね。彼女らは何を選ぶかな? 楽しみだね」
「う……戦いたくないなぁ」
そんな平常運転の2人にATは期待のまなざしを、セレンは複雑な気持ちを向けていた。
「え、お菓子もらえるんですか~?」
別のところでは、少し嬉しそうな兎川 結衣(aa5567hero001)を古明地 利博(aa5567)が鼻で笑う。
「ほどほどにしとけよ? ただでさえ最近、腹に肉が付いてきtアアアアアァァァァァ!」
「――余計なお世話ですよ~?」
瞬間、乙女の秘密ごと握りつぶす結衣のアイアンクローがデリカシーの欠如した少女を重力から解放した。
「痛いヘコむ割れるぅっ!?」
メリメリ……
「これは、古明地殿と兎川殿。今回もよろしく頼む」
メリメリ……
「はい~、また面白そうなものを作りましたね~」
メリメリ……
「無視すんな! はなs」
……メリィッ!!
「すんませんっ!!」
「よろしい~」
ドサッ!
利博は万力から解放されてなお、結衣と主任の足下でしばらくもだえていた。
ちなみに、今回は数十名いる参加者の実に8割が女性。
利博に同情の声はなかった。
「開発者とか頭の良い連中の考えることは同じなんだろうか?」
「……ん、あの依頼と……よく似てる」
顎に手を添え悩ましげな麻生 遊夜(aa0452)に、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)がこくりと同意。
グロリア社の西大寺遙華からの依頼に参加し、服が弾け飛んだのはつい先日のことだ。
「しかし内容はともかく、目的に近づけてる辺り本当に優秀だな」
「……ん、とても効率的……服以外」
既視感と呼ぶにはルールがかなり近く、コスプレ衣装を選んだ遊夜たちは更衣室へ入った。
●お着替え中
男子更衣室にて、遊夜は遙華の依頼で一緒だったセレンへ気さくに話しかける。
「あ、今回もセレンさんらと一緒か……奇遇ですね、またよろしく!」
「あ、麻生様! こちらこそよろしくお願いします」
男性の知り合いに安心したセレンも、にこやかに挨拶を返した。
中年と男の娘(?)が更衣室で一緒に半裸とか普通に犯z……いえ、何でもないです。
「やあ。今日は頑張ろうね」
「にゃ! ATさんもいたのかにゃ! にゃふふ、やるからには勝つにゃよ♪」
「……勝ち負けはどうでもよいが、わしはお菓子集めをがんばるのじゃ……」
同じ頃、女子更衣室ではATが千佳と桜狐に話しかけていた。
「っ! まだ痛ぇ……」
「自業自得ですよ~」
近くでは利博と結衣を含め、大勢の女性参加者がかしましく着替えを行う。
企画の文句や衣装に感心したりして、エージェントの準備が整った。
「へぇ、割としっかりとしてるな」
利博は適当に選んだ魔女の衣装で登場し、ローブの強度を引っ張って確かめる。
「……なんでこんな衣装もあるんですかね~?」
結衣が選んだ衣装のモデルは、とあるホラー映画に出る白いゴム製のハロウィンマスクをかぶった殺人鬼。
ボロボロのつなぎや小道具らしい肉切り包丁の再現度が無駄に高い。
「一般人の生存率向上の為だ、気合を入れねばなるまい!」
「……ん、がんばる」
お互いしっくりきたのか、狼男の遊夜と狼女のユフォアリーヤは夫婦おそろいの仮装で意気込みを見せた。
なお、ユフォアリーヤのピコピコ動く耳と尻尾は自前です。
「みんなのヤル気は如何かな。静かだとそれはそれで寂しいものだけど――おや、セレンは消極的かい?」
「当たり前だよ! ま、まぁ、下着姿なら、男の僕はギリギリ良いけど……女性陣がっ!」
「まぁ、こういうのはハプニングが付き物だ、覚悟を決めなさい。私も覚悟して挑むからね」
顔を真っ赤にさせて反論するセレンをATがくすくすとからかう。
「衣装は、ちょっと肌寒いけど、ちゃんとした服っぽい」
「動きやすそうでいいじゃないか。セレンの羽とか私の耳や尻尾も、すぐに消えそうだけど」
「……やっぱり、そういうの選ぶんだね、AT」
ちなみにセレンは羽つきの悪魔風衣装で、ATはユフォアリーヤと同じく狼女(耳と尻尾は飾り)。
ただし、双方とも適当に選んだはずが衣装の露出度は高めで少し肌寒そう。
目のやり場に困るセレンは顔を赤らめ、ATからの視線に気づかない。
(最終的には……いや、それは終わってからのお楽しみだね)
当然、何となくオチを察したATの心中にも気づかなかった。
「よっし、やるにゃよ~!」
「……勝手にせい……」
そして、千佳が魔女っ子衣装で肩を回し、偶然あった普段着(巫女服)の桜狐と共鳴しようとした時。
「君たち、少し待ってくれるか?」
突然、主任が待ったをかけた。
話を聞くと、思ったより参加人数が少なかったため、なるべく非共鳴での参加を促しているらしい。
「……面倒くさいのう……」
「データの質を優先させたい。すまないが、よろしく頼む」
明らかに難色を示した桜狐だが、主任の言葉にうなずく。
「……にゃ?」
反応が遅れた千佳は小首をかしげていたが、後に非共鳴の厳しさを思い知ることとなる。
「ふむ、一般人向けなら形状にも気を配りたい所だな」
それから遊夜は、空気銃を受け取り調べ始める。
試作機はベースのエアガンにいろいろとパーツがくっつけられており、単純に重く持ちづらい。
「……ん、使いやすさは大事……自衛だから、携行性も?」
通常のAGWと比べても使い勝手は悪く、ユフォアリーヤは持ち方を変えつつ、かくり、と首をかしげた。
●すてきなはろうぃん
「……なるほど、こんなもんか」
開始直後、遊夜とユフォアリーヤは空気銃を適当に撃っていた。
壁への水平射撃で威力や跳弾具合を、空への射撃で射程や放物線の軌跡を確認する。
「……ん、クセは強いけど、大体わかった……あとは実戦、あるのみ」
今まで扱ってきた銃器の知識と経験から、感覚的なズレを短時間で調整。
ユフォアリーヤのフンスッ! という鼻息を合図に行動を開始する。
「(使うのは楽しみですけど、服が透けるのはちょっと~……)」
「(冗談じゃねぇ、ひん剥かれてたまるか!)」
同じ頃、結衣と利博も合流して一緒に行動していた。
それぞれ空気銃の重さに眉をひそめつつ、がれきからの奇襲に備えて周囲を警戒する。
「(しかし~、非共鳴だとスキルが使えなくて不便ですね~)」
「(一般人設定だからな、諦めろ)」
その際、結衣は『鷹の目』が使えない状況に不満をこぼした。
利博もうなずきたいところだが、無い物ねだりはできない。
ひとまず、自前の索敵技術で逃げ回るしかないだろう。
「さて、セレン。私達はどう動く?」
「う~ん、桜狐さん、全然避けようとしなさそうだよね……むしろ守る?」
「ほう?」
こちらでは、ATに方針を聞かれたセレンは真っ先に桜狐たちの心配を口にした。
「私達はあの子の家の居候だし、日頃の恩返しというやつか。良いだろう」
「よし、とりあえず桜狐さん達を探そう」
少しの思案からATも同意し、セレンたちは走り出した。
「――にゃにゃにゃあぁ!?!?」
しばらく演習場を走っていたセレンたちは、耳慣れた人物の悲鳴がする方へ進路を変える。
「……お菓子がたくさん、拾うのが大変じゃ……」
「せめて避ける努力はして欲しいにゃ~っ!!」
そこには予想通り、地面にしゃがみこむ桜狐と必死に迎撃する千佳の姿が。
経緯は簡単だ。
桜狐、銃が重くて開始位置から動かない。
他の参加者、桜狐を発見&ロックオン。
千佳、さすがに放置できず迎撃。
桜狐、攻撃をバシバシ浴びながらスタッフと一緒に散らばるお菓子をせっせと回収。
他の参加者、騒ぎを聞きつけドシドシ集合。
以上、フルボッコ状態の完成である。
「た、大変だ! すでに桜狐さんの手足とお腹回りは丸見えだよ!?」
「千佳ちゃんも半分は透けてるね。さぁ、男の子の見せ場だよセレン。程よく頑張りたまえ」
何かもう見てられない戦力差に、セレンの顔色は青へ赤へと忙しい。
周囲を見渡しざっと10人以上の人影を確認したATも苦笑し、軽く肩を叩いて飛び出した。
「桜狐さん達は、やらせない!」
「きゃっ!? ――仲間!?」
気づかれずに包囲へ迫ったセレンは、ゾンビ風ナースの女性の背後をとって射撃を浴びせる。
別の場所でもATが奇襲をしかけ、襲撃者たちに緊張感が高まる。
「サキュバスと狼女が巫女さんを援護するの!?」
「僕は男です!!」
「え!? 何か言った!?」
銃を撃ち合い牽制しつつ、セレンは立ち位置を入れ替え桜狐を背にかばう。
なお、意外と大きなAGW駆動音のせいで『男』宣言はかき消えた……。
「た、助かったにゃ~」
孤軍奮闘の千佳はセクシー悪魔の援軍にほっと一息。
「……ふむ。セレンも、お菓子をいっぱい集めるのじゃぞ……」
ただし、この状況を作り出した桜狐は見当はずれなエールを送り、再びお菓子探しに戻ってしまった。
「っと! まだ劣勢は変わらないから、千佳ちゃんも気を抜かないでね」
遅れてATも服を少し透けさせて、桜狐たちの近くに着地。
「ちなみにセレン――敵は全員女性だから、下着姿に動揺しないように」
「……えっ?!」
さらに、ATの追加情報にセレンは早速うろたえた。
サキュバス(?)、万事休す!
そこから少し離れた場所で。
「(狙うは無傷での勝利、かね?)」
「(……ん、狩りの腕の見せ所)」
住宅やがれきに身を隠しつつ、遊夜とユフォアリーヤは2人で行動していた。
警戒と牽制役をかねた遊夜は物陰から周囲を見渡し、狙撃担当のユフォアリーヤが小声で頷く。
「(……それに、ユーヤ以外に……肌を晒す、気はないの)」
「(いざとなれば、前と同じく俺が盾になろう――っと、いたぞ)」
クスクスと笑みをこぼしたユフォアリーヤに笑みを返し、遊夜はハンドサインで獲物の位置を伝えた。
「(どう進む?)」
「(射線が通りづらいルートはありますね~。先導します~)」
視線の先には、戦闘音から逃げてきた利博と結衣の2人。
元探索者と元諜報部隊員の動きは洗練されており、がれきを盾にした移動はスムーズで無駄がない。
「っ!?」
「(……ん?)」
しかし、相手は百戦錬磨のスナイパーだ。
結衣に遅れ、利博が銃声を聞いた時には――もう遅い。
「おわぁっ!?」
「走りますよ~!!」
がれきに生じたわずかな隙間を縫って、利博と結衣に銃弾が迫る。
慌てて移動速度を上げるも、頭上や銃声とは逆方向からの射撃に対処が追いつかない。
「(すまんな、そこは射程内だ)」
「(……ん、ダメよ……ボク達の目からは、逃げられないの)」
慌てふためく利博たちに遊夜は口角を上げ、ユフォアリーヤもクスクス笑った。
がれきを遮蔽物代わりに身を潜めながら接近し、遊夜が牽制射撃で逃げ道を奪う。
さらに、物陰からの曲射や壁を使った跳弾など、射線を読ませないユフォアリーヤの追撃で囲む。
動きを制限された利博と結衣は回避しきれず、急速に服が透けていく。
「っ! 戦うぞ!」
「了解です~」
不利を悟った利博と結衣は視線を交わす。
覚悟を決めて一つうなずき――同時に駆けだした!
「は?」
……遊夜たちとは逆の方向へ。
「何やってんだ、クソ兎!」
「おチビちゃんこそ~!」
『お前(あなた)が囮で、俺(わたし)が逃げるんだろ(ですよ~)!?』
どうやら意志疎通が不完全だったらしい。
利博と結衣はデタラメな銃撃を後方へばらまきつつ、互いに役割を押しつけあって逃げていった。
再び、桜狐防衛(?)戦。
「このぉ!」
吸血鬼風の女性が飛び回る人影を銃口で追い、隠れたがれきへ弾幕をばらまく。
「ふふん♪ 僕ばっかり気にしてるとダメにゃよ? 本命は――」
「私だ!」
「うひゃぁっ!?」
攪乱に専念する千佳のつぶやきはATの攻撃で上塗りされ、下着に剥かれた悲鳴が響く。
ともかく数的不利がやっかいと判断し、囮戦法で何とか数を減らしていた。
「……見よ、セレン。このチョコ、他の物より大きいのじゃ……」
「ごめん、余裕ない!!」
一心不乱にお菓子を回収する桜狐と、敵の銃弾を撃ち落としながらお菓子を増やすセレンも負けていない。
見事な――連携?
……うん、連携。
「うにゃあ!?」
「っ!? とはいえ、やはり厳しいか!」
そう、3人は善戦している。
しかし、優勢ではない。
また千佳が一発被弾し、ATも透ける服に焦りが募る。
「(次はねぇぞ、クソ兎)」
「(こちらの台詞です~)」
一方、利博と結衣は遺恨を残しつつまだ行動をともにしていた。
あれから何度かの襲撃で服はボロボロのため、肉壁(デコイ)を手放すのは惜しい。
余談だが、彼女たちの誓約は【裏切らない事】である。
「そこね!」
「チッ! 出番だ、クソ兎っ!」
そこで迫った複数の銃撃に、利博は結衣の背中を押した――銃撃の方向へ。
「あ~れ~、手が滑りました~(棒)」
体勢が崩れた結衣は攻撃から逃れ、倒れる寸前に体をひねり反撃する――利博へ。
「な、っ!?」
笑みから一転、利博は跳躍しで何とか躱した――背後からの銃弾ごと。
「真面目にやれ!」
「使えない犬ほどよく吠えますね~」
「役立たずはどっちだメタボ兎!」
「よろしい~、ならば戦争です~!」
囮役の押しつけ合いでフォローしていた事実に気づかず、利博と結衣は口論のすえに決別。
第三者も巻き込んだドンパチで衣装のライフが吹っ飛んだ。
(やはり、勝つという事は必然的に未成年たちも下着姿に剥くんだよな……)
そんな右往左往する様子を眺めつつ、遊夜は意識して真面目な表情を作る。
もし女性の下着姿を見れば、愛情深い奥さんから制裁をもらうことは間違いない。
(その点、セレンさんなら安心だな……容赦なく剥くけど!)
女性比率が高い戦場で難易度は高いが、遊夜は紳士的な行動を心がけて牽制の弾をばらまいた。
「……ユーヤ?」
しかし、悲しいかなここはコメディという戦場。
精度の低い銃弾はセレンをそれてうら若き女性たちへ向かい、次々と服が透ける。
「――リーヤ、これh」
振り返った瞬間、遊夜は目の据わったユフォアリーヤにがっつり噛まれた。
夫婦の愛は痛い。
「――いたぞぉ!!」
直後、遊夜たちは頭上から聞こえた声に反応し急いでその場を離脱。
2人がいた地面に大量の銃弾が降り注ぐ。
「追え、逃がすな!」
「独り身の前でイチャコラしやがって!」
「カップルは剥け! 容赦するな!」
振り返ると、がれきの上から結託した独身男たちが次々と発砲。
ユフォアリーヤを先に行かせつつ、遊夜は被弾しつつ牽制射撃を行いつつ反論した。
「リーヤと俺は夫婦だ!」
「……やーん……やーん♪」
『ひと回り以上若くてかわいい嫁さんとか、もはや犯罪だぞおっさん!』
が、嬉しそうに尻尾をフリフリするユフォアリーヤの反応が火に油を注ぎ、嫉妬と銃撃はもっと苛烈に。
その後、参加者が一カ所に集中した結果、大乱戦に発展する。
「あとどれくらいで試験は終わりなのかにゃ?! かにゃ!?」
AGWの駆動音と悲鳴と肌色が乱舞し、とにかく目に付く敵へ銃を乱射していた千佳は誰かに叫ぶ。
瞳がグルグル渦を巻き、ATの援護を信じてひたすら戦場を駆け――やがて銃声がしぼんだ。
「にゃ、勝利でいいのかにゃ……」
「隙あり!」
それで千佳は油断し、背後に現れた黒猫の女性へ振り向いた。
「千佳ちゃん! ――えっ!?」
「――うにに!?」
銃撃は反射的だった。
故に……千佳もATも、黒猫の向こう側に聞こえた仲間の声に反応できない。
「しまっ!?」
結果、ATは千佳の弾に。
「にゃあ~!?」
千佳はATの弾に。
『うそぉ!?』
黒猫は2人の弾に挟まれ、黒猫の弾は遠くの誰かに命中した。
最後は大量の流れ弾が飛び交い、全員ボロボロのしっちゃかめっちゃかで終了した。
●トリック>トリート
職員がお菓子を回収する中、ひときわ目立っていたのが麻生夫妻だ。
「リーヤ……まだこのままか?」
「……ん、まだ」
積極的に攻撃を受けて下着姿の遊夜は目隠し状態で、服の形を残すユフォアリーヤが手を引いている。
最終的に多くの女性が下着姿で歩いているため、妻の一存でこうなった。
だが、その……露出目隠しプレイは絵力がすごい。
「はぁ、酷い目にあった……」
「全くです~……」
利博と結衣も下着姿でトボトボ歩いていた。
羞恥心より疲労が強く、全く隠す素振りがない。
「……ふむ、使ったお菓子は貰えるのじゃったな……セレン、いっぱい貰ったし食べるのじゃ……」
「はぁ~……、桜狐さん、お疲れ様――っ?!!」
1人だけホクホク顔の桜狐をずっとかばい続けたセレンが脱力して振り向き、一気に赤面する。
「? どうしたのかの……??」
不思議そうな桜狐がかしげた小首から下は、完全にスケスケだった。
胸のサラシも下のふんどしも丸見えで……いや、透けた袴の股に布地がたたまれもはや見た目はパンt
「あわわ――っ!?!?」
「……ほら、やっぱりね」
「にゃはは♪ いっぱい運動して楽しかったにゃ♪」
とっさに思考を遮ろうと顔をそらしたセレンだが、そちらにはATと千佳の下着姿が!
「さ、お菓子を貰いに行くにゃ♪」
「はうう、皆、服! 服着ないと! お菓子はそれから!」
「ははは、まぁ流石に少し照れるね」
桜狐はともかく千佳も平気そうなのが信じられず、セレンは真っ赤な顔で叫んだ。
頬が赤いATが腕で隠そうとしているだけマシだろう――隠しきれていないが。
「後は、お酒もあれば最高にゃんだけど、それはないかにゃ?」
「千佳ちゃんが今飲んだら、下着も脱がない?」
「脱いじゃうかもにゃ~……まあ、ほとんど女の子だし大丈夫じゃないかにゃ?」
「僕いますけど!?」
なお、ATと千佳の会話からほぼ女子枠と発覚したセレンの抗議はスルーされた。
頑張れ、男の娘(こ)。
「――あれ、サキュバスちゃんブラつけてないじゃん」
「え? 僕は男――」
「このタオルで隠せそうね、ハイ」
「あの、僕おt――」
「着替えの後で返してね~!」
悪意のない女性の親切が身にしみた……がんばれ、男の娘(セレン)!
そうして試験は終わり、参加者たちにお菓子が配られた。
弾以外にも大量に用意されていたお菓子を囲み、各々疲れた体で甘味を楽しむ。
「あ、そのお菓子ください~」
「ちょっと待った、ハロウィンなんだからあの文句を言わないと」
「あ、そうですね~……トリック オア トリート、お菓子をくれないとイタズラしますよ~」
「おー怖い怖い。ほらどうぞ」
「ありがとうございます~」
試験中は盛大に喧嘩していた利博と結衣も、水に流したのか仲良くお菓子を食べていた。
「改善点ですけど~。弾速が遅いから、素早い敵だと当てづらいと思います~。レーザーライフルみたいな形が理想じゃないですかね~?」
「やはり、出力系統が急務か……」
ついでに、結衣を始めちらほらと浮き出た改善点を引き受け、主任の礼で解散となった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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