本部

ハーヴェスト! 実りを守れ!

鳴海

形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 1~25人
英雄
7人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/10/11 20:14

掲示板

オープニング

● 収穫祭
 秋、実りの秋。
 秋。食欲の秋。
 日本は豊かな気候と四季によって毎年美味しい食材がとれている。
 水の幸であれば、鮭や鱒、イカ。
 山の幸であれば、米にナスに人参、芋類かぼちゃ。
 秋には収穫を祝って祭りも多い。
 冬に突入する前の楽しみというものだ。
 しかし今年の秋は従魔によって脅かされている。
 これは君たちが今回防衛することになる農村、そこから35キロ離れた農村で録画された映像である。

 悪魔たちは夜にやってきた。

 無数の羽音。バサバサと重なるその音に飛び起きた村人たちは灯りをつけようとした。
 しかし一向につかない。
 停電である。
 仕方ないので火をともして外に出た。
 すると最初は月のない夜かと思ったのだが。
 実は違う。
 カメラが空をむく、ズームする。
 十倍以上に拡大された画面に映っていたのは、チラチラと蠢く影。
 そう何かの群体が村を襲っていたのだ。
 唖然と空を見上げる住人達。
 次の瞬間。
 その雲のような軍隊はゆっくりと降りてきた。ぎちぎちという音を鳴らしながら。
「に、にげろー」
 誰かが叫んだ。
 しかしどこに逃げるというのだろう。その雲は村をすっぽりと覆うように展開しているのだ。
 やがて住民の悲鳴が聞こえた。
「こいつら俺の服をかじってやがる」
「いてぇ! いてぇ!」
「俺らも食われるぞ」
「蔵の作物が! 全部食われてる」
「もうだめだ、おしまいだ!」
「あああああ! いたいいたい」
 村人たちの阿鼻叫喚をたっぷり三十分映した映像はやがて電池切れのアラートと共に途切れ。
 リンカーたちの意識も現実に戻ってくる。



● 打倒目標イナゴ雲
 今回皆さんに相手にしていただく敵は超巨大従魔。
 命名イナゴ雲です。
 一体一体はとても弱いのですが。まるで一つの肉体、その細胞のように統率がとれていることから、この従魔は一体の従魔として認定されました。
 世にも珍しいケントゥリオ級従魔でしょうか。
 幸いなことに、人間への攻撃性能はそれほどではありません。
 肉は食べられないのか、かじって攻撃するだけで一般人に死亡者はでていませんし、作物をあっという間に食べ尽くす以外特殊な能力はありません。
 ただ二つ特徴があるので注意してください。

・上空15Mまでは飛ぶことができる。
 作物を食べるために地上に群が下りてくることもありますが、空に上がって様子を見る知能も持ち合わせているようです。

・範囲攻撃を受けるとダメージが倍になる。
 フリーガーやリンカーの各種スキルの範囲攻撃。
 これを受けるとダメージ効率が二倍になります。

● 復興支援。
 今回従魔を倒せないということはほとんどないと思いますので。その後の復興支援もお願いしたいです。
 襲われた村は従魔に作物が食べ尽くされてしまいました。
 その分の食料は国から補てんされるとして。
 この村はこの時期お祭りを控えていて、それが住民たちの何よりもの楽しみだったそうです。
 なのでリンカーが代わりにお祭りを開いてあげて欲しいのです。
 出店を出して、出し物を出して。
 お祭りを盛り上げてください。
 H.O.P.E.の力で、大抵のものは輸入、入手できるので、皆さんのとっておきの出店を期待します。
 
 また、従魔の被害から逃れた市民たちは皆さんをヒーローと崇め奉っています。
 強くなった秘訣。リンカーになろうとしたきっかけなどお話ししてあげれば喜びますし。
 サインをはじめとしたサービスも受けるでしょう。
 AGWをはじめとする自慢の装備をみせてもらいたがったり。
 戦いを挑んできたりします。
 相手は一般人なので、共鳴しない戦闘をお願いします。




解説

目標 従魔の撃破。
   復興支援

 今回シナリオは二つに分かれます。
 従魔の撃破と、復興支援のお祭りです。
 文字数としてはだいたい半々くらいを想定していますが。
 参加者の文字数によっては偏る可能性もあります、ご承知おきください。

 戦闘は朝早くから行われます。
 従魔を倒すのに時間がかかると設営の時間が無くなりますので。注意です。
 従魔を倒しながら設営してもいいかも?

 夜はお祭りです。伝統としてかがり火をたいての祭りとなります。
 この従魔の撃破の際に目立つ戦い方をした人には、お祭りの時に沢山の人がファンとなって押しかけることでしょう。
 また両方のプレイングを絶対にかかなければならないというわけではありません。
 復興支援か、従魔との戦闘。
 どちらかにクローズアップしても問題ありません。

リプレイ

プロローグ

 遠くから車を走らせていると、それはまるで雲のようにも見えたのだが。実際のところは違う。
 揺れる山道、車のタイヤが跳ねるとリンカーたちはお尻を硬い椅子に衝突させることになる。
 中でも『魂置 薙(aa1688)』は唖然とその従魔の群を見ていたがためにガラスに額をぶつけてしまった。
『エル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001 )』がくすりと笑うと、エルを一瞥して薙は再び外の光景に視線を戻す。
「また虫か……」
 その言葉に『皆月 若葉(aa0778)』も深く頷いた。
「また、虫だ……」
「すごい数だね」
 告げる『ラドシアス(aa0778hero001 )』にぞわりと動いた雲を見て身を震わせる薙。
 二人は虫に関して嫌な思い出でもあるのだろうか。
「今回の蟲は、死者を出すほどじゃないのが救いかね」
『麻生 遊夜(aa0452)』がそう窓の外を眺めながら告げる。 
 本来この時期は作物が実っているはずの畑には枯草一つころがっていない。
 まるで種を植える前の畑である。
「……ん、でも被害は甚大……作物の、敵討ち」
 そう鼻息荒く『ユフォアリーヤ(aa0452hero001 )』が告げた。
「食べられた分、食べてやるとするか」
 そう冗談めいた口調で告げた遊夜だったが、その言葉に顔をしかめる若葉。
「えっ、従魔って食べれるの!? 気になるよ!」
 そう立ち上がる『春月(aa4200)』の声が車内に響き。
「ちょいとレイオン料理してくれないかいっ」
「本気かい……?」
 その言葉に『レイオン(aa4200hero001 )』は眉をひそめた。
 同じく眉をひそめるラドシアス。
 本来であれば近付きたくもないのに、食べるなんて考えられない。
「善処はするが」
 告げるレイオンはそう言いつつも脳内で、的確な従魔調理方法を模索する。
 そうこうしている間に窓ガラス越しにも羽音が聞えるようになってきた。
 ここからはいつ襲われてもおかしくない戦闘圏内だ。
「鉄もかじられんことをいのるか」
 そう遊夜はスコープを覗く。

第一章 イナゴ退治だ

「おわー、バッタだ!!」
「え、従魔だろ……」
『ルカ マーシュ(aa5713)』は直上方向を見あげるために首を真上に向けて、転がりそうなほどに背中を反っていた。
 これで引っ張ったらきっと悲鳴をあげてこけるんだろうな、そう思いながらも『ヴィリジアン 橙(aa5713hero001 )』は手を出さない。
(最近イナゴに関する本を読んだな……でも内容忘れた……)
 思うヴィリジアンはその肩を支えてルカの顔を覗き込む。
 するとルカの目が輝いてた、顔になんて書いてあるかわかる気がする。
『なんかこいつらなら勝てる気がする!』
 上空をぶんぶん飛び回るイナゴ達、その羽音が重なって妙な圧力となる物だからたまらない。
 薙も思わず身をすくめ『世良 霧人(aa3803)』はびくびくしっぱなしだ。
 まぁ『エリック(aa3803hero002 )』はのんきに鉛筆を構えているのだが。
「さて、いくか」
 告げるとルカは共鳴。丈夫な虫取り網をその手に携えてイナゴを睨む。
「沢山イナゴとってね、よろしく」
 告げるのは春月。春月は英雄と共にイナゴの調理を担当する。
 捕獲したイナゴが食用か、調理前に一日絶食させるのが普通らしいが、従魔にもそれが必要か調べつつ、調理方法も調べる。
 そのため戦闘に参加している時間はなかった。
「けど、どうやって下ろしてくるんだ?」
 ルカが尋ねると遊夜が隣に並び立つ。
「それじゃ開幕の狼煙を上げるとしようか」
 遊夜の体に解け合うユフォアリーヤ。
「……ん、これだけ多いなら……全弾命中」
 くすくすとした笑い声がとけるように消え、やがて遊夜はその耳を震わせる共鳴形態に移行した。銃を構える。
「さぁ、こっちに。こい」
 開かれるカチューシャ放たれた砲弾。それは空中のイナゴその一匹に激突すると盛大に爆炎を広げた。
 突然の奇襲にお腹いっぱいでいい気持になっていた従魔も大慌て。
 怒りの羽音を奏でるイナゴ雲は地上に現れた獲物を骨だけにしようと群ををなして近づいてきた。
 それには遊夜が平然と対処する。
「ま、数が多いだけなら問題はない」
 空を飛ぶ、そして様子見をするってだけなら我らが的である!
 そうへパイトスに換装すると近づくイナゴ達を続々と打ち落としていく。
「く!」
 それでも全体を駆逐することはできず、正面から遊夜に突っ込むイナゴ雲。
 バリバリに服が破れて素肌が露わになっていく。
 このままではスッパになってしまう。
「ああは、なりたくないかな」
 走りながら薙は振り返る。突撃してきたイナゴの集団を斧の腹で器用に受け止めて、ボールを打ち返すように地面に叩きつけた。
 いちおう、戦闘フィールドにすでに食い尽くされてしまった畑を選んだのだが。なかなか足がとられる。
 背後で羽音。思い切り斧をふり従魔の群を引き裂くと、イナゴ雲は恐れをなしたように上空に逃げる。
――良いか薙。此度は短期決戦じゃ。荒らす間もなく沈めてくれる。
 エルの言葉に、己に張り付いた蟲を払いながら薙は頷いた。
「うん。早く終わらせて、お祭り、しよう」
――では後は任せたぞ
「うん? ……エルル?!」
 次の瞬間、薙は体が脱力するというか、操作しやすくなるというか、不思議な感覚を受ける。
 エルが薙に主導権を完全に預けたのだ。
「ずるい!」
 そう非難の声を向ける薙であったがこれはどうしようもない。
 恐怖映像……別村襲撃の様子を見てエルは思ったのだ。
 騒がずにいるのは無理……と。
 なので意識を落すことにした。
 これから薙の孤独な戦いが始まる。
――大量に集まってるだけなんだから、とりあえず攻撃して削れば良いんだろ?
 告げるエリックに霧人はほわほわとした返事を返す。
「で、でもどうやって」
 その時エリックはポケットの小包を示す。
 霧人はそのカラフルなリボンで飾られた小箱を見るとすべてを察した。
 それを天高く放り投げるとイナゴ達はその包装にかみつき食い破り始める。
 直後大爆発。
 イナゴの羽がぱらぱらと降り注ぎ霧人はパニックに陥った。
――まだまだ!
 それから取り出したるは書初めの筆。
 それでイナゴ達叩き落とすように攻撃する。
 其れを眺めて『五十嵐 七海(aa3694)』は溜息をついた。
「……虫は平気だけど……こんなに居るとザワーっとする……よ」
――これを見て喜ぶのは昆虫学者や生態研究者だろうな。
『ジェフ 立川(aa3694hero001 )』は続けてこう告げる。
「発生範囲を確認してもう発生しないように根こそぎ倒すんだ」
 七海はイナゴの大軍の端から追い立てる役である。
 と言ってももはやイナゴの大軍に巻かれている状態ではあるが。
 次いで取り出したるはフリーガーファウスト。
 イナゴの大軍の群から一度抜けて、反応して七海にイナゴが向かう前にトリガーを引く。
 炎のカーテンをしいてイナゴをシャットアウト。
 羽がぱらぱらと燃えながら空を舞った。その炎の威力が収まらぬうちにイグニスを取り出す。
 この、どこにうっても当たる状況、七海は何も見ないで放火する。
「焼き畑農業とか草木灰って有るし……良い肥料になると思うんだ……」
 そうめらめらと燃えるイナゴ達を眺めながら、七海は炎を出し続ける。
 イナゴ達を映す目が死んでいる。
「攻撃で燃えなくても土に混ぜれば元は生き物だから大地に帰るよね?」
 引きつった笑みの七海。
「うん……そうに違いないんだよ……!」
 そう盲目的に炎を放つ七海にジェフは少し苦笑いを見せる。
「わああああ、死骸が山に」
 炎が消えれば七海の前にイナゴの山が出来上がっている。
 当然だろう、七海に突撃したイナゴ達はそこのラインを境に黒焦げになるのだから。
 七海は泣きそうになりながら山を蹴散らしてあたりに散らす。
 あとで、地元民に声を掛け均一に土に混ぜて貰う予定である。
 そんなイナゴの死骸の山を蹴り飛ばして青年が全速力でダッシュしていく。
 ルカが飛びながら空中で背後を振り向き回転。ショットガンから散弾を放つ。
 着地すると、英雄に話しかけそうになる思いを飲み込んだ。
 英雄と話せないせいでいつも不安で一杯な共鳴だが。
「今日は平気!」
 そうルカは再び走り出した。
「僕には分かる! あいつらは……えっと、範囲攻撃? やればいいんだ!」
 その隣を霧人が並走する。
「スキルを使うといいよ、特にカオティックブレイドは得意なはずだから」
 告げて霧人は跳躍、いなくなった。
 ルカは再び迫るイナゴへ反転、手を前に突き出して抜き武器を複製。
「いっけ!」
 放たれる散弾。それも複製した銃からも雨あられのように放たれる。
 それは、空中でイナゴ達を粉砕し絶命させるも、その勢いづいた体は加速度そのままにぱらぱらとルカに降りかかった。
 ルカは悲鳴をあげる。
「くっそ、ダイダイー! 出てこーい!」
 英雄に文句を言うルカ。しかし別に英雄に切り替わることはない。
 そんなルカは地面を削って地面に膝をつく。アルパカをかまえて銃弾をばらまき援護を。
 どうやら大きく反撃に出るらしい、若葉を援護した。
「わわわ。ボケっとしてないでよ」
 その声に薙は振り返ると若葉が衝突してきた。
 薙の肩につかまって急停止。
 薙ぎは斧でバランスをとりながら、若葉を追いかけてきたイナゴの大群を蹴散らす。
 割とイナゴは武器を振るう衝撃などで吹き飛ばされてしまうらしい。
 分厚い層になっていなければ突進程度ならカットできるだろうか。
 それにしても調子がいい。
「畑の守護霊のおかげかな」
 ポルードニツァを円状に振るい、周囲を飛び交っていたイナゴ達を蹴散らす。
 わずかに服を食まれたがまだ、大丈夫……。スッパまでまだ遠い。
「あの辺に穴、開けられるかな?」
 若葉が服に食らいついたイナゴを叩き落としながら薙に問いかける。
「ん、任せて」
 薙は斧をいったん収め。そして抜き放つ。
「いっけ!」
 突き上げるように上空に伸ばされた斧はその一撃でイナゴを散らせた。敵の防備が手薄になる。
 上空に放たれるマーカー。それがイナゴの一匹に付着。
「行ける!」
 薙の攻撃で生じたイナゴの群、その群れの中に若葉が群れに生じた穴にランナーで移動。
 そしてイナゴの雲の中心で猫を大量に生成した。
 イナゴの羽音とニャーニャーなく猫の声が重なる。
 そしてその猫はイナゴの捕まえるために放たれた。
 地上に向けて大量の猫が落下していく。
――もっと別の方法あるよな?
 そうやれやれと肩をすくめながらラドシアスは告げた。
「あるけど……猫が降ったら楽しくない?」
 若葉は見事着地すると薙と拳を合わせる。
 だが敵はまだ倒されきったわけではない。
 いつの間にか円状に囲まれている二人。
「まずい!」
 そう若葉が叫んだ矢先。そのイナゴの中心に霧人が踊り出た。
 霧人は二人を振り返る、そして優しく微笑んだ。
「君たちが犠牲になることはない」
 それは教師が生徒を導くかのような優しい瞳。
 次の瞬間霧人の服がバラバラにはじけ飛んだ。
 上半身だけ。
「は……はずかしい」
――そんなこと言ってる場合じゃないみたいだけど?
 エリックが飄々と告げるとイナゴの大群がUターンして戻ってくる。
 メインディッシュにありつこうとでもいうのだろうか。
 イナゴは霧人めがけて突っ込んで来ようとした。
 ただ霧人にも秘策はある。
 抱えるのはみかんキャノン。
 そのみかんキャノンから放たれた霊力性みかんを受けたイナゴ達は。
 それに群がる。
 人肉よりみかんがお好みらしい。
「降りておいで」
 さらに霧人はみかんを放つ。
 みかんにおびき寄せられてくるイナゴ達。
 そのイナゴ達は遊夜の放つ膨大な霊力で消滅してしまう。
 アハトアハトの威力はすさまじかった。
「これだけいると弾が無駄にならなくていいな」
――……ん、良い訓練……一発も外さない、とか?
 怒りの反撃、遊夜へ迫るイナゴ達。
 それも若葉のアハトアハトで駆逐される。熱でこんがり焼け地面に落ちたイナゴは足をぴくぴくさせると転がって死んだ。
 それをルカが網でとって虫かごに入れていく。
 見ればルカの虫かごはイナゴでパンパン。
 そのイナゴもいっぱいになれば戦場から少し離れたコンテナの中にざっと入れられる。
「数も少なくなって来たけど」
 若葉はあたりを見渡す。
 モスケールを起動。散って逃げようとするイナゴ達を残らず駆逐するために走った。
 ルカもその後に続く。
 虫取り網を振り回し網が食いちぎられそうになったら生け捕りは諦める。
 虫かごは見る見るうちにパンパンになる。
「イナゴは詰め込めるだけ詰め込む。食材は大事、逃さんぞ!」
 これでは立場が逆である、今やイナゴは食べられる側に回っていた。
「あ! イナゴが逃げる」
 その言葉に真っ先に反応したのは七海。
 上空に逃げようと飛来したイナゴ達の頭を抑えるようにアハトアハトを放つ。
 それをきっかけに、もう残りが少なくなっていたイナゴは集団で行動することを止めた。イナゴは四方八方に逃げ出す、しかしその判断ももう遅い。
 叫んで霧人が取り出したるはパンダクッキー。
 パンダクッキーを投げつけられたイナゴ達はクッキーを食べるのに夢中になり、地面に落ちる。
 そこを薙に叩かれ昇天した。
 いつの間にか羽音は消えている。
 若葉のモスケールを確認した。次いで薙は共鳴を解除、地面に降り立ったエルは同じく共鳴解除したラドシアスの肩を支え問いかける。
「大事ないか?」
 そのラドシアスは額の汗をぬぐうとこう答えた。
「どうにかな……」
 こうして日没までにイナゴの駆除は終了したのである。
 ただ、目の前にはイナゴの死骸の山。
 倒し方によっては無傷のものもあるが、ほとんど黒焦げだったりバラバラだったり、その処理もまたリンカーの仕事なので、もうしばらく宴はお預けである。
                               
第二章 英雄凱旋
 
 その村は地方の例にもれずに老人が多いらしい。
 戦いから返ったリンカーたちはまず春月が迎えた。
「お疲れさまーっ」
 そう癒しの光が全員をつつむ。
「助かるよ」
 そう言って若葉が笑った。
 そんな春月だったがエルの様子がおかしいので顔色を窺ってみる。
「エルさん虫苦手だった気が! クリアレイしてみようかなっ効くかなっ?」
「効くわけがなかろう、しかしねぎらいは感謝する」
 次いで村のお偉方に歓迎された。
「おお。あの災害のようなイナゴを倒してしまうとは」
「戦前はあのようなイナゴもでたものじゃったが、そのころからリンカー様がいてくれればのう」
「さぁさぁ、こちらへ宴の準備はできておるからのう」
 若葉と薙は一緒におくの席まで歩かされる。
 かがり火を持たされ、みちにおかれている松明に火をつけて歩いた。
 その後ろを老人たちがありがたやー、ありがたやーと唱えながら続くのでなんだか変な気持である。
 席に通されるとその席は祭会場の真正面で一番目立つ位置。
 次々とグラスに飲物が運ばれると、村の人間が料理したご飯がリンカーたちの目の前に並んだ。
 なれない対応にあたふたしているルカそのルカの前の前に子供たちが集まってくる。
「お兄ちゃん、どうやってイナゴ倒したの?」
 その言葉にグラスを傾けるヴィリジアンがAGWをみせるように言う。
「えっとえっと、見せていいの? 怒られない?」
 周りのリンカーに問いかけると遊夜が告げる。
「AGWはリンカー以外に扱えないようになってるからな。見せるだけならいいだろ」
 告げると子供たちにアルパカをみせる。
「これ、本当に武器なの?」
 アルパカの説明を始めるルカ。
 その隣で遊夜はカチューシャを披露していた。次いでヘパイストスを手に取ると其れもテーブルの上に載せて見せる。
「これは翼のように展開するのが特徴だな、カッコイイだろ?」
「……ん、こっちは……使いやすく、改造したの」
 ユフォアリーヤがどやっと言い放つと、人ごみから歓声が上がる。
 そんな子供たちの相手は霧人達も手馴れている。
 霧人が眺める前でエリックが子供たちを集めて。フデやシューターを模したAGWつまり、書き初めの筆とスーパーミカンキャノンを見せ、実際に使って見せる。
「逃げ足なら誰にも負けないぜ!」
 いつの間にか鬼ごっこに発展していたエリックと子供たち。
 その姿場祭り会場に消えるのを見ると一行も行動を開始した。
 ルカの英雄であるヴィリジアンは祭り会場を見学に。
 リンカーたちも少し休憩したので屋台を出し始めた。
 遊夜はあらかじめ運び込まれていたテントと物資を確認するとにやりと笑う。
「補填されるとはいえ丹精込めた作物喰われたんだしな」
「……ん、士気向上……英気を養うのは、大事」
 ユフォアリーヤがこくんと頷く。そんなユフォアリーヤが取り出したるは鋼鉄の串。そして、でっかい肉の塊。
「……ん、このお肉は……良いお肉、これで行く」
 今すぐかじりつきたいユフォアリーヤの尻尾はぶんぶん揺れていた。何せ最高級の牛肉である。
「あいよ、相変わらず肉の目利きでは勝てんなぁ」
 その隣では若葉とラドシアスが人形焼きを作っている。
 先ず試作品第一号。それを薙に味見してもらう。
「……こんな感じか?」
「ふわふわだ♪」
 そう頬張る薙を見て
 エルと若葉も人形焼を受け取った。
「うん、美味しい!」
「出来立ては良いの」
 上機嫌なエルである。
 これならば行ける。そう思った一行は暖簾を掲げた。
「当店限定、きぼうさ型、あります!」
 薙がそう声をあげる。
 リンカーが出す屋台はあっという間に人だかりができた。
「若葉、猫型、2袋!」
 薙が手を伸ばすとラドシアスが袋を手渡す。
「購入した者には射的勝負の挑戦権をくれてやる」
 告げるエルは空気銃を片手に声をあげた。見れば人形焼の隣のブースに射的場が組まれている。
「我こそはと思う者はかかってくるが良い。相手になるぞ」
 そうエルがかかっと笑うと、ラドシアスは溜息をついた。
「……俺がやるのか?」
 コクリと頷くエル。空気銃を手渡した。
 子供たちがキラキラした眼差しでラドシアスを見あげている。
「仕方がないな、かかってこい」
 子供たちが入れ替わり立ち関わりラドシアスに挑戦していく。
「なかなかの腕だ……これも持って行くといい」
「餡子にクリーム、他にも色々あるよー」
 そう若葉が代わりに焼いた人形焼を、薙が子供たちに試食ということで小さく割って配っていく。
「猫型2袋だね、お待ちどうさま!」
「やぁやぁ、繁盛しているみたいだね」
 そんな若葉たちの前に春月が姿を見せた。
「そっちはどう?」
 薙が問いかけると春月は告げる。
「忙しい。意外と好評なんだよね、イナゴの佃煮」 
 告げると瓶に詰めたイナゴをさしだす春月。
『料理してみたいから、イナゴのお土産よろしく!』と集めてもらったイナゴは美味しく佃煮になりましたとさ。
 その瓶にエルはいっそう渋い表情を向ける。
「あー、そうなるよね」
 春月は思い出す。イナゴの佃煮が完成したときのこと。
『御所望のものだよ』
 そう春月に迫るレイオン。
『えっ!? 作ってくれた人からどうぞどうぞ』
 そう後ずさる春月。
『遠慮するなんて春月らしくないな』
 がしりと肩を掴まれてその茶色く着色されたそれを口に近づけさせられる。
 捕まえて食べさせる。そのあまりにはっきりとした、虫です! と主張する形態に悲鳴をあげる春月。
『ぎゃー!!』
 直後口に突っ込まれた。レイオンが春月の口を閉じさせる。
『……意外に……いける!? 』
 満足そうに頷くレイオン。
「ということがあってね」
 そう春月が説明すると瓶から佃煮を一匹取り出す。
「ちなみに、食べたものはすぐに霊力に変換されてたみたい」
 そう春月は言いながら薙と若葉を追いかけはじめた。
 そんな賑わいを眺めながらジェフは七海に語りかける。
「屋台を巡らなくて良いのか」
「遊ぶのは彼とデートの時にするよ」
 そう小さく微笑んで、七海はグラスを煽った。
 


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803

重体一覧

参加者

  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • フリーフォール
    エリックaa3803hero002
    英雄|17才|男性|シャド
  • そうだよ、楽しくやるよ!
    春月aa4200
    人間|19才|女性|生命
  • 変わらない保護者
    レイオンaa4200hero001
    英雄|28才|男性|バト
  • 魔法マニア
    ルカ マーシュaa5713
    人間|19才|男性|防御
  • 自己責任こそ大人の証
    ヴィリジアン 橙aa5713hero001
    英雄|25才|男性|カオ
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