本部

【終極】連動シナリオ

【終極】終末の音

鳴海

形態
イベントEX
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
22人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/10/10 09:56

掲示板

オープニング

● 最終決戦

 ガデンツァは疲弊していた。精神的疲弊である。
 その手でか弱い人間を握りつぶしたこと、いまだになぜかわかっていなかった。
「リンカーの屑どもが!」
 その手には血。しかしまんまと逃げられた。
「贋作! わらわが贋作じゃと! 何も知らぬくせに、何にもなせぬくせに。世界の破壊者に対してなんたる物言い。わらわは世界を破壊し尽くし、破壊して。破壊……」
 ガデンツァはDARKのブリッジに到着するなり疲れ切った顔でルネ達を起動した。
 オペレータールネ達は素早くDRAKの損害を導きだしガデンツァに報告する。
 動力炉が損壊、修理に二十四時間必要である。
 その時間があれば十分にリンカーたちは攻撃の準備を整えられるだろう。
「く……時間が」
 ここまで、ガデンツァが追い詰められたことはなかった。
 いつも社会の裏側から世界の脆弱さをついて。それで歌を響かせれば終りだった。
 なのに、なぜ今こんなにてこずっている。
「それだけではない。わらわはなぜ」
 仕留められなかった。
 あのリンカー二名をその場で葬るなど簡単なことだったはずだ。
「人など下らぬ、我が滅ぼす、滅ぼされるために存在する駒にすぎん」
 ガデンツァは全武装のロックを外す。
「滅ぼされるべきなんじゃ、そして我は滅ぼす。今度こそ役目を全うする。わらわは贋作などではない。本物のガデンツァ。世界を滅ぼす……音色」
 呻くようにガデンツァは索敵を開始する。
 これ以上もう、作戦はない。
 これが本当に最後の戦いだ。


● 戦闘の舞台
 今回は敵戦艦とH.O.P.E.の戦艦での真っ向勝負になります。
 ARKとDARKはその武装のほとんどが似通っています。
《 性能 》

直径 2キロメートル
高さ 82メートル
最高速度 22ノット 

基本兵装
 大型砲塔 十二門
 中型砲塔 三十六門
 小形迎撃用機関砲 百八門
 大型ライブスシールド八機

ARKにのみ存在する設備
・ライブステージ
 ARKには多数の歌手、アイドルたちが乗り込んでいます。 
 それらすべてはガデンツァの音が万が一戦況に影響を与えそうになった時、ガデンツァが別の手段で全世界に歌を発信しそうになったときのためのカウンターですが。
 平常時はここでアイドルたちが皆さんを応援してくれます。
 皆さんがアイドルの歌で高揚するかは謎ですが。
 歌によって背を押されるキャラクターであるならば。任意のステータス一つを1.5倍の数値にしていただいて構いません。
 またアイドルたちと共に謳う。もしくは自分の歌のサポートに入ってもらうことによって、歌えるリンカーは任意のリンカーのスキル使用回数を1回復させることができます。
 演出を考えてみてください。 

DARKにのみ存在する設備
・大型スピーカー 総数不明
 
 ただ、前回の戦闘でDARKはその大型砲塔を使用していません。
 その砲塔の能力だけ未知数であることに注意が必要です。
 ちなみにARKの大型砲塔は大型のライブスシールドを破壊する威力であるため。
 相手のシールドも一撃で食い破れると思われます。
 ただ、それはこちらも同じです。
 ARKが沈まないように気を配る必要もあり、DARKを鎮めるために何ができるか考えてみましょう。

 ただ、こちらの本当の切り札はすでに用済みとなった宇宙ステーションで。
 シャトルをエンジン代わりにDARKめがけてそれが突っ込む予定です。
 戦闘開始から10ラウンド経過での突入です。
 宇宙ステーションには天翔機の充電施設があり、宇宙ステーションが大気圏に突入した後は天翔機を使用することが可能です。
 この宇宙ステーションは自動操縦でリンカーは乗ることができません。

・ 天翔機・天元
 今回使用していただくのは決戦仕様の天翔機です。
 使用すると重体になるまでに霊力を吸われますが、その代りリンクバーストを無条件で行えるようになります。
 最初からバーストしているわけではなく、クラッシュする危険はありますので注意です。
 翼は英雄のあり方によって大きく様相を変えるでしょう。

● その他貸出物。

 運転手除いた四人乗りのヘリが4機
 運転手込みで二人乗りの戦闘機2機(移動力+5)
 六人乗り小型ボートは20艘(移動力+3)
 駆逐艦弐隻(搭乗者はカチューシャのシナリオに一度の効果を無効にできます。)

 どれも操縦者のリンカーの移動力に依存します。括弧内は移動力ボーナスです。
 ただ、霊力に対する攻撃に弱く、一撃で粉砕されるので注意が必要です。



●希望の音~H.O.P.E.~

 リンカーたちはガデンツァの真の目的に対するカウンターとして希望の音を作り上げました。
 この歌はガデンツァの心を砕く歌『崩壊の音~END~』を中和することができます。
 彼女の本当の目的は東京海上支部にDARKを接触させ、東京の放送局から侵入、世界中の媒体からこの歌を発信。
 心を砕くことにあります。
 ただそれ以外にもこの歌には『ガデンツァ』への想いも含まれています。
 この歌は共鳴中リンカーには効果を及ぼしません、なので戦闘中は絶対に共鳴を解かないようにしてください。

● 敵戦力について。
 今回H.O.P.E.の防衛網を破るためにガデンツァも最後の戦力投入です。
 出し惜しみはないと思われます。

・航空爆撃型ルネ 48体
 空中から爆撃するためのルネです。
 空中にいるため再生能力はありません。
 背中に翼を生やしたルネですが。その翼から落される羽が爆発物であり、その腕に装着された音叉で空気を振動させ真空刃を生み出します。
 
・水上走行ルネ 24体
 水上を高速で走行するルネです。
 従来のルネの弱点であった機動力をカバー。
 ヴァイオリンの弦での近接斬撃と、ヴァイオリンで周囲5SQへの範囲攻撃ができます。
 もっとも脅威なのは再生能力を仕込んでいることで。 
 今回は生命力が0になった瞬間即座に再生します。
 ただしステータスはアップしません。

・まどろみ型ルネ 
 戦場に一体存在するルネです。
 再生能力を持ちませんが、半径100SQにいるリンカーたちに夢をみせます。
 それは現実に侵食する白昼夢で見せる夢は。
 自分自身が戦う理由に関して問いかけてくること。
 戦う理由を明確に答えられないのであれば二つのペナルティが生じます。

 まどろみ型ルネを戦場で発見できないこと。
 15ラウンドの段階でこのルネが生存しているとARK外にいるリンカー全員の共鳴がとけること。
 です。


・ラジェルドーラ型ルネ
 いつか封印の等で戦った、龍人を模したルネです。
 近接戦闘を得意とする鎧姿で、龍に変形して空を飛ぶことができます。
 攻撃手段は旗と双銃。そして胸のエネルギーコアを露出しての範囲攻撃。
 空を飛んでいる際は口から炎をはいて攻撃してきます。
 この戦場で最も火力が高く、その存在は、ヘリやボートの脅威となるでしょう。
 足止め。


解説

目標 DARKの撃破
 今回様々な情報がロクトやTRVに保管されていた資料からもたらされました。

 作戦手順

1 DARKの修復妨害のための攻撃。
2 ARKの防衛。
3 10ラウンド以降は宇宙ステーションの突撃を支援。
4 突撃間近でリンカーたちの撤退。

 今回は書くことが多かったので一番重要な要点をまとめます。
 謳いながら戦い。
 堕ちてくるシャトルを破壊されないように支援して。
 ガデンツァを倒しましょう。
 というのが一番大事です。

 また今回のシナリオのテーマは。
 PCの得意を生かせることです。
 ARKの防衛、歌。敵将軍クラスとの一騎打ちも歌の支援があれば可能です。
 また、敵のルネとの軍団戦。
 戦艦を指揮しての頭脳戦もできるようになっています。
 ぜひ、自分の活躍の場を見つけて頑張ってみてください。


● 戦闘派位置について。
 敵の陣形について形は下記のようになっています。
@……DARK
*……まどろみ
+……ラジェルドーラ
/……ルネ
a……ARK

    /
     /
      /
       /
@    *  /+    a
       /
      /
     /
    /

リプレイ

プロローグ
 船は準備が整うと整備用の配線や配管をひきちぎるように発進した。
 その巨大な戦艦が海上に駆り出されるのは数年振りか。
 そのレベルの非常事態が今東京海上沖に迫っている。
 ガデンツァの進軍。
 最後の悪あがき。
 そしてたどり着いた戦域にはぽつんっとガデンツァの居城が浮かんでいた。
「ようやく、ようやくここまで来たな」
 たどり着いた戦場で『麻生 遊夜(aa0452)』は風で髪をなびかせながら告げた。
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001 )』がその腕に額を押し付ける。
「……ん、総力戦……ここで勝てば、あとはおばさんだけ」
 堅牢な城が冷たく、寂しそうに見えるのはなぜだろう。
「すぐに病院に運んでください」
『R.I.P.(aa1456hero001 )』が扉を開いた。H.O.P.E.の救護班はヘリポートまで『魅霊(aa1456)』をタンカーで運ぶ。その体はほとんどが保護服に覆われていたが、それだけでひどいけがだとわかった。
「魅霊……ちゃん」
『蔵李 澄香(aa0010)』がその姿を見送る、指を伸ばそうとしてそれをためらった。
 彼女を、彼女をすくえた場所にいたはずなのに。なぜ。その思いだけがグルグルと澄香の中で逆巻く。
「ヘリは絶対私が守る、早く!」
『鬼灯 佐千子(aa2526)』が銃を構える。
 澄香は慌てて振り返った。
 戦闘は先ほど終り、ガデンツァ陣営はARKを見ると矛を収めたはずだ。
 ルネをいたずらに消耗させるよりも準備を整えた総力戦の方が勝ち目がある。そう判断したはず。
「あっちも予測していたの?」
 DARKのハッチが開いた。わらわらと飛び出してくるのは空中戦闘用のルネ。
「バルムンクが手に入った、バル達のデータ入れてくれる約束だったな」
 隊列をなすルネ、それを背景に『アリュー(aa0783hero001 )』が遙華に剣を手渡した。
「入れておく。けれど、まるでそのセリフ」
「大丈夫、絶対帰ってくるから。戦いが終わったら、お願いね……遙華」
 その脇を『アイリス(aa0124hero001 )』と『イリス・レイバルド(aa0124)』が通過する。
 魅霊の見送りがすんだ二人はいったんARK内に戻るらしい。
「さて、では衣装を調えてくるとしようか」
 アイリスがイリスをひょいっと担ぎあげると、そのままパタパタと医務室を目指す。
 さすがに大けがを負ったイリスとアイリスの連戦は無理だった。
 だが重傷を感じさせない軽快な足取り、それはまだやれるのサインである。
 体は満足に動かなくても戦意は微塵も折れてはいないし頭も目も働く。
 であればできることはまだまだあるのだ。
 ここで手を抜くわけにはいかない。
「まって、あなた達そんな状態でうたうつも……」
『斉加 理夢琉(aa0783)』が遙華の言葉を遮った。
 次の瞬間、ARKの大型スピーカーが展開される。ARK内部の映像が隣接したモニターに表示される。
 アイドルたちがステージいっぱいに集まっていて。皆声をあげリンカーたちを応援している。
 理夢琉はマイクを手に取ってガデンツァに向ける。
「ガデンツァ。前哨戦。私の歌を聴け!」
 告げてはじけるロックなサウンド。 
 熱い願いを込めた歌は赤原と紡いだあの曲。
 その歌にアイドルたちのコーラスが重なる。
 沢山の人の想いが今理夢琉やリンカーたちに託されている。
 それぞれの思いが溶け合ってみんなの心の旋律が一つになる。
――この感覚、まどろみの中で見たあの場面のようだ。
 共鳴しアリューが告げた。
「私達の旋律も奏でよう」
「絆と勇気をもって[ガデンツァへ挑む]」
 ガデンツァの軍勢が進軍してくる。それに一歩遅れてリンカーたちもARKから出発し始めた。
 先陣を切るのは緊急で傷を癒した『月鏡 由利菜(aa0873)』
「ラシル、前哨戦はリディスが繋ぎました。ここからはあなたにバトンタッチです」
『リーヴスラシル(aa0873hero001 )』は統一を解くと敵を見すえる。
 その戦闘を突っ切る鎧姿の物々しいルネ。
「了解だ。ガデンツァ……待っていろ、終焉は近い」


第一章 終わりの始まり:RE

 海面には白い霧、今までの鈍足はなんだったのかと思えるほどに勢いをつけてこちらに接近するルネ達が。
 海水を巻き上げているのでそう見えるのだ。
 霞がかった視界の果てに『望月 飯綱(aa4705)』はルネを捕える。
 その手の苦無を握り直して、滲む汗を握って告げた。
「またあいつらか…………ぼ、僕だってみんなを守るんだ!」
 弱冠十歳。まだ戦場に立つには若すぎる年齢でも数奇な運命を背負ったリンカーである。
 生き残る意志も術もある。
 飯綱は艦首に立つと駆逐艦を前進させた。
 隊列を組んでルネとぶつかる。
 ARKの砲塔が背後で狙いを定める音がした。
 そんなリンカー部隊の先陣を務めるのは『海神 藍(aa2518)』
 藍はその力を戦場に立つ前から感じていた。まるで心の底にノックしてくるような、優しい、けれど悲しい力。
 藍は視線をあげる。眼前には鎧姿のルネ。しかし藍が見ているのはさらにその先の敵。
――います。ラジェルドーラの背後に。
『禮(aa2518hero001 )』が藍にそう告げると藍は武装を構え直す。ブルームのバランスをとり直し、さらに加速。
 仲間たちより一足早く敵の布陣中央に突っ込んでいく。
「戦う理由はありますか?」
 声が聞える。
 何度もまどろむ夢の中で聞いたような声。
 それが戦場全域に広がっていく。奴らの接近と同時に意識へ強く干渉していく。
「戦う理由か」
 藍は自嘲気味に笑った。
「確かに、もう私には何もない。零れ落ちた幸せはもう戻ってこない。
だが、たとえ他人のものでもそれが目の前で奪われてゆくこの世界で、この手に戦う力がある以上……」
 藍は目を開けてキッとその存在を見すえる。
「答えはもう、決まっているのさ。」
 ラジェルドーラと藍が接触した、その刃を鍔ぜり合わせる。
 ルネが陣形を包みこむように狭めた。
 一か所にリンカーを集めて航空ルネで爆撃するつもりだろうか。
 だがそうはいかない。
「すまんな、そこも射程内だぜ?」
 告げると遊夜は欄の背後から戦艦ごと躍り出てまどろみ型ルネに一撃加えた。
「……その力、ボク達には……届かないよ?」
 そのまま近づこうとするルネに牽制射撃。
 ラジェルドーラの背後をとりつつ甲板に膝立ちになってルネを射撃した。
 そのインカムの向こうではちょうど出番なのだろうディスペア……梓達の歌声が響いている。
 もし、万が一自分たちが突破されれば彼女たちが危険にさらされる。
――ユーヤ、上。
「おうよ」
 ほぼ仰向けになるような姿勢で射角を調整。上空のルネ達に牽制の射撃。
「負けられるかよ!」
 自分たちの力になると信じて戦場まで出張ってくれたアイドルたちを危険にさらすわけにはいかないのだ。
「ユーヤさん。頑張って」
 そう梓が告げた声を遊夜は聞き逃さない。
「ハッハァ、絶好調だ! 愛してるぞー!」
 その声になぜか赤面する梓。運の悪いことにその表情がカメラに写りこんでしまった。
 それを意識だけで眺めていたユフォアリーヤは……。
――……むぅ、本当に……調子がいい。
 そう歯噛みするユフォアリーヤである。
「こっから先は通行止めだ、俺の目が黒い内は近づけると思うなよ!」
――……ん、今回だけ……撃ち放題、フィーバータイム。
 遊夜の指示に従って駆逐艦も砲弾を撃ちはじめる。ルネには効かないのだが、避けるべき弾丸を身誤らせるのには一役買った。
 その遊夜たちの駆逐艦を撃墜すべく上空を通りがかる爆撃型ルネはギリギリカチューシャの射程に入ってしまう。
「こいつでも食らえ!」
 ミサイルがルネを捕えた時には遅い。完全に尻尾に食いつかれたルネは空中で垂直に飛行、背面飛行でロール。左右に振ってもミサイルは避けられず。
 遊夜が放った次弾で翼をやられ衝撃で一瞬速度が落ち。
 ミサイルに飲み込まれ爆破された。
 先ず一機である。
――兄さん!
 次いで戦場に響くのは禮の声。
 見れば、ドーラの旗が藍の腕をがんじがらめにしている。
 そのまま二本目の旗で貫かれる寸前に由利菜が加勢に入った。
「間に合いましたか」
 三合きり結んでいる間に、飯綱が藍を拘束している旗の布を切り裂いた。
 次いで由利菜は海上に浮く残がいを蹴ってバックステップ。振り返ればまどろみ型ルネと視線があった。
 その言葉が脳にしみいってくる。戦う理由とは。
 それに由利菜は真っ直ぐ曇りない心を述べる。
「英雄と……ラシルやリディスとずっと一緒にいられる世界を創る。今の私は、その思いに駆られて動いています……!!」
――ユリナやリディス達と過ごした時はかけがえのないものだ。愚神の王などの為に、それを手放すことはできんな。
 次いで由利菜の隣を駆け抜けていく藍。
 そのまま藍はラジェルドーラを突破しまどろみへ向かうが、ルネが行く手を遮る。
「結局、偽物の本物には成れなかったんですね、ガデンツァ」
 そう禮が告げた時ルネの口から声が聞える。
 ガデンツァの声。
「我は贋作などではない。我こそ。ガデンツァ」
「それは聞き飽きた。いくよ、禮」
 告げると藍は自ら掲げる王冠に触れる。
「ここが、私たちの海だ」
 次の瞬間藍へと群がろうとするルネが動きを止める。
 ライブスの冷気が放たれる。
――閉された海をここに。氷槍よ、凍てついた静寂を。
 謳うように告げたのは禮。
 ディープフリーズ。ルネはその身を氷の結晶と化した。
 その好機を逃すリンカーたちではない。
「遂にARK対DARK戦が実現するのね! 文字通りの総力戦、絶対に勝利をもぎ取るわよ!」
『世良 杏奈(aa3447)』がヘリから投下された。
――杏奈がんばれー!
『セレナ(aa3447hero002 )』の声援を受けながらラジェルドーラを目指す。
 空中では無数のルネに行く手を阻まれるもアルスマギカを操りルネ達を押しのけて進む。
 凍てつくルネ達を無視してドーラの背後を取り空中で爆撃。
 ドーラを吹き飛ばして飯綱の乗った駆逐艦に着地。そのまま最大船速で走りながらヒット&アウェイを繰り返す。
 攪乱されるルネ、その中心を突っ切る異常な速度の駆逐艦。
 乗っているのは澄香である。
「今行くから……。ガデンツァ!」
 ルネ達はディープフリーズで無理やりに止めた。
 直後澄香はまどろみ型のルネとすれ違う、澄香とまどろみの視線が一瞬あった。
 その時脳内に響く問いかけ。
 戦う理由は。
 それに澄香はこう叫んだ。 
「納得する為だ!」
 そのままDARK、ARK間を飛び交う弾頭を恐れもせずにDARK周囲に張り付いて砲撃制御役として機能。
 いつでも首をかききれるように待機する。
「私達は、皆のいつもと変わらない日常を守りたいだけ。それを壊すのなら容赦はしない!」
 まどろみの問いに杏奈はそう答えた。
 逆に飲み込んでやると言わんばかりにアルマギノミコンで海に干渉。暗くインクの落ちたような色合いに海を変化させそこから触手を召喚。
 ルネ達の足を払っていく。
 澄香の元に走ろうとするルネを妨害した。
 その杏奈へドーラが突貫、その旗を投げた。
「危ない!」
 飯綱が水の中に杏奈を叩き落とすと旗はターゲットを失い駆逐艦の装甲を貫いた。何かいけない場所に当ったのか小さい爆発を船内で繰り返す駆逐艦。
 それをずぶぬれになりながら飯綱は見上げていた。
 そんな二人に迫るルネ。
「いい加減ずぶ濡れは勘弁だよ…………忍法、氷遁の術!!」
 告げると同時にルネに放たれた呪符はルネ達の表面を凍らせる。完全に氷ることを嫌ったルネは体の一部を分離。水の中に逃げた。その隙に二人はボートの上に上がる。
 その二人の上空を一気の爆撃ルネが燃えながら通過した。
 藍のブルームフレア、その直撃を受けたのである。
 だが、一方的な損失を許すガデンツァではない。
 駆逐艦を小型の砲塔、中型の砲塔で狙い始めた。
 ルネの再生力がある分こちらがまだ一歩ふり。切り札到着まではまだ少し、時間がかかる。



第二章 それぞれの戦い

 この戦いにおいて、重要だが姿を見せないオブザーバーが一人存在する。
 今は暗がりに姿を隠すグロリア社秘書。ロクトである。
 しかし彼女はこの戦いに参加するにあたってARKへと乗り込んだ。
 暗い倉庫、揺れのひどいその場所に佇みPCでH.O.P.E.の勝利を祈っている。
 その部屋に『榊原・沙耶(aa1188)』もいた。
 二人は作戦開始に間に合うようにARKとDARKの設計図のすり合わせを行い類似点を確認していたのだ。
「内部に潜った佐千子さんの報告ではほとんど変わりはなかったそうよ」
「さすがねぇ。でもほとんどってことは」
「ええ、この部屋だけ場所がおかしいわ、つまり」
 そんな倉庫を尋ねる少女がいた。
 これは理夢琉がこの戦いに再戦する少し前の話。
「ガデンツァを、王に渡したくないの……何かいい方法ある?」
 開口一番そのように告げられて驚きを隠せないロクト。
 やがてロクトは小さく笑うとすぐに自分の脳内で整理した言葉を述べる。
「簡単よ、ガデンツァを倒すこと」
 理夢琉はその言葉の重みに少し尻込みした。
「おそらくだけど、倒されれば王の支配から解き放たれる。もう彼女が利用されることもなくなる。戦いは終わる」
 けれどそれは、ルネとしてもガデンツァとしても消滅してしまうことを意味する。
「死で生産できることもある」
 告げるとロクトは解析を依頼されていた黒い水晶を理夢琉に返した。
「あなたの思い出で上書きして。彼女に叩きつけてやりなさい。きっと受け止めてくれるわ」
「何でそう思うんだ?」 
 アリューはそう、小さく問い掛けた。
 するとロクトはこう言葉を返す。
「だって、彼女本来はよい女神でしょ。女神は人の言葉を受け入れてくれるものって相場が決まってるのよ」
「それは……どうなんだ?」
 今理夢琉はその手に水晶を、その背に歌を受けて立っている。
 DARKとARKの砲撃船。
 その砲弾飛び交う戦場で理夢琉は、爆風畏れることなく立っている。
――理夢琉、二時の方向。
 アリューが指示すると霊力を手で操り収束。放ち砲弾とぶつけ相殺する。
 お互いに有するシールドは強力で今は砲弾の攻撃を受け止めている。
 ただ、このシールドが剥がれきってしまえば砲弾は装甲を食い破りどんな被害が出るか分かったものではない。
 ARKもDARKもその巨体故砲弾を避けることは困難だ。であれば。
 砲弾は撃ち落とすしかない。
 その防衛線に『卸 蘿蔔(aa0405)』も参加していた。
 ひらひらのアイドル衣装、耳元にはマイクつきのヘッドフォン。
 謳いながら、踊りながら銃を構えて砲弾を撃墜していく。
「みなさん、頑張って!」
 蘿蔔の姿がアイドルたちに勇気を与え。
 アイドルたちの歌声が蘿蔔に力を与える。
 まだ戦える、そう思った。
「私も皆を守りたい。だから」
 しかし。
――蘿蔔、前!
『レオンハルト(aa0405hero001 )』の叫び声。見れば中型砲弾が着弾寸前。蘿蔔は体制が崩れるのも関わらず飛んで銃弾を砲弾の中心に叩き込む。
 空中でさく裂する砲弾。その爆風に煽られて蘿蔔の体は木端のように吹き飛び、ARKの甲板に強くたたきつけられてバウンドした。
「きゃっ!」
 鋭い悲鳴をあげて、転がった蘿蔔。
「卸さん!」
 理夢琉が駆け寄ろうとするがそれどころではない。ただ理夢琉では敵の砲撃を防ぎきれない。
 無理やり起き上がろうとする、だがその体を抑えて耳元でささやく誰かがいた。
「狙いのつけ方教えて欲しい」
「えっと、魂で感じて、撃った時に当ったって思ったら、大体あたってます」
「全然わからん!」
 蘿蔔の耳元で銃声、ガトリングのように連続した射撃音。
 見上げればそこにはアイドルグループ。ディスペアメンバークルシェが立っていた。
「クソ、あたんね!」
――ああ。構えからだめだ。もっと腰を落して、手振れしてるからこう……。
 レオンハルトの指導によって急速に狙いをつけられるようになるクルシェ。
「来てくれたんですか?」
 そう安堵する蘿蔔だが。
「休憩は終わりだ……。アタシ一人じゃどうしようもない」
 見れば航空型ルネがこちらに到着しそうである。
 ARKは防壁一枚を船の上空に展開。
「二人でトップスタンダード。行けるか?」
「はい」
 立ち上がると二人はより高い位置を目指してARKを上り始める。
 戦いは中盤戦。全てのユニットが攻撃目標にたどり着き。爆撃型ルネの攻撃でARK戦艦も揺れている。
 ビートを無差別に刻むような攻撃にひるまず。マイペースでソロを歌い上げるのはイリス。
「今こそ、リンカーアイドルの真髄をみせる時さ」
――僕は、アイドルではないけど。肝が据わってるのは確かだからね。
 アイリス主体で翼を広げる。
 響く音色の三重奏。
 全員にバックコーラスをまかせて。
 謳うのは『涙雨の音~Friend~』託した想い、願い。それは思い出深い歌だ。
「ガデンツァ。聞いているかい? 今日は君にとって忌々しいメドレーになるだろうね。存分に効いて行ってくれたまえ」
 対して上機嫌のアイリスの歌声はいつにもまして荘厳である。
――もう二度と、涙を流さないように。
「誰かが生きるところをあきらめる、そんな瞬間はもう沢山なんだ!」
 二つの歌声が叩きつけるように海面を揺らし。
 それに負けじと、まどろみが問いかける。その戦う理由。
「戦う理由? 愚問ですわね」
 敵陣はすでに肉薄している。水上のルネの勢いも激しくリンカーたちはじりじりと押されていた。
 そんなルネ達の足を止めるべく配置された部隊が存在する。
「もちろん復讐ですよ。何を今更。馬鹿にしているのかしら?」
 ARKのハッチが開いた。
 そのハッチの向こうでは特別仕様に暁の紋章が刻まれた駆逐艦が控えている。操縦するのは『犬尉 善戎狼(aa5610)』
 甲板で銃を構えるのは『エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001 )』と『阪須賀 槇(aa4862)』
『鬼子母 焔織(aa2439)』が船先に器用なバランス感覚で立ち。
 甲板にはヘリが括り付けられていた。そのヘリの操縦席には『楠 セレナ(aa5420)』中には広範囲爆撃乙女『楪 アルト(aa4349)』を装備している。
「いくお! 隊長が目を覚ます前に邪魔な奴ら全員吹っ飛ばすお」
――にゃっぽい!
『阪須賀 誄(aa4862hero001 )』が告げると犬尉がどくろマークのボタンを押す。
 それは天翔機の動力を利用した加速装置である。
 爆発音と共に使い捨ての翼パーツを分離、船は海上を滑るというか。海上すれすれを飛ぶように跳ねるように出発し。あっという間にルネの戦線へと到達した。
――ちょっと! なにこれ
『戌本 涙子(aa5610hero001 )』が抗議の声をあげる。それに犬尉はにやりと笑って言った。
「なぜ戦うのか、愚問だな」
 どこからか聞こえてきた声に犬尉ははらりと一枚の写真を眺め告げる。
「金の為だ」
――おっかねー!じゃらじゃらなのじゃー!
「だが金の為と言う事は……つまり生きる為だ」
 海上を撥ねる船を駆りながら犬尉は告げる。
――それ、どういうこと!
「敵は補足しましたわぁ。ロックオン。これより殺戮の開幕ですわ」
――お母様、楽しそう。
『アトルラーゼ・ウェンジェンス( aa5611 )  』が楽しそうに告げる。
(そう、これはあくまでも前座。全ては)
 エリズバークは胸の中で復唱する。己が目的、なすべきこと。
(優しい彼を屠った人間を全員殺すまで)
「全員、生きて帰れるとは思ってはいけませんわよ」
 モスケールの反応を頼りに、水に同化しがちなルネに銃弾を浴びせていく。
 海上のルネを牽制した後、ヘリは揺さぶられながら飛び立ち。
 エリズバークと槇は天上をむく。
 空のルネ達を次々と撃墜していった。
 エリズバークは銃を複製。そのトリガーが触れる物なく引き絞られ、銃弾が嵐のように吹き荒れる。
 ARKへの攻撃を妨害すると共に放たれた爆弾を空中で射抜いた。
「ドーラ型が接近していますわ」
 海上を走行するラジェルドーラを模したルネは、まとわりつくリンカーたちを吹き飛ばすと難なく突破、暁の文様の中心に旗を突き立てた。
 それで内部の燃料が漏れ引火。大爆発を引き起こす。
――何で母様は守る役目なのですか? 僕も空でいっぱい壊したかったです……。
 そうほっぺを膨らませて抗議するアトルラーゼ。
「あらあらアトル、拗ねないで。ここに居れば壊されたい敵が近づいて来てくれるのよ? 楽でいいでしょう?」
 そうなだめると魔女は炎の中から復活した。
 自らドーラの前に立ち。そして敵の前にたつ。
「熱くなるより効率的にいかないと優雅ではなくってよ。塵様のように無様な姿はさらせませんわ」
 だがドーラにはすでにふさわしい相手をあてがってある。
 ドーラの頭上に影が落ちたかと思えば。
『東海林聖(aa0203)』がはるか甲板の上からドーラを見下ろしている。
――また似たような面が居るね……。
「いくぜ。ルゥ」
『Le..(aa0203hero001 )』はその言葉に頷くと。最初からフルスロットル。全力で牙をむいた。


第三章 独奏者

「ルネを左方に移動させよ、護りが薄い。ドーラはそのままARKの足元へ。これで奴らも駒を撤退させざるおえんじゃろ。次いで敵の撤退炉を遮断するように」
 ガデンツァはブリッジで指揮を執っていた。
 今回は敵が内部に侵入していないのでルネの指揮に集中できるがそれでも戦果はおもわしくない。
 ガデンツァ側のアドバンテージはルネが手足のようであること。
 だがそれと同等、もしくはそれ以上の戦術、戦略、物資があるわけでも無いので戦局は拮抗している。
 ラインが少し前なのはDARKの守りをおろそかにしてでもARKへ攻めようとしただけのこと。
 俯瞰で見ていれば戦局がほぼ五分なのはわかる。
 やはり、粒の違いだろうか。
「リンカー。あの時。殺していれば……」
 そして優れた指揮官の存在。
「やはい、あの小娘」
 ガデンツァは戦場をカメラでくまなく探しても澄香を見つけることはできなかった。
 おそらくDARK内部に潜り込んだのだろう。
 内部を警備しているルネに反応が無いので、重要な場所に踏み込まれているわけではないが。
「戦況を管理しておるな。何が目的じゃ?」
 それは単純、戦闘行為を続けながら指揮を出すのがしんどくなったので少し用紙を見ているのだ。
 エンジェルスビットに接続されたパッドや通信機と言った戦況管理機器をいっぺんに飛ばしながら戦闘するのは骨である。
『クラリス・ミカ(aa0010hero001 )』が管理しているとはいえ、少し状況を分析したかった。
 たとえば、本当にガデンツァは餌に食らいついているか。等。
「敵の宇宙基地からの砲撃が来る前に、決めなければ」
 ガデンツァが大型砲塔を温存している理由はガデンツァが先日手に入れた。宇宙基地からの砲撃に備えるためである。
 距離が足りないとのことだったが、距離が足りなければ近付けばいい話だ。
 ARKと宇宙拠点、二つの相手など想定の範囲外である。
 故にガデンツァは砲弾とシールドを温存せざるをえなく。その結果防衛にすきが生じている。
「私の指示する場所に集中砲火を」
 澄香は告げるとブルームフレアでDARKの装甲をギリギリから攻撃した。
 それは少し前サンダーランスで食い破った装甲部分。完全に修繕が完了していないことを澄香は間近で確認済み。
 そこに網の目を通すような精密な射撃が通りDARKの装甲は爆発。吹き飛んだ。
 いったん澄香は撤退の姿勢になる。
 揺れた船内で手すりにつかまったガデンツァはいらだちを抑えられずコンソールを叩く。
「なぜ!」
 ここまで追い込まれた。
 ガデンツァはそんなことは意味がないと知っていても過去に思いを馳せざるおえない。
 なぜだ、どこで間違った。
 イリスを奪ったところまではよかった。
 イリスを取り返されたところか。
 ペインキャンセーラの畑を焼かれたこと。研究室に潜入されたこと?
 ルネクイーンを消されてしまったこと?
 音の遺跡を攻め落とせなかったこと?
 ルネに化けて潜入したこと?
 赤原を味方につけられなかったこと?
 ルネにこだわったこと? リンカーたちを殺せなかったこと?
 そこまでガデンツァは考えて、その耳障りな音色にまた耳をふさぐことになる。
「ぐ、ああああああ!」
 歌が聞える。アイドルたちの大合唱。それは希望の音~ルネ~だ。
「その想いはどこまで届くか……最後まで見守りますよ」
 謳うのは『希月( aa5670 )』
 その美しい響きを『ザラディア・エルドガッシュ(aa5670hero001 )』は舞台袖から聞いている。
「歌いましょう、皆さん……共に」
 その歌は一つの企画で、世界中で一つの歌を謳おうと楽譜が配られている。
 遙華と希月で行った規格である。
「ガデンツァ様に想いの強さを、人の心の温かみを知らしめる為に。
 私は、倒す為ではなく、救う為に歌います」
「いらぬ! 救いなど!」
 なぜなら自分は救う側だから。
「わらわはお主らをすくってやっておるのだ! 大人しく死ぬがよい」
 そのブリッジの真ん前を、挑発するように戦闘機が通過した。
「たまには良いものね。BGM」
――ふむ。私は特に必要とはしないが、乗機の中で好んで曲を流す者はしばしば居るな。
『リタ(aa2526hero001 )』のその言葉を遮るようにガデンツァの声がスピーカーで拡散される。
「調子のいいことじゃな、子ネズミが」
 次の瞬間、小型砲塔が佐千子の乗った戦闘機をロックする。
 佐千子はその数を数えると加速。
 急上昇からの下降。そしてロールを繰り返していったん距離をとった。
 ルネが差し向けられるも背面飛行で水の上ギリギリを飛んで追撃を回避。そのまま浮上してガデンツァに再び視線を送った。
――燃料も無い。帰るぞ。
「まって、その前に」
 リタの静止もきかずに佐千子はキャノピーを開けて銃を構える。
「いい加減引きこもってないで出てきなさい。この根暗姫」
 放たれるアハトアハトは急展開された防壁でガードされた。
「なるほど。50センチ未満ってところね」
――なにがだ? 佐千子。
 佐千子はリタの言葉に短く答える。
「最少バリア展開距離? つまり、それ以上向こう側ならシールドが張れないって限界の距離を測ったのよ」
 いったん帰投する佐千子。
 その戦闘機の映像を背景に希月と新人アイドルで結成された即席グループ『月下美人』は持ち曲の披露に移る。
 この中継は戦闘風景自体も中継されており、視聴率は全世界で20%を超えていた。
「皆さん、どうかよろしくおねがいします」
 そう小さく頭を下げると同じ年くらいの少女たちが声をかけてくる。
「ん? ちょっと地味な感じですか? 私。ふっふっふ、何を隠そう私は忍者なのです!」
――そりゃ、見た目ですぐ解りますって……。
 共鳴したザラディアが突っ込みを入れると少女たちはキャッキャと笑った。
 すぐに希月は反転。少女たちとV字に並ぶと同じ振付でダンスを始める。
 運動は得意だ。
 ニンジャだし。
 しかし歌も得意とは無月も知らないだろう。
 少女たちが一列に並び直すとぱんっとはじける音がして紙吹雪が舞った。
 カメラそれぞれに手を振るように希月は笑顔を振りまいた
「歌って踊れるニンジャガールなのですよ。何が起ころうと私がいる限り皆さんの安全は確保できたも同然なのです。だから、大船に乗った気分でいてくださいね」
――いや、今乗ってるじゃねぇですか……。
 ザラディアのツッコミは少女たちに大うけである。
 希月はなれない同年代の少女と一緒くたになりながら歌を謳う。
 それがなんだか、楽しいような、恥ずかしいような。新鮮な気持ちで希月自身も驚いた。
「本当は忍びである事を明かすのは良くない事ですが」
 皆の心を安らげる為なら何でもないことだ。
 そう希月は自分の行いに胸を張る。
 すると次の瞬間映像が暗いものにさし代わり僅かな蛍光灯の明りが上から下へと消えていく。
 エレベーターだろうか。直後僅かにカメラが揺れると一筋の光から画面全体を灯りが照らして。
 希月は外に飛び出した。
 ARK頭頂部からのジャンプ。
 油断していた爆撃型ルネはその一撃で羽を切り裂かれ海上に落ちることになる。
 星の薙刀を翻し、落下しながらルネを睨む。
 そのまま希月は猫のように甲板に着地。すると彼女を気遣うように『月下美人』の面々が姿を現した。
「危険です!」 
 そう戻そうとする希月の目の前に少女たちはAGWを取り出す。
 支給品から一つグレードアップした様な貧相な品だが、彼女達も戦えるのだと知った。
「一緒に、いこう。仲間でしょ」
 その言葉に頷くと希月は足を踏み鳴らす。ARKのスピーカーの陣形が大きく変わった。
 具体的にはDARKの方向を向く。
「希望は歌と共に! 汚れなき歌声を持って、我ら絶望の闇を打ち払わん!」
 薙刀を天にかざすと、それが太陽の光を受けて煌いた。
 朗々と告げる希月の成長。これを見たらいったい無月はなんというだろうか。
「ここが私の戦場です」
 今ならそう、胸を張って言える。
 次の瞬間希月が指差した先にリンカーたちがかけていく。
 墜落したルネにトドメをさそうとかけたのだが。やがてARKに大きな影が落ちたことに気が付いて希月はメンバーを静止させた。
 見れば上空のルネ達が次々と撃墜されている。
「やっと、来ましたか」
 曲が変わった。
 ハイテンポでテクノな曲。
 抱く思いは逆転と抵抗。
 掲げる信念は希望と勝利。
 空を覆うがごとき宇宙のステーションのシルエット。しかし安心してほしい皆から蒼天が奪われたわけではない。
 なぜなら蒼天を宿したあの翼はいまだに希望の上空に輝いているのだ。
「さぁ行こうか! ガデンツァの鼻を明かしにさ!」
 告げるのは『雨宮 葵(aa4783)』
――ん。やられた分は……のし付けて返す。
 答えるのは『燐(aa4783hero001 )』
 その背に蒼い、蒼い翼を広げて超高速で敵をうつ。
 ルネの上空から覆いかぶさる姿は猛禽のごとく。
 下から伸び上がる姿はカワセミのような躍動感を持って。
「空では鳥に敵わないってまだ分かんないかな!」
 にやりと不敵に笑う葵は空中で身を丸め回転してからの垂直ターン。
 まるで空気を蹴るように急停止、急加速を行って見せ。その突撃にてルネを一体砕いた。
「さぁ、みんな宇宙ステーションを守って頂戴」
 ブリッジにてサングラスをかけてふんぞり返る『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001 )』がそう告げた。
 その眼前でエリザが体をコードまみれにして沙羅を振り返る。
「あの、手伝ってほしいんだけど」
「無理よ、私の専門外」
 ここはARK管制室、しかし画面に表示されているのは宇宙ステーションの図。
 エリザは今宇宙ステーションのシステムと直結されていた。
 そのエンジンもシールドも、自動砲台もマスドライバーもすべてその手のなかである。
「澄香から送られてきたデータをもとに射撃位置を限定して」
 沙羅がさらりと無理難題を告げるがエリザはそれに従って見せる。
「これ終ったらケーキ!」
「あら、あなた意外と可愛いものが好きなのね」
「意外ってなんでさ!」
 腕をあげて抗議するエリザ。
「いえ。もっとガソリンとか要求するかと」
「AI差別だ! うう、頭痛い、ゲームしたい」
 告げるエリザの尻をリアルに叩いて活を入れる沙羅。
「ひっ」
「レアエネミーとかいいから!
 カデンツァもレアだから! 四天王くらいのポジションだから!」
「私知ってるよ、13人もいるんでしょ、何もレアじゃないよ」
「…………確かに」
 そう視線を泳がせると沙羅の視線はとあるモニターに釘付けにされた。
 そこでは髪の長い女性が謳っている。
 ECCOだ。
 沙羅はその光景をただじっと見つめる、歌っている曲はなんだろうか。
 画面にしたはじには氷のクジラと表示されている。
「この戦いを早く終わらせて、彼女を病室に返してあげないと」
 告げると沙羅は戦場の様子に視線を写す。
 そこでは、まるで空中の敵に対応することを知らないルネ達は次々に撃墜されていくがそれに加勢する人物も当然いる。
 藍が空中を泳ぐように上がってきた。
「今か」
――行きましょう、兄さん。 
 リンクバースト。その霊力、天翔機のオーラが藍にヒレを授ける。
 爆発的に加速してその黒鱗で敵を切り裂いた。
 しかし敵はたったの二体。まとまってかかれば怖い敵ではない。
 告げるように葵へルネが群がり始めた。
 その包囲網を怒涛乱舞の勢いで切り抜けて。
 一体のルネを羽交い絞めにして更なる高高度に離脱した。
「ルネの体から離れて触れたら爆発するわけじゃないみたいだね」
 葵はそうルネの爆破法則確認について確認するとそのルネを別のルネに投げた。
 ARKへ高速で叩きつけられようとするそれを蘿蔔が打ち抜く。
「そう言うことか」
 葵は何かに気が付いたようにルネの背後をとってそのまま急加速。
 まるで電車に括り付けられたように押されるルネの心臓を葵は背後から一突き。そのままストレートブローで吹き飛ばすと、ルネはその装備している爆弾もろとも DARKに突っ込んでシールドにぶつかり爆発した。
「行けるかも!」
 葵は空中でターン。背面飛びの要領で背中を地面に向けてくるりと。
 次の瞬間飛び込んできたルネの羽に足を乗せて。地面に向けて急加速。
 その隙にロープを取り出す。
「これでルネをまとめてDARKに叩きつけるよ!」
――すごく大雑把だけど、悪くない作戦だと思うわ。
 燐が賛同した。
 次の瞬間。葵の上空を宇宙ステーションのマスドライバー。その弾丸が通過してDARKに一撃加えた。
 それだけではない。宇宙ステーションは速度を最大に保ったままDARKめがけて落ちていく。
「バカな! なぜあの代物が大気圏内に突入を。燃え尽きるから不可能ではなかったのか」
 予備ブリッジに移動したガデンツァがそうスピーカー越しに叫んだ瞬間。 
 澄香はふっと笑った。
 DARKの大型砲塔があわてて上空をふさぐ宇宙ステーションに照準を定める。
 雷のような轟音と共に砲弾が斉射されるもしかし、宇宙ステーションは過酷な戦闘に耐えるためシールドユニットを詰んでいる。それはARKに勝るとも劣らない高性能ユニットである。
 この機会に乗じてARKの円形の船体が回転を始めた。大型砲塔が回転しながらDARKをターゲットに捉えると発射され。遠心力と砲弾の威力を合わせて砲撃となってDARKを襲う。
 これにはガデンツァも混乱しているだろう。
「いまだ!」
 澄香はマジックブルームで空に飛び立った。
 宇宙ステーションを打ち落とそうとする砲弾をミニクラリスミカで撃墜していき。
「ぐぎゃー」
 手の中のボタンを押すと、ブリッジのPCがけたたましく音を立て始めた。
「うふぉう!」
 飛び上がって驚くガデンツァ、そのガデンツァが振り返るとPCがこれ以上ない威力で大爆発した。
 ここで自分がたばかられていたと初めて知った。
 ルネの動きが鈍くなる。
「あの人も。自分が騙されるのはなかなかないでしょうね」
 そのせいで、ガデンツァは見落とすことになる。
「頼んだよ、水瀬さん」
 そう澄香と『水瀬 雨月(aa0801)』は空中でハイタッチ。
 天翔機に身を包んだ雨月は眼下から迫る砲弾とルネ。
「総力戦かしらね。どう転ぶかしら」
 同時に雨月はその真っ白い書を開く。
 その書は膨大なライブスの冷気を伴って、すべてを白く、白く。
 静止の世界へといざなった。
 それは砲弾も、ルネも例外ではない。
 ディープフリーズ。
 誰もこの宇宙ステーションには近づけさせない。
 そう霜の降りたまつ毛を震わせ雨月は敵を見すえる。
「雨月!」
 インカム越しに遙華の声が聞えた。
「やっちゃって!」
 その言葉に頷く雨月。しかし。
「トドメをさすのは私の仕事ではないわ」
 藍と葵が交差するようにルネを攻撃していく。
 さらに敵が迫ればディープフリーズを連打。
「出し惜しみは無しで行くわ」
 髪が、指先が雨月の全身に白く霜が降りていく。
 その中でリンクバースト。
 氷の領域を維持。
 徹底的に敵を妨害する。
 高速で飛来する宇宙ステーション。その切っ先がふれるまで、あと少し。


第四章 禍根を払え

「だがしかし。切り札を持つのはお主らだけではない」
 ガデンツァは戦場に満ちる霊力を感じた。
 まどろみ型ルネの能力、夢の浸透はもう十分に。
 少し、計画を早めその能力を起動させてしまっても良いかもしれない。
「まどろみのコピーがいるのね……。いいわ、私が相手をしましょう」
『橘 由香里(aa1855)』はボートで戦場を回り込んで背後からまどろみへ奇襲をかけた。
 トリアイナで水をまきあげるように切り上げるとルネからの攻撃が飛ぶ。
 ボートを盾に狙いをそらさせ、上空から飛来した『無月(aa1531)』の手を取っていったん退避。
「偽物ね、どこまでも、悲しいくらいに」
 由香里は眼下に水晶色のまどろみの姿を捕えると次なるすきを待つ。
「あなたはなぜ戦うの?」
「私はあなたと何度も対話して、それを示してきたつもりだけど、いいわ。もう一度教えてあげる」
 無月がまどろみに最接近。由香里は空いた手でトリアイナを構えると、無月はルネめがけて由香里を投げた。
 直後無月はジェミニ。つまり分身を作りだし挟み込むように突撃する。
「大切な人が離れて行っても。
 助けようと思った相手を失っても」
 水しぶきの中その刃を受けるまどろみと、由香里の視線がぶつかる。
「私の心は私のもの。王だろうとガデンツァだろうと弄らせない!」
「それでこそ、我が宿敵」
 その時、声が聞えた気がした。二つの声。
 それはかつて夢の中で聞いた記憶のある声。
 一撃のもと、由香里は再び離脱する。
 通りがかった駆逐艦の梯子に槍をかけていったん離脱。ルネの攻撃がまどろみを守るように激しくなってきた。
 その去り際に無月はまどろみへ女郎蜘蛛。
 その妨害効果はすさまじく、ほぼまどろみを無防備にすることができる。
 ここで ルネの妨害を断ち切ることができれば一気にまどろみを攻め崩せるのだが。
 無月はあえて水に突っ込むように天翔機でダイブ。 
 まどろみの腕をざっくりと切り裂いて今度は水の中に潜伏した。
「梅雨払いならまかせな!」
 そう空から声が降り注ぐ。
 それは先ほど暁駆逐艦から離陸したヘリ。
 それに乗って砲塔を固定しているのはアルト。
「……覚えている。この何ともいえねー不快な心地よさ…………あいつはいねぇ筈だ。でも、じゃなきゃこの感覚は感じねぇ。なら……きっといるんだろうな、ここの何処かに、まどろみが!!」
 放たれる弾丸のシャウトはルネ達の腕を足を射抜いていく。
「もう……もうこれ以上……! ……これ以上誰も傷付けたくねぇんだ……もうこれ以上、あたし以外が傷つくのなんて見たくねぇ…………、……終わらせる……ぜってぇ、終わらせてやる!!」
 ミサイルをまどろみに、爆風でその体煽られるまどろみ。
 そんなやりたい放題のアルトにガデンツァは舌打ちした。
 上空からの弾幕が脅威でないわけがない。航空ルネが向かわされるが……。
「邪魔はさせません!」
 セレナがニーエ・シュトゥルナにて妨害を施す。
 その隙に再び接近した駆逐艦。その船体をまどろみにぶつけると駆逐艦自体が前のめりに傾いた。
 その勢いを利用して背後に飛び出した由香里。水面に着地することはできないが水の中に飛び込む際にまどろみの足を切り裂いた。
 片膝をつくまどろみ。その体に銃弾が浴びせられる。
 次いで歌も。
 ヘリに搭載されたスピーカーからは絶えず希望の音が流れ続けている。
 そのヘリの上に立ってアルトはひたすらにミサイルを、銃弾をばらまいていた。
 海上から水柱が絶えない。爆音の連鎖で音から状況もつかめない。
 ルネからすると悪夢のような存在である。
 爆撃ルネはセレナによって接近を阻まれる。
 上空から落される爆弾はアルトが打ち抜いて処理した。
「きゃあああ!」 
 セレナの悲鳴が上がるが操縦かんは手放さない。右手の窓ガラスを粉砕して杖を伸ばすと操縦の傍らルネの迎撃を行う。
「……色々考えたが、答えは結局最初から決まってる」
 アルトはARKを、そして東京を。
 まどろみがその身を震わせて、周囲に何かを散布し始めた。
 アルトはわかるあれは眠りの粉だ。
 まどろみが夢にリンカーを誘う時ああして眠りを誘っていたのだ。
 その影響が今回はどう出るか分からない。
 わかっているのは、今夢に捕まれば終りということ。
「アイドル付き合わされて、どこかのバカ共と馬鹿やって」
 ただ、もう……自分に夢は入らない。
 そうアルトは思う。
「大切な相棒と一緒に戦って、笑って、キレて、泣いて……」
 いつも戦場では叫ぶように戦って、叩きつけるように歌っていた気がする。
 煌びやかな舞台でも。戦場でも自分のやるべきことは変わらない。 
 そう信じて戦えるようになったのはいつからだろう。
 なくしてしまった自分の体と夢と。でもいつの間にかそんなことどうでもよくなっていた。 
 得たものが大きすぎて。
 望んでもいないのにそばにいる人がたくさんいてくれて。
「そのあたしの全部を受け止めてくれる。今のこの場所はどれだけ綺麗ぶっても幻なんかでも敵わねぇ。素直のままで居させてくれる」
 まどろみがアルトを見あげた気がした。
「アタシはそんなあったかい場所を。護りてぇんだ!」
 それでいいんだよ。
 そうまどろみが告げた気がした。
 足の再生。立ち上がるまどろみ。
 その顔面に渾身のミサイルを一発叩き込む。
 直後上空から魔術放火。
 雨月がまどろみを見すえていた。
「遙華」
「なに?」
「さっさと終わらせてのんびりしましょう」
「珍しいわね。あなたがそんなことを言うのは」
「殺伐なのはこれからしばらく続くでしょうし。理由なんて単純でいいと思うわ」
 それが彼女なりの答えなのだろう。
 熱と衝撃でズタズタになるまどろみ。その体の中心を水から浮上してきた由香里が貫いた。
 何かを砕いた手ごたえが確かにあった。
 そのまどろみの目の前に無月が立つ。
「ガデンツァ。聞こえているか」
 その言葉にガデンツァは言葉を返す。まどろみの口から、かすれた声を。
「聞こえているとも」
「私はこの世界が好きだ、この世界に生きる人達が好きだ」
 無月はその手の刃を握り直す。
「そして、懸命に生きる命ある者達が大好きだ。
 私は彼らを守りたい、そして、人々が苦しむ姿よりも、笑顔で幸せに生きる姿が見たい。
 だから、私は戦うのだ。
 月の忍びとしての使命ではない、この世界の命、そして人々の笑顔はこの生命を賭して守るに値するものだと理解しているからこそ、私は最後まで戦うのだ」
「ははは、闇に蠢く者風情がなにをいう」
 そのガデンツァの言葉に頷いたのは『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001 )』。
――ボク達はいずれ人知れず闇の中へと散りゆく存在。
 守った人達が幸せに生き、未来を紡ぐ事はボク達が生きていた事を示す証なんだ。
「いきた、証」
 その言葉をガデンツァが噛みしめるようにつぶやいたことに無月は驚いた。
――それに、不幸な人達を見るよりも、幸せな人達を見ている方が嬉しいしね。
「故に、我らは戦う。従魔よ、疾く己があるべき世界へと還るがいい!」
 次いで無月はその刃を横なぎに振るった。
 吹き飛ぶまどろみの頭。そしてその体が煌く霊力に変わっていく。
「どうか、みな、素晴らしい現実を」
 そう声が聞えた気がした由香里はみずの中から空を見上げる。
「ええ、この世界そんなに悪くないって今なら思える」
 次の瞬間はじかれたように視線を別の方角に向けてトリアイナを投擲した。
 胸にそれが突き刺さったルネは思わず動きを止める。
「まずは、お掃除の方が先かしら」
 航空ルネの総数もすでに三分の一。
 水上ルネもそのたび重なる戦闘で再生能力が衰えてきた。
 やはり万能ではないのだ。
 それ以前にDARKの消耗も激しくなってきた。中型砲塔の破損。
 大型砲塔はARKと宇宙基地両方をおしとどめるには不十分。
 そこで最後の追撃とばかりに沙羅がある指令を出す。
「OKエリザ。次の段階に作戦を移行して」
「ひ、人使いがあらい!」
 エリザがARKのコンソールを叩くと画面にタッチ式のボタンが出現。
「これはARKに対して有効なウイルス。ということはDARKに対しても有効なのは明らか!」
「でも、DARKの機器の中枢はガデンツァに接続されているのでコントロール奪取は不可能」
「だからできるのはDARK内部の対戦入員用の武装を自爆させて火薬庫に引火させるくらいなのよね」
 ただ、それでもかなりの打撃をDARKに与えることができるだろう。
「ぽち」
「あ! それ私がやりたかったのに!」
 沙羅がボタンを押すとやや遅れてDARKのいたる場所から火の手が上がった。
 DARKの動作が一瞬停止する。
「おのれ! いったい何を!」
 ガデンツァ怒りの声がスピーカーを介して海上に響く。
 それに対して沙羅が言葉を返した。
「最後に頼るのが人間の兵器の模造だなんてねぇ……」
「何が言いたい」
「随分と、人間の力を認めているのねぇ」
「認めて等おらん。人などわらわが瞬時に命を奪い去れる脆弱な存在」
「その人間が今あなたを追い詰めているわよ」
「それは……喜ばしいことじゃな」
 その言葉に沙羅は目を見開いた。
「喜ばしいこと?」
「……いや、わらわはなんと。く……忌々しい」
 次いでスピーカがひび割れた音を鳴らして沈黙する。
「ガデンツァ。器と人格の間に齟齬が出ているのかもねぇ。元の、上書きされてない人格だったら、私達は勝ててはいなかったのかもしれないわね」
「もう、勝ったつもりですか?」
 告げる沙羅にエリザは言葉を返す。
「勝てますよ、人類は。だって私を作り上げたんだから」
「……? そうね。それにしてもいまさら丁寧な言葉を使ってもあなたの印象はもう変わらないわよ」
「うるさい! 沙羅嫌い!」
 涙目になるエリザである。
「今だお……」
 ブリッジの和やかな雰囲気はいざ知らず。戦場では最後の攻勢が行われようとしていた。
 すでに大量の血をなくしてふらつく頭の槇。
 だが、ここで引いては今休んでいる仲間たちに申し訳が立たない。
「隊長……」
 誄は心の中で彼女の名前を呼ぶ。
「無茶ばっかりする皆なんて嫌いだお。けど」
 仲間の信頼を貫けない自分はもっと嫌いになりそうだから。
(あの時残れなかった自分を、これで払拭できるわけじゃないけど)
 誄は思う。
 あの戦い。彼女は最後まで残ったのに自分は撤退せざるおえなかった。
 あの瞬間からずっと自分を責めている。
「弟者……俺らここにいれてよかったんだお」
 その言葉に誄は弾かれたように意識を戻す。
「ずっと責めてるおね。何で自分もあの時残れなかったんだろう。って」
 あえて弟の口調を真似して見せる兄。
「違うお。役割が違ったんだお。できることが違ったんだお」
 槇は言った。
 皆、死ぬ為ではなく、死を恐れず戦っただけだと。
――じゃあ、俺達は足手まといだったって。
「足手まといだったんだお……あの場所では」
 誄は目を見開いた。
「けど、今この戦場は俺達の庭だお。ルネの撃墜数けっこうなもんだお」
 兄は告げる。逆に、下がったからこそ、今ここで皆の代わりに戦えるのだと。
「それに………………」
 その言葉を聞いて誄はおかしくなってしまって少し笑った。
 兄も自分と同じくらい傷ついているはずなのに。自分を慰めてくれた。
 なんてお人よしなんだろう。
 それを感じられただけで誄は心を決めることができた。
――……OK、それいいね。
 噛みしめるように告げた誄。
「だおだお?」
 急な気持ちの持ち直しに少し混乱する槇だったが。誄の声音が明るいことに気が付いてにやりと笑う。
「時にいっちょ……」
――……俺ら無敵の阪須賀兄弟、行きますかねっと。
 翼が大きく広がった。
 その色合いはいつか見た。燃えるように輝く男の背中に似ていたけど。
 翼の形状はサイバーで、鋭利でめちゃめちゃカッコいい。
「おk弟者、切り札いくお!」
――OK兄者、バーストゲット。
 その翼を翻すと上空高高度まで上昇。
 そのまま落下する勢いを利用してルネ達を背中から射抜いていった。
 目指すはラジェルドーラ。
 その顔面にぶつけるようにフラッシュバンをぶつけるとブレーキ。
「世良さん、今だお」
「他の子たちみたいに、杏奈たんって呼んでもいいのよ?」
 告げる杏奈はドーラ上空で停止。重力から解放された杏奈は逆さづりになりつつ本を撫でると風の束がラジェルドーラを穿った。
「いや、人妻は守備範囲外なんだお」
 そう危ない香りを感じつつ遠慮する槇。
「「「あんなたーん、がんばって」」」
 そうARKないステージから特大の声援が飛ぶ。
 まぁ、肝心のその指示を出したアイリスは何も言わなかったのだが。
「じゃあ、とっておきみせちゃおうかな」
 そう杏奈が怪しげに微笑むと風がドーラの体を持ち上げ打ち据える。
 その体にARKの大型砲塔が直撃した。
「よし!」 
 ガッツポーズする杏奈。完成がARKから上がる。
 だが海に放りだされる前にドーラは竜形態へ変形。
 上空から攻撃を始める。
「なら、叩き落とせばいいな」
 そう少女の声が聞えると宇宙ステーションから輝く何かが突進してきた。
『彩咲 姫乃(aa0941)』である。
 姫乃は『メルト(aa0941hero001 )』と共鳴していても早い。
 真っ直ぐドーラに突き刺さるように突貫する。
「隊長をはじめ、暁メンバーも大分前回ので世話になったようだからな、――追撃の時間だ!」
 苦々しげな表情から一転。
 姫乃は弾き飛ばすようにドーラを海面方向に蹴りつけた。
 その体をさらに焔織が海面まで撃ち飛ばす。
「アンナに無茶をして」
 そう焔織が姫乃を見あげると姫乃の体はズタズタで血まみれだ。
 無茶な突貫とは我ながら思っていたがそうせざるおえなかった。
 なぜなら他のリンカーからはドーラは強力な敵という印象だろうが、姫乃にとっての印象はナイアの英雄なのだ。
 それをこういう形で出されたとあっては黙っていられるわけがない。
「ナイア。俺は……」
 告げて速度を上げる姫乃。
 その動きに同調しようと、聖、由利菜がドーラ周辺に集結する。
「こいつを倒せば終わりだ! 気張っていくぞ」
 最後の戦いが幕を開けようとしている。

第五章 必滅

「前の時は参戦出来なかった分、気合入れて行くぜッ!」
 海面に落下しようとするドーラへ聖が迫った。
 聖の背中には燃えたつような緑色の光放つ翼。
 その手に大刃の大剣を携えて空中でドーラと鍔ぜりあった。
 ドーラの旗が開かれる。それに危機感を感じた聖は一歩後退。
 焔織が牽制のために背後から迫る中。
 スイッチして入ってきた由利菜がその旗の柄を弾きあげる。
「行くぜ、アタッカーらしく立ち回るぜ!」
(……防御を疎かにしないでね……)
「おうよっ!」
 LEの指示を受け聖は側面に回り込む。
 流れる歌を鼻歌でなぞりながらその大剣でドーラの体を切り上げた。
「サウザンドソングを通じて、彼女達の熱意が伝わるようです……!」
「っし! 昂って来るな!! オレも歌うぜッ!」
――……えー。
 LEのブーイングも気にせず聖は飛び上がろうとするドーラの前に立つ。
 由利菜が突き出した盾と聖が突き出した大剣の腹で飛び上がろうとしたドーラを叩き落とし。その顔面を焔織が蹴りつけた。
「父や母も、今どこかで人々を守る為愚神の脅威と戦っているはず……! 二人の為にも、私は!」
 ニヴルヘイムが輝きを帯びる。
 一瞬のうちに五回の剣撃。それはラジェルドーラの装甲を削り、弾き飛ばすに十分な威力。
「今だって、死ぬのも邪英化するのも怖いのは変わらない……。だけれど、万が一の時には……!」
 由利菜の背後で聖がリズミカルにドーラの装甲を叩いた。
 ドーラは聖から距離をとると双銃で聖に弾丸を浴びせる。
 それにつられていて上空から迫る杏奈と姫乃、焔織の存在に気が付けなかったラジェルドーラ。
 ミョルニルによる一撃は。杏奈の攻撃で妨害され直撃。
 海面を転がったドーラは素早く竜形態に体を変形させると空に飛び立った。
 炎をはきながらリンカーたちを牽制する。
「しゃらくせぇ!」
 次いで姫乃はミョルニルを振り回し、遠心力を利用して投げた。
 その重量がなくなった分加速可能。
 焔織がドーラの旗を止めていたのだが、その接近を感じると焔織は下方に加速。
「任せます!」
 ミョルニルを追い抜いてドーラの背後に回る。
 突き刺さるミョルニルはドーラの口の開閉部分を担うパーツを粉砕する。その突き刺さったミョルニルを回収してドーラの頭に叩きつける。
 燃えたつ服をぱんぱんっと払って火を消す。
 まるでドーラの動きを理解していたかのようなコンビネーションだったがなぜドーラの動きを予測できたか。
 それは決まっている。
(ナイア。次合った時いろいろ教えてやるからな)
 そう、空に呼びかけ姫乃は落ちていくドーラへと追撃をしかける。
 その時ドーラは人間形態へと戻り、そして胸のコアを露出した。
 だがそれを待っていた男がいる。
 放たれた銃弾は真っ直ぐコアを射抜く。
「狙ってくださいって言ってるようなもんだな」
 遊夜が立ち上がりそう告げた。
――……ん、ボク達の……得意分野、油断大敵……だよ?
 誘爆を引き起こすドーラの体。
 それに姫乃は追撃とバルイネインで迎撃を。
「テメーがその鎧を着てんじゃねえよ!」
「大技行くぜ……! サポート頼んだ!」
 聖が爆走しドーラへ距離を縮める。
 武装はいつの間にかアステリオスに換装されていた。アックスチャージャーでライヴスを高め。そして。
(……リンクバーストって、言いてェとこだが……)
『それ』に、近づける努力は……しているつもり。
「――っし……行くぜ……」
 放たれる一撃は依り研ぎ澄まされた最高の斬撃。
 チャージラッシュで更に研ぎ澄まし。至れ、その一撃へ。
 解き放て、疾風怒濤の迅雷を。
「……おぉぉぉぉぉッ! コレで砕く! 千照流・奥伝……鶯雷千ッ!!!」
 その斬撃はドーラの装甲を切り裂くというより砕くような形で下半身。そして、斬撃の起動をそらすために挟まれた右腕を千切り飛ばした。
「紅蓮の旋風、その身に刻め!」
 上空からえぐるように姫乃が落下する。
 ミョルニルによる鉄槌はドーラの上半身もズタボロに砕いた。
「やすらかにな」
 姫乃はキラキラと舞い散る霊力の光を眺めながらDARKへと視線を写す。
 見れば宇宙ステーションが接触していた。
 DARKのシールドが何とかそれをおしとどめている。
 そんなドーラの排除と共にセレナの操縦するヘリが『北条 鞠也(aa5420hero002 )』の静止もきかずにDARKへ突貫。途中でDARKに撃墜されるもアルトは単身空中に投げ出され。
 空を歩くようにさらにDARKへ接近する。
 そして。
「食らいやがれ!」
 放たれたカチューシャ、最後の一発がDARKの防御壁を打ち破る。
 まるでガラスが割れたような音で砕け散ったそれは、すでにARKの砲撃を退ける力はなく、その装甲に砲撃を浴びせられた。
 それを好機にと理夢琉が接近。
「心を一つに、アリューテュス!」
――あぁ、歌おう理夢琉。
 理夢琉は謳いながらサンダーランスでDARKの大型砲塔を切り取っていく。
 直後突き刺さる宇宙ステーション。
 DARKのものだか、宇宙ステーションのものだかわからない残がいがまるで雪のように降り注ぐが、その中でも理夢琉は謳い続ける。
 最後のサンダーランスが格納していた砲弾に当ったのだろうかDARKは大爆発を引き起こした。
「さいごの歌を歌いましょう。そういうの、あなただけのものじゃないんですよ?」
 禮が告げた。
 DARK内部の、修繕担当ルネ達はその歌を聴いて動きを止める。
 それは音のない歌、魔を打ち払う歌声。
”滅び”を滅ぼす歌声、黒い人魚の”無声劇”
 希望の音に合わせて歌いながら広がるその旋律は。ルネ達をまるで氷の彫刻のように変えていく。
 DARKの機能がマヒし始めた。
 あと一息。
 あと一息。
 その中で澄香は海上から砲塔のふちにガデンツァが佇んでいるのが見えた。
 ガデンツァはその体にコードを接続している。
 その口が小さく動くのが見えた。
 シンクロニティ……。
 その時澄香の脳裏に有る発想がよぎる。
 全ての分子結合をバラバラにするシンクロニティデス。
 それが無機物にも有効であったなら。
 もしそうであったなら、宇宙ステーションがバラバラにされてしまう。
 だったら。
「ガデンツァ!!」
 澄香は叫んだ。たぶんガデンツァに一番言ってはいけないこと。
「あなたが世界を滅ぼせない神さまで本当によかった!!」
 ガデンツァが振り返った。その表情は今まで見たことが無いくらいに感情が無く。
 次いで放たれた音波、衝撃を受けて澄香は水の中に沈んだ。
 体が海の中に溶かされていく。
 そんな中。
 澄香のポケットが淡く光を灯した。
 スマートフォンだ。
 澄香はそれを手に取って。耳に当てた。
 その向こうから聞こえてきたのは、少女の声。
「姉……さん」
 澄香は目を見開いた。

   *   *

 何も聞こえない。何もわからない、ただただ寒かった。
 力が吸い取られるように抜けていく。
 少女。魅霊は思う。
――今見えるのは、白い平面……らしい。
 らしいというのは、それは定かではないということ。
 視界がぼやけていてよくわからない……けれど。

 たぶん、ここは現世だ。

 魅霊は軋む体を無理やり動かして腕を伸ばした。
 左手に触れる布の質感。さしづめ、病院のベッドの上といったところか。
 魅霊は察する。
 ほっとしたような、仕損じたような。不思議な感覚。
 直後、様々な記憶が脳裏によみがえって消えていく。
 自分はたしか、あの炎に焼かれて……。
 最後に思い出せるのはすすり泣く声。
 また、自分は大切な人を泣かせてしまった。
 そう思った魅霊はすぐそばにあるであろう端末を探す。

 澄香姉さんの声が聴きたい。

 数度『空振った』右腕と詰まりの多い肺はさておいて、それを探す魅霊。
 すると、その腕が誰かにとられて、何かを握りこまされる。
 冷たいつるりとした感触。
 その表面を手が勝手に滑る。
 慣れた一連の動作で魅霊は澄香にコールをかける。
 繋がるだろうか。そう思ってすぐに魅霊は思い直した。
 今、駆けてしまったもよかったのだろうか。
 だって、澄香は戦っているはずだ。
 戦場で、ただひたすら誰かの幸せのために。
 それに、話せることも少ない。
 でも、せめて、せめて声が聴きたい。
 その一心で声を絞り出した。
 すると。
「魅……霊ちゃん?」
 恐る恐る問いかける声はごぼごぼと曇っていた。
 その問いかけが嬉しくて。魅霊はありったけの声をあげる。
「姉さん。ああ、姉さん。御無事で。無事でいてくれたのですね」
 その言葉に呼応するように澄香は言葉を重ねる。
「それは、こっちのセリフだよ。大丈夫なの? 幽霊じゃないよね?」
「痛くて死んでしまいそうです。早く、早く帰ってきてください」
 次いで魅霊はスマートフォンを枕元において。小さく歌を謳い始めた。
 それは春風の音。
 生きてくれたことに、今までの彼女に、思い出と感謝をこめてのありがとうを。

   *   *

 直後澄香は血を吹きだす体に鞭打って海の上に浮上した。
 そして無線を利用してARKに指示を出す。
 五番砲塔にガデンツァがいる。撃ち落として。
 直後放たれた砲弾が、砲塔に着弾する前に。澄香はブルームフレアでガデンツァの退路を断った。そして直撃した砲弾でガデンツァは落ちていく。
 海へとはいかないが、DARKの壁に叩きつけられ硬質な音を奏でていた。
 これでガデンツァは隠し玉を使えない。
「ああ、恐ろしい執念じゃ。なぜそこまでして抗える。その力がどこにある」
 次いでガデンツァはその歌を拾うことになる。
 愛の音~andante~
 ガデンツァは耳を抑えた。
「がああああ、なんじゃ。その冒涜的な音色は」
 ライブもラストスパート。
 トリを飾るのは蘿蔔である。
「皆を信じて歌いましょう、きっと大丈夫」 
 崩壊するステーションとDARKを見つめながら。
 蘿蔔はマイクを握る。
 澄香、理夢琉、雨月。皆を始めとした大切な仲間、大切な人達を思って。そして最後の歌を届ける。
 言語を変えて。ガデンツァに届くように。
 響くのは希望の音~H.O.P.E.~
 心を砕く歌に対抗する。
 心を守る歌だ。
――誰でもない君へ
  希望の音を

――王の意思には逆らえない、か。
 レオンハルトはそう短く告げた。
「それでも私達は救われるべきだと言ってくれました」
 蘿蔔はそう首をかしげる。
「何度もそう思った世界を壊したのかな」

 作られたもので。
 望んだものではなくて。
 許される―いえ、許せるものでもないのかもしれない。

 蘿蔔は思う。
「心を持った存在に本物も偽物もない。貴女は恐ろしい敵で。自由に歌う翼を奪われた哀しい人」
 理夢琉がそうガデンツァに言葉をかけた。
「貴女と楽しく声を重ねられたらどんな旋律が生まれたのかな」
「生れぬ、わらわは滅ぼすのみ。滅びによって世界をすくうものだった。世界を救えなかったわらわは、すでに滅ぼすのみ。滅ぼすのみじゃ」
「それでもこの軌跡はあなたのもの」
 蘿蔔は告げる。真贋なんて関係ないと。
「どうか独りにならないで」
「我は独奏者じゃぞ、一人にならずして、どうする」
 その言葉を悲しく思いながらうたうことを やめない蘿蔔。
「あなたの本当の歌を聞いて、一緒に歌いたい」
 崩壊していくDARK。
 次いで宇宙ステーションが自爆。強い大爆発が襲い、ARKのモニター全体が光に包まれる。
 残るわずかなルネは撤退を開始した。
 リンカーたちはこの戦いに勝ったのである。


エピローグ
 戦場では救出作業が行われていた。
 戦場半ばで力尽きた者も多く、海で浮かんでいるだけの彼らをH.O.P.E.の舞台が回収していく。
 そんな中犬尉はいつの間にか撃墜されていた槇をボートに引っ張り込む。
「ガデンツァ本人がまだだお……。俺らの戦う理由はわかったお。けどあのおばはんの戦う理由ってあるのかお?」
 そう告げる槇に犬尉は言った。
「我々戦士は皆、生きる為に、生かす為に。
 未来の為に」
 ガデンツァも戦士だ。彼女も護りたいものがかつてあったのだろう。 
 王に染まってしまう前に。
「戦うという手段を選ぶ。
 結局はそれしかないだろ」
 そして犬尉は槇に言葉を送る。
「だからしてその戦い方は感心しないな、阪須賀くん」
 その言葉には誄が返答を。
「いやね?犬尉さん。手の届かないとこで仲間が包帯巻いてる気持ち、彼女らも味わってみればいいやってね?」
 そんな中、自分の治療も二の次に医務室へ走る者がいた。
 澄香は病室の戸を慌ただしく開くとそこにいる魅霊に覆いかぶさるような形で抱き着いた。
「生きててよかった」
「ごめんなさい」
「なんで、あんなことしたの」
 そう声を荒げて問いかける澄香に魅霊は答える。
「貴女を愛するが故に」
「私は、喜ばない」
 そう澄香が涙をこらえて告げる。
「姉さん。それは関係ないんですよ。
 愛する者の未来を。
 幸福を。
 笑顔を。
 望むのに、命が担保であるから何だというんですか?」
 問いかける魅霊に澄香は言葉を返せずただ時が過ぎる。
 そんな中魅霊は幸福を感じていた。
(愛しい澄香姉さんの幸福を、私は追い求める。
 それが、この命に光を齎してくれた貴女への恩返しであり……
 ―紛れもない我欲であり、希望であるが故に)



結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命



  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 胃袋は宇宙
    メルトaa0941hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 託された楽譜
    魅霊aa1456
    人間|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    R.I.P.aa1456hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃



  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 救済の音色
    セレナaa3447hero002
    英雄|10才|女性|ブラ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
  • 妙策の兵
    望月 飯綱aa4705
    人間|10才|男性|命中



  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • エージェント
    楠 セレナaa5420
    人間|16才|女性|防御
  • エージェント
    北条 鞠也aa5420hero002
    英雄|22才|男性|ジャ
  • エージェント
    犬尉 善戎狼aa5610
    獣人|34才|男性|命中
  • エージェント
    戌本 涙子aa5610hero001
    英雄|13才|女性|シャド
  • …すでに違えて復讐を歩む
    アトルラーゼ・ウェンジェンスaa5611
    人間|10才|男性|命中
  • 愛する人と描いた未来は…
    エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001
    英雄|22才|女性|カオ
  • 光明の月
    希月aa5670
    人間|19才|女性|生命
  • エージェント
    ザラディア・エルドガッシュaa5670hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
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