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紅葉狩りと秋祭り
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最終発言2018/09/15 23:24:59
オープニング
●秋
そろそろ、新緑で覆われた山々は紅葉して彩られていく。
9月とはいえ、まだまだ多少なりとも気温は高いが、秋の実りで賑わうヨーロッパとは正反対に日本は、その色鮮やかに彩られる山々はを眺めるのが毎年の恒例である。
十三騎との戦いや、マガツヒの怪しい動きに忙しいエージェント達の為に、紅葉狩りしつつ秋祭りで気分転換する為のイベントが行われる事になった。
「……あ、ごめんね。秋祭りに行かない? 会場の側には紅葉する山々を眺める絶景ポイントもあるよ。出店のは食べ放題だし、積もる話もあるだろうしどうかな?」
一瞬だけ空を見つめていた圓 冥人(az0039)がアナタに気付き、何時もと変わらぬ笑顔に戻ると声を掛けた。
『忙しくなる、前に、秋の味覚食べよ? 栗、芋、梨、りんご……食べ放題、ね?』
弩 静華(az0039hero001)は瞳を輝かせながら言った。
『夜には、皆でそれぞれの願いを込めて灯を点すんです。死んで行った仲間への鎮魂、これからの事を願うのも良いですよ』
真神 壱夜(az0039hero002)が、お祭りの詳細が書かれたチラシをアナタに渡す。
『これは、私の出番ね。お香の香りに包まれながら、猫、犬、鳥、うさぎに触れ合える癒し系のお店を出させて頂きますね。是非もと寄って頂けると、事務所の家賃が払えますので、お願いね♪』
と、近頃依頼が無くて暇であるルチア・アーベント(az0137hero001)が意気揚々とお店の宣伝をし、颯 鋼迅(az0137)の首根っこを掴んで駆け出した。
「あの二人みたいに、自分達で出店をするのも良いよ。魔法少女喫茶とか、マッチョだけのカフェとかしたい人しても大丈夫だからね? 少しでも、皆が楽しめれば嬉しいよ。じゃ、当日楽しみにしてるね」
出店申請の用紙も渡すと、冥人はアナタに笑みを浮かべた。
解説
【目標】
秋祭りを楽しもう!
【場所】
ロンドン付近にある公園(昼~夜)
【可能な行動】
1:兎に角、秋祭りを楽しむ
2:出店する
3:灯篭に灯を点す
4:夜の紅葉を静かに眺める
※1と2はどちらか片方だけにして下さい。
【出店】
・ルチアが運営する小動物癒し喫茶
・世界中のお酒を飲み比べ出来る出店
・ケパブ、クレープ、アートなわたあめ、冷凍パイン等の食べ物屋
・お面、一点物の手作りアクセサリー等の出店
・ボール当て、ダーツ、ヒモクジ等の遊び系の出店
【NPC】
鋼迅&ルチア以外でしたら、お誘いあれば同行します。
リプレイ
●秋の祭の日に
出店で賑わう公園で賑わう中で、木霊・C・リュカ(aa0068)は最近風の噂で聞いた話が脳裏を過る。
楽しそうに辺りを見回す紫 征四郎(aa0076)は、重度弱視であるリュカの手を取って出店の間を歩き進む。
共に過ごす来年が無いかもなんて
実際告げられてもあまりピンとこなくて
それが逆に恐ろしかった
「リュカ、お酒が売ってますよ!」
と、征四郎が明るい声で言うものの、普段ならば嬉々として行くハズのリュカが興味無さげに相槌を打つだけ。
「リュカ、もしかして、ちょっと元気ない、です?」
何時もと違うリュカに対して、征四郎は首を小さく傾げながら問う。
「そんな事ないよ。久しぶりのオフなんだし、何か珍しい食べ物とかないかな?」
「あ、それなら! イギリス料理を和風にアレンジしたお店がありますよ」
征四郎はCODENAME-S(aa5043hero001)のお店を指すと、リュカを椅子に座らせるとメニュー表に視線を向けた。
「よし、とりあえずオススメのを」
『うん、了解です。一人でしているからちょっと時間が掛かるので、近くのお店で買った物とか食べてて良いですよ』
リュカがCODENAME-Sに言うと、彼女は杖を見て察した様子で笑顔で答えた。
「ま、待ってください! 征四郎もうお腹いっぱいですよ!」
落ち着かない様子で歩いてたリュカがあれこれ買ってくれたので、征四郎の目の前には大量の食べ物が積まれている。
だが、リュカは一口も食べる様子は無いのでお酒も出していそうなお店を選んだのだ。
「……えっ? もう良いの? まだ全然食べてなくない?」
征四郎の言葉にリュカは首を傾げた。
「それはリュカの方……です」
と、口を開くものの征四郎は、リュカと英雄達の様子が変なのは察していた。
リュカ自身は、英雄から告げられた言葉を完全に受け入れられてなかった。
家族より長くは一緒ではないが、誓約した時から不安や恐怖、痛みは共有してきた英雄は唯一無二の絆。
不安よりも、理解しない事に恐怖を感じてた。
秋祭りで賑わう中で、顔見知りも居て、彼らの中にもやはりリュカと同じ気持ちの者も少なからず居る。
「戦うことは辛いこと、ってガルーがずっと言ってました」
小さな手を握り締めると征四郎はリュカを見上げた。
視線を感じたリュカはただ話に耳を傾ける。
『えっ、買ってくれるんですか! クレープの全部盛り食べたいです!』
凛道(aa0068hero002)が嬉々とした表情で声を上げると、全トッピングの生クリーム山盛りのクレープを指した。
『なんだ、貴様今日が誕生日か。なんでも好きなものを買ってーーはぁ、あれは少しデカすぎではないかね』
ソレを見たユエリャン・李(aa0076hero002)は嘆息しつつ凛道に買い与えた。
『ん~』
ずっしりとした重量のクレープを凛道は頬張ると、チョコやらキャラメルやらのソースに、季節の果物と自分の顔位の長さがありそうな生クリームが口の中を支配する。
『そうか……もう実りの季節が巡ってきておったとは……』
鮮やかに紅葉している木々を見てサルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)は、一人で秋祭りで賑わう公園を歩いてた。
『ほんに四季の巡りとは早いものじゃなぁ……』
と、しみじみしながら呟いていると、目の前に弩 静華(az0039hero001)が現れた。
『おや、静華。久しいのう。これから出店を回ろうかと思っておるんじゃが、一緒にどうかの?』
『ん、久しぶり。丁度良い、私も、秋の味覚狩りを、する』
サルヴァドールが声を掛けると、静華は出店一覧を手にしたまま万歳しながら頷いた。
『……ふむ、沢山ある様じゃな。静華は何から食べてみたいんじゃ?』
『先ずは、片手でも食べれる物から、そして、甘味に……ぐるぐる!』
と、サルヴァドールの問いに静華は出店一覧を指しながら、ジェスチャーして伝える。
『ふむ、それで行こうかの』
『ねぇ、サルヴァドールはどうするの?』
近くの出店で食べ物を買うと、静華はサルヴァドールに手渡しながら問う。
『お嬢も小さな友人も、彼女達が心から慕う者達全てが、温かな未来へと進んで行けると良いと願うばかりじゃ』
食べ物を受け取り、それを口にしつつもサルヴァドールは答える。
『そっか、私は……守れなかったから、失いたくないよ。もう、居場所は此処にしかないから……友達も、出来たのにね』
少し悲しげな笑みを浮かべると静華は、ぐっと涙を堪えるとサルヴァドールの服の裾をくいっと引っ張った。
『ふむ、今は今を楽しんで食べ歩きしようの?』
『勿論、その為の企画力!』
サルヴァドールが優しい笑みを向けながら言うと、静華はニヤリと悪戯した子供の様な笑みを浮かべた。
(道理で、食べ物屋が多いと思ったのじゃが……1枚噛んでたか。……じゃが、まぁ今日は秋の祭りを目一杯楽しむとしようかの )
小さな友人である静華に引かれながら、サルヴァドールは祭りの人混みの中へと消えて行った。
『これ、サクラコにプレゼントなのです』
露店で売られていたアクセサリーを手にメテオバイザー(aa4046hero001)が、シンプルながら内側に赤と青の石が埋め込まれた対の腕輪を桜小路 國光(aa4046)に差し出した。
「お揃い……?」
國光は突然のプレゼントに目を丸くすると、笑みを浮かべて少し照れた様子で受けとる。
『お揃いなのです〜』
メテオバイザーが腕輪を付けてあげると、自分が付けた方の掌と國光に付けてあげた掌を合わせて嬉しそうに声を上げた。
紅葉の葉が落ちる中で不知火あけび(aa4519hero001)は、自分の肩に掛けられた日暮仙寿(aa4519)の着物を照れながらも前を握り締めた。
付き合い始めてまだ2ヶ月程で、英雄になってからはもっと長いのに“名前を呼び捨て”する度に頬を赤らめてしまう。
休息スペースのテーブルにてイタリアの紅茶に舌鼓しながら、少し肌寒さで冷えた体を温めながら買ったクレープを食べていた。
「美味いか?」
仙寿はマロンクレープを頬張るあけびを見る。
『すっごく美味しいよ! 仙寿様のも美味しそうだね!』
笑顔で答えるあけびは、仙寿の林檎とシナモンのクレープを見た。
「……一口食うか?」
仙寿は食べ掛けているクレープを差し出した。
『!? え、えーっと……じゃあ私のもどうぞ!』
ただ、何となく言った言葉だったのにあけびは差し出されたクレープを取ると、自分のクレープをお返しに、と渡した。
仙寿自身は、『あけびが喜べば良い』と思い差し出したのだが食べてから気付く。
これは、間接キスではないのか?
と!
「おや、おや、若いねぇ」
店員が微笑ましく二人を見る視線に目が合った仙寿は、慌てて食べる事に集中するのであった。
食べ終えた二人は、公園内に出されてる様々なお店を見回ってると手作りアクセサリーにあけびの視線は釘付けになる。
(やっぱり女子はこういうものが好きなのか)
目を輝かせながらアクセサリーを見るあけびを横目に、仙寿は首を傾げた。
『そういえば私は仙寿様に「大紫」を貰ったのに、私は何も返せてないね』
と、言って肩に掛けられた着物を撫でると、あけびが小声で言った。
「そんな事気にしなくて良いぞ」
『気にするよ! それに……私が「大紫」を羽織ってると仙寿様嬉しそうだし』
首を振る仙寿に対し、あけびは顔を上げて真顔で言った。
「それは、まぁ……嬉しいだろ」
その言葉に対し仙寿はふ、と優しい笑みを浮かべた。
(周囲には意味が分からなくても、俺にとってはあけびが俺のものだって公言して歩いてるようなものだしな)
言わば“印”みたいな物だ。
『私も私が贈ったものを身に着けて欲しいなって思うんだよ』
視線を反らし、小さく首を傾げるとあけびは少し口篭らせながら言う。
照れている彼女を見て、仙寿は思わず頭に手を乗せて撫でた。
(今までやった事が無かったが。心に余裕が出来たんだろうか?)
と、考えるつつも驚くあけびに微笑んだ。
「なら今度揃いのものでも買いに行くか」
『ってお揃い!? いきなり上級者編になってない?』
仙寿の提案に驚きの声を上げつつ、あけびはハッとした表情になる。
(そういえば仙寿様も、告白の時に贈る意味を知った上で着物を贈った猛者だった……!)
告白された時の事を思い出したあけびは、紅葉の様に頬を紅くしながら心の中で叫んだ。
●灯火に願う事
日が沈み行く中で、配られた灯籠を手にそれぞれの想いが胸の中で交差する。
「何が待っているのか、征四郎は知りませんが。征四郎には、諦める、はできません。ずっと全部助けるつもりで戦いました。今回だって、同じです」
征四郎は藤が描かれた灯籠と、リュカの竜胆が描かれた灯籠の中に蝋燭を立てていた。
「……お兄さん、も、来年も、せーちゃんと皆と、一緒にいたいなぁ
諦めたくないなぁ……」
リュカが征四郎に手伝って貰いながら蝋燭に火を点す。
「……大丈夫、です。来年も再来年も、みんなで一緒にいましょう。いつだってそう、願ってきたではないですか」
訪れる未来に希望を込めて、征四郎は灯籠を公園内に並べるとリュカの手を取って笑顔で言った。
「せーちゃんが頑張るなら、お兄さんも頑張ってみようかな」
強めに手を握り締めながら、リュカは力強く頷き沢山の灯籠が見えた気がした。
『一ヶ月分くらいの生クリームを先取りした気がします』
満足げに言いながら凛道は、灯籠に蝋燭を立てて火を点す。
『僕らの世界も、覚えていないだけで滅ぼされたんでしょうかね』
『そうであるなぁ、今となっては知る由も無いが』
ぽつりと凛道が呟くと、ユエリャンは灯籠を手にして考え込む。
不安そうな表情になっているのも気付かずに。
『……いえ、もし、それが罪で無かったとしても。僕は、ここが好きなので』
最後かもしれない、そんな言葉が凛道の脳裏に過る。
灯籠を並べ終え、二人は誰も居ない公園内の隅で静かに話す。
『我輩は、見届けたいと思う。出来るだけ最後まで、全ての戦いの果てを。……前の世界では、諦めてしまったから』
作った『我が子』達の命が、掴んだ砂が指の間から溢れる様に使われていった。
『もしかしたら、前ももう少しやりようがあったのでは無いかと思うのだ。心中に脳漿を撃ち抜く前に、我が子等を穏やかに殺す前に、もっと出来ることがあったのでは無いかと。だから』
後悔した、命じられたままに自らの手で『我が子』を壊した事を。
だから己自身を壊して全てを諦めた。
そして、英雄としてこの世界に来て『我が子』も英雄として居たのを見て、幸せを見て『諦めない』気持ちが今は此処にある。
『……来年出る新しいクレーンゲーム、一緒にできないかもしれませんね』
澄んだ夜空を見上げ、凛道は少し寂しげに言った。
『ーー後悔せぬよう、やろう。お互いに』
ユエリャンも夜闇の空に光が灯るのを見つめる。
『……マスター達に、どう伝えましょうか……』
凛道はユエリャンの言葉に同意するかの様に頷く。
『意外と、もう気付いておるやもしれんなぁ……』
目を伏せると、ユエリャンはため息を吐きながら答えた。
昔より、活発になった故郷を嬉しく思い。
それとは裏腹に、家族や友人に同僚を含めて沢山の人が殺された記憶が切れない糸の様に、今も引きずっている。
御剣 正宗(aa5043)は同じリンカーである人に声を掛けようとも思ったが、幸せそうに笑顔で歩く姿を見て邪魔したら悪いと思い止めた。
「隣、失礼する」
マデリーネ = ビョルリング(az0112)が遠慮せずに正宗の隣に座る。
「……こ、こんばんは」
「嬉しいようで、悲しい場所の様だな」
正宗の表情を見てマデリーネは淡々と言った。
「……故郷、だから」
「そうか、エージェントというモノは辛い経験者ばかりらしいからな。私は詳しくは聞かんが、後ろ向いたままだと未来は作れんぞ」
公園内に並べられた灯籠で照らされいる紅葉を眺める。
「大切なモノは、未来を共に作る為に前を向くんじゃないか? 祖父が、オーパーツは過去の人が未来の為に作った標だ……と言っててな。今のお前は、誰の為に立って歩いているんだ?」
マデリーネの問いに答えない正宗に、彼女は露店で買った変わった知恵の輪を渡すと去って行った。
「明るい時に眺める紅葉も美しいですが、夜の紅葉もきっと素敵でしょうねぇ」
花邑 咲(aa2346)が圓 冥人(az0039)に向かって微笑んだ。
「そう、だね」
灯籠に火を点しながら冥人は、少し間の抜けた返事をする。
「……終末を迎えんとするこの戦いの末に、多くの希望が、優しい未来がありますように」
その様子に気付かない咲は、灯籠を並べると教会で祈るシスターの様に手を胸元で組む。
戦いで死んで行った者、これからの戦いに行く者への祈りを捧げた。
「あ、冥人さん。お酒好きでしたよねーホットワイン買ってきましたよー」
「あ、うん。ありがとう」
灯籠が徐々に増えていき、公園内はオレンジ色の灯りで照らされる中で紅葉は、冬に向けて葉を散らす。
「咲、追い求めたモノが無くなったら……どう思う?」
「女王の事ですかー?」
「そう」
冥人の問いに咲は首を傾げた。
「別の楽しみを見付けるとか、前向きに考えるのですー」
「そうか……俺はね。知りたかった、妹の苦しみと女王を想う気持ちを……でも、聞けなかった。頑張って、自我を保てるように鍛練したのに負けたよ。猛り狂う猛獣に成り果てた……情けないね、俺」
咲が明るく答えると、冥人は己を嘲笑うかの様にあの時の事を話す。
「冥人さんは頑張りましたよー?」
「分かってる、それは……俺も、静華達も……でも、分からないまま、全部終わって、分からないまま、進む道を失った……だから、これからは多分……」
冥人は口を閉じ、ホットワインを一気に飲み干す。
「今の俺とは“さようなら”だ」
「今の冥人さんと?」
冥人の言葉に咲は首を傾げた。
「このお祭りを最後に……いや、なんでもないよ。さ、行こう」
冥人が手を差し出すと、咲は笑顔で手を取るが違和感が拭えなかった。
目の前に居るのに、世界の反対側からテレビ電話で会話しているかの様に遠く、遥か向こう側に居る感覚がした。
(……気のせいですよね。でも、この感覚は……なんでしょうか?)
何時もと変わらぬ笑顔の冥人に違和感を抱きつつ、咲はオレンジ色の灯りの中で紅葉を一緒に眺めた。
『メテオは、あの星々はまだ無事な異世界だと思うのです。メテオは、愚神の世界も英雄の世界も、かつて存在した全ての世界を知りたい思うのです』
灯籠に火を点した後に、メテオバイザーは夜闇に光り輝く星に視線を向けた。
『メテオは覚えてないけれど、その中でメテオの世界に似た世界に巡り会えると思いたいのです』
「メテオの世界はずっと夜で、赤い葉をつける木は無いそうだ。緑と黄色と青い葉に、光輝く花がついてる。地面の花も光って、空には月の様な星が4つ光ってるんだ。覚えてないだろうけど、お前の口から何度か溢れた事がある……お前の世界の記憶の断片だ」
と、國光は言葉を紡いだ。
「綺麗なんだろうな……お前の世界は」
メテオバイザーを頭をくしゃりと國光は撫でた。
『なら、今見てる風景と似てるのかもしれませんね……』
灯籠で光を浴びて輝く紅葉を見て、メテオバイザーはこくりと頷いた。
「オレさ……この数ヶ月、オレにとって戦うってなんだろうと考え続けたけど……答えが出た気がする。わかったのは、「兄さん」が消えた時の恨みがまだ残ってる事、と本当に大事なモノはどんな状況でも捨てられないって事。オレは、研究を続けたい。オレは、「兄さん」と交わした約束を捨てられない」
國光がゆっくりと、静かに話し出した。
「考えてる間、剣を置こうって何度も思った。けど、置けなかった。
多分、それは……オレを守ってくれたのに後で謝ってきた人や、嬉しい事も怒る事も一緒に分かち合うと言ってくれた人を、裏切るなんて嫌だった。黙って留学したのだって実は負い目に感じてて……また裏切るなんてできないよ。だから、もう少しだけ…手伝ってくれるか? その人達が、武器を置くその日までーー……」
手を差し出すと國光は、真っ直ぐにメテオバイザーの瞳を見つめた。
『勿論なのです。サクラコの温もりを護るのはメテオの約束なのです』
メテオバイザーは笑顔で差し出された手を握り締めた。
「そのお前の笑顔を護るのはオレの約束だからな……」
國光は笑顔で力強く頷いた。
生きて帰る誓約も
互いを守る約束も
剣を置くその日まで、変わらずにいよう ーー……と。
『見ないで!』
悲鳴に近い声でJennifer(aa4756hero001)は叫んだ。
何時も着けていた仮面が、強い秋風を受けて外れてしまったのだ。
しかし、隠す前に小宮 雅春(aa4756)の脳裏に焼き付く程にそれは……とても酷い状態であった。
彼女の顔の大半は痣に覆われており、、正視に耐えない程醜く変容
第三者によって作為的になされたものとすぐ見て取れた。
右目の周りにのみ嘗ての面影を残す程度だ。
Jenniferが愚神商人から聞いたという話が心に引っかかる。
英雄の存在が「バグ」なら、愚神が存在し得なくなった時、何故彼らも消えるんだろうか?
と、雅春は疑問が脳内でぐるぐると回る。
1つでも多く彼らを識る、なんて言っときながら、一番向き合えてなかったのは雅春自身だ。
このまま何となくの距離で終わらせるのは楽だ。
でも本当にそれでいいのかな?
良くない! と、心の中で叫んだ。
「ごめんね。僕、きみのこと何にも知らなかった。『ジェニー』でいてくれる君に甘えて、きみ自身を知ろうともしなかったんだ」
雅春はJenniferの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「……大丈夫? 痛くはない?」
何時もと変わらぬ態度で雅春は、Jenniferの痣で覆われている頬に手を添えた。
私が思うほど世界は悪意に満ちてはいない。
いくら信じようと、猜疑心はどこまでも付いてきて。
僅かに芽生えた希望さえズタズタに切り刻んでは、唾を吐き捨てて去っていく。
だからどんなに温かい言葉をかけられても、嘲りを込めて返すだけ。
そうしていつしか心まで醜くなった。
私は「ジェニー」の代用品。
使い捨てられて然るべき存在。
でも……彼だけは信じても良いのだろうか?
ただ、仮面の無い自分を見つめるその瞳と、労るその手の温もりは偽りではない。
本心だ。
『……愚かなのは私の方ね』
雅春の手に自分の手を重ねると、Jenniferは口許を緩めて小さく微笑んだ。
「?」
Jenniferの言葉の意味を分からず、首を傾げる雅春。
『ふふふ、何でもないわ。ありがとう』
と、言ってJenniferは仮面を着けると、真っ直ぐな瞳で自分を見つめる雅春を信じる。
代用品なんて関係なく、心の仮面を握り潰して捨てた。
この先、何があろうとも信じて二人で走ろう。
秋が深まる夜に、最後かもしれない時を過ごしに再び歩き出した。
ただし、遅くなってしまったので大半の店は終了していた。
灯籠の数だけ、願いが灯り。
灯籠の数だけ、H.O.P.E.に所属している者が居る。
実りの秋が終われば、試練の冬がやってくる。
絆を深めて、挑む試練はきっと春を呼ぶだろう。
暖かく、全てを実らせ、希望に満ちた、春を。
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結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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