本部

【宇宙開拓】暗夜滅する浄化の炎

鳴海

形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
16人 / 1~25人
英雄
16人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/09/13 13:52

掲示板

オープニング


● 宇宙空間の……。闇の中心の……。

 人工的に作り上げられた星、宇宙ステーションは、日夜愚神を監視し続けていた。
 その禍星が胎動を緩めないか、日々観察を続けていた。
 宇宙ステーションは空に孤独ひとり。ただただ佇みその時を待っている。
 リンカーたちが集まってくるのを。
 その宇宙ステーションは武装されていた。
 複数のシールド。砲塔。そして今回の航行で設置された戦闘準備室。
 広い宇宙見渡せるその地で禍星を眺めるのは君たちである。
「ライトニング・ステアウェイをはじめとする衛星兵器はやはり使用できなかった」
 遙華が大型モニター越しに皆に告げる。
「だったらあとは、このステーションを利用するか。あの愚神の隕石を利用するしかないのよね」
 遙華がモニターをズームする。するとどでかいドロップゾーンの隙間に挟まるように黒い何かが鎮座していた。
 あれがケントゥリオ級愚神最上級、認証名ヨグソトース。
「あの愚神の本体は直径1000キロメートルある外郭の中のほんの一部のよう。具体的には最内殻に位置する二メートルの個体。それを私たちはいまから破壊する」
 遙華のコールと共に宇宙ステーションが方向を変えた、設置されたマスドライバーをヨグソトースに向けると、その殺意を感じたのか巨大な隕石が目を開くように動く。
「この戦いでこの宇宙ステーションを温存できたならDRAKに突っ込ませる。無理ならあの隕石を奪って突っ込ませるわ」
 すると巨大隕石の内側からタコのような従魔が無数になだれ込んでくる。
「海の敵を倒す前に空の憂いを払うわよ」
 告げると宇宙ステーションの周りに集まっていたシャトルが一直線に並んだ。
 宇宙の戦いも最終決戦である。

● 作戦説明。

 今回は広大な宇宙を背景に愚神と軍団戦を繰り広げていただきます。
 敵の層は分厚く広範囲に広がり、宇宙ステーションを取り囲もうと今も広がっている最中です。
 敵は500体のインベーダーと二体のケントゥリオ級愚神。
 その包囲を許さず、逆に敵の親玉であるヨグソトースを倒すことが今回のミッションです。
 包囲網を突破し、ヨグソトースに近づき。かの愚神を撃破してください。


 今回宇宙ステーションが無事であれば、ガデンツァのDRAKにぶつけることができるかもしれません。
 もし無理ならヨグソトースが作り上げた霊石外殻をDRAKにぶつけることになるでしょう。



● 使用アイテムについて
 今回は皆さんに一基ずつ空を飛べる装置を貸し出します。

天翔機 光輪
 輪上のエネルギーリングを発生させ、体全体の重力を緩和。もしくは重力を発生させ体を浮かせる技術で空を飛びます。

 これにくわえて皆さんには三つの役割を与えるので確認してください。


・戦艦部隊
 今回はシャトルを戦闘向けに改造し使用します。
 皆さんのAGWと同じ扱いで装備、使用していただいて構いません。
 シャトルは基本的に攻撃を受けた回数で撃破かどうか判定されます。
 5回までの攻撃なら耐え。
 8回でエンジン停止。
 10回で大破です。
 シャトルは三つ種類があります。
 合計15機貸出可能です。

・小型シャトル 
 今回は参加するリンカーの人数分レンタル可能です。
 全長20メートル程度。
 リンカーが操縦すればAGWとして機能し、リンカーの回避能力が強化される性質を持つので、うまくすればインベーダーの襲撃をかいくぐることができるかもしれません。
 武装は積んでいませんが、ハッチを開けて遠距離武器で攻撃することが可能です。
 

・中型シャトル 
 人員10人乗れる一般的なシャトル。
 装甲をかさまししているので、インベーダーの攻撃を五回無効化できます。
 リンカーを安全に届けたり、補給拠点。治療拠点として使うのに向きます。 
 全長80メートル程度。
 運転しているリンカーは戦闘に参加できないかと思いきやコックピットのハッチは開くようになっているので、遠距離攻撃系リンカーは運転しながら攻撃できます。
 ただ、自由にとはいかないので、本格的に戦いたい場合はエンジンを止めた方がいいでしょう。


・戦略シャトル 
 戦闘を前提として作られた、シャトルというより戦艦です。
 大きさはや搭乗人数は中型シャトルと同じですが、武装を詰みすぎているので、リンカーを収容できるのは5人が限界でしょう。
 最大の特徴は操縦するリンカーの装備しているAGWの拡大版武装を装備していることです。
 具体的には、リンカーはこのシャトルを操縦している限り、自身のAGWへ。
・最大射程+25
・両攻撃力五割増し
・範囲攻撃化(攻撃範囲が縦3SQ×横3SQ増える)
 の効果を受けられます。これでうまく戦ってください。


・突貫部隊
 展開したインベーダーを突破してヨグソトースまでたどり着くのは骨です。
 なので、リンカーを射出することができます。
 ただし、このマスドライバーでヨグソトースの外郭に叩きつけられると。物理攻撃力1000~1500程度で二回攻撃を受けたダメージが入ります。
 射出されるだけでも生命力を5失うので。生命力が少なくて、でもどうしても乗りたい人は工夫してみてください。

 
・迎撃部隊

 敵陣営にはケントゥリオ級愚神がさらに二体存在します。

解説


目標 ケントゥリオ級愚神ヨグソトースの撃破。

ケントゥリオ級愚神ヨグソトース
 ヨグソトースは硬い外殻に守られています。
 この外殻は物理防御力に特化しています。

 ただその外郭は今大きく開いて内部にいるインベーダーさえ駆逐できればすぐにヨグソトースにたどり着くことができるでしょう。
 その力は強大ですが魔法攻撃に特化しています。
 念動力で敵である皆さんをひしゃげさせようとしたり、隕石を呼び寄せて叩きつける。従魔を叩きつけるなどお手の物。
 念動力で攻撃を受け止めることもできます。
 ただ、それほどの強大な力で沢山のリンカーを相手にできるわけはありません。
 何か強力すぎる力には突破口があるはずです。
 仲間の力、マスドライバー、戦艦。
 あらゆる状況を駆使してヨグソトースを倒してください。



ケントゥリオ級愚神 コレクター 二体。
 体長二メートルを超える人型エーリアンです。
 名前はコレクターと呼ばれる個体ですが、新品の個体のようで戦闘知識が少ない代わりに、ステータスが高いようです。
 彼らの特徴は皆さんのAGWを奪って武器にすることです。
 奪われると戦闘の術を失うと同時に、敵を強化することになります。
 最初のステータスはデクリオ級ほどのレベルですが。
 武装を施すことで際限なくステータスをあげます。
 しかも複数のAGWを同時に扱うことができます。
 腕を生やしたり、目を生やしたりして無理やり使うのです。
 さらに恐ろしいのは携帯品からAGWを奪うことができることです。
 装備には気をつけましょう。


従魔 インベーダー

 あまりに弱いので十体で一体とカウントされます。
 タコのような触手持つすがたで、体長は50センチから二メートル。個体によって差は有れど攻撃手段は張り付いて溶解液を流し込むことです。
 今回は総勢500体存在します。なのでユニット数としては50体です。

リプレイ

プロローグ

 宇宙に浮かぶステーション。
 その中枢でパネルを睨み、少女は一人黙りゆく。
 世界の命運をその双眸に写し。世界を覆う闇を見た。
『蔵李 澄香(aa0010)』は全てのシャトルのデータ特性を把握。宇宙ステーションとリンク。
 増設した大型スクリーンに並べた。
――なかなかシステムが急ごしらえですわね。
「しかたないよ、何もかもかつかつなんだ」
 『クラリス・ミカ(aa0010hero001 )』の言葉に澄香は頷きマスドライバーの射角調整に入る。
 もう少しで作戦開始時刻だそれまでに全ての準備をすませないといけない。
「空中にデブリを射出。大丈夫、誤差は0.0003%程度。これならいけるよ」
 告げると澄香は踵を返す。自身の戦艦の調整に入るために。
「あ~お~い地球をまっもる~ため~♪」
 廊下に出ればそんな鼻歌が聞えた。
「悪党さま~の出動だ~♪」
『火蛾魅 塵(aa5095)』が蠢くなにかに目を凝らす。
『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001 )』の瞳が揺れた。
「ククク…………ここが死に場所ってかぁ? サイコーじゃねぇか、なぁトオイぃいい!」
 頷く人造天使壱拾壱号。
「…………壊させねーよ。それは俺ちゃんの役目だぜ?」

――神話の邪神を冠するとは随分と趣味の良い事ですわね。

 暗闇にしみいるように凛とした声が響く。
「まぁあながち間違ってもいない気はするが」

『赤城 龍哉(aa0090)』は静かに顔をあげた。
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001 )』の声を受け、最後の戦いに身を投じる覚悟を決める。

「さぁ、邪神退治と行こうか!!」

 全ての戦いに終止符を打つため。
 一人の青年は邪神に刃を向ける、その背中越しに戦艦が隊列を組んで星の海を渡っていく。

第一章 夜空を切り裂く流星


 暗黒を強いる神。ヨグソトース。
 その脅威が宇宙に現れたは幾分も前のこと。
 長距離を渡るために展開されたとみられるドロップゾーン、その口に挟まるように存在したのがかの愚神だ。
 その愚神と青年は何度もやりあっていた。正確には配下だろう。
 シャトルの操縦かんを握りながら、『九字原 昂(aa0919)』はつぶやいた。
「これまで色々とやってきたけど、今日でついに決着かな」
――どう転ぶにせよ、次の機会はもうないってことだろうよ。
 静かに言葉を返すのは『ベルフ(aa0919hero001 )』
「いわゆる天王山、正念場ってところだね」
 昂は告げる。
 シャトルの運転ももう慣れたものだった。先陣を切り偵察する昂の動きに、従魔たちはいつものように広がり、包囲しようと向かってくる。
 その中央を突っ切る二つの光。
 あれはコレクターだろうと予測できた。
「包囲のために従魔を展開すればヨグソトースを守る壁は薄くなりますね」
 今回の主目的は敵愚神の撃破。
 そのために序盤のリンカーの動きは大きく二つに分けられる。
 ステーションの防衛やおよび、ヨグソトースへの経路上に居る敵の排除。
 そしてその隙にマスドライバーからリンカーたちを射出する。
 そのために射線上からなるべく多くの従魔をどかせる必要があった。
「敵先発舞台が射撃範囲に到達します、あと五秒」
 そのカウントダウンに合わせ適切な距離をとるべく舵を切る。
 加速度で壁に押し付けられたシャトル内リンカーがブーイングをあげた。
「うるせぇ、捕まるための手すりは用意しただろうが」
『犬尉 善戎狼(aa5610)』はアクセルを踏みながら冷や汗を拭い去る。
「…………まさか、宇宙戦争にまで傭兵稼業に出る事になるとはな」
 その言葉に苦笑いを返す、相棒『戌本 涙子(aa5610hero001 )』の言葉をきき流しつつ装備を確認する。
 シャトル内にはすでに小型シャトルを配備している。
 ハッチを開いて射出準備を完了させる。
「さぁて、いっちょはじめようぜ」
 配備された全ての戦艦、および宇宙ステーションから弾幕が発射された。空には無数の花火が咲き誇る。
「始まったみたいだね」
 そう『イリス・レイバルド(aa0124)』は宇宙の様子を眺めながら装備を確認した。
 宇宙は思いのほか明るくその小さなシルエットを照らしだす。
「ああ、しかしここからが本番だ」
『アイリス(aa0124hero001 )』が促すようにイリスはマスドライバー砲塔内に潜る。
 一転して暗闇、ただ見あげればわずかな光。
「霊力コーティング開始。弾頭形成」
 アナウンスが流れる、これから行われる無謀な作戦へのカウントダウンでもある。
「発射角度調整。発射まで五秒前」
「三重結界、最大展開」
 イリスはカウント共に衝撃に全力で備える。
 何せ。
「発射」
 弾丸は音速を超え。しかもあの硬そうな外殻に突き刺さるというのだからさすがのイリスでも思わず構えてしまうほどだ。
「はああああああ!」
 気合で加速度をかみ殺し。宇宙の端までも一瞬で詰められそうな速度で盾を構える。
 そして。
「砕けろ」
 あっという間に愚神の外殻にたどり着くと、その外殻に盾を叩きつけた。 
 ライブスミラーで衝撃を緩和。愚神の外殻は大きくきしみひびが入るがそれでもイリスへのダメージは相当なものである。
――天翔機。フル稼働。
 アイリスの宣言で巨大な翼が花開くように空に伸びた。
 まるで全員が崩れそうな衝撃、それを緩和しきらないうちにイリスは逆方向へ飛ぶ。
「はあああああ!」
 直後『無明 威月(aa3532)』が飛び込んできた。
 その体に宇宙中に射出されていたクッション資材を叩き込んで速度を調節。
 イリスがその体をひっかけるように減速。
「ごめんなさい、減速しきれません」
――気にすんな。
『青槻 火伏静(aa3532hero001 )』が答えた矢先、威月は外殻に突っ込んだ。
 その外殻に接触する前にはじくように盾をひっかける。するとベクトルが横向きに変換された。
 あとは外殻の上を転がるように着地して後続のリンカーを見守る。
 空に一条のひかり、それは射線上に存在する従魔を切り裂きながら進んでくる龍哉。
「見えた」
 龍哉はその外殻のヒビを現実離れした動体視力で捕える。
 すると回転するように剣を叩き込み外側の外殻を大きく切り裂いた。
 外殻を破壊しヨグソトース本体へ突貫する龍哉。
 全力で天翔機を吹かせ角度を調整。
 いける、そう思った矢先、その加速度が急激に〇に近づいた。
「なんで」
 無数の瞳が花開き龍哉を見ている。
「だてじゃねぇか」
 イリスと威月が龍哉を助けられる距離を保ちつつ、ヨグソトースと相対する。
 その間戦艦は敵従魔の群と接触していた。
 遠くから見ればまるでアメーバ―のような軍隊であるが、それは迫るにつれて無数のタコ型従魔が合わさったものだと理解できる。
 その軍勢を前に『ツラナミ(aa1426)』は溜息をついた。
(…………久々に依頼書が回ってきたと思えば……何で俺は宇宙にいるんだ……)
――……ツラ、敵……きて、る。
『38(aa1426hero001 )』の声を受けはじかれたように視線をあげるツラナミ。
「…………おう」
 そう座席横に固定したマニュアルをぱらぱらめくりながら照準を絞る。
 船底が展開される。ツラナミが乗る戦略シャトルにはニーエ・シュトゥルナ専用の増幅器が仕込まれている。
 それは白夜のような輝きで周囲を照らすと、普段の百、いや千倍以上の玻璃が展開される。
「ここが正念場だな」
――……ん、ここが終われば……準備は完了、もう少し。
『麻生 遊夜(aa0452)』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001 )』の声を通信機越しに受け取ると、遊夜たちの射撃範囲がツラナミのシャトルに表示される。
「出し惜しみはなしだ」
 ツラナミのコールで周囲のシャトルから二度目の一斉射撃が放たれる。
 無数の光線は従魔たちを引き裂いていく。
 一斉射には澄香も『水瀬 雨月(aa0801)』も参加している。
「宇宙も決戦ね。でも前哨戦というのがまた」
 雨月が旋回させながら周囲の従魔を焼き払う。
 そんな雨月に澄香はこう語りかけた。
「ただこれが終われば海上戦艦の攻略もあるし、慌ただしいわ」
「そうですね、でも大きな戦力はもうほとんど残ってません。きっとここを乗り越えればリンカーはもっと歌って踊ったりできるようになる」
 ただ、なんでもない日常を送るために、澄香は宇宙に上ることを決意した。
「行って! ミニじゃないクラリスミカ」
 アルスマギカより召喚された無数のミニじゃないクラリスミカがそれぞれ自立行動し周囲に魔法を放つ。
――魔導書は広げていれば使えます。頭の上に乗せたままの感覚で攻撃してください。
 そう告げたのはクラリス。
「えええ!?」
 確かに気が付けばアルスマギカは頭に乗っている。
――両腕はわたくしがタイプで使いますので。
「あ、まって。ずり落ちそう。目に入る。目に、アルスマギカが…………」
 クラリスは集計・解析したデータをステーションの方に流している。
 現在の状況、敵の動きを逐一報告、各艦の射線確認、迎撃砲台の遠隔操作による支援射撃を行う。
 さらに澄香は発射先に型のリフレクトミラーを展開。 
 計算し的確に魔術の軌道を捻じ曲げることで、従魔を爆発四散させていった。
「敵の進行速度が思ったより早い」
 告げると雨月は指先に霊力を集める。
「いったん大人しくしていてもらおうかしら」
 展開されたのは重圧空間。 
 その空間に足をとられた従魔を障害物のように使い、澄香は周りの敵を爆撃していく。
 右翼の勢いが弱まった。
 それを見たツラナミは次の瞬間反射的に舵を切る。
 わずかに船先がそれ、方向転換すると、そのシャトルの目の前を膨大な霊力が通過した。
「まずは露払いと行くか」
――……ん、今は攻撃が大事……突貫を援護する。
 遊夜の放つアハトアハトは射線上の従魔たちを根こそぎ絶命させ、さらにヨグソトースの支援のため撤退しようとした従魔たちも焼いていく。
「ふん…………攻撃が全部長射程広範囲ってのは便利だねえ…………俺も動かねえ職が良か…………」
 そう、シャトルの力に感心するツラナミだったが。
――つらてき…………。
 38の声に索敵を再開、直後ツラナミのシャトルの眼前に人型の何かが現れる。
 それはコレクターと呼称される愚神。
「へいへい分かってますよ」
 愚神の背後でジェットを限界まで噴出させるツラナミのシャトル。その側面には巨大な刃が伸びており、それでシャトルは回転するように愚神を斬りつけた。
 斬撃は愚神を巻き込むように浴びさられるが。
 とった。ツラナミはそう思ったその矢先、ツラナミのシャトル内にアラートが鳴り響く。
「次はなんだ」
――ツラ…………宗近折れた。
「なに?」
 あくまでシャトル用に拡張した部分だが確かに。見れば巨大な刃を半ばから叩き折り、コレクターはそれを腕と一体化させていた。
「くそ」
 これはまずい、そう想い迎撃しようとしたとき。通信が入る。
 三時の方向で敵が急加速。その通信に気をとられている間にコレクターは宇宙ステーションに迫る。
「そっちにいった、迎撃できるか?」
 光線をあたりに振りまきながらツラナミは操縦かんを足で操作背後を振り返る。
「何とかなるだろ」
 告げたのは遊夜である。
 遊夜の戦略シャトルは最終防衛ラインである。
 宇宙ステーションの一番そばに鎮座しており、その長い射程で仲間を援護していた。
 ただ今は強烈な加速度そのままに突っ込んでくる敵の排除が先だった。
 遊夜は拡張版へパイトスで攻撃、しかしコレクターは体にまとわりつかせていたインベーダーを展開し、盾にして防ぐ。
「ならば!」
 銃弾が足りないなら足せばいい。
 砲塔がさらに二つ追加され、空薬きょうの雨をばらまきながらコレクターの足を止める。
「すまんがこっから先は立ち入り禁止だ」
――……ん、精一杯……おもてなしするから、全部貰って行ってね。
 自身がもぎ取ってきた、巨大刃のAGWをたてにその場に縫いとめられるコレクター。
 だがこれもながくは持たない、従魔軍が追い付いてしまえば形成は逆転するはずだ。
 だがその前に突入班がヨグソトースを倒してくれる、そう遊夜は信じていた。
「頼んだぞ」
 従魔は今までと同じ戦法をとるようだ。
 数を生かした包囲殲滅。
 呆れるほど有効だが、こちらも対策がないというわけではない。
 犬飼は夜空を疾走していた。
 ヨグ・ソトースに向かう形で囮部隊として従魔をひきつけていたのか。
「出撃まだかよ!」
 そう戦艦内シャトルに待機した荒くれたブーイングが飛ぶが、まだ違う。
 まだその時ではない。
 犬飼シャトルを従魔の群の中に突っ込ませた。
「敵集団の、背後をとる」
 次の瞬間ハッチが開いた。
 そのハッチの中には小型シャトル。
「待ってたぜ!」
 操縦かんを握るのは『彩咲 姫乃(aa0941)』しかし操縦のメインは
『朱璃(aa0941hero002 )』
 そしてそのシャトルの側面に張り付くのは塵である。
「出せよ、男女」
「………………………………。お前、あとでいろいろ言いたいことあるからな」
 振り落とされるように発射したシャトルは空中で加速、体勢制御も整わないうちから暴れ馬のように出陣した。
 従魔軍団を背後からフリーガーと、塵の魔術で焼き滅ぼしていく。
――トロクセーんデスよ、てめーらは!
 急ブレーキ、空のロール。機体を垂直に持ち直してからの爆撃と急加速。
「お、おう……相変わらず乗り物絡むと性格変わるな」
 思わず姫乃は告げた。
――お猫様は頭が通れば狭い道だって通るんデスよー! 木っ端供を寄せ集めたザル軍団であたしのはんどる捌きを止められるとは夢にも思わねーこったデスニャ!
「まあ気合が入ってるならいい事だよな……」
 敵中央を食い破ってはいったん後退。敵の隙間を縫うように走り混乱を招く。
 展開しようとしていた左翼の行動を遅らせて、敵右翼の指揮を執っていたコレクターに肉薄する。
「「よぉ。お前が指揮官か?」」
 塵と姫乃の言葉がシンクロする。
 塵はすれ違いざまにコレクターに飛び移り、姫乃は塵に構わず攻撃を。
 塵が離れざまに腐蝕の霧でコレクターを包むとコレクターが放ったレーザーを姫乃のシャトルが肩代わりした。
「てめぇ、余計なことしてんんなよ」
――ご主人が助けたのにも関わらず、その口のきき方はなんにゃ? 八つ裂いてもいいんにゃよ。
「おまえら、めんどくせぇよ」
 いったん塵はシャトルに捕まると姫乃は後退。
「何で逃げる?」
「あいつ、どっかのシャトルから遠距離武器を奪ってるからな。ちょっと分が悪い」
 もともとコレクターの妨害は姫乃の役割に入っていない。
 ヨグソトースへのリンカー到達サポートが姫乃の役割だからだ。スムーズな運搬は生存率を大きく上げるだろう。
――ご主人死人出したくねーんでしょう?
 朱璃がたずねた。
「当たり前だろ」
「あまっちょれぇ小娘だ」
――だから手伝ってあげます。ますたぁ思いのお猫様で泣けてくるでしょう?
「そうだな、全員無事に帰せたら思いっきり褒めてやる!」
「なんだこの茶番はよぉ」

「「お前、今すぐおりろ!」にゃ!」

 いちいち茶々を入れる塵を振り払うためにくるくるロールしながらいったん犬飼シャトルを目指す姫乃である。


第二章 排斥

 戦闘開始からまだ30分程度にもかかわらず戦場は大きく変化していた。
 先ずマスドライバーによって防衛が突破されないように従魔がカーテンのようにヨグソトースを遮り。コレクターが飛び回る。
 そんな中昂は従魔の群をリードするように走っている。
 エンジンを全開で吹かせ、速度を落とさないように気を使いながら。
 エンジン音より大きい化け物どもの怪音を耳にきいていた。
「もう無理かな」
 昂はそのまま従魔の群に突っ込む。
 シャトルはその機体に無数の傷を作るも、従魔と従魔の群がぶつかりあい大混乱に陥った。
「脱出する」
――おいおい、今出れば!
 ベルフが叫んだが遅い。
 昂は背中の天翔機を吹かせ勢いよく脱出する。
 コックピットを一歩出ればもうそこは地獄。光さえ見えないほどに集合したインベーダーの群の中、一斉にその眼球が昂を捕える。
「突破します」
 昂は全神経を集中させた。
 敵の攻撃を肌で、本能で感じる。
 敵の触手をすれすれで回避。隙間に体を割り込ませるように前へ。
 攻撃を受ける前にハングドマンで妨害。
 ただそれでも徐々に徐々に昂を捕えようとする包囲網は縮まり続けている。
 まずい。
 そう思った矢先だった。
 昂を炎が覆った。しかし不思議と熱くない。
「ズイブンな無茶ヲする方デス」
「あぁいいですねぇ! 無様に敵がチリになる瞬間は!」
 次いで襲うニーエ・シュトゥルナの光、その群。
 見上げればそこに大破寸前の戦略シャトルが浮かんでいた。
「裏暁参上デス」
 告げたのは『鬼子母 焔織(aa2439)』
「あん? おれぁあんな激甘集団に入った覚えなんざねぇぞ」
 そうシャトルの上に腰を据えてにやにやとあたりを見渡すのは塵。
「そもそも、俺らあは仲間だったのか?」
 犬飼がコレクターの発する光から目を放さず告げ。
「皆様とお仲間など、ぞっとしますわ」
『エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001 )』が楽しそうに告げた。
 次の瞬間、昂の背後で蠢く影。
――母様!
『アトルラーゼ・ウェンジェンス(aa5611)』が歓喜の声をあげる。
――今日はいっぱい壊せますね! 母様!
 複製される武装、それらすべてがオーバーロード寸前まで温められる。
「最近派手に攻撃する機会がなかったものね。思う存分行きましょう。
 その言葉を合図に暴虐の雨がインベーダーたちを切り裂いた。
 無数の敵が、一瞬で塵に帰っていく。
「おいおい、のこしとけよ、魔女」
「のんびりされている方が悪いのですよ。あまりに呆けておられると」
 エリズバークは底冷えした視線を塵に向ける。
「巻き込んでしまうかもしれません」
「おっかねぇ!」
 嬉しそうにつぶやくと塵はシャトルを蹴った。
「おら、バカども。おまえらの退路は俺が気にしておいてやるよ」
 操る腐蝕の炎に焼かれる宇宙だこたち。
 塵は不敵な笑みそのままに、宇宙をふわりふわりと漂いながら敵の中枢へあえて向かう。
 襲いくるインベーダーたちは塵の周囲を漂う骸の蝶が切り裂いた。
「…………火蛾魅どノ」
 その塵へ焔織が言葉をかける。
「全てを壊す、その想いに今も変わりはナイのでスか……?」
「ねぇな」
 塵は残忍な笑みで振り返る。ただ、焔織にはそれが苦悩しているように見えて仕方がない。
「………………『アイツら全て殺して』…………でスか」
「お前らはよぉ、認識が間違ってんだよ」
「認識?」
「お前らはよぉ。壊したり作ったりしながら、この世界を良くしようとしてんだろ?」
 塵が従魔の屍を山として、それを踏み台に告げた。
「ハイ。隊長も皆サンも大切なものを守るため…………」
「俺はなぁ。全部壊してやっと零なんだよ」
 焔織は言葉を失った。
「それハ零ニ戻った時アナタはドウスルンですか?」
「さぁなぁ、自分を壊してっかもしんねぇな」
 そう飛来した従魔をうでて掴み燃やしながら塵は告げた。
 その姿に焔織は過去の自分を見る。
 あなたとわたしは何処で別れたのですか。
 そう問いかけることもできなかった。
「オソラく…………近いウチに…………アナタとワタシは…………袂を分かつのでショウね」
「上等じゃねぇか」
「…………サァ、参りまショウ。犬尉どノ、宜しく頼み申す」

「ってこっちはそんな場合じゃねぇぞ!」
 
 見れば犬飼のシャトルには無数の従魔がへばりついていた。
 その表面を焼くようにしてエリズバークが従魔を排除していた。
「ヴィランもこのように一掃出来ればよいのですけど。人相手にこの機械を使えないのがもったいないですわ」
――おい、焔織。ボーっとしてる場合じゃないぞ。
「わかってます」
『青色鬼 蓮日(aa2439hero001 )』に叱咤されて焔織はあわててシャトルに戻る。
 先ず一体、従魔の触手を掴んでそれを別の従魔に叩きつけた。
 空いた手で武器を振るいながら足でも従魔を蹴飛ばしはがす。
 溶解液を従魔でガードして、従魔を叩きつけ。固めてからいっぺんに切り裂いた。
「陣形ガ薄くなっている部分がありマス。そこから脱出しまショウ」
「いいや、それは無理だ」
 犬飼が告げた。次の瞬間流れ星じみた何かがシャトルに衝突する。
「くそ! エンジンがいかれた」
 立ち上がったのはコレクター。その手には誰から奪ったのか、刀状のAGWが五本、指のように植え付けられている。
「よぉ。待ってたぜ大将」
 背後から奇襲を仕掛ける塵。 
 爆炎。それを切り裂いて跳躍するコレクター。行く手を遮る焔織。
「か弱イ人ハ。前に出ないでください」
 コレクターと鍔競り合う焔織。
 それを見て犬飼は決意を固める。
「シャトルをぶつける。そいつを吹き飛ばせ!」
「そんなことヲ」
 言われても。そう思った矢先。
 塵がコレクターの側面に回り込んで霊力纏った拳を一撃叩き込んだ。
 できた隙を利用して焔織はコレクターを蹴り飛ばす。
 そのコレクターは全速力で走ってくる戦略シャトルに衝突し従魔の群へと運ばれていく。
「旦那。死ぬのか?」
 見送る塵。そのインカムから声が聞えた。
「脱出はするだろ、普通」
「おう、しぶてぇやつだ」
 直後シャトルは爆発。その爆炎を切り裂いて、小型シャトルが離脱する。
 そのままシャトルは旋回し、全員の目の前を飛行すると、取り付けてあった手すりに裏暁部隊は捕まった。
「このままヨグソトースまで行く」
 更なる加速に揺られながら一行は各々悪態をついた。
――とぉおおばすぅうううのじゃあああああッッ!!
 景気のいい相棒の声に奮い立たせられながら犬飼は操縦かんを深く握る。
「………………本来の目的を忘れるなよ」
 眼前を遮る敵の層をエリズバークが焼き払い。
「たかが従魔が立ち塞がるなんて生意気ですね? 蹴散らしましょう」
 そして最終局面が始まる。


第三章 夜明けの時。

 従魔の数はだいぶ減った、しかし、その間ヨグソトースに手出しができなかった。
 結果。戦士たちは傷ついていた。
「くそ…………」
 リンカーでも最高峰の盾。
 最高峰の刃。それをバックアップする威月。
 三人でも生き延びるのが精いっぱい。
「…………ここで、負けてしまっては」
 威月は歯噛みする。
「これまでの犠牲が…………無駄になります…………」
 歯を食いしばってイリスに治癒を。
「…………これからの戦にも、大勢の犠牲が出ます」
 そんな小さな背中に浴びせられる巨大な隕石。
 イリスは衝撃に耐えながらも隕石を宇宙のかなたへはじく。
 その眼前を龍哉が疾走していった。
「人類の歴史が、無駄になります」
 わかっている。ただ、この戦場に余裕なんてものはない。
 だとするなら今ここで踏ん張るしかないのだ。
 イリスが龍哉の動きに合わせて前に出た。 
 龍哉に降り注ぐ隕石も、謎の念動力もイリスが盾となって防ぐ。
「お前なんて!」
 イリスは掻き消えそうな意識の中。不思議と操られていた時のことを思い出す。
 操られる、だれに。
 それは、ガデンツァ。
「御前なんかに」
 あの時誓った。もう二度と捕えられない。護る。
 同じような犠牲者を出さないためにも、力を。
 そう願ってここまで進んできた。
「負けない…………」
 決して弱い敵ではない。
 事実、これが地球上での戦いで無くてよかったと思えるほどの軍事力だが。
 だとしても今まで食らいついてきた相手に比べれば格下。
「絶対に!」
「よく言い切った」
 龍哉が外殻を蹴り飛んだ。ヨグソトース本体に刃を向けるも硬い外殻を操作してその剣をガード。
 まるで鉄の塊でも叩いているような手ごたえが龍哉をひるませる。
「くそ」
 わずかに後退する龍哉。その足場である外殻と。ヨグソトースの外殻が閉じていく。
 一網打尽にするつもりだ。
「さっきまでなら切り裂けたがなぁ」
 龍哉は上がった息を整えるために愛剣を支えに迫る天井を見た。
 走り抜けられる距離でもない。
 何かを支えに耐えられるかもわからない。
「くそ、やばいな」
 そう、イリスか威月だけでも戦線を離脱させられないか考えた矢先。
 強大な揺れと共にヨグソトースは動きを停止した。
「なんだ?」
 それはヨグソトースの外殻に突き刺さった何者かによる妨害。
「さぁ…………」
 その人物は足が人のものでないことをいいことに、盾を先端とし、それを両足に固定。
 まるで弾丸のような形状でもってダメージ覚悟でヨグソトースに突っ込んだ。
 結果その外殻には大きくひびが入る。
 その弾丸の名前を『シエロ レミプリク(aa0575)』
「おおおおおおおら!」
 そして龍哉の一撃でひびが一直線に繋がった。
 砕けて宇宙のデブリとなる外殻の一部。
 これで攻撃性能はともかく防御性能はだいぶ低くなるだろう。
「ファイナルラウンドだぁ!!」
 灰を振り払いながら月に叫んだシエロ。
 自慢の逆関節を軋ませてメキメキと立ち上がる。
(どっちが侵略者だこれ)
 そう『ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002 )』は主の暴虐を見守ることに徹したようだ。
 驚くヨグソトース。その隙にイリスや威月の周りを柔らかな光が覆う。
「仁菜さん」
 月面にはウサギがいる。
 月面に似たこの場所にはウサギに似た『藤咲 仁菜(aa3237)』がいるのだろう。
 いつの間にか、シエロに抱えられた仁菜がケアレインのために祈っていた。
「もう少したえて! みんな! 仲間が来るよ!」
 シエロのトリガーハッピーの音を背景に再び体勢を立て直すリンカーたち。
 仁菜と威月は背中合わせになりありったけのスキルをつぎ込んだ。
「幾千万、幾億の生と死の上に…………私たちは今、ここに居ます、空に、宇宙に…………」
 龍哉の両手足に力が戻った。これならいける。
「…………不届きものに、青い地球は、渡してはなりません! ここが正念場です!」
 仁菜の光がイリスを包む。
「皆さん!! 砕いて潰して! 消し去ってしまえですッ!」
――…………お前それ、隊長の口癖だろ。
 相棒の言葉にこくこくと頷く威月。
 イリスと龍哉が外壁を跳ねまわりながら再び攻勢に出る。
 その二人へ投げられようとした隕石が突如爆発した。
 見れば小型シャトルのハッチに足をかけてこちらを『リリア・クラウン(aa3674)』が眺めていた。
 もちろん『伊集院 翼(aa3674hero001 )』と共鳴済みである。
 そのままリリアは後ろに宙返りすると、操縦主のいなくなったシャトルはヨグソトースに激突して大爆発を引き起こした。
「派手な花火だな」
「今だよ!」
 リリアが叫ぶと。リリア自身も神斬を抜きだし、ヨグソトースに突貫した。
 振りかぶった一撃。
 それは爆発で目をくらませていたヨグソトースの死角に潜り込み、その体を切り裂くに至る。
 目に見えた初めてのダメージだ。
 いける。龍哉はそう思った。
「だったら俺は」
 そう龍哉は方向転換、ヨグソトースの外殻を走るように何かを探す。
「強大な力も基本的にどこからかライヴスを補給しなければ発揮し得ないはずだ」
 それなら、その流入口を破壊すればあのトンデモ超能力パワーを無しにできる。
――デ〇スター潰しは排気口から。お約束ですわね。
 ヴァルトラウテが告げた。
「フォースと共にあらんことを、てか」
 すると龍哉は敵のドロップゾーン内に足を一歩踏み入れる。
 この愚神が挟まることで閉じなくなってしまったドロップゾーンだ。
「ここか?」
 あえてゾーンから押し出してしまうことで何らかの力の流入を切る。
 そう、全身に力を込めた。
「まだだ、まだたりねぇ」
 リンクバースト。
 それだけではだめだ。
 もっと声を聴かなければ。
 そう、この状況を打破したい誰かの力。
「やっちまえ! 赤城さん!」
 その声が聞えた時。
 龍哉はとっさにその大斧を振り下ろしていた。
「如何に堅牢だろうとも、赤城の波濤に突き崩せぬ物は、ねぇっ!」
 直後AGWが軋む音と共に衝撃が外殻に伝わり、大きくひびが入った。
 砕け散る外殻。排出されるヨグソトース。
 閉じるドロップゾーン。
 途端に周囲を旋回していた隕石が周囲に散った。
「これで!」
 そう喜んだ瞬間。である。
 龍哉の顔面に隕石が弾丸のように射出される。
 だがそれは弾かれるだろう。
 わかっていた。
 実際龍哉の顔をぐちゃぐちゃにする前に空中で細かな破片に分解された。
 遊夜がはるか後方でスコープを覗いている。
「片付いたのか?」
 そう龍哉が問いかけると、遊夜は後方を見るようにジェスチャーを飛ばした。
 その遊夜の乗るシャトルのさらに後方では弐機のシャトルがまるで従魔たちを抑え込むように攻撃している。
 雨月と澄香である。
「扉の向こうへお帰りなさい、でなければ…………力尽くで行かせてもらうわ」
「あ、水瀬さん。もう扉閉じちゃったみたいですよ」
 そう澄香が告げると雨月はふと考え込んで言葉を訂正した。
「もう力づくで行くしかないみたいね」
 雨月はブースターを巧みに操り180度回転。そのままヨグソトースを視界に収めるとその硬い外殻に魔法弾を放った。
 その爆炎で立ち上る煙をかき分けて澄香の船が左回りにヨグソトースに迫る。
 武装はすでに魔術型パイルに切り換えられている。
 艦の質量を載せた最大レベルの一撃を叩き込むつもりだ。
「いっけ!」
 ねじ込まれるように深々と突き刺されるパイル。それを霊力の力で打ち出すと、外殻はいとも簡単にはじけ飛んだ。
 ヨグソトースの外殻、左側面が大きく砕かれ本体が露わになる。
 その隙を裏暁部隊は見逃さない。
 犬飼のシャトルにしがみついたメンバーはタイミングを合わせて本体に一斉放火。
 銃撃と魔術が視界を埋め尽くすほどにヨグソトースに注がれる。
「今日は魔女の機嫌がずいぶんといいらしいなぁ」
 塵が告げる。
「ああ、俺達の作戦に手を貸すなんてな」
 犬飼が答える。
 その言葉にエリズバークは微笑を湛えながら言葉を返した。
「手を貸した分の報酬ですか?
 いつか私の前で無様な姿をさらしてくだされば…………。
 それでよいですよ?」
「「せいかくわりぃ」」
 そう二人の声がシンクロする。
 直後隕石に動きがあったのでいったんその場を離脱した。
「今はあの生意気なガデンツァを倒すために手を組みましょう」
 そのエリズバークの言葉に二人は顔を見合わせた。
「ガデンツァの余裕な顔が歪むところを想像するとわくわくしてしまいますわ」
 動き出す隕石たち。敵も最後の力を振り絞っているのだろう。
 それは渦を描くように多方向からリンカーたちに襲いくる。
 それらすべてをロックオンしてシエロが撃ち砕いていた。
「てめえらの敵はここだぁ!!」
――我らを倒せねば貴様らに勝利はないぞ!
 シエロに殺到する隕石。しかしその腕は、両足は敵に挑むことを諦めない。
「失敗は……させねえ!」
 ヨグソトースの外殻、その一際大きいものがシエロに叩きつけられた瞬間。
「今だ! やっちまえ!!」
 シエロが叫んで近場で祈っていた仁菜を投げた。
 仁菜はその勢いを利用して隕石の上を跳ねまわると。体を丸めて龍哉に飛来しようとしていた隕石に体当たり。
「恩に着る」
 龍哉は障害物がなくなったことで刃に敵本体を捕えることができた。
 追撃の隕石を仁菜は盾を投げて弾くと、リフレックスが発動しヨグソトースの目が一つつぶれた。
 空中に漂う黒い液体。
――その意気だ!
 アイリスが告げイリスが飛ぶ。二人は手を交差させお互いの運動エネルギーを別方向に変換。手を放して離れるとその場を隕石が通過した。
「攻撃は得意じゃない。
 でもそれでいいんだと思う」
 そう隕石の上をかけながら仁菜は告げる。 
 その言葉に『リオン クロフォード(aa3237hero001 )』は小さな笑みを返した。
――何でそう思うの?。
「私達はいつだって一人じゃないから」
 背後から熱量を感じる。支援がある。
 暁に最近出入りする物騒な人たちも力を貸してくれている。
「全てを守りきれば。
 道を切り開いてくれる仲間がいるって信じてるの!」
 地球で待ってくれている仲間のためにも。今は戦果を持ち返る。
 仁菜は白い盾を掲げ凛と前をみすえた。
 怒り心頭のヨグソトース。
 その外殻のほとんどを失いながらも、リンカーたちを睨む。
 仁菜を中心にメンバーが集結した。
「この盾がある」
――この力がある。
「あなたの攻撃は」
――誰にも届かないと思い知れ!
 二人の声が重なると同時に、全員が一斉に攻撃を。
 魔術が石を砕き。ヨグソトースは視界を奪われる。
 その念動力が誰かを捕えようとも、仁菜が体を突き飛ばして代わりになる。
「決して届かせない。
 この場にいる誰の命も渡せない。
 その為に私がいる」
 最初は妹だけを守るためだった。
 でも今は仲間を友達を守りたくて。
 ここに立ってる。
 仁菜の体の中で何かがすりつぶされる音が聞えた。
 口から血が漏れる。
 空に血が舞った。
 ふよふよと形を変えるそれ。
 それを砕くように手をかざせば。その赤い視界の先に地球が見える。
(戦いが怖くない訳じゃない)
 帰りたい。
(でもその怖さを越える強い思いがある)
 あの場所に、笑いあえるあの場所に。
「生きて帰るよ! 皆で!」
 皆で笑顔で笑いあう明日が待ってるんだ。そう仁菜は声だかに叫ぶ。
 シャトルが衝突し爆炎が上がる。犬飼のシャトルが衝突と爆発でヨグソトースの脳を揺さぶった。
「あああああ! 螺旋槍!」
 イリスがヨグソトースに剣を突き立てた。
 大量の出血。
 だが本命は背後から迫る龍哉である。
「やっと、届くな!」
 にたりと笑う顔。それに対してヨグソトースは両手を向ける。
 超能力で対処するつもりのようだ。
 だが。その両腕を遊夜が吹き飛ばす。
「全部持ってけ、最高の一撃叩き込んでくれや」
――……ん、ふふ……禍星砕き、出来るかな?
 遊夜とユフォアリーヤの言葉を受け。
 龍哉は剣を振りかざす。
「できるさ。星を砕くことぐらい。簡単だ!」
 その一撃はヨグソトースを両断した。
 その瞬間である。
 宇宙で活動していた従魔たちが連鎖するように爆発していった。
 地球上から観測すれば空が輝きを帯びたように見えただろう。
 戦いは終わった。
 ただし。それは地球上に降り立った弐つの星、その反応を無視すればの話ではあったが。

 
エピローグ
 その後傷ついた仲間を雨月は自分の戦艦に回収し、地球を目指した。
 ステーションはこのまま改造して作戦に使えるようにするらしい。
「まさか私たちの作り上げたものがこんな最後を迎えるなんてね」
 そう、少しさみしくなりながら雨月はステーションを一瞥して加速した。
 その格納庫の中で足をメンテナンスしながらシエロは歓喜の声をあげている。
「…………あー楽しかった! やっぱ宇宙は最高だね!」
「主様に、この星は狭すぎるのやもしれんなあ」
 そうお茶をすするジスプである。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
  • 家族とのひと時
    リリア・クラウンaa3674

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • エージェント
    ツラナミaa1426
    機械|47才|男性|攻撃
  • そこに在るのは当たり前
    38aa1426hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 家族とのひと時
    リリア・クラウンaa3674
    人間|18才|女性|攻撃
  • 歪んだ狂気を砕きし刃
    伊集院 翼aa3674hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 悪性敵性者
    火蛾魅 塵aa5095
    人間|22才|男性|命中
  • 怨嗟連ねる失楽天使
    人造天使壱拾壱号aa5095hero001
    英雄|11才|?|ソフィ
  • エージェント
    犬尉 善戎狼aa5610
    獣人|34才|男性|命中
  • エージェント
    戌本 涙子aa5610hero001
    英雄|13才|女性|シャド
  • …すでに違えて復讐を歩む
    アトルラーゼ・ウェンジェンスaa5611
    人間|10才|男性|命中
  • 愛する人と描いた未来は…
    エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001
    英雄|22才|女性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る