本部

広告塔の少女~酒乱たちの戦い~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 4~12人
英雄
9人 / 0~12人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2018/09/01 15:38

掲示板

オープニング


● とんでもない物を開発してしまった。

「なんてものを開発してしまったのかしら」
 遙華は段ボール箱から一本一本、梱包された瓶を机に並べた。
 全部で三種類、それぞれ異なるラベルが張られているがこれはまだ仮のラベル。
 その三本の瓶を眺めると遙華は言った。
「霊力が混ざったお酒。こんな物を本当に作ってよかったのかしら」
 グロリア社は様々な事業を展開しているAGWがメインだが、アイドル、広告、ゲーム。
 そして恐ろしいことにその事業すべてがまたAGWや愚神対策に繋がっている。
 そんな企業がまた何かやり始めたと思ったら、お酒の開発である。
「苦節二年。割とはやく完成したのね」
 お酒型AGW、というわけではないが戦場に何らかのよい影響を与えられるのではないかと、三種類ほどのお酒を造ってみたのである。
 これが今回完成して送られてきた。
 これもグロリア社の予算がつぎ込まれた事業計画の一部である。ないがしろにしてはいけない、そう段ボールを開けたまではよかったが、遙華は肝心なことを忘れていた。
「私、お酒飲めないわ」
 お酒に詳しくもないし、これでは売り込み方がわからない。
 商品はよいところをみつけて、それを欲している人物に売りに行くのが基本である。
 遙華は途方に暮れてしまった。
「その時のための、お友達……かしら」
 そう遙華はスマートフォンを眺める。
 お酒の好きな友達、お酒の好きな。
 そう胸の中で唱える度に、鈍く痛みが走るきがして遙華は目を伏せる。
 暗い部屋に少女が一人、一升瓶抱えて泣いていた。


● 霊力リキュール
 *お酒は二十歳から!*
 
 今回皆さんにはグロリア社で新しく販売するお酒の試飲会をしてもらいます。
 試飲会と言っても体のいい実験会で。
 テーマは英雄でもガッツリ酔えるお酒でした。
 英雄はその霊力で顕現しているという特性ゆえか、もともとの体質のせいかお酒に強い方が多かったのです。 
 それを何とか酔っ払えるようにできないかと考えて作られたリキュールが三本ございますが……どれも試作段階で欠点があるのでご注意を。
 今回はこれらを飲み明かして楽しもうという企画です。

・ 日本埼玉県産霊石を使用した水色のリキュール『宝玉』
 甘めな味わいとフルーティーな香りからとても飲みやすいお酒です。
 日本酒に味わいが似ていますが。日本酒ほど度数が高くないのが特徴です。
 これを英雄がのむと普段取り繕っていた仮の自分がはがれ、素の自分が露わになります。
 お酒に酔った通常の状態になるわけですね。 

・ 南アメリカ原産、美しい黄金色が特徴なリキュール『サンライズ』
 マンゴーや桃を思わせる深い甘みが特徴で、ストレートでも美味しい女性に人気が出そうなリキュールです。
 このリキュールの特徴は英雄の五感を研ぎ澄まし、欲求を肥大化させる点にあります。
 料理が美味しくなるのは当然ですし、肌がこすれ合うだけでもくすぐったく感じたり、異様に部屋が暑く感じたり。
 三大欲求も肥大化するようです。
 血行が良くなりテンションが高くなり、楽しくなるお酒であるようですが。
 能力者に飲ませた場合は英雄よりもその効果が色濃く出ると思われます。
 飲み過ぎには注意です。


・ 海底の霊石鉱脈原産、べらぼうに度数が高い透明なリキュール『スピリット』
 度数がきつく感じるのは含まれる霊力が多すぎるからのようです。
 味わいとしては無味無臭。
 これだけは能力者が飲むことを推奨されていません。
 体に毒になる可能性がありますから。
 効果としては、知らず知らずのうちに元の世界の権能を取り戻します。
 さらに言うと元の世界にいたころの英雄に性格が近くなりリンクレートが下がるようです(シナリオ終了で元に戻ります)
 もしかすると能力者やこの世界に関する記憶もすっぽり抜け落ちて別人みたいになるかもしれません。
 飲むのはほどほどがよいでしょう。

解説

目標 酒を飲みつつデータをとる。

 今回はお酒の味の感想や、どうやって飲んだら美味しいだとか。
 どんな食べ物にあうと言った、お酒を研究することが目的です。
 ここから改良するにしても大きく路線は変わらないので。お酒のいいところを発見し、カクテルのレシピや、あう料理の組み合わせを見つけましょう。
 なので、リキュールにあいそうな別のお酒やソフトドリンク、料理の持ち込みなど歓迎です。


● 親睦を深める。
 当然お酒が入るとトラブルも発生するでしょう。
 酔っ払ってコミュニケーションが過剰になる場合も考えられますし。
 戦闘になることも考えて会場はグロリア社の巨大実験施設を抑えてあります。存分にやってください。

リプレイ

プロローグ
「酒の嗜みは幾度となくあれど、試飲会の形でね……それもグロリア社が。
折角だから、楽しみましょうかねェ」
「供物以外でのお酒……どんな味と雰囲気を楽しめるんでしょうね~」
 廊下にすら酒気がただよいはじめそうなくらいに。
 今日は酒のことが大好きなメンバーがグロリア社に集まった。
 今回これだけのリンカーが集められたのは、AGWの実験でも作戦をたてるためでもない。 
ただただ酒を飲むためにだけに集まったと言ったら。
 グロリア社の事を誤解する人間も出てくるだろうか。
 いやいやそれは違う。
 れっきとした企業努力とサービス精神。
 だって、その会場、門扉を開く『鴬華・エリスヴェータ(aa4920)』と『アイオール・ハーシェヴェルト(aa4920hero001)』はうきうきと胸をときめかせているのだから。
 そんな会場に一足遅れて足を踏み入れるのは『橘 由香里(aa1855)』と遙華。
 二人は私室でおしゃべりしていたら、すっかり開始時刻十分前になってしまい、あわててエレベーターに乗った次第だった。
「今度、お菓子のお店があったら紹介してほしいわ。もう失敗しないために」
「私もそんなに詳しいわけではないけどね……」
 そう早足で会場を目指していると見慣れた背中に追いついた。
『麻生 遊夜(aa0452)』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』
「あら? 遊夜……来たのね? お酒飲んでも大丈夫なの?」
「飲まない主義ってだけで、飲めないわけじゃない。そうだ、俺は本来飲まないしゅぎなんだが……」
 告げると遊夜は二人をエスコートするように扉を開いた。
「確かに前飲んだ酒は美味かったが、アレは状況がだな……」
「……ん、まぁまぁ……ハルカのオススメだし、きっと美味しいよ」
 そうユフォアリーヤは自分がその扉を潜る前に遊夜の背中を押して会場に押し入れた。
「参考にならないと思うんだがなぁ」
 まだイマイチ乗り気ではない遊夜。
「……ん、大丈夫……美味しい飲み方と、おツマミ……研究してきた」
 そう鼻息荒げなユフォアリーヤである。
「なんで飲まない方が気合入ってるんですかね……」
「あら、どうしたの由香里」
 そう遙華は入室するなり固まった由香里に声をかける、その視線の先には
『飯綱比売命(aa1855hero001)』
「お酒お酒お酒~♪ お酒をなめ~ると~♪ 気分気分気分~♪ 気分がよく~なる~♪」
 未開封の一升瓶に抱き着き、舐めるように撫でまわす飯綱比売命である。
「うわぁ……微妙にネタが古い……。どっから仕入れてくるの、そういうの」
 告げつつ由香里は一歩踏み出すと何かに足をとられて転んだ。
「ふぉふぉふぉ」
 飯綱比売命が笑う。
「あなた普段そんな笑い方しないじゃない」
 何に躓いたのかと見て見ればそれはまた別の一升瓶。
「飲む前から出来上がってる……って思ったら、もう酒瓶転がってるんですけど!
遥華! あなた、この依頼がどういう状況を現出させるか十分検討したんでしょうね!?」
「あ、私もそう言う歌知ってるわよ」
 由香里が視線を向けると遙華はバリッと瓶を開封して飯綱比売命のグラスに酒を注いでいた。
「お酒飲める飲めるよー」
「あなたもずいぶん乗り気ね!」
 由香里が思わず声をあげる。
「らうんじで、しっくに飲むのもいいけれどみんなで飲む酒は最高じゃな!」
 喉を鳴らしてグラスを飲み干す飯綱比売命。
「by飯綱」
「遙華ちょっと」
「はい?」
 由香里が遙華の袖を引いて耳打ちする、内容はこうだ。
「あなた、この状況がなんだかわかってるの?」
 名だたる英雄とそれを酔わせることができる酒。
 その酒が大量にある。
「……これから起きるのはサバトよ」
「おげさよ、ロクトはお酒は楽しいものだと言っていたわ……あ」
「哀しくなっている暇なんてないわよ。わたしたちだけでこの場を収めないといけないんだから」
 そう危機感を感じる由香里の背後で扉が開く、すると姿を見せたのは『月鏡 由利菜(aa0873)』と『リーヴスラシル(aa0873hero001)』である。
「酒の試飲会か……教師になってから、酒を飲むことは殆どなくなっていたな。まあ、たまにはいいか」
「ごきげんよう。飲酒運転にならないよう、今回車は乗ってきていません」
「来たわね。これで役者がそろった」
 告げると遙華は参加者全員のグラスに酒を注いでいく。
「ユリナは……この国の飲酒年齢的には、飲酒は問題ないな?」
「登録されているのはHOPE加入時の外見年齢であって、実年齢的には既に成人していますけれど……」
 そう談笑する由利菜とリーヴスラシルにグラスを手渡すと乾杯の音頭がとられた。
 宴会が始まった。長針が十二の時刻を刻むと同時に大量に作られたつまみが姿を見せる。

第一章 酒盛り

「むふふふ、塩を舐めながら酒をチビチビやってもよいし。旨い肴を山ほど並べて宴会もいいものじゃ!」
 テンション高めの飯綱比売命。
「こちらの世界はうまいもん山盛りじゃから飯綱ちゃんうれしい」
「ああ! ほらもう酔ってる」
 飯綱比売命がさらに箸を突っ込んでごっそり持って行こうとしているつまみは裏でリンカーたちが協力して作られているものだ。
 その皿を運ぶのはメイド服に身を包んだ『斉加 理夢琉(aa0783)』である。
「あら、可愛いわね」
 遙華が告げると理夢琉はきょとんと言葉を返した。
「あれ? 遙華はなんで普段の服装なの?」
「え? だって私」
 理夢琉が幻想蝶から取り出し差し出したのは、同じような古き良きメイド服。
「はい、これ遙華のだよ」
 そうキラキラした瞳で見据えてくるのだから断れない。
 理夢琉は淡い緑に白のフリフリ、遙華はそれに紫色がささったものに着替えて給仕をし始める。
「ほう、メイドつきとは豪勢ではないか」
 そうすでに気分がよくなっている『ナラカ(aa0098hero001)』が告げ。グラスを傾けた。
 空になったグラスに遙華が新たな酒を注ぎこむ。
「あなたも飲むのね」
「神。だからね」
 神話として神はお酒が大好きと相場が決まっているが、それがナラカにも適用されるのか冗談なのかは『八朔 カゲリ(aa0098)』には分からなかった。
 彼はとんでもなく暇を持て余している、当然だろう。
 酒にもこの場の人間にも特に興味はない。
 そんな会場の酒の進みは早い。
 酒が飲みたい『猫柳 千佳(aa3177hero001)』はあっという間にグラスを傾け。
 空になったグラスに『音無 桜狐(aa3177)』がもう一杯酒をつぐ。
「いや、ただで酒が飲めるだなんて、いいひだにゃー」
 そう顔を赤らめながら告げると『セレン・シュナイド(aa1012)』が料理を持ってくる。
「みんな……おまたせ」
『AT(aa1012hero001)』の皿にいち早く飛びつく千佳。
 おつまみ用のお稲荷さんを口に運ぶ。
「これは二人で作ったの?」
「むふふふ」
 そう不敵に笑って箸を伸ばす千佳。
 油揚げと菜っ葉のおひたし、油揚げを半分に切り、中に味噌を塗って刻んだネギを挟み焼いたもの。
 それは大好評である。特に桜狐に。
「……わしは酒は飲めぬゆえ何もやることがないのじゃがのぉ……。……まあセレンの横で食べ放題を堪能しておこうかの……」
 そうジュースをちびちび飲みながら油揚げに舌鼓を打つ桜狐である。
「お酒と聞いたら参加しないわけにはいかないにゃ♪ ATさん一杯飲むにゃー♪」
 そうATの方に手を回して水のように酒を飲む千佳。
 そんな宴会の裏では、名もなき英雄たちの活躍があった。
 その戦場へと『マリー・B・ランディーネ(aa0386hero002)』は相棒を見送る。
「おつまみ期待しているわよ~」
 気楽な声が『染井 桜花(aa0386)』の背をおした。

   *   *
 アイオールは厨房で鍋を振るっていた。
 続々と要求される料理達。
 それを配膳しているのは『アリュー(aa0783hero001)』
 桜花はメインで惣菜を作っている。
 今は大量の卵をボールにといてかき混ぜている。
 その間に鍋の中身を確認。
 中身は手羽元と半熟卵のゆずポン酢煮込みであった。
 フライパンに卵を流し込むと同時に、厚揚げのチーズベーコン焼きをさらにうつす。
 ゆで上がった枝豆はアリューに任せ。枝豆のレモンバター炒めが完成。
 油に十分な火が通ったと見るや桜花は揚げ物に取り掛かる。
 出来上がった料理は全て遙華と理夢琉が運んだ。
「あ~もう。これから先には責任持てませんからね」
 そう慌ただしく物を運ぶ遙華を見送って由香里はちびりとジュースを飲んだ。
 そんな由香里は別に遙華のメイド姿が見たくて厨房に寄ったわけではない。
 酔っ払った飯綱比売命が包丁で指を切らないか見に来たのだ。
 飯綱比売命はご飯は作れないが、つまみを作るのは上手い。
「なぜ、油揚げがこれほどに」
 冷蔵庫に見える大量の油揚げは、どこかのだれかさんが詰め込んだものである。
 それを遠慮なく飯綱比売命は使うことにした。
「あぶらげをのう、こう固くなる直前まで炙っての。良いか? 表面に油が浮いて、箸で叩くとコンコン音がなるくらいが丁度良いのじゃ。完全に油が飛ぶと固くなりすぎて不味いからのう。注意じゃ」
「はいはい」
「で、取り出したあぶらげをサクサクっと切って醤油を掛けて喰う。つまみにもご飯のお供にも最高じゃ!」
「それは」
 ちょっと美味しそうだけど、ここで酔っ払いの輪に入るのは抵抗がある由香里である。
「理夢琉、そろそろ」
 そう遙華が告げると理夢琉はペンとメモを取り出し皆に問いかける。
「感想を聞かせてください」
 ある程度酒も進んだところで、本日の命題。酒の感想会に入る。
 

第二章 お酒はちょっと、大人の味
 
 理夢琉はグラスに継がれた透明な液体をまじまじと見つめた。
 保健室で嗅いだことのあるようなにおいとフルーティーな香りが同居した不思議な感じ。
 その匂いは嫌いではなく。
 香りだけでも。その場の雰囲気だけでも気分がよくなってしまう。
 料理を一口。みんなに告げた。
「まず宝玉から」
「ふむ、これは軽いから料理に合うな」
 ちなみにお酒のかき氷に挑戦してみたのだがアリューに取り上げられていた。
「芳醇で甘みのある、女子向けかかき氷とかスイーツ系料理提案あるなら……って理夢琉!? これはダメだ、俺が食う」
 それを大人たちは楽しく食べていた。
「なるほどね。悪くはないわね」
 そう最初に告げたのはマリー。
 彼女は3つの酒をお猪口に注ぎ、まず匂いと味を確認していた。
 口直しに冷水で、口の中をリセットしつつ味を確かめていく。
「あら、日本酒に似た味ね」
「日本酒がベースなんですよ」
 理夢琉が言った。
「……度数が高いだけね」
 度数云々に関して理夢琉はわからなかったがマリーはそんな理夢琉の目の前でライムシロップを宝玉に足す。
 侍ロックである。
「一度、飲んでみたかったのよね」
 ナラカはその酒に口をつけて首をひねった。
「――ふむ、呑み易い良い酒ではある様だが……」
 素の自分が露わになるとされているが、ナラカ自身の言動は特に変わらないのだ。
 であれば、言えることは一つ。元より取り繕ってすらいない彼女なのである。
(しかし、たしかに、酔って……はいるか)
 アイオールはその味わいと香りを満喫しながら、やたら多い油揚げ料理を楽しみつつ飲んだいる。
 今は静かに飲んでいるが、どことなく雰囲気がおかしくなっていった。
「……この宝玉と言うお酒を使って、ワインソースのようなものを作れるでしょうか?」
 そうエプロンを借りて厨房に潜る由利菜。
「野菜サラダやパイン、ライスなども用意しますね」
 引っ込んでいる間にサンライズに話題が移った。
「……これは……五感の先鋭化、か? 面白い副次効果もあったものよ」
 そうふむふむと酒を飲み下すナラカ。
 カゲリは気が付き始める、ナラカの挙動がふわりふわりとしていることに。
「それこそかき氷に合うんじゃないかしら」
 そうマリーはきめ細かいかき氷を所望。フルーツをさしてお酒をかけて『大人のトロピカルかき氷』を作成。
「贅沢な大人のかき氷よ」
 アイオールは酒をストレートで飲んでいたが。隣の視線が気になる。
 どうやら効能等を聞いた事から鴬華が気にしているようだ。
 これまでに降ってきた事のないであろうインスプレーションの刺激に期待しているのだろう。
「お酒ですけど?」
「大丈夫」
 告げた鴬華がグラスを手に取って口をつけようとした瞬間。アイオールは閃いた。
 それは宝玉を飲んだせいもあってかサディスティックな発想で、恍惚の笑顔を一瞬に見せそして。鴬華の手からクラスを奪った。
 次いでそのグラスの中身を口に含んで鴬華の頬を掴み。
 口移しで一気に流し込んだ。
 目を見開く鴬華。
 その流し込まれる勢いに対応しきれず鴬華の口元から酒となにやらいろいろ混じったものが首や胸を伝ってシャツにしみこむ。
「熱くなってきましたね」
 告げると鴬華は服を脱ぎ始めた。
 その、黄金比のスタイルを彩るビスチェ姿にタトゥーは少し子供には刺激が強すぎるか。
 遙華と理夢琉が声にならない悲鳴をあげる。
 その様子を一瞥して鴬華は妖艶に微笑んだ。
「だから言ったのに」
 その様子を眺めている由香里である。
 そんな遙華たちの目の前に手羽先が差し出された。
 桜花が戻ってこないから様子を見に来たのだ。
「……手羽元と卵。味見お願いする」
「え? あ、ありがとう」
 その言葉に頷いて食べ始めると理夢琉が歓声をあげた。
「美味しいです」
「……こっちも食べてみる?」
 そんな桜花を捕まえて千佳は油揚げ料理を所望。
「……承知した」
 桜花は二つ返事でまた厨房に戻って行った。
「私も戻らないとね」
 そう告げる遙華の背を追いかけて理夢琉は厨房に戻る。
 彼女を一人にはしておけなかったのだ。
 そして最後に残るは問題作スピリット。
「無味無臭……だが濃いな」
 そう顔をしかめながらのむアリュー。
「心情でいろんな味になる」
 マリーはそれを珈琲牛乳で割った、カルーア・ミルク擬きにして実践。
「これなら、飲めなくもないわね」
 様々なの味方が開発されていく中
 アイオールはそれをショットであおった。
 するとその増幅された劣情に油を注がれてしまうことになる。
「あら、今日は一段と、可愛いじゃない」
 告げるアイオールは鴬華を引き寄せる。
 その笑顔は獲物を品定めする捕食者のものである。。
 そして上着を脱いだとなれば鴬華に負けず劣らずのスタイルを包むぴっちりスーツが露わになった。
「さて……おイタの過ぎる娘は、お仕置きしておかなくちゃねェ」
 そして会場のどまんなかで……ことを始めようとするも鴬華がいさめていた。
 由利菜がその光景をほっと見送ると視界の端にリーヴスラシルがうつり。
「ラ、ラシル……本当に大丈夫ですか? そのスピリット、相当度が強いみたいですよ?」
「……学園の授業や、エージェント業との兼ね合いもある。あまり多くは飲まん」
 その戸惑いが伝わってきた。その時である。
「……詩の蜜酒か、これは……? いや、違う……」
 霊力があふれだす、姿が変化していく。
「……視界がぼやけているが、この姿は……」
「ラシル……そのお酒の影響で、リンクバーストした時と同じ姿に……」
 由利菜は茫然とつぶやいた。
「……らしいな。尤も、半神としての能力が戻っているとは考えにくいが」
「ほう、そうなるか、戦乙女」
 そう告げたのはナラカ。普段より気分がよさそうだ。
「みな、この酒の力で高まっているようだな」
 英霊たちの中にはかつての姿を取り戻そうとしている者がいる。
 その姿が得られるのも嬉しかったが、何より楽しかったのは。
「この酒を浴びるほどに飲めばこの世界でも、力を行使できるのではないか?」
 それは浄化の炎という事だろうか。
「であれば、スピリットをもっともってこい、力を取り戻した暁には、一両日中に愚神など皆屠ってくれようてな!」
「させない、この私が全力で止めて見せる」
 そうリーヴスラシルが目の前に立ちふさがる。
 最上級リンカーの大立ち回りが開始された。
「これはこれは、よい会じゃな。催し物もあるとは」
 そう普段とあまり変わらない飯綱比売命が笑いながら戦いを眺めていた。
 さすがにお酒との付き合い方を知っているというべきか、酔っ払いになりながら酒をちゃんぽんしていた、酒をジュースと混ぜたり、酒にフルーツをまぜたり、酒に酒を混ぜたりで。さらにはその混ぜ合わせたのを料理酒にしてあさりの酒蒸しを作っていた。
「厨房に、鍋に貝と酒と醤油があったので、作ってみたが、どうかや?」
 そう顔を赤くした飯綱比売命がアリューに差し出すと、アリューはもそもそとうまいうまいと言って食べた。
 さらにはキノコをバターで炒めて、さいごに酒と醤油で味を調えたキノコのソテー。を会場全体に振る舞う。
 当然アルコールは残っている。
「遙華もどうじゃ?」
「え? じゃあ、一口」
「やめておきなさい」
 そう由香里に引きはがされていた。
 そんな一行とは少し離れたところで、話しの輪に入りたそうにしている遊夜は、席を立とうとするたびにユフォアリーヤに捕まっていた。
 そうユフォアリーヤさんはたんまり飲ませたいのだ。
【英雄でもガッツリ酔える】お酒でユーヤをメロメロにしたいのだ!
「……ほらほら、これなら……ジュースみたいで、美味しそう……だよ?」
「ああ、そうだな、自分で飲むからおいと、ぐ……」
【サンライズ】をぐいぐいと煽らせるユフォアリーヤである。なんとか飲み下した遊夜だったが、お酒がおいしく感じられることに驚いて目を輝かせた。
「……お、確かにこれは飲みやすいな」
「……んふふ。想定通り」
 そう不敵に笑うユフォアリーヤの想いなどつゆ知らず遊夜は残りのお酒も飲み下していく。
 【宝玉】は軽く舐める程度、そして。
「【スピリット】はダメだろうな」
 そう遊夜はグラスを置いた。ユフォアリーヤが不服そうな表情を向ける。
 遊夜は持てる限りの知識を使って。様々な飲み方を試した。
 カクテルは炭酸割やオレンジやグレープフルーツジュース入れたり、烏龍茶割も試してみる。
「これはまぁ、このくらいなら……あっちのは、酒好きでもきつそうだぞ?」
「……ん、アレはやめよう……やっぱり、こっちこっち」
 さらにぐびぐびサンライズを呑ませるユフォアリーヤ。
「あのな……」
 いい加減身の危険を感じ始めた遊夜、向き直ってユフォアリーヤに落ち着いてお酒を飲みたいと告げようとする。
 すると遙華がスカートのフリルを揺らして、二人のテーブルの前に続々と料理を持ってきた。
「あー。こちら牡蠣のレモンバターソテーあさりの酒蒸し鰻のおむすび鮪の竜田揚げカマンベールチーズ揚げ」
 矢継ぎ早に告げると息が切れたのか遙華はすぅっと息を吸い込んだ。
「えびとアボカドのマヨサラダ鮪と長芋の柚子胡椒マリネ……」
 息をつきながら、全部おそろいで? と問いかけるとユフォアリーヤは満面の笑みで頷いた。
「これは、なんだ?」
「……ん【精が付くもので夏を乗り切ろう作戦】」
「作戦?」
「最近ユーヤ、ばて気味。夜も元気ない」
 そう頬を赤らめて、いっちゃったーとくねくねするユフォアリーヤ。
 遊夜はこの時察した。
 そう言うことか。と。
「はい、あーん」
 そうユフォアリーヤがフォークの先を遊夜に向ける。カキがとろりと光を反射し美味しそう。
 だがそれ以上に、普段より薄着のユフォアリーヤの胸や。太ももや。
 その熱気がじかに伝わってくるようで。
(酒……恐ろしい限りだ)
 そう金輪際飲まないことを心に誓いながらユフォアリーヤのなすがままになった。
「……ん、これにはこれが合うの……美味しい、よ?」
 そう妖艶に笑うユフォアリーヤから解放されるのはきっと、翌朝のことであろう。
「ユーヤ熱くない?」
「いーや、俺は熱くない」
「じゃあ、僕脱ぐ」
「ちょっとまて、それ以上脱げる布なんてないだろ。やめろ」
 酒のせいか、羞恥心のせいか顔が真っ赤な遊夜である。
 そんな中、だんだん場が混沌としてきたこの飲み会会場に、セレンは絶句している。
 なんてものを開発してくれたんだ。そう絶句している。
「……え、桜狐さん、おつまみ持ってきたの? あ、油揚げ……ま、まぁ美味しいけどさ」
 その思いで目の前ののんべぇたちがお酒を入れるのを油揚げをかじりながら眺めていた。
「う……適度に。適度にだからね?」
 そんな言葉誰もきいてやいない。
 桜狐にいたっては油揚げさえあれば何も言わないという傍観主義。
 ただ桜狐がなにも言わないのをいいことに千佳はやりたい放題である。
 ATとサンライズを飲み始める千佳。
「もう何本目?」
 セレンが問いかけると、ATは瓶を振りながら告げる。
「さぁてね」
「飲む阿呆と見るあほう。同じアホなら飲まなきゃそんにゃー」
 告げて瓶ごと煽る千佳である。
 二人とも飲み放題だから死ぬまで飲むつもりである。
「もう、のんべぇ、しらない」
 そうぷいっとそっぽを向くセレン。
 その視線の前にわざわざ移動してきたAT。
「飲兵衛だなんてハハ。いや、単なるお酒好きだよ?」
 しゃがみこんでセレンの視線を捕えようとすると目の前で胸が揺れる。
「あ、あわわ」
「しかしだね。前は中々楽しむ機会が無くてね。
この身になって色々なお酒に出会えるようになって、嬉しくて……ダメかいセレン?」
「いい……。だいじょーぶ」
 そう気のない返事を返されるとATは千佳に向き直る。
「……よし、了承は頂いた。千佳ちゃん飲もう!」
「ばんざいにゃー」
 そうATに飛びかかる千佳。
 その太ももがチラチラと。
「ちょ、こら、やめろ、千佳」
 千佳がじゃれ付けばATの胸元が。
 めくれて大変なことになりそうである。
 視線をそらすセレン。
「サンライズかぁ。良い香りがしてるね。美味しいそうだ」
 そう千佳をなだめてグラスを持ち上げるAT。
「それでは……乾杯。お疲れ様だよ?」
 そんな二人を見てあわあわするセレンだったが桜狐は何も気にしない。
 むしろセレンが何でこんなにあわてているか分からない。
 首をかしげる。
 そんな桜狐にセレンは取り繕うように話し始めた。
「こうして見てると色んな酔い方があるよね。……結構面白い、かも。
 桜狐さんも将来飲んで見たいと思う? その時は付き合うけど」
 そう笑顔を見せると、桜狐はお稲荷を口に詰め込んでいる最中だった。
「酒よりおいなり」
 そう謎の言葉を残して、さらにもそもそ食べ始める。
「すごいペースでなくなるね、新しいお稲荷さまを持ってこないと。って……」
 そうセレンが振り返ると絶句する。
 千佳とATがいつの間にか脱いでいた。
「にゃー、気分よくなって暑くなって来たにゃ。服が……邪魔にゃー♪」
 ただでさえ薄い衣装を脱ぎ捨てて下着、それ寸前まで。
 そんなセレンの四方をグロリア社職員が囲み衝立をたてる。
「え? 僕も外に出たい!!」
 その願いはかなわずセレンごと封印指定である。
「……ぬ、セレンは何を赤くなっておるのじゃ……?……いつもの光景じゃろうに……」
 あっけらかんと言い放つ桜狐。
「そんな!」
 そんな顔を真っ赤にしてついたてを叩く二人を見かねて、桜狐がため息をついて立ち上がる。
「ふふふふ、ATさんと僕、どっちが素晴らしいか勝負にゃ♪」
「いや、私はどちらでも、って変なところを触るな! こら」
 下着の中に手を突っ込む千佳。
 すると桜狐がロープを取り出し、千佳をあっという間に吉亀甲縛りにしてしまった。
「ほれ」
「って……他に縛り方ありませんでした?」
 そう桜狐から手綱を渡されるセレン。
「あれ、この手綱を引いて帰るの?」
「何かこの縛りは癖になりそうにゃー♪」
 千佳は反省の色なく瓶にキスをしている。
「……皆、いろんな酔い方しておるが……うちのはいつも通りじゃのぉ……。……いつもより激しい気もするがの……」 
 これがいつも通りなのかとあきれるセレン。
「あはは。いやぁ千佳ちゃんも最近みるみる可愛くなって。大丈夫、私が保証しよう」
 そう服を正して立ち上がるAT。
「……ほれ、さっさと帰るのじゃ……。……いつまでも知恵の輪のように絡み合っておるでない……」

 エピローグ
 宴もたけなわ。アルコール臭くなったホールで実験終了の声をあげると一同はふらふらになりながら荷物をまとめ始める。
 そんな遙華の背後にアリューが立っていた。
「おどろいた」
「なぁ遙華」
 そうアリューは遙華の頭をワシャワシャと撫でる。
「すこし、寂しかったな」
 告げるその言葉だけで何が言いたいのか遙華は察する。
「そうね、あの人。お酒を飲んでる時だけ笑うのよ。見たかったわ。彼女の笑顔」
「そんなことないさ」
 そう遙華はしばらく撫でられるがままだった。
 そんな酔っ払いどもを眺めながら。戦いきった桜花は皆の退場を眺めている。
 皿洗いまでやってキッチン番である。
 そんな桜花の背後に近づくマリー。
 マリーはそのまま抱き着く形で二つのふくらみをもみしだいた。
「お疲れ様!」
「ちょ……」
 不意打ちのグラップルに桜花は思わず膝をつく、マリーの手の中で様々形が変わるバスト。
 その中に手を入れようとした瞬間に。
「……い加減に……しろ!」
 みぞおちへの肘鉄。
「ふふ、相変わらず良体……へぐう!」
 それがクリティカルヒットしたマリーは地面に突っ伏した。
 桜花は振り返りため息をつく。
 酒はろくでもないな。そう相棒を回収して桜花は片付けに戻った。



結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • ー桜乃戦姫ー
    染井 桜花aa0386
    人間|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    マリー・B・ランディーネaa0386hero002
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • マグロうまうま
    セレン・シュナイドaa1012
    人間|14才|男性|回避
  • エージェント
    ATaa1012hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • むしろ世界が私の服
    猫柳 千佳aa3177hero001
    英雄|16才|女性|シャド
  • 平伏せ、女王の足元に
    鴬華・エリスヴェータaa4920
    人間|26才|女性|命中
  • 真っ黒なドS
    アイオール・ハーシェヴェルトaa4920hero001
    英雄|27才|女性|ソフィ
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