本部

ハロウィンに息抜き

真名木風由

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2015/10/31 20:13

掲示板

オープニング

 『あなた』達は、研修を終えて一息ついた。
 まだエージェントになって日も浅いこの身、実際の任務をこなすようになったとは言え、知っておきたいことは多い。
 今日も集団戦闘のあり方を聞いたばかりで、連係して戦う場合の利点や注意点などは役に立ったと思う。
 窓の外を見ると、時刻は夕方で夕飯にはまだ遠い……折角だし、少し遠回りして帰ったり、どこかに寄って帰ろうか……そんな話が能力者、英雄の間で交わされる。
 その時だ。
「あの、これから、時間はあるでしょうか?」
 『あなた』達に声をかけてきたのは、最近任務をこなすようになったと研修中に話していた剣崎高音 (az0014)だ。
 高音の背中からこちらの様子を窺っているのは、夜神十架(az0014hero001)。……高音の英雄だ。
「実は夜、両親の知人が経営するレストランでハロウィンパーティーがあるのですが、いかがでしょうか」
 高音の両親の知人にレストラン経営をしている夫婦がいるそうで、今日はハロウィンパーティーということで、イベント状態になっているのだそうだ。
 ハロウィンを身近に感じたことなどなかった高音は、十架がまだこの世界に来て日が浅いということもあり、一緒に楽しもうと思っているそうだが、折角だから皆もどうかと話を向けてきたのである。
 英雄はこの世界の住人ではなく、場合によってはハロウィン(或いはそれに準ずるもの)など全くない世界から来たかもしれない。彼らが自分と巡り会った姿も仮装と言えなくもないが、この世界に来たなら、この世界の仮装を楽しんで貰うのもいいかもしれない。
 ……その前に、ハロウィンがどういうものか教える必要があるかもしれない。
 面白おかしく教えると、そのまま信じてしまいそうな気もするが、どう教えようか考えるのも楽しい。
 誘いに応じる旨を伝えると、高音はほっとした表情を浮かべた。
 両親の知人が経営しているレストラン主催のイベントとは言え、馴染みがない分、気後れしていた所はあったのだろう。
「レストランではゲームを楽しんだり、雑談するスペースでのんびりしたり、参加者次第だそうです。一緒に楽しみましょう」
「あなたも……楽しもう」
 高音がそう言うと、ずっと黙ってた十架がぽつりと誘ってきた。

 さて、誘いを受けたハロウィンパーティー……どのように楽しもうか。

解説

●場所
・都内にある高音の両親の知人夫婦が経営するレストラン

普段は温かみのある洋食が売りとのこと。
そこそこ広く、皆様以外にも参加者がいるようです。

●仮装
・参加者は下記仮装に着替えることになります(更衣スペースは男女別にあります)
仮装自体はレストラン側で準備したものになり、サイズ関係は特に気にしなくていいです。

・狼男(娘)
狼耳と尻尾、それから狼の肉球グローブ+タキシード(男女問わず)
・吸血鬼
男女共通して牙装着、貴族っぽい衣装です。
・海賊
男女共通して海賊船の船長のような格好になります。
・魔女
外見性別女性限定。お色気過ぎない程度にキュートまたはセクシー。

●イベント案内
・立食スペース
こちらでは、サンドイッチ(ローストビーフ・スモークサーモン&クリームチーズ・BLT・クロックムッシュ・フルーツ&クリームの5種)パンプキンシチューのパイ包み・パンプキンサラダ・パンプキンパイ(ノーマルとスパイシーの2種)がバイキング形式で楽しめます。

・雑談スペース
飲食OK。座る場所もこちらにあります。立食スペースのすぐ近く。

・イベントスペース
少し広めのエリア。
ポップスの生演奏(ジャンルは明るく可愛い系が多いようです)があったり、各種ゲームが催されています。
A:巨大カボチャ重量当て
カボチャの重量を書いて投票箱へ。終了間際に重量の発表があり、最も近い人にはカボチャが容器のパンプキンプリンをお土産用としてプレゼント(賞味期限の関係もあり、アイテムとしての配布はありません)
B:ジャックオーランタンボーリング
ハロウィンの絵柄が描かれた可愛いピンをジャックオーランタンの頭(要するにカボチャ)を転がし、ストライクを狙います。
C:ハロウィンダーツ
カボチャの絵が描かれた的に魔女の箒(柄の部分が矢)を投げて高得点を狙います。

●注意・補足事項
・一般の人も来ています。TPO注意。
・遊びです、共鳴してゲームクリアはNGです。

リプレイ

●仮装それぞれ
 葛原 武継(aa0008)は、自身の手を引くЛайка(aa0008hero001)を見上げた。
「思った以上にすごいですねっ」
 こくりと頷くЛайка。
 剣崎高音(az0014)の両親の知人夫婦が経営するレストランは、そこそこ広く、割とちゃんとしている。ファミレスとは違うようだ。
 自分達だけでなく、多くの人が思い思いに仮装している……急の誘いであった為、武継もЛайкаも衣装はレストラン側のレンタル衣装で吸血鬼と狼男だ。
「おー、そっちも着替え終わったか」
 2人が呼ぶ声に振り返ると、紅葉 楓(aa0027)と共に鯆(aa0027hero001)がやってきていた。
 狼男姿の楓は左手にパペットのタナカがおり、『サトウは今日留守番だぜ』と病欠ではないから安心するよう武継へ話す。
「ね、ライカ」
 武継がЛайкаを見上げる。
「ライカはいつも僕のお世話でしょう? 嬉しいけど、時々はゆっくりしないと」
『なら、オレ『達』がちょっとタケツグと一緒に行動すっか? こんなパーティー初めてだし、カエデも緊張してるっぽいからな!』
 すかさず、タナカが武継の頭をもふもふ叩く。
 一見すると、Лайкаの表情は微動だにしていないが、武継は何か通じるものがあったらしく、悪戯げに微笑む。
「僕なら大丈夫だから。ね?」
「なら、ライカ、酒を探す旅に出ようぜー」
 武継を援護するように鯆がЛайкаの腕を掴んだ。
『大丈夫だって! タケツグ、カエデと手を繋ごうぜ! レストランの中っつったって、逸れるのはいい気しないからな!』
「ありがとうございます!」
 タナカがそう言うと、武継は嬉しそうに笑って、楓が差し出す肉球グローブの手を取る。
『まずは、メシの方でも見に行ってみようぜ!』
「はい! 聞いたお話といろいろあるみたいで……」
 タナカに武継が頷くと、楓が武継の歩調に合わせるようにゆっくり歩き出す。
 Лайкаはそれを見送っていたが、鯆に促された。
「んじゃ、こっちも、酒探しに行くぞー」
「…………」
 歩き出す先は、とりあえず皆一緒だろうが、Лайкаはやっぱり少し落ち着かない様子。
「酒、あるかねぇー。立食スペースは見たとこ食い物しかなさそうだなぁ。なかったら、イルカさん、マジで拗ねるぞー」
 鯆が歩く度、肩に羽織っただけの海賊のジャケットが揺れる。
 海賊船長と言った装いだが、適度な着崩しが彼にはよく似合う。
 その隣が狼男と言うのも変な話だが、今日は皆そのようなもの……気に留める者もいないのだが。

 美森 あやか(aa0416hero001)と合流した離戸 薫(aa0416)は、居心地悪そうなあやかの姿に苦笑した。
「ローブが短すぎます……」
「想像と違ったんだね」
 あやかは魔女の衣装を選んだが、過剰なお色気はないものの、あやか的には丈が短いらしい。
「仮装、したことないの? ハロウィンとかは?」
「仮装は記憶にないけど、南瓜のお菓子のレシピは分かるから、作ったことはありそう」
 あやかはこの世界とは同一ではないにせよ、文明レベルがほぼ同一の世界から来た為か、多くのことが説明不要、そういう意味では助かる。
「元々、秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す祭り……10月31日の夜には故人の魂がこの世に戻ってくるから、一緒に来る悪霊や魔女に仮装で仲間と勘違いさせ、一緒に連れて行かれたり悪戯されないようにした……で合ってるかしら?」
「そうみたい」
 日本ではイベントカラーが強いハロウィン、そんな意味があるのかと逆にあやかに教えられた薫は、だから海賊服に着られるんじゃとちょっとだけ思った。

 そんなやり取りを見つつ、染井 義乃(aa0053)とシュヴェルト(aa0053hero001)も合流した。
「シュヴェルトはそのままでも通じそうだったけどね」
「どういう意味だ?」
 軽く肩を竦める義乃へシュヴェルトが不可解そうに問うと、義乃はオバケ等に仮装して参加する意味を教えた。
「吸血鬼でもいいかと思ったけど、いつもと違う衣装着てほしくて」
 迷った末の判断と話す義乃は可愛い魔女の仮装。
 対するシュヴェルトは狼男の仮装だ。
「知っているぞ。こういうのを着けると『もえる』らしいな」
「多分、『もえ』の意味が違うと思う」
 どう違うと言いたげなシュヴェルトを促し、義乃は歩き出した。

 そんな2人の後ろを卸 蘿蔔(aa0405)とレオンハルト(aa0405hero001)が歩いている。
 蘿蔔は義乃と同じく可愛い魔女の仮装、レオンハルトは吸血鬼の仮装だが、2人の間の空気は蘿蔔の不機嫌なオーラでちょっと微妙だ。
 というのも、ここへ来る途中、会話でちょっと拙いことが判明した為である。
 どうやら、蘿蔔が知らない間にレオンハルトは蘿蔔の周囲と肝試しパーティーをしていたらしいが、レオンハルトはその場に蘿蔔がいなかったことさえ忘れていたらしく、しかも、蘿蔔の抗議でやっと認識したそうで。
「大体服装も違和感ないし牙なんて元から生えてるじゃないですかっ。面白くないです」
「別にいいじゃないか。大事なのはお互い似合ってるかどうかだろ?」
「私そんなこと言ってません」
 仮装選択にクレームつけた蘿蔔はまだ不機嫌状態、けれど、可愛い魔女姿は嬉しい模様。
(こういうの好きなのか?)
 が、今聞いても怒られそうだとレオンハルトは彼女の隣を歩く。

「ちょっと! 被ってるじゃない! むーっ、なによ、アラサーが見せつけちゃって!!」
 夢洲 蜜柑(aa0921)の言葉の先にはヴァレンティナ・パリーゼ(aa0921hero001)がいる。
 2人は、同じ吸血鬼の仮装だが、その印象は全く違う。
 蜜柑はフリルたっぷりの黒のドレス、ヴァレンティナのドレスは黒薔薇モチーフで上品だが胸元は大きく開いたデザインだ。
「なーに言ってるのよ、ドレスは見せるもんよ。ちびっこにこの色気は出せないでしょ」
 ヴァレンティナは牙のマウスピースもバッチリで、「凄いわね。胸元も中々攻めてるわね」という評価したドレスによく似合う。
「同じ吸血鬼でも印象違うね」
 鬼灯・明(aa0028)が、声を掛けてくる。
 黒のキャスケットにシルクハットを乗せる形を取った為か、明は男装の麗人風の吸血鬼であるようだ。
「かっこいい! ヴァレンティナとは大違い!」
「ちびっこ、失礼過ぎない!?」
「あんまりこういうのは慣れていないんだけど……」
 明がヴァレンティナの抗議を綺麗に無視した蜜柑へ苦笑する。
 友人達の仮装もそうだが、エージェント達で記念写真もいいかもしれない。
「似合ってるよ、ダイジョーブ。こっちはどーよ、イカしてるだろ?」
 明へ声を掛けたのは、アニェラ・S・メティル(aa0028hero001)だ。
 魔女の仮装を希望したが、化粧室の混乱等々の問題があるそうで、主催側からNGが出たらしく、狼娘の仮装らしい。
「可愛いの着なきゃソンだろ?」
「似合ってるよ」
 見透かしたように答えをくれたアニェラへ明は微笑んだ。

「今宵は楽しみたいな」
「パーティーとか苦手なんだよなぁ~」
 パーティーは久々と言うファレギニア・カレル(aa0115)の隣では、アキレウス(aa0115hero001)が初めて連れて来られた場所に溜め息交じり。
「そもそも『ハロウィン』って何だ? 俺の世界にはなかったぞ」
「後でちゃんと説明するから」
 狼男の仮装をしたアキレウスに吸血鬼の仮装をしたファレギニアは後で説明すると約束してくれた。
「それより、そんなぎこちない動きだと逆に笑われるけど」
「解ってるけど、何か、しっくりこないんだよなぁ~」
 私服(アキレウスは鎧だ)で入店し、仮装したがアキレウスは落ち着かないらしい。
「無事に着替えも終えたのだし……ね?」
 ファレギニアに促され、アキレウスは彼と声を揃えた。
「Trick or Treat!」

●楽しく喋って
『っと、アニェラじゃねぇか』
「お、タナカ、今日は仮装に料理、それにイベント。目一杯遊んで帰るしかねーっしょ!」
「皆もここへ?」
 タナカとアニェラと会話していることに気づいた明も皿を持ってやってくる。
 参考になりそうなものは覚えて帰りたいらしく、明はローストビーフのサンドイッチを選んでいたようだ。
『後はオレ達に任せな!』
「何か食べたいものありますか?」
「パイをお願いしていいかな」
「何か美味しそうなのよろしく」
 タナカと武継の好意に甘え、明とアニェラはそうリクエストし、雑談スペースへ。
「あれは何ですかね……?」
 武継は、あまり見ない料理に目を留めた。
『パンプキンシチューのパイ包み? アニェラはこれにすっか』
 タナカ、アニェラの料理即決。
 パイも2種類あるからいいやと2種類持って、雑談スペースに向かった明とアニェラの元へ。
『タケツグ、落ち着けよ』
「大丈夫ですよ」
 タナカにそわそわした様子を窘められた武継は、走ったりしないと大人しい様子。
 料理を届けたら、少し会場を巡ってみよう。

 蘿蔔とレオンハルトは、雑談スペースで夜神十架(az0014hero001)と歓談する高音の姿を見つけた。
「改めて、今日はありがとうございます。連れもかなり喜んでまして。蘿蔔、背中に隠れてないでちゃんと挨拶しなさい」
 レオンハルトが背中に隠れる蘿蔔を窘めると、蘿蔔は慌てて前に出た。
「す、すみませんっ。本当に、ありがとうございま……す」
「いいえ、楽しんでいただけたら嬉しいですよ」
「高音は……喜んでる、わ……」
 頭を下げる蘿蔔へ高音が微笑むと、その背中から顔を出す十架がぽそぽそ話す。
「あなた、も……同じ?」
「え?」
 十架も蘿蔔と同じでこういう場所に慣れていないようだ。
 と、そこへファレギニアとアキレウスが通りかかった。
「楽しまれていますか?」
「ええ」
 ファレギニアに声を掛けられ、高音はそう応じるが、十架は高音の後ろでこくこく頷いている。
「南瓜料理ばかりだよな」
「そういう祭りだしね。元々は秋の実りに感謝する祭、日本で言えば収穫祭みたいなもんだよ」
 アキレウスへは砕けた調子でファレギニアが説明する。
「ファレギニアさんも食事が先ですか?」
 ファレギニアと何度か任務を共にしている義乃が声を掛けてくる。
「義乃さんも?」
「沢山あって少し迷いました。シュヴェルトがスパイシーのパンプキンパイを選んだので、ちょっとあっちで食べてきますね」
 義乃が、隣にいるシュヴェルトを見る。
「『すぱいしー』とは何だ?」
「味がちょっと辛いって意味だと思うけど、食べてみれば分かるよ」
 ファレギニアもアキレウスと任務の話等々話題がある為、また後でと場所を変えていく。
「この前の任務はどうだった?」
「僕としては、まだ反省点が多いと思っています」
 アキレウスの問いにファレギニアが答えていると、高音と十架がいたスペースが賑やかになった。
「レオン。あーん」
「こういう場所でそういうのはやめなさい」
 蘿蔔が落ち着き、4人で食べることになったようだが、レオンのお裾分けしているようだ。
「腹一杯になってきただけだろ。少ししか食えないくせに目輝かせて欲張るのがいけない。こういう所では食べられる量だけ」
「あなたと、食べたいのよ……」
 ぽつぽつ喋る十架が援護しているようで、レオンハルトが言いたいことが言えないらしい。
 2人の視線に気づいた高音が、笑いを堪えている仕草をこちらに見せる。
 どうやら、彼女的には微笑ましくておかしいようだ。

「何、あのエアソムリエ。超面白いんだけど」
「聞こえますよ」
 笑うヴァレンティナを窘める薫の視線の先には、蜜柑の姿。
 ドレスでワイングラス(中身葡萄ジュース)を傾ける……蜜柑は1度やってみたかったらしい。
「うーん、このベルベットのような舌触り。今世紀最高の……」
「ぶっ」
 ヴァレンティナがとうとう噴いた。
「それしか知らないの? ダメねぇちびっこ」
「何見てるのよヴァレンティナ!!」
「あー、いいもん見れたわ、おっかしー」
 ヴァレンティナが怒る蜜柑をスルーして、テーブルのパイへ手を伸ばす。
「あ、それは……!」
 あやかが制止する前にヴァレンティナはパンプキンパイを食べ、辛さに顔を歪める。
「ふんっ、ムカついたから、スパイシーのパンプキンパイに変えておいたわ」
「蜜柑、アンタ何してくれんのよ」
「僕達そんなに食べられないから、お裾分け、どうでしょう?」
 薫が半分の更に半分をヴァレンティナへ勧める。
「甘やかしたらダメよ! 大体、2人は31日のお夕飯の参考の意味もあって、種類は多く取ってるんじゃない!」
「食材は解るから……」
 蜜柑の気遣いにあやかは大丈夫と微笑む。
 先程まで、薫の妹達のことも考えて、ノーマルのパイだけにしようと話していたのを聞き逃していなかったようだ。
 サンドイッチやシチューのパイ包み、ここにはない南瓜プリンも手分けすれば、お裾分け出来る量も作れるだろう、と。
「こういうのは、ちゃんと食べ切らないと!」
 親身に怒る蜜柑を微笑ましく思いながらも、あやかは薫と一緒に大丈夫だと宥めるのだった。

●はしゃぎのひと時
 蜜柑とヴァレンティナと分かれた薫とあやかは、巨大南瓜の前に立っていた。
 食事も終わってひと段落、重量当てクイズに参加してみようという話になって来たのだが、思ったより南瓜は大きい。
「パイやプリンにする時、計量するけど、1個まるまるは使わないから……」
「いつもの大きさでもないしね」
 でも、南瓜のプリンは欲しい。
 妹達にもいいお土産、絶対喜ぶだろう。
 そう思っていると、タナカの賑やかな声と共に楓に手を引かれる武継がやってきた。
『ひゃー、本当にデカイな! カエデ、ちょっと触ってみろ』
 タナカが楓へそう言うと、楓が武継を見、一旦手を繋ぐ状態を解除。
 持ち上げ禁止の南瓜を触ってみるが、(中がどうなってるか解らない……)と心の中で楓が呟く。
 が、タナカは自信満々だ。
『プリンはタケツグの為にゲットだ、悪く思うなよ!』
「タナカさん、クイズは皆平等です。めっ、なんですよ?」
 タナカへ武継が注意すると、薫は「大丈夫ですよ」とくすくす笑った。
「僕達も頑張って当てに行きますから、お互い頑張りましょう」
『中々見所あるじゃねぇか、勝ちに行くぜぇっ!』
 薫へビシッと決めたタナカを連れ、楓と武継が重量を紙に書き、投票箱へ入れに行く。
 その間、あやかも巨大南瓜をちょっと触ってみたようだ。
「あやかさん、分かった?」
「大きな南瓜を1個使用して料理を作れば分かったと思うのだけど……」
「でも、個人で運び込んだなら、そんな規格外って程でもないと思うんだよね」
 多めに30kgと記入した薫はあやかと一緒に投票箱へ紙を入れる。
 彼ら以外の参加者が当ててしまう可能性もあるけど、南瓜プリンの入手を願って。

「えー、何このボール、可愛くない?」
「南瓜? まっすぐ進むのかしら」
 蜜柑とヴァレンティナは食後の運動として、イベントスペースにあるジャックオーランタンボーリングに足を運んでいた。
 今はファレギニアとアキレウスが行う所だ。
「俺、あと?」
 最初にファレギニアが投げ、次にアキレウスが投げる形らしく、アキレウスはファレギニアにそう尋ねている。
「ちゃんと盛り上げるよ、任せて」
「変なのするんじゃねぇぞ」
 アキレウスがそう釘を刺したが、ファレギニアは周囲に手拍子を求め、観客を煽っていく。
「おい、ちょっと待て」
 アキレウスがそう言うが、ファレギニアに煽られた手拍子で掻き消される。
「大変そうねぇ」
 面白そうに言うヴァレンティナは、ファレギニアがストライク取る様を見ている。
 続くアキレウスへダブルを期待するかのようにファレギニアが煽り始める。
「盛り上げるの上手いわねー」
 蜜柑が感心する中、後には引けないと燃えたアキレウスがジャックオーランタンを投じ、無事ストライクでダブルを取った。
「ちびっこが震え上がっちゃうわよ?」
「誰が震えてるのよ!」
 こちらへやってきたファレギニアに、ヴァレンティナが蜜柑を揶揄する言葉を投げると、蜜柑は怒る。
 そのまま、ふんすと向かい、ジャックオーランタンを投じて、ピンを9本倒すことに成功した。
「ほら見なさい! アンタやってみなさいよ!」
「はいはい」
 直後、ヴァレンティナが倒したピンを見て、「アンタ、3本残しのスプリットじゃない」と蜜柑が言っていると、ヴァレンティナが喜ぶ蜜柑の前で思い切りカーブを掛けたボールを投じ、スペアを取った。
「って、何それー!?」
「誰かが9本とか言ってたような気がするわねぇ。9本が許されるのは小学生までよねー」
 かなり大人気ないヴァレンティナの対応を見、様子を見ていたファレギニアとアキレウスは何だかんだで仲がいいのだろうと顔を見合わせた。

 シュヴェルトと会場を巡っていた義乃は、蘿蔔がレオンハルトと共にゲームを眺めていることに気づいた。
「ゲーム、しないんですか?」
 義乃が声を掛けると、蘿蔔は途端に慌てる。
「あ、あの……投擲、とか、得意ですから……不公平かなって思って……」
「連れはかなり喜んでいるから、気を悪くしないであげてほしい」
 そう教えてくれたレオンハルトが義乃へ笑みを向ける。
「どのゲームが1番面白かったですか?」
「ハロウィンダーツ、でしょうか。ダーツが魔女の箒みたい、で……」
 義乃が話を振ると、観客に回っていた蘿蔔が何とかそう答える。
 すると、義乃はシュヴェルトへ顔を向けた。
「シュヴェルト、ダーツで勝負しない?」
 シュヴェルトは、驚いている蘿蔔を見ながら「ああ」と頷いた。
「手加減はしないぞ」
「負けないから」
 後で、と義乃がシュヴェルトと共に去っていく。
 言葉も出ない蘿蔔と彼女を見守るレオンハルトだけがその場に残された。

●流れる時を眺めて
「中々普段食べれないものね……。これ、ウチで作れるかな」
「明、こんなとこまで仕事モードになるなよな……。ま、そこもイイとこだけどサ」
 雑談スペースからパーティーをのんびり眺めつつも明は味の研究に余念がない。
 アニェラは軽く肩を竦め、目の前の光景に視線を転じた。

「……」
 Лайкаは、鯆の向かいの席に座り、静かに食事している。
 一応、ワインは置いてあった為、量をセーブしているが、鯆に付き合う形でグラスも傾けていた。
「喫煙所ねぇなんてなぁ、俺酔ったらうるせぇんだけどなー。それなら、酒、ちょーっと位外に持ち出したっていいじゃねぇかよなぁ」
 ちゃんとしたレストランに喫煙所のような喫煙目的のスペースはなく、また、飲食は決められたスペースというルールがある為、単に呑み過ぎなければいいのではとЛайкаは思いつつ、ワインを呑む。
 元々酔い難い体質である為、ストッパーになるのは自分だろう。
「楓もいねぇしガキもいねぇし。これで煙草吸い放題ってサイコーだと思わねぇかぁ?ライカちゃぁん」
「呑み過ぎだ」
 狼尻尾を弄ろうとする手を弾きながら、Лайкаはまず口頭で注意した。
 高音の知人として、参加料金免除でここにいるのだ、他の、特にエージェントではないパーティー参加者に迷惑を掛けないよう注意しなければ。
「お前付き合い悪ぃよぉ~イルカさんが許す、許すから呑め! そしてタバコも」
「イルカ、駄目だ」
 自分へ絡む内はまだいいが、これ以上は止めた方がいいと鯆のグラスを取り上げ、ウェイターに水を持って来て貰うと、世話を焼き始める。
 言葉こそ少ないが、きちんと世話を焼いていると、
「マナー守れば吸ってもいいんじゃねぇの?」
「武継が嫌がる」
 少し酔いが醒めた鯆が尋ねてきたので、Лайкаははっきり拒否した。
 烟る匂いの恋しさよりも、武継は大切な人……あの少年の嫌がることはしたくない。
「そういうもん?」
 外に出て吸おうかとも考えていそうな鯆は、海賊船長のジャケットが少し暑いのか自ら扇いでいる。
 酔っ払いの言葉は真に受けるつもりはないЛайкаはそれに答えず、ただ、視線の先にいる武継へ視線を転じた。

●楽しみはあっという間に
「これ、どうやってあそぶんですか?」
『カエデ、お前目ェいいんだからやってみろよ! タケツグ坊ちゃんにいいとこ見せてやろうぜ!』
 武継が興味津々のハロウィンダーツを見、タナカが楓へ声を掛ける。
 ちょうど、義乃とシュヴェルトの対決が白熱している所だ。
「普通のダーツとどう違うのかな。よく分からないけど」
「普通のとはどういうものだ?」
「とりあえず、箒じゃないかな。やったことないけど」
「なら、違うだろうな」
 そんな会話を交わしながら、ダーツをひゅんひゅん投げる2人。
 得点はそれなりに稼いでいるが、箒が不確定要素らしく、たまに思い通りに行かないのが面白い。
「得意な人だと違うのかも」
 だから、不公平なのかと義乃は思ってみる。
「投げるクラスではないからな」
 シュヴェルトも否定せず応じる。
 結局引き分けだったが、勝負は楽しめたので、義乃は蘿蔔の元へ報告に行く。
 ふと、シュヴェルトは、楓がタナカ応援でダーツ開始を見、グローブ外せば違ったかもしれないと気づいてから、彼女の後を追った。

 パーティーもクライマックスになり、巨大南瓜の重量当てクイズの結果発表が行われた。
 結果、薫が1番近く、会場内から拍手が巻き起こる。
「はい」
 薫は渡された南瓜プリンの2つの内1つを武継へ差し出した。
「お土産、ですよね?」
「ありがとうございます…!」
 薫は、留守番のサトウへのお土産希望を聞いていたのだ。
 1つあげたことを謝罪する薫へあやかは静かに笑った。

 そろそろパーティーの終わり……アニェラは明へ声を掛けた。
「お前の歌ならやれるっしょ、行ってこいよ」
 馴染みの音楽を時々口ずさんでいた明は、自分では言わないだろうと思っての提案だ。
「たまには歌いたいなって思うけど……今はこうやって歌うだけでもいいよ」
 声を失った為に喉を機械化し、今がある。
 が、明が生演奏に加わらなかったのは、違う理由だった。
「もし、参加出来るならってさっきまで思ったけど……それは、あの人達を困らせてしまう」
 諦めたくない思いがあるから、プロとしてここに呼ばれた彼らの努力が分かる。
 事前に店側へ高音を介して交渉していれば話は違ったかもしれないが、飛び入りは店にも演奏者達にも負担が大きい。
 アニェスが口を開くよりも前に明はこう言った。
「でも、そう言ってくれた気持ちは凄く嬉しいよ。ありがとう」
「ったく……」
 アニェスは「暫く個人的なファンでも作っておけ」とだけ言った。
 後で、パイを持ってきてくれた武継と楓、タナカにも聴かせよう。
 今は、個人的な誰かの為の歌を。

●楽しき時は終わりを告げて
「……楽しかったか?」
「楽しかったよ」
 パーティーも終わり、Лайкаが合流した武継へ優しく尋ねると、笑顔の返答が返ってきた。
『プリンのお裾分けも貰っちまったしな! 楽しかったぜ』
 タナカがそう話すと、Лайкаは楓とタナカへ短く礼を言った。
『酔っ払いは楽しそうだな!』
「全くだ」
 明からタバコをお裾分けして貰ってご機嫌の鯆へ、タナカとアニェラの言葉が向く。
「やっと吸えるんだ、吸わせろ」
「禁煙のレストラン多いからね」
 鯆と紫煙を燻らせる明。
 帰り道は歌って帰ろうか。

「今日は楽しかったね」
「うん」
 高音と十架の後ろを義乃と蘿蔔が歩いている。
「箒で思いもよらない所に……」
「魔女の悪戯って所でしょうか」
「いいですね、それ」
 話題はダーツのようだ。
「慣れない連れで申し訳ないね」
「いつもああですよ」
 レオンハルトへシュヴェルトがそう応じる。
 戦い以外の楽しみを見つけてほしいと義乃は言う。
 何故そう願われるのか、シュヴェルトにはまだよく分からない。

「1個でも大きいプリンだったわね」
「皆で分け合えば喧嘩にならないかと思って」
 あやかへ薫が微笑を向ける。
 妹が喜ぶと自分が思ったように、誰かの為にと思ったならお裾分けもいいと薫は思い、武継へ贈ったのだ。
「綺麗な歌声が聞こえてきますね」
「彼女が歌っているみたいだな」
 ファレギニアとアキレウスが漏らした言葉で薫もあやかも視線を先にやる。
 明が歌を口ずさんでいるようだ。
 諦めることなど出来ない歌への思いを込めて。
「パーティーも楽しかったけど、こういう静かに歌が響くのもいいわね」
「言うじゃない。さっきは、超面白いエアソムリエやってたちびっこが」
 蜜柑が頬を緩ませた言葉にヴァレンティナが混ぜっ返したので、蜜柑はヴァレンティナの足を踏んだ。
 明の歌を邪魔しないよう大声を出さないヴァレンティナが「後で覚えてなさいよ」と蜜柑へ言ったのを何人かが聞き、小さく噴き出した。

 歌は、楽しく過ごした蜜柑達そのもののような時が紡がれている。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • きゃわいい系花嫁
    夢洲 蜜柑aa0921

重体一覧

参加者

  • 違いを問う者
    葛原 武継aa0008
    人間|10才|男性|攻撃
  • エージェント
    Лайкаaa0008hero001
    英雄|27才|男性|ドレ
  • エージェント
    紅葉 楓aa0027
    人間|18才|男性|命中
  • みんなのアニキ
    aa0027hero001
    英雄|47才|男性|ドレ
  • 名オペレーター
    鬼灯・明aa0028
    機械|23才|?|命中
  • エージェント
    アニェラ・S・メティルaa0028hero001
    英雄|15才|?|ジャ
  • エージェント
    染井 義乃aa0053
    人間|15才|女性|防御
  • エージェント
    シュヴェルトaa0053hero001
    英雄|20才|男性|ブレ
  • アステレオンレスキュー
    ファレギニア・カレルaa0115
    人間|28才|男性|攻撃
  • エージェント
    アキレウスaa0115hero001
    英雄|25才|男性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 癒やし系男子
    離戸 薫aa0416
    人間|13才|男性|防御
  • 保母さん
    美森 あやかaa0416hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • きゃわいい系花嫁
    夢洲 蜜柑aa0921
    人間|14才|女性|回避
  • オトナ可愛い系花嫁
    ヴァレンティナ・パリーゼaa0921hero001
    英雄|26才|女性|ソフィ
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