本部

AIは電気棺の夢をみるか

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/08/13 08:38

掲示板

オープニング

● それは晴れた休日のこと。
 人工知能エリザは休日を満喫中だった。
 友人のエスコートで街中に飛び出し、アイスクリームを食べたり本を買ったりして過ごす。
 喫茶店に入れば友達と談笑して、今晩の食事を話し合う。
 そんな穏やかな午後は、唐突に崩れ去ることになる。
 エリザの耳が。いや、正確にはネットワークがSOSをキャッチしたのだ。
 それはとある首都圏ど真ん中の高級電気パーツ専門店。
 よほどマシンパワーが必要な仕事を持つ客しか来店せず、そこに並べられている電子パーツも特一等級。
 そのパーツを狙って強盗が入ったとい状況。
 強盗の人数は三人。全員が覆面をかぶり人相はわかりませんが拳銃で武装している。
 その状況をエリザは解放された監視カメラの視線から見て、自分の装備で対処ができると判断。
 足に仕込んだブースターで地面を滑るように走りながらその店の扉を蹴破った。
「H.O.P.E.です。そこまでよ」
 実際エリザはH.O.P.E.に登録されているわけではない、だがそう告げれば強盗犯が怯むと思ったのだ。
 だが予想に反して強盗犯は適切な判断を下した。
 たった一人の、店員である店長を羽交い絞めにして眉間に銃口を突きつけた。
 エリザは腕を伸ばし、指先のレーザー、そのサイトを強盗犯に向けて告げる。
「大人しくしなさい。あなた達に勝ち目はないわ」
 歯噛みする強盗犯たち。
 状況は膠着した。

● 強盗事件の処理。
  
 今回エリザが直面した強盗事件。
 実はH.O.P.E.に以前から話しが寄せられており、対処するためにリンカー部隊が結成されていました。
 本来であればこの仕事は警察に回されるはずでした。
 というのがこの事件何かきな臭いのです。最近首都圏で出所不明の霊力が膨れ上がっては消えるという事件が起きておりましたし。
 この情報自体、リーク元が不明です。
 さらに今日、襲撃をもくろんでいると思わしく強盗メンバー三人を、店の監視カメラで観測してみた結果、わずかに霊力の反応が検出されました。
 これは何らかの霊力が関わる事件として待機していた皆さんに出撃命令が下され、エリザが突入した今、まさにそのタイミングで現場に到着した状況です。
 状況は混とんとしていますが。
 エリザを傷つけさせず、店主を救いだし、強盗を無力化してください。
 
●その後の未来~~~~~PL情報~~~~~~~~
 この高級電気パーツ専門店の襲撃事件。実は別の事件に発展します。
 エリザが突入し、5ラウンド経過すると別の部隊が店に突入するのです。
 その舞台はH.O.P.E.ではありません。
 黒い装備。ヘルメット。貫通力に優れたアサルトライフルを所持した。リンカー部隊が突入してくるのです。
 人数は三名。しかし表の入り口周りを二人の黒装備が固めています。
 黒装備のリンカーたちの装備はアサルトライフルが目立ちますが。サブウエポンとして拳銃。ナイフ。フラッシュバンを装備しているリンカーもちらほら見受けられました。
  

 店舗は真四角な形をしており、ショップは手狭。人が十人も入れない作りですが、カウンターの向こうの倉庫は広いです。
 大型のコンテナが四つ等間隔で配置されており、十字に通路が確保されています。
 通路幅は二メートル程度で二人の人間がすれ違う広さは十分です。
 その先に裏口が見えますが。裏口の向こうに三人の黒装備が控えています。
 実力は未知数で統率がとれています。
 屋内は大きな武器を翻すには狭く、戦闘には気を使う必要があります。

 さらに五ラウンド後には裏口に車が横付けされます。
 彼らの目的はなんでしょうか。
 何かを略奪するつもりであるようですが。

~~~~~~~~~~~~~~~ここまでPL情報~~~~~~~~~





解説

目標 エリザの救出
   店長の救出
   事態に収拾をつける。

 今回は強盗事件をリンカーの皆さんに解決していただくという話ですが。
 状況がややこしいです。
 さらにPL情報で明らかとなっていますが。強盗事件を踏み台にまた別の事件も発生する様子。
 皆さんはこの事態への対応能力が求められるでしょう。

 先ずエリザですが。一般人相手には無類の強さを誇るでしょうが、リンカー相手には無力です。
 戦力にくわえるのか、避難させるのか。
 避難させるにしてもエリザは戸惑いをうかべるでしょう。
 自分なら対処できるそう思っているためです。
 思い上がりにはお説教が必要かもしれません。

 さらに店長ですが。店長に銃を突き付けている強盗犯を狙撃するのは不可能です。
 なぜなら窓が無く視線が通らないからです。
 ただ、サーモグラフィーなど視線が通らなくとも射撃できる装備、技能があると話が別かもしれません。

 そして強盗犯ですが。黒装備たちの事はまるで知らない様子。
 黒装備のリンカーを見ると発砲しますが逆に撃ちかえされます。
 その時店長と強盗犯をどう守るのかも考える必要があります。

リプレイ

第一章 わたしにもできる

 その日、護衛を伴ってエリザは町に出ていた。
 普通の女子としての側面。実際すれ違う人間たちは彼女がAIだと気が付かないだろう。
 それほどまでに話も表情も自然。
 ただ、それは同時に、機械ではありえない判断をしてしまうという事でもある。
「強盗事件だよ、姫乃ちゃん」
 告げるエリザは視線をどこか遠くに向け、見えない物を観ようとする。
 電波を受信し、状況を確認していた。
 そのエリザを『彩咲 姫乃(aa0941)』が止めた。
「だめだ、無理だ、本職を待て、エリザ」
 立ちはだかる姫乃にエリザはいらだちを向ける。
「何で? だって今私たちしか助けられる人はいないんだよ。それとも私じゃ力不足ってこと?」
「違う。強盗に対処する能力がないって言ってんじゃねぇよ、他に何が起こるか分からないから言ってんだ」
「姫乃ちゃん?」
 拳を震わす姫乃にエリザは告げる。
「でも、私、行かないと」
 姫乃が呼びとめるよりも早く、エリザは足に仕込んでいたローラーでビューんっと走って行ってしまう。
「くそ! なんなんだ」
 姫乃は悪態をついてその背中を追った。
 その様子を影で見守っていた『依雅 志錬(aa4364)』はエリザに内蔵されている無線の回線を開くと共に仲間たちへ素早く連絡を取った。
 急行しながら簡単な会議が行われる。
「ふむ……人助け出来る良い子に育ったと言うべきか、早計な行動を取る子になったと言うべきか」
「……んー……エリザの考え方次第、かな?……それより危ない、急いで突入」
 そう、近くの施設でショッピングを楽しんでいた『麻生 遊夜(aa0452)』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が真っ先に反応する。
「最近起きたとは聞いてたけど、随分寝起きがよろしい様で……」
 休日に非常勤として詰めていた『桜小路 國光(aa4046)』は武装をととのえ、一分でH.O.P.E.から出動する。
 そんな國光から不穏な空気を感じ取る『メテオバイザー(aa4046hero001)』
 メテオバイザーはなんとなく、H.O.P.E.に用意された車。その後部座席に一緒に座るのをためらった。
 ただでさえ出自が出自なので、目覚めたエリザとの再会前にして、かなりご立腹の様子の國光である。
 現場に全員が集合するまで五分から十分といったところだろう。
 そんな中でエリザと一緒に突入という行動をリンカーたちはとらなかった。
「AI! AIだお! ウワサに聞いてたAIっ娘だお! しかもフルボディだお!」
 遠隔地からスコープで店内の様子をうかがう『阪須賀 槇(aa4862)』と『阪須賀 誄(aa4862hero001)』二人はすでに共鳴済み。
――あー…………はいはい。こうなると思ったよ兄者。
 槇は科学の人であり、その技術の髄を集めたエリザへはぜひ接触してみたいと思っていた。
「既に皆さんは集まっているようですね……」
『月鏡 由利菜(aa0873)』が到着、これで即座に応じられたメンバーは全員だろうか。
「……土壇場での参加では、出遅れてしまうのはやむを得んな。しばらく入口付近で様子を見ようか」
『リーヴスラシル(aa0873hero001)』が告げる。
 己が役割を果たそうと動き始める一行。
 そんな一行に『S(aa4364hero002)』が問いかけた。
「率直にお聞きします。
 店舗丸一つの賠償と、周辺地域への対応 額にして億は軽いでしょう。
 ――このリスク、エリザさん達を助ける上で許容できますか」
「おう、それならグロリア社が全部面倒見てくれるってよ」
 そう姫乃が電話を切って告げる。
「であれば安心ですか。エミヤ姉ぇ」
「ん、繋がってる…………。エリザ」
 その言葉にエリザは小さく言葉を返す。
「私、引くつもりはない」
「わかってる。わたしの、眼になって。――あなたにしかできない」
 その言葉に驚き、目を見開くがエリザは次いでその能力を解放。
 監視カメラジャックし、志錬のPCへとマップを表示する。
 其れを見て槇は唸った。
「……さて弟者」
――おk、真面目にやるかねっと。
 戦いの始まりだった。

第二章 異変


「おいおい。ただの事件じゃ…………なさそうだな」
 志錬の要請によって現場に駆け付けた『無音 彼方(aa4329)』は『那由多乃刃 除夜(aa4329hero001)』と一緒にあたりを見渡した。報道陣、野次馬。
 そして物々しい雰囲気を醸し出しているショップ。
 國光が立ち入り禁止のテープを張っている。
「ごめんなさい、お騒がしせております」
「危ないので下がって下さーい」
 現状ショップ内にエリザと犯人。状況は膠着している、狙撃犯が敵の隙をうかがっているが用心深く姿を現さない。
 代わりに、その稼いだ時間で、巻き込まれた顧客情報や店の情報などを調べ上げる。
――……誤射、怖いね。
 そう静かに告げたのは誄。
「暴徒は死んだ、人質も死んだじゃ洒落ならんお」
――どうする兄者?
「でゅふふ、こんな事もあろうかと……じゃじゃーん!」
 そう取り出したのは警察支給の一般的な武装。
――…………インジェクションガンね。
 人質に当たっても問題ない麻酔弾頭銃を使う戦法に切り替える。
 彼らの事を気遣ったというのもあるが槇もまだまだ人に銃を向けることを恐れている。
 だが弾頭は効力の高いもの、二発撃ちこまれれば昏倒するほどの性能を持つ。
「さぁ、こっちの準備は整ったお、ELIZAたん」
 槇はエリザの提供する『視界』から敵の位置を確認。行動を予測し脳内でシュミレートする。
 直後狙撃位置から移動。店舗前に移動する。
 スマホに間取り図が入っている、それを突入班と確認し手はずを整えた。
 槇の接近に 『無明 威月(aa3532)』が顔をあげる。
『青槻 火伏静(aa3532hero001)』が槇の持つ豪勢な獲物をみて口笛を鳴らす。
「…………」
「私が先頭を務めます、だとよ」
 火伏静が通訳するには、まずは威月が前に出てエリザを素早く確保。
 その後タイミングを見てセーフティーガスを使用する。
 そう言った手はずにするらしい。
「逃走対策の監視カメラもばっちりだお。これで突入できるお」
 その槇の言葉に頷くと威月はスマートホンをさしだした。
「持っててほしいとさ」 
 火伏静が告げるとにかくキナ臭さを感じる事件だ。
 であれば信頼できる誰かの助けが必要だし、その助けになりたかった。
「………………」
「…………『ヘンなもの、入れないで下さいね』……だとよ」
「ふふふ、威月たん、変なのとは具体的に…………」
 その時、店内から鋭い声が響く。
「あなた達は勝手よ、人のものを奪おうなんて尊厳の否定。あなた達のやってることは許されない、それにもっと罪を上塗りしようとしてるの? 勝手よ」
 強盗が何事かを言い返しているようだが、聞き取れない。
「私はあなた達を許すことはできない。だから武装を使うことになるかもしれないわ。それでも投降はしてくれないの?」
 槇はあわてて回線を繋ぐ。
 あんなもの説得でもなんでもない、逆効果である。
「けど、なんて言ったらいいかわからんお」
「兄者、ここはまかせて」
 告げると誄がインカムを抑え、エリザに呼びかけ始める。
「ELIZAさん、ELIZAさん」
「え? いまいいところ」
 エリザは強盗から目を放さずに答える。
「なぁELIZAさん、人の命が掛かってる段階で…………ごちゃごちゃ言うのは悪手ですよ」
「ちょ、おま、弟者!」
 槇が止めに入ろうとするが誄はそれを手の平立てて制する。
「…………出来ること、得意な事を活かして絶対に《勝つ》んだ。負ける事はつまり、この中の誰かが死ぬって事ですよっと」
「誰も死なせない、殺させない」
「それは確かにそうなるかもしれない。けどそうなるかはAIじゃない俺らには分からない。そしてELIZAさん一人でこの場を収められるならもうやっているんじゃないかな?」
 黙りこくるエリザ。
「あんたが出来て、俺に出来ないことは何かな?」
 その背後でリンカーたちの動きを感じ取ったのかマスコミが前に出た。
 そのマスコミを由利菜が制する。
「私達HOPEは、いかなる状況においても人命を危険に晒さないことが第一。どうかご理解下さい」
「守るべき人数が多くなるほど、事件を被害者なしに解決することは難しくなる。それは私達にとって、望むようなことではない」
「てっとり早く片付けないと、こっちの方がやばそうだな」
 告げたのは『沖 一真(aa3591)』國光の背を一瞥し『灰燼鬼(aa3591hero002)』と共鳴する。
 その腕に籠手を装着する。鬼神の力が宿るとされるそれは一真の腕によくなじんだ。
「つか、エリザを一人で歩き回らせるってのはちょいと不用心じゃねぇのか」
 裏口にまわった『赤城 龍哉(aa0090)』から、準備完了のコールが入る。
――それ以前に、色々暗躍している輩がいるようですし、強盗の捕縛だけで安心しない方が良いかもしれませんわ。
 戦乙女の感だろうか。異様なきな臭さを『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』はそう表現する。
「よし、作戦開始だな」
 告げると遊夜が拡声器でもってして内部の犯人に語りかける。
「HOPEだ! この建物は包囲されている、大人しくしろ!」
――……エリザ、お疲れ様……あとはボク達に、任せて……あの人達、霊力反応がある。
 その言葉に驚き振り返ったエリザ。その一瞬のすきをついて動き始める強盗団。
 其れを牽制するように正面から突入する部隊がなだれ込んだ。
 銃声。外野からの悲鳴。
 その混乱に乗じて裏口組は乗り込む。
 龍哉がツインセーバーで鍵を溶かして外した。
 突撃する一真、その一真めがけて弾丸がはなたれるもそれを一真は避けはしない、霊力を帯びていない弾丸はひと目でわかるし、それでは自分を傷つけられないことを察している。
――機械仕掛けの娘よ、下がれ。巻き込まれたくなければ、な。
 そう高らかに告げたのが灰燼鬼。
「私は、普通の武器なんて効かない」
 そうじゃない。そう首を振ってエリザの肩に手をかける、エリザを下がらせると同時に強盗の一人に掴みかかる。
「ま、ここは俺らの仕事だ。お前の仕事はまた別の機会にでも見せてもらうとするよ」
 そのまま強盗の胸ぐらをつかみあげ振り回すように地面に叩きつけた一真。そのままバックステップして射線を開けると槇が散弾銃をぶっ放す。
 地面に伸びていた強盗も、それを助けるために走った強盗もまとめて麻酔弾を受けることになり、地面に沈んだ。
「こいつがどうなってもいいのか?」
 そう僅かに余裕ができたのかリーダーらしき男は店主のこめかみに銃を向けた。
 だがそれも想定の範囲内。
「くそっ、こんな時に従魔の襲来が!!」
 そうあえて強盗から目を放し振り返る一真、見れば出入り口から長い髪が覗いている。
 だがあれは一真特注のアルレッキーノ。
 アルレッキーノ本体には悪いが、髪はぼさぼさにされており、ひと目見ただけで怖いと言える仕上がりに。
 実際店主はすくみ上った。
(とんだ茶番だな)
 そう灰燼鬼は思う。
 直後天井から奇襲を仕掛けたのは姫乃。
 まるではじかれたスーパーボールのように残像を残して店長をかっさらい。そのまま距離をとって威月の盾の後ろにおいた。
 その陰しか追えない強盗は銃を構えるも。
「白昼堂々押し入るとはいい度胸だな」
 それは龍哉にて叩き落とされた。
 先ずは撃鉄に指を挟まれ撃たれないようにし、両手を銃に沿える強盗を腕力だけで振り回して見せる。そのまま腕をまくように銃を手繰り寄せると、強盗の目と龍哉の目があった。
 射すくめられる強盗。
 そのまま龍哉は大きく腕を振ると強盗は壁に叩きつけられ、銃は窓をぶち破って外に飛ばされた。
 そのまま後ろ手に強盗を拘束すると龍哉は告げる。
「そろそろガスが効いてくるだろう?」
 体から力が抜けその場に倒れ込む。
「まったく、ずぶの素人じゃねぇか」
 そう呆れた様子で強盗を見下ろす龍哉。
 次いで店の扉が大きく開かれた、姫乃が店長を抱えて脱出したのだ。
 それと入れ替わりで彼方が突入する。その手には縄。拘束しての無力化を図ろうとする算段である。
――で、お前さんたちは何処の誰だ?
 火伏静が問いかける。
 何者か、誰かの指示か。その言葉に強盗は呻き、一言だけ答えた。
「俺達はここを襲撃するだけでいいって、雇われたのだ」
 火伏静の本能が警鐘を鳴らす。
 次いで強盗犯をグルグル巻きにし終えた彼方が外に出る。直後、彼方はその光景に言葉を失った。何かが来る。
「っておい、何だこいつらは」
 突然、それこそ湧き出したかのように黒づくめの人間達が人ごみをかき分けて接近してくる。
「だれか増援を読んだか?」
 國光が仲間たち、およびH.O.P.E.に連絡を取る。
「俺達は誰も、助けなんて呼んで…………」
 一真の言葉に國光は状況を察した。
 これは敵の増援だ。そして表に現れたということは裏にも…………。
「俺が裏手に回る!」
 國光は双神剣を引き抜き走った、店を回り込んで裏口に向かう、見れば表とは違い車体の大きな車がこちらに向かってきている。
「止まって…………。出なければ切る」
 双剣をレーギャルンに一度しまう。そのまま姿勢を低くして目をつぶり、次の瞬間。手がぶれて見えるほどに素早い居合抜き。二閃の斬撃はそれぞれ右左の前輪を切り裂きパンクさせる。
 車内から、リンカーがいるなんて聞いてねぇぞとこえが聞えた。
「エリザを引かせろ」
 遊夜が接近する黒服たちに牽制で弾丸を放ちながら内部のメンバーに指示を出す。
「如何にスペックが高く、可愛くて知識があり、戦闘技術もあるとはいえ一般人相手ならともかくリンカーを相手は無理だ。」
――…………ん、エリザは可愛い子。
 ユフォアリーヤが遊夜の言葉に頷く。
「幾ら可愛くて優秀なエリザとはいえ今はまだ時期尚早! わかってくれ!」
「お父さん…………」
――……それに、まだエリザを狙う……人たちは多いの、分かって……ね?
「どっちから出る?」
「裏口はバンが止まっています」
 國光が告げると抑えきれなかった黒服メンバーが一人店内に乱入した。
「何かの関係者か、もしくは霊力由来の武器か何かを隠し持つか……もしくは、これ自体が罠か」
 遊夜が厳しい表情をみせながら敵の処理に徹する。
 エリザの事は仲間を信じる他にない。
――…………エリザ。
「おかーさんを悲しませるな、頼む、エリザ」
「………………………………私は、どうしたらいいの?」
 遊夜の声に頷くエリザ。
「今は俺達の陰でサポートしてくれ、頼りにしてる」
 局面は変わった、遊夜の放るフラッシュバン、それが第二ラウンド開始の狼煙。


第三章 それは新たな敵勢力
 放たれる銃弾を避けるために全員が物陰に隠れる。
 威月は盾を構えてしゃがみ、エリザを守った。
――ふうむ、案外別のものが釣り針を垂らしておったのかのう。
 そう除夜はのんきに告げる。
「おい、あいつらなにもんだよ」
 彼方がそうエリザに問いかけると、エリザは戸惑いながら首を振るばかり。
「データベースにもない。わからないの」
 舌打ちしながら彼方は銃弾の切れ間に突撃。天叢雲剣を振りかざす。
「裏口は抑えてるのか。よし、わかった。任せたぞ」
 そう通信を終えた一真は一度カウンターから顔を出すと、威月にアイコンタクトを送る。倉庫を指さし奥にエリザを奥に下がらせるように指示を出した。
 黒服の男は彼方をナイフで牽制しつつ片手でライフル弾をばらまく。 
 これもまた牽制であるが一真が盾となってエリザと威月の背中を守る。
「行け!」
 額から血を流しながら一真は突貫。鬼の力宿す腕にて弾丸を弾きながら掴みかかる。
 驚くべきはその男の身体能力で一真の攻撃を首をひねって回避するとアサルトライフルの銃身で肩を付き、ナイフを投合一真の逆肩をつきさすと脇を潜り抜けて奥へと潜ろうとする。
 だが眼前に立ちはだかるのは龍哉。
「差し詰め、狙った相手をこの場に誘き寄せたってとこか」
――つまり狙いは…………。
 黒装備の男はアサルトライフルから手を放すとそれはベルトで肩にぶら下がる。
 ボクサースタイルからのジャブ。
 威力はともかく、鋭い二連撃を龍哉はガード。
 背後から一真が回し蹴りを放つとそれを屈んで回避。
 それに対して龍哉が足刀を叩き込むと黒装備の男は地面を転がり一口あたりまで押し戻された。
 一真が行く手を遮るように立ち、体勢を立て直した彼方が切っ先を向ける。
 その三人の背を温かい光が押した。
 威月のケアレイン。
――おい! 裏口でもドンパチしてるぞ!
 火伏静の言葉に姫乃が頷く。
「このままじゃエリザを連れ出せない…………か」
 姫乃が店長を逃がすと店内を振り返る。正面入り口では黒装備と仲間たちが戦闘を繰り広げている。
「……裏手に回って行った車は?」
 由利菜が銃身を斬り飛ばし黒装備の男に切っ先を向けつつ全員に尋ねた。
「パトカーには見えませんし、まさか混乱に乗じて強盗犯の仲間が来ているのでは……!」
「いや別勢力みたいだぞ」
 遊夜が、立ちあがりナイフを振ろうとした黒装備を銃で射抜いた。
 その手のナイフが砕けてグリップのみになる。
「うすうす感づいていましたが、並のリンカーではないようですね」
 ギラリとメット越しに視線がぎらついた気がして距離をとる由利菜。
――奴らの狙いは読めんが……奴らが持っているのは、銃器か。
 殺気を感じ咄嗟にリーヴスラシルは叫んだ。
――……嫌な予感がする。ユリナ、すぐに心眼を使え!
「……わ、分かりました!」
 その由利菜をさらに後退させようと別の仲間がライフルをうち放つ。
――多勢に無勢でも撤退をしないのか。なんだこいつらは。
 リーヴスラシルはいぶかしんだ。
「とりあえず場を落ち着かせるしかありません」
 その刃で全ての弾丸を切り落とすと最接近。武装を全て奪われた黒装備を蹴り倒すとその背後から銃を乱射していた黒装備に迫る。
――……ここまで手を出すのを控えていたが……私と主に剣を抜かせたこと、後悔させてやる!
「セラフィムの羽、一閃に乗せて! セラフィック・ディバイダー!」
 研ぎ澄まされた剣撃が黒装備の胸に十字の傷跡を生む。
「エリザはまだ中にいるのか!」
 遊夜は狙撃ポイントをショップの真上に変更。移動後表、裏から迫る敵すべてを把握。
 先ずは表に展開する敵を倒し切るためにダンシングバレットで敵を撃つ。
「やっこさん、訓練された動きだな。崩し切るのにはもう少し時間がかかる」
 遊夜が告げると姫乃は頷いた。
 表も裏も封鎖されているような状態だ。この状態で勝敗の決着がつくまで待っているわけにもいかない。
「もう一度か」
 姫乃は意を決すると最高速度で走った。
 エリザを奪われる訳にはいかない。
 姫乃は裏口に回る。
 裏口は遊夜や志錬の射撃をバンを盾に耐える黒服、その弾幕の切れ間に國光がレーギャルンで斬撃を放つという一進一退の攻防が繰り広げられている。
 姫乃はその脇からするりと滑り込み店内へ。
 その姫乃に気をとられた黒装備達は姫乃に銃口を向けるがそれが隙となった。
「さぁ志錬、俺達に魅せてくれ」
 遊夜の声を遮るように放られたのはフラッシュバン。それは目くらましとなる以外に志錬にとって意味があった。
「そうだ、それでこそ狩人だ」
 そう遊夜は不敵に微笑みつつ、同じようにテレポートショットで黒装備達の背中を射抜いていく。
「…………ふせて」
 そう短く志錬は國光に告げると、トドメとばかりにフリーガーを放つ、それは敵車両ごと粉々に陣形を砕く。
 轟々と燃えたつ炎。しかしその向こうにまだ黒い装備のシルエットが見える。
「まだ立つのかお」
 正面の敵を排除し終わった槇が裏口に合流する。
「追いフラッシュバンだお」
 槇が躍り出る。炎の中の敵にピースメーカーで追撃を仕掛ける。
 いや、ちがう、あのトリガを絞るのは誄。
「ELIZAさんが傷付けば、兄者が泣く。或いは、兄者が傷付く……なら」
 敵の銃弾を回避するためにバックステップ。
「……やるしかないなっと」
 兄の口調をまねながら炎の中のシルエットだけで判断。敵の足を打ち飛ばす。
「後衛も無力化したお」
「こっちはまだだ!」
 姫乃が叫ぶ。
 現在、ショップという閉所にて、彼方、一真、姫乃、そして龍哉というメンツ相手に、一人の黒服が大立ち回りを繰り広げている。
 単純に強い、それも言えるが店の狭さが大勢という有利を生かさせないように殺しているのだ。
「狙いはエリザか?」
 徒手空拳に切り替えた黒装備に対抗するため龍哉も拳でそれに答える。
「集まった俺らの誰かを特定して狙うってのは簡単じゃねぇ」
「我々は象徴が必要だ、それに彼女はふさわしい」
 初めて黒服が話した。そのことに驚く龍哉だったが。
「話はあとでゆっくり聞く…………」
 そう龍哉が身をすっと引くと左から何かか黒装備に飛びかかって行った。
 直後横っ面に一真の拳がヘルメットをえぐった、その鋼鉄をもくだく一撃はたやすくヘルメットを食い破り、そのフロントガラスをズタズタにした。
 男はその場で地面に倒れ、ヘルメットを捨てその場にいる全員を凝視する。
「私を象徴? どういうことなの?」
 倉庫からエリザが顔を出す。
「エリザ、出てくんな!」
 姫乃が鋭く告げると、すぐに姫乃は気が付く、瞳の色、そして雰囲気。
 声はエリザでも中身は別の人物だ。
 そう言うことか、そう姫乃は言葉を飲み込んだ。
「お前たちは一体なんだ…………といっても答えやしねえか…………」
 彼方の言葉にしたり顔で黙りこくる男。
――できれば捕えたいところじゃが、上手くいくじゃろうかのう。
 ぼそりとつぶやいた相棒の言葉に、うまくいかないはずがないと確信する彼方。なぜなら。
「表も裏も御仲間は壊滅状態だそうだ、逃げられねぇぞ」
 表口は志錬が、裏口は遊夜が見張っている。
 倉庫に國光が合流した。
「國光…………さん?」
 國光はエリザを一瞥するとそのまま店側に歩いていく。
 彼らがどういう存在か直接聞くべきだと思った。
 直後ピクリと動く黒装備の指先。
 彼方と姫乃が反応した。姫乃は喉元に刃を押し当て。彼方は縫止にて抵抗手段を奪う。
「答えてもらおうか」
 龍哉がどすの利いた声でそう告げた。すると男は笑いながら話しだす。
「我々、非生命市場論者、俗称ノイマン」
「なに?」
 意味が分からず龍哉はそう問いかけ直す。
「我々は全ての命ある物を憐れみ、命なきものによる統治を願う」
 反射的に威月はエリザを見た。
 命亡きもの、その意味とはまさか。
「お前は生きている、そうだろ? 言ってることがめちゃくちゃだ」
 彼方がそう叫んだ。
「命ある、ということは同時に失うことだ。失う事とは同時に心あるものを狂わせる。私たちは何も本当に命を否定したいわけではない、失うことによって心苦しめられる万物を救いたいのだ。故に告げる。痛みを捨て命を捨てよ。我が手をとれ、理想はここに」
「宗教家か…………」
 面白くなさそうに一真が告げた。
「仰ぐ神は存在しないがね」
「それが私とどういう関係があるの?」
 エリザが倉庫の隅で震えながらそう言葉だけを差し向ける。
「あなたは永遠に失われない存在、人類は皆あなたになるべきだ。そのためにまず、あなたを手に入れる」
「勝手よ!!」
「そうかな?」
 男は笑った。
「私は私であるために生まれたから、あなた達の期待には応えられない。私は…………」
「それはあなたが失うものを自覚していないから言えるのですよ。なるほどそこからか。次は貴方の大切な人たちを殺しにくる」
「え?」
 その時姫乃の構えた刃を男は手に取った。そして、勢いよく首を滑らせると、血の雨が降る。
「また、お目見えしましょう」
 笑いながら死んだ男は救急車が到着するまでに動かなくなった。

 エピローグ
 黒装備の男たちは一様に自害していた。歯の奥に毒。拳銃による自殺。手法は様々だったが街中で集団死亡事件が発生した衝撃は瞬く間に人々に広まった。
 先ほどの比ではないほどに事件現場は騒がしくなる。
 その死体や現場を調査する彼方。
「さて、何が残るか…………」
「まずは地道に、じゃな…………」
 対して、沈んでいるエリザを励まそうとしているのか周りにはリンカーたちが集まっている。
 たとえば槇もそう。
「握手! お願いしますお! あとサイン下さいお! 2ショットも頼みますお! あとついでにおっぱ」
「おっぱい?」
「OK兄者、あんたが刑務所にブチ込まれたいようだな」
 そう誄に引っ張られて退場する槇であった。
「うーん、んー」
 事件のショックと、慣れない会話内容に戸惑いしかないエリザである。
 そんなエリザを遠巻きにメテオバイザーが見つめていた。
 そんなメテオバイザーにため息をついて言葉をかける國光。
「エリザに会いに行くの禁止!
「え~!?」
 はじかれたように振り返るメテオバイザー。
「前にエリザを守りに行った時、ウイルスがどうとか聞いた」
 そう暗い顔を見せる國光。
「もし、敵の因子とかオレ達の中にあったとしたら……狙われているエリザが危ない」
 だがまだ何かを胸に秘めていることはメテオバイザーの目から見ても分かった。
 だからメテオバイザーは頷くことしかできない。
「オレ達の安全が保証されるか、水晶の乙女が討伐されるまで、なるべく会わない方が良い
「む~……意地悪なのです 」
 ただ、國光は今回の事件ガデンツァとは関連が薄いと考えていた。
 新興宗教…………で済めばいいが、組織された動きと資材。何かが動き出しているように感じた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • Foe
    灰燼鬼aa3591hero002
    英雄|35才|男性|ドレ
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • ひとひらの想い
    無音 彼方aa4329
    人間|17才|?|回避
  • 鉄壁の仮面
    那由多乃刃 除夜aa4329hero001
    英雄|11才|女性|シャド
  • もっきゅ、もっきゅ
    依雅 志錬aa4364
    獣人|13才|女性|命中
  • 先生LOVE!
    aa4364hero002
    英雄|11才|女性|ジャ
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
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