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広告塔の少女~海と山の間よりきみに~
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行動表明、もしくは旅のしおり。
最終発言2018/07/25 04:12:02 -
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最終発言2018/07/25 04:00:25
オープニング
● 湿っぽい雰囲気を置き去りに。
飛行機がとんだ、前日は台風が通過し長くそれが居座れば飛行機は飛ばないという、はらはらな状況であったが。
本日。朝の九時四十五分。
首都近郊の空港よりグロリア社印を背負った飛行機が離陸した。
目指すは。
南の島である。
「こんな時に遊んでいていいのか? ですって?」
全席ファーストクラス並みのシートであり、目的の島までの八時間苦痛は感じさせないその作り。
遙華のお気に入りの飛行機である。
「その答えはイエス。こんな時だからこそ。私たちは私たちの守るべき日常を、再確認するために」
そんな向けられたカメラにつらつらと、真面目くさった論理を展開するあたり、まだ普段の自分に戻りきれていないようだが。
ちなみにこれはオフ風を装ったドキュメンタリー番組である。
グロリア社の活動。先日あった愚神たちとの大きな戦い。
それに傷ついたリンカーたちは何を思い、これから何を目指して戦い、なにを思って生きるのか。
そんなリンカーたちの本音に触れる番組を目指すらしい。
と言っても、リンカーの護衛を名目についてきているリンカーからすると、完全なるバカンスかもしれないが。
「この三日でリフレッシュしたら、やることをやらないと」
そう遙華がカメラに向かって告げると、アイマスクをした。
寝るという意思表示らしい。
目的の島まであと7時間。
● 日常、原風景。
今回は皆さんの日常を収めて世に流そうという番組コンセプトです。
前回の愚神との戦いではH.O.P.E.という組織自体が攻撃対象に選ばれ。
人員、評判ともども大きな被害を受けました。
その事件で一番傷ついたのは当事者であるリンカーたち。
そのリンカーたちへの風当たりは落ちついてはいますが、まれに強く当たる人物もいます。
そのような風潮を少しでも取り除くために、リンカーも人間であるというテーマで番組を作成することになりました。
皆さんは、この南の島を舞台にぜひ日常を過ごしてください。
そして今回の撮影で意識してほしいのは三つです。
・語りかけ
画面の前の皆さんにメッセージをお願いします。
愚神狂宴の件を受けた、一般人への想い。
直接的な思いでいいです。恨み言や辛かったという気持ちの吐露でも構いません。
自分はあの事件の最中こんな心境だった。
あの事件のあと自分はこうだった。
そんな話でも構いません。
・見栄え
日常を楽しんでいるシーンをお願いします。
煌いて見えるほどの笑顔がテーマです。
町に駆り出してもいいですし、水辺でデートもいいです。
花火をしてもいいでしょう。
夜はBBQでも。
ある程度イベントは企画されていますがそれ以外の時間はフリーです。
なので、自分から他のリンカーを誘って遊ぶのもいいでしょう。
遊具は一通り持ち込みありなので。
・未来への希望
今後自分はどうしていくか。
そんな暴露大会を二日目の夜、浜辺で行いたいと思います。
たき火をたいて。
空を見上げながら。
将来どうなりたいか。もしくは、どうなっていたらいいなとおもいますか?
と質問されるので答えてみてください。
という内容ですが。少々臭いでしょうか。
人によっては参加しがたい場合もあります。
そんなリンカーは護衛のためにやってきたのだから撮影には出ないと言って、撮影は無視していただいても構いません。
● 島での過ごし方。
基本的に自由ですが。イベントが三つ企画されています。
1 一日目の夜にパレード
パレードは水着の男女が大勢参加し。かがり火や松明片手に、神輿や移動ステージなども利用して町を練り歩いています。
火の神を崇める祭りだそうです。
このパレードに参加していただくのも一つの楽しみですが。
参加する場合水着で参加してください。衣服に炎が燃え移る可能性があるためです。
2 二日目昼。海底調査
実は海底に沈んでる何かしらから霊力がしみだしているそうで、その調査も御願いされています。
ちょうど愚神狂宴が始まった時期に漂着したものらしいです。
海底87Mの薄暗い一帯に沈んでいるのですが。
この調査をお願いします。
見つけられるのは船の残骸です。
中に何があるかは明けてからのお楽しみ。
3 二日目の夜に肝試し。
夜に船をだし洞窟のクルージングをします。
ここでは海賊たちが宝を隠す際に取り分を巡って争い、殺し合った結果誰も帰って来れなかった。
それから洞窟に侵入する者がいると、骨となった海賊たちが襲いかかってくる。という伝説があります。
それを利用してリンカーたちを脅かす役を募集します。
そのストーリーをねつ造していただいても構いません。
その場合ストーリーを語ってくれる人も必要ですが。これも募集します。
解説
目標 みんなで休日を過ごす。
ポイントをまとめると下記になります。
・撮影を意識した休日を過ごす。
・海底探索を行う。
・一般人の皆さんにメッセージ。
● 島
島は米粒のような形をしており、とがった先端に大型船舶が六隻繋がれた港。
そこから真っ直ぐ二キロほど島の中心に進むと町に出ます。
町は山を北側に半径15キロ程度の円状で広がっており。人口は4000人程度。
山がある北側に行くほど暗くなり、カジノや風俗と言った怪しい店が多くなりますが。観光をメインにした街なので、綺麗でフルーツと魚の屋台が立ち並んでいます。
日本人向けのお店も多いです。
山の背後は切り立った崖となっており、海にまっさかさまです。山は鉱物を多く含んでいるせいか草木があまり育ちません。
ただ、この山には古くから神がすみついているといううわさで。鉱石採掘をしようとしても神に邪魔されると言います。
霊石の鉱脈が有るのではないか。そう噂もされていますが。とって来れる状況ではありません。
● 遙華について。
彼女も遊びたいようですが。
遊び方を忘れてしまっているようです。
本でも読んでいるつもりになっているようですが。直射日光は嫌いだそうで。部屋に閉じこもりそう。
よければ町や海に連れ出してあげてください。
その時に、彼女の気を紛らわすために、みなさんの趣味を教えていただけると嬉しいです。
リプレイ
プロローグ
気候としては穏やか、日本より熱いはずなのに日本より過ごしやすく感じるのは新天地で胸躍らせているからだろうか。
「……む、ようやく着いたか」
そう『麻生 遊夜(aa0452)』が背をのばして、サングラスをかけると『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が腕にすり寄ってくる。
「……ん、ぐっすりだったねぇ」
そう半分寝ぼけている遙華の頭をワシャワシャとかきまわすと、遙華はぽやっとした声のままに告げる。
「もうついたの?」
そのまま宿泊施設に送られる一行。
つくなり『禮(aa2518hero001)』は水着バック片手に飛び出していった。
「じゃあ兄さん、わたし行ってきます! あ、遙華さんもどうですか?」
禮はフィンスイミングで海を楽しむ。
「フィンスイミングってなに?」
遙華がそう『海神 藍(aa2518)』に問いかけると、藍が答えた。
「尻尾のついたスイミングだとおもってくれ」
告げると藍は遙華を一瞥した。見れば肌もカサカサで、メイクでごまかしたのだろうがクマが見える。眠れていないのだろうか。
「……今は、息抜きの為の時間が必要だね」
「え?」
「はーるかちゃーん、あーそーぼー!」
首を振る遙華の腕を後ろから少女たちがとった『卸 蘿蔔(aa0405)』と『水瀬 雨月(aa0801)』である。
「二人とも、げんきね」
「せっかくの南の島ですから」
蘿蔔が告げると雨月も頷く。
「そうえば、番組の撮影…………。こういうのは随分と久しぶりな気もするわ」
そう蘿蔔は遙華に飲物をさしだしてまずは町を見て回ろうと連れ出した。
その後ろから『レオンハルト(aa0405hero001)』がつき従う。
「へぇ、カジノあるのか…………行きたかったな」
「本当に目的はカジノなんですかね? 近くのお店だったりするんじゃ」
そういぶかしむ蘿蔔に首をひねる雨月と、顔を赤らめる遙華。
「いや、というかカジノも行かないって。子守あるし」
その何気ない発言が。のちに蘿蔔を狂わせることになるのだが。
それはまた別のお話である。
第一章 海と町へ
少女三人組は海へと走る禮の背中を追いかけた、大きなスコップのような水かきを背負っているというのになかなかな速度である。
そして浜辺で禮は両足をその人口ひれに突っ込むと海の中に飛び込んだ。
「と言っても私、実は泳げないのですけどね」
「え…………っとじゃあ、何をする?」
遙華があたりを見渡すと砂浜にスコップが突き刺さっているのが見えた。
「お城を作りましょう」
その言葉に頷いた遙華は後に後悔することになる。
お城と言ってもせいぜいが砂の山に旗を立てる程度だと思っていたのだ。
しかし蘿蔔はこう見えてアーティストである。
ああ、脚立を持ってきた段階で察すればよかったのに。いつの間にか蘿蔔の身長を越える砂の山があって、それを削るような形でお城が形作られていた。
「え? 本格的」
「遙華ならこういう設計? 得意かなと思いまして。あ、私もこう見えて手先は結構器用なのです。えっへん」
そう城壁の質感を刷毛を使って再現しながら言った。
「できたぜ見て見て! エルツパンテオン松本城!」
「どこのお城よ」
そう砂まみれになりながらも完成品を眺める雨月。
豪奢な城が海辺に完成した。
「あ、皆さん言い忘れてました」
その時禮がお弁当のケーキを食べながら三人に歩み寄る。
「そろそろ月の関係で満ち潮です」
直後高波が少女三人を襲った。禮はその波を利用してすーいーっと海に戻っていく。
「おうおう、やられたな」
水を滴らせながら立ち尽くす少女三人に遊夜がタオルを持って歩み寄る。
「お城が」
水のひと撫でによって精巧なお城は砂の山と化した。
その光景に遙華は小さく吹きだしながら。
「こんなアニメみたいなことある?」
そう言って笑う。
その姿に雨月と蘿蔔はほっと胸をなでおろすのだった。
精神状態は回復に向かっているのかもしれない。
少なくとも、笑う余裕があるのはいいことだ。
「それにしても遊夜は何をしているの?」
遙華が問いかけるとユフォアリーヤがバケツの中味をみせた。
中にはそこそこの大きさのとげとげしい魚が沢山。
「ここはいいぞ、投げ釣りも、糸をたらすだけでもそれなりに食いつく」
「…………ん、でも食べられるのと食べられないのがいる」
そこでポイントを変えてまた釣りにいそしもうとしていたのだが。
「ここは遊泳エリアだから別のところじゃないとだめね」
そう遙華が指差した向こうへと遊夜は歩きはじめる。
「ここらで釣れるのは何だろうな?」
「……大物だと、良いねぇ……BBQで焼くの」
そんな夫婦の背中を見送る少女三人。
「つかれちゃったわ」
そう遙華が告げると雨月がもらったタオルでその頭をワシャワシャとやる。
「遙華はインドア派だし、外での作業は辛かったかもね」
「だ。大丈夫でしたか?」
蘿蔔が遙華の顔を覗き込む。
「大丈夫、たまには太陽の下に出ないとね。発酵しちゃうわ」
「そろそろ家に戻って夜のお楽しみのために体力を温存したら?」
告げる雨月、首をかしげる遙華。
「忘れたの? パレードがあるのよ」
夜はお祭りがあるらしい。日本のお祭りと違って人でごった返すこともなく、出店も変わり種が多い。
ケバブを店先で焼いていたりするが、ケバブはこのあたり発祥の食べ物だったろうか。
そのパレードの列に参加している遊夜を見た。
遊夜はパレードの神輿に乗りながら燃えたつ松明を四本持ってジャグリングする。
乗ってくれば、前方を歩いている神輿に乗ったユフォアリーヤに松明を投げわたし。
松明をどんどん増やしてジャグリングする。
そんな麻生夫妻に手を振ると、二人は空いた出て振替してくれた。
「こういう芸当は十八番でな」
「……ん、火の神様に……全力で、捧げる」
きっと神様も大喜びだろう。
「えへへ…………遙華と仲良くなってばかりの頃、一緒にステージ立ったの覚えてます? 落ち着いたらまた色々チャレンジしてみたいねぇ」
そう蘿蔔が告げると遙華は昔を懐かしむように笑う。
「ふふふ、そうね。その前は顔出しNGだからって言って。テレビに映るの拒否してたのに。いつの間にか。最初はレオンハルトが主体になって活動していたのよね」
その言葉にレオンハルトは苦笑いを浮かべた。
「ばれてたか」
両手に乙女たちの食料をぶら下げたレオンハルトは遠い目を夜空の向こうに向ける。
あの時はたいへんだった。
「あ、あっちに何かあるわ。見世物小屋? お化け屋敷みたい。いきましょう」
そう告げると遙華は雨月と蘿蔔の手を取って走り出す。
少女の笑い声が空に伸びるように響く。
その祭風景を背景に、蘿蔔が立ちカメラに視線を向けている、行き交う人々、その全てが蘿蔔など目に入らないかのように流れていく。
そんな中で蘿蔔は混乱した世界を思う。
だまし傷つき、傷つけた人々へのメッセージ。
「私たちも普通の時を生きています」
傷ついた少女も前をむき、歩き始めている。
「その、希望を…………捨てないでください。今はまだ、見えないかもしれません。でも、いつかきっと、見つかる時が来るはず、です」
その撮影が終われば、子供たちは宿に戻る。
ただし、大人にとってはこれからが本番である。
カジノに乗り込む遊夜。
カメラが意気込みを尋ねると遊夜は自身まんまんな様子。
「ギャンブルは金持ちの娯楽である」
頷く遊夜。
「……ん、質素倹約……質実剛健が、モットー……でもたまにはいいよね!」
その夜、四時間ほど遊んだようだったが結果は、プラスマイナスゼロと言ったところだった。
はじめてにしては大健闘だろうか。
第二章 二日目
二日目の朝は優雅な朝食の後。沈没船探索に費やされた。
「霊力反応ですか…………なんだろうなぁ。オーパーツだったりして」
共鳴して海に潜る蘿蔔をはじめとしたリンカーたち。発見されたのは錆びつき、朽ち果てた船の残骸だった。
「え? こわ、怖いのですけど?」
蘿蔔は主導権をレオンハルトにゆだねる。
――可能な限り、周囲を照らさないで。何も見ないでください。
「いや、無理だから」
一見ホラーな外観。遊夜と藍はその中に嬉々として潜って行った。
――……これは、船?
「ほぅ、沈没船に霊力……お宝か、ロマンだな!」
幽霊船の中では危険が予測されるため共鳴は必須だ。遊夜は幽霊船の重たい扉をレーザーカッターで切り裂くと中に突入していく。
――昨日潜ったときぼんやり遠くに見えたんです、今日行ってみようかと思ってたんですけど。
そう語る禮。例の指示で藍は船長室にたどり着き。
「暗そうです、ウェポンライトを使いましょう」
謎の木箱を発見する。
その木箱の解析はまた後日。
解析のためにグロリア社に戻ろうとする遙華。
「こんなとこで何やってんだ、遊びに行くぞ!」
「は! 無意識のうちに体が会社に行こうとしていたわ」
そんな社畜具合をかわいそうに思ったユフォアリーヤは遙華の頭をよしよしと撫でる。
「……ん、さぁ……こっち、こっちだよー」
そう二人に連れられて午後は町に買い物にでかけた。
「ここはフルーツが美味いらしいぞ」
そう器用にナイフで果物をむく遊夜。
「……ん、こっちはお魚……調理法が、気になる」
昨日の魚は煮物にして食べた、今日はムニエルなどが食べたいと遙華が言った。
「そう言えば好き嫌いとかあんまり気にしてなかったが、どんなのが好きなんだ?」
「うーん、インスタント食やブロック食以外の、味がはっきりしたものなら大抵好きよ、苦くても酸っぱくても」
たぶん、普段からカップめんやブロック食のお世話になっているのだろう。
ユフォアリーヤは遙華がかわいそうになって頭を撫でた。
「好みが変わることってのもあるしな、俺も最近は肉より魚に……歳を取ったせいだろうか?」
そう難しそうな顔をする遊夜。
「私もお魚の方が好きよ、だから大丈夫」
それは遙華の体にもがたがきているという事ではないか、という言葉は飲み込んでおいた遊夜だった。
そして夜になれば、誰が言いだしたが肝試しすることになっていた。
「だ、だめよ、スケジュールに肝試しが組み込まれてるのだもの」
そう震えながら雨月に縋り付く遙華と、膝が震える蘿蔔。
「もうやだぁ…………もうやだぁ。帰るー」
「まだ入ってないぞ」
レオンハルトがにこやかに告げた。雨月はこの期に及んで小説を読んでいた。タイトルは、インスマスの…………。
その裏で大人たち+禮は何やら示し合っている様子。
「海の怪談と言えば人魚はつきものです。やっちゃいます!」
肝試しが始まった。船はゆったり暗い洞窟内に進んでいく。
「そういえば、禮に聞いたんだが……この洞窟、人魚も出るんだってね?」
「それは、ロマンチックですね」
そう蘿蔔が少し調子を取り戻すが。藍は言葉を続ける。
「はたしてどうだろう…………その人魚はね。海賊の一人に見てほしくて、必死に宝を集めたんだ。でも海賊は宝を見るばかりで…………」
その時水音が聞えた。遙華がヒット短い悲鳴をあげて、そちらを見るが誰もいない。
「しまいに歌で海賊を狂わせて、殺し合いをさせてしまった彼女は、今でも水底で泣いているのだとか」
その時ボートにつるされた灯り、それが創るシルエットが躍った。
「なに? なになになに?」
遙華が雨月の腰にしがみついてあたりを見渡す。
「ああああ。遙華! 人影が躍ってます」
「そ、そんな訳ないわよ! 蝙蝠よ」
その時、ボートのふちに小さな手がかかる。そして。
「どうして……どうして私を見てくれないの……? どうして……? ああ……あぁぁぁ」
謳うような、悲鳴のような声が洞窟に木霊した。
その声に、きゅう、っと意識を失った遙華、その腕に手を伸ばす禮だったが。
その霊の頭を藍がハリセンで叩くと。
「きゃふ」
可愛らしい声が聞えた。
「人魚さん、やりすぎだよ。さ、そろそろ帰ろう」
「ふふ、ごめんなさい、つい楽しくて」
「え? お化けさんは禮さんだったんですか? 脅かさないで下さいよ」
その時叩かれる肩。
振り返ればそこには頭に海草をはりつけた遊夜が立っていた。
きゅうっと無言で、蘿蔔の意識も闇に連れて行かれてしまう。
エピローグ
肝試しの終わり。意識不明の少女二人が目覚めると空には満点の星空が広がっていた。
たき火がぱちぱちと爆ぜているので寒くはない。
「みんなありがとう」
そうあたりを見渡して遙華は告げる。
「この旅行中、ずっと私の気を使ってくれていたでしょう?」
「ううん、私こそお礼を言いたいのです」
蘿蔔が言った。
「実はね…………遙華を励ますためにーって参加したんだけど、私の方が楽しんじゃったというか、すごく元気出た」
「遙華も少しは休めたかい?」
そうレオンハルトが問いかける遙華が頷き蘿蔔が笑顔を向ける。
「すごく楽しかったねぇ。えへへ、企画してくれてありがと」
「大変なのは私だけじゃない。そんな中で頑張ってくれたから、みんなに還元できないかなって」
「愚神狂宴の件ね……」
雨月が本を閉じて頷く。
「あの事件以来、H.O.P.E.の見方は変わった。もともと奇異の目で見られる事もあったし、その延長線上かしら。
誰かを助けても感謝される事もあれば、悪態をつかれる事もあったしね。
自分より家族が気がかりだったわ。とばっちりを受けていないかとか」
あの事件は怖かった。今まで味方だったものが敵に変わっていく恐怖。
それが今でもリンカーたちの中に残っている。
「闘う理由を見つめなおす良い機会でもあった……でも、一ついうなれば…………寛容さを忘れないでほしい」
藍は言うこの世界が優しく在る為には、それが必要だと。
「わたしは……あなたたちの日常を護る為に戦います。変化があっても、破壊の無いように」
そう守護の人魚姫は告げる。
「ちっぽけな願いでも、私はその平穏が大好きですから」
そう誰でもない誰かへと禮は思いを込めて伝えた。
「私たちはこれからどうなっていくべきなのかしら」
その言葉に禮が答えた。
「遙華、あなたはどうしたいのですか?」
「遙華さんは……希望は持てているかい?」
その言葉に遙華は頷いて答える。
「ロクトともう一度話をしたい」
その言葉に頷くと禮は微笑んだ。
「あなたがどうしたいのか、何を望むのか、それを忘れないで」
「藍は?」
遙華の問いかけに藍はこう答えた。
「私は、いつも通りだ。それ以上は望まないし、もうそんな幸福な夢は見れない」
告げて立ち上がると藍は言う。
「だが、そう。この先の未来は、いまよりもっと、世界が優しくなっていると、いいな」
「皆と……変わらず仲良く、いられたら良いなって。今みたいにいっぱい一緒にいるのは、難しいかもだけど……それでも」
蘿蔔が噛みしめるように告げる。その言葉に雨月が続いた。
「将来はどうなっているかと言われても今でも割と精一杯ね。
もし平和になったら旅でもしようかしら」
「その時は私がサポートするわ、ぜひ声をかけて」
たき火の木が燃え落ちて音をたてる、その爆ぜる音が絶えぬようにリンカーたちの会話も耐えることが無かった。
このままどこに向かうか分からない未来。それぞれの意志を導に。これからも戦いつづけようと誓う。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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