本部

広告塔の少女~穢れを受けて~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~12人
英雄
5人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2018/07/19 14:46

掲示板

オープニング

● ミラクルアイテムにご用心。

 数十年前。異世界との扉が開いた影響でもたらされた霊力技術。
 霊石や、それを由来とするマジックアイテム。
 その発掘と研究もグロリア社の任務であるが。
 大抵の場合、発掘された品というのはややこしい。
 装備者を暴走させてしまうアイテムしかり。遺跡そのものが何らかの機能を持っていたり。
 ただ、それを解析することは大いに技術開発に役立つので遙華は積極的に行っていたが。
 その積極性が今回あだとなる。
 それは装備者を従魔へと近づけてしまう品だった。
「ままま、まずいことになったわ」
 グロリア社に運び込まれたマジックアイテムがまたも異変の兆しをみせている。
 それは封印されていた四つの秘宝。
 透き通るようなマント。
 アメジストのブローチ。
 黄金の錫杖。
 黒曜の冠。
 それらすべてが輝きを帯びると周囲のリンカーに勝手に装備され。そして大惨事が始まった。
 


● 愚神フォーム

 このアイテムを装備すると一時的に愚神の力が流れ込み暴走してしまうようです。
 原理は邪英化とおなじですが。このまま装備者を放置してしまうと愚神になる可能性もあるので早急に対処をお願いします。
 この愚神化ですが。性格が悪方面に引っ張られるだけで、意識を失ったりはしないようです。
 人間は常に善の心と悪の心を持ちますが。
 その善の心が消えてしまうようですね。
 そのため冷酷。残虐非道と言った、その人物の隠された一面がのぞくことでしょう。
 愚神化したリンカーの目的はこの包囲網の突破。
 ただ、何故かリンカーたちは共通して「王のために」という言葉を口ずさむようです。
 さらに装備するアイテムによって特殊な能力が追加されます。

・透き通るようなマント
 装備すると衣服が透けたり破れたりして肌の露出が上がります。局部を露出することはありませんが、それでも目をそらしたくなるような衣装です。
 また攻撃すると対象の衣服を消し去ることができます。もちろん局部が露出されることはありません。
 またこのマントを装備したものはスキル『潜伏』が三回使用可能になります。 
 このマントは束縛から脱却を望むものと相性がいいようです。

・アメジストのブローチ
 膨大な霊力を秘めたブローチです。そのブローチの表面に多数の顔が見えることから命を封印して力をため込んだのではないかと憶測がたてられています。
このブローチは魔法攻撃力+500のAGWとして扱うことが可能ですが、一度使うと生命力が-10されます。
 さらにこのブローチで生命力が減っても戦闘不能にはならず、生命力がマイナスの値でも使用可能です。
 つまりこのブローチを使いすぎると重体。キャラクターロストがあり得ます。
 このブローチは自己犠牲を好むもの。自分自身が嫌いなものと相性がいいようです。

・黄金の錫杖
 この錫杖を装備すると、衣服が豪華になって動きづらくなります。
 さらに装備も豪華になって巨大化。自立機動など行うようになります。
 移動力とイニシアチブが半減する代わりに。自身は一回の手番で三回攻撃できるようになります。
 まるで攻撃要塞です。と言っても防御力は上がりませんが。
 この錫杖は普段から尊大な態度をとるリンカーなどと相性がいいようです。

・黒曜の冠
 重たい冠です。これを中心に重力を操ることができるようになり。
 さらに背中に翼が生えます。
 重力を操ると空を飛ぶことができます。
 重力フィールドは自分へのダメージを2割カットする能力を持ちます。
 この装備は起源を神とする英雄などと相性がいいようです。





解説

目標 洗脳リンカーを止める。

 今回はリンカー最大4人と残りのリンカーのチーム戦を意識してみましたが。
 邪英化するリンカーは最低一人でもOKです。
 そしてこのアイテムは同時装備できます。
 全て装備した場合のパワーはすさまじいことになるでしょう。
 また装備者と相性がいいとまだみぬ力が発揮されたり。アイテムに封印された情報を得ることもできるかもしれません。
 もし、万が一邪英化希望者がいない。枠が余った。となった場合遙華が敵になるのでよろしくお願いします。


● 戦闘フィールドについて。
 実験施設は広大でテニスコート四面分くらいの広い空間です。
 ただ、この中でリンカー十人以上がやりあうのは辛いと思うので。壁をぶち破って外に出ていただいて構いません。
 屋外は林と川が広がっています。
 ただ、屋外に出してしまうと逃走が容易になることに注意してください。

リプレイ

プロローグ

 その装備品が運び込まれたグロリア社は興奮に包まれていた。 
 なんでも古代のアーティファクトだの、異世界からの贈りものだのてんやわんやである。
 そんな中リンカーたちも調査協力を受けて研究室内でアイテムたちを見ていたのだが、そのうち一つのオーパーツに『無明 威月(aa3532)』の目が留まった。
「おい、威月」
『青槻 火伏静(aa3532hero001)』が声をかける。
 威月の視線はアメジストのブローチに注がれている。
 それは膨大な霊力を秘めていること以外よくはわかってない代物であるが。
 威月も女の子だ。お洒落でもしたくなったのだろうか。そう思った矢先おもむろに威月がアメジストのブローチを掴みあげ、そして首にかけた。
「ええええ! 威月!!」
 遙華が驚きの声をあげる、するとアメジストから膨大な霊力が発せられ火伏静が強制的に共鳴させられた。
「聞こえます」
 威月は熱にうなされたような表情で告げる。
「誰かの声が」
 体が浮かび上がっていく。それを見た『彩咲 姫乃(aa0941)』が叫んだ。
「またやらかしたのか西大寺!」
 思わずそう叫んだとしても仕方ないほどいつものトラブルであるが。事態はいつもの事で済まされないほど切迫している。
 次いで他のアイテムも動き始めた。
 ひらりと透き通るようなマントが姫乃に飛んできたがそれを叩き落とす。
 素早くそのマントをまきとって風呂敷のように縛ると適当なゴミ箱に叩き込んだ。
 暴れるゴミ箱。
 だが他のアイテムは依然として威月の周囲を漂い。その力を融和させようとしている。
「オナカスイター」
『メルト(aa0941hero001)』がつぶやいた。
 黒曜の王冠。黄金の錫杖。それらが反発しながら、引き寄せられつつ威月の周りを浮遊する。
 放たれる霊力の波動。
 それから研究員を庇って。『煤原 燃衣(aa2271)』は叫ぶ。
「威月さん! 意志を確かに」
 そうは言いつつも燃衣の胸の内は無力感と自罰意識にあふれていた。
 自分が近くにいながら、怪しげなアイテムに、愚神に、仲間を乗っ取られた。
 奥歯をかみ砕きそうなほどに噛みしめて燃衣は視線をあげる。
「ネーさん!」
「お前の失態だ、わかってるな?」
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』と共鳴。
 臨戦態勢を整える。
「西大寺ィ!! 明らかに放置できないぞ! ぶっ壊せば元に戻るのか!?」
 手加減はできそうにない、そう姫乃の直感が告げていた。
「アイテムは壊してもらって大丈夫、愚神は研究できない空。」
「最初からそのつもりだ。ぶっ壊すぞ」 
 そして無言で前に出る『イリス・レイバルド(aa0124)』その翼からは『アイリス(aa0124hero001)』の歌が響いている。
『阪須賀 槇(aa4862)』はスコープからアメジストを覗く。
 的確にアイテムだけ破壊できるとするなら、それは自分たちの役目だ。
「頼んだお、弟者」
「……もちろん、兄者」
『阪須賀 誄(aa4862hero001)』が答える最中、後ろ手にフラッシュバンを弄ぶ槇。
――……分かってると思うが。最悪の場合は……。
 ネイが全員に告げる。
「そんな事はあり得ないッ!」
 だが燃衣は否定する。
「簡単なことです……アレらをただ、ブチ壊す。威月さん、待ってて下さい。今助けます!」
 全員は被害の少なくするために別のフィールドに移動する。
 それを追って威月は研究室から出た。

第一章 穢れを払う

 真っ先に演習場にたどり着いたのは槇である。
 槇はパソコンを立ち上げる、周辺調査を買って出た。
「……OK! 兄者さまの《目星》判定ぇぇぇだお!」
――……しかし何も見つからなかった。
 いや一つだけ見つかった。これは燃衣が、何かアイテムを隠し持っている。
「威月さんからはなれろ!」
 そう岩場を足場に飛ぶネイ。
 その拳は胸のブローチめがけ放たれるも、錫杖でそれを弾いた。
 堕ちていく燃衣。
 その体に無数の魔法弾が浴びせられた。
 上がる爆炎、その中から燃衣は脱出。側面から姫乃が奇襲。
 ハングドマンを活用し飛び跳ねるようなヒット&アウェイでのかく乱する。姫乃の基本戦術である。 
 基本死角から。敵が攻撃しようとするならそれを遮るように姿を躍らせたりはする。
 それでもまだ様子見の段階。
 その姫乃へ威月が攻撃しようとしたので槇が牽制で射撃した。
 手で操られた魔法はその腕を打ち抜きそらすことで狙いがそれる。
 それ以外にも四肢への攻撃はストレスがたまる。威月の集中力を削るように槇は攻撃を仕掛けた。
 次いで威月は浮遊していた錫杖を手に取りそれを振るう。
 次の瞬間威月の衣服が十二単に変わる。
 煌びやかな振袖、結われた髪は見事の一言だが見惚れている暇はない。
 空中に浮かび上がる無数の魔方陣が槇と姫乃へ砲撃を降らせた。 
 メンバーの指針は統括されている。威月の体に与えない様に、装備品を破壊する方針だ。
 そのため燃衣は拳であることにこだわった。斧だと細かな操作ミスで威月に危害を与えてしまうから。
 燃衣は二度飛びかかる。回し蹴りからの爆炎で体勢を調整し膝蹴り。
 防がれた反動を利用してかかとをめり込ませるような蹴りで威月を地面に叩き落とし、燃衣は着地する。
 だが格闘戦に関しては威月にも心得がある、何せ武家の娘。
 練度がもろに出る戦いとなるが。それは仲間たちの力を借りて乗り切るしかない。
 イリスが背後から迫る。
 その刃が威月を捕える前に、頭に冠が乗り、重力の波動でイリスの刃がそれた。
――ふむ、邪英化スキルのアイテム版といった所か。
 あわててイリスはバックステップ。距離をとる。
「なんとなくオーラでわかるのも嫌な縁だよね」
――まぁ、あまり時間をかけるのはよくないだろうね。
「だね。なら多少荒っぽくても」
――救助活動だ、多少の傷くらいは目を瞑りたまえ。
 そうイリスは地面を蹴り矢のように威月へと臨む。
 そして槇の銃弾は冠を装備したことによって、一気に通りが悪くなった。
「くっ! 威月たんに取り憑くだなんて! なんてケシカラン道具だお! この槇様が成敗してくれるお!」
 そうマガジンをはずし腰から別のマガジンを引き抜く。
 模擬戦用のゴム弾を装着、こうしなければ万が一が怖かった。
 ゴム弾でもサイト越しに仲間の顔は見たくない。
 そう思うのが槇だ。
「ぬぐぐ……ゆ、許してくれお威月たん!」
 放つ弾丸は重力波でそらされるが視界を覆う。側面から挑む姫乃と燃衣。
「威月さんから……離れろぉおおおおッッ!!」
 猛烈なラッシュ。爆炎を纏いその勢いでノンストップの攻撃を仕掛ける燃衣は焦っていた。
「…………たいちょ……」
 まだ意識のあるうちにはやく、そう願わずにはいられなかった。
「返して貰おうか! ウチの受付嬢を……大事な仲間をッ!」 
 その言葉に威月が反応する。
 首を人形のようにかくんとひねるとブローチと王冠が輝いた。
 二つのアイテムがリンク。膨大な重力波が燃衣に浴びせられ燃衣は吹きとんだ。
「に、逃げ……逃げて、下さい……」
 天空に巨大な魔方陣。そこから地表を変えそうなほどに降り注がれる魔法弾。
 それがリンカー全員に突き刺さる。
「……殺して、殺して下さい……私が、誰かを傷付ける、その前に……」
 告げながら威月は涙を流す。
 仲間を傷つけている自分が許せない、愚神に抗えない自分が許せなかった。
「……殺……す……殺し、ます……殺します! みんな!」
 瞳が染まっていく、声が金切り交じりの叫び声に変わる。
「……死ね死ね死ねしね、皆死んじゃえ……私も私の周りの人も私が生まれた悲しい世界も……」
「威月さん……」
 立ち上がる燃衣。その脇をもうもうと立ち込める砂埃が通過していった。
 次いで燃衣の体を襲う重力波。
「あなたは今、何を見ているんですか?」
 威月が見ているのは。
 無限の怨嗟。
 何百何千という理不尽な死が無限に再生される。
 奪われ、憎まれ。殺され。無残に捨てられる。そんな結末の祭典。
 それをみて威月は涙する。
 そんな結末を導いた誰かがこの世界、もしくは別の世界にいると思うとぞっとした。
「……『あの人』の思想が……良く分かり、ました。この世界は……穢れに満ちています……だから、こんな世界! 穢れた私と一緒に壊れるべき……なんです! 全ては『王のために』ッ!」
 ただ、それは自分も、だ。
 自分も今、仲間に拳を振り上げている。
「そうでしょう隊長! あぁああぁああぁあぁあああ!!」
 威月が拳を振り上げた。その拳は百倍の重力を伴って燃衣に叩きつけられる。
 それを燃衣は真っ向から受け止めた。
 血を吐きながら懸命に耐える燃衣。
 まるで天地が逆転し背中から落ちそうなのを二本の足を地面に突き刺すことで何とか耐えている。骨と筋肉が悲鳴をあげる。
――……わりいなぁ。俺も威月と同じだ。だから……証明してくれよう、そうじゃねぇ、ってよう?
 火伏静が告げる。その言葉に燃衣はにやりと笑っていった。
「それを証明するのは僕の役目じゃありません。ありがたいことにね。威月さんを大切に思う人はたくさんいるから」
「ああもう、言ってる事が支離滅裂だ!」
 姫乃が血を吐き捨てながら叫んだ。
「大体王って誰だよ!? この道具の本来の持ち主か! 無駄に偉そうなものがそろってるもんな」
 そう姫乃は頭の冠を指さす。
「この世界が穢れでしかねえなら、俺の見つけた光はまやかしか!? ――そいつばかりは認められないな!」
 姫乃はペンダントを握りしめた。ひかりはすでにある、夜照らしてくれるひかりも、よりそってくれる光も。
「それでも穢れが無くならないってんなら、真っ先に切り開いていく! そういうもんだろ、俺たちってのはさ!」
 威月の拳がついに燃衣を吹き飛ばす。
「たのみましたよ」
 その背後からスイッチするように威月の眼前に現れたのはイリス。
「何を見たんですか? 辛かったですね?」
 イリスは柔らかく微笑みかけた。そして。
「けれど、それとこれは話が別です、あなたの辛さはゆっくり聞きます。お茶でも飲みながら」
 振るわれた盾は錫杖を巻き上げる。
 そのまま剣でアメジストを叩き割ろうとした。 
「煌翼刃・天翔華、重、螺旋槍」
 渦巻く霊力、花咲く翼。
「螺旋開花ッ!!」
 剣を中心に
 四光翼をドリル回転する槍に変化させ、包囲攻撃。
 それでアメジストを解体するつもりだった。
「まだああああああああ!」
 しかし威月は重力波を発してイリスの攻撃をそらした。
 胸のあたりを切り裂かれながらも後退する。
――……この手ごたえ、あのブローチ。
 アイリスは緊張をにじませた声で言う。
――どうやらあまりやり過ぎるのも良くないようだ。
「だったらどうすれば」
 燃衣がイリスの隣に立って耳打ちする。
――アイテムの方を優先的に壊すか。
「最初からそうしてくださいよ!」
「いや、本体を無力化するのは有効な場面は多いですよ。ただ今回は加減がしにくいってわかったからね、しょうがないよね」
――貴重な道具を破損する事になるグロリア社はご愁傷様と先に言っておこうか。

第二章 穢れを受け入れる。

 リンカーが体勢を立て直している間に威月は自分の傷を癒す。
 そして傷を癒しつつも威月は錫杖の力でリンカーを攻撃できる。現に威月は執拗に燃衣を攻めたてていた。
 燃衣は走って魔法弾を避け続ける時間を過ごす。
 しかし永遠に全速力で走っていられるわけではない。
「威月さん、タイム、タイム」
 告げると威月は首をかしげる。
「どう……したんですか隊長、わかっていただけたんですか?」
 全ての愚か者を滅ぼすしかないということに。
 そう威月はぎらつく視線を燃衣に向けるが、燃衣の主張は違った。
「違います。これ、これ」
 そう燃衣が差し出したのは『赤龍の胸当て』
 ルビーをあしらった胸当てであるが。
「これを差し出すので少し休憩時間をください」
「隊長!」
 その言葉に鋭く威月は声をあげる。
「その胸当てを装備するためには脱がないといけません」
 やけにはっきり言葉を話す威月。
「え? 胸当てだからそうですね」
「脱げと?」
 燃衣の顔が真っ赤に紅潮していく。
 次の瞬間上空から魔法弾が降り注いだ。
 その魔法弾で燃衣はズタボロにされ、光のカーテンで隠れている間に威月は胸当てを装備したらしい。
 怒りによって充填されるパワー。
「うう、本当は僕が装備したかったんですが」 
 なんとか逃げおおせた燃衣はイリスの盾の影に隠れる。
 このままではじり貧であるそう焦りが見えた時。
「畳み掛けるしかねぇな」
 そう姫乃が燃衣の背後によって耳打ちした。
「どうするつもりですか?」
「意表をつく」
 次いで姫乃が燃衣の影から躍り出た時には装備が変わっていた。その手に握られていたのはバルイネイン。
 遠距離武装など無いはずの姫乃が放つ一撃は威月を大いに混乱させた。
「今です!」
「OK隊長!《にゃっぽい》行くおッ!」
 燃衣の号令で放たれるフラッシュバン。
 威月の視界を光が焼く。
 次いで威月はミョルニルを投擲した。
 威月はそれを重力で何とかそらそうとするも防ぎきれず肩に当り、体をよろめかせた。
 燃衣とイリスが左右から迫る。
 燃衣が突き刺すようなつま先での蹴り。それを回避するためによろめいた威月を盾で受け止め上イリスは上に突き上げた。
 威月の体が宙を舞うとイリスが刃を突き出した。
「煌翼刃・茨散華!」
 チェーンソウのように回転する霊力の刃が錫杖を襲う。
「くぅ」
 威月は歯噛みしながらイリスの攻撃を錫杖で受けるしかない、その側面から燃衣が掌底を放つ。爆発する拳で吹き飛ばされた威月は地面を転がり。
 その回転力を生かして威月は弾かれたように起き上がる。
 そして視線を起こした先に姫乃がいた。
 転がる威月と並走していたのだ。
 電光石火の勢いで一瞬で距離をつめ。一気呵成に体制崩しと追撃。
 疾風怒濤の三連撃を叩き込む。
「一つ! 二つ! 三つ!」
 放たれるミョルニルの一撃は腹に突き刺さり、そのルビーの胸当てを粉砕する。
 いや、正しくは胸当ての金具が吹き飛んだ。
「焔の如く焼き尽くすッ!!」
「……それは、私のセリフです」
 威月の纏う炎が変化した、それは普段の聖なる。浄化の威月の炎ではなく。
 青く黒い、不浄の炎。
 それを脇に刺した刀に纏わせる、そして刀を抜く。
「……この穢れを持って、全てを焼き尽くす……! 劫火一閃!」
 振るった刀はすべてを飲み込む炎の波となってすべてを押し流そうとする。
 だがその攻撃範囲から逃れた男が一人。
 槇、いや誄である。
 スコープを覗く。
 あのブローチが真っ先に威月に取りつき意識を奪った。
 だとするとブローチを外せば一気に支配から逃れられる可能性が高い。
 だが、そのスコープの先には威月の豊かな胸が。
 その旨の上をブローチが跳ねている。
 外せば心臓を撃ち抜くことになり兼ねない。
 震える手で狙いを付け大きく息を吐く。
――……お、弟者! だいじぶだお! 天才の漏れの弟は、やっぱり天才だお! 天才の弟者が外すワケないお! 落ち着いていっけーーーだお!
 そう屈託なく言ってのける兄の言葉に苦笑いを浮かべる誄。
「……全く。人の気も知らないで……大体兄者の方が落ち着いてないだろJK」
 そうぼそりとつぶやくと誄の目つきが変わった。
「ほんと兄者はKYだなぁ」
 その時、精神が澄み渡り、そして指先の震えがぴたりと止まった。
「……OK、射線ゲット」
 放たれる弾丸は跳ねるブローチを捕える。
 それを威月の背中の方面に押し込むが。ブローチは首の横あたりを通過。
 銃弾の衝撃でわずかに引っ張られるがすぐに金具部分がはじけ。そしてアメジストだけが彼方へ吹きとぶ。
「あああああああ!」
 苦しみだす威月。
 その頭から姫乃が冠を奪う。
「煌翼刃・流絶蘭」
 イリスが地を這う光の斬撃で錫杖を破壊する。
「隊長!!」
 姫乃が鋭く叫んだ。
 あとは銅当てだけなのだ。燃衣は威月の胸あたりに手を伸ばす。
 錫杖の損傷が原因か、豪奢な衣装が半透明になる。
 その上からむしりとる形で燃衣が銅当てを回収すると、はじかれるように霊力が周囲に散った。
「やった、これで」
 そう希望に満ちた表情で威月を見る燃衣。
 しかし彼女は涙目で胸元を抑え。そして。
「いやああああああああ!」
 これまで聞いたことのないような大音量で叫びながら。燃衣の横っ面を殴り飛ばした。


エピローグ

「あ、あの、ほんとうに、すみません」
 燃衣は正座していた。
 肩を震わせる威月に遙華が大きめのタオルをかける。
「その、災難だったわね。でもみんな必死で」
「……はい、それは……。わかって……でも。きもちが」
 そうぐすぐすと、涙をこらえる威月。なんと声をかけたらいいか迷っている燃衣。
 その背後で、魔人が動き出す。
「……判決。有罪。刑は極刑」
 ネイがその大きな両手で燃衣の頭をがっちりつかむと、燃衣を引きずっていく。
 それを苦笑いと共に、槇と誄は見送った。
「で、なんだったんだお。あのアイテム」
「うーん、よくわかってないけど、ネイはやけに王って単語を気にしていたけどね」
 ネイは考えていた。『王の為に』の言葉の意味を。
 つまりこれは愚神のルーツに繋がるものではないか。
 愚神の存在と目的を同じとするものではないか。
 それはそれとして、煤原を鍛える材料になりそうだとネイは燃衣を引きずりながら悪い顔を見せる。
 てんやわんやだったが、みのりは多かった。そうネイは満足した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 胃袋は宇宙
    メルトaa0941hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
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