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本部

【異界逼迫】連動シナリオ

【界逼】血濡れた花嫁

山上 三月

形態
イベントショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 6~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/07/12 20:38

掲示板

オープニング

●共通OP
 大英図書館の館長室において、キュリス・F・アルトリルゼイン(az0056)は表の仕事をこなしていた。
(古墳から発見された地図ですか。希少性からいって仕方ない金額ですね)
 机に向かい、各部署からあげられた申請書に目を通して可否を決めていく。
 英雄のヴォルフガング・ファウスト(az0056hero001)は来客者用のソファで菓子を摘まみながら、ファッション雑誌の記事に目を輝かせている。
 もうすぐ昼食の時間といったところで、机の片隅にある固定電話が鳴り響いた。表向きの秘書を介さないH.O.P.E.ロンドン支部との直通回線だ。
「詳細はそちらに出向いてから。それでは」
 話し終わって受話器を置いたキュリスに、ファウストが「大急ぎで、どうかしましたの? 世界が滅びそうだったりするのかしら?」と訊ねる。
「そうでなければよいのですが」
 キュリスの返答に、からかった風のファウストは真顔になっていた。
 キュリスが書架の本を一部入れ替えると、奥に引っ込んでいく。さらに横移動し、エレベータの出入口が現れる。
 H.O.P.E.ロンドン支部は大英図書館の地下深くに存在していた。降りたキュリスとファウストは、執務室へ向かわずにブリーフィングルームへ。中央にあるテーブル上にはホログラムイメージが浮かぶ。地中海周辺の地図である。
「早速、本題に入らせて頂きます。ご存じの通り、地中海周辺でテロが起こるというプリセンサーの報告が相次いでいます。これまで曖昧だったのですが、ここ二、三時間ほどで確定的なものに変わっていまして――」
 職員の一人が状況を説明した。
「確度の高い前兆ですね。警戒態勢を引きあげましょう。本部にも連絡を……、いや私がしたほうがよさそうですね」
 キュリスはテレビ電話を通じて、自ら本部とやり取りする。終わったあとで、職員が戸惑いながら口を開いた。
「あの、支部長。マガツヒの首領『比良坂清十郎』は、本当に『過去機知』が使えるのでしょうか。私もプリセンサーの端くれなのですが、どうしても信じられません」
 職員が語った『過去機知』とは非常に稀なプリセンサー能力だ。過去に起こった事実をつぶさに知ることができるといったものである。
「私も完全に信じたわけではありませんが、その想定で動くつもりです。そうでなければ説明しづらい行動が、マガツヒにはありますので」
 キュリスはそう答えて廊下を歩きだす。
「キュリスちゃん、そんな恐い顔をしていると、お肌に皺が増えてしまいますの」
「それでこの事態を収束できるのであれば、安いものです」
 執務室の扉を閉じたとき、キュリスはファウストに軽く肩を叩かれた。
(やはり比良坂清十郎の真の目的は、古代遺跡の破壊にあるのでしょうか)
 テロの発生が疑われる地域の多くには、古代遺跡が存在している。キュリスは共闘することとなったセラエノのリーダー、リヴィアの言葉を思いだしていた。

●赤く染まった花嫁
 それは突然だった。
 地中海に浮かぶ島の一つ、遺跡を改修して作られた教会で、一人の男と一人の女が幸せな誓いを立てているその瞬間のことだ。
 教会のシンボルになっている像が突然音を立ててその杭から身を解き放ち、杭を夫婦に打ち付けた。教会は騒然となった。
「きゃああああああああああ」
 誰かが悲鳴をあげて、ばたんと倒れた花嫁の白いウェディングドレスが真っ赤に染まっていく。
 花嫁の腹に杭は穿たれている。花嫁は失神したのか、意識は無い。
 新郎はその杭を免れて、吹き飛ばされた教会の端でがくがくと全身を震わせていた。参列客達はどんどんとその輪を広げ、教会の後ろへと逃げていく。花婿に手を差し伸べて逃げさせようとする者もいた。
「逃げるんだ!」
 声とともに像がその重たい脚を動かす音がする。
 花婿は依然として我を失ったように動かなかった。視線の先には真っ赤に染まった花嫁の姿があった。
●参列客
 これはあるH.O.P.E職員同士の結婚式であった。
 参列客として参加していた君たちはこれに動揺を持ちつつも戦わねばならないことを無慈悲にも知るだろう。
 花嫁は瀕死。花婿は逃げ遅れている。
 二人はエージェントではない為に愚神から逃げる力はない。ただのオペレーターなのである。けれど、君たちは幾度も助けられたオペレーターである。助けなければならない。
●駆けつけ班
「状況は切迫しています。どうかいち早い対応を。この地域でテロが起こる可能性はプリセンサー達により指摘されています。周囲への警戒も怠らないでください」
 柳下 洋子(az0110)は差し迫った表情で言った。
 プリセンサーによる察知が遅れ、事態は最悪である。
 柳下自身も知り合いであるオペレーターの夫妻に降りかかった災難に、ぐっと歯を噛みしめることしか出来ない。
●木陰にて
 三人の人影があった。
 一人は何やら呪文を唱え、二人が周囲を警戒している。その木陰からはちょうど教会の内部が覗き見えた。
 呪文を唱えるごとに、教会の内部にいる像の瞳はなにかの加護を受けているかのように赤く光を増していく。

解説

・解説
●目的
愚神(教会の像)の討伐、夫妻の保護、オーパーツの確保
●現場
地中海に位置する島の遺跡を改修した教会
 100人は入る会場
 椅子が固定式であったが、すでに人は座っていない
●登場
愚神(教会の像)ケントゥリオ級
 瞳に仮面の様な赤いオーパーツが埋め込まれている
 物攻S/物防S/魔攻S/魔防B/命中S/移動E/特殊抵抗C/イニシアチブE/生命S
 ・攻撃
 杭の振り回し攻撃、突き刺し攻撃は当たると大ダメージとなる
 口から咆哮 命中が1/10下がる

ヴィラン(マガツヒのヴィラン達)
 ヴィランは3名しかおらず、そのうち1名が呪文を唱えて石像の瞳に埋め込まれたオーパーツに力を込め、他2名が周囲への警戒を行っている
 基本的には戦闘は行わない

リプレイ

●時は一刻を争う
 花嫁が大きな杭に穿たれ倒れてすぐ、会場は混沌としていた。逃げ惑う者、泣きだす者、混乱に包まれていたそこで、数人の者が動き始めた。
 参列していた氷鏡 六花(aa4969)はアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)と共に、参列客の元から離れるように愚神の元へ進んでいく。
「一生に一度の、大切な日なのに……台無しにするなんて。絶対に赦さない」
『そうね。でも……大丈夫。きっと、まだ……間に合うわ。急ぎましょう、六花』
 ナイチンゲール(aa4840)は墓場鳥(aa4840hero001)と共鳴すると、隣にいた六花の言動とふるまいに注意する。今の六花は触れたら切れるナイフのようなのだ。自分が見張っていなければ、と。
 参列していた月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)も愚神の方へと動きだす。
「酷い。あのお二人の幸せな結婚式になるはずだったのに、こんなこと……」
『……感傷に浸っている余裕はないぞ、ユリナ。敵は待っていてはくれん』
 荒木 拓海(aa1049)とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)は花嫁と花婿の元へ向かわねばと考えていた。花嫁の穿たれた箇所から流れてくる血は赤い。
「行こう、晴の日を悲しい日にはさせない」
『ええ、このままじゃ二人の絆も壊れてしまうかも』
 赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)は愚神の方へ進みつつロケットアンカーを準備していた。すぐにでも愚神を倒さねば被害は大きくなる一方である。
「祝いの席を無粋な真似で穢しやがって」
『仕向けた下手人がいるなら、ともどもお仕置きが必要ですわね』
「下手人とは言い得て妙だな」
 苦笑しつつはぁと肩を落とした。こんな佳き日を汚すなど許せぬことである。
 可及的速やかに参列していた内のエージェント達はH.O.P.E職員を避難させつつ集まっていく。
「っ止まれ!」
 海神 藍(aa2518)が叫んだ声にこちらへ向かってこようとしていた愚神の足が止まった。支配者の言葉を発動したのだ。
「拓海、二人を頼む!」
「任せて、藍」
●可及的速やかに
 マガツヒが地中海近辺でテロを起こすという噂が出てきて後、地中海近辺でのテロらしき動きが多くなってきた。
『H.O.P.E.職員同士の結婚式……というのが引っ掛るわね』
「H.O.P.E.自体が標的なのか、それとも……」
 マイヤ サーア(aa1445hero001)と迫間 央(aa1445)はテロの可能性を考えつつ、ヴァイオレット メタボリック(aa0584)とノエル メタボリック(aa0584hero001)他数名と共に現場に向かっていた。
「オラ許せねぇだよ。主様、オラたつがたどり着くまで二人がをお守りくだせぇ」
『待ってるだよ。助けに行くだがや。マガツヒもうただでは済まないだぁ』
「テロ、ね……」
『……ふぅん』
 アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)はテロを起こそうとしている者達が遺跡を狙っているらしい噂を聞いており、これがテロに関連するのではないかと考えていた。
 現場は酷い有様だった。
 共に向かっていた御神 恭也(aa0127)と不破 雫(aa0127hero002)は現場に着くなりその惨状を見て吐き捨てる。
「一足遅かったか……」
『人生で一番の幸せの場を邪魔するなんて許せませんね』
 迫間は通信機をつけて、会場内にいる仲間の連絡手段を確認する。
「皆通信は可能なようですね。これなら連携もとれる。行きましょう」
 駆けつけ班は全員で、逃げ惑う人がいる扉へ入っていく。
●共闘
『よくも幸せな門出を邪魔してくれたね!』
「必ず助けるぞ」
 不知火あけび(aa4519hero001)は日暮仙寿(aa4519)と共鳴する。
『神聖な教会のそれも結婚式という大事な場を荒らすなんて、なんて不届きな!』
 怒るミルノ(aa4608hero001)に理解を示しつつ藤岡 桜(aa4608)も応えた。
「……怒るのは分かるけど……今は、助けるよ……」
『沈め!』
 禮(aa2518hero001)の声が響く。リーサルダークにより、相手の失神を狙うがその願いは届かず。
「(これは何だ、愚神か……?)」
 海神はその光る赤い瞳に若干の違和感を抱く。
『考えている時間は無さそうです、できる限り抑えましょう!』
「ああ、我らが誓約に懸けて!」
 その声がした瞬間だった、背後から氷柱のような氷槍が放たれた。動き出そうとしてた愚神は再びその鈍重な動きを止め、いくつか体に刺さったそれを、自らの手でなぎ払った。
 氷鏡はその背中に氷柱状をした翼、手の先には魔法陣を浮かべて、キッと愚神を睨みつけている。
 愚神はその杭を持ち、こちらの様子を伺うようにしている。愚神にそれほど明確な思考力というものを今まで感じたことがなかった氷鏡はどこかそれに違和感を覚え、即座にマナチェイサーを使用し愚神を観察する。
 赤い瞳は仮面のように一帯を光らせており、そこへ煙状のライヴスがつながって外へと出ていっている。何者かがいるのだと直感した。
 荒木は駆けつけ班のヴァイオレットと連絡をとり、ナイチンゲールも加えて新郎新婦の元へ向かう。
「仙寿さん……迫間さん。ライヴスの流れが……建物の外から……」
「六花、そりゃ本当か。ってことは奴さんはまだいるってことだな」
『ここ……遺跡を改修した教会だっけ?』
「マガツヒ関連だと言いたいのか?」
『ひょっとしたら近くにいるかも!』
 不知火の言葉に迫間もうなずく。
「ならそっちが本命になるかもしれないな。マガツヒのヴィランがテロを起こしているってのは本当だったのか、調べにいかねぇと。俺たちはそちらに別れよう」
 日暮と迫間は答え別動隊として動くことにした。
 月鏡が、三人の話を聞き、言う。
「職員のお二人や、マガツヒのヴィランへの対応は任せます。私とラシルは愚神の方へ向かいます」
『石像か……見るからに硬そうだが、その程度で今更引き下がるとでも思ったか』
「愚神の力の源は、恐らくあの瞳のオーパーツ……。石像から引き剥がさなければ」
 石像の中で明らかに異質さを放つ赤い瞳は力を増すごとに光を増していく。あれがなんの変哲もない石であるはずがない。
 月鏡は愚神と客の間に踏み込み、神経接合スーツの超過駆動を発動すると愚神がこちらへ振り下ろしてきた杭を盾で回避し、剣を振りかざして愚神の足へと突き刺す。続けて赤城がその間にロケットアンカー砲を天井に向けて射出した。
 藤岡も花嫁と愚神の間に陣取るように移動する。夫婦救助移送をする者達に被害がないよう、大鎌を構えて愚神に攻撃をしかけるが、その杭によっていなされてしまう。
 アリスがAliceと手を合わせるとその姿は陽炎の様に姿が歪みはじめ、ついには一人の少女だけがいた。手に開くは極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』である。
「オーダーならば。愚神を倒すこともやぶさかではないかな」
 共鳴したアリスはブルームフレアを愚神の方向へ境界を作るように発動させる。アリスの位置するところは杭の射程範囲外であった。
 愚神は遮られた視界に対して闇雲に杭を振り回した。運悪くそこにいた月鏡は杭によりダメージを負った。
「大丈夫か! 月鏡」
 共鳴した御神が月鏡の負傷を見て、ぐっと歯を噛み締める。手にもつ刃に毒のようなライヴスをまとわせて、愚神へと斬りかかりすぐに後ろへ、月鏡の肩をもって共に引かせる。
「恐ろしいまでに重い一撃だな……当たれば只では済まんだろうが、足が遅い御蔭で躱す事は難しくは無い」
『少し、様子を見てみますか? 暫くすれば新郎新婦を救助を終えた人達が戻ってきますし、ヴィランの元に行った人たちから何か情報が得られるかも知れません』
「そうしたい処だが、相手は悠長に待ってはくれんようだ」
 そう、愚神は待つことなどしない。
『舞い踊れ、幻惑の蝶!』
 海神が幻影蝶を発動しさらに状態異常を被せようという思惑だったが、愚神はそれをあっさりと杭を振り回すことで、避けてしまった。
●救命救急
 一方、ヴァイオレットと荒木、ナイチンゲールは彼らが愚神をひきつけてくれている間にと、花嫁と花婿の方へ向かっていた。
 ひとまず花婿の方へ向かった、共鳴している荒木はがくがくと震えたままの彼に話しかける。
「歩ける? 愚神が怖いのは当然よ……彼女も判ってくれるわ。それでもね、貴方に守って欲しいと思ってる。私達が貴方を守るから……貴方が彼女を守って。手を握って離さず声をかけ続けて、ここにいると伝えて上げて」
「は……はいぃ……」
 花婿の瞳が荒木の方を見る。
「愚神はもう退治されりわ。だから……彼女のことを助けましょう」
 花婿はぐっと目をつむり、それから深呼吸する。不思議と震えは穏やかになっていった。彼もH.O.P.Eの職員なのだ。だから、自分の愛しい人の惨事に一時我を失ったとはいえ、全ての理性は失っていない。
 荒木は頼もしい姿を見せた花婿にふと微笑み、言う。
「じゃぁ、大丈夫ね? 今あちらで応急処置を初めているの。そちらまでいきましょう」
 ヴァイオレットはナイチンゲールのハイカバーリングを受けながら、花嫁の元へ一目散に歩いていった。穿たれた杭は愚神によって抜かれていたため、出血が酷い。すぐにでも止血をしなければ一刻の猶予もないだろう。
 エマージェンシーケアをまず行う。
 ナイチンゲールはその間にもたまに当たりそうになる愚神の攻撃を盾に受けていた。
 荒木は婿を花嫁の元へ連れていく際、盾を使うが、ひどく振り回された杭により脇腹にダメージを受ける。
「大丈夫ですか……すみません。本当に」
 花婿は顔をしかめて心配そうに言った。
「脇腹でよかったわ。手や足だと困りますから。そう謝らないでください。さ、花嫁さんの手を握ってあげて」
「ここじゃ落ち着いて応急処置もできないだろうか、移動しよう。私が盾になるよ」
 ナイチンゲールの提案で、荒木が花嫁を抱え、ヴァイオレットと共に入り口付近、建物の端のほうまで移動した。
 そこでヴァイオレットは必死な顔でケアレイを連続使用する。VRゴーグル「イグラー」を起動し、ノートパソコンでイグラーの映像データを医療スタッフに共有する。処置の方向性は血管縫合で決まったらしい。
 救命救急バッグから出した消毒液を自らの手に振りかけ、杭に穿たれた箇所に異物が残っていないかをつぶさに確認する。
「これは重要だ。見落とさないように……」
 幸か不幸か、花嫁はまだ意識を失ったままであるから、傷の内部を確認しても大丈夫であるという利点があった。ケアレイによって大部分の出血は止まっていた。が、血管は切れたままである。
 ひとつひとつ丁寧に針と糸を使って血管を縫っていく。血液が漏れないようにできるだけ針数を少なく、正確に内膜と内膜があうように注意しながら血管縫合は行われた。
 その重要な作業中も愚神の行動により、石の破片やらが飛び交ってくる。荒木とナイチンゲールはそれを盾を構えて受け止めていた。
「これでひとまず安心だ」
 共鳴中のヴァイオレットの言葉に三人と花婿の間に安堵の空気が流れる。
 荒木がもう一度花嫁を抱えあげ、ヴァイオレットが付き添い、ナイチンゲールがカバーリングを行いながら、外へ無事搬出が済んだ。荒木が予め呼んでいた救急車に運び込んだ。
「腕の震えがとまねぇ……だよ。緊急度の高い手術は久しぶりだぁ」
『流石闇医者の助手じゃな。器用な手先と情報処理の高い腕前もあっけど』
「オラ、あいつの腕前は認めるだよ。人としては駄目だけんどな。父様と母様がくれた贈り物と、好きで覚えた技術は忘れねぇだ」
 ヴァイオレットは救急搬送されていく彼らを見送り一息吐いた。
 血だらけの花嫁と、その手を一心に握る花婿を救急車が運んでいく姿を目に、メリッサはぽつりと言う。
『助かって……』
「その為に頑張ったんだ、お疲れさま」
『拓海たちの式の時……私も幸せだったの。こんな事になったけど……二人が助かれば、参列した皆も幸せに成れると思うから……』
「……後でお見舞いに行こう。どんな風かこっそり拝見だ」
 メリッサに微笑みかける荒木はどこか安堵した面持ちである。
●嘆きの咆哮
 月鏡が愚神に攻撃を仕掛けるがかわされる。
 赤城が天井にかけていたフックを利用して障害物を飛び越え愚神に接近、さらにアンカーを射出して動きを阻害するように巻き付け、背後から一閃、ダメージを与える。脆い土塊のように像の一部が壊れ落ちた。
 藤岡も未だ夫婦が外へ出ていないのをみて、愚神にその大鎌を振り下ろし後ろに下がる。
 身動きがとれなくなった愚神の目がひときわ大きく光り、その体を硬直させた。
『オォオオオオオォオオォオオオオ』
 それはもう、建物の外にまで響き渡る咆哮だった。
 思わず耳を塞いだ月鏡だが、意味はなく。
『あの体躯では回避など期待できないはずなのに、咆哮の振動でこちらの手元を狂わせに来るのか……。やはり、よほどオーパーツを奪われたくないと見える』
 そう、あの光っている目が恐らくオーパーツなのだろうが、それをこちらのものとするには、愚神を無力化しなければならない。
 アリスが地獄の業火を放つが、まだ動く杭によってそれも薙ぎ払われる。
 御神は女郎蜘蛛も発動する。ライヴスのネットが愚神へと覆いかぶさった。愚神の鈍重な動きは更に遅れをとる。
 海神が攻撃し、リーサルダークを発動するが、愚神の意識は失われない。
「私の攻撃もあまり効いていないか……、強いな」
 やっと客の避難が完了した。あとは何も気にせず戦えるだろう。
●木陰に潜むは
 ヴィランの可能性をもって、教会を出た迫間、日暮、氷鏡はマナチェイサーを発動し、ライヴスの出処を追い求めてゆく。
 もし彼らがマガツヒのヴィランならば、負けを確信した時点で自殺されてしまうだろう。だから細心の注意を払って追い詰めなければならない。
 日暮は氷鏡を庇いつつ、マナチェイサーをたよりに、木陰に潜む三人のヴィランを発見した。
 うまい具合隠れているというわけでもなく、ただ、一人が何事かぶつぶつ呟いていて、二人は辺りを警戒している様子だ。
 共鳴した迫間が、小声で作戦を口にした。
「俺が猫騙を使うから、その好きにとにかく無力化してくれ。そこら辺は六花さんが適任だろう。仙寿君は俺と共に罠師をかけて自殺対策をしてほしい」
「マジックアンロックもあるから、それをかけるよ。無力化は任せて。いこう!」
 迫間が背後から猫騙をかける。突然背後から攻撃をするかのような気迫に、ヴィランであるだろう三人は怯んだ。
 その隙を見逃さず、氷鏡は断章の凍気をSW氷鏡で範囲拡大して、荒れ狂う吹雪を巻き起こし三体纏めて攻撃する。これによりヴィランは不意打ちを突かれた形で戦闘不能になり、共鳴解除されるが、術士の一名がぐっと歯を噛み締めた動作と共に倒れる。
「っ……やられた」
 氷鏡は苦虫を噛み潰した顔で、さらにライヴスの氷による四肢凍結を行い、無力化する。マジックアンロックを使用してみれば見事に自殺の為の魔法罠があり、それの解除も行う。
「用意周到だな……術士に死なれたのは惜しいが……」
 迫間と日暮は同時に罠師を行い、奥歯の毒薬を解除し、安全のために猿轡をかませた。
●とどめだ
「ライヴス出力の調整を……。あの硬度ではどのみち、生半可な剣撃では削ることも難しいでしょう」
 月鏡は言いながら、さらにぶつぶつと言葉を続けた。
「……コード・エクサクノシ起動。ヴァドステーナ(ブレードジュエル)、出力上昇」
『ユリナ、ディバイン・キャリバーを発動しろ!』
 しぶとく動こうとする愚神に月鏡は容赦なく剣を突き立てる。愚神の杭を持っていた腕が分離した。
 赤城が更にザッハークの蛇を使用し、愚神を力技で引き寄せた。愚神は両足の体制を崩し、ころんだような形になる。
「一気に畳み掛ける。行くぜ、皆!」
 途端に愚神の赤い瞳が光を急速に失っていく。
 藤岡は大鎌で愚神の首をぶった切る。続けてアリスが前方へ手を翳す。
「地獄の業火で焼き払え」
 ぼわっと炎のライヴスが愚神をすごい勢いで包み込み、身動きのとれない愚神はそのまま燃やされることしか出来なかった。
 ドシン、と愚神の首が落ちる音と共に、炎は勢いを増した。まるで愚神のすべてを焼き尽くそうとするかの如く。
●捕縛
 迫間は捕縛した二人と自殺した一人を見つつ、通信を入れる。
「ヴィラン二人を捕縛。術者であった一人は死亡。そちらの状況はどうだ」
 通信機からは「愚神は討伐完了、これからオーパーツを取り出す作業に入る」との通信。「花嫁と花婿も無事だで。救急搬送してもらっただ」との通信も入った。
 すべてが一件落着したようである。
「さて、と」
 日暮は二人のうち一人の口を自由にする。
 まず、迫間が口を開いた。
「中の愚神を操っていたのはお前等か?」
 ヴィランはがくがくと頷く。
「何処のヴィランか知らんが、愚神を利用しているのか、愚神と結託したのか……どちらにせよ愚神の力がなければ行動も起こせない三下風情、有象無象に過ぎんか」
 今度は日暮が言う。
「自殺を試みても無駄だ。気絶させるだけだからな」
『情報吐いてもらうよ?』
 不知火がさらににっこりと笑いながら言った。
 日暮は通信機をONにし、教会内の仲間にも聞こえるようにして質問を始める。
「マガツヒにしては杜撰な犯行だったな……」
「俺たちは、マガツヒだ。こいつが死んでるのが証拠だろう!!」
 仲間の術者を目で見遣って男はそう叫ぶ。
「呪文で愚神を操っていたのか? それとも能力を上昇させていたのか?」
「……操っていただけだ」
「愚神の瞳はオーパーツだな?」
「っち」
 無言のままの男に日暮は更に畳み掛ける。
「そうなんだな?」
「、あぁそうだよ! ありゃオーパーツだ」
 もう逃げることも死ぬこともできない男は自棄になったようだった。
「さて、まだ質問は続くぞ?」
『この辺りでテロを起こして遺跡を破壊しているみたいだけど……マガツヒの目的は何?』
「……俺たちは地中海周辺でテロを起こせと命じられただけだ」
「比良坂清十郎は何を考えている? 過去機知で何を見た?」
「知らねぇよ! 俺たちは自由だ、俺たちは世界を変えるために暴れているだけだ!」
「どいつに聞いても同じか……」
「清十郎様が一週間以上ただ地中海を眺め続けてたっつー噂話なら……あったがな。お前らに捕まったなら俺たちはどうせ死ぬ」
●ドライシャトリア
 愚神が炎に包まれ、やがてその炎も愚神のすべてを焼き尽くし、土塊だけが残った。
 藤岡は気にしていた月鏡の怪我を治そうと近寄る。
「あの……治しますね」
「ありがとう、藤岡さん」
 藤岡のケアレイにより、月鏡の痛々しかった傷は大分回復した。
 そして愚神と戦闘していた六人の前に転がる愚神の頭。もう瞳は光ってはいないが、赤い石が埋め込まれていることがわかる。
 彼らの耳にもマガツヒのヴィランの声は届いていた。
「……彼らの目的がなんであろうと、私はマガツヒを許す気にはなりません。……この星の生命をあまりに軽んじすぎている」
『私もユリナと同じ考えだ』
 月鏡はぐっと堪えるように無表情で言う。
「マガツヒ……? 奴らがこの攻撃を?」
 海神は思う。以前までの奴らは世界そのものを恨んでいるような印象だったが……これではまるで。
「(世界ではなく、HOPEを恨んでいるような……)」
『これは、厄介なことになりそうですね……』
 禮が眉根を寄せて答えた。
「テロがこの事件にも関わってたってことは本当みたいね……」
 アリスが言う。
「さて、これをどうするか、だが」
 赤城が愚神の頭を指して首を掻いた。
「大鎌なら……くり抜ける、かも?」
「私も切り抜きに協力します」
 藤岡の提案に月鏡ものる。
 月鏡がまず、額に剣を突き立て固定する。藤岡は大鎌を構えるとライヴスを纏ったそれを思い切り振りかぶり、瞳を残すようにしてぐっと大鎌で切り込みをいれた。
 石塊がごろんと転がって、ガコンと音がしたかと思うとまさに仮面のような形をした赤い石が出てくる。
「これが、オーパーツか?」
 御神が訝しげに首を撚る。
 全く、こんなものが、愚神に影響を与えるなど意味のわからぬ物体である。
 搬送を終えて戻ってきたヴァイオレットと荒木、ナイチンゲールが教会の中に入ってきた。
「府に落ちない……H.O.P.E関係者が参列すると知らず騒ぎを起こしたのか?」
『……入手だけなら何も無い日を狙えば阻止される可能性は減ったわね』
 愚神から奪う力が無く代理入手なのか、オーパーツ能力の確認だったのか、騒ぎは陽動で、他の場で事件がおこっているのか。荒木はオーパーツを本部へ届けるまで警戒を怠らないことにした。
 H.O.P.E本部に連絡をとり、それを届ける手はずを整える。
 これがドライシャトリアというオーパーツであり、その効果は埋め込まれることで埋め込まれた対象の持つ力を増し、術者から操りやすくする、という代物だったのは後に聞いた話であった。
●一刻の猶予を
 愚神討伐者達と合流した医療組はヴィランを捕らえている三人のいる方へ向かう。一人の死体と捕縛されやる気をなくした二人を教会の前まで運び、機関へと引き渡した。
 ヴァイオレットは六花の姿を見て以前負傷していたことを気にかけていたのを全身全霊で伝える。
「元気でよかったぁ。オラ、すっこぐ、すっこぐ心配してただよ」
「ヴァイオレットさん、ありがとう……もう、大丈夫」
 日暮も同じく、気にかけていたらしい。
「元気そうで安心した。……頭痛は止んだか?」
「仙寿さん……。もう平気。少し、ううん……まだ、辛い」
 それが強がりだとて、日暮はただ六花の頭を撫でる。
「辛いのは分かる。それでも一緒に進みたいと思ってる。俺とあけびだけじゃなく他の奴等もそうだろう。お前の優しさを信じてる。それだけ言いたかったんだ」
 ぽんぽんと頭を優しく叩く。
「お守りずっと大事にする、ありがとな」
 懐から見せたお守りを手に、にっと笑って見せた。
 そこへずんずんと歩いてきたナイチンゲールが言う。
 ナイチンゲールにとって六花は妹同然であったが、ヘイシズとの戦いで暴走した六花の攻撃に巻き込まれかけたのである。
「あなたが今そんな風なのは……彼(aa3678)の為? 頼まれたの? 本人がそう言ってた?」
 眉根を寄せてからふと息を吐いて、六花の肩に手を置いた。
「ごめん、きついこと言うね。六花は自分を慰めようとしてるだけ。そしてその為に、あの人を理由にして力を振りかざす度に、傷つけてる。彼を好きだったみんなのことも……六花自身のことも。彼はそんなことを望む人だった? 全部分かっててやってるなら……私は止めないよ」
 一言切ってから、六花を抱きしめたナイチンゲールは泣きそうになりながら言う。
「でも……、前に言ったでしょ。独りで苦しまないで。お願い」
 六花は抱かれながらもつぶやくように言う。
「……HOPEは、あの人が愛してた愚神を……殺したの。だから……他の愚神も、ぜんぶ、殺さなくちゃ……あの人が、可哀想」
「うん……」
 ナイチンゲールは抱きしめたまま聞く。
「六花は……憎いの。愚神も、HOPEも、……この世界も」
「六花には私達がいるのよ……ありがとう、辛いこと言ってくれて」
 ぎゅっと抱きしめる手に力がはいる。六花の方も、下ろしていた腕をそっとナイチンゲールの背に回した。
●花嫁と花婿
 迫間はこの式の主役であった二人のことが気がかりで討伐を終えてすぐ、見舞いに来ていた。
 花婿はあれからずっと花嫁の手を握り続けているらしい。
「気をしっかり持て。花嫁が目を覚ました時に傍に居て支えてやるのが夫としてのお前の責務。武器を持って戦う事より大事な事だ」
「本当に、ありがとうございます……嫁を助けて頂いて」
「俺たちには当然のことだ。じゃ、元気でな」
 数日後見舞いに来た荒木とメリッサも、目の覚めた花嫁の嬉しそうな笑顔に思わず笑顔を返した。
「感謝します。皆さんが助けて下さらなければ、私達がこうしてまた話せることもなかったでしょうから」
『良かった……』
「では、お元気で」

 マガツヒのヴィラン達が搬送中に襲撃され、二人とも亡くなったという知らせが届いたのは愚神討伐の三日後のことだった。

結果

シナリオ成功度 成功
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MVP一覧

  • 紫の司祭
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
  • 鏡合わせの二人
    アリスaa1651
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969

重体一覧

参加者

  • 難局を覆す者
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • 難局を覆す者
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|18才|男性|攻撃
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    不破 雫aa0127hero002
    英雄|13才|女性|シャド
  • 紫の司祭
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 月鏡の姫
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 英国の女剣士
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 誰の手も離さずに
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 闇に光の道標を
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 鏡合わせの二人
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 鏡合わせの二人
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 白い渚のローレライ
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 黒い人魚の鎮魂歌
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 薄紅色の想いを携え
    藤岡 桜aa4608
    人間|13才|女性|生命
  • あなたと結ぶ未来を願う
    ミルノaa4608hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • Blue Rose
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • Rose thorns
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ

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