本部
夏の水着は溶けやすい
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/06/29 22:02:50
オープニング
『夏……夏といえば水着じゃないか』
なんて素敵な響きなのだ、とアルメイヤは拳を握り締める。デパートの催事場で水着フェアが開催されていた。来る夏に胸を膨らませた男女が思い思いの水着を選んでいる。
『エステルの水着……』
恥ずかしがっているエステルも水着を着て泳ぐという文化をとうとう受け入れてくれた。あとは、可愛い水着を購入するのみだ。
「これ……アルメイヤに似合いそう」
エステルは、赤い水着を手に取る。露出度高めな水着は、大人の女であるアルメイヤにきっと似合うであろう。
『え……エステル、ダメだ! その水着は、大人っぽすぎる。まだ早いからこっちの花柄のワンピースタイプがいいと思うぞ』
慌ててアルメイヤは、エステルの手のなかにあった水着を取り替える。エステルは、不満げである。
「なんや、客がいっぱいやな」
正義も自分の水着を選び、試着していた。
『うーん、今年はやっぱり大人っぽく責めるべきなんですぅかね~』
小鳥も水着を見比べて悩んでいる。
実は、彼らはこれでも仕事をしていた。
最近、水着売り場で怪しい事件が多発している。試着している水着が、溶けてしまうという珍事件である。愚神あるいは従魔の仕業には間違いないが、どうしてそんなことをするのか理解に苦しむ事件である。
『可愛い小鳥たちが囮になるのですぅ!!』
『ん? 囮とは、何のことだ』
アルメイヤは首を傾げる。水着姿のエステルを囮にしたら彼女がとても煩くなることは必至だったので、きっと誰もアルメイヤに真実を教えなかったのであろう。
●デパートの裏側
アパートの裏方、倉庫では一人の男が笑っていた。ひょろりとした体型で、猫背。いかにもモテないタイプの男性は、水着ばかりが集められた倉庫で不気味に笑う。
「僕以外の男は、みんな恥をかいてしまえばいいんだ!」
男が握るのは、男性用の水着である。この水着は、全て従魔で出来ていた。そうとは知らずに身に着けると水着にライブスが徐々に奪われていき、限界点を超えると溶けて姿を変えてしまうのである。そのライブスは、愚神である男の元へと流れる。
屋上の催事場には、そうとは知らずに水着を身に着ける男たち。
「さぁ、今日も僕は影から阿鼻叫喚を眺めてやろう」
解説
・男性の水着が溶けます。気を付けて戦ってください。
(※このシナリオは全年齢指定のコメディです)
アパートの催事場(12:00)――最上階の七階にある。広々としたフロアであり、お洒落な水着から機能的な水着まで様々な水泳グッズがそろっている。リンカーのほかにも、一般客が10名、従業員5名がいる。
従魔――男性の水着全て、百着以上あるが十分なライブスを吸収すると溶けてしまう。溶けた従魔は、戦闘形体になる。
戦闘形体(水着姿の男性)――十体出現。溶けた水着が合体した姿。水鉄砲型の武器を持っており、なかには毒物が入っており浴びると徐々に体力を奪われる。
夏の思い出――ゴーグルを装着し、防御力をあげる。
夏の暴走――水鉄砲のなかの液体が硬化し、銃弾のようになる。ただし、毒の効果は失われる。
愚神――催事場に従業員のような顔をしてたたずんでいる。他の従業員とは違って、騒ぎが起こっても逃げようとはしない。従魔と同じ水鉄砲とサーフィンのボードを盾として使用する。従魔と同じ業が使用可能。自分の正体が明らかになると戦い出す。ない、愚神との分離は可能。
非モテパワー……「なぜ、モテない!!」と叫ぶと攻撃力が跳ね上がる。
寂しい夏……ボードの切れ味が増して、剣の代わりとしても使用できるようになる。
絶望の夏……従魔が全滅し、自分の体力が残りわずかになると使用する。攻撃力がさらに跳ね上がる。女子の水着からライブスを吸収しようとするが、女子の肌が見えると赤面して失敗してしまう。
アルメイヤ――何も知らされずに水着を選んでいる。男の裸を見てもなにも思わないが、エステルが悲鳴を上げたらたとえ味方であっても殴る。エステルが悲鳴を上げなければ、何もしない。
正義――水着が溶けるので、恥ずかしくてなにもできない。そのままにしておくとエステルに裸を見られ、アルメイヤに殴られる。
リプレイ
●とあるデパートの催事場
そこには、色とりどりの水着が並んでいた。
「そう言えば、水着ッテ着るの初めての気がシマス! 折角の機会デスし、全力で楽しんでいきまショウ!」
エマ(aa4839)は、手始めにフリルが付いた水着を手に取る。可愛しいデザインの水着にエマは上機嫌であった。あっちがいいかな、こっちもいいな、と目移りしながら、自分に似合いそうな水着を片っ端から試着していく。
「うーん、こっちのワンピースタイプの可愛いデス。ちょっとセクシーなタイプも棄てがたいデスネ。まぁ、全部着ますケド!」
ばばーん、と更衣室から登場したエマはスク水を身に着けていた。
藍色の水着は健康的なエマの魅力をさらに引き立たせて、逆神 笑満(aa4839hero001)は思わず拍手する。
『驚愕するほどに似合いぶり! 王道とはまさにこの事、可愛いは正義!』
「うーん、でもやっぱりスク水は恥ずかしいデス! 違う水着も着てみますから、待っていてくださいネ」
そっちも水着を選んでてくだサイ、というエマの言葉に笑満は頷く。
『フッ……このあっしの肉体美を披露する絶好の機会でやすね!』
笑満も幾何学模様の派手な水着を手にとって笑っている。実は結構良い体の笑満。どんな水着でも着こなしてしまえる自信があった。
「今度はどうデスカ! 題して、大人のエマのデビュー!!」
マイクロビキニを身に纏ったエマが、大胆にカーテンを開ける。
『流石にそれはアウトおおお!』
笑満の声と共に、カーテンは勢いよく閉められる。
どこにいたって賑やかな二人は、遠目から見ても楽しそうであった。
「たまには派手な水着を選べばいいのに。どうして、地味な色の水着ばっかり選ぶのかな?」
白いワンピースタイプに水着を試着していた伊邪那美(aa0127hero001)は、深緑や青といった無難な色合いの水着ばかりを選ぶ御神 恭也(aa0127)に不満を募らせる。
『ボクとは違って、合うサイズはいっぱいあるのに。む~、ワンピース型しかない……ビキニ型のが欲しかったんだけどな~』
夏っぽい色合いのビキニが欲しかった、と伊邪那美は頬を膨らませる。だが、残念ながら伊邪那美のサイズで一番多いのはスクール水着と同じような型の水着ばかりだ。もう少しお洒落なものを着たいのに、そうなるとワンピースタイプぐらいしか選択肢がなくなってしまう。
「お子様体型のお前には似合わんから止めておけ」
『五月蠅い!』
そっぽを向いた伊邪那美の目に入ったのは、豊満な肉体を持つ老婆ヴァイオレット メタボリック(aa0584)の水着姿であった。しかも、情熱のオレンジ色の水着が隠す面積は最小限である。若い女性が着ていたら、浜辺の視線を独り占めしてしまうであろう。いや、老婆のヴァイオレットが着ていても浜辺の視線は独り占めだろうが。試着室からでたヴァイオレットは、同じように試着をしていたノエルの声をかけた。どうやら、二人は別々にやってきていたらしい。
「姉者、済まん。昼飯の用意の手伝いしちまってよぉ、遅れただがや」
その声に、ノエル メタボリック(aa0584hero001)は首を傾げた。
『ヴァだベか? ライブスはおんなじなのにおらみてぇな声で雰囲気も変わってねぇべか』
「そうだか? オラこんなんだったぺ。姉者と暮らしていぐうぢにこんなになったでねぇの」
『そうだか? 雰囲気がおらみてぇなのんびりな感じに成ってるとおもうだぁ』
「気にせえだべ、オラは昔っからこげなばばあだっただがや」
はははっ、と高らかに笑う老婆たち。
そんな二人の水着は、ブラジル水着とチューブトップの水着である。露出度は高め。デザインも若い世代用なので、かなり明るい色使いである。売り場の店員は、若干困っている。
「この弛んだ体、垂れた胸、良い感じの老体だべぇ」
老いた自分の肉体に、ヴァイオレットは満足げであった。
しかし、ブラジル水着との相性はあまりよくない。油断すると、ぽろりと飛び出てモザイクがかかりそうになる。
『全ぐ、朽ちていぐごどに喜びを見出すのは、お主ぐらいだぁ』
「よぐいうだ姉者こそ、そんな体になることを楽しんで居るだがや」
『有るべき姿に成るのを心待ちにしてるだけだがや。おら達は似たもの同士の変わりもんだべ』
再び、笑いあう老婆たち。
困る店員。
ちょっとばかり異質な空間ができあがっていた。
『夏のための下準備。女の子にとっては重要なことだからね。愛さんもどう? 一緒に選んでみないかい』
AT(aa1012hero001)は黒いビキニを片手に、小野寺・愛(aa0131hero002)にも試着を進める。
『ATさんは、こちらの水着なんてどうですか? 可愛いですよ』
愛が選んだのもビキニタイプだが、大人のセクシーさよりも可愛らしさを押し出したデザインである。互いに普段は選ばない水着を試着して、誰もいないのを確認してから鏡の前でポーズを取る。
『ふふ、夏なんだから、もうちょっと冒険するのもいいかもね。愛さんも一緒に挑戦してみようっ』
そういってATが手にするのは、隠す面積がほとんどないに等しいツイストスリングの水着である。その水着を見て、真っ赤になったのは愛ではなかった。
狼谷・優牙(aa0131)とセレン・シュナイド(aa1012)である。
「えっ。あれも水着なの!?」
日常ではまずお目にかかれない露出度の高い水着に優牙は狼狽する。セレンもそれは同じである。
「AT、あまり大胆なの選ばないでよ。こっちが目のやり場に困っちゃう……」
二人とも年上の相棒の水着に赤くなりつつも、自分たちの水着を探していた。といっても、男性用の水着はあまり種類がない。デザインも女性ほど豊富とは言えずに、機能性なども考えると無難なものに落ち着くのは必須だった。
「潔癖症と言う訳じゃないが、試着するのはあまり気が進まんな……どれもこれも、代わり映えがしない気がする」
恭也の独り言に、分かると優牙とセレンは頷いてしまう。男性用水着は女性用水着と比べて数は少ないから、選ぶといっても色とサイズぐらいである。あとは、奇抜なデザインで周りと浮かないかを心配するだけ。
『ブラボー。コレこそが、あっしの肉体美を引き立たせる最高の一枚!』
約一名、奇抜なデザインを好む人間がいた。
笑満は、派手な水着を片手に更衣室へと潜り込む。水着は普通の服と比べて、ぴっちりしている。そのため、女性でも男性でも試着が必要な衣類だ。
このときは――その水着特有の問題が悲劇を生み出すとは誰も想像していなかった。
笑満が選んだのは、ビキニタイプの水着である。ぴたっとした水着は自分の肉体を最大限に引き立てるはず。笑満は、そう思っていた。
その水着を披露しようとした瞬間に、悲劇が起きた。
――男たちの水着が溶けたのである。
『どうでやすか!? 似合っ……』
「おー! 格好……」
更衣室のカーテンを開けた笑満は、硬直した。下半身が、風を感じたのだ。主に、風を感じてはいけないところを重点的に。
エマの笑顔も硬直しており、笑満は自分の間隔が正しいことを知った。下半身がとても開放的だったのだ。
警察が現れたら十中八九逮捕されそうなほどに、開放的であった。
エマの拳が、これ以上ないほどに開放的になっている下半身を殴る。後にエマは語る「無意識だったデス」と。
「何かこの水着変な? ……ふぁ?! ちょ、え、嘘!!」
溶ける水着に涙目になりつつセレンは、ATに助けを求める。
今なら、まだ間に合う。
「AT服投げてぇ?!」
『やれやれ……大惨事じゃないか。いや、セレンの着替えか? どこにあるんだい?』
ATに言葉に「おにー!!」とセレンは悲鳴を上げる。
味方はどこにもいなかったのである。
「ふ、普通はこういうのは女性の水着じゃないかな!? いや、それはそれで困っちゃうんだけどっ」
うわーん、と泣き出しそうになりながら優牙はうずくまる。そんな彼にカメラを向けるのは、愛である。その笑みは、とても楽しそうであった。
「あらあらまあまあ、大変ですね~。あ、その表情いいですよ~♪ もっとこう、カメラ目線で~♪ ちょっと目をうるませてみて~」
実に上機嫌でカメラを回す愛。
そんな姿に、さすがのATも優牙を哀れに思ったのか愛の肩を叩いた。
そのとき優牙は、ATに仏を見た。
『愛さん、しっかり撮れたかな。貴重なハプニングだよ? あとで私も貰いたい』
ATの無慈悲な言葉に、セレンと優牙は悲鳴を上げる。
二人の少年の味方は、どこにもいなかった。
「おんやまぁ!! 可愛らしい。オラの故郷の男らに比べて」
突然溶けてしまった男性客の水着に、ヴァイオレットは驚いた。裸に驚いたというよりも、突如起こった不思議な出来事に彼女は驚いていた。
『大声出してはしたないだ。可愛らしいけんど駄目だベ、隠すもん探すだべさ』
「んだな、んだな。周りを混乱させてはいかんだべな」
ノエルの言葉もあって、ヴァイオレットは男性客にそっとタオルを渡す。その時の二人は、男性客にとっては救いの老婆であった。たとえ、水着の露出度が異様に高くとも。
「くっ、まさか水着が溶けるとは」
更衣室のカーテンを巻いたことによって、かろうじて恭也の下半身は無事であった。だが、外ではアルメイヤが「エステルに醜いものを見せて悲鳴をあげさせた罪」として正義の下半身を殴って戦闘不能に追い込んでいる。ちなみに、エマに引きずられている笑満も被害にあっていた。さっきカエルが潰されるような悲鳴が聞こえたが、きっと笑満のものに違いない。
『恭也、これを着るんだよ!』
伊邪那美が恭也に投げ渡したのは、花柄のビキニ。下半身が腰布で覆われていることに、わずかな良心を感じた。着たくはなかったが。
「代わりになる物を用意してきた心構えは良いが……何故、女性用水着なんだ? さっきの件を根に持っているのか?」
『そんな事ないよ~ 溶けて無くて近くに合った物を集めただけなんだから』
「全くもって信用出来んセリフだな……だが」
笑満のように、アルメイヤに下半身を攻撃されてはひとたまりもない。溶けた水着は集まって、人型の従魔になっているようである。男性水着に姿を変えてライブスを吸収していたとは、なんともはた迷惑な従魔である。
「僕以外の男は、みんな恥をかいてしまえばいいんだ!」
デパートの店員を装っていた愚神が現れる。
この騒動の発端は、どうやら愚神が取り付いた男がモテないからの一言に尽きるらしい。
「こいつは、そんなくだらない理由で騒動を起こしたのか……」
『まあ、モテない理由が良く分かるよね~』
なさけない、と伊邪那美は呟く。
「愚神……従魔?! こ、こんな……こんなくだらない罠を仕込むなんて! うわぁ!!」
「セレンさん!」
従魔の毒物を浴び体力を奪われていく、セレン。
そんなセレンを心配する、優牙。
『……と、本格的に危なそうなのでこの辺で。共鳴に応じるとしよう』
できれば、もっとはやく応じて欲しかった。
ATの言葉に、セレンは心の底からそう思った。
「何か起きたみたいデス! 行きマスヨ、笑満!」
『さ、流石にちょっと待って下せぇ……! あっしの息子の生命の危機なんでやすが……!』
エマに殴られ、アルメイヤに殴られ、笑満は戦う前から精神と下半身はボロボロだった。
そんな笑満の状態を知ってかしらずか、エマは共鳴する。
「さァさァ、エマのマジックショー開演デスヨ! 笑満カラ若干の怒りを添えてお送りしマス! 不思議デスね!」
男性陣からしてみれば、全く不思議ではない怒りの銀の魔弾が放たれる。
『着せ替えタイムが終わったら用はないのですよ~?』
水着姿の愛の手から、ストームエッジが放たれる。
『さて、私たちも行くよ』
ATの言葉に、セレンは「待って」と叫ぶ。
「服は大して変わらないんだっけ、そっか……なんかスースーする服だね」
露出度が高い恰好にセレンは涙を飲み込みつつ、愚神を睨みつける。
「許さない。全力でぶっ潰してやるんだから!!」
このとき、男たちの思いが一つになった。
その熱き思いが、愚神を襲う。
「よくも……よくも……」
――ひん剥いてくれたな!!
こうして、愚神は男たちの恨みによって倒された。
●溶けたあとの
「めんこいべ。オラに孫がいたら、こんな感じだべか」
『オムツを替えたり、子守唄を歌ったりと楽しそうだべ』
ヴァイオレットとノエルの視線の先には、優牙とセレンの姿。二人の目には、裸で抱き合う二人の姿が赤ん坊のように見えているらしい。
「こんなめんこい子らに。無様な姿は見せられんだす」
ヴァイオレットは、着ている水着の購入をあきらめた。
変わりに手に取ったのは、競泳水着タイプの全身水着である。肌の露出が一切ないタイプであるが、ヴァイオレットたちのサイズはない。
『補正機能もあるべ、無難が一番だがや。どのみち特注品に成っちまうだども』
さっそくサイズを測って注文してもらうべ、とノエルは店員に声をかけた。
二人の老婆の和やかさに反して、優牙とセレンは泣き出しそうであった。二人とも好きで抱き合っているのではなくて、一番恥ずかしいところを隠したくて抱き合っているのだ。
『優牙くんのは可愛いですし、別に隠さないでも大丈夫では~? セレンくんのは……立派でしたけども~♪』
将来有望、と愛は語尾にハートマークをつけそうなほどに楽しそうに呟いた。
「うぅ、酷い目にあったよ。って、愛さん何でまだ……ぁ、さ、撮影禁止だよ!? そして可愛いって何処が!?」
頬を真っ赤にしながら、優牙は恥ずかしさのあまり目を回しそうになっていた。せっかく愚神は倒したのに、共鳴が溶かれたら元の全裸に戻ってしまったのである。待っていたのは、愛による撮影会だ。
「うぁあ!? も、もう良いでしょう、あぁ、増えてる、人戻ってきてる?!」
たすけてー、とセレンは猛獣に襲われたかのような悲鳴を上げた。
だが、ATは真剣な顔で呟くのみであった。
『しかし、あれだな。君たちの裸は一部のお姉さん方に良くないと思う。よし、この映像は一般公開はせずに宝物にしよう』
ぐっと、拳を握るAT。
その会話を聞いていた恭也は、そっと合掌した。なんというか、同じ男として哀れになったのだ。だが、そんな恭也も女性の水着姿である。通報される前に、着替えたほうがいい。
『ふぃー、散々な目に遭いやしたぜ……しかし! 息子よ、仇は取りやしたぜ……!』
流れる汗を拭う、笑満。
その顔には、一仕事を終えた達成感と安堵感があった。正確に言うのならば『すりつぶされなくてよかった』という安堵感である。
「死んじゃったんデスか?」
『死を覚悟しやしたが生きてやすよ! 三度目は御免でやすぜ!?』
あんな痛みはもうこりごりだ、と笑満は力強く言った。
「ところで、いつから笑満には息子がいたのデスカ?」
エマの質問に、息子の意味を知っていた全員が硬直した。
成人していたことがおぼろげな記憶でしか残っていないエマの言葉は冗談なのか。それとも本当に息子の意味を知らないのか。
『あっしたち男は……生まれたときから息子と一心同体なんですぜ』
笑満は、どこか遠い目をして語ったという。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
---|