本部

再演 夢の中でなら~

鳴海

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/06/22 00:25

掲示板

オープニング

● これはいつか見た、誰かの夢
 遙華は突如目を覚ました。
 目覚ましがお腹の上で震えている。
 朝か、そうため息をついて布団を蹴飛ばすように目を覚ます。
(学校やだなぁ)
 突然だが、遙華は勉強が嫌いだ。正直机に小一時間縛り付けられているだけでも腹立たしい。
「行ってきます、お母さん」
 そう寝過ごしてしまった代償のパンを片手に、遙華はお気に入りのシューズで町へと飛び出した。
 遙華が住むこの十波町は人口八千人程度の普通の町である。
 繁華街はにぎわっているがほとんどが住宅地や工場で、特出したものは何もな……。
「違う! これは私の夢じゃないわ。それに十波町はもう……」
 その時世界が暗転した。天井が床で床が天上。遙華は勢いよく天井に叩きつけられて呻くことになる。
「いったい何が起こってるの」
 自分は日ごろの激務の中、眠りに落ち、そして。
「違う、私はショックでふて寝して、執務室にこもって、電気が堕ちて」
 その先の記憶はない。いやそもそもこの感じ。以前にも経験が。
「夢の中……まどろみ?」
 しかしこの夢は遙華の夢ではない。だとしたら。
「何が……起こってるというの?」
 その時遙華は廊下の向こうで声を聴く。
「たすけて、たすけて」
「ここから出して」
「もう苦しめないでくれ」
「誰か、かいほうしてくれ」
「ボクはもう! 何も食べたくない! 食べたくないんだ!!」
 その痛烈な叫び声に背筋を震わせる遙華。
 しかし、聞こえてしまったなら見て見ぬふりはできない。
 遙華は暗く冷たい、夜の廊下を歩いていく。
 天井と床が逆転した廊下をたった一人で、そしてその先に待っている地獄を垣間見ることになる。
 悲鳴は理科実験室から響いていた。
 理科実験室からは同時に、咀嚼するような音がずっと響いていた。
「だれかいるの?」
 その遙華の言葉には誰も、誰も声を返さない。
 ただただ、悲鳴が断続的に。時々強く鋭い悲鳴が、聞こえてくるだけなのだ。
「はいるわよ」
 そう遙華は扉を開けた。すると。少年が一心不乱に四つん這いで何かをむさぼっていた。
 その歯で捕え首を使って引くとピンク色の液体が糸を引き。ずるりとヌラヌラ光る何かが引きずり出された。 
 それは腸だった。少女の腸。
 横たわる黒髪の少女……小夜子は虚ろに天井を見上げて「もうかいほうして」とぶつぶつつぶやき。
 少年は涙を流しながら「もうたべられない」と泣いている。
「あなたCDね……」
 ここは、もしかするとあの少年が作り出したドロップゾーンなのかもしれない。
 そう思い至ると遙華の危機感が警鐘を鳴らす。
「異常だわ。ロクト! ロクト!!」
 告げて踵を返すと目の前に何者かが立っていた。硬質な肌。頭には巨大な目玉。すらりと伸びた腕は霊力をふきあげ、爆発させる何かを探している。
 愚神アルマレグナス。
 その圧倒的な霊力に遙華は無言で従うほかなかった。
 遙華は後ずさると少年の足に引っかかって転ぶ。
「きゃ……」
「なんで僕はこんなことになってしまったの?」
 そうぎょろりと、首を回してCDが遙華を見る。
「ぼくはただ、一人の人間としていきたかっただけなのに」
「あなた……まさか」
「ボクは愚神なんて食べたくなかった」
「生きながらにして愚神を食べたの?」
 遙華の脳裏にイメージが流れ込んでくる。それはCDがADと呼ばれる人物に愚神を食すことを強要させられている映像、その苦しみ。
 思わず遙華はその場で胃の中味を全て吐き出した。
「ねぇ、僕は人を食べれば人に戻れるのかな?」
 告げるCDは這いずりながら遙華へと迫る。
 遙華は抜けた腰を引きずるように、両腕で距離をとるしかなかった。

● 迷宮。夢。歌。そして

 今回は遙華が囚われたドロップゾーンにて。愚神CDと戦っていただきます。
 愚神と化したCDはリンカー一人分の戦闘力しか持ちませんが。その分ドロップゾーンを作成する力に秀でています。
 というのが彼は愚神の力の一部を保存するという力を有しており。
 その中にまどろみと呼ばれた。夢を司る愚神。
 アルマレグナスと呼ばれた迷宮を司る愚神の力が保管されているためです。
 その力を同時に使用すると、踏破不可能な迷宮が出来上がります。
 それは今回学校という形であらわされますが、どう歩いたとしても理科実験室にたどり着くことはできません。
 道が無いのです。
 ただ、その道を作り出す方法はあります。
 壁を壊すことです。
 ではどうすればいいのか。それを皆さんに解説で説明したいと思います。

● 律動 *************下記内容PL情報
 暗闇の中で、水音がこぽりとなった。
 それは不服だった。
「なぜリンカーたちが追跡を始めているの?」
 その囁きは誰かの耳に届いているが誰かは声を発さない。
「遙華はここで取り込む、その手筈、まさかあなた、裏切るの?」
 その人物は首を振った。それに声の主は不満そうにため息をついた。
「まぁ、良いわ。もうすでにこちらの手はずは整ってる、残念ながらチェックメイトよ。H.O.P.E.これであの歌も、あいつらも潰える」
 そう自分に対してつぶやくように告げた声はまた深いまどろみの中へと戻っていく。
 力を取り戻すまで、あと、すこし。

************************ここまでPL情報

解説

目標 CDの撃破

●踏破方法。
 今回、皆さんにはこの夢の迷宮を突破してCDを見つけ出し撃破していただく必要があります。
 ただし踏破方法が精神的にダメージを与えてきます。 
 というのが、この迷宮は10の階層に別れており10の鍵で守られているからです。
 鍵は皆さんの中の誰か一人。その人のもっとも幸福な場面として目の前に展開されます。
 人生で一番幸福だった時間、その時間を自分の手で壊す必要があります。
 大切な人を怖し、大切な時間を否定し。それでも先に進まなければなりません。
 もしくはその大切な時間と同化することによって突破できます。
 同化というのは、その光景を投影している人がその光景の中にとどまり幸福な時間を演じ続けることで、他のリンカーは次の階層に進むことができます。
 その場合、同化したリンカーは夢に取り込まれてかなりのダメージを負うでしょう。
 

●CDについて。
 彼はこのゾーンと密着して切り離せない存在となっているため。このゾーンから出すことができません。つまりはつかまえて連れ帰ることができないということです。
 彼の戦闘スタイルは二つのヨーヨーによる中距離戦です。
 今回持ちだすAGWは射程が9SQ程度で、攻撃力より命中精度を優先しています。
 そのスキルはほとんど愚神化しており独自の物を使ってきます。
 先ずは基本が二体同時攻撃で。
 そのヨーヨーからさらに散弾が発射されます。これは射程内の全員に範囲攻撃です。
 さらにそのヨーヨーを爆発させ防御力を低下させる攻撃をしてきますし。
 夢の力で残像を作り出すこともできますが。
 所詮強いリンカー程度の戦闘力しかありません。

リプレイ

プロローグ

 H.O.P.E.内部作戦司令室。
 そこでは緊急的に招集されたリンカーたちが状況確認のためにあわてふためいていた。
 展開がなにもかも急すぎる。
「そもそもお嬢が拉致されたって情報の出所は誰からだ」
『赤城 龍哉(aa0090)』が告げながら、背後の気配に意識を向ける。
 そこにはロクトが佇んでいた。いつもの涼しい顔を表情として張り付けてはいるが。それでもピリピリとした雰囲気は伝わってくる。
 その緊張感の正体はなんなのか。そう龍哉は眉を寄せてため息をつく。
 その後龍哉は『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』に視線を向けた。
 二人は招集された直後話していた。
 最近ロクトさんの動向が不振だったのは知っている。
 自分がいなくなったら、なんて事も漏らしていたな。
「だが、お嬢が拉致された先でまだ無事なら、それは英雄契約がまだ有効って事だ」
 告げる龍哉の言葉にヴァルトラウテは頷いた。
 だからここにいる。
「まだロクトさんを下手人と決めつけるには早いですわ」
「にしても、まだ尾を引くんだね。アルマレグナス」
『アイリス(aa0124hero001)』が敵陣営の情報を聴きながらそう告げた。
「まず間違いなく以前のパターン」
 『イリス・レイバルド(aa0124)』が張り詰めた声で告げる。
「まどろみの夢と、アルマレグナスの迷宮…………」
 イリスとしては因縁深い相手ばかりである。
「そしてボクは偽者といえども家族の形は壊せない」
 そう握る手のひらをアイリスは包む込むようにとった。
「偽者を本物のように扱えない……今回は時間もない」
 だから。
「ああ、私に任せたまえ」
「大体その情報もどこから出たんだ」
「エリザからもたらされた情報よ」
 ロクトが告げる。
「大丈夫、あの子は味方。あなた達が救った命があなた達に味方してくれている」
 そのあなたたちという言葉に『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は振り返る。
「遙華さん……どうか、ご無事で!!」
『月鏡 由利菜(aa0873)』はそう神に祈りをささげた。
『ウィリディス(aa0873hero002)』は頷き磨き上げた刃を振るう。
「あの人ってどうしても狙われやすい立場だから、心配はしてたんだけど……ともかく、取り戻せばいい話だね!!」
「状況確認は以上です」 
『蔵李 澄香(aa0010)』が資料を片手に告げる。
「拉致に関して、まだ犯人や状況の確定は難しいです。これ以上疑心を募らせるよりも私たちは一刻も早く彼女を救うべきです」
 グロリア社の業務はすべてロクトが引き受けてくれている。
「あのこ、有給たまってるのよ」
「どれくらいあるんです?」 
 クラリスが問いかけた。
「50日くらい?」
「消える寸前ですね」
 全員の準備が整った。
 そんな中部屋のすみっこで小さくなる『白金 茶々子(aa5194)』
 彼女の方は震えていた。
 そんな茶々子に寄り添う『詩乃(aa2951hero001)』
「大丈夫です、皆さんがいます、蛍丸様もいるではありませんか」
 その姿を見守る『黒金 蛍丸(aa2951)』と『シェオルドレッド(aa5194hero001)』
「そう、ですね」
 告げると茶々子は振り返り蛍丸を見た。
「自分はエージェントなんだ! 必ず助けて見せます」
「茶々子ちゃんの力が必要です、力を貸してください」
 蛍丸は茶々子の瞳に宿った決意に対してそう、告げた。
「ロクト……君の大切な遥華は必ず君の元へ届ける。だから……その手で抱きしめてやれ」
 『アリュー(aa0783hero001)』が出発前、最後にそう告げた。
 私がいなくなったら遥華を頼みたい、その言葉を受けてからずっと真意を考えてきた。
 しかしわからなかった。 
 だが。何かが起きているのだろう、だからこそ。
「消えるなよ、ロクト」
「ええ、そうね、善処するわ」
 アリューは戸惑う『斉加 理夢琉(aa0783)』の手を引いて部屋を後にする。
 救出作戦が始動する。


第一章 夢と迷宮

『鬼灯 佐千子(aa2526)』はその夢というものの脅威を知らずにいた。
 まどろみ、噂には聞いていたが恐ろしい愚神だ。
 今目の前で壁のゆがみにイリスが食われた。
 その向こうではおそらく『夢』を体感しているのだろ。
 それは悪夢にも幸福な夢にも変わるのだろう。
 だがそれを堪能する前にだ。
――ほう。
「どうしたのリタ。助けに」
『リタ(aa2526hero001)』がつぶやくと次の瞬間、学校の廊下を積み重ね作られた迷宮…………その側面が食い破られた。
 黄金の翼が広がって、打ち砕かれ、夢の残滓が。バラバラに吹き飛ぶ。
 鏡のように磨き上げられた夢の欠片は、褐色の肌の妖精や、山の様な巨体を持つ妖精、様々は姿を映しだす。
 しかし。
「案外手ぬるい方できたね」
 アイリスは幸福を自分の手で壊してもなお、そこに立っていた。
「イリスが時間がないと決めたのだから、虚像と遊んでやる暇もない」
 さぁ、行こうか。
 アイリスは視線だけで全員に告げた。
 人とは違う精神性。
 寒気のする安定感。
 だが今はそれが心強くもあった。
「すみちゃん、ここ、遙華の前に通ってた学校です」
「なんでわかるの?」
 澄香はそう『卸 蘿蔔(aa0405)』の言葉に首をかしげた。
「私、一度見ましたから」
 だからこそ、この学校が遙華の夢とは違うということも分かる。
「なんだか、あの時のようにとげとげしていないというか」
「遙華の通ってた学校はロックな学校だったの?」
「そう言う事ではなく。もっと遙華にとって学校って、怖いもので傷つけるものだったとおもうのです、けどここにあるのはなんというか」
――張りぼて?
『レオンハルト(aa0405hero001)』が告げた。
「そうです」
――まるで、遙華さんの夢を再現しようとしているみたいですね。
 クラリスの言葉に澄香も頷いた。
――いかにせよ、我々はこれを踏破するのみ。最深部にたどり着けば結論がおのずと待ち構えているさ。
 そう『ナラカ(aa0098hero001)』が揚々と告げた。
『八朔 カゲリ(aa0098)』は黙っている。
 その手は常に天剱にかけられている。
 今のところガデンツァの痕跡はない。蘿蔔は周囲に目を配る。
 しかし。
「アルマレグナスって、迷宮の中にいろいろ配置してたよね」
 澄香は迷宮をアナライズ、的確に一行を導いていく。
 遙華の霊力の痕跡はまだ発見できない。
 ただ、霊力が集中している場所はわかる、そこに向かって降りていけばいいのだ。
 それはわかった。
「いまのところ反応はないけど、警戒は怠らないようにして」
――任せておくがいい。
「ありがとう、ナラカちゃん」
 階段を下りる。佐千子は踊り場で上から敵が来ないか見ながら全員を下の階に下ろす。
「完全に取り込まれない様に気を確かに持たないとな」
――虎穴に入らざれば虎子を得ずとは言いますが、無茶をしますね。
『御神 恭也(aa0127)』と『不破 雫(aa0127hero002)』が告げたその瞬間である。
 空間がねじ曲がって殿の二人がそれに包みこまれた。
「やられたね、まさかトラップが二つ同時に仕掛けられているなんて」
 アイリスが告げるもむなしく二人は迷宮の中に引きずり込まれていく。
 水に沈むように夢の中に沈んでいくのは『榊原・沙耶(aa1188)』とカゲリ。
 まとわりつくように過去が、幸福が、追いかけてくる。

第二章


 それは幼いころの話。
 今より背も小さくて。
 今より非力で。ひょっとすると笑うこともあったかもしれない。
――覚者が? 少し想像しがたいがね。
 それは平凡で、普通で、繰り返しの毎日で、それに浸る自分もそれでいいのだと思っていた。
 親。兄妹。そう、妹。
 自分の後をついてくる彼女はよく笑顔をカゲリに振りまいてくれていた。
 だから、幸福な時間と聞いて真っ先に思い浮かべるのはその時の事であろう。
 カゲリの見る夢とは即ち、幼き頃、家族が平穏無事であった頃に他ならない。
 愚神から妹を護ろうと両親が命を散らす事もなく。
 また妹が眼前で両親を愚神に殺され、心を壊して昏睡する事もない。
――ただただ、平穏な日常。
「俺は夢を見ているのか?」
 カゲリが問いかける。幼き自分。
 歳にして言えば十二歳の頃、小学校を卒業する前となる。
――いつかに見た夢だ。正直飽き飽きだ。
 そう告げる声はナラカ、しかし。
 通学路の端にも、民家の屋根にも。電柱の上にも、道を走る猫の影にも彼女の姿は存在しない。
 その道を自分と、幼い妹がかけていく。
 病室で横たわる彼女の姿が重なった。

「「だが、それが如何したと言う」」

 声が重なる、自分とナラカの。

 見ればカゲリは剣を握っていた。全てを浄化する黒夜を体現した様な剣。
 その剣を一閃。すると。
 道路も、生垣も、住宅地のわずかな喧騒さえ一気に掻き消え。
 そして阿鼻叫喚の地獄絵図が目の前に広がった。
 女性の悲鳴。
 血を流して倒れる女性、あれは母。
「これは、まどろみの力なんだろう?」
――そうだ。
「一度乗り越えた試練だ。御前から言わせると」
――そうだな。
「ここでしゃがんでいる暇はない」
 カゲリの放つ斬撃は炎となって、先日まで平和で満たされていたであろう器を滅ぼす。
 目の前には血を吹いて倒れる少女。
「おまえ!」
 そんなすべてを破壊しつくそうとするカゲリの前に立ったのは幼き日のカゲリ。
 その炎は燃えるような怒りに滲んでいた。
 目の端には涙。
「…………」
 それへとカゲリは無情に刃を振り下ろす。
 空を舞う小さな体、あふれる鮮血。
 あの日すべてを守ろうとする自分の姿さえ。カゲリは切って捨てた。
 壊すことを躊躇わない
 何故ならそれは既に過ぎ去ってしまった過去であるから。
「せめて、跡形もなく消えろ」
 食卓で仕事の事を情熱を込めて熱心と話す父の姿を覚えている。
 それを焼却する。
 そんな父を苦笑して眺めている母の、その優しい微笑を覚えている。
 それを焼却する。
 ……そんな二人の間で、ころころと表情を変えて楽しそうな妹の表情を覚えている。
 それを焼却する。

――肉塊と化して四散していた、両親の姿を覚えている。

…………その血の海に倒れ伏していた妹の姿を覚えている。

 全てその手で燃やし尽くす。
 その胸にあるのは、こんなことをなさせる愚神に対する怒りでもなく、あの日の公開でもなく、冷え切った、ただただ冷え切った心だけ。
 なぜならカゲリは知っているから。
 過去は覆らず、また死者は蘇らない。蘇るとするならそれは最早死霊かそれの類である。
 そして死者に囚われるのは、死者を枷と貶めると同義である。
 故に……。

「総て背負って征くと、そう決めている。その果てに、求めた光が得られると信じて」
「お兄ちゃん」
 振り返るとそこには妹がいた。あの日と同じで笑いかけている。
 華冠を差し出す少女。
 それに対してカゲリは剣をその手に握っている。錆付いた両刃の剣。
 
 前へと進む為ならば、過去の安息など焔に焼べて構わない。

 総てを焔に焼べた暁に、求めた光を齎せるなら。

――彼が宿すは浄化の焔にあらず。其は終焉の劫火なり。
 新たな世界に光を齎す為、総ての敵を燼滅する為だけに燃え盛る神火なれば。

 振りぬいた刃は、斬撃はすべてを真っ二つに、かぎ穴を焼却する。

 世界は炎に包まれた。
 そして。
「もう、やめてください」
 何度目か、振り下ろそうとした腕を少女に掴まれとめられた。
 ナラカはその姿に満足そうに微笑んだ。
 カゲリの中で。
 その悲壮の決意を、雄々しき決断を、そしてそれから先より今に至るまで足跡を。
 その意志は比類なく、また比肩する者もなく。
 なればこそ、カゲリは自分と共にある価値がある。そう思えるから。

   *   *
「沙耶。ここはどこ」
 そう『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』が暗闇の中でつぶやいた。
 しかしそれは真の暗闇ではない、薄暗い廊下の向こうに足元を照らす非常灯。
 目がぼんやりと慣れてくると沙羅はそこが見覚えのある場所だと気が付いた。
 それは、先日グロリア社で実験したときの施設。
「私にとっては、医学の進歩に勝る幸福はないわ」
 その時唐突に沙耶の声が聞え、沙羅は振り返る。
「ワイスキャンセラー」
 その特効薬が完成した場面を沙羅は思い出す。
 すると空間が一気に明るくなった。
 夜、研究所の清潔な通路。慌ただしく行き交う人々。
 けど違う、歩く人が違う、沙羅が見たことのない人間も多くまじっている。
「これは?」
 何か嫌な予感がする。
 沙羅は走った。ワイスキャンセラーの実験がメインで行われていた実験室。完成の喜びを分かち合ったあの施設。
 その扉を押し開くと沙耶が立っていた。
 そして沙羅にこう、微笑んだ。
「あらぁ、遅かったじゃない」
「沙耶。何してるの?」
 沙耶はその手にコードの束を持っていた。その先には大事な実験装置や研究データを保存したPC。
「ここから出る方法、気が付いたのよぉ。こうすればいいの」
「ちょっと、やめて!」
 次の瞬間沙耶は全ての機器を停止させ、全てのPCの運転を止めた。データは破損し、培養中の特効薬もすぐにダメになる。
「なんてことを!!」
「小鳥遊ちゃん」
 告げる沙耶は落ち着いてる、そして電気の消えた研究室を見渡していた。
「私が興味があるのは過程であって結果じゃないの」
「はぁ?」
「結果が出た以上はそれ以上の幸福はない。壊す事に何の躊躇いがあるのかしら」
「それ壊しちゃったら、だれも、誰も助からないじゃない。」
「そもそも、科学の発展なんてのは挑戦と失敗の記録の繰り返し」
 その言葉が研究所全体に響いて聞こえたのを沙羅は覚えている。
「医学において失敗というのは死であるケースが殆どだし、死屍累々の上に医学の進歩があるのなら私は死を振り返らないもの」
 世界がぐにゃりと曲がって沙羅の体が急速に落下を始めた。
「そんな暇があるなら研究をして更なる医学の発展に貢献するのが私よ。
 まぁDの連中と同じ、狂気の世界の側、といってもいいんでしょう」
「そうね、あなたはどうしようもない」
 出口のない迷路をさまよう亡霊だ。
 そう沙羅は思った。
 次の瞬間沙羅の目が覚めることになる。
 いつの間にか沙羅と沙耶は分離してそこに横たわっていた。
 その隣にはぼろぼろの体のカゲリ。そして蘿蔔。
「みなさん取り込まれていたんですよ。戻って来れてよかったです」
 蘿蔔が微笑みかける。
「え? あんただけ? 不安で仕方ないんだけど?」
 沙羅が起き上がりながら強がる。
「え~、久々に私と一緒で嬉しいくせに」
「あー、本当に状況を知りたいんだけど」
 沙羅が告げると代わりにナラカが答えた。
――はぐれたらしい。
 いつものあっけらかんとした調子だったが沙羅は一瞬でこれはまずいと悟った。
「はぐれた?」
「すっごい廊下が、波打ってびゃーーーーって、なりました。もう誰がどこにいるかわかりません」
「はぁ」
 ため息をつく沙羅に全員へ告げる沙耶。
「まぁいいわぁ、目指すところは同じだし。進んでいけばわかるわよぉ」
 その時だった。 
 突如廊下の向こうから光り輝く球体が走り寄ってきて。そして。
 蘿蔔の前で急停止する。見上げるような光の球体であるそれは口をぱっくりと開くと蘿蔔を迎え入れるようにブオンと揺れた。
「…………私の番ですね」
 告げると蘿蔔は二人を振り返る。
「待っていてください、必ず戻ります」
 そして蘿蔔は光の中に飲み込まれていった。


第三章

 由利菜はまどろんでいた。頭がぼんやりする。寝起きの半覚醒。
 そんな中でもウィリディスが近くにいない。それだけはわかった。
 それどころか。
「体が縮んでいる?」
 鏡で見る自身の姿は小さく、華奢で。まだ成長しきっていないあどけなさを残す。
 それだけではない。身に纏っているのは中学の制服……だろうか。
 記憶がぼんやりとしてはっきりそう確信できるわけではないがそうらしかった。
「クレア」
 次の瞬間はじけるような声が背をおした。
 振り返れば女子トイレの入り口に少女が佇んでいる。
 彼女の名前はウィリディス。
 いや、この時はまだ『皇詞音』だったか。
「どうしたのです? ウィリディス」
「ん? ウィリディス? それに話し方もおかしいよ、クレア」
 そう小首をかしげるとウィリディスは告げた。
「今日、家で誕生パーティーするんだ。クレアもおいでよ」
 その時由利菜によみがえる記憶があった。
「ええ、行くわ。そうね。誕生日……だったものね」
 そして場面は反転する。
 突如由利菜は神社にいた。
 詞音の自宅らしき神社。
 漂うのは甘くかおる、ケーキが焼き上がる匂い。彼女の誕生日パーティー。
 それは神社から?
 違う、自分の手元のケーキから。
 自分は、あらかじめ用意していたのだ。
 誘われるまでもなく。
 そう、そうだ、そうだった。
 自分もこの日を楽しみにしていたのだ。
「クレアが作ってきたバースデーケーキ、すごく美味しい……本物のパティシエールになれるんじゃない?」
 告げるウィリディスはテーブルから身を乗り出して由利菜に告げる。
 いつの間にか自分たちは居間にいた。
「ふふ、ありがとう。……でもあいにくだけど、私はリンカーになりたいのよね」
 告げる由利菜。
「クレアってもったいないの」
 そう不思議そうな顔をするウィリディス。
「あたし……決めたんだ。将来は医者になるって」
「医者?」
「……そう。やっと、打ち込めそうなものが見つかったんだ」
 そう夢見るようにウィリディスは語る。
「アスリートも悪くはないと思うけど……あたしは能力者じゃないから、どうしても見劣りしちゃうし。……今の世の中じゃ、愚神や従魔、ヴィランの抗争なんかで怪我する一般人も多いしね」
 その時、テレビの電源を切るようにその光景が途絶えた。
 気が付けば目の前には今のウィリディス。
 そして自分も元の身長。元の服装に戻っていた。
 ウィリディスはゆっくり語りだす。
「……多分、これはあたしのシオンの記憶の欠片。もしユリナの記憶を参照しているんだったら、ユリナのお父さんやお母さんがいるでしょ」
 暗い部屋で二人、ウィリディスはブラウン管テレビに視線を落としている。
 目元が伏せられ表情が読めない、由利菜はそんな彼女が心配になった。
「……確かに、クレアがずっとシオンと一緒にいられたら、二人にとってすごく幸せだったと思う」
 その言葉に由利菜は静かに瞳を閉ざす。
 思い出せるのは楽しかった記憶、クレアと詩音だった時の、楽しい記憶。
 しかしそれはもう、取り戻せない。
 それは理解している。理解しているのだ。
「でも……あたしの前世の一つがシオンだったら……。シオンが死ぬ結末がなければ、あたしはこうしてここにいなかったとも思う」
「…………そうですね」
 由利菜はウィリディスに柔らかく微笑みかけた。
「だから……ユリナ、この槍であたしと一緒にこの記憶を払って!」
 そうウィリディスが告げた瞬間部屋に明かりがともる。360度隙間なく設置されたモニターに、表示されているのは全て、失いし青春の日々。
 もう帰ってこない、彼女との日々。
 それらすべてを。この手で否定しなければならない。
「……強いのですね、リディス」
 だがこれは肯定でもある。
 目の前にいるウィリディス、彼女が本物でここに存在するという肯定でも。
 由利菜は共鳴した。
 槍を一回転させるとまずは、目の前に鎮座するブラウン管を一撃で叩き切った。

    *    *

 そんなまどろみの夢に抵抗する者がいる。
 恭也は自身の体と繋がる霊力の線を頼りにまどろみの能力を使用する者。
 つまりはCDを探知しようとうめき声をあげながら踏ん張っていた。
 恭也はすでに察している。
 この空間は厳重に守られており、自分たちはその扉を開くカギとなる必要があるのだろう。
 なぜわざわざそんなに面倒くさい仕掛けにしたか分からない。
 思惑があるのか。それとも完璧なものは作れないためこのような弱点を抱えることになったのか。
 だがそんなことはどうでもいい。
 つながっているなら逆探知も可能なのではないか、そう恭也は考えた。
 遙華の居場所。そして情報。
 それでも恭也の周囲を古い記憶が流れていく。
 それは恭也の恭也の両親が健在の時、力を得る事に執着しておらず同年代の友人となんら変わりの無い生活を送っている。
 そんな時期の話。
 その光景を郷愁にもにた思いを抱きながら見送って。
 恭也は集中をとがらせていく。
 もっと深く、もっと、もっと、奴を……見つけるために。
「奴に取り込まれることは、同時に奴と繋がる事になるはずだ」
 そう誰にでもなく告げる恭也。
「上手く言えば、その繋がりを利用して相手の情報を引き抜けるかも知れん」
 その言葉に声を返したのは雫。
「虎児を得たい気持ちは解りますが、入るのは虎穴ではなく相手の胃袋の様な物ですよ?」
「俺の意識が取り込まれたら、雫が探しでしてくれ。俺を中継すれば、恐らく探索は可能なはずだ」
 その言葉にしらーっと答えを返す雫。
「やれるだけの事はしますが、キョウも気を付けて下さい。自力での復帰が難しい時は他の皆さんの手を借りる事にします」
 やがて見えたのは自分の記憶ではない。記憶の断片。
「これは……」
 度重なる拷問にもにた悪夢。
 体内に取り込まれる邪念あふれた霊力。
 無限の増幅と再生。爆発して死んだ子供をみた。
 そのまま恭也は沈んでいく。より深い地獄へと。


   *   *


「利用されて遥華が誰かを壊す未来は見たくない、だから無茶するよアリュー」
 淀んだ何かに飲み込まれながらも理夢琉はそれに手を伸ばした。
 夢から逃れるのではなく、むしろ夢の内部に。
 まどろみの夢は優しかった。
 けれど。ここから先は自分を傷付けるだけの領域。
 それは理解していた。
「何があっても俺の名前は忘れるな」
 その言葉に頷いて、理夢琉は目を瞑った。
「幸せな〔時間〕というならルネと一緒に歌ったあの時間だよ」
 歓声が聞える、それは遠かったが徐々に近くなり、そして目を開けば理夢琉はステージの上だった。
「どうしたの?」
 ルネが微笑みかけてくれている。
 理夢琉の手を取って、取り落したマイクを握らせて。
「次の曲は私たちが一緒に作ったはじめての曲。聞いてください『共鳴の音~bonds~』」
 二人は振付まで完璧にシンクロさせる。
 歌の合間にルネは理夢琉を見た。
 ルネが楽しそうに歌い声を重ねれば、ルネさんと歌っているという実感が芽生えて嬉しかった。
 ずっとしたいことだったから。
「私の歌にルネの声が重なって新しいメロディが生まれるたびに心が踊ったのを覚えてる」
 スポットライトが当たってルネがキラキラ輝く、水晶の体が青い光を周囲にばらまいて。眩しかった。
「理夢琉ちゃん。素敵だね」
 ルネが言った。ルネの好意が嬉しかった。楽しかった、幸せだった、ずっと歌い続けたかった。
「けど、違ったんだよね。そうじゃない、真実はそうじゃない」
 急に音がやんだ。全てのライトがはじけ飛び、理夢琉が身をすくめるとルネは腕を伸ばす。
 そしてその腕に貫かれた誰か。
 そう誰か。
 自分ではない。
 澄香。
 その指先が降れると少女の体は熟れた果実のようにあちこちから血を吹きだして。そして。
「シンクロニティ・デス……」
 血の海に澄香は沈んだ。
 そして目の前に立っているのはガデンツァ。
 世界がひび割れる音がした。
「ガデンツァ。私は」
 強烈な思考負荷。まどろみの夢すら覆すようなイメージの逆流。
 理夢琉はあえて、幸せな夢を見続けることではなく。夢の裏の真実を見つめることを選んだ。
 幸福な夢ではなく、辛い現実を選んだのだ。
 それに耐えきれず迷宮が悲鳴をあげている。
「ガデンツァの痕跡がないか探ってみる」
――ドロップゾーンの中だ、異変があれば遮断するぞ。
「うん」
 ルネとの作った歌を歌いつつ。ガデンツァの黒い水晶を両手で覆いマナチェイサー発動。
 痕跡を追う。
「ルネを壊して遥華の元へ。
 でもそれだけじゃダメな気がする。
 ガデンツァを見つける」
――遙華は大丈夫だ、仲間がいる。
  
 アリューは意識を覚醒させた。
 今や理夢琉は夢の力と対等に渡り合っている。
 ただそれは一人だけの力ではない。
 アリューは見た。
 佐千子が、二つの球体。それをおしとどめている姿。
「すまない。頼んだ」
 その声はもう届いていない。
 佐千子の魂は二つに別れ二つの夢を同時に見ている。

   *    *

 佐千子は眺めていた。右側に映し出されるのは……。
”事故”により身体を失う前、気兼ねなく友達と遊んだり運動したり、己も両親も屈託なく笑えていた頃の夢を見る。
 毎日が楽しかった。夢もあった。
 今はそれは思い出せない、忘れてしまったのか、もとから張りぼてだったのかも。
 休日は町へ出かけた。買い物をした。腕や足を出すような服を着ようか、買おうか友達と相談した。
 両親とケンカした。それでも最後には笑いあえた。
 そんな日々。
 左手に見える形式は。それからはるか未来。
 体を壊され、心も壊れかけたがそれでも生きていた。
 依頼を受ける。英雄と協力し、たまには喧嘩もする。友達と共に歩む。時に頼られ、時に頼る。 
 それは、あまりにも、あまりにも当たり前の……、当たり前となった”日常”
 それを夢に見る。
 まるで、どちらを選ぶ? と言われている気分だった。望めばきっと、どちらか片方の夢は見られるのだろう。しかし。
 どちらかを選べばどちらかを捨てる結果になる。
 なぜなら。五体満足の自分と。今の自分。
 決定的に違っていて。そして失ったからこそ得た者もあるからだ。
 だから佐千子は右手に銃をあげる。
「………………全く。我ながら未練がましいわね。――でも」
 夢は夢だ。もう取り戻せない。だから。
「今更ね」
 佐千子は迷わずトリガーを引いた。
「過去を捨てることはできないし、そのつもりもない、けどね」
 何度も、何度もトリガーを引く。その銃口の先で、幸せそうに歩く自分が。友人が、両親が頭を吹き飛ばされ倒れていく。
「過去があったからこそ今の私があると知っている」
 今の己だからこそ出来る事があり、守れる者がいると知っている。
 幸福な記憶は大事な思い出として、己の内にだけあれば良い。
――そうだな、肯定だ。
 リタの声がやっと聞えた。
 その言葉に佐千子は笑みを作ってそして、最後の弾丸を叩きつけた。
 そして現在の幸福。
 それを佐千子は見つめる。
 それに体が同化していくような感覚。
 夢の中に落ちていく、眠りの中に落ちていくようなあの感覚が全身をからめ捕る。
 しかしそれにも佐千子は抵抗した。
「私は今、依頼を遂行していて、夢を見て、覚めて、そしてまた夢を見ている。そうよね?」
――肯定だ。佐千子。
 その声は嘘じゃない。夢じゃない、そう思えるから、銃口を向ける。
「正直。私自身今がそんなに気に入っていると思ってなかった。けど、こうして出てきたってことは」
 これも幸福なのだ。佐千子はそう思った。
 当たり前となった日常は、いつしか過去に劣らぬ幸福となっていたのだと。
 それはとても喜ばしいことだと。

「歓迎ね」

 だからこそ、胸を張ってそう告げた。
 高らかに、宣言するように。

「………………全く。お節介な愚神も居たものね。――でも」

 この夢は他人に与えられて得たものではない。
 己が掴み取ったものだ。
 たとえ壊そうと、きっとまた掴み直してみせる。
「もう少しましな出し物を用意してから出直しなさい」
 そう告げて佐千子はトリガーを言いた。口の端を浮かべ、幸福を撃ち抜く。


   *    *

「見つけた! ガデンツァの痕跡」
――な、どこに。どこにいる。
 一瞬ビビるアリューである。こんなに簡単に見つかると思っていなかった。
「うん、でも私が見つけたのは。もうここにはいないって痕跡」
――ここにはいない?
「うん、それがね、たぶん遙華さんを追おうとしてたの」
 けれど、ガデンツァはこの迷宮を突破できずに途中であきらめて帰っている。
「三層目くらいまでは反応があるんだけどね。でもこの階層には反応がないの。だから」
 現在七層目。ここまでたどり着けなかったガデンツァ。それは何を意味するのだろう。
 それだけ調べ終えると理夢琉は振り返る、そこにはルネがいた。
 ルネとはあの日のルネだ。
 公園で、みんなで語らった。
 楽しいこと、嬉しいこと。今後、未来。
 ルネは笑顔で聞いてくれた。
 それを。
「ごめんね、ルネ」 
 理夢琉は歯を食いしばって破壊した。
 氷の狼たちがルネの破片を食い破っていく。
 そんな中でもルネは笑みを絶やさなかった。
 やがて夢が終わる。とけるように周囲の光景が変わり、そして佐千子が手を差し伸べてくれた。
「おかえり」
 その手を取ると理夢琉は告げる。
「蔵李さんのライヴスを見つけた、こっちです、ついてきてください」
 告げて走り出す理夢琉。
「遥華と一緒に帰るんだ、過去を超えてもっと幸せになる為に!」
 そして八層目に至る。残る扉は二枚。




第四章 爪痕

「待っててください、今行きますから」
 蘿蔔は光の先に手を伸ばした。どんな地獄が待ち受けているか想像しながら。
 しかし。
「あれ?」
 抜け出た場所はどこかの居間。
「ちがいます、これ」
 あのテーブルの形。歯型のついたドアノブ。
 よく使っていた柔軟剤。そしてキッチンから聞こえる母の鼻歌。
 間違いない。
 何度も夢に見る。
 両親との夢。
「ママ?」
「ん? どうしたの?」
 そうお玉をもった母が顔を出す。
「パパ?」
 その声に呼応するようにドアが開かれ父が姿を見せた。
「これは……」
「お腹が減ったの? 夕飯もうすぐだからね」
 告げると父は蘿蔔を抱き上げた。
 父は軍手をしていて少し汗臭い。
 この光景に蘿蔔は見覚えがあった。
 そう、娘の年ごろを想定して部屋を増やすべく、引っ越しの作業をしていた、その日だった。
「アルバムどこに入れる?」
「車に積めばいいんじゃない?」
 そんな会話が蘿蔔の頭上を通過していく。
 そんな蘿蔔の傍らには分厚いアルバムが何冊もあった。
 それをめくると、御願いしてもいないのに父が昔の事を語ってくれる。
 蘿蔔が生まれた時、名前の理由。立った時、初めて言葉を覚えた時。
 ご飯が運ばれてくる。
 母の料理が大好きだった蘿蔔は、夢の中とわかっていてもそれを口に運んだ。 
 あの時と同じ味がする。 
 あの時と同じ。あじが。
「買い物はどうするの?」
「近くにスーパーがある。車でいくさ」
「学校は遠いのよね?」
「だけど病院は近い。心配だ中学生になるくらいまでは車で送り迎えをしよう」
 新しい街に引っ越したらどうしたい。
 新しい生活は。
 そんな話をご飯を食べながら永遠として。
 いつものように布団に入った。
 母の手を握ると握り返してくれる。
 母は言った。
「蘿蔔が生まれた時、寝返りをうって、立って、大きくなってくれて。ママとパパと呼んでくれて嬉しかったのよ」
 告げる母の顔が霞む。蘿蔔は目に涙が浮かぶ。
「身体のせいで辛い思いをさせるかもしれない。
 でもどんな時も自分の心を大事に…………そうしたいと思えるならそれに従いなさい。
 希望を捨てず想い続ければ、いつかきっと」
 そう告げて母は蘿蔔を抱きしめた。
 その背に手を回して蘿蔔は語りかける。
 母でも父でもない。だれか。
 レオンハルトに。
「こんな幸せな時間もあったんですね。ずっと辛い思いさせてると思ってた」
――前に進もう、遙華が待ってる。
 頷く蘿蔔。それを忘れてはいない。
「うん…………」
 告げると蘿蔔は立ち上がる。その手には銃が握られていた。衣装がゆっくりと光に包まれ戦闘衣装に変わっていく。
「お父さん、お母さん」
 満たされた気持ちで、寝息を立てる大切な人へ。
「ありがとうございました」
 銃弾は嵐となりすべてを食い破る。
 その時、遠くから声が聞えた。

「それをみんなに教えてもらった。だから」

 その声を頼りに蘿蔔は夢の海を泳いで進む。

   *   *

「遙華さん!!」
 蛍丸があたりを見渡す、ここは誰かの夢の中、自分のではない。
 その夢に囚われてから長い時間がたった。
 その間蛍丸はずっと茶々子の日常を見守っている。
 普通の女の子だった茶々子は家族に守られ普通の生活をしていた。
 家族からは従兄弟。つまり蛍丸が活躍していることをお話してもらいながら。
「すごいですね! 茶々子尊敬します」
 そんな中だ。
 ある何でもない日、茶々子は友達とボール遊びをしていた。
 その時、歩道を走る友人に車が突っ込んでいくのが見えた。
「これが、茶々子ちゃんの」
 茶々子は走る、懸命に手が届けばきっと助かる。運良ければ自分も転がってと考えながら全速力でと。
 しかし、間に合いそうにないことは自分でもよくわかった。
 その時だ。
 蛍丸は目にする、小さな体に活力がみなぎったのを。
「私、頑張ります!」
 と腹を括った瞬間茶々子は加速した。
――あなたが頑張り続けるのなら、きっと届くはずよ。あなたは頑張れるかしら?
 そう声がして、頷いて。
 結果茶々子は友達を救いだしていた。
 その日はお祝いだった。茶々子にはみながなにを喜んでいるか、はっきりとは分からなかったが嬉しかった。
 口々に聞こえる声。
「私たちをまもって」
 その声に導かれるままに蛍丸に会いに行き、そして。
 月日は流れて今になる。
 茶々子は蛍丸に頭を下げられ頼まれた。
 大切な人を救ってほしい。と。
 蛍丸はここに向かう前に告げた。
「茶々子ちゃんのことはもう一人前だと認めているから」
 その言葉に茶々子は思う。
(ここに残って家族を守ることはできない。でも……)
 家族を選ぶか、面識のない女の子を助けることを選ぶのか、悩んだ。しかし。
 茶々子は静かに強い口調で言う。
「ごめんなさいなのです。私はエージェントなのです。こんな頼りない私をたった一人だけ。
 認めてくれた蛍丸お兄ちゃんに頼まれたことがあるのです」
 行ってきますと一言残し、玄関から外に向かって走り去る。
 その姿を蛍丸は追った。

   *     * 


 遙華は迫る恐怖におびえていた。共鳴ができなければ抵抗もままならない無力な自分。
 このまま屈してしまうしかないのか。そう思った。
 しかし。これが聞えた。
「遙華…………」
 それはいつも笑顔を絶やさない少女の声。
「大丈夫…………な、訳ないか。でも、ボクはキミと痛みを分かち合いたいよ」
 ハッと遙華は顔をあげる。
「なんだ? だれだ? なぜ僕の迷宮にアクセスできる?」
「私は…………何があっても遙華の味方で、遙華を守るよ」
 声が聞えた。
「蘿蔔?」
「この前言ったこと覚えてる?
 遙華の力が必要になるって…………他でもない、遙華だけが頼りなんです。
 皆を助けて…………」
 自分が? 助ける? 助けられてばかりなのに。
 そう遙華は思った。
 けれど。
「外の世界ではそれくらい大変なことになってるみたいね」
 自分が震えて引きこもっている間に、世界は悪い方に向かって行って。そして自分が今ここにいる。
 そして。
「友達がきているの? そうなのね?」 
 遙華がそう問いかけるとCDは迷宮を揺らして遙華を地面に引き倒した。
「だったらなに? 誰かがたどり着く前に、お前を」
「助けにいくって、約束しました。待っててください、遙華さん」
 蛍丸の声が響いた。
 その声に頷くと遙華は啖呵を切る。
「私は! 私は屈するわけにはいかないわ。だって仲間が、友達が待っていてくれてる。絶対に抗う。私は友達が悲しむ姿なんて見たくないもの」
 こんな自分と友達になってくれた。家の名前もひねくれた性格も関係なく優しくしてくれた。
 だから。
 泣かない、涙を拭いて、短刀を握る。AGWだ。共鳴していないと普通のナイフよりなまくらである。そして彼女の傍らにロクトはいない。
「裏切りも、痛みも。私は何とかなるって知ってる、頑張って前に進めば、素晴らしい未来が待ってる、それをみんなに教えてもらった。だから」
 遙華は叫ぶ、その身に宿った霊力という特別な力、それを全力で発し、いのる。
「助けて! みんな! 私はここよ!」
 突如壁面が砕けた。
 教室の黒板がガラスのように砕けて、その向こうから姿を現したのは。
「澄香!」
 澄香はハートや星マークのエフェクトを飛び散らせ、軽やかな足取りで遙華の目の前に立った。
「御待たせ、遙華。幸せな夢は、どうせなら現実で見よう」
 そう遙華を断たせると、その体にルネが仕掛けられてないか簡単に調べる。
「大丈夫そうだね」
「うん!」
 そう微笑んだ矢先、澄香にヨーヨーが襲いかかる。
 それを弾いたのは蛍丸とアイリス。
「助けに来たなのです!」
 告げるのは茶々子。
「さぁこっちへ」
 遙華の手を取るのは沙耶。それに振り返れば蘿蔔がいた。
「遙華、間に合ってよかった」
 即座に銃を構える蘿蔔。
 沙耶は戦闘区域から遙華を遠ざけるかかり。
「ああ、そうね、小鳥遊ちゃん。彼にはきかないといけないことがあるわねぇ」
 振り返ると沙耶は言った。
「まどろみ、アルマレグナス。それともう1つ。ガデンツァの遺伝子を持っていた筈だけど、それを使わなかった理由」
「……あ?」
 CDはまるで溶け堕ちるように迷宮から剥離。その体を自由にして臨戦態勢に入る。
「まどろみ、アルマレグナス…………他の、ガデンツァの遺伝子はどこへ。まさか、ルネさんに?」
 その蘿蔔の言葉にCDは明らかないらだちを見せた。
「誰かに奪われたのかしら。それともう1つ。DDとの最後のやり取りで『CDが奪われた』と言っていた筈。誰が奪ったのかしらぁ?」
「そんなこと、僕が聞きたいに決まってるだろ! クズが!」
 放たれる攻撃は全て、アイリスと蛍丸に遮られる。
「残念だけどワイスを打った所でもうCDは手遅れでしょう。もう会うことはない」
「く……」
 CDはその言葉に対して、目に涙を浮かべて首を振った。
「自業自得か、被害者かは、解らないけど。あなたの事伝えておいてあげる」
 沙耶は遙華の手を取って走り出した。
――戦わなくていいの?
 沙羅が問いかける。
「あらぁ、やることが終われば戻ってもいいわよ」
――けどこのままじゃ。
 遙華をグロリア社に返せない。そう沙羅は思っている。
――多少強引でも、HOPEかモノプロに身柄の保護を申請しておくわ。いい?
「構わないわ、沙羅。その方が客観的に状況をみられると思う。春香は?」
「無事よ。今は弱ってるけど、時期に回復するわぁ」
「それにしても愚神を経口接種なんて、野蛮過ぎないかしらねぇ。
 それで愚神になるのなら、私達人類はとっくに牛か豚じゃないの」
 直後、CDの背後の壁が破られる。太い腕が伸びてCDの喉をわしづかみにすると龍哉はCDを地面に叩きつける。
 そのバウンドする体を蹴り飛ばすと。CDは壁に叩きつけられた。
 その体を銃で撃ちぬく佐千子。CDは血を吐きながら迷宮に飲み込まれ天井から再び現れる。
「コケにしやがって! 全部。全部壊してやる!!」
「成程、つまり手遅れの段階か。薬は出来上がったというのに運の無い事だね」
 アイリスが確認するように告げた。
「人に戻りたいのだったら、人である事を忘れるべきじゃなかったね」
「本来不要な手間を掛けて、お嬢を人知れず取り込もうとした愚神の目的はなんなんだろうな!」
 龍哉が告げる。
 ただでさえ、まどろみやらルネやらお嬢に関わる案件は因縁めいたものが多い。
「だが、それもお嬢を無事取り返してからだ」
 龍哉は真っ向からCDを見すえる。ここからが自分の役目だ。
「なら俺は、俺が出来る事をやるだけさ!」
 先ず動いたのは蘿蔔、牽制射撃でCDの動きを制限する。
 龍哉が迫るも、万全の状態では当てるのは難しい。回避される。
 しかし足元から突如放たれた氷の猟犬にて動きをとめると。
「くっ……」
 アイリスが眼前に迫る。
「さてと……では遙華さんを奪い返しに来たので歓迎したまえ」
 アイリスを退けようと振るったヨーヨーは爆発するが。
「どこかで見た能力だらけだねぇ」
 あの愚神の出力と比べると赤子のようだ。
「君はイリスと戦ったことがあるだろう。爆発程度で私の体勢を崩せると思ったのかい」
 盾によって吹き飛ばされるCD。
 そこに澄香が攻撃を加える、澄香はいつの間にか理夢琉と合流していた。
 理夢琉は拒絶の風を纏いつつ。その姿を憐れんだ。
――絶望のまま逝かせるのは可哀想だが、俺達はここを出なくちゃいけないんでな。
 理夢琉、澄香、そして佐千子の火力支援を受けながら龍哉は敵の懐へ。
 ヨーヨーは蘿蔔が撃ち、そらしてくれる。
 ダメージ覚悟で龍哉は踏み込んだ。
 だがそのそらされたヨーヨーの側面から銃弾がばらまかれる。
 それを体にうけながらも筋肉で無理やり体勢制御。
「おおおおお!」
 ダメージを受けながらもその小さな体を切り上げた。
 圧倒的攻撃力。
 その刃は肋骨も鎖骨も両断して、体の深いところまで潜り込む。
 天井に叩きつけられるCDの体。血が雨のように龍哉に降り注ぐ。
 それでもまだ。
「ボクは! 死にたくない」
 その言葉に佐千子は表情を歪めた。
 少年を前に後悔を覚える。
 あの時、あの霧の中で彼を捕らえていれば。
 そうすれば、若い彼なら罪を償ったその後に、人として、人のまま生きていけたのではないだろうか。

「――なんて。今更ね」

 出来なかったことを悔やむその前に、今、出来ることを。
 放たれた弾丸は首筋をかすめる。次いでCDは壁を這いずるように高速移動を始めた。
「眠りなさい。せめて最期は良い夢を」
「しね!」
 放たれるヨーヨーは部屋の両隅へすると。ヨーヨーが大きく回転し始め。直後大爆発した。
 部屋を高熱が占める。
「はははは! 皆殺しだ!」
 そうはならなかった。
「……かつて迷宮で戦った愚神……。あれも、あの少年が……?」
 由利菜が部屋の中央にいた。そして祈るようにケアレインを。
「……私は、彼女を知っている……。確か以前、夢で……」
――あの時はユリナを連れ戻すの大変だったんだよ~?。
 その姿に歯噛みすると、動きを止めたCDに龍哉が迫る。
「色々と事情も理由もあるのは判ったが、それはそれ、これはこれだ」
 逃げようとした先をイリスがふさぐ。
「俺はお嬢がこれからどんな事をやるのか楽しみにしてるんでな。お前ら愚神どもの事情は一切合切ぶっちぎってお嬢を返して貰うぜ。ああ、欠片たりともくれてやるつもりはねぇな!」
――お兄さんしてますわねぇ。
 二人をヨーヨーで押しのけるとふりを悟ったCDは廊下へ走る。
 遙華を、なんとしても遙華を殺したかった、しかし行く手を阻む蛍丸。
「ここは通せません!!」
 その脇を残像を作り出すことで突破しようとするが片方を槍で。
 逃げ去る方をに弓を当て処理をする。
 肩を射抜かれたCDは血をまき散らしながら地面を転がった。
 そのまま駆ける蛍丸。
 放たれるヨーヨーを槍で弾き。
 散弾を受けながら。
「七花八裂」
 斬撃を放つ。
 その斬撃にてCDは廊下の隅に転がって、ヒューヒューと頼りない呼吸をするのみとなった。
 顔は青ざめ。しかしリンカーたちを見あげる視線はぎらついている。
「貴方も犠牲者だった」
 澄香はそんな彼に歩み寄る。
「その無念、私たちが払うから」
 告げるとクラリスは言葉に魔力を乗せて。そして。
――遙華の他に、捉えた相手がいるか、はいかいいえで答えなさい。
「いる」
「その子は、まさか、erisuって名前じゃない?」
 はじかれたように振り返るとアイリスはそれに頷いた。
――レディケイオス、CODE:000。
 盾に光が宿る。
 そして。
「グランドクロス」
 放たれた光の十字架は迷宮を撃ち砕く。
 白い光となった夢の迷宮。その直上からerisuが下りてきた。
「眠りなさい。せめて最期は良い夢を」
 佐千子が告げると少年の前に立つ。
 トリガーを絞れば。少年の夢が終わりを迎えた。


 エピローグ
 全てが終わった後、リンカーたちは見覚えのない廃墟に立っていた。
「ひとまずは安全か。一人でよく耐えたね」
 そうレオンハルトが語りかけてくる。
「でもまだ終わりじゃない…………遙華、負けないで。一緒に戦って。最後まで全力で足掻いて、絶望に立ち向かおう」
 その蘿蔔の言葉に頷く遙華。
「ええ、これから状況が動きそうな気がする。私に情報を」
「遙華さん」
 そう声をかけたのは蛍丸。
「まどろみの夢に囚われた時、駆け付けれなくて、ごめんなさい」
 告げる蛍丸に遙華は微笑みかけた。
「いいのよ、みんなが助けてくれたから」
 そう遙華は蘿蔔に微笑みかけた。
「危ない時に今度こそ駆け付けれて良かった」
「ありがとう、蛍丸」
「一応、遥華さんが偽物でないか確認した方が良さそうですわね」 
 ヴァルトラウテが歩み寄ると。龍哉はAGWをしまいながら言った。
「…………プライベートな質問でもしろってか?」
 そんな龍哉の視線の先にクーラーボックスがちらついた。
 それを開けてみる澄香。
 中には大量のヒールアンプルが詰め込まれている。
「まだ、はたらけ。ということでしょうね」
 クラリスが言った。
 遙華は頷くとそのクーラーボックスを肩にかけ歩きはじめる。
 休んでいる暇は、まだなかった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    不破 雫aa0127hero002
    英雄|13才|女性|シャド
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 希望の守り人
    白金 茶々子aa5194
    人間|8才|女性|生命
  • エージェント
    シェオルドレッドaa5194hero001
    英雄|26才|女性|ソフィ
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