本部

亡者の古城とダイヤモンド

かなちょこ

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 6~8人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/09/28 18:39

掲示板

オープニング

●パリ郊外、歴史ある美術館にて

 悲鳴が夜の闇を切り裂いた。
 元は城であった白く豪奢な建築物を囲む広大な庭園、そこは陽のある内は多くの観光客で賑わう場所。
「な、なんなんだ……一体……!」
 揺らめくようにぎこちなく近づくそれは、人型ではあるが本来は動くはずのない銅の塊である。恐怖に戦く警備員の目に最後に写ったのは、見慣れたはずのモノが奇っ怪に動く様であった。
 翌朝、古城美術館の庭園には無残な死体があった。

●ポルターガイスト現象と増え続ける死体

 HOPE本部へと舞い込んだその依頼は当初、現地の警察署へ通報された殺人事件だったが遺体の状況から人ではない犯人が疑われた。
 事件の少し前からラップ音がする、物が移動する、などの怪奇現象に似た現象が発生していたのだが、暗い歴史を持つ古城の美術館によくある事象であり、誰一人として気にする者もいなかった事が発見の遅れた背景にある。

 事実、古き歴史の中には忌まわしい事件も多々あり、首の無い女王の幽霊が出ただとかいう噂はここ数百年ほど絶えたことがない場所だった。

「幽霊が出るんじゃなぁ、本物のポルタ―ガイストと間違われたってことか」
ホログラムに投影される美術館の敷地を見ながら、溜息が漏れた。
「そう、そして幽霊だけじゃなく数多の美術品と……時価三十億と言われるダイヤモンドがあったりするんだ」
「三十億!?」
 あっさりと告げられた金額に驚くが、続いて告げられた内容には表情を暗くするしかなかった。
「女王の涙と名付けられた紫のダイヤモンドだ。南館の保管庫にあるんだが、奇しくも従魔が監視カメラに映ったのも南館。ちなみにこれは国宝で、駐仏大使が出席の公開セレモニーが予定されていて、開催中止はできない」
 淡々と告げられる状況に合わせるように、ホログラムには紫に輝く卵ほども大きさのあるダイヤモンドが浮かび上がった。
「中止はできないって……まさか、スタッフがいるとか言う?」
 思わず口にした可能性は、あっさりと肯定された。
「ご名答。美術館は緊急対応で休館しているが、日中は準備スタッフが十数名、館内と敷地内にいる。館内には数多くの美術品があるし、推定金額は数十億円から百……、破壊された場合は請求がどこへ行くんだろうな」
「まさか。HOPEが太っ腹で出すでしょ、こういうの」
 その問いに、職員は笑顔で応えた。
「だと、いいね。恐らく敵はデグリオ級に進化した従魔一体だ。ホンモノの幽霊がでる可能性もあるけど、君たちなら、問題はないだろう?」
 HOPE職員はそう告げながら、にっこりと微笑んだ。

解説

 警備員のライヴスを捕食したことによりミーレス級からデグリオ級へと進化したばかりの従魔一体を倒すのが任務です。確認された敵は一体のみ、またレベルはまだ然程に強力ではありません。
 ただし館内には「女王の涙」を含む貴重な美術品が多数あり、イベントスタッフは館内と庭園に散在しています。式典が迫っている為にイベントスタッフを完全に避難させることは出来ません。
 美術館には定番であるブロンズ像を依り代にしている為、まずはどのブロンズ像かを特定すること、昼間の戦闘であれば一般人と美術品保護を、夜間であれば幽霊(?)の対応と美術品保護、を同時に行いながら従魔を倒す為の最善策をとることが選択肢となります。昼か夜か、そして戦闘はどこでどのように行うかが鍵になります。

リプレイ

● 古城に眠る惨劇

 パリ支部から小型機で到着したのは、緑に覆われた広大な敷地だった。機内で相談し、明るい内に館内とブロンズ像の調査を行うことにした一行は、早速情報収集に取り掛かった。
「はい、通信機とインカム。石清水さんがラストだよ。懐中電灯は八葉さんが手配してくれたみたい。随時配るって。しかし広いよね、迷いそうだよ」
 向井 千秋(aa0021)が通信機とインカムを手渡し、イルカのブロンズ像の台座を調べる石清水 千奈(aa0252)がほんまや、と応えた。
「おおきに。ところで警備室の使用許可はでたん?」
 大きく頷く向井の視界に、式典準備を進めるスタッフに聞き込みを行う虎牙 紅代(aa0216)の姿が見えた。向井と石清水に気づき、駆け寄った。
「館内マップ、人数分もろてきたよ。はいはいっと。あ、さっきのスタッフさんにブロンズ像には気ぃつけ、て言い忘れたわ」
 マップを二人に手渡して虎牙が再び駆け出していく。
 陽が真上から西に移ろうとしていた。 


「最近ですか? ああ、そういえばやけに擦り傷が増えてるような」
「館内にでしょうか?」
「ええ、こういう」
 八葉 紫雨(aa0214)はスタッフが指さす床の傷を見ていた。南館に入ってきた四乃杜 誠(aa0264)が八葉に気づく。
「どう、なんか出た」
「まだです。従魔も幽霊も出てないですよ。手がかりは幾つか、随分と床に傷がついています」
「ほんとだ。これだけガラスの陳列台が並んでるのに、傷が床だけってのも、不思議だね」
「確かに」
 カーペットの敷き詰められた床は、何かで引っ掻いたような傷が幾つもあった。


 館内を探索する加賀谷 亮馬(aa0026)はうんざりしていた。
「触るな危険ブツが多すぎんだよ、出るなら何もないとこに出ろって」
 ガラス製の陳列台と豪奢な内装に囲まれた空間は、従魔でなくても壊さないようにと無意識に気を遣う。
 Iの字になった建物の中央、ドーム型の空間に差し掛かったところで英雄の後ろに隠れるイリス・レイバルド(aa0124)がいた。
「なんかあった」
「あ、亮馬さん」
 人見知り状態のイリスが、壁の絵を見ていたらしい。
「絵?」
 幅広の金縁に囲まれた肖像画には、片手には紫の宝石をつけた杖を、もう片腕には猫を抱く深紅のドレスの女性がいた。杖のトップに見えているのはH.O.P.E.のホログラムで見たもの。それが恐らく件の女王の涙なのだろうと知れた。
「あの猫がメリーにちょっと似てるんだ」
 穏やかに微笑む女性と猫は愛らしい。
「十五世紀末の名画ですわね。もしもオークションに出れば最低でも六千万程度ですわ」
 声に振り向けば、セリカ・ルナロザリオ(aa1081)がほほ笑みながら近づいてきた。
「へえ。流石に詳しいんだな……って、六千万ッ? これが! マジで!」
「あまり安く言い過ぎたかしら? ざっとスタッフの皆さまにご挨拶がてら館内は見ましたけれど、大抵のものは既に知っているものばかり。この絵は一度見たかったので役得と言えます。何か異変は見つかりまして?」
「ボク、お姉ちゃんと監視カメラの映像を見に行ったけど、なんか影みたいなのが映ってただけだったよ」
「……兎に角広いが、敷地内は把握した。いつ出てきても動けるぜ」
 腕時計は午後四時を指していた。携帯に入った着信は向井からで、美術館がエージェント向けに昼食を用意してくれたらしく各自受け取りに行くよう言われ、三人は管理棟へと向かった。



 豪華ランチではないが、味は良い遅い昼食を手に各自が警戒と調査を続けながら、通信機ごしの作戦会議は始まった。先に食べ終えたらしい石清水の声がインカムから聞こえる。
『まずは情報を整理しとこか。虎牙はんが配ったマップ見てな。庭園にあるブロンズ像は全部で十五体や。傷やら埃で判別しよかと思ってんけど、あかん。式典前できれーに磨かれてピカピカや』
 それに虎牙の声が続く。
『幾つか怪しいんはあったんよ。噴水前の人魚像、庭の東側にあるデカい土偶みたいなやつと、北側にある鎧の騎士や。この三つは台座に傷がついとった』
 虎牙が言った三つのブロンズ像の画像が液晶画面に現れる。
「監視カメラ映像には、はっきりと映ってなかったんだよな?」
 加賀谷の言葉に、イリスが頷いて画像をタイムライン上に投稿する。
「画像はこれだよ。でも映った色でブロンズ像だとわかるだけだよ。早く動いたみたいで、詳細な形は映ってないんだ」
 口の端についたソースが可愛らしい。次に、はいっ、と勢いよく四乃杜の声が入ってきた。
『館内は床の擦り傷が多かった。でも不思議なのは、あんだけズリズリ傷つけてるのに展示品は無傷なんだよね。なんでだろ』
 向井が思案気に言う。
『どっちにしろ、動くところを捉えないとだめだよね。あたし警備室のモニター担当するよ。そこから従魔の場所を皆に教えるから』
 その声に僕もいくよ、と四乃杜が声を上げた。
 加賀谷が口を開く。
「んじゃ、怪しいブロンズ像は三体。二人一組で三手に分れるのがいいな」
 賛成、と声があがる。
『うちは土偶から一番近い中央と南館の間を巡回するわ。こんな丸っこいデカいんが暴れたらえらいこっちゃや』
『同感です。僕もそちらに同行します』
 虎牙の提案に八葉が応えた。
「では私は人魚像から近い南館ですわね。魔性の美声、セイレーンが従魔に憑かれるなんて想像したくもありませんけど」
 セリカの声に石清水が同調する。
『せやな。悲恋の末に憑りつかれたなんて可哀想すぎる。うちもセリカはんといくわ』
「んじゃ、俺は騎士だな。美術品だから鈍らだっつっても、剣を持ってるわけだ。この中で一番危険だ」
「イリスちゃん、亮馬さんと行く」
 万一遭遇した場合は、美術品の被害を避けるべく庭へ誘導することで意見が一致した。
 時刻は夕日の頃合いを告げていた。


 陽が燃えるような茜から群青に覆われた頃、照明が人口の光を庭に落とし始めた。古城美術館は静寂のなかにあった。
 従魔討伐のため、警備員を含めたスタッフは退避させていた。
「そういや、幽霊の方はどうなっとん」
 エージェント達の足音しかない空間で、唐突に口火を切った石清水に、インカムの向こうから虎牙がああ、と言った。
『首なし女王の噂はずっとあるんやって。ボルタ―ガイストっちゅうんか、そういうのも』
『それも従魔じゃないかと思うんだけどなぁ』
 加賀谷の声が混じるが、そこに隣を歩くセリカが加わる。
「加賀谷さん、先ほどご覧になった肖像画を覚えてらっしゃる?」
『ああ、猫の?』
『メリーに似た猫のヒトだ』
 加賀谷とイリスの声に応えるように、セリカは語りだす。
「悲劇の女王ですわ。外国の王女に生まれ王室に嫁いだものの、夫は女遊びの激しい暴君。最後は汚名を着せられてギロチン台ですの。以来、悪しき力が働く時、古城に女王の霊が現れると言われているんですわ」
古い歴史にはよくあるタイプの話、そう片づけようとした、が。
『悪しき力、まるで愚神や従魔のことですね』
 静かに入った八葉の言葉が、妙に胸に残った。


● 従魔の正体

 モニター画面には巡回する六名の姿があった。英雄と共鳴したエージェントらが、旧式の警備モニターの中に頼もしく映る。
「虎牙さん、そっちはどう?」
『ないな、なんも動きはなし。どーぞ』
「了解、こちらからも異常はなし」
 壁の時計は午後十一時を告げていた。夜間の警戒態勢に入ってから、既に五時間。並の人間とは比較にならないから体の疲れはないが、流石に変化のない状態に気持ちが飽きてくる。
 この際、幽霊でもいいから出てくれればいいのに。そんな物騒な考えが向井の頭を過ったときである。
 ばちん、と音を立てて照明が落ちた。
「えっ、な、なに」
 咄嗟にモニターを見るが、変化はない。がっ、と不意に肩を掴まれ振り返ると――
「ちぃーあーきーちゃーん」
 懐中電灯で顎から顔を照らした四ノ杜がいた。
「……ッ! ばっ、ばかじゃないの!」
「あは、びっくりした?」
 任務中にふざけるんじゃない、とタコ殴りにしたときだった。
「今、動いた。も、モニター!」
 駆け寄った先には、黒く映る異様な影があった。長い尾、長い髪。
「人魚、人魚が動いてる! 石清水さん、セリカさん! 人魚のブロンズ像が南館の戸口にいるよ!」
『了解!』
『庭へ誘導しますわ!』
 二人の声が聞こえ、他のメンバーも動き出す。



 人魚は、地を這っていた。硬質のブロンズの髪がうねる様に動くさまは異様だった。扉をこじ開け、カーペットの上に這い出す。
「こっから先は行かさへん」
 回り込んだ石清水の登場に、一瞬だが従魔がぴくりと動きを止めた。
「止めますわ!」
 左右はガラスのキャビネットがある。攻撃は出せないと石清水とセリカが左右からうねるブロンズの髪を掴むが、従魔は止まらない。
 重量のある体で貞子のごとく床を這いずり、牙をむく。
「こっちや! こいつ、歩かれへんのや! 止めるで!」
 虎牙の声が聞こえ、八葉が手にした消火ホースの端を投げて寄越した。
 ぐおおおう、と可憐な人魚に似つかわしくない咆哮を上げる従魔だが、石清水と虎牙、八葉とセリカが張ったホースが人魚の喉元にかかる。だが怒りの形相に変化した人魚は押し切ろうとする。
 攻撃さえできれば、大した相手ではないのだが――
「危ないっ!」
 大きく跳ねた尻尾の先がガラスキャビネットに触れる直前だった。
 バン、と扉が大きく開き、現れた加賀谷が寸でのところで尻尾を掴んだ。
「させるか!」
 尻尾を掴んだ加賀谷がそのまま人魚を外へと引き摺りだすのに合わせて、押し出した。
「亮馬さん、こっち!」
 イリスの声が響き、暴れる人魚像を押さえつけながら、庭へと移動してゆく。押さえつけながら虎牙が口角を上げる。
「なんや、大漁旗が見えるわ!」
「きっちり三枚に下ろしてやるよ!」
 月のない夜、引き摺る加賀谷が照明が照らす芝の上に差し掛かった時だった。
 妙に大人しくなった従魔を見たイリスが、あっ、と声を上げた。
 ぐったりしたと見えた従魔だったが、その頭から――――髪が無数に枝分かれしてゆく。頭から離れ、宙に生き物のように舞い上がった。
「うわっ」
 エージェント達に向けられたのは、長いブロンズの針と化した髪の毛だった。
「……ブロンズの針ですか、この数はちょっと厄介ですわね」
 セリカの声の先で、ゆっくりと従魔が体を起こす。舞い上がった無数の髪が、エージェント達の前に立ちはだかる。
「くそっ、」
 へヴィアタックを繰り出そうとした加賀谷だったが、従魔は凶悪に笑うと掴まれていた尾を跳ね上げ、そして地に叩きつけた。髪の一本一本が刃のようにエージェント達の視界を塞ぎ襲い掛かる。
「キリがないで!」
 石清水、虎牙、八葉、イリス、セリカが武器を手に応戦するが、次々と振ってくる刃に、らちが明かない。
 その間にも両手を広げた人魚は様相を変える。するすると爪が伸び剣の如く鋭さを増したそれは、応戦するエージェント達にその剣を振り上げた。
「ケアレイ!」
 駆け寄る四乃杜により回復した加賀谷が大剣を手に、従魔の背後から切りつけた。
「おりゃあ!」
 ぐおおおおおお、唸りを上げて振り向く人魚――
 ブロンズの動きが止まる。その瞬間だった。八人の呼吸が合わさる。
「今だ!」
 盾でブロンズの刃を遮ったイリスが、人魚の尻尾に剣を突き立てた。
「これがお姉ちゃん直伝! ジタバタするのはやめなさぁいっ!」
 衝撃にのけぞる従魔。
 駆け寄る向井が、四乃杜の肩を踏み台に飛び上がる。
「――Monstrum e locis emissum summis Abi nunc ex oculis meis――貫け!」
 ぐえ、とか、ぐへ、と蛙が潰れたような声があがるが、戦闘の中に消えた。
 ズサァッ、勢いのついた銀の魔弾が従魔の顔面を砕くのと、虎牙と石清水のへヴィアタックが決まったのは同時だった。
「やったか!」
「いや、まだ動いとる!」
 頭部を失い、尾を串刺しにされてもなお、従魔はブロンズの爪をぎちぎちと蠢かせ、振り上げた。長い爪の刃がぐらりと傾き、イリスの頭に降りかかろうとした――――
 ヒュンッ
「させねえっつってんだろうが!」
「これで、最後です!」
 空を切ったセリカの矢、加賀谷の剣と八葉の刀が従魔を前後から貫いた。
 月光の下に、断末魔の叫びが、あった。


● 女王の涙

 夜半から始まった戦闘が終わった。共鳴状態を解いたエージェント達は、館内に破損はないかと見回っていた。
「庭に誘導して正解や。あの髪がこの辺にある宝石やらに当たったらと思うと……損害額もおっそろしいことになるやろうな」
 ため息交じりの虎牙に、面々が頷く。
「でもこれで、しきてんもだいじょうぶ?」
 イリスの問いに、ああ、と加賀谷が頷く。ほうっと一息つける瞬間、面々の顔にも安堵が戻る、そのときだった。
「あっ! あれ……っ!」
「なによ、変な声ださないで」
 四乃杜がなにやら照明の暗い廊下の先を指さしていた。
 向井が目を向けたとき、視界の端にちらりと動く裾が見えた。
「なんや?」
「もしかして、首なし女王ちゃうんか!」
 なぜか色めきたつ虎牙と石清水に、加賀谷がまさか、と言いかけるが、興味津々らしい女性陣が駆け出す方が早かった。
「ちょっと、追いかけてみるわ。せっかくやし」
「悲劇の女王さんやろ、あかんて、可哀想すぎる。人間笑わないかんって!」
「死んでも人間と呼ぶのかしら。ふふ」
 幽霊探索へと言ってしまった虎牙、石清水、セリカの後を損害を確認しながら、向井、加賀谷、八葉、四乃杜、イリスが歩く。
「怖いわけないじゃん! ないよ、幽霊なんて! ないんだからねっ!」
「またまたー怖いんでしょー、千秋ちゃんー」
 ムキになる向井とからかう四乃杜の後ろを歩く加賀谷がやれやれと、口を開く。
「ま、万一他にも低級従魔とかいるかもしんないし、一応見ておくか。帰還直後に同じ場所で任務とか、いやだし」
 イリスもうんうん、と頷く。南館から中央のドームに差し掛かる。壁のランプがゆるゆると明かりを灯す場所に差し掛かった。
 ふと八葉の目に、紫の宝玉をあしらった豪奢な杖を持つ婦人の絵が入った。立ち止まれば、それは女王の涙。
 ――ふっ、と。絵の中でその人は、仄かに微笑んだ。
 悪しき力が去ったことに、安堵したかのように。
 少なくとも、八葉にはそう見えた。
「女王陛下、これ以上貴女に涙を流させる惨劇は起こさせません、――安心して、お休みください」
 遠くから、せやった、首がないのに笑われへんやん! と気づく声と、それに笑う仲間の声が聞こえていた。
 雲の切れ間から、美しい星が覗いた。
 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 再生者を滅する者
    向井 千秋aa0021
    人間|16才|女性|攻撃
  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • エージェント
    八葉 紫雨aa0214
    人間|24才|男性|生命
  • ヘルズ調理教官
    虎牙 紅代aa0216
    機械|20才|女性|攻撃
  • アイキャンフライ!
    石清水 千奈aa0252
    人間|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    四乃杜 誠aa0264
    人間|18才|男性|防御
  • 繋がれ微笑む『乙女』
    セリカ・ルナロザリオaa1081
    人間|18才|女性|命中
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