本部

【愚神狂宴】連動シナリオ

【狂宴】希望の音

鳴海

形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
22人 / 1~25人
英雄
19人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/05/26 10:33

掲示板

オープニング

● 染みついた歌。
 世界各地でとある症状が報告されていた。
 誰も歌っていないはずなのに、歌が聞えるという報告。
 その歌を聴いたものは彼方に呼ばれる気がするのだという。
 彼方とはここではないどこか。たとえるなら次元の向こう。別の世界?
 その歌は知らない間に世界に蔓延していた。街角のスピーカーから、壊れかけたラジオから、はたまた誰かの口から、その歌が口ずさまれる。
 その歌の名前は希望の音。かつて愚神を滅ぼすために謳われ。どこかの世界を滅ぼすはずだった。ほろびのうた。
 それが今、世界中に蔓延しているという。
 それと関連してなのか解らないが、世界は愚神を肯定する道を歩もうとしていた。
 歌に感染しているものもそうでない者も、愚神を肯定する世界に。
 ただ、もし、彼方より呼ぶ者が、愚神なのだとしたら。
 これはゆゆしき事態なのではないか。
 そして世界に変化が徐々に訪れる。それは地面の下を這うマグマの筋のように目に見えず、噴火してしまえば後戻りできない。
 それはアイドルディスペアのミニライブで起こった。
 彼女たちは依然、知らず知らずのうちに愚神をメンバーに迎え、歌っていたことがあったが。
 それが突然評価され始めた。
「愚神と一緒に謳ってたディスペアは最先端のアイドルだったんだ」
「さいこうだぜ! 次はどの愚神と謳うんだ?」
 そんな声がライブ会場にぽつぽつと聞こえ出すと、それは徐々に伝播して皆拳を打ち上げ、愚神とコールしだした。
 異様だ。その光景は誰が見ても異様である。
 あまりの異様さに、梓、小雪。クルシェが歌を止めてもそのコールは続いた。
「おまえら! 愚神がなにしたか忘れたのかよ」
 真っ先に切れたのはクルシェという赤髪の少女。その声に場は静まり返ったが。
 今度は会場が攻撃の色一色に染まった。
「え? なに? 愚神ダメなの?」
「愚神いいじゃん、愚神最高」
「あ、でもこいつらって瑠音ちゃんとアネットちゃん排除した奴らじゃん」
「じゃあ、H.O.P.E.の仲間なの?」
 ぎらつく瞳が少女たちに注がれる。そして最前線のラインとなっていた警備員たちの背中に殺到しだした。
「お前等どういうつもりだ! ステージ降りろ!」
 告げると一番後ろの男性が靴を投げつけようと振りかぶった。
 梓は思わず目を瞑る。しかし、その靴は梓に届くことはなかった。
 守ってくれた人がいたから。
「みんな、待たせたわね。スペシャルライブの開幕よ」
 次いでジャックされたスピーカーから響きだす遙華の声。
 そして世界各地でジャックされたモニターには大きな、それこそ空母の甲板ほどの大きさのステージが映し出されていてそこにアイドルたちが列になって立っている。
「私たちは今から歌で反攻作戦を企てるわ」
 世界に、戦いではない解決方法を示すために。歌を届ける。
「世界中に歌を、それがみんなの想い。ねぇ聴いてH.O.P.E.は敵じゃない」
 告げると流れ出すのが歌。アイドル誰かの持ち曲を全員で謳う。
 数日前だ。ガデンツァの歌に対してアイドル達の霊力を介した歌がカウンターになりえるとわかったのは。
 機械的に調整をくわえるのに時間がかかったが、いまなら。
 ガデンツァの歌を解析し尽くした今ならその歌に勝てる。
「そしてガデンツァには私達に手出しできない、だって私たちは宇宙にいるから」
 宇宙に浮かべられた急造のステージ、ここで歌えるのもアイドルリンカーの特権だろう。
 宇宙に拠点を作った理由はいくつかある。
 一番はガデンツァの影響が一番薄いのではないかと思ったこと。
 二つ目は電波が届けやすいこと。
 三つ目はここから世界各地にリンカーを送り届けられること。
 そしてなにより。
「かっこいいからよ!」
 遙華が船長室でそう告げた。リンカーたちを地球に打ち出すポットの整備が整い、作戦はいつでも開始可能。
「これから地球上のガデンツァの痕跡を一掃するわ。みんな協力してちょうだい」
 歌を届けて、告げると遙華はボリュームをマックスにする。船内に爆音でアイドルたちの歌声が響き渡った。


● 対抗策

 現在皆さんは宇宙に浮かべられたステージに立っています。
 地球上ではディスペアのライブをきっかけに主要都市で暴動が起こっており、愚神を受け入れるべきだという声が急速に強まっています。
 これに対する対抗策として皆さんの配備をH.O.P.E.は決定しました。
 
 これから作戦を説明します。

 先ず現状皆さんがいるステージ。
 このステージは本当に最低限のステージ機能を持たせたものをうかべているだけなので共鳴を解くと死ぬことに注意してください。
 ここから作戦を開始します。
 アイドルたちのやるべきことは二つ。

1 このステージで歌い続け全世界に歌を届ける。

2 地球に降り立って、現地に歌を届ける。

 皆さんを特性のポットで地球に送り出すので、10分前後で地球の各地に降りられます。
 その後はリンカーの無敵能力に任せて歌いまくってください。
 一般人では皆さんの歌を止めることはできません。  
 東京(ディスペアのライブ場所)が、もっとも大量の人間が暴動を起こしています。
 彼らの主張はH.O.P.E.が悪で愚神が正義、世界は愚神を受け入れるべき。
 しかし彼らは忘れているのです、愚神の被害。彼らがなにをしたか。
 そしてH.O.P.E.がなにをしてきたか。
 みなさんが声をあげれば皆さんの味方をしてくれる誰かがいるかもしれません。

解説

目標 歌の残滓の除去


 一般人を正気に戻す場合は感情の込め具合が重要です。
 視線を向ける、歌詞を意識させる。自分に意識を向けさせるなど。
 アイドルたちに注目すればするほど。アイドルたちが意識を集中すればするほど。多くの人が早く洗脳から解かれます。
 また、沢山の人に向けた歌より、一人に向けた方が洗脳が溶けやすいようです。
 またガデンツァの歌は愚神を正義だと信じる心には効きやすいようです。
 まだ発症していない人間への予防策として、愚神は正義の存在ではないと説得しておくのが良いでしょう。

リプレイ

プロローグ

 『御剣 正宗( aa5043 )』は舞台袖から煌びやかな衣装に身を包む『CODENAME-S(aa5043hero001 )』の姿を眺めていた。
 その横顔はいつものCODENAME-Sと違うようでまったく変わらない、少し緊張した、けれど胸を高鳴らせたその表情を正宗はじっと見つめていた。
「歌を洗脳に使うなんて……許せない!」
 そう『小詩 いのり( aa1420 )』の言葉に『セバス=チャン(aa1420hero001 )』は一瞬振り返り、その言葉のらしさに笑みを浮かべると、ドーム内への酸素補充の作業を続けた。
 そんなアイドルたちにまじり歌って踊るのか、そう思うと正宗は非常に誇らしい気持ちになる。
 正宗は結婚して遠い存在になっても、CODENAME-Sの事はいつも思っていた。
 彼女が緊張しながらもアイドルの仕事に立候補したい、そう告げた時には正宗は全力でその背をおした。
 今回は世界にH.O.P.E.の今までの行いとこれからの未来、その是非を問う大事な戦い。
 『餅 望月( aa0843 )』はヘッドセット型のマイクを調整し顔をあげた。『百薬(aa0843hero001 )』と手を握る。
「H.O.P.E.も悪い人がいるからね」
「そういう問題じゃないと思うよ、ガデンツァの影響だからね」
「じゃあ、愛と癒しを振りまいて問題解決ね」
「ま……あその通りだね。問題は何故かわざわざ宇宙から降ってくるってことだけど」
 そう望月はガラスの向こうの宇宙、そして青く輝く星を見た。
「天使は宇宙から降臨するよ」
 百薬が告げた瞬間。ステージの大モニターに映像が映し出される。
 それは全世界で放映されているであろう。H.O.P.E.の活動の記録。
 その活躍。
 過去全ての活躍、大規模作戦の記録が編集して流されている。
 その映像を作り上げたのは『クラリス・ミカ(aa0010hero001 )』。
 その映像を持って『蔵李 澄香( aa0010 ) 』は壇上にライトを灯すとステージ中央に歩み寄る。そこにはアイドルリンカーそのほぼすべてが集められていた。
 ここにいないメンバーはすでに各国に潜入している。
「みんな……ありがとう」
 澄香のスマホは絶え間なく震えている。それは一斉送信したファンや企業からの応援の声。一時かかわった自衛隊やH.O.P.E.のここにいないメンバー、全員が応援してくれている。
 世界は敵ばかりではないのだ。
 澄香は振り返りカメラに向けて告げる。
「今、愚神に利用されている希望の音を取り返そうとしています。もし可能ならば、貴方のスマフォ、テレビ、ラジオで私たちの歌を流してください。そして、貴方も一緒に歌ってください」
 直後澄香の合図で『辺是 落児( aa0281 )』と『構築の魔女(aa0281hero001 )』がPC操作を行う。世界中あらゆる通信機器がジャックされそしてこの光景を映し出す。
「地球の裏側にまで届けるためにいろいろ準備いたしました」
 はじまる。
 その予感を感じて『卸 蘿蔔( aa0405 )』はマイクを握りしめた。
――代わろうか?
 告げたのは共鳴済みの『レオンハルト(aa0405hero001 )』。
「ううん大丈夫。私歌うよ。
 確かに怖いし不安だし。
 でも……ファンだって、私が歌うのを嬉しいって言ってくれる人がいるから、頑張りたい」
 そう静かに告げる蘿蔔が顔をあげれば笑顔があった。

「さて、始めましょう」
 
 構築の魔女が告げ爆音が少女たちの背を推した。
 戦いが始まる、彼女たちの戦場が。


第一章 超銀河オンステージ

 最初は煌びやかに、少女たちが謳って踊るオールステージ。
 演目は希望の音。
 全員の声が重なる中ステージ中央が割れて『イリス・レイバルド( aa0124 )』と『アイリス(aa0124hero001 )』が登場した。
 金糸の姉妹はこの暗夜の中光り輝いて見える。
 二人は姿を重ねるように共鳴、ステージ中央でスポットを一人で浴びると暗闇を切り裂くように輝き二方向へジャンプ。
 そのまま翼を広げてステージ上をくるくると舞うように滑空した。
 そのままコーラス部隊として背に背負っていたバルムンクを地面に突き立てながら勢いを殺して着地するとそのまま共鳴、ゆっくりと空に舞い上がり、ひとつの光となる。
 希望の音の残響がステージにしみいるように消えた。
 その直後、曲調が変わる。
 共鳴した『ナラカ(aa0098hero001 )』が大人びた姿で壇上に登場。刃を振り上げた。
 今回のパフォーマンスにもちろん『八朔 カゲリ( aa0098 )』は不干渉である。
「本来であれば地上に降りたいところだが」
「そうですねぇ」
 ナラカのつぶやきに上空のイリスが反応した。
――どこが派手な現場かは分かるが、どこが最前線かは分からないからね」
「んー、釈然としないけど……ある意味前線を支えるって事なのかな? 後衛なのにー」
「はははっ」
 苦々しそうな表情を己の発する光で隠すイリス。
(トップアイドルの影響力は利用しないとねぇ。イリスは否定するだろうから建前は用意したが)
 そうアイリスは思惑を胸の中で唱える。次いでイリスが全世界に向けて思いを伝える。
「希望を信じて歌って、積み重ねてきた、ボクらの歴史」
――簡単に奪えるほど、軽い想いではないのだよ。
「どんな理不尽にも、負けたくない!」
 その思いを受け継いでナラカが口を開いた。
 それは諦めを知らぬ唄。輝きを見せつけろと鼓舞する歌。

――汝等、ただ流されるままに振舞う様で本当に良いのか。
己の真は胸にあるのか。
今一度、頭をあげて光を仰ぐが良い。
易きに流れるな、胸を張れ。己が真を示すが良い!

 ナラカは刃を振りかざしカメラに向かって告げる。そのまま歩み寄り鋭い視線を画面いっぱいに映し出させた。

「洗脳されているとは言え、流されるまま暴動に走る様は見るに堪んよ」
 ならば、喝を入れるのは自分の役目だ、そう神鳥は告げる。
「そうしなければ、汝達の輝きは取り戻せぬであろうから。
 殴るのなら殴られる覚悟もあるのだろうが」
 目の前に惰弱をさらす顔があれば殴りつけていたであろう覇気を込めて地球を見つめるナラカ。
――それでも尚酔い痴れるなら是非もなし、光の輝きで足りぬのならその熱を教えてやろう。
 そして炎を纏った斬撃がカーテンとなり画面を隠す、その炎を撃ち破って現れたのはいのりと澄香。
 二人が謳うのは月と太陽の音。
「誰も憎まずにいれたらいいよね。
 愚神を許せたらいいよね。
 寛容も許しも間違いじゃないんだ。
 みんな本当はそれを望んでる。
 でも、今じゃないよね」
 月の調べと太陽の調べが交互に謳われる。曲調も全く違う二つの曲、共に謳う時だけ本当の顔をのぞかせる歌だったが、今回はアレンジとして二つの曲は寄り添い、お互いの曲調を少しだけ受け継いでいる。
 そのおかげで二つの曲は一本の陸続きの歌のように歌うことができるようになっている。
 耐久用にアレンジしたのだ。
「戦いだけが答えだとは思わないよ。
 安息の日々を求めて何がいけないって思うよね。
 でも……」
 いのりが言葉を切る。その旋律が響いているあいだ。澄香が前に出て画面にウィンク。 
 体の痛みを押し殺し声を響かせる。
 その揺らいだ足。崩れそうになる体をいのりが後ろから支えた。
「束の間の安息である今は、本当に未来に繋がってるのかな?」
 そのいのりに澄香は笑みを返すそして、二人は並んで立つと声を重ねて告げた。
「「みんな、目を覚まして。ボクらはまだ、戦わなきゃ!」」
 歓声が上がった、それはステージだけではない。
 地球からも、各国からも。
 まだ、負けてない、希望は耐えていないのだ。
――ガデンツァがどこに潜むかねぇ。
 アイリスがぽつりと告げるとイリスとアイリスは共鳴を解いていのりと澄香の隣に並んだ。そして終りに向けた曲にコーラスで花をそえる。
「そういえば記憶や魂をデータと例えていたね。アルスマギカもロボの体で結構自由に活動しているようだし」
「機械やネットワークの中?」
 その発想に澄香は驚いたような顔をする。
「可能性というか、思いつきだけどね。まぁグロリア社が最近従魔式ハッキングされたようだが」
「ボクらもバルムンクが身内だしね。一個の知的生命として扱っているともいえるかもー」
「手を出されたら、例の嘆きとやらに該当する可能性はあるかもね」
 歌が終われば澄香はいのりの手を取った。
「一緒にいこう、いのり!」
 その言葉に頷いて澄香は箒を召喚。煌びやかな光を纏った箒は尻尾からハートや星マークを舞い散らせながらいのりを乗せて飛び上がる。
 まぁ、無重力化のため、飛ぶという表現は正しくないのだが。
 画面越しにはそう見えているだろう。
 そして二人は巨大ステージに隣接されるように作った二つの小ステージに降り立つと、マイクを握る。
 お互いの距離は遠いが心は繋がっている。
 ここから二人は地球全土に直接その歌を響かせる。 
「これらかボクは澄香と一緒に、洗脳解除耐久ライブをするよ」
 次のステージの準備をしている間にいのりと澄香はカメラに向かってこれからの事を話し始めた。
「喉を痛めちゃうかもしれないけど、洗脳が解除されるまでずっと歌い続けるつもり……我に返った人も、一緒に歌って!」
 謳うのは希望の音。
 今世界を洗脳でそめあげている歌とまったく同じ曲。
 ただ、澄香もいのりも信じている。
 その歌に込められた意味と音の可能性、そして自分たちの想いと意志。
 これまで積み上げてきたもの。
 歌は今まで沢山の物を救ってくれた。歌で失った者もあったけれど。
 でも、それでも二人は歌の可能性を信じている。
 だって歌が好きだから。
 そして歌の可能性を信じるのは二人だけではない。
 CODENAME-Sがステージに上がる。緊張しながらマイクを握った。
 次の曲が始まる。CODENAME-Sは歌が始まると軽くステップをふみだした。
 CODENAME-Sは予め裏で歌や踊りの練習をこなしていたという。
  なにより過去にメイド喫茶をはじめ色々な仕事をこなしていたり心理学など色々学んでいたこともあり、基礎体力は勿論、他人をどうすれば喜ぶのかや、どういう人物がアイドルに向いているのかをいろいろ熟知している。
 そんな彼女を正宗はサポートし続けてきた。
 正宗は漫画やアニメやテレビなどで知ったつけ刃程度の知識しかない。それでもCODENAME-Sをしっかりサポートしたいと思って業界について勉強し続けてきた。
 このステージに立つために共鳴しなければならないという壁が二人の間にあったが。CODENAME-Sを主体に共鳴。そしてここにいる、全ては歌を謳うため。
「あとは、まかせたよ」
 『アル( aa1730 )』がそういのりと澄香に目くばせするとステージ中央に歩みでた。
 せり上がる地面、それは円筒状の筒のようなものでありポット。
 それにナラカも乗り込んだ。
「光を担いし試練の神が、裁定を成すべく地に降り立つ」
 そう不敵に笑うナラカと一緒にまず地球へと降り立つ。
 アルはポットの中でも歌を口ずさんでいる。
 そのポットが地球上に投下されると二人の霊力に従い燃えるような翼と光の翼を生やして羽ばたき。目的地を目指した。


第二章 希望の弾丸。

 送り出されたアイドルたちは現地にたどり着くとさらにポットの中から射出された。
 アルは光の翼を背中に生やして衝撃を緩和すると、緩やかに着地。ふわりと舞いあがりかけたスカートを抑えて立ち上がるとヘッドセットを調節して謳い始める。
 それに続くリンカーたち。
 ポットは地面に突き刺さりアンテナと内部のスピーカーを周囲に展開、アイドルたちの歌を届ける。
 その様子を『シエロ レミプリク( aa0575 )』は頷いて見送ると、次は望月の番だと着地演算を始める。
「さあ…歌姫になっておいで!」
――…いってらっしゃーい。
 『ナト アマタ(aa0575hero001 )』の穏やかな声に送られてポットは次々と発射されていった。
「東京、だいじょうぶかなぁ」
 そうつぶやくシエロの口元だけがコードの海から外に覗いている。
 あまりに多くのシステムを管理するがゆえに、シエロはコードまみれになっていた。
 もはやこの施設のパーツの一つとして組み込まれているようなものだ。
 ちょっと子供たちには見せられないホラーな状況である。
 しかし本人はいたって真面目。
 次に送り出すリンカーを東京のディスペアライブ周辺地に向けて座標を絞る。

「アイハヴ…コントロォール!」
――ユーハヴ、コントロール。
「OK、サウンドコア起動!」

 システム上でトリガーを引けば、ポッドにリンクされた特殊カメラと視界を同期。 アイドルたちの歌声を鼻歌で口ずさみながら着地の衝撃を緩和してスマートにアイドルたちを送り届けた。
 そんなシエロの眼前に文字が浮かび上がる。彼女の元に世界各国から接続要請を受諾した放送局のパスなどが送られてきているのだ。
「暴動の中、行動するのは危険かもしれませんが協力いただけないでしょうか?」
 構築の魔女の説得の成果である。
 地域によっては文明の格差があり音が届けられない場所もあるだろう。
 そんな地域のために。ライブ映像をニュースを合間に放送してもらう。
 愚神が起こした被害や愚神が関わった事件を再認識してもらえるように計らう。
「アジアにアマゾン…それにロシア。我々はいつも戦ってきましたとも」
 歌は世界を跨ぐ、言葉が分からなくても通じる。
 歌は世界に広まっていた。
 それはH.O.P.E.をまだ肯定してくれる組織があるという事でもあった。
 その先駆けとして望月は屋根の上を飛びながら走っていた。
 冗談めかして「パルクールでもしながら歌って踊るしかないか」と言っていたが実際その通りになった。恐るべし望月。
 そして正気を失った人達の前に現れてはその目を見て、心からの歌を届ける。

――目と目があったその日から
  愛と癒しが伝播するよ
  HopeとDreamも一緒にね。

 正気に返った男性は望月をうっとりと見つめ返し、正気に戻ったことを確認した望月は。
「またね~」
 そうひらひらと手を振って走り去って行った。
「愚神の半洗脳なんて歌って盛り上がったら消え去るでしょ」
 そう周囲の呆けた顔の一般人たちを眺め見る、彼らは歌に夢中だ。
――そして希望が生まれてご飯が美味しくなるのね。
「そういえばおなか減ったね。。何でも美味しいだろうけどここはあえて至高のドーナツとコーラだね」
 すると望月はスマートフォンを持ち出してステージ上に繋いだ。
「そっちはどう?」
 その問いかけに構築の魔女がインカム越しに答える。
「こちらは順調ですよ。歌の出力はこちらが上回っています。世界に響く歌の残滓。そして」
 ガデンツァの歌が街角やスピーカー、人の口から発せされるようになってきた。それもリンカー側のパワーに圧倒されて完全に後手という感じだ。
「同時にガデンツァの歌の痕跡をたどっています。歌を発している機材、それだけではなく彼女がどこに潜むのか特定して見せましょう」
 歌の伝搬は同心円状に起こると仮定。暴動が激しい地域や対抗作戦の効果が薄い地域などを選定する。
「中継点があるとしてもどこかに起点となる部分が絶対にあるはずですよね」
 そう構築の魔女は汚染されたライブス結晶の反応も確認しつつ特定を急ぐ。
「さぁ、今はまだ対抗作戦ですが…反抗作戦に繋げてまいりましょうか! 」
 それと同時に世界各国で反攻作戦が繰り広げられていた。

   *   *

 場所は世界最大の法治国家、その最大都市ニューヨーク。
 その中心では歌を聴いた人間達が亡者のように生気をなくしさまよい歩いていた。
 しかし、突如街角のスピーカーから流れてきたのは鮮烈なサウンド。
 『Try』の初ライブが今始まる。
「大丈夫」
 その音の中で上着を羽織りヘッドセットをオンにする『高野信実( aa4655 )』。
「先パイ達がいるんだ、きっと大丈夫」
 告げる真実の手を取って『ロゼ=ベルトラン(aa4655hero001 )』は頷き共鳴した。
「……最高の舞台にしましょ」
 そう無理に笑って。
「音楽は自由な精神から生まれるものだ。精神の自由を脅かす、そんなものを『音楽』だなんて…音楽家の一人として、口が裂けても認めるもんか!」
 そう緑色のスカーフを揺らゆらし、白を基調として金糸の刺繍を施したを身に纏って、『九重 陸( aa0422 )』は高らかに告げた。 
 この一部西洋世ロリの様なプロテクターのついた衣装は『歌って踊って、戦う』ための衣装の衣装である。
「これまで積み重ねてきた絆…一丸となって愚神と闘った日々…思い出してくれないのなら、思い出すまで何度だって歌うぜ!」
 三人は駆けだす。『雪ノ下・正太郎( aa0297 )』を先頭に町で一番大きい路地を疾走する。
 行く手を阻むものは吹き飛ばした。
 それでいて全員に声を届けるべく三人で背を合わせあたりを見渡す。
「ド派手にデビュー決めるぜ♪」
 そう将太郎のソロパート。ヘリが風を送り、ライトを三人に向けた。
「正太郎先パイ! 陸先パイ!」
 そう信実の指さす先から女性たちが逃げてくる。
 その背後の人の群に目を向けると三人は走り出した。
「そのまま走って」
 女性たちにそう陸が声をかけると。暴徒たちの足を払い転ばせ、腕をつかみ妨害し、その場に引き倒して歌をきかせる。
 真実のソロパート、黄色のスカーフで倒れた女性の膝を処置すると、ロゼ作曲の『トライアングルラヴ』を謳う。
――木漏れ日が好きと君が言った
  その日から僕は太陽になった
  君は今唇震わせて
  雪の中狼に惹かれている。

 声を重ねる陸と正太郎。甘い笑みを湛えて人々を安全な場所まで先導する。

――浮気な君のことぎゅっと暖めよう
  世界を揺らす心拍数
  僕ら生きている!
  Oh!!!
 拳を突き上げると正気に戻った人々もその動きに応じてくれる。
 間奏の合間に信実と正太郎は息の合ったダンスをみせる。
 その間に陸は二人の後ろに立って、Fantomeを引き出す。そして曲に合わせて演奏。
 それは、死と隣合わせの病床、あるいは戦場においても共にあり続けた。音楽へのラブコール。
 どうかこの演奏を聴いてくれと叫ぶように鮮烈なメロディを奏でる。
(音を…もっと音を! 愚神の歌なんかより、俺たちの歌の方が、何倍も素晴らしいって言わせてやる!)
 町中に熱気が満ちてきた。
 ガデンツァの歌が流れるスピーカーをぶち壊す。
 

――君が好きだからこっちを向いて さぁ
  君を裏切る全てをぶち壊していく
  君と居たいからずっと生きたい から
  合言葉は《希望》キスでおはよう
  目覚めてprincess…
  Honey!!!

「俺達の歌とパフォーマンスで世界を救うぜ!!」
 そう将太郎は星条旗の掲げられたスピーチ代の下でマイクを握り大衆に問いかける。
「自由と正義を愛するあなた達アメリカ人は、愚神達に騙され侵略を受けている!!
 今こそ偽りの正義に抗い、本当の自由と正義と誇りをこの国に取り戻す時だ!!」
 歌の間奏にアドリブで共鳴でアメコミヒーローを模したキャラクターに変身すれば人々の目を引ける。
「このまま全米ツアーくぜ!」
 その声に歓声が上がった。
「そのまえに。私にも舞台を頂戴」
 そう将太郎のかわりに壇上に上がったのはロゼ。
 彼女は喪服の様な黒ワンピース&ヘッドドレス、手には白薔薇の花束をかけていた。
 信じてた愚神に裏切られ、寂しく切ない心境をつづった歌を口ずさむロゼ。
 堪えていたが歌の途中で涙を零す。

―― 一緒に笑ったデートも、寄り添って交わした言葉も、貴方は嘘。想いは嘘。

 そう謳い終えたロゼは観客席に花束を投げる。

第三章 東京と世界

 『泉 杏樹( aa0045 ) 』のつま先が湖面に触れると、その輪は音となって世界に広がっていく。
 光の翼が衝撃を緩和し、杏樹勢いよく走り出した。
「お約束したから、真実を、お届け、なの」
 『榊 守(aa0045hero001 )』のナビのもと駆け抜けるのはモスクワの寒空の下。
 任務で何度も善性愚神と接し。
 情報操作の事実を直接見て。
 世界の真実を歌に乗せ発信したいと活動してきた。
 視線の先の人の群、それがぐるりと顔を向け、杏樹を見つめる、しかし。杏樹はひるまない。
「あんじゅーのゲリラライブです」
 その人ごみの中に飛び込むと、ぽっかりと空いたそのスペースの真ん中でマイクを握る。
「聞いてほしいの。曲名は『偽りの愛』」


――テレビにネットに電子の海に
  Fake Newsに踊らされる
  神の愛?本気?嘘でしょ?
  愚かな神に誤摩化されないで
  本気で貴方が好きな人
  隣にいるじゃない
  こっちを向いてよ


「ねぇ、春香さん。みんなうたってるわよ」
 その声を中継で聞きながら、薄暗い部屋で『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001 )』は春香の背に語りかけた。
 毛布にくるまってい泣いている少女。
 その震える方を沙羅はそっとなでた。
 『榊原・沙耶( aa1188 )』は扉の向こうで誰かと話している。
「これはルネさんが繋いだ歌の輪なのよ、ねぇ春香さん、誇らしく思えないかしら?」
 その言葉に首を振る春香。
 沙羅は深く悲しみに彩られた表情を見せる。
 生き返らせないほうが良かった、なんて思って欲しくはなかった。


――Break Down Fake Love
  隠れた疑う心晒し
  素直になって叫ぼうよ
  偽りの愛に惑わされないで
  私を好きだと言って

 スピーカーウィングに乗せた三味線の音が首都の隅々にまでいきわたる。
「みんなにお届けなの、あんじゅ~からのプレゼントなの!」
 告げると杏樹は歌いながらプシューケーの蝶を飛ばす。
 その蝶は観客の頭上を羽ばたいていくと、自身の三味線のビートも上がる。
 その杏樹を捕えようと数人の男が迫った、しかし錆に差し掛かった杏樹はそれをライヴズジェットブーツで飛び、回避。
「ヘイシズがアルター社と共にした情報操作に騙されちゃだめ。
 アッシュグルードの言葉に踊らされりゃダメなの!
 思い出して!」
 杏樹は叫ぶ、愚神がなにをしてきたか。
 それはきっと誰しもが一度は目にした、愚神の凶行。
「皆も、情報に惑わされず、心を強く持って、何が正しいか常に問いかけて
アイドルリンカーとして、今後も世界の真実を、お届けします」

   *   *


 その紛争地帯には叫び声が木霊していた。
 いや、違う、紛争地帯だったのは昔の話、さらに叫びと言ってもそれは暴徒の萎縮してしまうような怒鳴り声ではなく。
 負けてほしくないと叫ぶ、人々の心。
 それがオアシスの湖面を揺らすほどに連なっていた。
 彼らは逃げてきた人々だった。
 愚神の歌に意志だけで反抗しつづけ。他の近隣の村や国からの圧力でここに退避せざるをえなかった。
 このオアシスに。
 かつてこのオアシスとオアシスを跨いだ二つの村々は対立していた。
 古くからの因縁が忘れられずお互いを敵視してばかりいた。
 けれどそれも終わりを告げた。
 歌の力で、リンカーたちの努力で。
「歌ってくれ!!」
 オアシスのたもとで男性が立ち上がりそう拳を突き上げた。
「アンタが俺達を救ってくれたんだ。謳ってくれ!!」
 そのコールは次第に大きくなる。そして壇上に上がった小さな影はヘッドセットを小さくたたくと告げる。
「違うよ、僕たちが救ったんじゃない。みんなが許したがってたんだ。僕らはそれに手を貸しただけだよ」
 アルの背後のモニターに明かりがともる。表示されたのは宇宙空間でのライブ。
 そしてECCOと赤原光夜というバンドメンバー。
「みんな! 僕のスペシャルライブ、楽しんでいってね」
 その中継はここだけではない、近隣の村々にわざわざ発電機ごと多数設置してある。
 それらは今まさに暴徒に踏み潰されようとしていた。存在を忘れられ無視されていた。
 それにアルの姿が映し出される。
「みんな、思い出して! 何のために僕らが戦っていたのか!」
 告げるとアルが口づさむのは【騎士の歌】。
 これは、フェス企画で作ったただの楽曲ではない。
 命を賭す戦場に身を置く者達を援護し、護り、奮い立たせ、共に戦う…言うなれば【実践向けの曲】だ。
「…避難誘導した時にいた少女は『歌は何だかこわい』と話してた。それは僕は事実だと思う」
 アルはあたりを見渡す、そこにはかつて娘を守るために歌い手となった母がいた。友人を亡くして泣いていた少女がいた。酒場でなぐり合っていた者達が肩を組んでアルに手を振っていた。
「けれどそれだけじゃない、歌はもっと力があるんだ。怖いなら、ボクらがそれを上書きするよ!!」
 サウンドが強まる、振り返ればECCOと光夜が微笑みかけてくれた。
「僕がいる! みんなこんなことやめよう。誰かを攻撃するより、一緒になって歌った歌の方がきっと気持ちいはずだよ」
 アルは思う。
 H.O.P.E.……それは希望溢れる光。
 そしてアルは誓う。未来を指し示す羅針盤となり、望みある全ての人へ掲げる灯台となろうと。
 自分がいる限り、闇に迷わせたりしない。それが誰であろうとも。
「貴方達の旅路を、ボク達H.O.P.E.が支えてみせるよ!!」
 告げるアルのサウンドが夜に響く。
 その声に顔をあげる軍人たち。
 我に返った人々は同じく暴走していた人々を抑えにかかる。
「私たちはいったい何をしていたんだ」
 そう見あげた地平線の先に夜明けは近い。


   *   *

 そして話の渦中、東京では。ディスペアが取り囲まれていた。
「お前等どういうつもりだ! ステージ降りろ!」
 そう叫んだ男性が投げた靴。その靴は回転しながら梓の顔面へと飛来する。
 だがそれを受け止めたのは一人の男性。
「やれやれ、人は流されやすい物だとは言えこれは見過ごせんな」
――…ん、流れは変える…ボク達には、それが出来る。
「遊夜……さん?」
 梓が茫然とつぶやいた。その瞳は『麻生 遊夜( aa0452 )』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001 )』の背を映していた。
「ん? 今名前で呼んだか?」
「ん……、そんなことを言ってる暇、ない」
 ユフォアリーヤにほっぺたをつねられながら遊夜は共鳴する。
「待たせたな、俺達が来たぞ!」
――……ん、もう安心して……いいよ?
 告げると遊夜は銃を構えて威嚇したその時である。。
「おまたせー蘿蔔も歌っちゃいます!」
 次いでモニターいっぱいに映し出された蘿蔔に全員の視線が奪われた。
「卸さん」
 ディスペア三人の顔が華やいだ。その三人に蘿蔔はウィンクを送ると『斉加 理夢琉( aa0783 )』がポットから射出される。
 宇宙空間のただなかで、髪の毛を舞わせながらポットから解き放たれた少女。
 その少女は地球をバックににっこりほほ笑むとマジックブルームで箒に足を駆けた。
 蘿蔔の手を取って。そして高速で地球に向かってくる。
「……。そこにいるとやばいぞ!!」
 告げると遊夜は銃を乱射。天井を丸く切り取るとその穴めがけて二人が突撃してきた。
 ステージ上でうまく衝撃を吸収したのだろう。大した被害もなく二人はステージに到着し、決めポーズをとる。
 唖然とする観客たち。
「あ、あの、ふたりとも……」
 そう梓がおずおずと声をかけると、ひやあせを額に浮かべたまま蘿蔔が親指を立てた。
「私達は大丈夫です!」
 次いで理夢琉がばらまいたのは解け合うシンフォニスの歌詞カード。
「一緒に謳って!」
 あれから二人はその曲をずっと練習してきた。
「アイドル友達の理夢琉と蘿蔔だ! 歓迎してくれ!」
 そうクルシェがまるで演目であるかのように処理をすると、唖然とする観客たちの前にラインを敷く遊夜。
 観客たちをよりつかせないように見張る。
「思い出せ! 愚神が正義であるのなら洗脳など使わない! 忘れるな! 想いを踏みにじり、悲鳴や絶望が好きだと嘲笑った愚神の姿を!」
 そう遊夜は拳を突き上げる。
「目に焼き付けろ! 騙されて苦悩し傷ついて尚、前を向き歩き始めたディスペアの姿を!」
 そんなディスペアメンバーにマイクを差し出す蘿蔔。
「大丈夫だった? 皆の曲私達も一緒に歌っても良いかな?」
「うん! 一緒に謳おう」
 梓が告げるとかかった曲はトップスタンダード。
 五人組でこの曲を謳うのはいつ振りだろうか。
「ここにいるのはディスペアが好きな人達なんだから、歌えばきっと伝わる、私達はそう信じてます」
 振付を合わせたことなど一度もないのに五人のダンスはシンクロしていた。
 次いで理夢琉の持ち曲『kizuna☆Friends』。
 新しい出逢いは不安でも勇気出してみようよ、と背中押すその曲を謳うために蘿蔔と理夢琉は舞台から降りて走り出す。
「デモがこちらに向かってます、避難してください!」
 告げたのは連絡を受け取った小雪。
「打って出ます!」
 アイドルたちはライブ会場を飛び出すことを選択した。
 そして謳うのは『愛の音』。
 ゆっくりと歩み寄るように、蘿蔔がメロディーを口ずさむと、四人はコーラスをくわえてくれる。
「大切な人と一緒に聞いてほしくて作りました!
 皆さんの大切で、隣にいて欲しい人は誰ですか? 私達H.O.P.E.は愚神が相手だから争いたいわけじゃないです。
 ただ……誰かの大切な人を、この世界を守りたい、それだけです」
 暴徒の中にはその歌に立ち止まってくれるものもいる。しかし狂った大人の隊列が蘿蔔を飲み込もうとしていた、その時。
 群衆の前に燃えたつ隕石が落下したのだ。
 それは石畳を粉砕し。土ぼこりを舞い上げ、突風で女性たちのスカートをめくりながら、緩やかに収まっていき。そして。
「ッメェエエーーン! テメェらこっちを見ろぉおおお!」
 煙の中から現れたのは。女性の姿の『ネイ=カースド(aa2271hero001 )』。つまり『煤原 燃衣( aa2271 )』。
 彼女はいきなり派手ギターを奏で始めるといつの間に設置されたのだろうか、アンプから甲高い音が無数に連なり、観客たちは耳を抑えた。
 そのままネイはぎーたーを持ち上げるとジャケットを脱ぎ捨てダイナマイトボディーにタンクトップとなる。
「…テメェらまさか忘れたんじゃあネェだろうなァ!?」
 演奏を挟みながらヘッドセット型のマイクでMCを続ける燃衣。
 汗を振り乱しながら高らかにギターを弾き終える。
「まずはー……コイツをみなぁ!」
 告げるとアイドルライブを撃ちきってネイがモニターを操作しそこに映像を流す。
 特性VTRである。
<忘れちゃいけねぇ!《奴ら》が俺たちに何をしたかをな!>
 流れるテロップ、BGMは地力。
 そして映し出されたのはこれまでの世界全体とH.O.P.E.やアイドルの活動おおったドキュメンタリ。
 唐突な真面目路線に観客のほとんどがネイを振り返った。
「え? どうしたんですか? 尊い映像が始まりますよ?」
 そう促されるままにモニターに視線を戻す暴徒たち。
 そこに映し出されていたのは愚神の攻撃、帰る場所を、家族を失くした人々、戦闘の様子。
「んで! これから流れるのがうちの組のアイドルリンカーだ! 見て言って幸せになれ! この野郎!!」
 いつもは絶対言わないセリフを吐き散らしながら燃衣がモニターを指さすとそこには二組、四名のアイドルが鎮座していた。
 この長いアイドルライブももう、終わりに近づいているようだ。


第五章 クライマックス

 作戦が佳境に迫るころ、澄香といのりはふらふらになりながらも謳い続けていた。その声も喉ももう限界に近い。
 あと、あと一押し。
 そんななか二人の魔法少女がステージの上で花咲いた。
 『ルナ(aa3447hero001 )』と『藤咲 仁菜( aa3237 )』。
二人とももちろん『世良 杏奈( aa3447 )』、『リオン クロフォード(aa3237hero001 )』と共鳴済み。
 そして二人とも魔法少女姿である。
――注目集めるなら魔法少女が一番だな!
「目立ちたくないとか言ってる場合じゃないもんね。やるしかないよ…!」
 そう仁菜は隣に立つルナに視線を向ける。
『もしかしたらガデンツァがアタシ達の中にいるのかもしれないって…。念の為にやって欲しいの』
 そう言った彼女にパニッシュメントを使い。ここにいる。
 だがおかげで仲間は信じられる。
「魔法少女マジカル☆ミルフィー! 悪いやつは甘いお菓子でやっつけちゃうよ!」
 メンサセクンダでお菓子を大量に償還宙に舞わせ、星の書でシューティング。
「地球の皆さんこんにちはー!宇宙魔法少女のルナティックローズでーす!!」
「ルナ、それだと私達が宇宙から来たみたいじゃない?」
 そう杏奈が小声で告げた。
 歌はかつて歌った『幸福の詩』と『報復の詩』をアレンジした楽譜で、そこから悪意を抜いて、善意を足した物。
 報復の詩を仁菜が、幸福の詩をルナが謳う。
「ねぇ! 来てる? 国の偉い人たち」
 告げると仁菜の表情が各国要人がいるであろう部屋や部屋に映し出されていく。
 その背後でルナは箒にまたがって宇宙を飛行していた。
「私たちの歌声、みんなにとどけてよね」
 これから先に迎えるクライマックスの目にも。
 二人が歌を終えると中央から姉妹が現れる。
 <味方ならもっと身近に居るじゃねぇか!同じ人間のよぉ!>
 地上で燃衣が吠えた。
 その言葉を胸に『鈴宮 夕燈( aa1480 )』と『楪 アルト( aa4349 )』は顔をあげた。
 二人が謳うのは安寧の歌。
「うち思うんよ。みんな、「愚神」って怖いから、安心できるって思いたくて、いま、こうなってるんちゃうかな」
 告げる夕燈は胸の前で手を組んだ。不安なとき、きっと、安心できる事だけを信じたい。
「って、うちも怖いから、なんとなく。わかるん」
 怖くて戦いに参加できなかった。怖くて戦場で謳えなかった。
 そんな思いを何度も重ねて、でも今夕燈はここにいる。
 震える手を取ってくれる頼もしい姉がいるから。
「みんなと歌えるん、大好きで楽しくて、嬉しいとけど。うちがうちやから想うことって。うちやから歌って形にして、伝えられるかなって」
 アルトのメロディーにくわえて、夕燈は一生懸命に言葉を電波に乗せた。
 二人の地面がせり上がりポットが現れる。
「今日、最後に歌う歌は、今日だけの歌。名前もあらへんよ、溢れるままに紡ぐ歌。貴方と目が合ったから、貴方の事を教えてもろーて、それを歌うん」
「ほら夕燈、客が待ってんだよ…さっさと行くぞ」
 それを直接届けたい。
 二人はそう宇宙へ旅立った。
 地球に到着する前に二人はポットから出る。 
 そして霊力を媒体に歌を地球へ届けた。
 その名もない歌を。
――みんなおんなじ不安やったら、希望も不安も一緒に散りばめて
 星空みたいに、きっと輝くHOPEになる。

「うちは、せやから。怖いけど、それ以上に、歌いたい」
 打ち出されたアルトのミサイル。
 アルトは夕燈の手を取ってジェットブーツでミサイルに追いついた。
 そしてそのミサイルに乗りながら謳う。

――でも暖かいものはずっと持ってたんだ
  シンセサイザーの音色は聞こえてたんだ
  ただあたしが聞こえないふりをしていた。

 その歌声は不思議と誰の胸にも届く気がして。
 遊夜は暴徒が静まり返った町からその星々を見あげていた。
 同じメロディーをその場で口ずさんでいる。
「遊夜さん」
 そんな遊夜の周りにジャージ姿の少女たちが集まった。衣装を着替えてリラックスモードである。
「お疲れさん、最高のライブだったぞ!」
 そう子供たちの頭を撫でる遊夜とユフォアリーヤ。
「…ん、良い子良い子」
 このお祭りの様な一日は世界に音と言葉の恐怖と希望を知らしめた。
 結果一度世界は揺らいだかもしれない。
 しかしそれは、雨を降らせて地を固めるような、そんな良い影響も及ぼした。
「まずい……のう」
 そうルネは海辺で歌を聴きながらつぶやいた。
 朝日に照らされたルネの頬には笑みが浮かべられている。
 それはいったい、どういった意味を持つのだろう。




「ガデンツァ、身体が無くなった今でも滅びの歌を歌い続けてるの?」
 謳い終えたルナが告げた。すると杏奈がその頭を撫でる。
「元々、世界を歌で破壊する為のプログラムだったとしても、気の毒ね…」
 その言葉を澄香は目をつむって、胸に秘めた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 敏腕スカウトマン
    雪ノ下・正太郎aa0297
    人間|16才|男性|攻撃



  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
    機械|15才|男性|回避
  • 叛旗の先駆
    (HN)井合 アイaa0422hero002
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • きみをえらぶ
    ナト アマタaa0575hero001
    英雄|8才|?|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命



  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中



  • 特開部名誉職員
    高野信実aa4655
    人間|14才|男性|攻撃
  • 親切な先輩
    ロゼ=ベルトランaa4655hero001
    英雄|28才|女性|バト
  • 愛するべき人の為の灯火
    御剣 正宗aa5043
    人間|22才|?|攻撃
  • 共に進む永久の契り
    CODENAME-Saa5043hero001
    英雄|15才|女性|バト
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