本部

従魔がくるりと輪を描いて

花梨 七菜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/04/11 19:51

掲示板

オープニング

●お花見シーズン真っ盛り
 よく晴れた土曜日。
 公園は、たくさんの花見客で賑わっていた。桜並木にはレジャーシートが敷かれ、皆、ビールやジュース片手に宴会中である。
 ピーヒョロロ……。
 騒がしい公園内で、その鳴き声に気づいた人は、いなかった。
「痛っ!」
 レジャーシートに座って、友達と楽しく喋っていた男性は、突然、頭に衝撃を受けて前につんのめった。
「え? どうした?」
 友達が言ったが、男性は答えることなく、頭に手をやった。生温かいものが手に触れた。
「わ! 血だらけだよ、お前! 大丈夫か!」
 男性は、血にまみれた自分の手を見た。
「俺、血を見ると卒倒するタイプなんだ……」
 男性はそう言いながら、ふっと意識が遠のいていくのを感じた。
「おい! しっかりしろ!」
 それが惨劇の始まりだった。

●奴らは突然襲ってくる
 H.O.P.E.敷地内のブリーフィングルームで、職員が説明を始めた。
「桜の名所として有名な公園に、トンビの姿をした従魔が三体出現しました。花見客が十数人襲われて、現場はパニック状態だそうです。警官や警備員の方々が避難誘導をしていますが、花見客の数が多くて、避難が順調に進んでいないそうです。もともとトンビがいる公園ではないのですが……ライヴスを狙ってどこからかやってきたのでしょうね。これ以上怪我人が増える前に、従魔の討伐、よろしくお願いします」

解説

●目標
 従魔の討伐

●登場
 ミーレス級従魔 × 3体。
 トンビ型の従魔。
 体長約80cm。
 空中から急降下して、鋭い爪やクチバシで攻撃する。
 人間の頭をピンポイントに狙ってくる。

●状況
 晴天。午後1時頃。
 桜の名所として有名な公園。
 怪我人が十数人いる。
 約300人が、パニック状態になって従魔から逃げ惑っている。

リプレイ

●トンビ型の従魔を倒そう
「わーい、お花見……って何、敵が暴れてるのー? 折角屋台で美味しいもの食べれると思ったのにぃ~」
 犬のワイルドブラッドである最上 維鈴(aa4992)は、涙目で口をとがらせた。
『ま、早く片せばまだ楽しめるんじゃないか?』
 英雄の鯉寧(aa4992hero001)は、言った。
「そうだよね」
 維鈴は、元気に頷いた。

「飛んで火に入る春の鳶……といったところかな。人間の騒ぎは兎も角、美しい花を楽しむ場所を荒らすのはいただけないねぇ」
 ソピア=アイオン(aa5364)は呟いた。長身で、フード付きの黒い外套を纏った姿は、人型の大きな影のようである。
 ソピアの傍らには、英雄の命荷(aa5364hero001)が従者のように控えていた。

『成程、確カニ我ガ出テハ混乱ヲ招キカネヌナ』
 英雄の夜咫鴉(aa4318hero001)は呟いた。夜咫鴉は、黒ずくめの呪術師風の容貌で花見客が怖がるかもしれないので、表立った行動は控えるつもりだった。
『トコロデ……其ノ得物ハ共食イデモスル気カ?』
 夜咫鴉は、ガルフ・ガルグウォード(aa4318)の用意した「ターキーハンマー」を見て、クツクツと嗤った。ターキーハンマーは、丸焼きにした七面鳥そっくりのハンマーで、おいしそうな香りまで漂わせている。ガルフは鴉のワイルドブラッドなので、夜咫鴉がからかったのである。
「まあ、ある意味な。それに意識が別の方向に向けば、パニックも少しは和らぐかもしれねえし」
 ガルフは、ニッと笑った。花見客が七面鳥に気を取られて冷静になってくれれば、言うことなしだ。
「折角の花見がトラウマになったら笑えねえ。無粋な従魔にゃご退場願おう」

「一般人の避難誘導もヒーローの立派なつとめってねー」
 Heidi(aa0195)は、呟いた。Heidiは、白目部分が黒い義眼を持つアイアンパンクの少女である。
『荷物の中にものすごい量のお菓子はいってるんだけどー?』
 英雄のBelicosity(aa0195hero001)は、袋から溢れ出しそうな大量のお菓子を見つけてツッコミを入れた。Belicosityは、髪に赤いメッシュの入った美少女のように見えるが、性別は不明である。
「なんのことかなー。わかんなーい」
 Heidiは、そらっとぼけた。

「カラスとかじゃねぇんだな」
 赤城 龍哉(aa0090)は言った。
『従魔のやる事に一々理由を求めるのも面倒になってきましたわ』
 戦乙女の名を持つ、英雄のヴァルトラウテ(aa0090hero001)は、頬に手をあてて軽く溜息をついた。
「ともあれ早いとこ片付けないと要らん被害が出そうだ」
 仲間と適宜連携して、被害をこれ以上広げる事無く片を付けたいと、龍哉は考えた。

『トンビに似た従魔ですか……怪我人も心配ですし急ぎましょう』
 英雄である構築の魔女(aa0281hero001)は、辺是 落児(aa0281)に言った。落児は、無言で頷いた。
 まず、構築の魔女は、H.O.P.E.に依頼して病院搬送用に車両を要請した。次に、現地の警察・警備関係者に連絡を取り、救助の速やかな実施のための協力を依頼した。

●現場到着
 本来ならば楽しそうな声が聞こえてくるはずなのに、聞こえてくるのは悲鳴や怒号であった。
「みなさん、落ち着いて避難して下さい!」
「避難するってどこに逃げればいいんだよ!」
 ある所では、警備員と花見客がもみあっている。他の場所では、従魔から逃げようと花見客が走り回っている。一刻も早い対処が必要だ。
 エージェント達の到着を待ちかねていた警察官と警備員が、エージェント達に駆け寄ってきて、現状の説明をした。
 公園の案内板を見ながら、エージェント達は手短に話し合った。
「戦い易いのは、こことか、ここだな」
 ガルフは、案内板を指差しながら言った。
「なるべく広い場所があればいい。桜の樹を巻き込まなければ特にいいのだが」
 ソピアの呟きを耳にして、警備員が園内の桜の場所について情報を提供した。
「従魔が頭をピンポイントで狙ってきているのなら、狙い難くするのは当座の対処としては有効だろうな」
 龍哉は、言った。
「花見客が使っていたレジャーシートの類を頭に乗せる、最寄りの屋根の下に入る、桜の樹の下へ入る……。桜の樹は、屋根の下程安全を確保できるとは思えないが」
 龍哉が言うと、ガルフは言った。
「他に隠れる場所がなければ、桜の樹も活用しようぜ」
「そうだな」
 龍哉は頷いた。
「頭を隠す物、いろいろ持ってきたんだー」
 Heidiが言うと、Belicosityが『お菓子だけじゃなかったんだね』とニヤニヤした。
 囮役が囮をする場所、避難誘導の方法・経路などについて話がまとまった。避難誘導は警察官や警備員にも協力を依頼した。

●花見客の避難
 従魔は、辺りに鳴き声を響かせながら、花見客の頭上を飛び回っている。いつ急降下して襲ってくるかわからない恐怖に人々は怯え、右往左往していた。

 ソピアは、芝生の上にキャンプ用テントを設置した。怪我人を一時休ませるための場所である。警備員に救急医療キットを渡して、怪我人の対処をお願いした。早速、怪我人が中に運び込まれる。
「頭を低く垂れて待っておいで」
 ソピアは呟いて、囮役をするために立ち去った。

「レジャーシートや鞄などに頭を隠して、なるべく頭を伏せてー」
 Heidiは、拡声器を使って花見客に呼びかけた。木の下、テントも一時避難場所として活用してもらうようにした。警察官や警備員も一緒に呼びかけをしてくれている。
「これも使ってー」
 Heidiは、頭を隠すものがなくて困っている人には、ブランケットや日傘を渡した。
『頭を狙ってくるなんて……。ハイジちゃん狙われたら更にバカになっちゃうよねー』
 Belicosityが軽口を叩いた。
「そんな時が拒絶の風の使いドコロっしょ。って誰がバカだって!?」
 一瞬遅れて、Heidiはツッコミを入れた。
 そんな風に避難誘導をしていたHeidiは、道の真ん中でおろおろしているお年寄りに気づいた。
「おちついてー。ボクらエージェントが来たからもう大丈夫だよ。まっかせなさい!」
 Heidiは、そう言ってお年寄りを励ました。無駄なくらい自信満々に堂々としているのは、お年寄りを安心させるためである。
「膝が痛くてな……。怪我をしたわけではなく、持病なんじゃが」
「大丈夫。ボクが運んであげるよ」
 Heidiは、お年寄りを抱き上げてテントまで運んでから、避難誘導の仕事に戻った。

 ガルフは、夜咫鴉と共鳴した。肌は青白く、青みがかった黒髪になり、拘束具付きの戦装束を纏い、首・両手足に焔纏う禍々しい枷と鎖が出現した。ガルフがかつて失った左背にも漆黒の鴉翼が甦った。
「レジャーシートやバッグ等で頭を隠して、近くの桜の木の下へ避難するんだ!」
 ガルフは、公園内をぐるりと一周走りながら、事前に借りていた拡声器を使用して花見客に呼びかけた。移動中に怪我人を数名発見し、怪我人のいる場所と怪我の程度を通信機で仲間に報告した。
 ガルフは、救急医療キットで怪我人の応急処置を施していった。

 龍哉はヴァルトラウテと共鳴した。前髪が一房銀色に染まり、左目の瞳の色が蒼に変わって、ヴァルトラウテの鎧を装着した姿となった。
 龍哉は、従魔の動向を探りながら、ガルフから連絡のあった怪我人の場所へと急いだ。
 男性がレジャーシートの上に倒れており、その友人らしき人物が「しっかりしろ!」と声をかけていた。
「自分の血を見て気絶しただけだと思うんですけど……」
 男性の友人の話を聞きながら、龍哉は救急医療キットで応急処置を行った。
「この人は俺が運ぶからもう心配いらない。レジャーシートで頭を隠して避難するんだ」
 龍哉は、男性の友人に避難を促してから、男性をかついで病院搬送用の車両へと運んだ。

 落児と共鳴した構築の魔女は、人だかりのある場所や救助を求める声を確認し、負傷者を捜索した。移動中は、逃げ惑っている一般人が落ち着けるよう広域に声掛けを実施した。
『H.O.P.E.のエージェントです! 救助にきました。落ち着いて話を聞いてください!』
 構築の魔女は、倦まず弛まず呼びかけを続けた。
『従魔は頭部を狙っています! 不意に走り回らず頭部を隠し木陰で身を低くしてください!』
 構築の魔女は、頭部から出血して動けなくなっている怪我人を発見し、救急医療キット、救急救命バッグを使用して応急処置を実施した。応急処置が終わると、怪我人を背負って公園の外の安全な場所まで運んだ。
 従魔が、負傷者を運搬中の構築の魔女に襲いかかった。構築の魔女は、照準を合わせられないと判断してテレポートショットを使用した。死角から突然現れた銃弾に従魔は驚いて飛び去って行った。
 怪我人の避難が終わると、構築の魔女は再び、負傷者の捜索と避難誘導を開始した。レーダーユニット「モスケール」を使用し、従魔の反応があった際には旋回方向や速度から避難時に従魔に狙われる可能性を算出して、公園外に逃げるべきか遮蔽物の陰に隠れるべきかを判断し、声掛けの内容を変更することにした。
『囮の方に気を取られているか逆方向に進んでいるときには避難を勧めましょう』
 構築の魔女はそう呟いて、レーダーユニットを確認してから花見客に呼びかけた。
『西側に警察官関係者がおります! 合流して慌てずに指示に従ってください!』
 花見客も次第に落ち着いて行動できるようになってきていた。
 構築の魔女は、何人かの軽傷の怪我人に応急処置を施し、H.O.P.E.の用意した車両への避難を依頼した。

●従魔との戦闘
 ソピアは、公園内の広場に到着した。
 仲間が避難誘導をしてくれているおかげで、少しずつ広場から人が減っていく。
 ソピアは命荷と共鳴し、両目の瞳が燃えるような深紅に染まった。
 背の高いソピアは、広場の中央にすっくと立ち、フードを脱いで頭を晒した。
「さあ、来たまえ。首を洗って待っておくべきなのは君たちの方だがね」
 ソピアは、堂々たる態度で敵を待ちかまえた。
 ピーヒョロロ……。
 甲高い鳴き声が聞こえ、従魔がソピアの頭上に現れた。従魔は空中を旋回した。
 ソピアは、ミョルニルを従魔に投げた。従魔はソピアの攻撃を回避した。
 ソピアは、グランドールに持ち替えて、従魔が攻撃のために降下してくるのを待った。
 従魔は、一直線にソピアの頭部をめがけて飛び下りてきた。
 ソピアは、従魔の攻撃を回避した。
「狙ってくる部位が決まっているのなら占いの必要もないねぇ」
 ソピアは冷静に呟いて、従魔の動きを目で追った。
 再び、従魔の攻撃。
 ソピアは、従魔が降下してきた瞬間を狙ってメーレーブロウを使用した。ソピアの体から黒いオーラが溢れ出し、大剣の刃が目まぐるしくきらめいた。従魔は、羽根を何枚も落としながら、ソピアから離れて花見客がいる方へ飛んでいこうとした。
 ソピアは、従魔の前に回り込んで行く手を阻み、ストレートブロウで従魔を後退させた。
「人間が騒ぐと煩いからねぇ……さっさと片付けて仕舞おう」
(そんな事言って、結構気遣ってんじゃないのか? 師匠)
「君も小煩いな。無駄口を叩かずに集中したまえ」
 命荷に言い返して、ソピアは剣を構えた。

 共鳴した維鈴は、公園の中央付近に生えている木に登って、木の上から高く跳び上がって従魔の位置を把握しようとした。ついでに格好の標的がいると敵に認識してもらうのも狙いだった。
 確認できた従魔は二体。二体の内の一体は、ソピアのいる広場の近くを飛んでいるのでソピアに任せてよいだろう。もう一体の従魔をソピアのいる広場に誘導するのが維鈴のなすべきことである。
 地面に着地した維鈴は、いったん共鳴を解除し、維鈴は囮役、鯉寧は避難誘導をすることにした。
『いいか、無理だけはするなよ。危なくなったら俺を呼べばいいんだからな』
 鯉寧は、維鈴に言った。
「だいじょうぶだって。オレ、持ち堪えて見せるから」
 維鈴は、にっこり微笑んで言った。念のため、維鈴はピストルも携帯しておくことにした。
 維鈴は、通信機で仲間に従魔の発見場所とこれからソピアのいる広場に従魔を誘導することを伝えた。それから従魔のいる場所に移動し、空を飛んでいる従魔に向かって手を振ったり大声を出したりして、従魔の注意を引いた。
 鯉寧は、いざという時共鳴できるように、維鈴と一定の距離を保ちながら、避難誘導の呼びかけをした。
 従魔が、維鈴に気づいて急降下してきた。
「うわっ」
 維鈴は、間一髪で従魔の攻撃を回避した。
『大丈夫か!?』
 鯉寧は、維鈴に声をかけた。
「へいき、へいき」
 維鈴は答えて、従魔の注意を引きながら広場の方へと移動した。従魔は何度も維鈴を襲い、維鈴はそれを避けて右へ左へジャンプした。
 しばらくして、鯉寧が維鈴に駆け寄り言った。
『この近辺の避難は、あらかた終わった』
 その言葉通り、周囲の一般人は公衆トイレや東屋、桜の樹の下などに移動し終わっていた。維鈴は鯉寧と再び共鳴し、維鈴と鯉寧とのちょうど間位の青年に変化した。瞳は金色で、目元には隈取に似た朱色の刺青が浮かび、仄かに身体が金色を帯びている。
 維鈴は、威嚇射撃をして、従魔が花見客の方に向かうのを阻み、従魔を広場に追い込んだ。
 広場に到着していた龍哉は、従魔が降下してくる瞬間に狙いを定めた。先ほどから従魔を観察していた結果、普通の鳥と同じように翼で揚力を得て飛んでいることがわかったので、従魔が獲物を狙って降りてきて減速をかける瞬間が、一番の狙い所であると龍哉は判断した。
 急降下してきた従魔に、龍哉はロケットアンカー砲を放った。クローが従魔の翼に噛みついた。龍哉は、従魔を拳の間合いまで引き寄せ、一気呵成に叩き伏せた。
「鳶に油揚げをさらわれる、なんて表現もあるが、花見の時期を狙ってのこれはちょいと野暮が過ぎるってもんだ」
(早々に退場頂きましょう)
 ヴァルトラウテの言葉に頷いて、龍哉はザッハークの蛇で従魔に攻撃を加えた。蛇のような姿に変化した武具が、従魔に喰らいついた。龍哉は、避難中の一般人への流れ弾を回避するため、有線系・近接系の武器を使用するように心掛けていた。

 ガルフは、ある程度避難が完了し戦闘スペースを確保できたので、従魔を広場に誘導することにした。
 ガルフは、ターキーハンマーを従魔の視界に入りやすいように上に翳して叫んだ。
「おーい、こっちだぜ」
 従魔が、おいしそうな七面鳥に視線を向けた。
 ガルフは、通信機で仲間と連絡を取り合いつつ、従魔を惹きつけながら合流予定の広場を目指して走り出した。
 従魔の注意がガルフから離れて、花見客に向かいそうになった。
『そちらへ行ってはいけません』
 構築の魔女は、従魔から花見客への進路を遮るように威嚇射撃を行った。
 従魔は、再びガルフを追いかけだしたが、途中でまた花見客へと目標を変えた。
 構築の魔女は、射程延長のためにロングショットを使用して攻撃した。
 従魔は、花見客から離れていった。
 構築の魔女は、安堵の溜息をついた。構築の魔女のどの攻撃も、射線が必ず一般人の頭上を越える角度になっており、流れ弾に常に留意して、一般人には被害が及ばないように計算されたものだった。
 ガルフは、花見客から離れて人気の少ない道へと従魔を誘導した。
『クカカカカ! 温イ温イ!! 御前ノ爪ト嘴ハ其ノ程度カ? 悔シケレバ此ノ鶏肉ヲ食イ破ッテ見セヨッ!』
 突然、夜咫鴉がガルフの影から出てくるや拡声器片手に従魔に向け挑発を仕掛けた。
「あ! いつの間に……! って、攻撃苛烈にしてんじゃねえーっ!!」
 ガルフは、従魔に髪をむしられ涙目になりつつ走り続け、広場に到着した。
「維鈴、頼んだぞっと!」
 ガルフは、一瞬身を屈めて猫騙で従魔の隙を作り、従魔に一撃を加えて従魔を仲間の方へと投げ上げた。
「了解!」
 維鈴は応えて、ストライクで従魔の翼を狙った。従魔は、銃弾を回避した。
「もう、すばしっこいなぁ~」
 プンスカする維鈴に向かって、従魔は急降下してきた。
「うわっ、あぶなっ!?」
 維鈴は、危ういところで従魔の攻撃を避けた。
(フフッ、油断禁物ってな。ちゃんと狙えよ)
 鯉寧の助言に、維鈴は「わかった!」と元気に応えた。
 HeidiとBelicosityも広場に到着した。
「ハイドベリカ参上。花見を騒がす不届き者……正義の心が許しておけない!」
 HeidiはBelicosityと共鳴し、かっこよく名乗りを上げた。体にフィットした戦闘スーツと、顔の片面を覆う仮面は、Heidiが密かに憧れる戦闘ヒーローを思わせる風貌である。Heidiの本音は、従魔を倒して早くボクも花見をしたい、であった。
 Heidiは、木の下にいる一般人を守り、何かあった時にはすぐ対応できるように、一般人のいる場所を背にして、遠距離から戦闘に加わることにした。
「ふっ……子供たちよ……応援してくれてもいいんだよ……!」
 Heidiは、子供達に手を振った。
(いや後ろじゃなくて敵見て敵。……きはは! 行くよー!)
 Belicosityはツッコミをいれてから、嬉しそうに戦闘に対峙した。
「ソピア! Heidi! 消火器で目くらましだ!」
 ガルフは、ソピアとHeidiに声をかけた。
 ソピアとHeidiは、了解の返事をした。
 ガルフ、ソピア、Heidiは消火器を取り出し、頭上を舞う三体の従魔を見上げてチャンスを待った。
 二体の従魔が空中で交差する瞬間に、ガルフは二人に合図を送り、消火器から白い消火剤が放射された。二体の従魔は、一時的に視力を奪われてふらついた。二体の内の一体に維鈴が銃弾を放ち、今度は命中した。
 従魔は、ガルフとHeidiに向かって急降下した。Heidiは、従魔が降下するタイミングを狙って、従魔を攻撃した。ガルフは、紙一重で従魔の攻撃を回避した。
 龍哉は、自分に襲いかかってきた従魔にメーレーブロウを使用した。龍哉の激しい動きに従魔がたじたじとなる。すかさず、ガルフがジェミニストライクを使用して、自らの分身と共に従魔を攻撃した。狼狽した従魔に、維鈴が銃弾を撃ち込み、従魔を仕留めた。
 残る従魔は二体。
 Heidiは、二体の従魔が範囲内にまとまったのを狙って、幻影蝶を使用した。ライヴスの蝶が舞い、従魔からライヴスを奪った。従魔がHeidiに反撃したが、Heidiは拒絶の風を使用して回避した。
 一体の従魔が維鈴を攻撃し、もう一体がソピアを攻撃した。
 ソピアは、二体の従魔が地上近くに来たところを見計らい、怒涛乱舞を使用した。踊っているかのような華麗な動きで、従魔を地面に叩き落とした。
 龍哉は、ザッハークの蛇で従魔に攻撃を加え、従魔を退治した。
 最後の一体となった従魔に、ガルフがターキーハンマーで一撃を加え、戦闘は終了した。

●お花見しよう
 従魔討伐は無事に終了したが、公園内は、人々が慌てて逃げた際に散らかしたゴミで殺伐とした状態になっていた。
 構築の魔女は、自治体に交渉し地域放送にて公園内の清掃の協力を要請することにした。
『騒動がありましたが片付けはきちんとしたいものですよね』
「ロローー」
 落児も同意し、二人は清掃を始めた。
 Heidiも「桜の中で戦闘するボク、カッコよくね?」と自分に酔いながら、戦いの後片付けをした。
「こういうのは始末も大事ってボクの好きなヒーロー、ソウジマンも言ってたよ」
『……誰それ?』
 Belicosityのツッコミを聞き流し、Heidiはせっせとゴミを拾い続けた。早くお花見をしたいからである。
 命荷も自ら進んで花見再開の手伝いをした。命荷は、後片付けをしている一般人と言葉を交わしては、時折笑顔を浮かべた。
 清掃が完了すると、Heidiは、ちゃっかり自分のレジャーシートも敷いて、オヤツ片手にお花見を始めた。
「きれいだねー。よいこの皆、花見の後片付けもしっかりやろう! クリーンなヒーロー、ハイドベリカとの約束だゾ!」
『……それ、誰にむかって言ってる?』
 カメラもないのにカメラ目線できめたHeidi に、Belicosityはツッコミを入れた。
『師匠。向こうで売ってたぜ!』
 命荷は、木陰で退屈そうに居眠りするソピアに団子や桜餅を届けた。
「全く、君は気が利かないね。こういうものには茶のひとつでもつけるべきだろう?」
 ソピアは小言を言った。
『はいはいっと。にしても綺麗だなー。見てる人間も楽しそうだ……なんていうか、景色をおかずにしてる?』
「……花より団子というのだよ」
 私は黙って花を愛でているほうが好ましいが、たまには悪くないか、と思いつつ、ソピアは団子を口に運んだ。
「おわったぁ~~。たくさん動いたらお腹減っちゃったよー」
 維鈴は、そう言ってお腹をおさえた。
『ったく、維鈴は花より団子だな』
 鯉寧は、あきれた口ぶりで言いながらも維鈴を優しい眼差しで見つめた。
「そうだ、チキン! チキン食べにいこー……ってその前に焼き鳥の屋台あったかなー?」
 維鈴は、焼き鳥の屋台を探して歩き出した。
『正直、桜にはあまりいいイメージないんだよなぁ~。綺麗過ぎて吸い込まれそうになるから。けど、花見客の笑顔が見れるから自然と足が向いちまうのかもなぁ』
 鯉寧は、維鈴の後ろを歩きながら、お花見を楽しんでいる人達の笑顔を眺めた。
「様子見がてら花見散策も悪くない……かな?」
 ガルフはそう呟いて、公園内を歩き始めた。
(この公園に鴉の加護があらん事を……)
 ガルフは心の中で願った。人に迷惑をかける従魔はもう結構だ。
『花見ハ良イナ、美味イモノガ沢山ダ』
 ガルフの隣では、夜咫鴉が屋台で買い込んできた食べ物をモグモグ食べていた。
『みなさん、花より団子ですわね』
 公園内の様子を眺めていたヴァルトラウテは、くすりと笑って言った。
「きれいな桜を見ながら食べると、普段よりおいしく感じるんじゃねぇか。俺達も花見を楽しもうぜ」
 龍哉が言うと、ヴァルトラウテは『そうですわね』と微笑んだ。

 お花見を楽しむ人達に、ひらひらと桜の花びらが舞い散った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • エージェント
    ソピア=アイオンaa5364

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 魔法少女プリンセスはいじ
    Heidiaa0195
    機械|16才|女性|命中
  • 最終兵器お呼び出し
    Belicosityaa0195hero001
    英雄|14才|?|ソフィ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • ひとひらの想い
    ガルフ・ガルグウォードaa4318
    獣人|20才|?|回避
  • エージェント
    夜咫鴉aa4318hero001
    英雄|46才|男性|シャド
  • 着ぐるみ名人
    最上 維鈴aa4992
    獣人|16才|男性|回避
  • エージェント
    鯉寧aa4992hero001
    英雄|33才|男性|ジャ
  • エージェント
    ソピア=アイオンaa5364
    獣人|20才|女性|攻撃
  • エージェント
    命荷aa5364hero001
    英雄|15才|男性|ドレ
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