本部

【宇宙開拓】暗夜を切り裂く銀光

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~12人
英雄
5人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/04/04 12:52

掲示板

オープニング

●それは突然に

 宇宙開拓の第一手、宇宙の拠点作りは上手くいった。
 このままリンカーを護衛に……宇宙での作業の要にして拠点を増築していけば、50人以上のリンカーを宇宙に送ることも可能になるだろう。
 その夢のために、護衛配備は欠かせない。
 迎撃砲台が設置されているとはいえ。リンカーがいない間に襲われてしまえばひとたまりもないからである。
 なので、第一陣のリンカーたちと折り返しで護衛メインのリンカーたちを派遣した。
 シャトルは無事地球を飛び立ち、護衛役のリンカーたちを載せ暗夜に向かっていった。
 だがそのシャトルを脅威が襲うことになる。
「敵襲だと……」
 宇宙に上がった十名のリンカーは敵従魔の襲撃を受けた。
 シャトルは護りきれずに大破。拠点にたどり着く前に足を失ってしまった。
 それだけならまだいい。
 闇夜にきらめぐ銀色のボディー。やけにメタリックに変貌したその姿は一閃。リンカーの一人を切り裂いた。
「アキオ!」
 そのエイリアン愚神はその持ち前の突撃能力にて大破したシャトルを一撃粉砕。
 そして混乱に陥るリンカーたちを次々と倒して行った。
 そのAGWを奪い、体に接続して戦力を増強しながら。
 それだけではない、その愚神はリンカーたちの動きをコピーしたようにAGWを使いこなす。
 その狂気的な戦闘力はとっくにデクリオ級を越えていた。



● 作成できる施設(連結可能施設一覧)
 施設にはそれぞれ必要理解度と物資重量が設定されています。
 物資重量は一回のシャトルで運びきれるかどうかを見る値です。
 場合によってはパーツを分割して運ぶ必要があるでしょう。
 作成した施設や、運ばれているパーツ数はノベルの最後と、次回のOPに表示されます。

・ 生活管理室【必要理解度1 物質重量10】
 食料や酸素と言った生きていくために欠かせない物資を保管、供給するルームです。
 最初に連結した場合、皆の理解度が3上がり。これ以降連結に成功すると1ずつ効果が上がっていきます。
 生活管理室の連結されている数によって新しい施設が追加されるかもしれません。

・迎撃砲台【必要理解度3 物質重量14】
 インベーダーを迎撃する施設。
 設置した数によって連結時に襲われる危険性を減らせる。

・戦闘準備室 【必要理解度18 物質重量80】
 最終的にはこの施設を作ることが目的。
 リンカーの戦闘指揮や、回収、再出撃などさせるための施設。
 戦闘準備室を稼働させるためには『生活管理室』『ソーラーパネル』『???』の連結が必要。

・備蓄室【必要理解度5 物質重量4】
 戦闘や施設拡張に使うための資材を保管しておく場所です、資材や素材によっては保管方法が特殊なのでそれなりに扱いが大変です。
 二回目からはこの部屋に資材を運び込んでいることになります。
 備蓄室は連結されただけでは効果を発揮しませんが。
 資材を運び込むと、他の施設の物質重量が1~3ずつ減っていきます。
 効果は累積します。
 

・採掘室【必要理解度4 物質重量27】
 隕石から希少な鉱石を取り出す。
 参加したリンカーの報酬(G)を一定数増やす。
 この効果は重複する。

・ソーラーパネル【必要理解度7 物質重量32】
 リンカーをサポートするためには多大な電力を消費する、それをサポートするために必要。
 

・医務室【必要理解度3 物質重量21】
 リンカーが重体程度の傷を負った場合。重体を回復し生命力0点で地球に送り返す施設。 

・ 寝室【必要理解度2 物質重量8】
 リンカーが寝泊まりできる部屋。リラックス効果がある。
 全員の理解度が1高まる。
 この効果は重複する。

・ 無重力下研究施設【必要理解度14 物質重量45】
 宇宙でしかできない研究を行う施設。これを作ると全員の理解度が2上昇し、新たな施設が連結可能施設一覧に登場する。

ブースター【必要理解度11 物質重量18】
 これは複数連結する場合。連結する個数分必要理解度が上がります。 
 ブースターは拠点を移動するためのものです。
 一つのブースターで物質重量50までの施設を動かせることになります。

修繕ロボット【必要理解度15 物質重量21】
 破壊されてしまった施設を修復するためのロボットを設置します。


エネルギーウイング充電施設【必要理解度7 物質重量13】
 ソーラーパネルが二枚必要ですが。
 この施設を設置すると、次回の戦闘から量産型天翔機が使用可能になり、宇宙空間での戦闘が楽になります。


シールドタワー【必要理解度11 物質重量15】
*最重要*
 今回限り必要。施設周辺に防御壁を展開する。リンカーたちが到着するための一時しのぎになる。


● 発射できるシャトル。
 シャトルは基本的に攻撃を受けた回数で撃破かどうか判定されます。
 5回までの攻撃なら耐え。
 8回でエンジン停止。
 10回で大破です。

・小型シャトル 積載可能物質重量8 物質重量22
 人が一人乗れる、戦闘機の様なシャトル、自力で大気圏突入ができ、着地もできる小回りの利く凄いやつ。
 今回は参加するリンカーの人数分レンタル可能です。
 全長20メートル程度。
 リンカーが操縦すればAGWとして機能し、リンカーの回避能力がそのまま回避力になるという性質を持つので、うまくすればインベーダーの襲撃をかいくぐることができるかも。

・中型シャトル 積載可能物質重量30
 人員5~6人乗れる一般的なシャトル。自衛力が無い代わりに沢山物を詰める。
 全長80メートル程度(切り離し前の燃料タンク含め)のため、護衛のリンカーは必須でしょう。
 運転しているリンカーは戦闘に参加できないかと思いきやコックピットのハッチは開くようになっているので、遠距離攻撃系リンカーは運転しながら攻撃できます。
 ただ、自由にとはいかないので、本格的に戦いたい場合はエンジンを止めた方がいいでしょう。

・大型シャトル 積載可能物質重量50
 人員25名程度が乗れる、小型戦艦と言った大きさのシャトル。
 全長160メートルだが、自衛のために武装を詰んでいるので積載量は中型の二倍とはいきません。
 運転者は攻撃力400程度の対従魔駆逐用砲塔『オメガ』を使用することができる。
 前方に一基。左右側面に三基あるが。
 一番の問題はコストの高さ。
 大型シャトルの武装をつかいすぎた場合、次回のシナリオで使えない可能性がある。

●愚神にについて
 今回搭乗するケントゥリオ級愚神ですが。
 名前が決まっていないので、ぜひ誰かつけてみてください。
 さて、やつは知性なき生命体ですが、知性があるようにふるまいます。
 それは死亡したリンカーやみなさんが発する霊力を吸って力と変えているからです。
 戦闘能力には不明な点が多く。かなり手強い的ですが、この敵を逃すと次回はどれほどの力を持って現れるかわかったものではありません。
なるべく最優先で撃破してください。

解説

目標 シールドタワーの設置


 今回もまた皆さんには宇宙に物資を運んでいただく任務をしていただきます。
 今回はすでに拠点付近に従魔が展開されており、それを『突破』。攻撃されている拠点を『奪還』。その後施設を『連結』という三段階の手順となっております。

『突破』
 物資を乗せたシャトルを護衛しつつ運転をしていただきます。
 従魔が広範囲に広がっており、四方を囲まれる危険性があるのでシャトルでの突入は気を付けてください。

『奪還』
 攻撃されている宇宙拠点を奪還します。
 この宇宙拠点ですが、インベーダーが数部隊張り付いているだけで、愚神の姿は周囲に見えないようです。
 この奪還作戦ですが、シャトルで乗ってくる人員とは別に。生命力を半分でスタートする代わりに。
 すでにシャトルで上がっていた、今回襲われた護衛組の一人である設定にできます。
 護衛組は十二人程度でしたが、みなさん以外は死んだ、もしくは戦闘不能だと思ってください。

『連結』
 連結とは運ばれてきた物資を組み立て、宇宙ステーションとして作り上げる作業をさします。
 これはリンカーの宇宙ステーションへの『理解度』が必要となります。
 理解度は基本的に1ですがRPで上昇する可能性があり。さらに宇宙ステーションの施設によって上昇する可能性があります。
 この理解度が連結の作業に参加するリンカー全員の分を足して。その施設の必要理解度に達していると、連結作業成功です。さらに理解度が必要理解度より+2多い場合、新たな施設が次回から作成可能となる事でしょう。


●【設置終了施設】

生活管理室
備蓄室
寝室×3
ソーラーパネル
迎撃砲台


『施設内合計理解度 3』
『備蓄室効果により、物質重量軽減、施設が破壊されているため反映されず』

〈修繕待ち施設〉
備蓄室(破壊)

リプレイ

プロローグ

「前回は遭遇しなかったけど、かなり手強い相手だね」
 『九字原 昂(aa0919)』は施設から送られてきた通信映像を眺めて告げた。
 その銀色の影は前回遠巻きで見ることしかできなかったあのエース機体。
「それだけ俺達が脅威に思われているんだろう」
 『ベルフ(aa0919hero001)』はその動きを目で捕えながら告げる。頭の中で戦闘のシミュレーションを行った。倒せない相手ではないだろう。
「まぁ、目の前に前線基地を作られているんだから当然か……」
 これだけ人数が少なくなければ、そうベルフは待合室のリンカーたちを見渡した。
 その視線に気が付いた『水瀬 雨月(aa0801)』が言葉を駆ける。
「思ったより人が集まらなかったわね……少し厳しい感じもするわ」
 告げる雨月、物言わぬ『アムブロシア(aa0801hero001)』。
「善性愚神とか他の方に人員が割かれているのかしらね。とりあえず欲張らずに次に繋げましょう」
 対して周囲の空気に圧倒されているのか『エスト レミプリク(aa5116)』は落ち着かなそうだ。
「みんな凄く強そうねぇ」
 そう気を使ってエストに声をかけた『シーエ テルミドール(aa5116hero001)』。
「前回の襲撃を踏まえて、H.O.P.E.も精鋭を集めたって感じなのかな?」
「なんでエストも呼ばれたのかしらぁ?」
「…別の人と間違えて呼ばれたとかじゃないよね?」
 たとえばそう、名前の似ているあの人とか。
 そんな一行の前にスタッフが現れシャトルの準備ができたことを告げた。
 真っ先に部屋を飛び出したのは『リィェン・ユー(aa0208)』と『イン・シェン(aa0208hero001)』。
「この間の分もあわせて頑張るのじゃ!!」
「はいはい、わかったから少しは落ち着け」
 前回大人しかった分、今回は死ぬ気で働くつもりだ。
「前回は重体での参加となってしまいあまり役に立てなかったので今回はその分も頑張っていこう」
 意気込み新たに、再びリィェンはシャトルに乗り込んだ。


第一章 



 宇宙を限界速度ギリギリで突っ切る大型シャトル。そのブースターの音と振動を操縦桿から受けながら、エストは暗闇の先、時々瞬く光を見つめてアクセルを踏み込んでいた。
「まにあって……」
 その隣を並走するのは昂が操る小型シャトル。
 あれには寝室のパーツが積まれているが、もう操縦にはかなり慣れたのだろう。大型シャトルからつかず離れずの絶妙な位置を飛行している。
 ちなみに大型船舶に積み込まれたのは。
 生活管理室、備蓄室が二つ、迎撃砲台、シールドタワー。
 今回中型のシャトルは使用しないようだった。
「まだか」
 船室には機材がぎっしりと詰め込まれている。その間で『赤城 龍哉(aa0090)』が佇んでいる。『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』とは共鳴済み。
「窓の外に敵影」
 そう叫ぶエストの指示でハッチを開き、龍哉は暗い海を見渡した。
 あちらも一著前に防衛線を張っているらしい。
「基本方針を再度確認します」
 昂がインカム越しに全員へ告げる。
 先ずリンカーたちは小型シャトルと大型シャトルで宇宙ステーションを目指す。
「最低1方向は移動経路を確保できるよう、敵を排除して敵を突破」 
 そして無事に前線にたどり着くことができたなら周辺に張り付いている敵を撃破、ないし撃退して奪還。その後、周辺警戒をする護衛をつけつつ施設を連結という流れだった。
「前方! 敵影多数! 迎撃行動に入るよ」
 告げるとエストは宇宙船に備えられた迎撃装置のコントローラーを握る。
 目の前には無数の敵。しかし雨月は前回立ちはだかった敵より数が薄い感じがすると疑念を胸に抱く。
――オメガ、いっきまーぁす。
「楽しそうにしてないで早く!」
 エストとシーエの声に続いて龍哉とリィェンが突貫した。
 その行く手を切り開くために昂が全力で加速。
 その鉄の翼でインベーダー数体を打ち据えて旋回。離脱と接近を繰り返して隊列を乱した。
 しかし大型シャトル突破までの道はまだ開けない。
 それどころか大型シャトルに到達し始める敵が現れた。 
 雨月がその敵を薙ぎ払っているが手が足りそうにない。
 このまま敵の中央を抜けるのは危険だと判断したエストはいったんシャトルを停止。
 ライヴスツインセイバーを装備して甲板へと出た。
 張り付き装甲を引きはがそうとする従魔たちへ、エストはその斬撃の嵐をみまう。
「ああもう鬱陶しい…せいっ!!」
 紙切れのように吹き飛ぶエイリアンたち。
(暴れてる時の顔、そっくりよねぇ…)
 そんなエストを見てシーエは思う。
(誰にとは言わないけどぉ)
「まだだ!」
 迫りくるインベーダーの一団。それを真正面に捉えてケルベロスを複製、薙ぎ払うように敵を撃ち崩す。
「エストさんここは」
 雨月は敵の数が少なくなってきたことを確認するとエストにコックピットへの帰還を求めた。
「うん、ありがとう」
 見ればリィェンと龍哉がインベーダーの数を相当に減らしている、今なら突破は可能かもしれない。
 オメガを全力で撃ちまくりながら。
 改めて突っ込む。その速度にはインベーダーも追いつくことができず僅か数体が張り付いたのみ。龍哉とリィェンは昂の機体に捕まり大型シャトルまで運ばれる。
「そらよ」
 シャトルに飛び移ると同時に龍哉はインベーダーを切り捨てて前を見る。
 そこには以前構築したのだと思われる宇宙拠点が見えた。
 拠点自体は奇跡的に無事だった。
 装甲や外壁に傷がある物の機銃の掃射で思うように攻撃できていないようだ。
 銀色のシルエットのそれは拠点周囲を回りながらその手に一体化された突撃銃を撃ち続けている。
 それを眺めるリィェンの目の前にふわりと一つの漂着物が現れる。
 それはもう二度と動くことのない口でこう告げた気がした。
 あとは任せたぞと。
 リィェンの周囲から音が消え去った。
「とはいえ……この状況は流石に厳しいかもしれないがな」
――じゃが、これ以上やられては後々面倒なのじゃからやれねばなるまい。
「ま、たしかにな……まぁ…あれだ。前回役に立てなかった分此処で挽回してやるぜ」
 次いでシャトルを蹴り最高速度で突貫したのはリィェン。
 リィェンは施設に群がる少数の敵を蹴り飛ばし、斬り飛ばすと。残りの敵をメーレーブロウで乱戦に引きずり込む。
 リンカーたちが優秀だったのだろう、ほとんど周囲にインベーダーは確認できない。
 ただ、そのインベーダーを排除するリィェンを許すはずなく、愚神はリィェンに真っ先に向かってきた。
 それを真っ向から迎え撃つリィェン。
 刃を合わせると衝撃波が宇宙に散る。
 その動きに龍哉が動いた。
――援護しますわ!!
 龍哉は弓に矢をつがえるが、狙うのはヴァルトラウテの仕事。
 その矢は今まさに施設に接近しようとしていた愚神へと突き刺さる。
 愚神はその時初めて増援に気が付いたらしい、苛立ったような視線を向けた。
「生き残りは施設の中に逃げているようです。しかし負傷者多数。死者は半数以上です」
 昂は宇宙ステーションにシャトルを連結させるとコックピットから飛び出し、龍哉たちの加勢に向かう。しかしその行く手をミサイル爆撃によって遮られてしまった。
「フリーガーファウスト……」
 それだけではない、リィェンの神斬と刃合わせるのは天叢雲剣、もう片方の手にはパイルバンカーを装備している。
 それらすべては、宙に漂っているリンカーたちから強奪したものだと思われる。
「やろう……」
 リィェンは神斬にて斬撃を飛ばしつつ後退。距離をとると、龍哉がその間に入った。
 龍哉が正面から押しとどめている間に側面に回りもう一度斬撃を放つ。直後愚神は吹き飛んだ。
 龍哉は弓に装備を持ち替えて愚神を狙う。
「出し惜しみしている暇はなさそうね」
 そう雨月が手元で霊力を練り上げる。
 不意打ちのサンダーランスは愚神を芯に捉える。しかしその巨大な威圧感はまだ……。
「危ない!」
 エストの叫び声。それはサンダーランスの中を直進してくる愚神を示しての言葉ではない。
 死体が起き上がったのだ。空中を漂うリンカーの遺体が起き上がって、そして遺体はさく裂、血霧の中からインベーダーが雨月へと絡みつく。
「甘いわ」
 雨月はブルームフレアを自分中心に撃つことで愚神とインベーダー両方に対処。
 その服を切り裂かれるにとどまる。
 その間に割って入った昂に手を引かれ雨月は敵から距離をとる。
 龍哉とリィェンが同時に愚神へと切りかかる。
「敵が負ってきたよ」
 インベーダーたちを射撃で牽制するエストが告げた。
 それに頷く龍哉とリィェンはパワーを生かしたコンビネーションをみせる。
 片方が上段を切り付ければ片方が下段を切りつける。
 龍哉が愚神を蹴り、距離をとったかと思えば、追撃できないようにリィェンが眼前に回り懐へ。柄にて腹部を強打すると刃を押し当てるように切り上げる、しかしその体に埋め込まれた何らかのAGWが装甲のように刃を阻んだ。
 歯噛みするリィェン。
 そこに雨月が幻想蝶を叩き込む。
「今よ!」
 雨月は愚神を一瞥し振り返ると視界を覆うインベーダーへと殺意を向ける。
 すでに十分すぎるほど敵のステータスについては理解している。
 であるからこそ、遅れをとることはありえない。
 リフレクトミラーにて牽制。
 敵をなるべく一か所に集めて、そして放たれるブルームフレア。
 それは多くのインベーダーをまとめて焼き殺した。
 そしてその爆炎を隠れ蓑に、一度隕石の後ろに隠れて、息を整える。
 人数が少ないためかなりの負担がかかっているがそれは全員に言えることだ。
 幸いメンバーの練度は十分。であれば愚神を倒すまで時間が稼げればいいのだが。
 さすがのトップリンカー二人でも、あの愚神を仕留めるのは厳しいらしい。状況を膠着させるだけで精いっぱいのようだった。
「打開策を考えないとダメね」 
 雨月はそう、眉をひそめる。
 そう雨月は隕石の影から躍り出る。迫りくる従魔に対して魔術を靄のように薄く広げ壁の様に放つ。それに激突した従魔たちはその表面を溶かすように爛れさせもがき苦しんで死んでいった。
――流石にこの数の相手は骨が折れるのぅ。
 膠着した状態に焦れたようにインが告げる。
「とはいえ……これはこれで狩りがいがあるけどな!!」
 メーレーブロウによって愚神の刃を弾きあげる。そのがら空きになった腹部に龍哉が矢を叩き込んだ。
「何か手があれば……」
 告げる龍哉、そんな龍哉へ拘束機動で迫る愚神。装備を刃に持ち替えるが接触する心配はなかった。弾幕が横っ面に愚神へと浴びせられたのだ。
「出し惜しみはなしにしましょう」
 エストが大型シャトルに乗り込んでいた。積まれている機関銃オメガによって制圧するような射撃を愚神に見舞う。
 それに対して愚神は武装をパージ。魔改造が施され原型が分からなくなっている長距離用ライフルを構えてコックピットを狙った。
 間一髪首をそらして回避したエストだったが、あたっていたならどうなっていたか分からない。
 龍哉は装備をブレイブザンバーに変更、愚神へ切りかかる。
「奪った武器で武装とか、どこの弁慶だよ」
――それは弁慶さんに失礼というものですわ。
 霊力をためた渾身の一撃。それを回避しようと身を滑らせた愚神だったが、一手目はフェイク。
 それは後に続く連続攻撃の布石、あるいは。裏に回ったリィェンの攻撃を隠す一手である。
 挟み打つように二人は渾身の連撃を放つ。
 それに愚神は銃を手落とし、体に埋め込んでいたいくつかのAGWを周囲に吐き出した。
「やったか?」
 直後愚神はその体から一本の刀を生やす。それはまだ見たことのないAGW。造りは刀に酷似しているが。その長さがおかしい。 
 三メートルあるのだ。常人が振るうことを想定している刀ではないだろう。
「あああああ! それ」
 龍哉の耳を遙華の叫び声がつんざく。
「どうしたお嬢!!」
「それ、宇宙で開発しようとしてた新型AGW!!」
「なに?」
 そして龍哉はその刃の異常さを肌で感じることになる。一瞬、自分が両断される幻覚を見た。
「やべぇ、ふせげな……回避」
 それはできない。横なぎに振るわれた攻撃に対して、射程が三メートルもあるものをどう回避すればいいのか。
「上です!」
 そう、答えは上にあった。
 昂が視覚からジェミニストライク。本体は龍哉の首根っこをつかまえて離脱。
 リィェンがその隙にさらに畳み掛け、それに合わせようと昂は女郎蜘蛛の構えを見せる。
 だがその時愚神は突如攻撃をやめリィェンへ牽制の一撃を放つ。
 逃げるつもりだ。それを察した昂はリィェンを止めた。
「こちらも疲弊してます」
 撤退していくインベーダーたち。
 なぜ撤退したかはわからない。しかし、難を逃れたことには変わりない。
 戦いが終結した。


第二章 謎
 敵は退けた、それは流星のごとき輝きを見せて尾を引いて空の彼方、暗黒の向こう側へと去っていく。
 奴の実力の底は知れなかった。ただ、見逃されたのは確かなのだろう。
 あまり奴が疲弊しているように見えなかった。
「ケントゥリオ級か……」
 龍哉は軋む体の痛みを抑えて、溶接された施設の扉を吹き飛ばす。
 中には恐怖で目を白黒させたリンカーがいた。
 結果的に軽傷三名、重傷二名。そして残りは……。
 リンカーたちの戦闘終結後、最も先に行われたのは追悼。
 傷ついたリンカーたちはシャトルに乗せ、遺体は回収し。
 そしてもやついた心のままに作業を開始する。
 龍哉はまず設計図を広げて見せた。備蓄室は二つが連結されて存在していたが、あの愚神は備蓄室だけ執拗に狙っていたようで、この前無事だった備蓄室も破壊されていた。
 幸い他の施設は無事だったが。
 ソーラーパネルに軽微の破損があったため、あと少し遅ければ……そんな冷や汗が龍哉の背を伝った。
 今回は生活管理室に、生活管理室を増設する予定だ。
 生活管理室はいわばリビングの様なもので、文化的生活を送るのには欠かせない。
 戦場でも癒しが無ければ人は狂ってしまうものだ。
「こっちには異常はねぇか」
 そう龍哉は手早く連結部分や機能などをチェックしていく。
 次いで迎撃砲台のメンテナンス。そして新しい迎撃砲台の設置と作業を続ける。
 それをちょこちょこ手伝いながら雨月は周囲の警戒にあたっていた。
 愚神が戻ってくるかもしれないし、従魔が潜んでいるかもしれない。
 何より、宇宙に散らばったAGWや人間の破片の回収などするべきこともある。
 隕石の裏手に回るときは慎重に。
 その結果残党を発見しては焼き殺していくという作業に雨月は従事する。
 そこで面白いことが分かった。
 従魔はおそらく指揮官がいなければ素早い判断ができないのだ。
 隕石に張り付いた従魔たちは雨月を見ても飛びかかってくることはなかった。
 代わりにもったり身を起こして雨月を一瞥。それから襲い掛かってくるという緩慢さ。
 作戦に使えないかと頭を悩ませる雨月である。
「すまん、水瀬さん、AFパーツがどこにあるか分かるか?」
 そんな声に雨月が振り返ればそこにはリィェンが浮かんでいた。
「ああ、あれなら」
 荷物を整理したのは雨月だ。どこに何があるかは把握している。
 ただ、順序が乱れないように並べてあったはずだが。
「戦闘が激しくてな……」
 大型シャトルもかなり揺さぶられた。それで荷物がバラバラになってしまったという事だろう。
 告げて雨月は隕石を足場に立つ。
 その隕石を蹴りつけて素早くシャトルへと戻って行った。
 その雨月の背後から追いかけてきた従魔をリィェンは両断。単体で攻めてきても何の脅威にもならないのが幸いだが、散発的に襲われるこの状況では神経を使う。
「あいつは……戻ってこないよな」
 そうリィェンは空の彼方を見つめた。
 リィェンはその加速度のままに龍哉の隣に着地。
 龍哉の作業につきあった。
 そして雑務が終わればエストのシールドタワー設置を全員で手伝う。
 エストはこの作業のためにシャトル内で接合部にそれぞれマークを刻んでおり。作業自体はかなりスムーズに進んでいる。
「この前は作業用ロボットみたいな人がいて、早かったんだけどね」
 そう雨月は告げながら重たそうなパーツをひょいと担ぎ上げる。
「ああ! それはあっちにお願い」
 そうエストが指示を出すとそれにみんなが快く従ってくれる。
「ふむ、まあやらないよりはましになってるかな?」
 そうエストが告げるとシーエは鼻歌交じりに答える。
――簡単だけどその分誰でもわかるわねぇ。
 そして一通りの施設が完了するとシャトルに乗り込んで遠目にその施設を眺めた。
「…そろそろ本格的に完成を目指さないとね」
――完成したら、どんな風になるのかしらぁ。
 楽しみ、そう語尾を弾ませて告げるシーエ。エンジンに火を入れるエスト。
 連結自体は無事に完了した。
 大きく輝くシールド発生装置。シールドタワーと、二基の迎撃砲台。
 これでかなり持つはずだ。
「まだ先は長いが、幾らかマシにはなったと思いたいとこだな」
 そう龍哉はしみじみつぶやくと小さくなっていく施設を見送った。

 現在の作業状況は下記の通り。

〈設置完了施設〉
生活管理室×2
寝室×4
ソーラーパネル
シールドタワー
迎撃砲台×2
備蓄室×2

〈修繕待ち施設〉
備蓄室×2(破壊)

 次回大型船舶使用不可能
 次回、大規模襲撃の予想

 遥か遠くで誰かがにたりと笑った気がした。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 決意を胸に
    エスト レミプリクaa5116
    人間|14才|男性|回避
  • 『星』を追う者
    シーエ テルミドールaa5116hero001
    英雄|15才|女性|カオ
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