本部

【愚神共宴】連動シナリオ

【共宴】花の絨毯で花見をしましょ?

紅玉

形態
シリーズ(新規)
難易度
易しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2018/03/30 20:11

掲示板

オープニング

●枯れ木に花を咲かせましょう
「1つ、わたくしのモノを差上げましょう……あの方達が何を考えているかは分かりませんが、わたくしはわたくしなりの最初で最後のプレゼントを」
 と、笑みを浮かべたままアルノルディイは、枝を広場に投げ捨てた。
「良いのか? あれは殺してまで奪った貴重な品じゃろ?」
「良いのですわ。久しぶりに、話してみたくなっただけですわ……椿姫や桜華の記憶を見てね」
 春君が眉をひそめると、アルノルディイは濡れ烏の様な髪に木櫛を通す。
「使者はどの妹にするのじゃ?」
「もちろん、ゲンティアナ」
「あぁ、適役じゃな……枯れ木に花を咲かせましょう♪ 此処は春、今は春、さぁ……芽吹け、咲けよ、春の花♪」
 上機嫌に春君が歌を響かせた。

 アルノルディイがイタリアにある公園に落とした枝は、春の息吹を感じると桜、梅、桃等の春の花が一斉に開花した。
 花は枯れる事もなく、花弁が吹雪の様に舞うと地面を覆い、ふかふかの絨毯へと化した。
「これは……日本の昔話で言い伝えられてきたヤツか」
 プリセンサーが感知しない異常事態なので、オーパーツが原因では? と連絡を受けたマデリーネ=ビョルリングが駆け付けた。
「あの、灰を掛けたら花が咲いたヤツですか?」
「そう。オーパーツは未知のモノだ、そんなおとぎ話になっても可笑しくは無いだろう?」
 研究員の問いにマデリーネは答える。
「この感じだと……春になって発動し、春の花を咲かせる程度だろう」
「あー、確かに春に開花する花だけが咲いている様ですね。公園内は立ち入り禁止にしてしまっても、その近くで花見始めた一般人が居ますね……副所長、どうします?」
「何が起こるか分からん。エージェント達に楽しんで貰うついでに、オーパーツを探してもらおう」
 研究員達の言葉にマデリーネは小さく息を吐くと、ロンドン支部に報告と依頼の連絡を入れた。

●夜の花見
「素敵! 花の絨毯を楽しみながら夜の花見なんてしたことがないですわ! これは、皆様をお誘いしなければなりませんわね」
 と、嬉しそうにティリアは、お菓子の材料をメモする。
『ティリア、オーパーツを探す仕事でもありますよ。いえ、ティリアのお菓子は美味しいですけど……聞いてないようね』
 トリス・ファタ・モルガナが、少女の様にはしゃぐ31のティリアに注意するものの、気が付いたらもう買い物に出掛けていた。

 H.O.P.E.ロンドン支部。
「何か、ティリア姐が……買い物に出掛けて居ないから、俺からの誘いみたいになって悪いけど……」
 圓 冥人はアナタに苦笑しながら言う。
「とりあえずお仕事ね。公園の木が突然開花して、地面はふかふかのベッドみたいに花弁が積もったんだって。それで、オーパーツを探すついでにそれ以外にも異常が無いか、夜の花見をして報告をお願いしたいそうだよ」
 そう説明すると冥人は、アナタに詳細が書かれた資料を手渡された。
「あと、飲み物や食べ物は各自で用意しても良いし、コッチで適当に用意するから良かったら来てね」

解説

【目標】
夜の花見を楽しむ!
オーパーツを探せ!

【場所】
イタリアのとある公園(夜)
公園には、ぼんやりと外灯が点いておりますので、明かりには困りません。
花弁の絨毯は、もう人をダメにするクッションの様にふかふかです。

【NPC】
お誘、絡みがあればどうぞ!
マデリーネも呼んだら来ます。

【PL情報】
OPの『●枯れ木に花を咲かせましょう』は知り得ません。

オーパーツ
形状:白→桃→紅と色が変わる20cm程の枝
名前:枯れ木に花を
能力:直径2km内にある春の花を咲かせ、常に梅、桃、桜の花弁を生成する。
発動条件:春の2ヶ月間のみ

リプレイ

●オーパーツ捜索?
『折角、イギリスでお花見をするなら御当地の料理を持って行こうよ』
 と、伊邪那美(aa0127hero001)が提案する。
「……知ってるか? イギリス料理は不味いと言われてるんだぞ」
 御神 恭也(aa0127)が表情を変えずに返答した。
『それって、他の地域の人達には合わないって言うやつでしょ?』
「……」
 伊邪那美の言葉に恭也は黙り混む。
 それもそうだ、日本人の味覚にあまり合わないリコリス菓子も『不味い』と言われる代表であろう。
 虫であれ、見た目さえ気にしなければ美味の内に入るだろう。
『本当なんだ』
 不服そうに恭也を見つめる伊邪那美。
「全てとは言わんよ。俺達の口に合うものもあるからそれらを用意するか」
 全てを否定せずに恭也は答えると、イギリス料理をスマホで調べ出す。
『え~っと、確か独自の作法があるんだっけ?』
 伊邪那美が首を傾げながら問う。
「ゴールデンルールの事か? あれは、作法じゃなく入れ方だぞ」
 スマホから視線を向けたまま恭也は答える。
 ただし、場所は『イギリス』ではなく『イタリア』という事を後で知る事になる。

『ユリナ、クラト殿からの伝言だ。イタリアで花見のついでにオーパーツ探しを手伝って欲しいそうだ』
 圓 冥人から話を聞いたリーヴスラシル(aa0873hero001)は、自室で寛ぐ月鏡 由利菜(aa0873)に言った。
「分かりました、早速準備しましょう」
 リーヴスラシルの言葉を聞いた由利菜は、こくりと頷くと直ぐに市場へと向かった。

 3月のイタリア、あまり日本と気温は変わらない。
 ただ、違うのは公園が春の花が咲き乱れて桃、梅、桜の花弁が絨毯の様に敷き詰められていた。
『今日ユリナが作ってきた菓子は?』
「イタリア系にしました。パニーニ、ズコット、マチェドニアを作ってあります」
 と、リーヴスラシルにカゴを見せながら由利菜は微笑んだ。
『よし……念の為、今回は特殊抵抗力を重視して探索用の装備を選んだ。感性も鋭敏になっているはずだ』
 共鳴するとリーヴスラシルは、由利菜に今回装備しているモノを説明する。
「レイナねーさま! とっても綺麗ですの。夢の中みたいですの!」
 白い髪を風になびかせ、大きな琥珀の様な瞳で辺りを見回しながらクリスティン・エヴァンス(aa5558)は歓喜の声を上げた。
『そうね。綺麗じゃないとは言わないわね』
 水色の髪を押さえながら砺波 レイナ(aa5558hero001)は瞳を細めた。
 ふかふかそうな花の絨毯にダイブしたい気持ちを抑えながら……
「レイナねーさま! ふかふかですの!!」
 そんなレイナを横目にクリスティンはふかふかの花弁の中へ、ダイブ!
(ま、まあクリスもダイブしたし、誰も居ない時を見計ってあたしもダイブを……)
 と、チラチラと周囲を見回すレイナ。
 しかし、参加してるエージェントや一般人が未だに花見をしていたりして、夜中とは思えない程に人が居た。
『って、意外に人多いのよっ!』
 公園内からは人払いされてはいるものの、水を飲むかのようにワインを飲む一般人が視界に入る。
『さ、クリス、ふかふかはそこそこに、オーパーツを探すわよ!』
 レイナはクリスティンの首根っこを掴んで立たせると、とりあえず花弁を除けてみる。
「花……ですか、なかなか素敵ですね。誰かを傷付ける事の無い……そして大切な未来を繋ぎ、守るための小さく弱い花弁…好きではありますが……、……そうですね。強いて言えば……美しさも節度、いえ限度というものが……」
 Гарсия-К-Вампир(aa4706)が真剣な表情で公園を見つめた。
『あぅあ゛………う゛ぁぁ』
 Машаль-слезы(aa4706hero002)は花の絨毯へダイブ。
「あーほら、リゼ。ダメですよ。むやみやたらに触っては……いえ、もはやこれだけあれば些細な問題ですね。では、お好きなだけ楽しんでおきなさい」
 思わず駆け寄るГарсияだが、広い公園の小さな子供一人分の範囲は本当に些細な問題だ。
「一見ただの花弁の様にも見えるので害があるようには思えませんがやはり未知の物質などは一般の方に触れさせないようにするべきでしょうしね……それにこの状態が続けば私達が楽しめても他の方の花見も出来ません」
 Гарсияはマデリーネの言葉を思い出しながら、端から花弁を回収しながら掃除をしていく、勿論仲間の回りは後回しにして。
「にーさま直伝の紅茶ですの。良かったら飲んでみて下さいですの♪」
 と、クリスティンが携帯カップをГарсияに差し出す。
「よろしいのですか?」
「うん! 皆さんと仲良くなりたいのです」
 Гарсияの問いにクリスティンは屈託のない笑顔で答える。
『あぅ……う?』
 Машальが不思議そうにГарсияを見上げた。
「そうですね。折角の好意ですからいただきます。美味しいですよ」
 温かい紅茶を飲むとГарсияは小さく微笑む。
「嬉しいのです♪オーパーツ見付かったら、お話をして欲しいのです。クリスはクリスティン・エヴァンス」
「はい、私でよろしければ。私はガルシア、エヴァンス様ありがとうございました」
 無駄の無い動作でГарсияがメイドらしくお辞儀をして、クリスティンがレイナに連れ去られるのを見送った。

「オーパーツを研究されてるんですって? 自分も好きなんですよ、謎技術とか不思議なアイテムとか」
 乙橘 徹(aa5409)がマデリーネ=ビョルリングに話す。
 指示を出し終えて暇そうにしていた彼女に徹は声を掛けて、オーパーツを探す手伝いとか言いつつも趣味の話に花が咲く。
『(またナンパか、懲りんやつじゃ)』
 ハニー・ジュレ(aa5409hero001)が呆れた表情で徹に視線を向ける。
「(可愛いだけの女の子はいっぱいいるけど、趣味の合う人は貴重なんだ)」
 と、ハニーに小声で言う。
「あぁ、元々祖父も趣味でオーパーツの研究もしててな。そうか、良き事だ」
 マデリーネは表情1つも変えずに答える。
「マデリーネさんの好きな花はなんです? コロンビアの黄金ジェットなんて似合いそうだなあ」
『(ハナじゃねぇ)』
 徹の言葉にハニーが心の中で突っ込みを入れた。
「面白い。花ではなく、そっちのオーパーツときたか……私は冗談が言えないので普通に答えるが、ハクモクレンだ」
「丁度、この時期の花ですよね。もしかしたら咲いているかもしれませんね」
『(ハクモクレンは中国の花じゃ)』
 徹の返答にハニーは大きくため息を吐いた。

「植樹されていない範囲もあるから、厳密な効果範囲はわからないな」
 迫間 央(aa1445)は、『鷹の目』を使い公園内に植えられている木々を見回す。
『ある程度絞り込んだら、後は地道に探すしかないかしらね』
 舞う花弁が似合うマイヤ サーア(aa1445hero001)が呟いた。
「オーパーツだけに形状がわからんのは厄介だな……」
 マデリーネからは予測されている能力は分かっているものの、その本体であるオーパーツ自体の形状は見付けるまで分からない状態だ。
『これだけは人海戦術しかないわね』
 共鳴を解除され、珍しく幻想蝶から出てきたマイヤは花弁の絨毯に足を着ける。
「ありがとう、それじゃあ……」
 央がマイヤに手を差し出す。
「捜し物に夢中になって、何よりいちばん大事なモノとはぐれちゃったら意味がないからね」
『……そうね。変な虫がつかないように。ちゃんと捕まえていて』
 差し出された手を取りマイヤは央を見上げた。
 肌寒い位の気温ならば、握られた手の温かさで充分だろう。
 一緒にある姿は春の野原に仲良く飛ぶ蝶のようだ。

『おぉ! ふかふかじゃのぅ』
 サルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)が花の絨毯を手でポンポンと押す。
「ふかふかですね」
 その様子を見て花邑 咲(aa2346)は微笑む。
「……さて、まずはお仕事を終わらせないといけませんね」
 花見をするのであれば、依頼を終わらせて落ち着いた頃にと思いながら咲は公園を見回した。
 近くに丁度良い長さの枝が落ちており、それを咲は手にすると花弁を掻き分ける。
「……なかなか見つかりませんね……」
 それなりに広い公園だ、能力者と英雄を合わせて20人近く居るのに見付かった報告はまだ無い。
『そうじゃなぁ……』
 杖で公園の土が見える位に除けながらサルヴァドールは、公園内を覆っている花弁を見据えた。
『……うむ、普通の花びらじゃな』
 サルヴァドールは落ちていた花弁をぽいっと口に入れた。
「ど、ドール! 花びら、食べちゃったんですか?」
 咲はその行動に目を丸くしながら見つめた。
『何ともないのぅ』
 花弁を飲み込むとサルヴァドールは、胃の辺りを手で擦りながら答える。
「危険なモノだったらどうするのですか?」
『すまんのぅ……でも、お嬢の安全を確認する方法の1つだと思っての』
 サルヴァドールは咲の頭を優しく撫でながら答えた。

「別に愚神だから殺しているわけではないのですわ。他人を多く殺す者を殺しているから結果的に愚神が多くなるだけの事です」
 ぼんやりと明るい公園内に舞う花弁を見つめながらファリン(aa3137)が、手を前に出すとふわりと1片だけ偶然にも掌に乗った。
 本来の誓約である『悪を見過ごさない事』だが、目の前のヴィランや愚神を助ける事に夢中になり一般人やH.O.P.E.の人々に被害が及ぼしかねない者が出てきたのも『悪』とみなす為、誓約を破棄するリスクが高い。
 もし、愚神やヴィランを助ける事で一般人が『悪』としての行動に出られては、ファリン自身の『一般人の命を優先』する意思で見過ごすと『今の誓約』に反するからだ。
 現状、H.O.P.E.が善性愚神を受け入れた事により、エージェントからは戸惑いと賛否の声を耳にした。
 だから、人を守る為にーー……
「この春の花の下、新たな誓いを」
 と、静かにファリンは言った。
『桃園の誓いというわけか。人とは違うこの身では、同じ日同じ刻に死ぬとは言えぬが、君はたしかに我が妹である』
 と、答えたヤン・シーズィ(aa3137hero001)が幻想蝶を握り潰す。
 これで、前の誓約は破られ新たなる誓約をしなければならない。
「仏に逢うては仏を殺し。祖に逢うては祖を殺し。羅漢に逢うては羅漢を殺し。父母に逢うては父母を殺し。親眷に逢うては親眷を殺し。始めて解脱を得ん」
『殺仏殺祖、だな』
 ファリンが紡いだ言葉にヤンは小さく頷いた。
「自分の中にある他人から与えられた価値観を壊し、自由な心で最善と思う事を為すという誓いです」
『あぁ』
 『桃園』とまではいかないが、咲き乱れる桃の木の下でファリンとヤンは新しい誓約を結ぶと、新たな幻想蝶が現れた。
「春の花という事は、春の君が関与しているのかもしれませんわね」
 新しい幻想蝶を手にしたファリンは、公園内を覆う春の花を見て呟く。
 新たな誓約を胸に共鳴しレーダーユニット「モスケール」で見る、と微量のライヴスが公園全体に舞うのは見えるがそれは、愚神の仕業なのかオーパーツの力なのか分からない。
 濃度の変化は全く無い。
 愚神や従魔が居ないのを確認すると、ファリンは共鳴を解除して歩き出す。
「お兄様……ふっかふかですわ……」
 花弁を掘るように進みながら、ゴミ袋に花弁を詰めてみるもののファリンは、ふかふかの絨毯に吸い込まれる様に体を埋める。
『……』
 大学に合格したものの、ニートが抜けてないヤンは既にミノムシの様に埋もれていた。
「もういっそ燃やしてしまいましょうか」
 抗えないこの誘惑的な絨毯の中でファリンは言う。
『オーパーツが壊れるやもしれぬし、第一無粋だ』
 家のコタツから出ない猫の様に頭だけ出してるヤンは、公園の周囲で花見をする一般人に視線を向けた。
「ふふ、見つかる頃には、わたくしたちすっかり花の香になっているでしょうね」
 ファリンは笑みを浮かべながら、春の花の柔らかくて甘い香りを感じながら夜空を見つめた。

●オーパーツ発見?
『いや~、本当にフカフカで気持ちいいな~』
 伊邪那美が誘惑に負けて花の絨毯に寝転がる。
「遊んでいないで、早く探せよ」
『遊んでいないよ~ちゃんと探してるよ~』
 恭也が叱責するも、伊邪那美は花弁に埋まったまま進む。
「此方からは見えんが、その口調で探してないと断言出来る」
 と、言って恭也は伊邪那美を首根っこを引っ張り、魅惑の絨毯から強制的に救出された。
「無制限に広がっている訳じゃない様だから感染式では無いと思うんだが……」
 大体花弁は公園を中心に舞っているが、住宅街や市場等の方には広がってないのを来るときに確認済みだ。
「植生に偏りがあるせいか、分布図が歪だな。中心部の誤差が大きそうだ」
 ロンドン支部から貰った資料の中にあった、公園の地図に恭也は視線を向けた。

 マデリーネから“こういう時はバラバラに探すのが効率が良い”と言われて、一人で公園の方へと向かうのを見送った徹達。
『アバウトじゃのう』
「目星でロールってやつだよ、成功すれば何か発見できる」
 公園の周りで花見をしている一般人に声を掛ける徹に、ハニーはあまり収穫のない会話に呆れた声色で言う。
「マデリーネさまはオーパーツの権威? ですの?」
 互いに自己紹介したクリスティンは、マデリーネの肩書きを聞いて小さく首を傾げた。
「そこまで大袈裟なモノじゃないが、普通の研究員よりちょっと詳しい程度だと思ってくれ」
 マデリーネは首を横に振った。
『こういう不思議な事を起こさせるとか、なかなか興味深いわね』
 レイナはうんうんと頷く。
『探すって言っても大変ね……マデリーネはオーパーツ、研究してるのよね』
「そうだ」
 レイナの問いにマデリーネは頷く。
『こういう事象の場合、どの辺りにあるか、とか分からない?』
「範囲だな。そうそう、丁度この辺が中央としか分かってないが」
 と、地面を指すマデリーネ。
『ここ掘れわんわん、じゃの』
 近くで偶然にも居合わせたダウジングロッドを手にした徹とハニーは、花の絨毯を掻き分ける。
「あくまで推測だ。多少ズレているかもしれん」
「それでも、ある可能性があるなら!」
 マデリーネの言葉に徹は答えながら仲間に連絡をする。
「……そっか、必ずしも下に落ちてるとは限らないのか」
 呼ばれて周囲を探す央は、花の絨毯を掻き分ける手を止めた。
『案外、サクラの樹の枝に引っかかってたり……あれ、何かしら?』
 マイヤの琥珀の様な瞳に不思議な枝が映ると、ドレスの裾が花弁まみれになろうとも彼女は吸い込まれる様に枝がある木に駆け寄った。
『これがオーパーツかしら。綺麗ね……』
 桜の木の枝に擬態していたオーパーツを手にしたマイヤは、仄かに光る透明な枝が白、桃、紅と色が変わるのを見て呟いた。
「子供が見つけたら持って帰っちゃいそうだな、回収できてよかった」
 央は、マイヤの手の中で輝くオーパーツを見つめると優しく微笑んだ。
 ファリンの申し出により、ここで直ぐに回収して依頼を終わらせても良いが、花見の準備をしてきている仲間も居るので監視出来る範囲に置いて楽しむ事にした。
「これで良いですわね」
 “持ち帰り厳禁”と書かれた札を付け、花見をする場所に近い木にファリンは引っ掛けた。

●夜の花見
「夜桜は初めてだが、昼とは趣がまるで違うな……」
 ブルーシートなんて必要は無く、皆で花の絨毯に座ると央は暖かみのある電灯に照らされながら舞う花弁を見上げた。
『でも、サクラは、日本の花よね。日本独自の風景だって聞いていたけれど……』
「イタリアには人工池の周囲に日本から記念植樹された数千本の桜がある"日本の散歩道"と呼ばれる場所があるんだって。この公園もその一端なのかもね」
 マイヤと央は寄り添い、ふわふわと風に乗って舞う花弁を見つめながら答えた。
「確かにこの情景なら、酒が進んで酔っ払いが出る訳が分かる気がするな」
 と、酒盛りをしている一般人が笑顔で、友人達とワインを片手に談笑をしている光景を見て微笑んだ。

『ユリナ、この風景の写真を撮りたい。スマートフォンを貸してくれないか』
「はい、ラシル。あなたもこの美しい風景に惹かれたのですか?」
 リーヴスラシルの言葉に由利菜は、スマホを手渡しながら笑顔で問う。
『それもあるが……オーパーツを捜す上で、写真と実際の風景に差違がないかと思ってな』
 そう言ってリーヴスラシルはスマホのシャッター音を響かせた。

「冥人さん、静華ちゃんと壱夜さんも、一緒にお花見しませんか?」
『茶や茶菓子もあるぞ?』
 捜索に疲れていた圓 冥人達に咲とサルヴァドールは手を招く。
「お言葉に甘えるよ。やっぱり、花見と言えばお酒……ホットワインで我慢するよ」
 近頃、お酒を飲む量が増えたので弩 静華と真神 壱夜の厳しい視線に、冥人は度数が低いモノを選んだ。
『咲くんの、料理、美味しい』
 嬉しそうに静華は、咲が作ったお菓子をリスの様に頬袋出来る程に詰め込む。
『本当……こういうのが、故郷の味っていうのでしょうね』
「ちょっと、大袈裟な言い方ですよー」
 静華と壱夜の褒める言葉に、咲は少し頬を赤らめながら答える。
『このまま眠ってしまいそうじゃな……』
 お腹一杯にお菓子を食べ終えたサルヴァドールは、絨毯は寝転が優しいオレンジ色の電灯で照らされた木を見上げた。
『お嬢達もおいで』
 と、言ってサルヴァドールは手招きをする。
「ふふっ。なら、わたしも行きましょうかね」
 他愛もない会話をしていた咲達は、顔を見合わせると一緒に花の絨毯に寝転んだ。
「……あら、花びらがついてますよ、ドール」
 咲はサルヴァドールの前髪に付いた花弁を取る。
「楽しかったですね」
『うむ、機会があればまた楽しみたいものじゃ 』
 と、会話をしながら花弁が舞う夜空を見上げた。

「ヴァッハッハッハッハッハッハ――――!!!」
 愉快なBGMと共に地面からファリン達の前に現れたのは……共鳴姿のГарсияであった。
 ファリンは何も見なかった事にして、Гарсияを再び飛び出してきた場所に押し込んで再度埋めた。
「……え? 楽しんでいないか、ですか? ……そうですね。でもこうして仕事しながらでも充分見ることは出来ますよ。まぁ、そのせいで仕事ペースは遅くなっているのですがね」
 埋められながらГарсияは、笑顔で地面に埋めているファリンを見上げながら呟いた。
 そんな事をあるのを知らずに、徹とハニーは花見をしに来ている一般人に対し酔っぱらいの喧嘩を仲裁したり、放置されたゴミ等を拾ってH.O.P.E.への印象を良くしようと活動をする。
『(それどころじゃないじゃろ)』
「(微妙な時期だ。HOPEへの不信感を少しでも払拭できるようにしないと)」
 花見を楽しむ仲間を見てハニーは呆れた様子で言うが、徹は今のH.O.P.E.のイメージを良くしようと手を尽くす。
『楽しいけど、眠気が……』
 伊邪那美が、大きな欠伸を1つするとふかふかの絨毯に墜ちようとした瞬間。
 公園の周囲で花見をしている一般人が急に倒れ、気持ち良さそうに寝息を立て始めた。
 花弁は吹雪の様に舞い、収束すると善性愚神達がH.O.P.E.に開示した情報で、悪性愚神の一覧に名を並べていた愚神アルノルディイが現れた。
『わたくしの世界のオーパーツは素敵でしょ? 知らないモノを知れるその子をわたくしの妹にさせて? 無理にとは言わないわ。目的の半分は、妹達を通して見たアナタ達に興味があるだけですわ。この時だけ、善性、悪性というモノを気にせずに話したいだけですわ』
 ふわり、と赤いドレスの裾をなびかせながら、アナタ達にアルノルディイは優しい笑みを浮かべたまま言った。
 護衛も居ない、アナタ達のスマホが同時に着信音が鳴り響いた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
  • ガンホー!
    乙橘 徹aa5409
  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 想いは世界を超えても
    サルヴァドール・ルナフィリアaa2346hero002
    英雄|13才|?|ソフィ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
    獣人|19才|女性|回避
  • 桜の下のゾンビ
    Машаль-слезыaa4706hero002
    英雄|6才|女性|バト
  • ガンホー!
    乙橘 徹aa5409
    機械|17才|男性|生命
  • 智を吸収する者
    ハニー・ジュレaa5409hero001
    英雄|8才|男性|バト
  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558
    人間|10才|女性|防御
  • 山瑠璃草
    砺波 レイナaa5558hero001
    英雄|16才|女性|バト
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