本部

広告塔の少女~魔歌をねじ伏せろ~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2018/03/16 18:01

掲示板

オープニング

● 最終調査

 遙華はフラスコの中に浮かんだ二つの楽譜を眺めて研究データが上がるのを待っている。
 あの溶液は霊力を遮断する霊液。
 そして浮かんでいる台本は、音の遺跡から回収された楽譜の完成形と前回、小雪が発見したルネクイーンの遺産。
 この楽譜の解析はすでに済んでおり、音は重なりハーモニーとなることがわかっている。
 この歌に実際どんな効果があるのか。それは全く分からなかった。今それを奏でることは危険だろう。
 それはすでにわかりきった事実。
 では遙華は何の実験をしているのか。
 これは、前回ガデンツァが楽譜を頼りにこちらの居場所を察知、襲撃してきたことを利用してガデンツァの本拠地の情報を割り出させようという目論見だった。
「一応、D側の情報をかすめ取った結果、ガデンツァの本拠地めいた場所についてはわかったのだけど、本当にあっているかどうか気になるのよね」
 なぜなら、持ち返られた情報は海の中を指示していたから。
 魔の海域と呼ばれる人が立ち寄らない、死の海。
 そこに踏み入るまでにデータが欲しい。
「でも、ダメみたいね」
 実験は失敗だった。楽譜から放たれる霊力を追跡しようとしたが無駄だった。
 であれば、あとは小雪の発言にかけるしかない。
「楽譜越しに見えた光景……」
 ただし、そのためにはこの楽譜を装備するリンカーが必要だ。
 そうなった場合小雪の様な暴走は不可避だろう。
 遙華は頭を悩ませる。
 
● 邪英化ミッション
 今回皆さんは皆さんに共鳴し。二つの楽譜を装備していただきます。
 まぁ最後まで遙華は反対しているのですが。状況的にやらねばならんとのロクトの判断です。
 なぜなら、敵の本拠地の情報が不足しているからです。
 実はすでにガデンツァの隠れ家については座標が割れているのですが。海のど真ん中でして、海の中をスキャンしてもろくに情報が得られない始末。
 このまま突入してもいいのですが、準備不十分のまま突入するなんて恐ろしすぎますよね。
 なので今回はその調査です。ついでに言うと本拠地以外の情報も出ます。
 では具体的に何をするか。
 それは二人のリンカーに楽譜を装備していただいて、邪英化していただきます。
 邪英化すると、全てのステータスが三割増しになり、時間経過でどんどん能力が増してきます。
 さらに楽譜がAGWとして機能します。
 ここでは仮に音の遺跡から持ち返られた楽譜を『幸福の詩』。
 そしてルネクイーンが残した楽譜を『報復の詩』とします。
 スペックについては下記の通り。

『幸福の詩』
 高めの音程が特徴。主旋律になる部分が多い。  
 攻撃能力としては水晶の刃に光をため込み、レーザーとして発射する遠距離攻撃。
 範囲は5~50SQ。
 ですが。攻撃力を半分にして1~2SQ射程の近接武器として使えます。水晶の刃をそのまま叩きつける感じです。
 遠距離攻撃については魔法攻撃。
 近距離攻撃については物理で判定します。

『報復の詩』
 低めの音程が特徴の楽譜。ハーモニーメイン。
 攻撃方法は楽譜の前に球体を作りだし、全方位に重力はを発射します。
 攻撃範囲は5~15SQです。
 誰がどれを装備するか決めてください。 

 ちなみに、他のAGWも装備していた場合それも使います。
 邪英化デメリットについては下記の通り。
 邪英化した本人は体が勝手に抵抗し、ラウンド終了時最大生命力の十分の一のダメージを受けます。
 邪英化したリンカーの攻撃によってリンカーの生命力を0にできなかった場合。周囲に固定ダメージ5の攻撃『シンフォニス』を即座に打ち出す。


● 邪英化本人およびサポーターについて
 邪英化することができるのは二人ですが。その邪英化したリンカーに器具を接続してサポーターになることができます。
 サポーターは何人でも接続できますが。一緒に楽譜が見せる幻影を見ることになりますし。他に後遺症が残るかもしれません。
 またサポーターと邪英化リンカーを繋ぐ機器を『テクノホーン』と呼び。鬼の角の様なカチューシャです。
 無線でリンカーとつながりますが、ダメージによって破壊される可能性があります。
 また邪英化したリンカーは重傷を確定で負います。
 ではサポーターが具体的に何ができるのか、紹介しましょう。

・ダメージについて
 邪英化した本人は体が勝手に抵抗し、ラウンド終了時最大生命力の十分の一のダメージを受けます。
 これを回避するためにサポーターが邪英化しているリンカーの負担を肩代わりすることができます。
 そうするとサポーターはメインで接続しているリンカーのダメージを、何割か肩代わりできます。
 これは五割以上が条件です。
 しかしすべてを肩代わりはできません。
 
・行動阻害について
 邪英化したリンカーにサポーターは話しかけることができます。
 サポーターの言葉で邪英化したリンカーは理性を一瞬取戻し。
1『シンフォニス』のキャンセル
2『攻撃』のキャンセル
3理性を伴った会話
 ができます。この数字は難易度を意味し。数字が多い会話結果を得るにはそれなりのRPをする必要があります。

解説

目標 ガデンツァに関する情報を得る。

●プレイイングについて
 今回邪英化したPCは自分が邪英化した場合どんな戦い方をするのかを考えてみてください。
 他のプレイヤーの皆さんは戦いを引き延ばしつつ、邪英化したリンカーの負担を軽減するように動いてみてください。
 またサポーターと邪英化したリンカーの皆さんは精神的に繋がっているので。邪英化したリンカーの記憶などが漏れ出して伝わったことにしても構いません。


●情報について
 今回特定の条件でガデンツァの情報が楽譜からもたらされるようになっています。
 条件は下記で、全てはPL情報です。
 PCがあらかじめ知っていることはありません。
 PL情報をPC情報にうまく落とし込むことができた場合、狙って情報を調べることができます。


・ガデンツァ本拠地の情報
・侵入経路
・ガデンツァの隠されたスキル公開
・本拠地の侵入者対策について
・ガデンツァ個人情報A
・ガデンツァ個人情報B
・ガデンツァ個人情報C
・Dと呼ばれるヴィラン集団について。



● 遙華の相談
 今回の依頼の話ではないのですが。二つの楽譜に記された歌を謳ってほしいと遙華は考えているようです。
 ただし、その歌がどの様な結果をもたらすか全くわかりません。
 場合によっては死もあり得ます。そんな実験に参加してくれる方。意見がある方は是非お話しきかせてくれると嬉しいそうです。

● 次回予告
 ガデンツァと最終決戦の予定。リリースは三月下旬。
 事前にお知らせすると思うのでチェックしておいてくださいね!

リプレイ

プロローグ

「えとナラカさん、よ、よろしくお願いします!」
「神が邪英化か…どんな事が起こるのかわからんが全力を尽くす」
 そう重たい空気を切り裂いて『斉加 理夢琉(aa0783)』が告げて『アリュー(aa0783hero001)』が言葉を継いだ。
 今リンカーたちは大規模な戦闘訓練でも耐えられる、H.O.P.E.の演習施設にいた。
 集まったのは十二組のリンカーたち。それほどの人数を集めて行われるのは。
 ガデンツァの歌へのハッキング。
 邪英化をもってしてガデンツァに同調し、その情報を抜き取るという荒業である。
 その邪英化対象に選ばれたのがまず『八朔 カゲリ(aa0098)』。と言っても表に出てくる人格は『ナラカ(aa0098hero001)』の物らしいのだが。
(これは我に取っても試練なり。子に試練を与えながら、如何して私が逃げられようか)
 そうナラカが静かに視線を向ける先には一冊の楽譜『報復の詩』と名付けられたそれを眺めてから、理夢琉に視線を注いだ。
「いざとなれば、なのむぞ、理夢琉」
「これは、皆に言いたいが」
 カゲリが珍しく言葉を詰まらせる、そして意を決したように全員に告げた。
「ナラカに加減はするな」
 その言葉が重くのしかかるとおもいきや『東海林聖(aa0203)』は平気そうに、むしろカゲリの肩に肘なんて乗せてみる。
「安心しろよ、もちろん最初から全力で行く」
 告げる聖の言葉を聞きながら『Le..(aa0203hero001)』は思う。
(良い思い出…とは言えない、ね…こうして"居る"から、笑い話半分だけど)
 あの時の苦い記憶を思い出す。まぁもっともあの時の事を後悔しているのは聖で有るかもしれないが。
(…邪英化、か…何度見ても「馴れる」モンじゃねェな…)
「…成すべくは成す…だね。…帰ったらご飯食べたい…」
 そんな聖の思考を断ち切って何のけなしにLe..は言うのであった。
「小雪ちゃん、あの楽譜なんか変な感じする?」
「へんな感じといわれても……」
「小雪ちゃんが持ってた時と違う事とか」
「うーん」
 そんなリンカー集団の中に一般人が紛れ込んでいた。
 それが前回の楽譜の装備者である小雪。面と向かって話すのは『蔵李・澄香(aa0010)』と『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』である。
「海の真ん中にガデンツァの本拠地があるみたいだけど」
「うん、それは間違いないと思う」
 その隣でクラリスがPCをいじっていた。
 一帯の海域の周辺シーレーンをH.O.P.E.に調査依頼し受諾。
「外部からの情報を得ることと、協力組織への通信手段の可能性が捨てきれなかったもので」
 そうクラリスは告げて、キーを叩く。
 不審な輸送会社、行方不明や荷受け先不明の荷物、行方不明の輸送船のリストが送られてきて、クラリスはあとで目を通そうと保存。
 船が消えたポイントを重ね合わせてガデンツァの居城を割りだそうとしていた。
「グロリア社のロゴ入りのコンテナをヘリからの投下と、財力と技術力も油断なりません」
 ただ、やはりあの海域に何か物理的な痕跡が発見できるわけではなかった。
「アイドル達の活動を監視するにはネット環境は必須です……、何かあるはず」
 もし、この世界のネットワークを使用しているのであれば。海中用のアンテナは大型になるので見つけられるかもと思ったのだ。
 以前に突入したガデンツァ研究所の構造もあらかじめ確認しておく。
 ただ、情報がどれもバラバラ過ぎた。骨子となる重要な情報が埋まるならこれらの行動も意味を成すのだが。
 悩むクラリスに、その隣ではしゃぐ少女たちの姿がある。
「ここで情報を得ればガデンツァを追い詰められるらしいよ! わくわくしちゃう!」
「ん。でも追い詰められるのは、ガデンツァも知ってるから…」
 『雨宮 葵(aa4783)』と『燐(aa4783hero001)』である。
「前回の楽譜の事件はガデンツァにとって予想外だったんでしょ? 予想外だから援軍もこちらに出せず、楽譜を私達に渡す事になった……」
 葵がつぶやくと燐は頷きつつこう言葉を返す。
「だけど今回はどうだろう」
 楽譜というガデンツァに迫る手がかりをこちらが使わないはずはない。
 そう燐は思っている。
「それはガデンツァも予想できると思う」
 対策をとっている可能性が高い、その意見にはクラリスも賛成だった。
「それも心配だけど。邪英化かあ……」
 『小詩 いのり(aa1420)』は『卸 蘿蔔(aa0405)』にちらりと視線を向けた。
 『セバス=チャン(aa1420hero001)』とはすでに共鳴済み。臨戦態勢である。
「あんまり気の進まない手段だけど、背に腹は代えられないのかな。ガデンツァとの戦いも収束させないといけないもんね」
 告げると、いのりは蘿蔔の手をとる。
「すずちゃん、ナラカさん。危険なミッションだけど、頑張ろう!」
「ほんと、そうなんだよな」
 いのりの言葉にため息をつくのは『レオンハルト(aa0405hero001)』。
「あまり危険なことはしてほしくないんだが。遙華だって心配するだろう」
「そうだね。後で謝らないと」
 今ここにいない、心配性の友人を思い蘿蔔は自分を奮い立たせる。
「大丈夫、私達が無事に返すって、遙華と約束してるから!」
 そう蘿蔔の手を握りながらほくほくとした笑顔をカゲリとナラカに向ける。
「そういえばガデンツァの楽譜を預かったままだったような気もするね」
 そんないのりの足元にいつの間にか金糸の姉妹がいた。『アイリス(aa0124hero001)』が告げると『イリス・レイバルド(aa0124)』が言葉を返す。
「あれはバージョンが古いってやつじゃないかな?」
「だとしても比較すれば足りなかった要素、完成の為に必要だったものが浮き彫りになるというものだよ。これは一度試しておきたいね」
「ただでさえ属性が似てるし、一度直接邪英化されて変なパスあるかもだし、安全確認と報告をしてからね」
 それよりまずは楽譜である。
 蘿蔔は時計を一瞥すると楽譜に歩み寄る。
 彼女が装備するのは幸福の詩、小雪の証言から体力を無尽蔵に使うのは知っている。なので多くの情報を得るべく長期戦だ。と言っても武装は全て外し仲間の損傷は最低限に抑えるつもりでいる。
 あとは小雪の時のように楽譜自体が攻撃する可能性だが。それは避けてもらうしかなかった。
「カゲリさん、準備はいいですか?」
 そう見上げる蘿蔔の視線に、不安の色を感じ取ったカゲリはその手を取った。
 その温もりに力をもらい、二人は報復と幸福の詩に手を伸ばす。

 あたり一面に、どす黒い威圧感が広まった。闇が二人を包んでいく。

第一章 闇飾り

 
――邪英化か。私もしてみたかったが、今回はそのカップルに任せるとしよう。
 暴力的なまでに吹き荒れる霊力の嵐に『テトラ(aa4344hero001)』は真っ向から言いのけた。
 恐れはない。共鳴した『杏子(aa4344)』は直ちにナラカへ精神を連結するための作業に入る。
「ふむ…まぁ、リスクを冒す必要があることもありますよね。しかし、拠点は海中深くですか…なかなかに厄介な場所ですね」
 そう何事かを思い告げるのは『構築の魔女(aa0281hero001)』。すでに『辺是 落児(aa0281)』と共鳴済み。
「心配はいらないよ、私達がついてるからね!」
 風に負けず杏子が叫んだ。
「何か頭に入ってきたらすぐに教えてね」
 次の瞬間はじけるように風が散り、その中心に立っているのは邪英化した二人だった。
 その光景を見て『楪 アルト(aa4349)』は頭を痛ませる。
「っつーか…なんでわざわざ邪英化しなきゃなんねーんだよ全く…まぁ、しかたねーっつーんなら勿論手は抜かねーがよ…どーなっても知らねーからな!」
 本日は『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』との共鳴姿、お得意の火器を具現化し、先手必勝とばかりに爆撃を開始。
 それに反撃しようと蘿蔔は楽譜を持ち上げるが。遮るように目の前に入ったのは構築の魔女。遠距離攻撃を誘発させるように距離を保ちながら、クリスタルフィールドで耐える構えだ。
「衝動の標的になる人物も必要なわけですね…長い時間耐えられるように頑張りましょうか」
 その水晶結界は分子運動の減衰により空気の伝達効率を部分部分で変化させる。
「歌を聴き続けることで影響が出るかもしれませんし少し対策しておきましょうか。光が通りにくい場所と通りやすい場所を作れればある程度の誘導は可能でしょうか…?」
 そう視界を潰している間に『ハーメル(aa0958)』が走った。
――サポーターの体力消耗も気になる。
 『墓守(aa0958hero001)』の言葉にハーメルは頷くと、痛みに耐えるように膝をついたいのりへ視線を向けた。
 いのりは流れてくる情報と痛みに脂汗をうかべ、澄香の支えでもう一度立ち上がる。
「やめて! みんなを傷つけないで」
 そう防御に身を固めた自身の体を蘿蔔の前に差し出すと。いのりのアイギスに光の刃が叩きつけられる。
 攻撃は重くない。しかし厄介なのはダメージの肩代わり。
 リジェネ効果上回るダメージがいのりを、澄香を蝕んだ。
 蘿蔔の悲鳴が不意に聞こえる。それは彼女の心の声。
 次いで、ハーメルの眼前をかすめるのは幸福の詩による狙撃。
 さっそく意識を乗っ取られているであろう蘿蔔からの猛攻撃がハーメルへ飛ぶ。
 彼女の本領は精密射撃である。ならば出し惜しみしている暇はない。
 そうハーメルは体を内に向けながら円を描くように走り、加速。
 壁を走り、なるべく滞空している時間を作らないようにして、蘿蔔に迫る。
 真正面から放たれる光の刃も首を振って回避すると、そのまま蘿蔔の隣を走り抜けた。
 ハーメルの役目は攪乱と時間稼ぎだ。
 情報収集の為出来るだけ戦闘を長引かせ、邪英化した仲間の負担の軽減も考え、必要以上の攻撃はせず持ち前の機動力などで回避に専念する。
 回避についてもグロリアス・ザ・バルムンクのAIサポートによって安定している。
 これならいけるか。そう思った矢先、蘿蔔が苦しみだしながら周囲を無差別に攻撃し始めた。
「卸さん!」
 理夢琉が叫びをあげる。
 彼女も全身を駆け巡る痛みに耐えて膝をついていた。しかし幸い動けないほどではない。
 蘿蔔を見守るナラカへ歩み寄り、共に蘿蔔を見た。
「神罰が降りそうな雰囲気なんだよ」
「ならそれを越えて先へ行けばいい、そこに何があるか…一緒に見よう」
 告げると蘿蔔の注意を引こうとフロストウルフを放つ。
 だがそれはナラカの重力球によって押しつぶされた。
「え?」
 その攻撃に合わせて蘿蔔が理夢琉に刃を放とうとするが。
 背後からの奇襲。ハーメルンの一撃で集中が乱れ攻撃がキャンセルされる。
 ハーメルと蘿蔔の視線が一瞬交わる。
 かつて何度もお茶を交えて話をした時と違い、冷えた瞳だった。
「これも被害を最小限にとどめる為なんだ! 許しておくれ!!」
 そう謝りながらも一瞬で距離をとるハーメル。
 そのハーメルの頭を押さえたのはナラカ。
 ナラカは蘿蔔を見守るような動きをしつつも、確実にリンカーたちへの致命的な一手をくわえている。
「蘿蔔さんのほうは正直……手を抜いてくれる感じはするけど、ナラカさんは遠慮ねーなぁ。……ちょい本気くれーで丁度いいってか!」
 アルトのガトリング弾をナラカは重力球で打ち落とすと笑う。
 この程度かと。
「やろぉ!」
 アルトのカチューシャでの爆撃。
 ナラカには早々に大人しくしてもらいたかった。
 だがその爆炎を切り裂いてナラカが迫る。その手の天剱を容赦なく振るう、しかしそれを弾いたのは聖。
「よう、調子はどうだ?」
「今のところ伏兵はなしだね」
 葵はモスケールに注いでいた視線を持ち上げナラカを見つめる。
 その時だ。モスケールにわずかに反応があった。
 かすかな霊力反応、そして。
 ナラカの瞳が青く染まった。
 次いで彼女の口から響いた声音は誰もが顔をしかめる嫌悪感に満ちている。
「ふむ、面白い催しが見られるかと思えば。こぞってわらわの技術解析かの?」
「ガデンツァ!!」
 理夢琉が叫ぶ。
 その真正面に立って葵は告げた。
「この間はどーも! 結構痛かったんだけど!」
――ん。…魔法使い苦手だから、しょうがないね。
「痛い程度でよかったのう。我が本気であれば一足飛びに涅槃まで届かせてやったものを」
「ところで……最近善性愚神っていうのが流行ってるけど、ガデンツァはそうなる気はないの?」
「一つ言っておこう。善や悪とは相対的なものにほかならぬ。であれば、我を善か悪か定めるのであれば、お主らがするべきであろう?」
「え? どういうこと? そもそも善性愚神と悪性愚神の違いって何? 志? そんな単純なのかな」
 その言葉にため息をつくガデンツァ。
「お主らを滅ぼすことこそ愚神の本懐じゃが。お主らを滅ぼすことこそお主らの救いであれば善。お主らを滅ぼすことはお主らの絶望、であれば悪でよいのではないかの?」
「貴女の技術と強さなら申し出られたら、H.O.P.E.も受けるしかないと思うけどなー」
「うむ? 仲間になってほしいのかの? 馴れ合いはごめんじゃなぁ。それはほれ、そこに転がる小娘たちが許さんじゃろ」
 次いで葵はカチューシャを発射する。
「じゃあ、交渉決裂だね! 倒しちゃお」
 だがその葵の言葉は叶わない。
――お前は呼んでいない。
 カゲリの意識が一瞬浮上したのち。ナラカが叫んだ。
「出ていけ!!」
 ガデンツァとの通信が阻害される。ナラカは息を整えながら、仕切り直しとばかりに刃を向ける。


第二章 情報
 
 部屋の中央では聖とカゲリが一進一退の攻防を繰り広げていた。
「参加するのも野暮かもだけど」
 邪英化しているメンバーは、ステータスが大幅に強化されている。では一対一だと辛いだろう。
 葵も同じくカチューシャを構えて、そして参戦した。
「ボクたちも負担を肩代わりします。そして力ずくでも連れ戻します。なので楽譜に刻まれた記憶の回収をお願いしますね」
 聖とスイッチする形でイリスがナラカの懐に滑り込む。
 攻撃を盾で受けて剣で報復の詩を打ち据えようとした。
 その瞬間爆発するように重力波が発生、それは浄化の炎を伴ってイリスの体を吹き飛ばす。
「重力系の効果ですか…質量の変化でないと考えるなら重力子系への干渉でしょうか?」
 構築の魔女が告げた。
「力そのものには効果がなくとも対処の方法が皆無というわけではありませんとも」
 告げると構築の魔女がその身を盾とする。
 四つん這いになりながら勢いを殺すと聖が刃を振ってイリスと並び立つ。その額は切れていて血が左目を濡らしている。
「ホントにな」
 笑ってしまうくらいに厄介である。そう聖は思った。
「たぶんナラカさんの試練系の性質を思うに普通に言葉をかけるよりも、困難を乗り越える姿にこそ訴えかけるものがあると思います」
「間違いねぇだろうな。ほんとに!」
 一足でナラカは二人で接近、振り下ろされた刃を聖が止め。イリスは素早く背後に回った。
 しかしイリスは反射的に盾を前に。
 放たれた回し蹴りは破格の威力でイリスを吹き飛ばすと、ナラカはアルトの弾幕を避けるために聖の背後に隠れる。
「な!」
 アルトは攻撃をキャンセル。反撃とばかりに放たれた重力球にてアルトも吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「くそ、パワーでごり押すだけかと思ってたぜ」
 ナラカはその膨大な力をただ行使するだけかと思いきや、基本的な戦術はとれている。体に染みついているのだろうか。
「情報を引き出す、為に…どうせ凌ぎを削って試練を越えろ、だとか云うんだろうな…アイツは」
 剣劇のわずかな隙間に、そう聖はLe..へと問いかける。
 タイマン勝負などどれくらいぶりだろうか。お互いに手の内は知りあっているはずだがひどく新鮮に感じられた。
 ある程度手の内は知って居ても厄介なのは変わりない。
「オレもこんなだったか…!? いや、解らねェな!」
――…どうだったかな…。
「ルゥはオレより性質悪かっただろうな…」
 振り下ろしに対する切り上げ。横なぎの一閃をナラカは剣の腹でとらえ、そのまま接近し剣を振り上げる。
 その斬撃を服を切られるだけで回避。バックステップするかと思いきや側面に回っての斬撃。
 それをカゲリは受けて、報復の詩による攻撃を背後に放った。
「どうせ」
――やるしか
 ない、ね。そう聖とLe..が声を合わせてつぶやくと。
 ナラカの直上から刃を振り下ろす。その渾身の一撃をナラカは刃を横にして防ぐしかなかった。
 それで抑え込んでいるうちに。そう聖はナラカに願うが。次の瞬間聖の膝から力が抜けることになる。
 直後歌が響き渡る。
 ナラカが謳っているのだ。報復の詩につづられた、その思いを周囲にまき散らす。
「そんな……」
 その歌に蘿蔔の相手をしていた澄香が顔をあげる。
「何が起きるか分からないのに……」
 死の危険もあると説明されたガデンツァの曲。
 それを謳う事すら、自分たちへの試練だと思っているのか。
 それとも、すでに楽譜に取り込まれているのか。
 ただ、それに対して同調するように響く歌があった。
 それがイリスの『アニマ』かつて研究室から発見された未完成の楽譜。
 それを元に作成されたアニマは、なるほど。報復の詩に刻まれた歌によく似ている。
 そしてその歌によって、ナラカの霊力を抑え込む。
「く……行かせない。戻ってきてください、カゲリさん、ナラカさん!」
 意識が衝突するようにイリスとカゲリの意識が明滅する。
 お互いに立っているのも辛いくらいに体へ負担がかかる。
 ただ、イリスは諦めない。ここで怯む様な弱気な心でどうして前に進めるものか。
 そう自分を奮い立たせた。
――奴と同じは業腹ものだがこちらも歌を、そして絆を力とするのだから。
 アイリスの言葉にイリスは頷き、また立ち上がる。
 ライブスヒール。そして以前にもましてカゲリの痛みを肩代わりする。
 ナラカはイリスに歩み寄る。まるでトドメを刺そうとするように。
 だがイリスも黙ってやられはしない。
「煌翼刃・天翔華……」
 黄金の翼を大きく広げ、四枚の刃とする。
 その体制のままにナラカを待つが。
 ナラカへ氷の狼が襲いかかりその動きを止めた。
 理夢琉の支援、そしてその隙にギターを装備した聖はイリスの歌を支援するように音を合わせた。
「やるなら徹底的に、だな!」
 その行動にLe..は不満げだが気にしている余裕はない。
 聖とイリスは必至でナラカを抑え込む。
――ほう、この曲は。
 その時、アイリスがいつもと変わらない飄々とした調子で告げる。
 カゲリを通じてイメージが流れ込んでくる。
「どうしたの? お姉ちゃん」
――この曲、正体が今までつかめなかったが彼女がなにをしたいか伝わったよ。
 アイリスは告げる、この曲の正体を。
「曲名はディソナンツ、リンクレートを引き下げ、共鳴を妨害する歌だ」

第三章 暗闇に一つ光るもの

 ナラカを歌で抑え込んでいる間に、理夢琉が駆け寄る。
「ナラカさん! 何が視えますか? ……大丈夫ですか!」
 あまりに危険なその行為、油断すれば楽譜に囚われることもありうる。
 だが理夢琉も成長した。もう嘆くだけの少女ではない。
 これが試練だというなら、ナラカがガデンツァが課す試練でも乗り越えよう。
 ガデンツァに心を折られながら前に進もうとした人達の勇気を思い出して、勇気を振るう。
 怯えや戸惑いに立ち向かい壊してしまう恐怖に打ち勝つために。
 その瞬間。楽譜から闇が生まれた。
 その闇はナラカも理夢琉も平らげようと広がるが。 
 それをナラカは空いた左手で強く抑え込む。
「く……ははは。そうか片腹痛い。この程度で私を食いつくせると思うな。ガデンツァ」
 その瞬間ナラカは弾かれるように視線をあげる。
「頼めるかな?」
 そう、いつものように不敵に微笑んで、ナラカは聖を見すえる。
 聖は血をぬぐって刃を構えた。
「つぅか、必要な情報も禄に出せずにはしゃいでおしまいでした、とか、そんな腑抜けた事言わせねェぜ!!」
「私の攻撃の芯を捕えることができれば、大した被害もなく力を霧散させることができるだろう」
 力の暴走、今から放たれる攻撃はそのままに食らうにはまずいというナラカの警告。
 それに対して聖は臆することなく頷き霊力を集中させる。
「足りねェ分は気合でカバーしろってんだ……!」
――……邪英化経験者が言っていいのかな……。
 Le..が首をひねる。
「……あれは、あれで……不本意ってヤツで……」
――ああ、もう、ヒジリー、集中してよ。
 次の瞬間ナラカは立ち上がりわずかに距離をとる。そして最後に「たのんだぞ」とだけ告げて、聖に膨大な霊力を放った。

――清沁哭殺。あの刻の(邪英)破壊と、殺意を。己の意志と心で、使い馴らせ――。

 Le..が聖にそう告げると、聖の刃が闇を帯びる。
 それはあの時の記憶の残滓、力の一端。邪英化した際の力を自分のモノにして放つ斬撃。、その際覚醒状態は変貌する。
「止まりやがれ…ッ! 千照流・奥伝。虚月ッ!!」
 その一撃は翠と朱がうねるようにからみあう斬撃。突風となってナラカの放った一撃とぶつかった。
「楽譜を捨ててください!」
 理夢琉の支配者の言葉。
 その介添えによってナラカは楽譜をその手から捨て去ろうとする。
 ただ楽譜は往生際悪くその手に張り付いたままである。
 あと一手、あと一手足りない。
 その時、暴風吹き荒れる嵐の渦中。輝く杖を携えた男性が現れた。
 ハーメルはその杖で楽譜を撫でると。次の瞬間には楽譜が悲鳴を上げて空に浮かび上がった。

(そうか、これが子等の輝きか)

 ナラカは深い闇の中で暖かな光と声をずっと聴いていた。

(その輝きに魅せられればこそ容易に倒れてなどいられぬ)
 そうナラカはより深い闇に手を伸ばす。
(子等の奮起を勇姿を求めながら、如何して私が応えられぬ)
 もっと深く。もっと、彼女の深淵まで。
(求めるならば、私こそが示さねばなるまいが)
 全身に激痛が走る、しかし、その手に絡みつく何か。
 次いでナラカは有る光景に飲まれた。
 それはガデンツァの一番最初の記憶。
 ガデンツァとしての一番最初の記憶。
 膨大な力の前に横たわるガデンツァ。彼にガデンツァは命じられる。
 全てに、破壊を。もたらせと。
「捕えたぞガデンツァ……」
 そう脂汗をうかべて蹲るナラカ、それに。
 蘿蔔は楽譜を構えた。
「ほう? 余計なことを口走られる前に、私を消そうと? だが蘿蔔。君にそれができるかな?」
 その時蘿蔔の動きが止まった。石のように動かない体。
 その手元を狙ってイリスが動く。
「煌翼刃・螺旋槍」
 その手から楽譜を巻き上げようとしたのだが、すんでのところでよけられてしまう。
「来ないで……怖い」
 次いで、当たりに無数に放たれる光の刃。
「安心するといい、覚者は君を傷つけることはない」
 蘿蔔の瞳に恐れが浮かんだ。その時蘿蔔を羽交い絞めしようと構築の魔女が背後から迫る。
 蘿蔔は地面に突き刺さった光のやばいを抜いて、反射的に切りかかる。
 それを構築の魔女はレイディアンドシェルにより分子運動を凍結、空間そのものを盾として刃を弾いた。
「水もエネルギーも高いところから低いところへ流れるのが常道」
 ハーメルが蘿蔔の動きを縫いとめる。
「その水晶を動かす運動エネルギーも根幹は振動エネルギーでしょう」
 もがく蘿蔔、その体を押しつぶすように壁へと押し込み、構築の魔女は蘿蔔を拘束した。
「ならば、柄ではないですが真っ向からの力比べと参りましょうか」
「やだ! 怖い! 怖いです!」
 涙を流して暴れる蘿蔔。
 その姿を痛みを抱えていのりは見つめている。彼女の痛みがいのりの体に流れ込んでくる。
 澄香は対して真っ向から蘿蔔を見すえていた。
「ああああああああああああああ!」
 蘿蔔の周囲に浮かぶ光の刃。それがフルパワーで当たる、当たらない関わらずうち放たれる。
「でも!」
 次いで召喚されたのはビルでも切り裂くのかと問いたくなるほど大きな光の剣。
 それをイリスが真っ向から。
「ジャンヌ、エイジス、ティタン! 輝け!」
 受け止める。
「イリスちゃん!」
 いのりの回復をもってしても、イリスは膝をつくほど負荷をかけられる。
 直後剣先がそれて周囲に霊力がほとばしった。
 それをかろうじて抑え込むのが杏子のインタラプトシールドである。
「こんなのが連発されれば持たないね、嬢ちゃんの霊力消費も危ないんじゃないかい?」
 杏子の問いかけにいのりは首を振る。
「すずちゃん、やめて! ボクだよ! キミと一緒に歌を歌い合ったいのりだよ! 邪英化なんかに負けちゃダメだ! 命は大事にしなきゃ! 今、すずちゃんは澄香やボクの心とつながってるの。澄香やボクの心に触れて。その繋がりを忘れないで!」
 そう強く、強く蘿蔔に訴えかけるいのり。
 その時、いのりの脳裏に映る光景があった。
 それは彼女が病室で一人、涙を流している場面。
「すずちゃん」
 言葉を失ういのり。
 そのいのりのかわりに動いたのは澄香。傍らにスケッチブックを置いて。そして口を開く。
「シロ、密林のパスワード知ってるよ?」
 途端に蘿蔔の顔が赤くなる。
「どどどどどどど!」
「ログインされたくなかったら頑張って!」
「ええええ! ちょ、すみかちゃん。え! この悪魔!」
 一瞬正気を取り戻す蘿蔔。それも当然だろう。蘿蔔が一番気楽にいられるのは澄香の隣だから。
 蘿蔔を一番理解し、そして本音で話してくれる彼女の言葉は誰よりも信じられる。
 だから。
「うわーん、がんばりまーす」
 蘿蔔は意識して楽譜との同調を開始する。
 蘿蔔の目的はただ一つ。
 長い戦いを終わらせる最善の形を見極めたい、ただそれだけ。
(私は薄情なのかもしれません。あなたの罪を見てきたのに最後まで憎めませんでした)
 ガデンツァの記憶の箱。それに手をかける。
 その瞬間、蘿蔔の攻撃全てがキャンセルされた。
「やったか?」
 ナラカは痛みを振り払うと蘿蔔に歩み寄る。
「すずちゃん何が見える?」
 いのりは、まともに動かない体を引きずって蘿蔔のもとへ。ダメージを受けすぎた。
 ただ、それでも意識は手放せない。
「そこはどこ? そこへはどうやって行くのか分かる? 何か危険な要素は見当たらない?」
「そこは、もう、ここにはない場所です」
 一体何が、そういのりが問いかけようとした瞬間。
 頭の中に流れてきた情報がある。
 それはガデンツァが目覚めた時の記憶。
「あなたは、この私達が愛する歌を終わらせるために生まれました。どうか神よ。この歌が誰かを傷つけるために使われる場合、どうか私達を殺してください」
 
 ガデンツァの歌は、心を壊す。

 美しい音を奏でることもできるが。

 彼女にとってそれが本懐。

 ああ、どうか、その心を教えておくれ。

 その心を壊して見せよう。 

 傷つけることなく壊して見せよう。

 泣いている少女がいた。小さな体を震わせて水晶の涙を流していた。
「あなたが、ルネさんですね、初めまして」
 そう蘿蔔はルネの手を取る。
「やっとあえた。ずっとあいたかったんです」
 そう告げた瞬間少女が蘿蔔に抱き着いてきた。
「もっと、あなたを教えてください。もっとルネさんの歌が聞きたいです」
 蘿蔔はそこで、永遠に思える時間の中、沢山の話をした。沢山の歌を一緒に謳った。
 やがてその夢も覚める時が来て。
 水晶の少女は蘿蔔にありがとうとだけ告げた。

第四章 幸福と報復

「流石に本人がくることはないかと思いますが…干渉される危険はありますよね?」
 そうあたりを警戒するのは構築の魔女。
 ナラカと蘿蔔の意識がなくなってから三十分が立った。
 その間サポーターの生命力は削りられ続けていたからまだ叡智の探究は続いているらしい。
「私、頑張れたかな」
 そう理夢琉が不安そうに笑うとその頭をアリューがガシガシ撫でた。
「あぁ頑張ったな」
 その言葉に理夢琉は意を決したのか立ち上がり、蘿蔔の隣で心配そうな表情を向ける遙華へと向き直る。
「遙華さん。例の歌」
「ええ、この楽譜の歌ね、でもこの歌は歌わせられないわ」
「どうして?」
 澄香が問いかける。
「この歌の正体、うっすら気付いているのでしょう。確実に人類に悪影響を及ぼす歌よ」
「その歌。僕達の物にできないかな」
 いのりが問いかける。
「ほろびのうたも、希望の音になったように。その歌でつながったものが沢山あるように。この曲もアレンジしたらきっと素敵な歌になるよ」
「そうだね、それが妥協点だ。この歌。私たちに預けてもらえないかな」
 澄香が告げる。
「歌なら任せてよ。ガデンツァと戦って長いし、気づくことも多いと思うんだ 」
 いのりが告げると澄香はいのりに笑顔を向ける。頼れる相棒だ。そんな感じの笑みだった。
「いのりかっこいー」
「もう、褒めてもなにもでないよ」
「私もお手伝いします」
 理夢琉が告げた。
「ルネさんの希望がつまっている歌を歌う時に感じるしこりのようなもの。それが取り除けるような気がするの、だから」
 理夢琉の言葉をアリューが継いだ。
「俺は英雄ルネや能力者を失った英雄の静謐な覚悟、守ろうとする者達の絆をみてわかった事がある。
 俺が俺であると確信できるのは理夢琉がいてくれるからなんだと」
「アリューと一緒なら」
「理夢琉と一緒なら。この歌も希望に変えられる」
 理夢琉は思い出していた。まどろみの世界で感じた種族を超えた理解と祝福を。
 そしてその願いを込めて理夢琉は心の底から思う。
「この歌を、ルネさんのように歌ってみたい」
「楽譜に書かれているのが2つで1つの歌になるのなら、一緒に合わせて歌う事で効果を示すだろう? 二つともアレンジするつもりかい?」
 その言葉にいのりも澄香も頷いた。
「そうね、こちらからもECCOと光夜にアレンジを頼んでみるけど、歌自体が危険かもしれないこと忘れないでね」
 複数の側面からアプローチを行ってみよう。そう言う話になった。
 もし、この曲をそのまま謳う場合は場所を設けるので、絶対複数のリンカーがいる時に謳う事。と。
「あ、動いた」
 そのとき、二人を見守っていた葵が声をあげた。
 見ればカゲリと蘿蔔は手を繋いで、先ほどの張り詰めた表情など嘘のように眠っていた。
 終わったのだ。
 あとは二人の証言を聴くだけ。
「あら? この水晶」
 その時、遙華は蘿蔔の手に握られた水晶に気が付く、それはガデンツァから奪い返したルネの破片。
 いつの間に蘿蔔が握っていたのだろう。
「でも、確かに意志めいた何かをエリザがこの中に見つけたから。そう言うこともあるのかしらね」
「え!」
 澄香といのりが声を合わせて叫んだ。
「その話詳しく!!」
「え……っとそれは」
 長い長い遙華のお話が始まる。だが今それを語る時間はなく。
 また次回の機会ということで。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
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