本部

縄跳び☆パニック

花梨 七菜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/02/27 21:12

掲示板

オープニング

●小学校で
 シンイチの大嫌いな体育の授業が始まった。しかも、今日やるのは大縄跳び。
 普通の縄跳びなら、まだ我慢ができる。跳べなくても、自分が悔しいだけだから。でも、大縄跳びは、失敗したら他の人に迷惑がかかる。失敗した時に、クラスメートから向けられる冷たい視線。運動が苦手なシンイチにとって、大縄跳びの授業は針のむしろであった。
「今日は、連続30回にチャレンジしよう」
 先生が、明るく言った。
 先生とクラスの中で一番背の高いタイガが、縄を回す役である。跳ぶよりも縄を回す役がやりたい……とシンイチは思ったが、背の低いシンイチにはそれは無理だった。
「せーのっ、いーち、にー、さーん……」
 縄が回り、皆でジャンプする。「はち」でシンイチの足が、縄にひっかかった。
「もう一回行くぞ。せーのっ」
 再び、ジャンプする。「きゅう」で、またシンイチの足がひっかかった。
「あーあ」
 何人かが、がっかりして声を漏らす。
 クラスの皆は、シンイチを直接責めたりはしない。それがまた辛いのだった。
(ああ、もうあと何分耐えなきゃいけないんだろう。時間が速く進む魔法があればいいのに……)
 そんなことを考えながらジャンプしていたら、シンイチはまた縄に足をひっかけて、派手にすっころんだ。
「きゃあ!!」
「わあ!」
 叫び声を上げたのは、シンイチではなかった。
 シンイチには、一瞬何が起こったのかわからなかった。自分は、校庭に両手と両膝をついている。その横では、クラスの皆がひとかたまりになっている。一瞬、皆でおしくらまんじゅうをしているのかとシンイチは思ったが、そうでないことはすぐにわかった。大縄跳びの縄が、皆をまとめて縛りつけているのだ。
「大丈夫か!」
 先生が駆け寄り、子供達の腹や胸をぎりぎりと締めつけている縄をはずそうとしたが、縄は全然動かなかった。
「おい、お前たち! 職員室行って他の先生を呼んできてくれ!」
 先生は、シンイチとタイガのほうを振り向いて叫んだ。
 派手に転んだシンイチと、縄を回していたタイガだけが、大縄に襲われずに無事だったのだ。
「わかりました! 行こう」
 タイガはそう言って駆け出した。シンイチは、一生懸命タイガの後を追いかけた。シンイチの膝は転んだせいで血だらけだったが、シンイチは全然そのことに気づいていなかった。

●大縄跳びの縄も凶器になります
 H.O.P.E.敷地内のブリーフィングルームで、職員が説明を始めた。
「小学校で、体育の授業中に子供達が大縄跳びの縄に襲われました。小学三年生の児童18名が縄で縛られて動けない状態です。一人一人が縛られているわけではなくて、全員まとめてぎゅっと縛られているんです。内臓を圧迫されている状態が長時間続くと、非常に危険です。迅速に従魔を討伐して、子供達を救出してください。よろしくお願いします」

解説

●目標
 従魔の討伐、子供達の救出

●登場
 ミーレス級従魔 × 1体。
 縄の姿をしている従魔。
 体長約15m。
 巻きつく。締めつける。鞭のように打つ。

●状況
 晴天。午前10時頃。
 小学校の校庭。
 小学三年生18人が、まとめて縄で縛られていて身動きできない状態である。

リプレイ

●大縄跳びの縄から子供達を救出せよ
「子供達を傷つけるなんて、許せないね!」
 風代 美津香(aa5145)は言った。美津香は、元々は諜報、潜入を得意とするエージェントであった。美津香は、優しい心の持ち主で、いつも自分の安全も顧みず、他の生命を救うために戦ってきた。
 突然従魔に襲われた子供達は、どれほど恐怖を感じているだろう。早く助け出さなくては、と美津香は心に誓った。
『ええ、あの子達は必ず守りましょう!』
 英雄のアルティラ レイデン(aa5145hero001)は、大きく頷いた。アルティラは、元の世界では特殊捜査官として犯罪組織と戦っていた。アルティラは、美津香のことを姉のように慕うと同時に、自分の目標として尊敬していた。

「本当従魔っていつでもどこでもって感じっすよね」
 君島 耿太郎(aa4682)は言った。耿太郎は、見た目は元気な少年だが、いろいろと辛い過去を乗り越えてきた。耿太郎自身は、愚神によって過去の記憶を無くし、今は信頼できる英雄アークトゥルス(aa4682hero001)と一緒に生活している。アークトゥルスは、艶やかなストレートロングの金髪を青いリボンでポニーテールにした美青年である。
『それも従魔が脅威である理由の一つだろうな。日常には縁遠いものであってほしいが』
 アークトゥルスは言った。その口ぶりには、かつては貴族や王だったことを推察させる気品があった。

「蛇とか百足とかはよくある話ですが、何の考えがあって縄跳びを従魔化したのでしょうかね……不思議です。ただ、拘束具型のAGWは多くないですし、自律型ともなるとまだ無いでしょうから……多少、恨めしいですけど、厄介な事になりそうですから、的確に動いて油断なく解決したいですね」
 晴海 嘉久也(aa0780)は言った。嘉久也は、都内某所に「晴海探偵事務所」を構える自称私立探偵である。
『早く子供達を助けてあげましょう』
 英雄のエスティア ヘレスティス(aa0780hero001)は、おっとりと言った。エスティアは、嘉久也の探偵事務所の唯一の従業員である。
「そう、時間勝負ですね。正確な行動で人質を素早く解放し、従魔を打倒する、それのみです」
 嘉久也は頷いて言った。

 エージェント達は小学校に到着した。
 耿太郎は、建物の配置などを確認した。敷地の北側に校舎があり、南側が校庭になっていた。
「多分みんなめちゃくちゃ怖い思いしてるっす。先生のいる方へって言ったらみんなちゃんと走ってくれるんじゃないっすかね」
 耿太郎が言うと、アークトゥルスは言った。
『ただし、慌てて逃げられずでは問題だな。落ち着くような声かけも必要か』
「そうっすね」
 耿太郎はそう言って、校庭に急いだ。

 校庭には、大縄跳びの縄で縛られた子供達と、その周りで右往左往する先生達の姿があった。先生達は子供達を助けたい気持ちはあるものの、従魔相手に何もできないでいるようだ。

『オオナワトビ?』
 英雄のナイン(aa1592hero001)は呟いた。ナインは、元の世界では研究所の被験体だった。ナインという名前も、被験体だった時の識別番号からとっている。
「こうやって皆で飛ぶんだよ。俺もよくやったなぁ……じゃなくて!」
 マイペースなナインの発言につい乗ってしまった楠葉 悠登(aa1592)は、慌てて言った。
「従魔自体は強くなさそうだけど、あの子達を早く助けてあげなくちゃ」
 悠登は、両親を早くに亡くして祖母に育てられたごく平凡な高校生である。自分が祖母を守りたいと思っているのと同じように、子供達の両親も子供達を守りたいと思っているはずだ。
『なるほど、大蛇で遊ぶとは面白いな。綺麗に巻き付かれているが、頭はどこだ?』
 ナインは、どこまでも天然で、表情を変えずに淡々と言った。
「いや、細くて長いけど蛇じゃないからね……?」
 悠登はツッコミを入れつつ、ナインと共鳴した。悠登の姿は青年に成長し、ナインと同じ青色の瞳と白銀色の髪に変化した。
 遊んでいる場合ではない。早く子供達のところに行こう。

 嘉久也は仲間に言った。
「わたしと君島さんは先生方と話しますので、楠葉さんと風代さんは捕らえられている子供達の対処をお願いします」
 嘉久也は、自分達がH.O.P.E.のエージェントであることを先生達に告げて事情を説明した。時間が貴重なので、説明は簡潔に要点だけ伝えた。
 耿太郎は、先生達に避難誘導の支援を頼み、その場を離れて建物の近くで待機してもらうことにした。
「キミ達も校舎のほうに避難してほしいっす」
 耿太郎は、うろうろしている少年二人に声をかけた。一人は背が高く、一人は背が低い。シンイチとタイガである。
「……でも」
「大丈夫っすよ。お友達はちゃんと助けるっすから」
 耿太郎が自信満々の笑顔を見せると、二人は頷いて校舎のほうに走っていった。
「すぐ助けてあげるから、もう少しの我慢だ」
 悠登は、子供達に声をかけて励ました。
 子供達の顔は蒼白だった。子供達を早く縄から解放してあげることが最優先事項だ。
 美津香はアルティラと共鳴した。一瞬青白い光が美津香を包んだが、美津香の姿は変わらない。
 美津香は、ハイカバーリングで子供達のダメージを肩代わりした。
 次に美津香は、守るべき誓いを使った。縄の両端の持ち手が子供達から離れて、美津香のほうを向いた。まるで二匹の蛇が鎌首をもたげているようだ。
「ハァイ! そんな子供達よりお姉さんと遊ばない? もっと楽しませてあげるよ!」
 美津香は、従魔を挑発しながら、後退して距離をとった。従魔が子供達を解放して移動しなければ攻撃できないようにして、子供達から従魔を引き離すためである。
『私達がお相手します、勝負です!』
 アルティラもそう叫んで、従魔の注意を引いた。
 縄の持ち手の片方が、美津香に向かってシュルッと飛んだ。だが、縄の残りの部分は、まだ子供達にしっかり絡みついている。
 美津香は、飛んできた縄の持ち手をファラウェイではじき落とした。
 縄の持ち手は地面に落ちたが、すぐさま宙に舞い上がり、美津香に襲いかかった。
「縄ってこんな危険物だったんっすね……」
 耿太郎は呟いた。
『リーチはある、動きの幅も広い。何かと厄介ではあるな』
 アークトゥルスは言った。
「感心している場合じゃないっす。俺達も戦うっすよ!」
 耿太郎は、アークトゥルスと共鳴した。髪の色と目の色が耿太郎と同じで、外見はアークトゥルスという姿に変化して、騎士の装いを身に纏った。戦闘慣れしているアークトゥルスが身体の主導権を握った。
 アークトゥルスは、美津香に向かって伸びた縄に星剣「コルレオニス」で斬りつけた。縄を細切れにしていき、巻きつくほどの長さが維持できないようにするという作戦である。アークトゥルスの攻撃によって縄に傷はついたが、斬りおとすことはできなかった。
 一方、悠登は、仲間が戦っている間に、スパチュールナイフで子供達に巻きついている縄を切断しようとしていた。悠登は、子供達を傷付けないように注意して、ナイフの背を子供達に向けてナイフをゴシゴシと動かした。子供達にナイフの刃が向かないようにしているため力が入れにくかったが、それでも頑張っていると、縄が少しほつれてきた。
「我も手を貸そう。一箇所に力を集中させた方がすぐ切れる」
 嘉久也はエスティアと共鳴して、悠登に言った。嘉久也は、遠距離戦では人質を巻き込んでしまうので、拘束されるのを覚悟で縄を切る必要があると思っていた。
「そうだな。では、お願いするよ」
 悠登はそう言って、嘉久也と場所をかわった。
 嘉久也の姿を見て、近くにいる子供達がひるんだ。なにしろ共鳴後の嘉久也は、身長2mで、鍛え上げられた肉体に、鋭い眼光を宿した紅蓮の瞳、触れたら焼き尽くされそうな気がする程の深紅の髪、炎の様に揺らめく神性を感じさせる圧倒的な存在感を持つオーラを纏った姿である。
「大丈夫。見た目は怖いかもしれないが、仲間だ。怖かったら、目をつぶっていて」
 悠登は、そう言って子供達を安心させた。
 嘉久也は、薄氷之太刀「雪華」真打を子供達の隙間に差し込み、縄の弱くなっている部分に当てて力をこめた。縄がブツッ、ブツッと千切れていく。
『もう少しの辛抱だ。すぐに解いてやる』
 アークトゥルスは、辛そうな表情を浮かべている子供に気づいて声をかけた。子供は目をつぶって、気温が低いにもかかわらず汗をかいている。アークトゥルスは、少しでもダメージを肩代わりできないかと思い、ハイカバーリングを使用した。子供の表情が少し緩んだ。
 遂に、「雪華」の極限まで薄く研ぎ澄まされた刀身が縄をぶつりと断ち切った。切れた縄は弾けるように飛び上がり、解放された子供達の何人かは地面に膝をついた。
「みんな、校舎の方へ避難してくれ!」
 悠登は、動けないでいる子供達を助け起こしながら大きな声で言った。
『先生が待っている方へ避難するんだ。もう大丈夫だから慌てずにな』
 アークトゥルスは、子供達を安心させながら避難を誘導した。
 校舎の傍にいる先生達が、子供達が解放されたことに気づいて、大きく手を振ったり子供達に呼びかけたりし始めた。すぐに子供達に駆け寄って無事を確認したいところだろうが、先生達はアークトゥルスの指示に従って建物の傍で避難誘導をしてくれていた。
「君たち、お兄さんの言う通りに避難するのよ!」
 美津香は、従魔と戦いながら子供達に声をかけた。
『後は私達に任せて下さい』
 アルティラもそう言って、笑みを浮かべた。
 子供達は、校舎に移動し始めた。だが、数人の生徒は地面に座り込んだままだった。体力的な問題か精神的な問題か……。
「俺につかまって。もう大丈夫だから」
 悠登は、動けないでいる子供達に話しかけて、一人の子供を背中に背負い、一人は右手で抱え、他の一人は左手で抱えて校舎に向かって走り出した。
 移動する子供達と悠登の足元に、縄の持ち手が蛇のようにくねくねしながら這い寄る。
『貴様の相手は私だ』
 アークトゥルスは、守るべき誓いを使用して従魔の注意を引きつけた。従魔は、アークトゥルスに飛びかかった。アークトゥルスは、従魔の攻撃を回避した。
 美津香も、守るべき誓いを使用した。子供達が無事に逃げ切るまで、従魔の関心を自分から逸らすわけにはいかない。
 従魔は鞭のようにしなって美津香を襲った。

●従魔との戦闘
 悠登は、抱えている子供達を先生達のところに送り届けた。子供達の中にはほっとして泣き出してしまう子もいた。悠登は、校舎の中の安全な場所に子供達を避難させるように先生達に依頼すると、仲間のところに戻った。
 仲間は従魔と対峙していた。
 縄は真ん中で二つに切れ、大蛇が二匹の蛇に変化していた。縄の持ち手が、蛇の頭のように動いて隙を窺っている。
 悠登は、自らにパワードーピングを施した。
 美津香は、積極的に従魔に近接戦闘を挑んだ。美津香が一本の縄に攻撃を当てた瞬間、もう一本の縄が美津香に巻きついた。
「くうっ! しまった……!」
 縄は、美津香の両腕と胸に巻きつき、ぎゅうぎゅうと美津香を締めつけた。
「く、苦しい……でも、負けるもんか、子供達を守りきるまで私は倒れるわけにはいかないんだ……!」
 弱いものへの愛情と使命感が、美津香の心を奮い立たせた。
 美津香は、両腕に力を込めて縄を振りほどこうとした。
『しっかりしろ。今、解く』
 アークトゥルスは、美津香に声をかけて、縄の端をつかんで引っ張った。縄は、美津香から離れると、今度はアークトゥルスに巻きつこうとしたが、アークトゥルスは回避した。
「大丈夫か?」
 悠登は美津香に声をかけて、ケアレイを放った。
「平気だよ。ありがとう」
 美津香は答えた。
 もう一本の縄が、嘉久也に襲いかかった。嘉久也は、縄が巻き込みに来た所を返す刃で地面に叩き落とした。
 二本の縄は目まぐるしく動き回る。
 悠登は、巻き付かれないようRR「ブラックテール」の銃握の部分を使い、くるくると回して牽制した。
 アークトゥルスの剣に縄が巻き付いた。アークトゥルスは剣を手放して、体への巻き付きを回避した。そして、サブの剣に持ち替えて従魔を攻撃した。
 悠登は、美津香にパワードーピングを使用した。
「ちょっと痛いよ!」
 美津香は言って、従魔を攻撃した。従魔は反撃したが、美津香の防御力が上がっているので、大したダメージはなかった。
 縄は宙を飛び、地を這って縦横無尽に攻撃してくる。
 アークトゥルスは、襲いかかってくる縄を剣で振り払った。
 嘉久也は、飛びかかってきた縄をブラッディランスで巻き取って地面に叩きつけた。その機を逃さず、美津香は従魔を攻撃した。縄の持ち手がバキッと割れて、縄は動かなくなった。
「あと一匹だ」
 悠登は呟いて、仲間にケアレインを使用した。ライヴスが周囲に降り注ぎ、疲労した仲間を癒した。
「さあ、行くよ!」
 美津香はそう叫んで、くねくね動き回る縄に攻撃した。アークトゥルスと嘉久也も縄の周囲を取り囲み、攻撃を加えた。
「悪い従魔にはお仕置きが必要だな」
 悠登はそう言って、縄を断ち切るように槍を振り下ろして攻撃した。
 縄が地面を這って逃げ出そうとするところを嘉久也のブラッディランスが阻んだ。
 縄は、向きを変えてアークトゥルスに巻きつこうとした。
「このまま、消えてなくなれ!」
 悠登は叫んで、槍を縄に突き刺した。槍の穂先は地面に食い込み、縄を地面に縫い付けた。
『これで終わりだ』
 アークトゥルスは、剣を縄の持ち手に突き刺した。
 縄は、ただのモノに戻った。もう人を襲うことはない。

●日常が戻り、皆、前に進んで行く
 教室にいるのはいつもと同じ顔触れなのに、いつもと違って教室の中は静かだった。子供達はまだ恐怖から覚めきっていないようだ。
「従魔は退治したので、もう心配いらないっす」
 耿太郎は、先生達と子供達に告げた。
『皆、よく頑張った』
 アークトゥルスが皆をねぎらうと、ようやく子供達の顔から緊張が消えた。
「怪我した子はいないか?」
 悠登が聞くと、数人が手を挙げたが、どれもすり傷などの小さな怪我だった。迅速に子供達を縄から解放することができたので、深刻な怪我を負った子供はいなかった。
「順番に手当するね」
 美津香は、救急医療キットで怪我をした子供達の手当を始めた。
「はい、終わり。次は君の番だよ。君の怪我が一番ひどいみたいだね。と言っても、治療すればすぐ治るけどね」
 美津香は、椅子に座っている少年の前にしゃがんで、血だらけの膝を消毒しながら言った。
「……でも、僕、縄に襲われて怪我をしたわけじゃないんだ。襲われる前に転んじゃったから。縄跳び、下手だから。僕のせいで縄跳びが続かなくて、皆に迷惑かけてばかりなんだ」
 シンイチは、顔を赤らめながら言った。
「ふうん。はい、治療はこれで終わり」
 美津香は、顔を上げてシンイチの顔を真っ直ぐ見つめた。
「無理して先に進もうとしなくてもいいんだよ。ほんの少しの歩みでいいんだ。その少しを積み重ねていけば、最後には必ず努力と積み重ねは実を結ぶからね」
『やり遂げるという思いがあれば必ず出来るようになります。大切なのは焦らず、少しずつ進むことだと思うんです』
 美津香の隣に立つアルティラは、優しく言った。
「そう。ゆっくりと歩んでいけばいいんだよ。私達も、君のお友達も最後まで見守ってあげるから、ね」
 美津香が言うと、シンイチは顔をくしゃっとさせて涙をこらえた。美津香は少年の頭をそっと撫でた。

「これ、もしかして、俺達っすか? うまいっすね」
 耿太郎は、少女が自由帳に描いている絵を見て言った。白い紙には、鎧、サーコートを纏いマントを翻すアークトゥルスの姿が描かれていた。
「……あの……かっこよかったから」
 少女は、恥ずかしそうに小声で言った。
『丁寧によく描けている』
 アークトゥルスが褒めると、少女は顔を真っ赤にしながら「サインください」と言った。
「部分的に俺も入っているっすから。俺もサインするっす。王さんだけずるいっすよ」
 アークトゥルスがサインをする横で、耿太郎は自分もサインしようと奮闘した。それを肘でブロックするアークトゥルス。負けずに割り込む耿太郎。
「二人とも、子供達が見ているからやめよう」
 悠登は、二人の間に入った。周りの子供達が笑い声をあげた。

 耿太郎、悠登、美津香は、子供達に別れを告げて、次第に騒がしくなってきた教室を後にした。
「これであの子達が縄跳び嫌いにならなきゃいいけど……」
 悠登が呟くと、ナインは淡々と言った。
『心配はいらん。子供は案外強いものだぞ』
「……そうかもしれないね。ナインに言われるとなんか変な気がするけど!」
『??』
 悠登の言葉の意味が、ナインにはよくわからなかったようだ。いつもと変わらないナインのマイペースぶりに、悠登はなぜだか救われた思いがした。

 嘉久也は、子供達の相手を他の仲間に任せて早々に帰路についていた。
『無事に従魔を退治できてよかったですね』
 エスティアはおっとりと言った。
「そうですね。大縄跳びの縄よりも、リンク時のわたし達の姿のほうが怖かったかもしれませんが……」
 嘉久也が言うと、エスティアはふふふと笑った。
『帰ったらコーヒーいれますね。少しゆっくりしましょう』
 エスティアの言葉に、嘉久也は頷いた。
『もうすぐ冬も終わりですね。春になったら、桜、蒲公英、チューリップ、薔薇……楽しみですね』
 エスティアは、春の気配のする日差しに目を細めた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
  • 鋼の心
    風代 美津香aa5145

重体一覧

参加者

  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 薩摩芋を堪能する者
    楠葉 悠登aa1592
    人間|16才|男性|防御
  • もふりすたー
    ナインaa1592hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • 鋼の心
    風代 美津香aa5145
    人間|21才|女性|命中
  • リベレーター
    アルティラ レイデンaa5145hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
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