本部
雪の降る町
みんなの思い出もっと見る
掲示板
-
童心アピール用相談板
最終発言2018/02/12 11:52:49 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/02/12 13:09:24
オープニング
ひらり……ひらり……
舞い落ちる白いモノに、空を見上げる人々。
薄暗いはずの時間でも明るく感じるのは、雪が真っ白だからだろうか。
寒いなぁ、なんて思っていたら雪が降っているんだ。寒いのは当たり前だろう。
白い息の濃さはそんな変わっていないはずが、心成しか雪の降る前よりも白くなっている気がする。
―しとしとしと……
振り始めからしばらくして、人が行き交う街路樹も薄く雪が積もっている。その上を歩くと水分を含んだ足音が聞こえる。
こんな日は早く帰るに限る。コンビニエンスストアにでも寄って、温かいものでも買って帰ろうか。
巻いていたマフラーを巻き直し、ポケットに手を入れたりして、人々は家へと帰っていった。
***
山の近く雪が積もった場所で、一人のケモミミ男がしゃがみ込んでせっせと何かを作っていた。
「さ、寒いのう……」
「冷たい冷たい」と何回も言いながらも何十分も外にいたかと思えば、糸がプツリと切れたように、いそいそと家に入っていってしまう。
彼の去った場所には、雪だるまが45体並べられていた。
これは一人の男の雪の降る日の過ごし方である。
解説
●目的
雪の降る日を過ごす
●状況
「雪が降っている日」※雪が振っていれば、どんな状況でも構いません。
依頼からの帰り道、家で過ごしている日、休日で外に遊びに行っている間など、好きに決めて頂きたいと思います。
●雪の降り方
ふわりふわりと、ちらほら舞う白い雪。段々と大粒になるかもしれないし、それはすぐに止むかもしれない。
もしかしたら、先日も降っていて、地面に残る雪の上に新しい雪が積もるのかもしれない。
確かなことは、白い雪が空から舞い降りてくることです。
●NPCについて
MS所有NPCオペレーターの「剣太」は、本部で仕事をほったらかしで雪を見てはしゃいでいます。
絡みはご自由に! NPCとしては喜んで絡みに行くと思います。
※プレイングについて※
「他の人と絡む」という一文のみ、名前だけを記載して「この人と絡む」という一文のみのプレイングは採用困難です。
具体的に『誰とどう絡むか』を『お互いに』描写して下さいますようお願い申し上げます。
相互の描写に矛盾などがあった場合はマスタリング対象となりますので、事前の相談は大事です。
リプレイの文字数の都合上、やることや絡む人を増やしても描写文字数は増えません。
特定の相手に行動を絞ったプレイングですと、描写の濃度が上がります。
リプレイ
■積もった後の過ごし方A
サクッサクッサクッ――。
リズミカルな音を立て、何そうにも積もった雪の層にシャベルを突き立てる。掘っては投げを繰り返し、数回繰り返すと地面が見えてきた。
雪が積もるぐらい寒いというのに、長い時間雪かきをしているため汗が額に光っていた。
「頼まれたボランティアがこれとはね」
流れる汗を拭いながら赤城 龍哉(aa0090)がまだまだ終わりそうもない雪かきに溜息をつく。
冬の空気に冷えたタオルが冷たくて、火照る体に心地よい。
『傍から見ると壮観とも言えますけれど』
普段見る機会の少ない白銀の世界が広がる景色に、感動を覚えるヴァルトラウテ(aa0090hero001)。
「住んでる方にはたまったもんじゃねぇよなぁ」
能力者と言えど慣れない作業に多少の疲れを感じているのだ。地元の人たちは雪が積もるたびにやらなきゃいけないのだから、毎年相当苦労しているのだろう。
「これが毎日とは恐れ入るぜ」
『私たちのお手伝いが少しでもお力になれば良いですわね』
担当地域の家の屋根から雪を下ろし、それが終われば下に積もった雪をどかす。何度も同じ作業を繰り返すうちに、段々となれていったのか作業時間が短くなった。
「本当は融かして流せれば良いんだろうが」
『中途半端にすると凍結しますわね』
「だよなぁ」
頭では分かっていても、少しでも楽になる方法はないかと模索してしまう――が、結局良い方法がないからひたすら雪かきをするわけで。
――サクッ……ドサッ。
話は一度そこで途切れて、黙々と作業が続けられるのであった。
「嬢ちゃんたちやぁ、ちょいと休憩せんかぁ?」
屋根から雪を下ろし終わったところで、家の主人から声がかかる。
二人とも顔を見合わせ、ちょうど良いタイミングだとありがたく休憩することにした。
地域の住民たちと交流しつつ、この日の二人はボランティア活動に専念するのであった。
朝起きて、ばっとカーテンを開け外を見る。これだけ積もれば作れるだろう。
「烏兎ちゃーん! 雪がすごく積もってるんだぜ! かまくら作ろ!」
起きてすぐに窓の外を確認し、まだ寝ている少女へ声を掛ける虎噛 千颯(aa0123)。
彼の言葉を聞いて、勢いよく布団から飛び出た少女は一緒になって外を見る。
『おー! すごいんだよ! これでかまくら作れるね!』
前日、かまくらを彼から教わった烏兎姫(aa0123hero002)は、ワクワクした様子で窓の外を眺めるのであった。
『行ってくるんだよー!』
朝食などを済ませたら、さあ、今度は雪遊びだ。
虎噛と烏兎姫の二人は、しっかり防寒対策をして近くの空き地へと遊びに行くのであった。
サクッサクッ――
持ってきた雪かき用のスコップでまずは一か所に雪を集める。
ドーム状に雪を積み上げて、ぺしぺしとスコップの裏側で固める。あまり固めすぎると入る穴を作るのが大変なので、崩れない程度にそれでいて程よく硬めに。
「白虎ちゃん風にするんだぜ! 鼻から煙抜ける様にするんだぜ!」
綺麗なドーム状に三角を二つ着け、先に入り口部分を少し掘る。ある程度深く掘ったところで、入り口の上の部分を鼻の形に作っていき、綺麗に形ができたら再度空洞部分と鼻の部分に穴を作っていく。
『がおーちゃん風だね! ボクも頑張るんだよー! 鼻からってそれ……パパ後で怒られない?』
煙を逃がすための鼻の穴。そこから白い煙が上がるのを想像しただけでちょっとクスっと笑ってしまう。
壁が均等になるように穴を丸く掘り、二人分が入れるようになったところで、七輪を用意し火をつける。改めてかまくらを見ると――うん、良い出来だ。
「おー! 結構上手く出来たんだぜ! どう? 烏兎ちゃんかまくら」
『これがかまくらなんだね! 思ったより中が暖かいんだね!』
少し窮屈ではあるが、即席にしては良くできた。こうして二人で入ると秘密基地にでもいるようだ。
「喜んで貰えたら良かったんだぜー!」
『頑張ったかいがあるんだよ! 今度もみんなでやりたいんだよ!』
また一つ思い出ができた彼女は、無邪気な笑顔見せるのだ。
「わぁ……思いのほか積もっていますね」
真っ白に染まる窓の外を見て、月鏡 由利菜(aa0873)は思ったまま言葉を呟いてしまう。
『せっかく雪積もってるから、雪だるまでも作ろうかな~』
彼女の言葉に反応して外の景色を見たウィリディス(aa0873hero002)もそう呟く。
昨晩から降っていた雪は、空は曇っているのにもかかわらずキラキラと輝いていた。
「たまには童心に帰るのもいいかもしれませんね……」
本来やるはずだった仕事もあったのだが、契約している英雄の計らいにより、少しゆっくりする時間ができた二人。折角だからと外に出る準備をする。
しっかりとマフラーを巻き、コートを羽織る。外に出ると気温の変化に体が震えた。
「うぅ……寒いですね」
話すたびに白い息がふわっと上がる。
『ね、早く春にならないかな~』
冬には冬の楽しさがある。それはわかるがやはり春が待ち遠しい。
雪の上を歩くとサクッと足音が聞こえてくる。なんだかそれが心地よい。
『よーし! 何個作ろうかな~』
ポスポスっと手の中で小さい雪玉を作る。一度土のつかなそうなところに置き、もう一つ、先ほどより一回り大きいサイズの雪玉を作る。
できた雪玉を二つ重ねて、小さな雪だるまが完成する。それを踏まれなさそうな場所に移動させた。
「一つだとどこか寂しいですね……」
それもそうかと、雪玉を今度は4つ作って同じように重ねる。先程作った雪ダルマの隣に二つ並べる。最初に作った雪だるまだけ、少し背が高い。
『こうやって三つ並べるとあたしたちみたいだよね』
リディスの言葉になんだか心が温かく感じる。
『あたしも小さい頃、ユリナと雪だるま作ってたような記憶があるんだけど……何故か決まって場所が異世界の孤児院の近くで、子供が周りに一杯いるんだよね~』
「……彼女と雪だるまを作ったことはあるけれど……それは、パラスケヴィの記憶と重なっているのかしら……?」
彼女――由利菜の親友ともこうやって雪だるまを作ったらしい。そのことを思い出した彼女は少し寂しそうに微笑むのであった。
部屋へと戻っていった二人の後には三つの雪だるまの周りに小さなウサギが複数置かれていた。
■積もった後の過ごし方B
チュピ……チュピピ……
なるべく音を立てないように、鳥の鳴き声のする方へ近づく。
パシャリと冬の世界に住む生き物たちの写真を撮るのは、無音 冬(aa3984)である。
何枚も写真を撮り、うまく取れたのを確認すると別の生き物を探していく。
『ほら、冬、上に何かいるぜ?』
高いところにいる鳥を見つけ、彼に伝えるイヴィア(aa3984hero001)。
彼の指さす木の枝には、スズメぐらいの小さな白い鳥が止まっていた。
「シマエナガ……すごい白い」
気に留まっていたから見つけられたが、雪の中にいたら分からなかったかもしれない。
小さく鳴いたかと思うと、エナガは飛んで行ってしまう。
「うまく撮れなかった……」
心なしかシュンっとしている彼に『まだいるって!』と励ましを送る。
『あ、あれ! ほら、珍しいやつがいるぜ?』
今度は少し前方に雪の中にピンク色――オオマシコという、スズメのような大きさの鮮やかなピンクの鳥がちょこちょこと飛び跳ねていた。
「すごい……面白い色だね……」
こんな綺麗な鳥を見たことないと、何枚も写真を撮る彼。数枚撮ったところで画像を確認し、満足のいく写真が撮れたようでその手を止める。
『お前も十分白いけどな』
彼の反応にイヴィアはサラっとそう呟くのであった。
冬の草木――椿、スノードロップなどの写真もとり、満足したところで今日は帰ることにした。
「お土産……どうしよう。何も考えてなかった」
いつもより遠出をしたのなら、せっかくだからお土産を買っていきたい。
『せっかくここまで来たんだ……土産の一つでも買って帰るか?』
駅の中にあるお土産屋さんによって友人宛の土産を探す。
『これなんてどうだ?』
イヴィアに勧められるまま、エナガの小さめのクッションを人数分買う。
生地はふんわり、中の綿はもちもちしてて触るだけで癒される。時間など忘れてこのままさわり続けてしまいそうだ。
「喜んでくれるといいね……」
どんな反応をしてくれるのだろう。この胸のドキドキするのは何だろうか。
友人たちが出かけていることを知っていた二人は、支部にてお土産片手に友人たちの帰りを待つのであった。
「部屋が……片付かない」
ぐったりした様子で椅子に座り、一時休憩を取っているのは桜小路 國光(aa4046)である。
大量の本と紙類に囲まれ、修士論文の資料の片付けに追われていた。
「次の帰国で届けないと……丁度いい依頼なかったら航空券手配して……」
ブツブツと独り言を呟いて、どれから片付けようかと頭を悩ませる。
桜小路がバタバタと忙しくしている頃、キッチンではカチャカチャと食器の当たる音が聞こえてくる。
彼とティータイムにしようかと棚を漁っていたメテオバイザー(aa4046hero001)は、棚の奥から開いていない紅茶缶を見つけた。
『サクラコ~、お茶にしましょう』
ティーポットとカップを二つ用意して、桜小路をリビングに呼ぶ。
カップとポットに予めお湯を入れて温めておく。温まったポットに茶葉を入れ熱湯を注いで4、5分待つ。そうすると美味しく出来上がるのだ。
いつもの紅茶と思いきや、嗅ぎなれない香りがティーポットから漂ってくる。
「あれ? いつもの紅茶じゃないんだ」
コップに紅茶が注がれると香りが濃くなる。
『クリスマスティが残ってました』
「そっか……買った直後は何かと忙しかったっけ」
そう言えば、買っていたような――バタバタしているうちにすっかり忘れていた。
『一緒に飲みたくて閉まっておいたの忘れていたのです』
その言葉は素直に嬉しい。
スパイスとオレンジオイルで香り付けした紅茶に、紅茶にいれる暖かなミルク。蜂蜜とジンジャージャムを乗せたスプーンを置いた小皿も一緒に自分に近いところに置かれる。
「こっちじゃ紅茶ばっかりになっちゃったな」
前は珈琲をよく飲んでいたのだが、いつの間にか自然と飲む回数が減った気がする。ああ、そうか。友の入れた手が美味しいからか。その上、彼女の淹れる紅茶は美味しいから。
『冬はミルクティとか、まったりしたお茶が美味しいのです』
コップを口元に近づけると、茶葉の良い香りが鼻孔をくすぐる。
「スパイスがいい香り……もう少し買ってもよかったね」
ゆったりとした時間が二人の間を流れる。窓の外を見ると、静かに雪が降っていた。
「東京も雪なんだって」
故郷を思い浮かべ笑みをこぼす。
『空は繋がっていますから……』
彼女もまたにっこり笑った。
「わぁ~、雪なのです!」
炬燵に入りぬくぬくと会話をしながら過ごしていた白金 茶々子(aa5194)は、ふと窓の外を見て雪が積もっているのに気づくのだった。
『うふふ、ほんとね』
本当は雪が積もっているのに気づいていたシェオルドレッド(aa5194hero001)だったが、彼女に合わせ初めて気づいたような反応をする。
「すごいのです! 外に出て雪を見てくるのです!」
そのまま飛びだってしまいそうになる白金をシェオルドレッドが引き留める。
『ちょっと、そのままで行くつもりなの? 風邪ひいちゃうからちゃんと暖かくして――』
彼女に言われるままに外に出れるよう服を着替える。
もこもこのコートに、マフラーをしっかり巻いて。ちっちゃな手が冷えない様に手袋をつける。
しっかり着込んで出ていく彼女をシェオルドレッドは笑顔で送り出すのであった。
「ん~しょっ……ん~しょっ」
最初は小さく、だんだん大きく。雪玉を転がしていって、気づけばタイヤぐらいの大きさになる。
「一個できたら、もう一個なのです!」
また、コロコロ転がして、次は先ほどより大きい雪玉を作るのだった。
一方その頃、シェオルドレッドは、彼女の為にクッキー作りをしていた。
『チョコ味と二種類作ろうかな』
簡単に作れるクッキーをササッと用意し、ココアを一緒に飲むためにお湯を温めポットに入れる。
時折窓から彼女の様子を窺い、一生懸命雪玉を転がす姿を見て「可愛いな」とほほ笑んでいた。
「う~ん……持ち上げられなさそうなのです……」
大きな雪玉が二つできたのはいいのだが、体の小さい白金は持ち上げることができないだろう。手伝ってもらおうと家に入ろうとしたその時、ちょうど彼女も家から出てきた。
『あら、完成したの?』
横に並ぶ二つの雪玉を見て、彼女は察しがついたのか、何も言わずに小さい方をもう片方の上にのせてくれる。そして、そのまま近くにあったバケツを載せ、葉っぱと枝で顔を作った。
「完成なのです!」
彼女と一緒に枝を使って腕を作る白金。完成したその姿を見せ満面の笑み魅せるのであった。
完成した後は、二人楽しくシェオルドレッドの作ったクッキーとココアを飲んで、温かい部屋でのんびりとした時間を楽しむのである。
■雪の降る日の過ごし方C
いつの間に降り出したのか、ふわりふわりと舞う白い雪。
人里離れた場所にある湖は、あまりにも静かで雪が音を奪ってしまったかのようだ。
そんな静かな場所で二人の少女は、じっと動かず静かな時間を過ごしていた。
『見て見て、雪が降り出してきたみたいだよ』
下を見ていたスネグラチカ(aa5177hero001)だが、雪に気づいて空を見上げた。
「本当ね……いまだ成果が出ないんだけど」
雪室 チルル(aa5177)は、自身の持っていた釣り竿を一度上げ魚がついていない針先を見る。
ワカサギ釣りをするために湖に訪れていたのだが、周りを見ると自分たち以外に片手で数えられる程度しか人の姿が見当たらない
『いつもならたくさん釣れるはずなんだけど、今日は運が無いみたいだね』
空っぽのバケツを見ると、なんだかちょっと空しく感じる。
「ま、それでも釣れるまでは頑張るけどさ」
ただひたすらに、魚が食いつくまでじっと動かず耐えるのだ。
「今日はたまの休みだからわざわざワカサギ釣りに来たのよ。この時期はまだ旬の時期ってわけじゃないんだけど、来月からはまた忙しくなりそうだし、今しかないと思ってきたんだけど……」
まだ早いとはいえど、こんなにつれないものなのか。釣り始めて数時間、未だ成果無しとは悲しいものだ。
『周りを見たらもうあたし達だけしかいないみたいだね。吹雪になる前に戻る?』
諦めるのも一つのうちだと提案するも、バッサリ断られる。
「いやよ! こうなったら何が何でもワカサギが釣れるまで動かないわ!」
あと少し、もう少しと話しているうちに、神が二人の味方をするのであった。
『まーた我儘言って……あれ? チルル? 竿が動いてない?』
「あ! ちょっと待って! 今引っ張るわ! ……よっしゃー! 釣れたー!」
持ち上げた先にはぴちぴち跳ねる魚が一匹。これで気分よく帰れるとスネグラチカは笑顔になるが。
『やったじゃん! これで気分良く帰れ――』
「よっし! このままどんどん釣っていくよ!」
終わりと思いきや、調子づいたのか相棒が帰るのを許さない。
『まだ続けるんかい!』
いつものように突っ込みつつ、諦めて彼女も釣りを続けるのであった。
「寒いなあ」なんて思いつつも無言て雪玉を丸め、ある程度の大きさになったら楕円形にして地面に二つ置く。大小ふたつの楕円形に南天を二つ付けると瞳のようだ。近くにあった葉を二枚目の上に立ててつければ、雪ウサギが現れる。
ポケットから携帯電話を取り出し、仲良く並んだウサギを取る。
「うん、綺麗に撮れた♪」
満足したように琥烏堂 晴久(aa5425)はにっこり笑った。
温かい。炬燵でぬくぬくしながらノートパソコンを開く。画面を見るその表情はお面の裏に隠れていた。
「兄様! 見て見て!」
無邪気な声に思考から意識を戻し、琥烏堂 為久(aa5425hero001)は声のする方へ視線を向ける。
彼女の手には携帯電話が握られ、その画面には白いウサギが2匹写っていた。
『可愛く出来たね』
彼の声色はとても優しい。
その反応に満足したように台所の方へ行ったかと思えば、すぐに戻ってきて「外寒かったー!」と言いながら為久の隣に強引に入り込んだ。
その際、パソコンのすぐ横に二つの湯飲みが置かれ、白い湯気が上がる。ほんのり甘い香り――甘酒か。
開いていた画面をちらりとのぞき込まれ、彼は何事もなかったかのようにさり気なくパソコンを閉じる。
「なにか調べてたんじゃないの?」
『いや、暇を潰していただけだ』
彼女の淹れてくれた甘酒を飲むため、お面を外す。綺麗で整った顔が現れた。
「――っ……」
心臓が跳ねる。
(兄様ホント顔が良い……!)
兄の素顔を間近で見てしまい、鼓動が落ち着かない。
『どうかしたか?』
柔らかい表情。鼓動が早くなる。
「な、何でもないよ……もう一杯淹れてくるねっ」
慌てて立ち上がり、バタバタと台所の方へ行く。
どうかしたのかと首をかしげるも、そのまま彼女の帰りを待つ為久。
スーハーと深呼吸し、鼓動が落ち着くまで待つ。
間近に兄の素顔。心臓に悪い。
「よしっ……」
落ち着いたところで、湯呑に一杯淹れようとして気づく。
「湯呑持ってくるの忘れてた……」
大人しく取りに戻って、湯呑に一杯注ぐ。冷めた器が再び熱を持つ。
おかわりを入れ、今度は兄の座る側面とは別の面に座る。
窓の外を見るといつの間にか雪が降りだしているのだった。
ふわりと空から落ちるシロ。
日は落ち始めたばかりで、地面には薄く雪の層ができていた。
人々は暖かい我が家へと帰っていく。長身の男と少女もまた家族の待つ家へと歩いていくのであった。
「……やむ気配は無いな」
空を見上げる御神 恭也(aa0127)。雪は次から次へと落ちてくる。
『仕方がありません。強行して帰りましょう」
不破 雫(aa0127hero002)は手を前に出し雪の量を確かめる。
このぐらいなら急いで帰ればこれ以上強くならないだろう。
「夕食はどうする? 何かリクエストがあれば考慮するが」
さくさくと足音を立てながら、早歩きで歩いていく。
『そうですね……こんな寒い日ですから鍋物なんてどうですか?』
寒い日は寒い日ならではの料理が良い。
「鍋か……湯豆腐なんかが良いか」
湯豆腐用のタレももちろん、ポン酢も捨てがたい。ピリッと紅葉卸も乙なものだ。
『何故に湯豆腐なんですか……私も那美も若いんで、今風の鍋が良いです』
……湯豆腐も若いも老いもあるのか。
「まるで、俺が若くない様な言い方だな。まぁいい、店に行ってから決めるとするか」
『では、少し急ぎましょうか。この雪で早仕舞いするかも知れませんし』
御神は自分よりも歩幅が小さいだろう彼女にあわせちょっとだけ、歩くスピードを速めるのだった。
お鍋の材料を買って店を後にし数十分、もう家の屋根が見えてきた。
近づくにつれ、家の前に大きな雪だるまが見えてくる。
「雪だるまか、伊邪那美が作ったのか?」
『この大きさだと一人では無理でしょうから、誰かと一緒に作ったのでしょうね』
だいたい不破ぐらいの大きさだろう。半分の大きさの雪玉を上に乗っけるだけとはいえ、重量はかなりのものだ。
『それにしても……良い物ですね』
電気のつく窓をみて、思ったままに呟く。
「何がだ?」
玄関の前に立ち止まり、彼女の方を振り返る。
『帰った家に誰か待っていて、一緒に食事をする事ですよ』
彼女の瞳は、御神へ向けられる。
「そうだな……確かに良い物だ」
彼の表情は相変わらず不愛想だが、どこか柔らかく感じる。
『……さて、急いで支度をしないと那美が暴れそうですから私も手伝いますよ』
「ただいま」と二人で声が聞こえてくる温かい家へ入っていくのだった。
■雪の降る日の過ごし方D
朝から降っていた雪は、日が暮れ始める前に段々と小さくなる。
夕飯の買い出しをする頃にはその雪は止んでいた。
所々には氷が張って、薄い雪のカーペットが道に敷かれている。
「足元滑りますよ。おてて、繋ぎましょう」
自分よりも背の高い彼にそっと手を差し伸べる紫 征四郎(aa0076)。
「はーい」
差し出された小さな手をぎゅっと握り返す木霊・C・リュカ(aa0068)。
握った指先がひんやりした。外にいるせいかちょっと冷たい。
紫と木霊とその英雄と、四人で近くのスーパーに向かう。
『あ! 征四郎ちゃんとガルーお兄ちゃんだよ~!』
遠くから紫と同じくらいの背の男の子が手を振りながらこちらにかけてくる。エクトル(aa4625hero001)だ。
「おや、おや、その声は……黒塚ちゃんとエクトルちゃんかな?」
「奇遇だね」と手をひらひらさせる。
「……うス」
後ろからのろのろと歩いてくる夜城 黒塚(aa4625)。寒いのだろう。声がいつにもまして小さい気がする。
「エクトル! ヤジョウも! こんにちは、ですよ!」
ぺこりとお辞儀をする紫。知り合いと会えてにこにこと嬉しそうだ。
『は、初めまして――』
二人に初めて会った凛道(aa0068hero002)は、丁寧に挨拶するのであった。
お互いにどこに行くか問えば、どちらも一緒で夕飯の買い出しに行くと言う。
『そっちも鍋かよ。だったらうちで食ってけよ、人数多い方が旨いだろ』
『いいだろ?』と三人に聞くガルー・A・A(aa0076hero001)。返事はもちろんYESだ。
そうと決まれば後は買うだけ。六人はスーパーへと向かっていった。
「何にしようねぇ、キムチ? 豆乳? 迷う~」
考えるだけでも色々出てくる。水炊きに海鮮、味噌鍋も良い。
「シンプルな水炊き風でも、カレー鍋や味噌鍋でも……人数いるから複数同時でもいいかもな。シメは飯か麺類か……食いてェものあるか?」
メインだけでも悩むのに、シメまで入れるとなかなか決まらない。
『確かにな、いくつか作るかね。カレー鍋はチーズ入れても旨いらしい』
カレーならご飯もいいし、うどんも有りだ。
味とシメはさておき、好きな具材を互いにかごの中身を確認しつつ入れていく。
「あれみたいじゃないですか、闇鍋」
それもそれで楽しそうだが、『変なもん入れんじゃねぇぞ』と釘を刺されるのであった。
「では、薄いお餅と、あとお肉! 鶏のももにく!」
ドサッと入れて、気づけばかごが一つじゃ足りなくなり、紫がかごを取ってくる。
『貴方ガタイは良いんですからきちんと荷物持ちなり働いて下さい』
元々持っていた買い物かごを凛道がガルーに押し付けるように渡し、紫が追加で持ってきたがごを受け取る。
『鶏団子とー、白菜とー、茸とー……あの、透明なつるつるしたやつも食べたい!』
バランスを考えつつ、他は何を買ったらいいか。
『りんりんは何好き? チーズ以外で』
おおよそ買うのが決まったら、後は味を何にするかだ。
『僕は……そうですね。今日は味噌が食べたいですかね』
好きと言われればチーズだが、先手を打たれて言えなくなる。かごの中身で作るとしたら、味噌が一番合いそうだ。
鍋の材料がそろい、レジへと向かう。途中ちょっと寄り道をして。
『黒塚ちゃんも飲むだろ? 雪見酒』
レジの近くの酒コーナーでちゃっかり日本酒をかごに入れる。
友人たちとお鍋を囲んで、窓から眺める雪景色。それに、美味しいつまみと日本酒が合わされば、なかなかに乙なものじゃないか。
「ふふー、黒塚ちゃんもいける口? いっちゃう? いっちゃう?」
追加で日本酒にビールをどさどさ入れる木霊。
「悪くねェ、乗った」
一緒に飲もうと誘う二人に、夜城は口の端で笑みをこぼしたのだった。
スーパーを後にした一行は、途中でデザートも買っていく。
「征四郎はこれが食べたいです! あ、でも……こっちも――」
ケーキ屋さんでショーケースを目の前に、美味しそうな甘いものに色々目移りしそうになる。
定番の苺ショートに、チョコレート。チーズケーキ、タルトも魅力的だ。
『色々あって迷っちゃうね~』
むむっと眉間にしわが寄るエクトル。
『何種類買っていきましょうか。余ってしまったら明日にでも食べればいいのです』
凛道の提案に紫とエクトルは元気よく頷いた。
「少し買いすぎたね」なんて会話をしながらゆっくり家へと帰る。
いつの間にか止んでいた雪は、ひとつ、またひとつと降り出していた。
「また降ってきちゃいましたね」
紫の小さな手に降る雪は、すうっと手のひらに消えてゆく。
『明日になったら雪だるまがいっぱい作れそうだよね~』
積もったら一緒に雪だるまを作ろうと、エクトルは紫に微笑みかける。
ふわりふわり――……
少しの間、会話が途切れ。今まで聞こえていた町の生活音が一層大きくなった気がした。
はぁと息を吐くと、白い息がふわっと上がる。その後はゆっくりと広がっていき、最後は冬の空気に溶けていった。
学生もサラリーマンも、温かい家へと帰って行く。行き交う人々とすれ違いざま、微かにいい香りが鼻をかすめた。
学生たちが友人と肉まんを食べながら歩いていたのだ。
「お腹すいたねぇ」
雪が強くなる前に早く帰ろうと木霊が言う。
『えへ、お外で食べるのもおいしーね♪』
いつの間にか肉まんを頬張るエクトル。
すぐ近くにある中華まん屋の店先で、にこにこと嬉しそうに食べていた。
「征四郎も!」
美味しそうに食べる彼につられて、紫も便乗しカレーまんを購入。
『買い食いはー……まぁいいか、偶には』
夕飯前だと言いかけるも、ガルーも一緒に肉まんを買うのであった。
『……やはり、チーズが一番ですね』
ちゃっかりチーズまんを買ってる凛道。
「大分雪も降ってきやがったぜ。日が暮れねェ内に行くぞ」
空から落ちる白い雪。時間がたつにつれ、段々と量を増していく。
寒いから早く帰ろうか。
六人は足早にこの場を後にした。
■雪の降る地の過ごし方E
白い台地、アクアマリン色の塊。風が吹くと、輝く白い小さな結晶が舞う。
そんな場所で、ちょこちょこと黒い生き物――ペンギンが群れを作って歩いている。
「ペンギン……!」
いつもはきりっとしている賢木 守凪(aa2548)だったが、初めて見るペンギンの姿に素直に目を輝かせていた。
追いかけたりするわけでもなく、歩いているペンギンをただ見守る。
「可愛いね♪」
そんな賢木に笹山平介(aa0342)は微笑ましそうににこにこしていた。
「あぁ、可愛いな……!」
彼の言葉にうんうん頷きながらキョロキョロとする。
近くにいるペンギンは、首のところが黄色くて大きい――有名な皇帝ペンギンだ。
観光客に慣れているのか、逃げるどころか近づいてくる。
「せっかく南極に来たのだから、写真、撮ろうか♪」
賢木が戯れているす様子を写真に残す。
「アザラシもいるぞ!」
ペンギンの群れより少し離れた位置に、数匹のアザラシが氷の上で寝そべっていた。
「ここには他にも――」
ペンギンは全部で三種類。アザラシはいて、シロクマはいないなど、事前に調べてきた豆知識を披露する。
「平介は物知りだな!」
何を聞いても――どんな会話も、一緒にいられるだけで本当に嬉しい。
できれば一緒に写真を撮りたい、それは心の奥にそっとしまって。
「この時期オーロラが見えるかもしれないね♪」
夕暮れまではあとちょっと。輝く虹色のカーテンは果たして最後に見れるのだろうか。
「あぁ、見えたらいいな……」
また楽しみが一つ増えた。
相棒のいつもの姿はいったい何処にと、呆れたように見るイコイ(aa2548hero002)。
二人の事は気になるけれど、自分自身も楽しみたい。
そんな彼女の前をどんどん進んでいくゼム ロバート(aa0342hero002)は、少し進んでは振り返るをくれ返しているのであった。
『……そこ、滑るぞ……』
心配してくれる彼に可愛いなと内心思う。
『そう心配するのなら手でも繋いだらどうです?』
にこりと微笑んで右手を差し出すが、見える範囲に友人や知人がいるからなのか、彼はそのまま歩いて行ってしまった。
『……意気地なし』
小さく溜息をついて、今度は自分から手をつなぐ。
彼の表情は変わらなかったが、振り払われることもなかった。
『……こうしていると温かいですねぇ』
繋いだ部分の温かさが心地よくて安心する。彼女は笑みをこぼすのだった。
辺りが真っ暗になると空には輝く満天の星。
キャンプ施設で暖を取りつつ、カーテンがかかるその時を待つ。
『外に出て見てみませんか?』
『見て来い』
オーロラを見に行こうと誘うもいつものように断られる。
『……一人より二人だと思いませんか?』
ちょっとムッとしたように拒まれようと腕を引っ張る――だって一人なんて寂しいじゃない。
神様が皆を祝福するように、空はキラキラ輝いていて。皆の願いを聞くように、空にオーロラが靡いていた。
「守凪、ここから見えるかな……?」
窓から外を眺める二人。何かを考える様に笹山は彼の横顔を見る。
「……綺麗だ」
満足そうな表情に安心した笑みを浮かべる。
感動が言葉にならないままに、どんどん時間は過ぎていく。空の光に心奪われ、手に持っていたココアはいつの間にか熱が逃げていた。
そんなことも気づかずに四人は時間の許されるまで、穏やかな時間を楽しむのである。
楽しい時間が終わりを迎える前に、笹山は相棒にこっそり賢木と写真を頼んで置いた。彼の為にアルバムを作ったら喜んで貰えるだろうかと思いつつ。
冬の景色を堪能し、最後は皆で記念撮影。
『……お前となら……悪くねぇ』
ゼムの言葉は彼女にだけ。他の誰にも聞こえぬように。
帰るときに案内してくれた知人にお礼を言って、この日の時間は思い出になるのであった。
『……ん、やっぱり寒いねぇ』
ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は、そわそわした様子でふさふさの長い尻尾を右に左に揺らしていた。
「ま、夏でも基本0℃以下って話だしな……ほれ、もっと厚着しろ」
彼女の体を気遣って、麻生 遊夜(aa0452)は持っていたふわふわのブランケットを首からかける。
『……やーん』
楽しそう、そして、されるがままに。首周りをもこもこにされる。
家の子供たちに見せるために、カメラを回しつつ冬の景色を映像に残す。
『……ん、ペンギン……ペンちゃん、こっちおーいで』
よちよち歩くペンギンにクスクスと笑みを浮かべる。手招きをしてこちらに招くと、人に慣れているのか近寄ってくる。
「流石コウテイと呼ばれるだけはある、大きいな」
予想以上の大きさに、ごくりと小さく息をのむ。
立派なお腹を撫でまわしたい衝動に駆られるが、やりすぎてしまうと怒られてしまうだろう。
ペンギンたちとの交流を十分に楽しんだ後は、近場をフラフラ見て回る。
ダウジングロッド持ってウキウキしてるユフォアリーヤ。ダウンジングに反応するだろうか。
楽しそうな彼女を眺めながら、麻生は体調管理に気を遣いランタンストーブやお茶で暖を取れるようにしておく。
折角楽しい時間を過ごしているのに、寒さで体調を崩したら元も子もない。
「当てもなくうろうろするのもたまにはいいもんだ」
彼の言葉に、ユフォアリーヤは「……ん」とほほ笑む。
二人の間をゆったりとした時間が流れるのだった。
しばらくふらふら歩いていたら、ふと小さな穴がある事に気が付く。
恐らくアザラシが顔を出す時の穴だろう。
『……ん、むむ……この穴、何かある?』
落ちないように気を遣いつつ、二人で穴を覗き込む。
ひょっこりアザラシとご対面――とはいかず、特に何もないように思える。
何もいないかと思いきや、よくよく見るとちっちゃい生き物が。
「こいつはクリオネか?」
厚い氷の下にいるはずの小さな天使と会えるとは驚いた。
小さな生き物がぷかぷかしているのを見ると何だか心がほっこりする。
可愛い天使にバイバイしてた後、二人はキャンプ場へと戻っていった。
■雪の降る地の過ごし方F
白い台地はキラキラ輝き、ちょっと強い風が吹いたら大地の上を粉雪が舞う。
真っ白な世界は超絶絶景だが、どれだけ着込んでも防ぎきれない極寒だ。
そんな寒さに負けることなく楽しむ大の大人たち。
「おりゃ!」
さらっさらの白い雪を丸く固めて魂にする。
弥刀 一二三(aa1048)が放った一撃は見事頭に命中した。
「冷たっ……!」
軽く固めた雪玉は、三ッ也 槻右(aa1163)頭に当たって粉砕される。小さなかけらが顔に当たってちょっと冷たい。
「ははは、かんにんな」
そんなに強くあてた訳ではないが、頭に当たって謝った。
「大丈夫だよ!」
冷たい、でも楽しいと、彼は無邪気な笑顔を見せる。
次々と向かってくる雪玉をひょいひょいッと避けていく。
――ベシャッ
つるっといった勢いで、三ッ也は盛大にこけてしまう。
「い、たた……」
地面に転がる彼を見て、にやりと笑う弥刀であった。何かを思いついたようで転んだ彼をひょいっと抱き上げる。
「槻右は夢中なると足元疎かになってまうな、ま、そこがかわええ所やけど」
抱き上げたままさくさくと、雪の上を歩いて行った。
三ッ也と弥刀が雪合戦を楽しんでいるとき、荒木 拓海(aa1049)はこの地に住み慣れた友人とかまくら作りに勤しんでいた。
入り口狭く、壁は厚く、立派なかまくらが完成する。
中で暖を取ってなくとも、風がないだけで温かく感じる。
「随分、立派なものができたもんやな」
かまくらの中を温めようと準備しているところで、二人が帰ってくる。
「ど、どうしたんだ!?」
弥刀に抱きかかえられる愛しい人の姿を見て、荒木はわたわたと慌てだす。
「夢中になって転んでしもうたんや。はしゃいで転ぶ姿は何とも可愛かったで……」
弥刀はわざとらしくイチャイチャする。抱きかかえられているのが恥ずかしいのか、照れる三ッ也と彼にちょっとした嫉妬心が生まれた。
焦って彼から三ッ也を奪取し、怪我がないか確認をする。「大丈夫だよ」とほほ笑む三ッ也に安心したように荒木も笑う。
そんな二人のやり取りを、楽しそうににやにやしながら弥刀が見ていた。
一方その頃彼らの英雄は、ペンギンたちと戯れる。
『可愛い~絵になるわ』
メリッサ インガルズ(aa1049hero001)は、砕けた笑みを浮かべる。彼女の視線はペンギンに話しかける隠鬼 千(aa1163hero002)に注がれていた。
『ああ、可愛いな……』
キリル ブラックモア(aa1048hero001)は、彼女の言葉に同意する。しかし彼女の視線は、ペンギンにのみ向けられていた。
隣にしゃがみ、予想よりも大きいペンギンに内心驚く。
『ペンギンさん家に来ませんか?』
隠鬼はペンギンに話しかけるが、もちろん返事は帰ってこない。彼らはただ静かに瞬きをするだけで、しばしの沈黙がその場を流れる。
『……私が浅はかでした。ここがお家で、守る場所なんですね』
彼らはただ言葉を理解してないだけだが、隠鬼は都合の良いように理解し静かに頷く。
『まさに皇帝。ペンギンとは気高き方なのですね』
そんな彼女のやり取りにメリッサの笑みは絶えない。
しばしの間ペンギンたちと戯れ、女子だけのまったりした時間を楽しむ。
満足した彼女たちは、相棒たちの待つかまくらへと帰っていくのであった。
女子と男子が合流した後、改めてこの地を観光する。
真っ白な大地、海に浮かぶアクアマリン色の氷の塊、三種のペンギンにアザラシもいた。
皆でペンギンたちを撮影したり、一緒に写ったり、ちょっと変わったトリック写真も撮るのであった。
「あああ……は、はやく……」
遠近法を利用して、寝そべった背にペンギンを乗せたようにするトリック撮影。
地面にうつ伏せに寝る必要があるのだが、ひんやり冷気がかなり寒い。
「ん~、うまく撮れへんなぁ」
寒さに我慢する彼にわざと時間を掛けて取る。「早く撮ってよ」と言う彼の反応は何とも面白く楽しいものだ。
掌の上にペンギンと女性たちを乗せた写真、ペンギンと手をつないでる写真など、様々なトリック写真を思い出に残す。
「……こんだけペンギンおったら……一匹おらんでもバレんよな……」
よちよち歩く可愛い生き物に、弥刀は心を奪われる。
『モカが可哀想であろう!』
真っ先に言いそうなのは彼女だろう。それが逆に止められるなんて――もちろん本気で持って帰ろうなどとは思っていないが。
我が家で待つサバトラの子猫を思い出し、連れて帰りたい気持ちを抑えるキリルに少し驚く弥刀であった。
観光後は腹ごしらえ。ぽかぽかに温まったかまくら内で、女子三人が用意したチョコフォンデュを堪能する。
「あ~ん」
三ッ也は苺にチョコをたっぷりつけて、感謝の意を込め弥刀に差し出す。
大好きな彼には、ちょっぴり嬉恥ずかし照れつつ差し出す。
「規佑を助けてくれた礼だ」
彼に便乗し弥刀にあーんと差し出す荒木。目の前でイチャイチャされた仕返しに口から少し位置をずらして。
「あ、やりよったな」
頬にチョコを付けられるも楽しそうに笑う。
『男っていつまでも子供みたいね』
クスクスと笑うメリッサに。
『うむ。チョコがもったいない』
甘いもの大好きなキリルは頷く。
『男子はほっといて私たちが全部食べてしまいましょう』
チョコをちょこっと付け合って、はしゃぐ男子を横目に女子は女子トークを楽しみつつ。
甘く温かい時間は終わりへと近づいていく。
ふと思い出したように携帯を取り出し、文字を打ち込み始める。
「楽しくやってるぞ」
ペンギンたちと遊ぶ写真や、チョコフォンデュを楽しむ写真と一緒に友人たちにメッセージを送る。
返事はすぐに帰ってきて、彼らのメールにも写真が送付されていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰る時間になってしまう。
この地に来たという記念にきぼうさを抱いた会長像を作成して、最後の最後に記念撮影。
名残惜しさを胸に六人は我が家へと帰って行った。
見慣れた景色に見慣れぬ人々。
氷鏡 六花(aa4969)は冬の大地を満喫して貰いたいと、知人を我が家のある地へと招待した。
「……ん。楽しそう」
雪やペンギンに楽しそうにはしゃいでいる友人を見て彼女は嬉しそうにする。
『招待して良かったね、六花』
仲間たちと楽しそうにする彼女を見て、アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)も嬉しそうに穏やかな笑みを見せるのだった。
希望する人にはペンギン達に紹介したり、氷山や氷海見て貰ったりと南極観光案内をする。
「……ん。今日は……日本から……お友達、連れて……来たの」
ペンギンたちとお話して、慣れた様子で氷海に飛び込み一緒に泳いで魚を獲って来たり。
寒がる友人たちは、寒さに強い彼女に対して尊敬のまなざしを向けていた。
「……ん。入り口に……雪だるま……置くと、可愛い……かも」
友人のかまくら作りをお手伝いし、お礼にチョコフォンデュのご招待。
『ふーふー』
猫舌なのでアルヴィナが冷たいと息で冷ましてくれる。
甘くて美味しいチョコレート。特別なチョコを使っているわけではないのに、今日は一段と美味しく感じた。
「……ん。美味しい……」
友人たちとの楽しい時間は本当にあっという間だ。
この地に遊びに来てくれた皆には最大限のおもてなし。
お世話になった大恩人には、色々体験して喜んで貰おうとペンギンの餌やりに誘ってみる。
「……これを……あげて……うん、そう」
ペンギンの餌やりはなかなかできない貴重な体験だ。
見よう見まねで餌をやる友人たちの様子を見て、氷鏡は満足そうに頷くのであった。
もともと人が少ない地だが、友人たちが帰った後だとなんだか一層寂しく思える。
先ほどまで騒がしかった場に響くのは、ペンギンたちの鳴き声と白い粉雪の舞う音だけだ。
「……ちょっと……寂しい」
あからさまにテンションの下がる。
『また誘いましょうよ。今度は別の友人たちも』
ね、とほほ笑むアルヴィナに、彼女は静かに頷いた。
次は何して遊ぼうか。そう考えると、寂しさが紛れる気がした。
■雪を使った遊び方G
「今から散歩に行こう!」
皆月 若葉(aa0778)が唐突に散歩に行こうと彼を誘う。
『……は?』
ラドシアス(aa0778hero001)は彼の誘いに、なんでわざわざ雪の降る中と言いたげだ。
「折角の雪だし、楽しまないと損でしょ?」
明らかに嫌そうな顔をする。
「こいつ等も行きたいって」
彼の言葉に足下に視線を向けると、白、黒灰ツートン、茶白ツートンのわんこ三匹が尻尾を振って見上げていた。「遊ぼう」と声が聞こえてきそうだ。
『……』
キラキラした瞳でせがまれて、拒める者はいるだろうか。
『……はぁ』
半場諦めで準備をし、外へと出かけていくのであった。
雪の積もった道路を無邪気に歩く三匹に皆月はニコニコと楽しそうだ。
途中ちょっと寄り道し、本部の広場で遊びまわる。
「次はあっちだ!」
あっちへいったり、こっちへいったり雪の上を走り回る。
相変わらずのラドシアスはと言うと、自分は動かずボールを投げる。
『……よし』
ボールを取ってきた犬にやさしく撫でて褒めてやる。
――ぼすっ……
背中に冷たい塊が当てられる。
「ラドも動かないと」
笑顔で雪玉を投げてくる皆月に呆れた表情を見せる。
『……行け』
何をやっても自分は動かず、犬3匹連携し皆月追走。
「わ、ちょ、おまえら早いっ!」
追いかけてくる三匹に彼はすごく楽しそうだ。
『……隙あり』
隙を突かれた一撃は見事にヒットし背中に当たる。
ラドシアスの表情はいつもと変わらなかったが、どこか楽しそうである。
雪の中、庭先で模擬刀を振る少年が一人。
「もっと、早く。違う! これじゃ、届かない……!」
魂置 薙(aa1688)は一心不乱に振り続ける。
こうじゃない、こうじゃないのに。イメージ通りに動かない体がもどかしい。
『薙、出掛けるぞ』
心配になったエル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)は、彼を気分転換に誘う。
こうでもしないと倒れるまで戦闘訓練をしていそうだったからだ。
「……僕は、いい」
『何時間続けるつもりじゃ。少し休め』
最初は頑なに休憩を拒む彼だったが、エルに穏やかに諭され一緒に出掛けることした。
彼女に言われるままについていくと、到着したのはH.O.P.E.本部の見知った彼の元だった。
本部の出入り口のすぐ前で雪だるまを作っていたオペレーターの剣太。並ぶ雪だるまの数からするに一体何時間外にいるのだろう。
『剣太! もふらせてもらっても良いか!』
挨拶するなり何事だと、彼はびっくりしていた。
「な、なんじゃ!? み、耳を触りたいのか」
驚きつつも触らせてくれる。
「エルルが急に、ごめんね」
魂置は遠慮なしに触るエルの代わりに剣太に謝罪する。
「いやいや、謝ることではないぞ? 良ければ薙ぎも触ると良い」
謝る必要はないと、その上さわってもいいと言ってくれる彼に、魂置も遠慮がちに手を伸ばす。
「失礼、します……」
そっとさわると、耳はぴくっと反応する。ふわふわと、そしてさらさらとした毛並みは、シルクのような肌触り。ほんのり暖かくて、いつまでも触ってられそうだ。
エルは念願だったのか、嬉し気に思いっきり彼の耳を堪能した。
『よし、癒された。帰るぞ!』
触り心地に満足できたのか、エルは満面の笑みを見せる。
「え、もう?!」
思いのほか触り心地が良かったのか、名残惜しそうに手を離した。
「あれ? 薙たちも遊びに来てたんだね」
魂置達が帰ろうとしたその時、ちょうど皆月達も合流する。
「うん……エルに誘われて遊びに来たんだ」
こんにちはと挨拶をする。
「すごい数作ったね」
皆月の反応に、剣太は胸を張る。
「そうじゃろう? 大体40ぐらいかの」
どやっとした顔をする。
『ところで……仕事はいいのか?』
ラドシアスツッコミには、口笛を吹いて誤魔化すのだった。
着信音が鳴ったかと思うと、三人の携帯電話が同時に震える。
なんだろうと見てみれば、友人から写真とメッセージが送られてきていた。
ペンギンや遊んでいる姿の写真を見て、胸がほっこり暖かくなる。
「こっちも楽しんでるよ……っと」
五人と三匹の写真と、並んだ雪だるまの写真を撮って、彼も返信するのであった。
『今日は南極観光も企画されておったそうだ』
帰り道の話題は先ほどのメールについて。
「いつか行ってみたい、ね」
話しながら雪の積もった道を歩く。先程一緒にいた友人と行けたらいいなと考えて。
(今は、この日常を――)
彼は何かを思う様に、雪降る空を見上げた。
静かに降る雪の中。傘をさして歩いて行く。
「なんであんな薄着で外に出られるんだよ」
薄着の上、足を出している姿を見るたび、寒そうだなと思ってしまう。
冷暖房完備の病室育ちのGーYA(aa2289)の体は、寒さに小さく震えていた。
コンビニに行った帰り道にある小さな公園に寄り道する。
傘を前に傾けると、積もった雪が落ちてきた。
透明な傘越しにふと上を見上げて――……
***
まほらま(aa2289hero001)は本部で働く知人のところで、相棒の帰りを待っていた。
仕事を放棄し遊んでいる知人に便乗し雪だるまを一緒に作り時間をつぶす。
彼が言ったコンビニはここからさほど遠くないのに、待てども待てども帰ってく様子はない。
『ちょっと迎えに行ってくるわねぇ』
心配になった彼女は、彼を追ってコンビニへ――
道の途中にある公園の真ん中。上半身を傘で覆い雪に埋もれているジーヤを見つけた。
『……っ!』
心臓が凍るような感覚が体を走る。無音の白い世界が彼を消してしまうんじゃないかという不安に包まれた。
慌てて駆け寄り傘の雪を払う。驚いたように振り向く彼は自分だと気が付き笑顔を向ける。
「真上から落ちてくる雪が面白くてさ、ほらアニメでも似たシーンあったろ?」
呑気にそんなことを言う彼に、なんだか胸が締め付けられそうになる。
『あれは雪じゃないでしょぉ!? こんなに濡れてもう!』
お願いだから消さないで。雪が彼を消すわけないのに、そんなふうに願ってしまった。
***
(病室の天井の向こうにはこんな風景があったんだな、空に昇るようでちょっと感動だ……)
そんなことを考えていたら、突然白から青に変わった空に驚いて――覗き込む彼女が可愛くてつい微笑んでしまったけど、彼女の表情がどこか泣きそうに見えて戸惑ってしまう。
彼女に連れられ本部に戻り、剣太に温かい飲み物を貰った。
濡れた服をストーブで乾かす間、彼女にちょっとした説教を受ける。なんだかそれが心地よかった。
■雪を使った遊び方H
朝から降り続けていた雪は、だんだんと層を重ねていった。
そんな雪が降り続く中、本部で働く剣太の元へ差し入れを持っていく。
こんな寒い日は、温かいものが良いだろう。袋の中には、H.O.P.E.まんに、甘いもの、ポーレイ茶が入っていた。
「あら、雪だるまがたくさん並んで、可愛いわね」
新城 霰(aa4954)は、何十個も並ぶ雪だるまを見てクスっと笑みを浮かべた。
「おお、こんにちはじゃ! 霰に鴇、よく来てくれたの」
彼はにこにことお出迎え――いや、仕事を放棄し遊んでいた。いったいどれだけ外にいたのか、鼻の上がほんのり赤い。
『一緒に休憩しよー!』
都呂々 鴇(aa4954hero001)は、そんな彼に袋に入った差し入れを渡した。
暖房の聞いた控室で、会話を楽しみつつ一息入れる。
少し休憩したところで、雪だるま作成に新城と都呂々も加わるのだった。
「どのくらい作ろうかしらね」
新城は小さい雪だるまを作り、都呂々は大きい雪だるまを。
時間がたつほど雪だるまの数は増えていった。
折角の休日だというのに、やることもなく本部へふらり。
ミツルギ サヤ(aa4381hero001)は、至る所に並ぶ雪だるまを見て眼を細める。
寒さが苦手なニノマエ(aa4381)は、早く本部内へ入ろうと、ただ震える。
『ニノマエさんとか!』
急に声を掛けられたかと思えば、雪だるまに勤しむ都呂々であった。
「……は? いきなり振られて何かと思えば、鴇かよ」
何をしていたかと問えば、遊び呆ける剣太と共に、雪だるまを作っていたという。
大きいかまくらと滑り台を作りたいらしく、一緒に作れる人を探していた時、タイミングよく自分たちが通ったらしい。
頼まれたからには手伝うかと、しぶしぶかまくら作りに参戦する。
寒さが苦手なニノマエは共鳴しようとミツルギに言う。
『私は茶を飲んで温まっているぞ』
「共鳴無しかよ!」
『どうしても寒かったら私を頼ってもいいぞ』
頼るのは嫌だと共鳴を断念。寒さに耐えつつガツガツとかまくらを掘り、雪の造形を手伝った。
『そうだ、雪だるまに顔をつけてやろう。愛嬌が出るぞ』
ミツルギの思い付きで始めた雪だるまの顔付けにより、ダルマの顔に表情が付く。
凝り始めるときりがないうえ数が数だけ、大雑把に。小石に枯葉、木の実を使って顔を作って、枝を拾って腕を付けた。
「私はお茶サービス係になっておくわね。さ、どうぞ」
時折温かいお茶で暖を取りつつ最後は立派な滑り台ができていた。
かまくらに、滑り台、沢山の雪だるまが並ぶ景色はちょっとした雪まつりにでも来てるみたいだ。
『滑り台は、段ボールをお尻にしくと簡単なソリ代わりになるよっ♪』
キラキラした目で誘われて、一瞬滑ろうか心が揺らいだ。
「……かなり体力を消耗したぜ」
作った後は休憩入れる。
『たまの雪、このように楽しむのもありだ。うむ、充実した!』
ミツルギは顔のついた雪だるまを眺め、満足そうに頷いた。
日はいつの間にか薄暗くなり、夕飯を食べるにはいい時間。
剣太の家にも雪だるまが並んでいると聞き、四人は遊びに行くことになった。
ニノマエがヤギ鍋を持ってきてくれるということで、一緒に鍋を囲むことにした。
「へへへ……ついつい遊びすぎたの」
剣太は楽しかったと笑っている。
「仕事は大丈夫だったの?」
新城の問いに、目を泳がしつつ「大丈夫」だと答えるのだった。
『いっぱい雪だるま作れたね!』
滑り台が楽しかったと、都呂々は満足そうだ。
「良い暇つぶしにはなったぜ」
暇つぶしに本部に行ったら、雪で遊ぶことになるとは思わなかった。
その上こうして遊びに行くのは流石に想定外である。
『……たまには良いな』
五人は剣太に案内されつつ、雪の中彼の家へと歩いて行った。
「わ、雪すっごい積もってるよ! お散歩行こう!!」
八角 日和(aa5378)は瞳を輝かす。
日課である散歩に行こうと、窓の外を見れば雪が積もっていたからだ。
『……まあ、雪の上を走るのはいい運動になる』
散歩は鍛錬と言うウォセ(aa5378hero001)は頷く。
決まれば早速と言った様子で飛び出す八角に、満更でもない様子でウォセもついていくのだった。
雪でテンションが上がった彼女はいつも通るルートに加え寄り道をする。本部の前を通りかかると、入り口にたくさんの雪だるまと、かまくらや雪の滑り台が作られていた。
「うわ、なにこれ多っ!」
あまりの量に、八角は驚きを隠せない。
『おれは知っているぞ。これは地蔵という物だろう、テレビで見た』
同じ形のものがたくさん並ぶ姿は、確かに地蔵が並んでいるようだ。
「いやお地蔵さんではないかな……雪だるまっていうんだよ」
ウォセの言葉にさらりと突っ込む。
「雪だるま、沢山並んでるけどこれ増やしちゃダメかな?」
たくさん並ぶ雪だるまを見て、釣りたくなる衝動に駆られる。
ウォセは作ったことないだろうし、折角雪が積もっているんだ――作らずにはいられない。
「こうやって転がすと大きくなるから、体と頭を作るんだ」
最初は小さい雪玉を、コロコロ転がしていく。
『……なかなか力を使うな』
八角の説明通りに、彼もコロコロ転がしていく。
「真っ直ぐ転がすだけじゃ丸くならないから、たまに向きを変えたりするといいよ」
同じ向きだけだと楕円形になってしまうからだ。
『ふむ……』
ちょっとずつ転がして、綺麗な丸になるように作っていく。
(……あれ、ウォセ結構夢中になってる)
黙々と雪だるまを作る彼に、八角は笑みを浮かべるのだった。
二つの雪だるまが作られる頃には、手がすっかり冷え切っている。
(手袋でも買いに行こうかな……)
冷たくなった手を温めるため、二人は手袋屋さんへと歩いていった。
本部の前にあった雪だるま。最初は一つから始まって、あたりがすっかり暗くなるころには百個を超えていたのだった。
大きさはさまざまな雪だるま――犬耳のついた三つの雪だるまに、顔のついた雪だるま、国籍違いの雪だるま、ペンギンの形の雪だるま。
形は違えど家族のように、大小形の違うだるまは寄り添いあっていたのだった。
家へと帰った者たちは、温かい時間を楽しんで――
寒い季節を乗り切れば、温かい春はすぐそこなのだ。
みんなの思い出もっと見る
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
---|