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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/02/09 16:53:42 -
チョコっとじゃ物足りないです!
最終発言2018/02/10 18:37:17
オープニング
●プシュケー
「まったく、だからあれほど慎重に扱えと……」
テントの中でマデリーネ = ビョルリングが呆れた声で部下達に言う。
「しかし、まだ未知のオーパーツなのですからどーすれば良いのか分かりませんよ」
部下の一人がテントの外を指す。
「だから、こそ……なのだろう? どうして、危険なモノかもしれない位は考えないのか?」
「そ、そんな風にお考えなのでしたらエージェントの護衛でも!」
と、部下が声を荒げると、マデリーネは眉間にシワを寄せた。
「愚神や従魔、もしくはヴィランが狙っているなら別だ。しかし、遺跡の簡単な調査では発動条件さえ無ければ無害だ。誰が、現場にチョコなんぞを持ち込んだ?」
「……その、仕事に行く前に娘から貰いまして……」
ちょっと嬉しそうな部下は、初めてヴァレンタインにチョコを貰った少年の様に言う。
「なら、お前が倒せ」
「無理ッ! だって! チョコ1つで、なんで! あぁなったのか分かりませんよ!」
マデリーネが外を指すと笑顔で言うが、部下は食べれなかった娘からチョコが入っていた箱を抱き締める。
「……支部長には報告させてもらう。エージェントを寄越す様に言うから、依頼の費用はお前の給料から少し引かせてもらおう」
不満そうにマデリーネがそう言うと、部下は“マデリーネ様は有能だけど鬼だ!”なんて叫びながらテントの隅で泣き寝入りをする。
「やれやれ、まさかチョコが巨大なスライムになるとは……」
テントの隙間から見える茶色く、丸いぷるるんとした物体にマデリーネは視線を向けた。
「もしもし、科学のオーパーツ研究課の課長
マデリーネ = ビョルリング。オーパーツの力でスライムが生成された。エージェントの要請を求む、それと……」
●甘いぷるるん
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。今回の依頼は化学科のオーパーツ研究課からです」
ティリア・マーティスがアナタ達に言う。
「オーパーツの力によって、カカオがチョコにされて巨大なスライムになったそうです。それと、何故かそのオーパーツがあった遺跡の回りだけ……カカオの木が沢山生えていたそうです。生えるハズの無い気候と土地で……調査は引き続き、オーパーツ研究課が受け持ちますので皆さんはスライム退治をお願いします。帰ってきたらチョコフォンデュでもしましょう! 持ち込みしても良いですし、ついでにチョコ作っても良いです。それでは皆さん、討伐に向かいましょう」
と、笑顔でティリアは言った。
解説
【目標】
・チョコスライムを討伐
・チョコフォンデュを食べる
・チョコを作る
【場所】
とある森林地帯にある遺跡(昼)
【敵】
従魔『巨大チョコスライム』1体
デグリオ級
オーパーツを体の中心に直径5m、高さ5mの球体のチョコで出来たスライム
動きは鈍く、物理攻撃は柔らかいので軽減されます。
触手の様なモノを生やし、槍の様に突いたり、モノを掴んだり出来ます。
ただ、誰かの手によって改良されているのか、口から吐き出されるチョコに触れると危険となっております。
従魔『小さいチョコスライム』
ミーレス級
30cm程のチョコで出来たスライム、数は不明で『巨大チョコスライム』から生成させれている。
『巨大チョコスライム』と同様の能力
違うのは『小さな個体なので素早い』という部分だけです。
その他?
マデリーネの調べで、遺跡周辺に金の髪に白いワンピースを着た少女の姿を見た、との情報が入っております。
【NPC】
皆さんの援護をしています。
【PL情報】
愚神『向日葵』
太陽の様な瞳、金の短髪、白いワンピースを着た少女
『チョコスライム』は彼女の手によって強化され、従魔化した。
独自の調査等でPCが会える可能性はありますが、『椿姫』の件で全く友好的ではありません。
発見したPCが情報無しで『戦う』か『逃げる』どちらかの選択になります。
【オーパーツ】
形状:透明な台座に浮いている雫石
名前:プシュケー
能力:供えたモノに仮初めの命を与える(掌サイズのモノに一時間だけ)
発動条件:台座に甘いモノを供える
リプレイ
●いざ、現地へ!
まだ寒い森林をエージェント達は歩いていた。
「ふむ、またオーパーツの暴走ですか……困ったものです」
構築の魔女(aa0281hero001)が小さく息を吐く。
しかし、彼女はやはり何者かがしたのではないか? と、疑念を抱く。
「そろそろ、今年もバレンタインの時期ですが……」
赤一色に染まったお店を思い浮かべながら月鏡 由利菜(aa0873)は言った。
『……こういったイベントの時期は、浮き足立つ人間達のライヴスを狙う従魔や愚神の動きも水面下で活発化する。大事に至らぬよう、我々が人々を守らねばなるまい』
と、この時期に舞い込む依頼を思い出しながらリーヴスラシル(aa0873hero001)は、凛とした声で言った。
「チョコレートが」
『スライムに』
「『………へぇ』」
アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)は互いに顔を見合せながら声をハモらせた。
「何かアイテム拾えないかな~」
気分はゲームの主人公な葛城 巴(aa4976)は、最初の森のダンジョンを探索しているかの様に辺りを見回す。
『俺はチョコが食えればそれでいい』
その隣でレオン(aa4976hero001)が呟く。
「そーいや、おまえはこれが初めての依頼だったな。海峰。まぁ、頑張れや」
と、第2英雄の肩に手を置きながら鐘田 将太郎(aa5148)は笑顔で言う。
『できるだけのことはする』
布で目元を覆っている海峰(aa5148hero002)は抑揚の無い声で答えた。
「あら~大きなスライムですよー」
花邑 咲(aa2346)が茶色いぷるーんとしたスライムを見上げた。
『サキ、あまり近付き過ぎないで下さい』
その隣でブラッドリー・クォーツ(aa2346hero001)が心配そうに咲を見つめた。
もう、某スライムが有名なゲーム気分の巴は、エンカウントの文字を脳内で浮かべながら共鳴する。
『やっつけて全部食ってやる……』
口元を吊り上げるとレオンは、目の前にそびえ立つ敵を見上げた。
『可能な限りオーパーツは壊さないようにしたいですが……』
構築の魔女は、巨大スライムの体内の中央に浮かぶ物体を見つめた。
「可能であれば、壊さない方向でお願いする。あのオーパーツはまだ何も分かってないんだ」
マデリーネは、スライムの重さによってぺしゃんこになった遺跡と、その上にどーんと居座る巨大スライムを見据えた。
『でしたら、遺跡を気にせずにオーパーツを破壊しない程度にって事でしょうか?』
「そう……私は何も出来ない身だ。修復可能な範囲なら、目を瞑る」
構築の魔女の言葉にマデリーネは背を向けながら答える。
そんな己の英雄を見て辺是 落児(aa0281)は、少し戸惑いの表情で見つめた。
“本当に何も出来ない”のであれば、と心の中で呟きながら構築の魔女は共鳴した。
『実戦では久しぶりの魔力強化装備だ。ユリナ、武器はこの槍を』
と、リーヴスラシルが幻想蝶から聖槍「エヴァンジェリン」を取り出す。
「エヴァンジェリン……槍なら扱い慣れています、問題ありません」
白銀に輝く槍を手にした由利菜は、力強く頷きながら共鳴すると巨大スライムに向かって駆け出す。
アリスは巨大スライム達がどうしてオーパーツから出来たのか、そのカラクリを気にしたが『考えても仕方がない』と、思って思考を放棄して極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を手にする。
『巨大なスライムから生成されている、ということは、こいつから分裂したものなのだろうか』
小さいスライムを見た海峰は、巨大なスライムの方に一瞬だけ視線を向けた。
「だろうねぇ。素早いみたいだから、正確に狙い定めて攻撃しろよ」
と、将太郎は助言をする。
『……あまり物理的な攻撃は効いてないように思えますね」
小銃「S-01」で小さいスライムを攻撃する咲は呟いた。
「確かに。……ふにゃふにゃしてるから……ですかね?』
ブラッドリーはぽよんぽよん動くスライムを思い浮かべる。
咲が銃から死者の書に持ち替え、巨大スライムの近くに沸く小さいスライムを攻撃する。
小銃「S-01」より、攻撃が通っているのが分かると数を減らす事に専念する。
構築の魔女と由利菜が前衛として巨大スライムと戦う中で、レオンがライヴスフィールドを展開する。
『チョコはチョコっとじゃ食い足りないんだぁ~っ!』
レオンは吠えながらアルス・ノトリアでスライムから伸びる触手に攻撃する。
海峰は、敵の動向を伺いながら37mmAGC「メルカバ」で攻撃をする。
しかし、巨大スライムは小さいスライムを生産する速度は衰えない。
ライヴスフィールドのおかげで、耐久は下がり物理攻撃でも討伐しやすくはなった。
『まずは、オーパーツに当たらない射線でどれくらい効果があるかですね』
構築の魔女が後退し、37mmAGC「メルカバ」の銃口を巨大スライムに向けてトリガーを引き、射出された弾丸がぷるーんとした体を貫く。
『砲撃で飛散した部分が新たなスライムになったら面倒ですが……』
弾丸が通った跡からドロリとした液体が地面に落ちるのを見て、構築の魔女はその様子を観察しながら呟いた。
その“面倒”は当たる。
地面に落ちた液体は、丸く形成されると表面がうねり終えたらソレは小さいスライムとして活動をする。
『……マズイ事になりましたね』
構築の魔女は低く呻くと、巨大スライムが口からドロリとチョコを吐き出す。
しかし、レオンはクロスグレイヴ・シールドを手に素早く前に出る、新米であろうが女性を守りたくなるのが男だ!
お返しと言わんばかりにパニッシュメントで攻撃しようとする、が。
「まって! パニッシュメント発動出来ない! どうして!?」
巴が悲鳴に違い声を上げた。
庇ったのは良い、だがパニッシュメントを使えないレオンに無慈悲なチョコの滝が降り注ぐ。
チョコまみれになったレオン。
「いや~んチョコまみれ~」
と、嬉しそうに言う巴。
『人間チョコフォンデュ、ってところだな』
レオンが鼻で笑う。
「誰も私なんか食べないよ!」
『どうだかな……』
巴と言葉にレオンはとある人物の顔を思い浮かべた。
そんな話をしていると、体の表面が火傷したかのようなヒリヒリとした痛みが走る。
『ただのチョコじゃ、なかったな』
クリアレイで異常状態から回復するとレオンは不服げに言った。
「でももし酒入りのチョコだったら、酔っ払って眠っちゃうかも……」
『安心しろ、子供が作ったチョコだから入ってない様だ』
思い込みでフラフラする巴に、レオンはチョコを鼻に近付けニオイを嗅ぐが、アルコール類のニオイをしない事を伝えた。
●『巨大チョコスライム を 倒した!』
『ユリナ、超過駆動を発動する! これは、魔力も一時的な増強が可能だ』
と、リーヴスラシルが声を上げると神経接合スーツ『EL』が、神経接合アーマー『EL』と神経接合ブーツ『EL』のAIリミッターを外し身体能力を強化する。
「……出し惜しみするのは止めです。福音の槍よ、我らに無機の従魔を貫く力を!」
由利菜は聖槍「エヴァンジェリン」を握りしめ、緋色の瞳が残光しながら乾いた地面を蹴って駆け出す。
「ゴスペル・スピア!!」
リーヴスラシルとの絆が力となり、由利菜はコンビネーションを使い巨大チョコスライムを聖槍「エヴァンジェリン」で五月雨の様に貫いた。
水風船に針を刺して割れたかの様に巨大スライムの体が弾けてしまい、破片は森の中に飛び散ると小さなスライムとして活動を開始する。
『っと、オーパーツは無事で良かったですね』
構築の魔女は地面に落ちたオーパーツを手にする。
チョコの甘い香り、べったりとオーパーツに溶けたチョコに土が付着していた。
血の様に紅い髪を靡かせ、極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を手にアリスは高速詠唱で小さな口を動かす。
「ブルームフレアッ!」
青い炎を生成し、迫り来る小さなスライム達を巻き込むように炎が炸裂させてその身を焦がす。
甘い、甘い、香りを風に乗せながらジュッと音を立てながらスライムは消える。
「怪我より、体力面での消耗が激しいだろうな……」
将太郎が呟く。
『そんな感じだ。チョコを被って火傷したヤツ以外は』
海峰は、37mmAGC「メルカバ」で小さなスライムを一掃しながら答える。
ふと、視線を感じて上を見上げた。
「……だったか……様……は……」
森の影でも分かる位に太陽の様に光る瞳、黄金の様な短髪に白いワンピースを身に包んだ少女が何かを呟いていた。
地元の人達が言っていた少女。
海峰と視線が交わる。
“遊んでくれてありがとう”と、声にせずに唇を動かして伝えると少女は、森の闇に溶け込む様に姿を消した。
「……ヤバイ……」
将太郎は声を震わせながら言った。
『殺意の塊……いや、憎しみの化身の様だ……違う』
と、感じた事を言葉にしようと海峰は口にするが、言葉に出来ない得たいの知れぬ感覚を体で感じる。
「あぁ、アレが何かしたのか」
マデリーネは、安全を確かめてテントから出てきた。
『調査中のようでしたが、今回の一件で特性等わかりましたでしょうか?』
構築の魔女がオーパーツを手に問う。
「うん? うん、簡単だ。台座に甘い物を置けばソレが一時的に生命体になる」
と、言いながらマデリーネは、ポケットから飴を取り出して台座に乗せる。
台座の上の飴がドロリと溶け、再び形成されると飴は小さくジャンプするのを見て、リーヴスラシルが身構えるがマデリーネが潰すと跡形も無く消えた。
「……ふむ、それですと誰かが発動の条件を満たさないと起動しないはずですよね?」
『バレンタインだ、研究員の一人が娘から貰ったらしくてな。肌身離さずに持ち歩いていた結果、コレだ』
構築の魔女の問いにマデリーネは淡々と答える。
『あと、カカオの件は事実ですか?』
「事実だ。此処に入ったのは今日が初めてだな。そもそも、私達はH.O.P.E.ロンドン支部に出入りしている職員でもある。君が何を考えているかは、その目を見れば何となく分かる」
マデリーネが左目で構築の魔女を見つめる。
「もし、だ。私の研究員に愚神が混ざったり、居たりするとしよう。プリセンサーが感知して、君達が否応なしに呼ばれて討伐命令が出るだろう」
と、マデリーネはつまらなさそうに言う。
『ですが、内通という線も……』
「そんな研究員が居たら、オーパーツの1つや2つ支部から無くなってるし、私が副所長では無くなっている」
別の手口を構築の魔女が口にするが、マデリーネは自身の身分証明をするカードを差し出す。
「偽造だと思うならロンドン支部に問え。怪しいと言っても構わん」
そう言うとマデリーネは踵を返し、研究員達に“撤収するぞ”と声を掛けた。
『……ああ……』
「バレンタインか」
アリスとAliceは納得したかの様に頷いた。
『作った事あったっけアリス?』
「どうかなAlice。ずっと昔買った事ならあったような気もするけど」
と、2人は何時買ったかなんてあまり記憶にない。
『何してるんだ?』
「これが巨大になったらいいな~って思って……」
巴がオーパーツの台座にレモンパイを置く。
『……はぁ』
誰かこの能力者を止めてくれ、と言わんばかりにレオンは大きくため息を吐いた。
世の中そんな甘い事はないワケで。
掌サイズに液体化したレモンパイが、巴の掌の上でぽよんぽよん動くだけ。
勿体無いので口に入れようとする巴。
「これが本当の」
『踊り食い、ね』
アリスとAliceはその光景を見て言った。
「うわぁぁぁぁ! うにょうにょしてる!」
巴の口の中で動くレモンパイのスライム。
『呑み込め。胃に入れば気にならないハズだ』
「本当……」
レオンの言葉に従い巴はごくりと呑み込んだ。
「あ、大丈夫……じゃなーい!」
胃の中でポッピングするレモンパイは凶暴だ!
巴は胃を押さえながら中で暴れまわるレモンパイのスライムに、“溶けろ、溶けろ”と念じながらその場でうずくまる。
「そうそう、その生き物は意外と長く生きているから……て、もしかして食べたのか?」
と、撤収作業の途中でマデリーネが、オーパーツの分かった部分の説明をしに戻って来ると、巴の様子を見て首を傾げた。
『その、もしかしてだ』
レオンが答える。
「まぁ、20分経てば消化されるから大丈夫だろう」
「いや、凄く元気に胃の中でジャンプしているよ!?」
マデリーネは巴の悲鳴に近い叫びを無視して撤収作業に戻る。
●チョコフォンデュを皆と
『たまに見ると思いますが、結構壮観ですよね』
と、噴水形状の大きなチョコフォンデュを用意した構築の魔女は、絶え間なく流れるチョコを見上げた。
「ロロー……」
『あぁ、確かにこれをやりたいと思った人はある意味すごいですよね 』
落児の言葉に頷きながら構築の魔女が、チョコの噴水に一口サイズの果物を突っ込んだ。
『まぁ』
「大きな」
『「チョコフォンデュ」』
アリスとAliceが手を伸ばしても頂上に届かない位だ。
食べ放題、との事で2人は遠慮せずに依頼をこなした自分へのご褒美として、果物にマシュマロ等のお菓子をチョコに浸けて食べる。
『チョコフォンデュとは何だ?』
と、海峰が問う。
「溶かしたチョコにフルーツとかマシュマロとか浸して食う菓子だ。俺が作ってやるよ」
盲目の海峰の為に将太郎は、用意されていたフルーツ等にチョコを浸けてあげる。
見えないからだろうか?
海峰は差し出されたモノのニオイを嗅いでから口にする。
『けっこう美味いな。将太郎、もっと作ってくれ』
新鮮なフルーツの酸味とチョコの甘さが口の中に広がる。
「疲れた時には甘いモンがいいぞ。どんどん食え」
海峰の言葉を聞いて笑顔になった将太郎は、自分の分もしながら沢山作ってあげる。
「ベルカナでも、期間限定チョコレートデザートがメニューに入っています。練習も兼ねて……」
由利菜はバイトをしているファミレスで出されるデザートの練習をする為に、手作りチョコキットとフルーツ盛り合わせや必用な道具を揃える。
「りんご、いちご、みかん、バナナと……ティリアさん、選ぶフルーツはこれくらいが良いでしょうか?」
「彩りを考えるのでしたら、キウイとかピンクグレープフルーツ辺りも酸味があって、甘いモノと合わせるとさっぱりとした後味になりますわ」
由利菜の問いにティリア・マーティスは丁寧に助言をする。
『ユリナの作るチョコはいつも絶品だ、今回も楽しみにさせて貰う』
作業を眺めるリーヴスラシルは、微笑むと嬉しそうに言う。
ファミレス『ベルカナ』でバイトしているおかげだろうか、由利菜が家で作る料理やデザートは美味しい。
「チョコレートフォンデュも美味しくて楽しいですが、やっぱりわたしは食べ手よりは作り手、ですね」
パイ生地の材料を用意しながら咲花は仲間を見回した。
生チョコ、ガナッシュ、珈琲入チョコ、プラリネの4種類の一口サイズのタルト・オ・ショコラを作るのだ。
「……ブラッドは甘いの苦手だから、甘さをおさえた物も作ろうかしら
渡す相手の事を思いながら作るお菓子、貰う側にその“思い”が伝わる。
咲は小さな型にパイ生地を入れて、石を乗せてから1度どオーブンへ入れる。
その間に中に入れるプラリネから作り出す。
砂糖を入れてカラメル化させたモノに、ナッツ類を粉状にしたモノを混ぜたタイプ。
砂糖で煮詰めたナッツ類に糖衣を着せ、その見た目通り「砂糖で覆われた」という意味の製菓材料だ。
「タルト・オ・ショコラを作ってみたので、よろしければ食べてみてくださいね」
チョコフォンデュを食べている仲間に、咲は4種類のタルト・オ・ショコラを美しく盛り付けた皿を渡す。
「わ! 美味しそう! ありがとうね!」
巴が笑顔で咲にお礼を言う。
『……美味い』
その隣でいつの間にか全種類食べたレオンは、もう1つ取ろうと手を伸ばしながら言う。
「私の分も残してよね。……って、皆の分も食べちゃダメだよ!」
「大丈夫ですよー足りなかったら作りますよ」
レオンの手首を掴みながら注意する巴達に、咲は笑顔で答える。
『という事で』
食い意地のはった英雄を持ってしまった……と、頭を抱えなる巴。
『これはなんという?』
「チョコのタルト?」
将太郎と海峰は、タルト・オ・ショコラを食べながら首を傾げた。
「タルト・オ・ショコラだね。まぁ、名前の意味としては“チョコタルト”で合ってるよ」
圓 冥人が答える。
ティリアは由利菜達と楽しそうにお菓子作りをしていた。
「ブラッド、お疲れさま。甘さをおさえてみたのだけれど、どうかしら?」
咲はブラッドリー用に作ったタルト・オ・ショコラを渡す。
『おや、ありがとうございます、サキ』
差し出されたタルト・オ・ショコラを受け取り、ブラッドリーは嬉しそうにソレを頬張る。
『……美味しいですよ』
サクッとした生地に甘さ控え目で、カカオとラムの香りにブラッドリーは笑顔で言った。
「もう少し余裕があれば、お花の一輪でも添えてプレゼント出来たのですが……」
と、言いながら咲は、落児と構築の魔女に箱を渡す。
『これは、タルト・オ・ショコラ……ありがとうございます。貰えるだけでも嬉しいのに、そこまでしなくても思いは伝わります』
構築の魔女が笑顔で落児の分まで答える。
その隣で落児はこくりと大きく頷く。
『じゃ、僕があげます。日本酒入りチョコとオオイヌノフグリ……ヨーロッパで言うと“ヴェロニカの草”です』
真神 壱夜がチョコが入ってる箱と、その上に添えられた小さな青い花が揺れた。
チョコスライム退治をして、皆で楽しくチョコフォンデュをバレンタインに食べる。
行事に興味は無くとも、誰かと楽しく共有して美味しいお菓子を食べるだけでも違う。
テーブルはチョコを使ったお菓子やデザートで埋め尽くされる。
他愛もない話、暖かな笑い声と笑顔で満たされる。
もう、春に向けて花が芽吹こうとしている。
足音が遠くから響く中でアナタは、今“幸福”に満たされましたか?