本部

【初夢】IFシナリオ

【初夢】遠い昔、遥か彼方の銀河系で……

砂部岩延

形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
17人 / 1~25人
英雄
17人 / 0~25人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/01/15 19:16

掲示板

オープニング

 この【初夢】シナリオは「IFシナリオ」です。
 IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
 シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。

●????年?月?日――惑星ハツ=ユメー、H.O.P.E.ニュートーキョー聖堂、会議室
 会議室の扉付近には、逼迫した表情の真田と一角が壁に張り付くようにして立っていた。
 手に少し不思議な形のおもちゃの銃みたいなモノを握りしめて、そっと外の廊下をうかがっている。
 顔を引っ込めた真田が、室内にいた全員の顔を見回した。
「ここは少しの間、安全のようです。まずは状況を整理しましょう」
 荒い呼吸を整えながら、真田が言った。
「現在、ここH.O.P.E.ニュートーキョー聖堂は銀河大帝国からの襲撃を受けています。彼らの目的は、銀河の統一支配、そのために邪魔なライト・サイドのリンカー騎士たちを排除するため、全銀河のH.O.P.E.聖堂に同時多発的に仕掛けているようです。他の惑星の聖堂からも、襲撃の連絡が入っています」
 真田はしごく真面目な顔で続ける。
「敵の司令官はかの悪名高き、須田米太。そう、かつて私たちとともに全銀河の平和を守っていた強力なリンカーのひとりです。残念なことに、彼はライブスの力の悪しき側面へと堕ちてしまいました。調和と正義を愛するライト・サイドではなく、強大で恐るべき力を持つと信じられる、レフト・サイドへと……! 暗黒の漆黒の力に魅入られ、左腕には古の邪竜、左目には恐るべき悪魔を封じた邪眼を持っていると信じ切った、厨二リンカーと成り果てました」
 悲壮感をただよわせて、真田は首を横に振る。
「そして、もうひとつ、彼個人がここを襲撃する理由があります。それは、最近スカウトされてきた新人リンカー騎士、デューク・サライウォーカーです。気功・呼吸法・バレエ・武道を総合した彼の独特歩法は銀河を救う強大な力を秘めていると言われています。須田米太は彼をも漆黒の暗黒の力に染めようとしているのです。なんとしても、敵の手に堕ちる前に、彼を救い出さなければなりません」
「行きましょう。敵の姿が途切れました」
 外を警戒していた一角が、中を向いて呼びかける。
 全員は素早く部屋を出て、廊下を走って行く。
「今、私たちは、中央管制室に向かっています。そこなら、彼の居場所も分かるでしょう。私たちの目的は二つ。ひとつはデューク・サライウォーカーの救出、これは彼の師匠であるオビ=タン・セノービというロリババ――伝法な口調の幼女が向かっています。そして、もうひとつは宇宙船によるここからの脱出、これはヨーナという美魔女が幼いリンカー候補生たちを率いて向かっています。皆さんはこのどちらかを支援して下さい。それと、最後に、気をつけていただきたいことが――」
「敵襲!」
 一角の呼び声に、全員がハッとなる。
 廊下の向こうから、白くツルッとした質感のピッタリとしたタイツに全身を包んだストーカー・トルーパーたちが、怪しげな銃を携えてやってきた。
 一斉に向けられる銃口。
 誰もが一巻の終わりを察知した、その時。
「真田さん、危ない!」
 一角が真田を突き飛ばした。
「…………ぇ」
 通路の向こう、敵側に押し出される真田。
 敵の銃から放たれた怪しい光線はすべて過たず真田の身体に撃ち込まれた。
「ぎゃーー!」
「今です!」
 極彩色の電撃に撃たれて悲鳴を上げる真田をよそに、一角は淡々と反撃を指示して、通路の向こうに敵を封じ込めることに成功する。
「今のうちに、先を急ぎましょう。え? 真田さん? あぁ、まぁ、そうですね。尊い犠牲でした」
 そう言えばそんな人もいましたね、とばかりに頷く。
「しかし、のんびりはしていられません。なぜなら――」
「ふぅーーーっ、ははははっ! 我、悠久の永き眠りより、不死鳥の如く蘇らん!」
 倒れていた真田が唐突に起き上がると、香ばしいポーズとともに叫び出した。
「我こそは、サナダ=ゼロ! 銀河の歴史を討ち滅ぼす者なり!」
 一角がイラッとした顔で舌打ちをする。
「先程、真田が言いそびれていましたが、敵の攻撃にやられてしまうと、あのようにレフト・サイドに堕ちてしまいます。すでに多くのリンカーたちがレフト・サイドに堕ち、厨二リンカーとなってしまいました。敵もまた二手に分かれて、デュークさんの堕落と脱出艇の阻止に乗り出してくるでしょう」
 一行はついに、中央管制室にたどり着く。
「今、デュークさんの場所を――」
 一角がピカピカとやたらめったらに光るデカいボタンのパネルを操作すると、中央のバカデカいスクリーンに映像が映る。
 聖堂の上部、尖塔と尖塔を繋ぐ橋の末端にデュークが追いやられていた。
 右手は固くなった餅によって某青いタヌキ型ロボットの手のように封じられていた。
「デュークよ。我と共に暗黒の漆黒の力を求めるのだ。この力を持ってすれば、銀河大帝国の皇帝をも……くっ、また疼き始めたか、我が左腕に封じられし邪竜と左目の悪魔よ!」
「いやだ! そんな恥ずかしい力はいらない!」
「ふぅ、ようやく鎮まったか……そして我はお前のトゥルー・ファザーだ、マイ・サン」
「ウソだ! お前が僕の父さんだなんて! そんなの信じないぞ! みんなにバカにされる!」
 ジリジリと歩み寄る全身黒いタイツの須田米太に、デュークがドン引きして後ずさりをする。
「どうやら、猶予は一刻を争うようです。ここを最終防衛拠点に、反攻作戦を実施します。生き残ったリンカーの皆さんにも同時通達します。可能であれば、敵を押し返したいところですが、須田米太のバックにいる、より強大な銀大帝国皇帝がどう動くか……。銀河の運命を皆さんに託します。ライブスの加護があらんことを」

解説

●目的
ライト・サイド
1)オビ=タン・セノービとともにデューク・サライウォーカーの救出?
2)ヨーナたちとともに脱出艇の確保?
3)???

レフト・サイド
1)須田米太ととものデューク・サライウォーカーをレフト・サイドに堕とす?
2)脱出の阻止、全リンカーを厨二リンカーに堕とす?
3)???

●場所
 惑星ハツ=ユメー、H.O.P.E.ニュートーキョー聖堂

●諸注意
・「目的は、目的であって、目的でない!」(byサナダ=ゼロ)
・本シナリオは何をしても自由であり、原則として失敗にはなりません
・少し不思議なライブスの力により、思いつくあらゆることが可能かもしれません
・これは夢の中のIFシナリオであり、リンクブレイブの世界観とは一切の関わりがなく、シナリオ中の出来事は世界観に一切の影響を与えません。ご注意下さい。

リプレイ

●H.O.P.E.ニュートーキョー聖堂――中央管理室
 ピカピカとカラフルに光るボタンに囲まれたモニターには聖堂内各場所の様子が映っていた。
 一角をはじめとするオペレーターたちは戦況を把握して、通信機で聖堂各地のライブス騎士たちに共有、戦線を維持している。
 モニターのひとつ、脱出艇の発着所では今まさに、激戦が始まろうとしていた。

●脱出艇
 木霊・C・リュカ(aa0068)と凛道(aa0068hero002)はヨーナと数人のライブス騎士たちとともに、幼いリンカー候補生たちを警護しながら、脱出艇への道を急いでいた。
『僕たちの手で、幼いリンカー候補生達を無事に脱出させなくては。幼い候補生たちを、脱出船へと。幼い候補生たちを!』
「大事なことだから二度言いました! いやぁ、はりきってるねぇ」
『俄然やる気です。眼鏡が曇りますね』
 凛道が眼鏡を光らせながら、ほのかに光る刀身が胸を熱くさせるライブス騎士の必須武装ライブス・セイバーのデスサイズ・カスタマイズを振るうと、全身光沢の白タイツ姿をしたストーカー・トルーパーたちが倒れ伏した。
『ロリショ……幼子たちのため、今回はたとえ友人親族が立ちふさがったとて容赦はしません』
「相手もロリショタ子だったらどうするの?」
『愛の力で救ってみせます』
「ちなみにセノービちゃんの方はいいの?」
『ロリババアはちょっと響かないというか……』
 言う間にも、凛道はデスサイズを振るい、リュカがライブス銃で援護、行く手を阻むストーカー・トルーパーたちを次々と倒していく。
「心強いですね。言っていることは不審者そのものですけど」
 幼子たちをここまで導いてきた慈母のごとき大人の色気たっぷりのライブス騎士ヨーナは、微妙に幼子たちと凛道の間に割り込むようにして歩いていた。
 幸いなことに、ここまでの道中はほとんど敵たちと遭遇しなかった。
 あと少しで脱出艇の発着所というところまでやってきている。
 しかし、その時、行く手を阻むように、極彩色に輝く漆黒で暗黒な光が弾けた。
 先行していたライブス騎士が巻き込まれて倒れ伏す。
『ふふふ、我輩の開発した新兵器にて、貴様らもブラックホールの炭にしてやろう!』
「ユエリャン、悪役が似合うのです……!」
 複雑で重厚なバズーカを肩に携えて高笑いをするユエリャン・李(aa0076hero002)と、顔を手で覆いながら指の間からしっかりと見ている紫 征四郎(aa0076)が一行の前に立ちふさがった。
「すみませんすみません、恨みは無いですが突撃なのです!」
 征四郎が申し訳なさそうに謝りながらもきびきびと随伴のストーカートルーパーに指示を出す。
『はははは! 漆黒の闇にこそ我らの安寧あり! 今こそ灰塵の花と散れ、このロリショタコン共が!!』
 ユエリャンは高笑いをしつつ、怪しげな兵器を次から次へと取り出しては、極彩色やら真紅やら漆黒で暗黒な闇の光やらを炸裂させている。
「アレに触れたら、ひとたまりもないですね」
 ヨーナのつぶやきに、リュカが己の身体を抱いてわざとらしく身悶えする。
「や、やだぁ! 厨二病には戻りたくない! 古傷が疼いちゃう!!」 
『大丈夫ですマスター。正義の御旗は僕たちの頭上に掲げられています』
「あれ? もうレフトサイドにいるの?」
『というか、きみらはそもそも我輩達の仲間であろう、ふだんの言動的に! 甘美なる日々、漆黒の力を思い出せ、そして同胞となるのだ!』
「え、えーと……我らは紅蓮のときよりいたりし戦士。この力に伏し、投降するのです!」
 火力頼みでずっぽうなユエリャンとことなり、征四郎は短剣型のライブス・セイバーを片手に天地無用とばかりに飛び交い襲い掛かってくる。
「せーちゃん、成長したね……厨二だけに!」
 熟達した動きで光刃を振るう征四郎の姿にリュカが目元を押さえつける。
『若さへの嫉妬はいけないと! 思います!!』
 幼子たちを爆煙から庇いつつ、凛道が声高に叫ぶ。
『煩い! 美しさに若さとか関係ないから! むしろ歳をとるごとに増す色気とかあるであろうが!』
「そうですよ! 失礼しちゃいますよ!」
 なぜか援護射撃が味方からも湧き起こる。
 激昂したユエリャンはひときわ大きな砲身の超火力大口径兵器を取り出すと、一行に向けてテキトーに狙いを定めた。
『我輩の新兵器の前に、宇宙創世の極彩と散るがいい!』
『くっ、もしも、レフトサイドに墜ちてしまったとしても、幼子達を守る心だけはきっとこの心に残り続ける。たとえ、僕が<十漆黒の死神十>になってしまったとしても!!』
「うわぁ、黒い羽とか鎖とかついてそうな名前」
 凛道が雄叫びをあげて突っ込んでいく。
 ユエリャンが引き金を引く。
 極彩の爆炎が辺り一帯を包み込んだ。

●尖塔での攻防
 聖堂上部の尖塔では、黒い全身タイツにヘルメットの須田米太が、デュークを追い詰めていた。
「さあ、我が手を取れ、マイ・サン。暗き闇に覆われし銀河に開闢の光が燦然と燃え上がる」
「いやだー! なに言ってるかもうわかんないし! タスケテー! オビ=ターーーン!」
「待たせたな!」
「オビ=タン!?」
 救いの声にデュークが顔を輝かせる。
 しかし、そこに立っていたのはいい笑顔の麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)の2人だった。
「助けに来たぞ、マイ・サン!」
『……ん、おかーさんが……来たよー』
「え……?」
「待ってろデューク! 今、助けるぞ!」
『……ん、偽物にはオシオキ』
 当人を当惑に突き落としつつ、勝手にバトルを始めてしまう。
「兄さん!」
「今度はナニ!?」
 駆けつけた月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)が声を上げる。
「私です、ユイナです!」
『デューク殿! 貴方の妹君、ユイナ姫だ』
「ええー!?」
 さらなる混迷に突き落とす。
「デューク!」
「あ、こんなところにいた」
 さらなる声の主はオビ=タンと、ともにやってきた餅 望月(aa0843)だった。
「いつかやると思ってたけど、簡単に堕ちるなんて……」
 望月の視線の先には、須田米太を守るようにして立つ百薬(aa0843hero001)の姿があった。
「百薬、一体なんで悪の道に……」
『それはライト陣営の勝手な理屈だよ、愛と正義はレフトに宿るよ』
「デューク!」
「オビ=タン!」
 ようやく再会した師弟が声をかけあう。
「悪の言葉に耳を傾けてはならん!」
「ていうかもう話がさっぱりだよ!」
 2人の間で、あっちこっちと会話が飛び交っていく。
「ようやく会えました、兄さん」
「俺が! 俺達が! デュークのトゥルー・ファミリーだ!」
『須田くん、偽善を騙り、こちらを悪と決め付ける連中に本当の愛をわからせてあげるよ』
「私はこの身に強大な破壊のライヴスを秘めるがゆえ、ずっと帝国に狙われる身でした」
「それで世界を滅ぼしちゃダメじゃないの」
「闇の理が故に」
『だが心配には及ばない。私がライブスの力により共鳴することで、破壊の力を抑えることができる』
「これもライヴスの導きだ、トゥルー・マイ・サン」
『歴史を塗り替えるんだよ、みんなも素直に生きた方がストレスなく寿命も延びてハッピーだよ』
『伝説のライブス騎士となった私たちの力は強力だ。並の帝国兵では刃が立たない』
「そんな理由で、冷蔵庫のプリンを勝手に食べてそんな所に?」
「弱肉強食、闇の力の前ではすべてが餌食となる」
『……ん、オビ=タンさんには、山吹色の菓子をこっそりと付け届けしておかないと……』
『食べてくれって言ってたんだよ、ワタシには、プリンの声が聞こえたんだよ』
「闇もまた囁いている、導きに魂を委ねるのだ」
「行きましょう、ソイヤ姉さまも待っています」
『……ん、ボク達で……偽物を、倒すの』
「さぁデュークよ、ライヴスの導きを信じろ!」
「あたしが洗い物してる間に狼藉を働いた理由がそれか」
「我らの前に敵は無し!」
「昏き闇の前に王道もなし」
『望月も一緒に来ればもっとご飯もたくさん食べられるのに』
『……ん、三位一体……いくよ……?』
「いいから帰ってきてお手伝いしなさい、でないと明日の晩御飯抜きだよ。明日はから揚げなのに」
『えー、から揚げ食べたいー』
「我らが2人、かの暗黒皇帝をも喰らい、虚ろな星の空に闇の輝きを灯すのだ」
「オビ=ターーン!」
 デュークが涙目で叫ぶ。
「ええい、ごちゃごちゃとよう分からん! だいたい、息子の前でソレは恥ずかしくないのか須田米太!」
「ん?」
『え?』
「あ」
『……ん』
 どさくさに紛れてオビ=タンがうっかりなカミングアウトをしてしまう。
「くくく、失敗か……残念だ、とてもとても残念だ」
『……ん、ボク達なら…良い家族に、成れたのに……ね?』
 遊夜とユフォアリーヤの2人が香ばしいポーズをとると、暗黒っぽいオーラが足元から立ち上り始める。
「そのオーラ、お2人はレフトサイドの……」
 由利菜もといユイナ姫の声に、遊夜たちはニヤリと笑う。
「いかにも。俺たちはレフトサイドの潜入工作者」
『……ん、そして、銀河大帝国の皇帝の命による……須田さんの監視役的な……』
 2人の香ばしい視線が須田米太をとらえる。
「裏切り者は粛清せねばな」
『……封じたものを……抑え込めない未熟者……真の暗黒の漆黒の力、魅せてあげる』
 漆黒のオーラを身に纏い、2人は共鳴する。
 レフトサイドのライブスの力により強大な厨二となった2人は、暗黒のライヴスセイバーを手に須田米太へと突貫する。
「隙アリ」
 急展開な事態のスキをついて望月も共鳴、百薬の行動の自由を奪いとる。
「今のうちじゃ!」
 オビ=タンの叫びとともに、デュークを確保した一行はその場を走って後にした。

●中央管制室
 一角たちオペレーターはオビ=タンらがデュークの確保に成功したのを確認していた。
 しかし、戦況はかんばしくない。
 脱出艇の発着所はなんとか確保しているが、他は一進一退、厨二の力に堕ちたり、正気に目覚めて羞恥に悶えたり、果ては精魂尽きて倒れ伏すものが続出していた。
 まるで、誰かの見えざる手で踊らされているかのようだ。
「これは……」
 モニターのひとつが、ついに決定的な事態を捉えた。
 制圧された宇宙港にひとつの宇宙船が降り立った。
 中から出てきたのは銀河大帝国暗黒頭巾皇帝R.A.Y(aa4136hero002)と、大量の美空(aa4136)トルーパーたち、随伴の麻端 和頼(aa3646)ことカッズヨーリと、華留 希(aa3646hero001)ことノッゾーミの厨二卿の姿だった。
「和頼……!」
 五十嵐 七海(aa3694)が口に手を当てて悲痛な声を漏らした。ジェフ 立川(aa3694hero001)が肩に手を置く。
 テジュ・シングレット(aa3681)はモニターの向こうに映る、かつてともに戦った2人のイタイタしく変わり果てた姿から目をそむけた。
『七海……大丈夫?』
 ルー・マクシー(aa3681hero001)がいたわるように声をかけながら、手にしたカメラでしっかりとモニターの向こうにいる2人のイタイタしい姿を記録に収めていた。自分が堕ちるのはまっぴらだが仲間の黒歴史は記録に残しておきたいらしい。相棒の心境を見抜いたテジュはその無慈悲さに戦慄していた。
『和頼は死んだ。そう思って諦めろ……』
「……判ってる。判ってるのに、忘れられないよ……」
 ジェフの言葉に、七海は顔をおおって崩れ落ちてしまう。
 和頼は七海の恋人だった。
 6人はともに宇宙大戦争的なアレを戦い抜いたライブス騎士にして宇宙戦士だった。
 しかし、とある事件により和頼と希はレフトサイドへと堕ちた。
 一部始終はルーの持つカメラに収められ、封印されている。
 4人の戸惑いをよそに、オペレーターたちは中央管制室、ひいては聖堂の放棄を決めたらしい。
 いそいそと背負った唐草模様の風呂敷に書類を詰め込んで夜逃げの準備をはじめている。
「ジェフ、急ごう」
 テジュが声をかける。
 彼らはライブス騎士、皆を守らなくてはならない。
 気丈にも立ち上がった七海たち4人は皆を守りながら管制室を後にした。
 やがて、無人となった中央管制室に、ひっそりと影が忍び込んだ。
 御神 恭也(aa0127)と不破 雫(aa0127hero002)だった。
 恭也は設備にやたらめったらくっついたどれがどれだか絶対わからないであろうボタンを巧みに操作して戦況を把握していく。
「両者にはもっと争って貰わんとな……」
『気になっていたんですが、何故こんな事を?』
 瞳に危ない光を灯す恭也とは対象的に、雫はどこか呆れ調子だ。
「左右いづれかの陣営に勢力が偏ると俺の様な者には生き難い。天秤が傾かないように揺らす必要がある」
 恭也はこれまでにも道中、陣営を問わず、有利な方をくじき、不利な方をたすけるように動き回っていた。両陣営の通信を傍受、偽情報や相手情報を流して両者の全滅を仕向けている。
『頑なに否定していましたが、本当はレフトサイドに堕ちてるのでは?』
「馬鹿なことを。よし、これでいい」
 恭也の見ている先で、聖堂内の隔壁が操作される。
 戦況はより複雑に、戦いがより激化するように仕向けられた。
「もうここに用はない。いくぞ」
 恭也と雫は影に潜んで管制室を後にする。
「ふーっ、はははは! 我こそはサナダ=ゼロ! 銀河の歴史を討ち滅ぼす者なり!」
 通路で多数のストーカー・トルーパーを指揮する堕ちた真田の姿があった。意外な指揮能力を発揮して、通路向こうのライブス騎士たちを追い詰めている。
 恭也は影に潜伏したまま背後に忍び寄ると、真田もといサナダ=ゼロの首を白い光刃で掻き切る。
「ぐはあっ!」
 身悶えた真田は、次の瞬間、レフトの闇から正気に戻った。
「はっ、私は今まで一体……ち、ちがう、アレは私じゃない! そういのは中学以来卒業したんだ! やめろ、偽りの記憶を見せるな! やめてくれー!」
 真田は羞恥に身悶えて行動不能に陥った。
 恭也はさらに通路を行き、目についた者、一人で行動している者を同様に後ろから刈ったり、物陰に連れ込んで騒がれない様に素早く行動不能へと陥れていく。
『やっている事が、完全に変質者のソレですね』
「人聞きの悪い事を。せめて仕事人と言ってくれ」
『SF設定なのになんで一人だけ時代劇になってるんですか』
 集団に見つかって本格的な戦闘に発展しそうになると、素早い連撃や心を蝕む羞恥の毒で牽制、隙を見て離脱する。
「光と闇の均衡。世界は灰色がふさわしい」
『キョウは絶対にレフトサイドだと思います』
 己の信ずる正義のため、恭也は暗躍する。

●逃走路
 デュークを確保したオビ=タン一行は一路、脱出艇を目指していた。
 ユイナ姫こと由利菜とリーヴスラシルが共鳴した伝説のライブス騎士ユイナは攻防一体の幻影盾『ミラージュシールド・マーニ』と彼女専用にカスタマイズされた『ライヴスブレード・ソール』を振るい、獅子奮迅の働きを見せていた。
 敵陣に突入、敵をひきつけつつスーツに込められた能力強化の力『バーストモード』を発動、一気に道を切り開く。
「兄様の脱出を邪魔するものは、斬ります!」
『ユイナ姫、貴女が氏んではデューク様も浮かばれぬ。必ず生きて帰るのだ!』
 ちなみに、リアルに封印されし力(百薬)を得た望月は先行して退路を切り開くと、そのまま戦線を離脱していた。道のそこかしこに羞恥に呻くストーカー・トルーパーの姿を見かけるので、一応、それらしく仕事はこなしていったらしい。
 露払いに先行する由利菜たち。
 しかし、突如開いた隔壁により、一行はストーカー・トルーパーの一団に挟み撃ちにされる。
 追い詰められた彼らの前に、突如現れた影があった。
 さっそうと外套を脱ぎ捨てると、自前のライブス・ツインセイバーを風車のようにふるって華麗に舞い、敵をなぎ払う。
「よし、決まった」
 キメのポーズとともに着地した、オキ・カズーマこと沖 一真(aa3591)は柄の双方から飛び出した光の刃をブォンブォンと振り回しつつ、敵を牽制する。
 その隣に並んで敵を討つ厳格にして正義のライブス・マスター、灰燼鬼(aa3591hero002)が声高に叫んだ。
『行け、サライウォーカー。為すべきことを為せ! 続け! ライトサイドの騎士たちよ!』
 伴って来たライブス騎士たちとともに、敵の一団を押し返す。
「御屋形様、あまりツッコんではあぶないぢゃろ」
 一真の背を守るようにして、ハツハル・アマーギこと天城 初春(aa5268)が弓形のビーム銃で援護する。
「くふふ、血がたぎるのう」
 辰宮 稲荷姫(aa5268hero002)も大太刀型の燃えるような紅の光刃を振り回し、敵をバッタバッタと倒していく。
『見つけたぞ、オキ一族のオヤカタサマよ』
 敵陣の中から、ニウェウス・アーラ(aa1428)とストゥルトゥス(aa1428hero001)、2人の厨二卿が姿を現した。
「ここで会ったが三光年目だよ」
『三年目ね、正月ボケは抜こうか。あとソレ、スペースオペラ的には微妙に近いから』
「む。ともあれ、貴方をここで、レフトサイドに、堕とすのです……」
「オヤカタサマ……お前たち、俺の何を知っているというのだ!」
 一真は光刃で牽制しつつ、2人に疑問を投げかける。
『レフトサイドはいいぞー。やりたい放題好き放題だ!』
「ん……休みたい時に有休とれるし。好きなだけ。残業、断れるし。むしろ出社しなくてもいい」
『いや、さすがにそういうわけにはいかないから。でも、週休二日、残業代やボーナスも完備、能力至上主義だから若くして出世も早いッ!』
「お給金高いから、やりたい放題。バリに別荘とか買える」
『まぁ、お金の許す範囲でね? 好きな物買い放題!』
「どうですか」
『よっ、果ては社長か、大臣か。いや、もうオヤカタサマか!』
「ナニソレ、レフトサイド楽しそう!」
『惑わされるな、カズーマ。レフトサイド特有の魔の囁き、幻聴に過ぎぬ』
『これでもダメなら、仕方あるまい』
「ライヴスの力比べで、勝負……」
 ニウェウスとストゥルトゥスはブゥォンと鈍い起動音を立てて起動した雷の如く揺らめく光刃で襲いかかってきた。
 一真と灰燼鬼のライトなセイバーが迎え撃つ。
 ニウェウスたちと一真たち、そして初春たちはライブス銃の飛び交う中、光刃をブォンブォンと振り回し、バシュンバシュンと打ち合わせつつ、前宙したりバク宙したり側宙したりしながら通路を移っていく。
 やがて先行していたデュークたちが脱出艇の発着所にたどり着いた。
 あとはこの場所の入口を守りきるだけだ。
 決意を新たに光刃を構えた一真ことカズーマの背後から、紅の光刃が胸を貫いた。
 灰燼鬼の額からもライブスの矢が角のように飛び出している。
「にょーほっほっほ! 油断大敵ぢゃ、御屋形様よ!」
「な、ナゼ……」
 初春、そして稲荷姫の手に握られた獲物を見て、一真は喘ぐように問いかける。
「ライブス騎士、ハツハル・アマーギ。しかして、その正体は、超愉悦的快楽主義者にして両目に古の幻獣の力を宿すレフトサイドの厨二特務兵、天城 初春ぢゃ! 反帝国陣営より<見えざる影>と呼ばれるは、わらわぢゃよ」
『ぶっちゃけ今回の同時襲撃の元凶もわしらの手引だからのう。各地を渡り歩き反帝国戦線の情報を帝国に流しておったのよ。まぁ、疑われなかったのも無理はない。わしらは超快楽主義者故、帝国軍でもその重鎮でも問答無用で斬り捨てて、帝国からも多額の賞金を懸けられておるが故な。それもまた一興というものじゃな』
「御屋形様たちと過ごすのも楽しかったがのう、ここはこうしておくのが楽しそうぢゃ」
 初春らは高笑いとともに、すべてをカミングアウトする。
『うわー信じてた仲間が背中からグッサリ、エグいわー』
「ん、チャンス」
 ニウェウスはさらに一真たちへとライヴスの電撃を浴びせる。
『さらに追い打ちかけるんかーい!』
 ツッコむストゥルトゥスの前で、一真と灰燼鬼は極彩色の煙を上げて倒れ伏した。
『ま、いっか……ふははは! さぁ、目覚めるのだオキ・カズーマ! そして、灰燼鬼、いや、ダース・ジン。THE・ジェノサイドよ!』
「ようこそ、ホワイト企業へ……」
『いや、それはさすがに緊張感無いから。あと、もうそういうのいいから』
 やがてレフトサイドに落ちた一真と、そして赤と黒のペイントの鬼と化した灰燼鬼ことダース・ジンが起き上がる。
 その手に持ったツインライブスセイバーも、なぜか赤く輝きを変えていた。
「――裏切りこそ、レフトサイドの花道」
『戻れ、サライウォーカーよ。須田米太をともに倒そう』
「そして、我々で銀河を支配しようではないか。ウハウハな生活が待っているぞ!」
『おお……偉大なるダース・ジン。貴方こそが、新たなる指導者!』
「共に、ライトサイドを、駆逐するのです……」
 ニウェウスとストゥルトゥスは堕ちた灰燼鬼のライヴスパワーに感嘆し跪く。
 赤と黒の鬼は狐の厨二卿らを伴って、かつての仲間たちに牙を剥いた。

●偉大なる闇の力
 中央管制室から撤退した一行にも闇の手は迫っていた。
 宇宙港から聖堂本部に降り立った銀河大帝国暗黒頭巾皇帝は、両手からライブスのすこしふしぎなビームを出し、両肩にある死の星を象ったミサイルポットからはすこしふしぎなミサイルを雨あられと撃ち出して、ライブス騎士や反帝国兵たちを次々と薙ぎ払いながら進んでいた。
 敵の反撃は、地平の彼方まで埋め尽くしそうな美空トルーパーたちが構えた透明な棺桶シールドにより霧散、皇帝の邪悪な美しさを損なうことなく守らんと歩調を揃えて進軍する。
「蹂躙されろ、愚かなる雑兵ども! 俺の破壊衝動を満たすだけの糧となれ! 進め!」
「「「「「「「「「「はにゃー」」」」」」」」」」
 破竹の勢いで進軍する暗黒頭巾皇帝らは、影で暗躍する天秤を揺らす仕事人のイイ仕事のおかげで、まっすぐ進むだけで中央管制室から逃走していた一行のしんがりをとらえていた。
 正統なライブス騎士である日暮仙寿(aa4519)と不知火あけび(aa4519hero001)は、それぞれに短刀の光刃と長刀の光刃を振るって、迫りくる美空トルーパーたちを千切っては投げ千切っては投げていた。古くから連綿と続く武術に裏打ちされた確かな腕前は、辺り一帯を埋め尽くさんばかりの美空トルーパーたちを相手取り、一歩も退けをとっていない。
「さすがは日暮仙寿、そして不知火あけび。俺が目をつけていただけのことはある」
 暗黒頭巾皇帝R.A.Yは美空トルーパーたちをやられても、むしろ満足げに笑っていた。
「我が軍門に下れ。忠実なるレフトサイドの厨二卿として、俺に仕えるのだ」
 R.A.Yは美空トルーパーたちに命令し、より一層激しく攻め立てさせた。さしもの2人も防戦一方となる。
「米太は有能だけど、ちょっと厨二が進行しすぎて痛々しいしな……そろそろお祓い箱だ、ちょうどいいからライトサイドに始末してもらおう。そして俺は新しい騎士をゲットだぜ」
 名案とばかりにR.A.Yは呟く。
 ついには均衡が崩れ、美空トルーパーたちのライブス・ロケットランチャーにより、仙寿とあけびは倒れ伏した。
 次に起き上がった時には、水色のカツラをかぶってどこか美空っぽくなっていた。
「よーし。どんどん進め! 愚かなライトサイドは皆死ぬのDEATH!」
「「「「「「「「「「「「はにゃー」」」」」」」」」」」」
 美空トルーパーたちは再び進軍を開始する。
「……クッ、腕が疼きやがるぜ……」
『ライトサイドは全員レッフレフにしてやるノニャ!」
 厨二卿のカッズヨーリとノッゾーミもまた、ライブス騎士たちを相手取ってブォンブォンバシュンバシュン戦っていた。ライトサイドを厨二に堕としめる恐るべきビームを吐き出す獣機械を量産して従えている。
 厨二に堕ちたくないライブス騎士たちは決死の覚悟で反撃をしていた。
「チッ、しかたがない……この額の第三の眼を使う時が……」
『まさか!? レフトサイドの手で厨二兵器に魔改造されてしまったっていうの?!』
 髪をかき分けた和頼の額にある印を見て、ルーが悲鳴っぽい声をあげる。手にしたハンディカムはズームでそれをとらえている。
「……? 和頼、額にマジックで落書きされてるぞ?」
 厨二心の良くわからないテジュは手書きの第三の目に素でツッコみを入れた。隣でルーが必死に笑いをこらえている。
「ざっけんな! これは封印されし第三の瞳で解放されると恐ろしい魔界の力が……!」
「和頼……!」
 変わり果てたイタイタしい恋人の姿に、七海が涙を流す。
「……額の印は愛で消してみせるからっ! 私が厨ニを卒業させるから!」
『無理だ! あの手のヤツは一生ドロ沼の中だっ!』
「離してっ! 行くのーーっ!」
 七海の腕をジェフが必死に引き止めている。
 しかし、彼女の姿をひと目見た和頼は、その動きを止めていた。
 それどころか、呼吸のしかたすら忘れてしまったようだ。胸が高鳴る。息が苦しい。
 厨二の力に記憶を封印されていても、和頼は二度目の恋に落ちた。
 湧き上がる厨二心が、「この出会いは恐らく、運命!」と和頼に言わせようとする。
「こ、この、このであ、であ……んな恥い事言えっかああああああっ!」
 引き戻されるライトとレフトの間でもがき苦しみ、白銀の光刃を出す槍を手に暴れまわる。
「和頼……っ!」
 ついには七海がジェフの制止も聞かずに、飛び出して行ってしまった。
『お仕置きなノニャ!』
 相棒の異常を察知したノッゾーミがすこしふしぎなライブスの魔法を放ちながら、獣機械たちに暴れさせる。
『テジュ、はやく和頼を、希を、ライトサイドに戻そうっ』
「ああっ!」
 ルーのこらえたような震える言葉に、テジュはじんとする。
『早くこの、カッズヨーリー(笑)とノッゾーミ(爆)映像を、本人たちに見せたくて、胸がキュンとするんだ……はやく、いっこくも、はやく!』
 テジュは思った。
 レフトサイドどころか、こいつはゲス・サイドに落ちたんだ、と。
『それを向けるのをやめるニャー! 何かムズムズするニャー!』
 ルーの手にあるカメラを見て、ノッゾーミが暴れまわる。
『あぁ、いい、すっごくいいよ、ノッゾーミ(爆笑)』
「人の名前に変なモノをつけるニャー!」
 錯乱したノッゾーミは獣機械たちに無差別攻撃を指示する。
 荒れ狂う厨二化のビーム、テジュは思わずゲスな相棒を盾にする。
「え?」
 厨二化ビームがルーの身体を撃ち抜いた。
 雷に打たれたように震えたルーは、ついに神の声を聴き始めた。
「僕は綴る、この銀河を、宇宙を、美しき世界のヒストリーを!」
 ルーはおもむろにポエミー&少女漫画ちっくな恥ずかしい詩や絵をあたり一帯に書き連ねはじめた。
 和頼と七海はジュテームに、ジェフとテジュはボーイズラブに書き上げて描き上げていく。
『ヤー! 語尾にニャーはあざとスギだヨ! 誰かあたしの記憶を消しテ!』
 反対に、正気に戻ったノッゾーミこと希は、地面の上を悶えて転がっていた。
 そして、七海の姿は今、和頼の胸の中にあった。
 しかし、彼女の胸から背中にかけて、和頼の手にしていたライブスの光刃が貫いている。
「七海、どうして……」
 カッズヨーリこと、正気に戻った和頼が、呆然と胸の内の彼女に問いかけた。
「一緒にいたかったから……ああ、胸が熱い……ううん、封印されし第三の瞳が熱いよ」
「七海、すまねえ……だが、どうなってもどこでも、オレは七海に惚れる」
 焼け落ちる厨二の海の中、2人はいつまでも抱き合っていた。
『テジュ、すまないっ、七海が落ち……ルーもか……』
 目の前の惨事に、ジェフが呆然と呟く。
 厨二の魔の手から生き残った者たちは、次々と脱出艇に乗り込んでいた。
 ヨーナと幼子たち、そしてデュークたちは無事に脱出できたようだ。
 しかし、残った脱出艇はあとわずか。
 それも初春たちの手で次々と破壊されている。
「行こう。あまり時間がない」
『そうだな……自分が厨ニと自覚しなれけば、大丈夫だ……七海は思いのままに生きろ』
 テジュとジェフ、そして正気に戻った希は、手近な脱出艇に乗り込んだ。
『誓約者が居なくなってしまった……。生死も共にすると誓ったのに、破らせるとは。厨ニ、恐るべし。これで余命は1ヶ月』
 遠ざかる発着所を見下ろし、ジェフは自嘲気味に笑う。
 同じように隣で下を見るテジュに、ジェフが手を差し出した。
『……どうだ、ルーの代りに俺と誓約で』
 テジュもまた、頷いてその手を取った。銀河に新たな希望が芽生えた瞬間だった。
『ルー……コレはアタシが活用するヨ……』
 扉が締まる直前に投げ込まれたポエミーでガーリーなノートを抱え、希は涙していた。
 どんな世も、己が幸せと思えば幸せ。
 そう納得するしか無いジェフたちだった。

「よかったのでありますか?」
 美空トルーパーもとい美空が暗黒頭巾皇帝R.A.Yに伺う。
『いいさ、ソラにはヤツがいる……俺たちも適当なところで脱出して、しばらくはリゾート惑星にでもしけこもうぜ』
 漆黒の頭巾を翻して、さりげなく数を増やした美空トルーパーたちとともに、宇宙に飛び立っていった。

●宇宙大戦争
『さて、許可は下りた。目標を更地にするぞ』
「……」
 350m級強襲型重装甲砲撃艦『メルカバ』のブリッジに立つ構築の魔女(aa0281hero001)特務軍人(少尉)と、その部下である辺是 落児(aa0281)特務軍人(准尉)は、惑星ハツ=ユメーの最後の姿を目にしていた。
『いいタイミングだ。他の支部の構造データがきたか。ならば、脱出艇から狙え。袋のネズミにする』
「ーー」
『構わんとのことだ。私は戦争がしたい…上は邪魔ものを消したい。まだ残っている地上部隊は、なに、H.O.P.E.の激しい抵抗で全滅したということだ』
 クックックと悪い笑みを浮かべる。
 ややためらいのある落児と違って、構築の魔女はまさにノリノリであった。
「…ー」
『キャラが違いすぎる? たまには良いじゃないですか、初夢なんですから、メタなこと言わないで下さいよ……ゴホン……主砲、開け! 特殊武装射出、空間レンズ生成実行!』
「ロロ」
『照準完了。主砲収束……発射!』
 大きく開いた艦首の砲門から、大口径レーザー砲が射出された。
 惑星ハツ=ユメーの都市部を焼き払っていく。地上は今や、厨二の海だ。
 レーダーに感あり。
 多数の敵戦闘機が宇宙空間に上がってきた。
『ふふっ、ドックファイトを仕掛けてくるか。血が滾るな。避けることではなく多種の反応装甲で受けることに特化した我が艦を落とせるかな? レンズ構成を拡散型に変更! 砲門、すべて開け!』
「ロー」
『レーザーの雨というものを体験していただこうか……撃ち方、はじめっ!」
 超電磁砲と六連式レーザーバルカンの弾幕が展開、戦闘機を撃ち落としていく。しかし、敵もさるものだ。
『流石、聖堂だけあるな、抜けない場所もあるか……副砲、用意』
「ーロ?」
『ああ、転移弾頭の出番があるのは素晴らしいことだ……そうだろう?』
 弾頭の着弾点を強制転移させることで空間ごと抉り取る特殊兵装、強大すぎる力ゆえに使い所の難しい兵器だが、今日は運がいい。
『ふふ、せいぜい楽しませてくれ』
「ロ…ー……」
 そんなに鬱憤が溜まっていたのだろうかと、落児は悪ノリする相棒を温かい目で見守ることにした。

●さいきょーのラスボス
「もうみんな気づいていると思うけど、あたいはものすご~く偉い!」
 邪悪な雰囲気を振りまく部屋の中で、雪室 チルル(aa5177)は邪悪なイスに座って邪悪にふんぞり返っていた。
『おっしゃる通り。チルル大皇帝は銀河大帝国さいきょー皇帝だからね。ちなみにあたしは秘書』
 スネグラチカ(aa5177hero001)はその隣に邪悪なリゾートチェアーを出して寝そべっていた。
 目の前の巨大なホログラムスクリーンには惑星ハツ=ユメーの攻防が映っていた。
「それにしてもこんなちっこい惑星、さっさと制圧できないの?」
『そうは言うけどみんな頑張ってるみたいだよ?』
「あたいは偉いんだからね! 銀河大帝国の大ボス、ラスボスよ! ライト・サイドは全員殲滅よ!」
『チルルの存在自体が厨二感たっぷりだからね。まさに強大だね』
「とはいえ、いきなりあたいが出ていって無双してもつまんないから、ここは須田のやり方を見ながらおやつタイムよ」
 チルルは邪悪っぽいイスから飛び降りると、だだっぴろい何もない部屋のど真ん中にちょこんと置いてあるこたつにいそいそと足を入れて、置いてあったミカンを食べ始めた。スネグラチカもついてきて、一緒におこたでミカンを頬張りながら、モニターを見上げる。
「もし脱出されそうになったら惑星ごとふっとばすわ! そのための宇宙要塞デヌ・ヌ夕ーよ!」
『主砲である<新年あけおめビーム>の準備はしっかりしておこうね』
 おこたの上に置いてあったテレビのリモコンっぽいソレの電源ボタンを押すと、外部出力<あけおめビーム>スタンバイの文字が出る。
「まあ、まずありえないと思うけど、万が一要塞に乗り込んできたらあたい自らが戦ってやってもいいかな? <ククク……ここまで来たことを褒めてやろう>とか<今のはメ◯ゾー◯ではない……◯ラだ>とか」
『またなんかの漫画に影響されたね。じゃあ私は<知らなかったのか……? 大魔王からは、逃げられない……!!!>って言おうかな』
「えー、ずるいー。あ、止めを刺す時はちゃんとレフトサイドに誘うのは忘れないようにね」
『なんで敗北フラグ立てるかなー? 大丈夫?』
「だいじょうぶよ、あたいは最強なんだから! はやく誰か来ないかなー」
 チルルとスネグラチカはおこたでモニターを眺めがら待っていたが、いつのまにか寝てしまっていた。
 銀河大帝国さいきょー皇帝とデュークたちの直接対決があるのは、エピソード6まで待たなければいけないことを、彼女たちはまだ知らない……。


 to be continue...


●スタッフロール
        デューク  デューク・サライウォーカー
       オビ=タン  オビ=タン・セノービ
         ヨーナ  ヨーナ
      一角 真珠星  一角 真珠星
      サナダ=ゼロ  真田 英雄
        須田米太  須田米太


    木霊・C・リュカ  木霊・C・リュカ
          凛道  凛道

       紫 征四郎  紫 征四郎
     ユエリャン・李  ユエリャン・李

       麻生 遊夜  麻生 遊夜
     ユフォアリーヤ  ユフォアリーヤ

        ユイナ姫  月鏡 由利菜
     リーヴスラシル  リーヴスラシル

        餅 望月  餅 望月
          百薬  百薬

      カッズヨーリ  麻端 和頼
       ノッゾーミ  華留 希

       御神 恭也  御神 恭也
        不破 雫  不破 雫

     オキ・カズーマ  沖 一真
      ダース・ジン  灰燼鬼

   ハツハル・アマーギ  天城 初春
      辰宮 稲荷姫  辰宮 稲荷姫

   ニウェウス・アーラ  ニウェウス・アーラ
     ストゥルトゥス  ストゥルトゥス

      五十嵐 七海  五十嵐 七海
      ジェフ 立川  ジェフ 立川

  テジュ・シングレット  テジュ・シングレット
     ルー・マクシー  ルー・マクシー

        日暮仙寿  日暮仙寿
      不知火あけび  不知火あけび

       辺是 落児  辺是 落児
       構築の魔女  構築の魔女

     美空トルーパー  美空
 銀河大帝国暗黒頭巾皇帝  R.A.Y

銀河大帝国さいきょー皇帝  雪室 チルル
銀河大帝国さいきょー秘書  スネグラチカ

Special Thanks

      エキストラA  御童 紗希(aa0339)
      エキストラB  カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)

and You.



Fin.

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    不破 雫aa0127hero002
    英雄|13才|女性|シャド
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • Foe
    灰燼鬼aa3591hero002
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681
    獣人|27才|男性|回避
  • 絆を胸に
    ルー・マクシーaa3681hero001
    英雄|17才|女性|シャド
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 譲れぬ意志
    美空aa4136
    人間|10才|女性|防御
  • 悪の暗黒頭巾
    R.A.Yaa4136hero002
    英雄|18才|女性|カオ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 鎮魂の巫女
    天城 初春aa5268
    獣人|6才|女性|回避
  • 天より降り立つ龍狐
    辰宮 稲荷姫aa5268hero002
    英雄|9才|女性|シャド
前に戻る
ページトップへ戻る