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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/01/03 09:01:45
オープニング
この【初夢】シナリオは「IFシナリオ」です。
IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。
●あれ?
想像の産物でしかなかったそれがこの世界に接触したのは、西暦2018年1月のことだった。
異世界との接触による大規模災害――いわゆる『世界蝕《ワールド・エクリプス》』――ではない。
だが、あの時同様に。年も明けようかというころ、東京都上空にて、膨大なライヴスエネルギーが観測される。
新たな異世界との接触。初日の出とともに、空を舐めつくすようなまばゆい光が発せられたかと思うと、世界はすっかり様変わりしていた。
「いやあ……あの時は本当にびっくりしましたよ。まさか女の子になっちゃうなんて思いませんでした」
街頭インタビューに答えるのは、H.O.P.E.勤務のS氏である。彼は、2017年には確かに男性だった。だが今は、一般的な女性の姿をしている。
あの日。
あるものはあるべきものがないことに驚き、あるものはないはずのものがあることに驚いた。
あの第二の世界蝕というものがもたらしたのは、性別の逆転であった。
「そりゃあ、最初は違和感もありましたよ。今でも、いろいろと戸惑いますし……でも、人間って慣れるものですよね。僕、いや、私は私なんだ、って思ってます」
ここは数あるif(もしもの)世界。性別が逆転した世界。
解説
●目標
目標:とくになし
●状況
能力者と英雄はいつもとは別の性別になっている。
H.O.P.E.では原因を探っているが、未だに詳しいことはわからない状態。
世界は混乱しているが、騒動から1週間ほどしてようやく落ち着きを取り戻しつつある。開き直り、ともいう。
●解決するなら(PL情報)
H.O.P.E.が研究する「ライヴスX」が鍵を握っているのではないか、という噂がある。
もしも元の性別に戻りたい場合は、調査し、H.O.P.E.本部の実験室に保管されている「ライヴスX」の入ったアンプルを叩き割ればよい。世界中の人間が元通りの性別になる。アンプルは、たたき割った時点で空気中に拡散し、時間とともに世界中に行き渡る。
逆に、このままが良いのであれば、この「ライヴスX」を守ればよい。
ライヴスX……H.O.P.E.が秘密裏に撃破したとある愚神が発散したライヴスを研究して作られたもの。
●その他
プレイングには性別を反転させた場合の見た目、身長や口調などをご記入ください。
共鳴時の性別は、そのままでも、変わっていなくとも構いません。
特に指定のない場合は、元のキャラクター設定を参照します。
※性別不肖の方で、このシナリオでも性別を限定したくない方はプレイングにご一報ください。プレイングで指定がない場合はどちらともないつかない描写にしますし、元に戻ったときにどちらともつかない描写にします。
●備考
何かあれば、コリー・ケンジ・ボールドウィン(az0006)……は現在応答できません。ネフィエ・フェンサー(az0006hero001)がお答えします。
リプレイ
●男女逆転デート
「へーこれが男性の身体なのね……っと、言葉使いには気を付けないとな」
文殊四郎 幻朔(aa4487)は、長くつややかな栗色の髪を後ろで一つに結いあげ町を歩いていた。
「名前通りの男性になったけど特段思う事はないな」
幻朔という名は、もともと男の子が生まれると信じて疑わなかった父によって授けられたものだった。
女性であったころから、スタイル抜群のナイスバディだ。男になってもスタイルの良さは変わらない。すらりと高い身長でスーツを着こなすその姿は、否が応にも人目を引いた。
いつもとは違う様子の幻朔に、黒狼(aa4487hero001)は首を傾げた。
『げんしゃく、へん……びょーき?』
「まあ、なるようになる」
ひとたび街を歩けば注目の的だ。
『げんしゃく……これすーすーしゅる。クロきらい』
幻朔の英雄である黒狼は、状況を理解してはいないようで、不思議そうに零れ落ちるレースをぽんぽんと触る。
ボーイッシュな女の子といった様子の黒狼だが、フリル過多のドレスを着こんでいるのは幻朔の趣味だ。歩くたびに裾が揺れる。……幻朔は可愛いものが好きだ。
ノリノリで現状を楽しむ幻朔は、通行人に笑顔を向けたりファンサービスをし。どこからか湧いてきたスカウトをあしらいぶらぶらとしていると、ふと可愛い後輩の顔が浮かぶ。
「よし、雪ちゃんをデートに誘おう!」
「雪ちゃーん、デート行きましょ。折角だし私がエスコートするわよ?」
突然の連絡を受け、銀 初雪(aa4491)は戸惑った。先輩の申し出であれば無下にしたくは無いが、外はなんたってこの騒ぎだ。
家から出たくは無い。
曖昧な返事をしているうちに、勢いに押し切られてしまった。
『嫌ではないんだろう?』
紫ノ眼 恋(aa4491hero001)はキリッとした雰囲気の狼耳”青年”だ。この状況に動じている様子はない。
「デートは……その……着ていく服が……」
急に女性になってしまったので、男物の自身の服はほぼほぼサイズが合わない。
「胸」
『ああ、そこは仕方がない。どれ、あたしのぶらじゃあを貸してやろう』
「狼。女性として、それは、どうなん……?」
なるべく目を逸らすようにして、受け取っておそるおそる着替える。
しばしの時間がたった。
『どうした?』
「はい、らない」
『な、なんだと…!?』
背は低めなのではあるが、胸は。……サイズが合わなかった。下着が小さすぎたのだ。
『なんでマスクを付けている。風邪でもひいたか?』
「いや……」
初雪は言葉尻を濁す。あまり顔を見られたくはなかった、というのが本音だ。
待ち合わせ場所にいた、すらりと目を引く長身の男性。それが日頃見慣れた先輩であると気が付くのに少し時間がかかった。
(綺麗な人は男になっても綺麗なんやな……)
とても様になっているのに、内心感心してしまう。
『げんしゃく、おなかへった』
「黒狼、もう少し我慢しような。後で美味しいご飯あげるからな」
幻朔はこちらに気が付くと手を振った。通行人がざわつき注目が集まる。
どうも、先輩はノリノリのようだ。
『ゆき……めすなた? いつもちがう』
黒狼は不思議そうな顔をしている。
『こい……においちがう……』
(におい、やっぱり違うのか)
「雪ちゃん胸大きいわね。私のブラジャー使う? なんてね」
「!!! や、流石に下着を借りるわけには……!」
ぶんぶんと首を振る。面白そうに笑う様子に、ようやくからかわれたのだと気が付いた。いや、幻朔のことだから、本当に貸してくれるつもりだったのかもしれないが。
「いや、俺は、俺なんで」
「どう? 雪ちゃん格好良い?」
「格好良い、といいますか。先輩はそっちの姿でも、綺麗やなとは思いますが」
「綺麗って……」
「俺は、いいので。先輩も、見ていきましょ」
ちょうどよくメンズ用の店がある。ごまかそうとはしたのだが、ぐい、と顔を近づけられた。
「雪、俺と一緒にいるのは嫌か?」
「え、あ」
「服が無いなら俺が選んでやるよ。お前に似合うとっておきな」
いつもと同じ口調に安心していた……ところへの不意打ちだった。
「恋も行くだろ? な?」
『ふむ。あたしも、幻朔殿に習い「俺」ということにしよう。どうだ、殿方らしいか?』
『でえと?』
『ああ、でえとだ。では、クロ殿は俺がえすこーとをしよう』
『えしゅこー? それおいしい?』
『さて、どうだろう』
目線を合わせてそっと手の平を重ねる。てくてくと従う恋と黒狼たち。行かざるを得なかった。
デートに着ていく服がない。ならば買いに行けばいい。というわけで、行き先は決まっていた。
「あの、ここ、すごく……高そうな」
明らかに高級ブティックだ。値札が付いていない。それに構わず幻朔は服を何着も持ってくる。
「支払いは俺がするから好きな服を選ぶといいぜ」
別の売り場では、恋に連れられた黒狼が装飾品を手に取っている。
『この髪飾りもとても可愛いと思うが』
恋は黒狼の黒髪に手をやり、赤い髪飾りを差し込む。
『どうだ?』
『くすぐった』
その感想に思わず笑みが漏れる。
『ああ、一層可愛らしいな』
『きらきら』
『これがいいか?』
恋は黒狼の意見を汲みつつ、さりげなく見やすい位置に持って行ったり、手を引いたりと。エスコートが様になっている。
「これなんて雪に似合うんじゃないか?」
幻朔が選んだのは、夜会に行くような清楚なドレスだ。派手派手しいものでないので少しほっとはしたものの、上品ながらも女性的なデザインだ。
「これはちょっと、大人すぎるような」
「そんなことはないさ。似合ってる」
幻朔の手が近づいてきて、そっとマスクをとった。
「雪、素顔を見せてくれないか? マスクなんかで隠すのは勿体無いぜ?」
「いや、でも」
「人生は楽しんだもの勝ちだぜ、雪」
……楽しんだもの勝ち。そう言われてみれば、たしかに楽しいのかもしれない。
「ほら、こっちはどうだ?」
油断していると、次から次へと新しい服を見せられる。
「楽しかったか?」
「はい」
「じゃあ、日常に戻るとしよう」
それからみんなでご飯を食べて、解散の運びとなった。
なんだかんだ、デートは楽しかった。
家に帰った初雪は思う。
1人だったならこうはならなかっただろう。ずっと家に閉じこもって、事態の終息を待っていた自分がいたような気がする。
元通りの世界が訪れるのは、それから少し先の話だ。
●二人で
「とりあえず、色んなとこ行ってみよっか!」
【ぅ、うん、頑張ったりしたりする、よ!】
立ち上がるといつもよりも視点が高いのが新鮮だ。カスカ(aa0657hero002)は思った。
二人とも少しだけ背丈が伸びた。日常とは違う景色。ぐっと伸びをする御代 つくし(aa0657)がまっすぐに伸ばした手が、少しだけ空に近い。
事件からだいぶ時間が立った。そう簡単には元に戻れそうにない。
ならば、前向きに。
「みんなの姿を見に行こー!」
と、つくしははりきって外に出る。
「こんにちは、少し背が伸びましたかね」
「クレアさん……あんまり変わりないですね!」
つくしはじっとクレア・マクミラン(aa1631)を見た。いつもより背が高く、筋肉質で……でも、本質的なところは変わっていないように思われる。
【アルラヤ・ミーヤナークスさん、は、……変わってなかったりしたり……です……?】
カスカは首をかしげる。
『息災で何よりだ、同志』
アルラヤ・ミーヤナークス(aa1631hero002)も、変わりなく。全く変化がない。元より男女含め、多くの兵士の集合体であるがゆえに、影響が見られない。
つくしはもう一人の性別不明英雄は性別不明のいつも通りだったので、案外そんなものなのかなーと思ったりしつつ。
「暇があったら、お茶とかどうですか?」
「是非」
同部隊に所属する仲間との交流をする貴重な機会でもある。
4人は、近くの喫茶店に席を見つけ、近況などを含めてのんびり話すことにした。
クレアはともかく、アルラヤは表に出てくることが少ない。
もとよりアルラヤは無口なため、自分から積極的に自分について話すことはない。が、聞かれれば答える。そんな姿が新鮮だった。
「姿がちょっとくらい変わっても、変わらないことの方が多いよね!」
慣れないのはあるが、つくしはこの状況を積極的に変えようとは思わなかった。
もしも自分だけ変わってしまっていたら困るかもしれないけど、皆が一緒なら怖くもない。
「ちょっとだけ、楽しいかも」
なんて、不謹慎かなと言いながら。
「他の人には内緒だよ?」
姿が変わろうと大切な仲間は大切なままだし、護りたい世界を護りたい。自分の出来る範囲、手の届く範囲を精一杯護りたいと思う。
その芯は、変わっていないのだ。
【……ん、……ぅ、ん……そう、だったり、だね】
カスカは心中複雑だった。心に存在する、この引っ掛かりはなんだろう。
戻りたいな、と思う。
なぜだろうと考えて、一人の姿が思い浮かぶ……。けれど。
普段であれば、顔の一つを見に行きたいところだったが、なぜだか怖かった。今の自分の姿を変に思われないだろうか。――前の自分を好きになってもらえるか分からないのに。
「カスカ?」
【……ん。行こう】
何故だろう。それが何故なのかは、分からなかった。
●真相に迫る
「アーテル……目が覚めたら、その……」
『黎夜もか? 俺は見ての通り……俺の顔に何かついてるか?』
アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)の顔を見て、木陰 黎夜(aa0061)はしばし絶句する。そこにはモデルのような美しい女性がいた。
見た目にほとんど変化のない黎夜とは対照的だ。
「……テルの……アーテルの美人……!
『……褒めてるのか貶してるのかどちらなのかしら?』
しばらくすると、世間は男女の反転の話でもちきりとなった。
「落ち着かねーし……やっぱり元の方がいい……アーテルが美人なのはいいけど……元の方も美人だから、問題ねーし……」
黎夜はアーテルを「美人度が増した」と形容する。たしかに言い得て妙だった。
『余計な一言が入った気がするけれど、私も元の方が良いわ。まぁ噂が正しいかなんて分からないのだけれどね』
両名の目的は元の性別に戻る事。そんなことができるかはわからないが……。
黎夜は家に引きこもりながらインターネットを使って情報収集に励む。アーテルはバイトをこなしつつ、外で情報収集をすることにした。
ほとんどはデマと思えるようなものばかりだったが、リンカーたちの熱烈なファンサイトで気になる記述を見つけた。
「事件が起こる少し前、××市に展開したドロップゾーン内の愚神の影響で、男女が逆転していた」というものだ。
アーテルのほうも、気になる噂話を見つけていた。この事件を世間がどう受け止めるかは様々な一派があったが、『この逆転した世界を戻したくはない、強固な反対派』が存在するとのことだ。
『そう……ありがとう』
しっとりと優しい雰囲気をまとった美人であるからなのか、なんとなく男性たちは気軽に口をきいてくれる。いや、もともとは彼らも女性であるのだが。
二人は合流し、情報を取りまとめる。
『協力者してくれそうなリンカーも見つけたわ』
「……そうか」
移動しようと外に出た瞬間、何者かに取り囲まれる。
「いたぞ! ……この事態を嗅ぎまわっているというのはお前らか!?」
目の前にいたのは、武器を持っているリンカーたちだ。
『こうなってくると、信憑性もあるのかもしれないわ』
●いつも通りの
クレアの持つ煙草の煙が、空へと吸い込まれていった。
日常が続く。
いつも通りだった。アルラヤが作った朝食の匂いが部屋に満ちている。
朝食とともに朝刊を読み、日課のトレーニングに勤しむ。アルラヤは、そのトレーニングにつきあっていた。
クレアたちはいつも通り。
目下の悩みはせいぜい普段から着ているスーツを仕立て直したり、その他の服を買い直す羽目になったことぐらいである。
「やれやれ、面倒な事態だな。スーツも全て発注の掛け直しだ」
『サニタールカ、それ以外に不満がないのならば、それは恵まれている。世の人々は、多くの不満や不安を抱えていることだろう』
「まぁな、私はかえって動きやすくて助かってるよ」
むしろ胸がなくなって動きやすくなった、などとはさすがに人には言わなかったけれど。
「それにしても変わらないな、アルラヤは」
『我々は我々である。性差も何も、内包していたものは変わりはしない』
メッセージがあった。1件。誰からだろうか。
送信者は水落 葵(aa1538)。
内容はシンプル。
ただ一言、「この件についてどう考える?」と。
●<解決>へ向けて
女性となった葵は、見た目はグラマラスな美女だった。ハリウッドでも通用しそうなメイクは堂々としたものだ。
「要はついてるかついてないかだろ? 物理的に色んなものが。
そんなの髪が長いか短いか程度の違いじゃねぇか」
……とは、本人の弁である。
『……』
能力者であるウェルラス(aa1538hero001)は、自分の姿を鏡で見る度、既視感を覚える。褐色の肌を持つウェルラス。どこかで見たことがあるような。思わず眉間に皺を寄せれば更に非常になにかが懐かしいような気がする。
ソレを思い出せないことが何故かとても寂しくて哀しい。
「俺ぁ別にどっちでも困らねぇけど、お前はどうしたい?」
『……別に、ただこのまま生活をするだけならどちらでも困らない……けど……オレの中の何かが戻らなきゃって言う』
中身も口調も、普段とはさして変わらない二人。
『思い出せないけど、きっとオレが男だから感じた不幸も幸せもあって、それを忘れてしまったことはきっと仕方がないんだけど、否定しちゃ……いけないはずだから。だから、オレは……戻りたい』
「よし」
方針は決まった。
ならば、行動あるのみだ。
葵もまたインターネットで気になる動きを察する。
困惑している者、楽しんでいる者。……元の性別に戻りたいと思うことも自然な反応だ。だが、どうも「この事態をまるで知っていたかのような」者たちの動きがある。
誰かがこの事態を良しとしている。
だが、その動きに反対するものたちもまた一人ではない。他の能力者・英雄からも情報を得るために、二人は東京海上支部へと向かう。
道中、派手な戦闘を目撃する。黎夜が多数の敵と戦っている。
「合流の予定が早まったな」
腕前としては大したことのないリンカーだが、数が多い。
「こっちだ!」
葵が攻撃を引き付ける。
守るべき誓い。攻撃の矛先が葵へと向く。
敵の数は吐いて捨てるほど。まともに相手にしていたらきりがない。
銃声が響いた。振り向けば……共鳴したクレアの姿を目にとめた。
敵か、味方か。分からなかっただからこそ、一番先に声をかけた。味方だった場合は頼りになる仲間として。敵だった場合は……真っ先の排除を狙うために。
良くも悪くも褒め言葉として「一番厄介」と認識しているのだ。
幸いなことに、今回は味方だった。
クレアの放った弾丸は、正確無比に敵を射抜いた。援護射撃に従い一歩下がり、あえて攻撃をひきつけたところでライヴスリッパーを食らわせる。
黎夜は礼を言いつつも、クレアから少し距離をとる。黎夜は男性が苦手だ。……この人も、もとは女性なのだろうけれど。クレアもまた、漂う微妙な機微を察したのか距離を詰めてくることはない。逆に、現在女性の姿をとる葵とウェルラスとは距離をとらずにいられる。
不思議なことだ。
黎夜はマナチェイサーを使用し、敵を追う。
●実験室
H.O.P.E.の職員のほとんどは首をかしげたが、一部の職員がたしかにそういったドロップゾーンがあったこと、厳重に保管された愚神ライヴスのサンプルがあることを認めた。
H.O.P.E.もこの事態を重く見て、効果を打ち消す研究をしていたのだ。試作品ができたが、有意な効果は見られないとされている。
が、それは表の反対派の動きを警戒しての話だ。この事態を終わらせるアンプルは、すでに用意されていた。
「とにかく、案内しろ。連中に勘づかれる前に……」
葵が要求した途端、施設からは爆発音が響いた。
時間がないのは明らかだった。
クレアに場を任せ、葵と黎夜は研究室へと走る。幾多も仕掛けられた罠を、マジックアンロックが看破する。
嵐の中をすり抜けるように、二人は走った。
「ここか!」
借りた認証カードキーをスライドさせる。扉の先に、アンプルがあった。
「これ、どうすればいい……?」
『割れば良いんじゃないかしら? プチプチ、使っておく?』
「じゃあ、ぷちぷちの上で、割る……」
「させるかあ!」
妨害派がなだれ込んでくる。敵がアンプルをかすめる。
が、その時。
「元の性別だからこそ、うちらの誓約が達成されると思うから……邪魔、しないでくれ……」
黎夜のブルームフレアが。アンプルを空へと巻き上げる。
「例え、"今"を変えても"過去"は変わんねぇさ。自分の"今"の気持ちを誤魔化せるだけだ」
葵のライヴスショットがアンプルを撃ちぬいた。
砕かれた。
舞い散る硬化ガラスの破片が美しかった。
世界は、元に戻っていく。
まるで何事もなかったかのように。
●後日談
ウェルラスは鏡を見ていた。元の自分だ。何か変わるわけでも何かを思い出せるわけでもないが、安堵の気持ちに浸る。
一方で葵は、どうせ戻るなら女性体生活をもっとエンジョイ!的に満喫するべきだったのかもしれない……。といったようなことを考えていた。
「こう、蠱惑的な自撮りをSNSにアップするとか」
『例えまたなってもやめといて』
クレアとアルラヤは、変わらない。また彼らの日常へと戻っていく。
「アーテルの……美人」
『もう元に戻ったわよ?』
目を覚ました黎夜は、アーテルが元に戻っているのを確認した。
「元に戻っちゃったね」
【ぅん……そうだね】
「楽しかったね」
【楽しかったりなんだったりして……】
つくしとカスカは空を眺める。
ほっとしたような、不思議な気分だ。
「おっと」
そこへ葵が通りかかる。つくしたちは従妹の友人だ。
あの後、クレアから会っていたと聞いたのだが、どうやら彼女たちも元通りだ。
「元通りだ」
頭をわしわしと撫でる。その様子はどことなく誇らしげでもあった。
(ひょっとして、この人が?)
【事件を解決したりしちゃったり……してたりして?】
夢のような不思議な日々だった。
初雪のお土産は女性ものの服だ。高級店の紙袋にドレスが数着。事態が元に戻っても、それは部屋の中に鎮座している。
(……いいのか? これは)
「買ってもらったの?」
『ん』
恋に貰った髪飾りを、黒狼はじっと見ている。身につけるにはまだ早いようだが、明かりの下で光ったり転がったりするのが面白いらしい。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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