本部

アトモスフィアに抱かれて

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~10人
英雄
5人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2018/01/06 10:02

掲示板

オープニング

● 星の世界。

 その世界は星にまみれていた。まるで重力など存在していないかのような付近に星が存在し。
 空はその大気の重なりで果てまで青く見える。
 そんな世界に君たちはいた、見上げるのは夜空を抱いた翼の愚神。
 愚神アトモスフィア。その力は一つの世界をドロップゾーンの中に出現させてしまうほどに強力だった。
 無数の星ある世界。美しい宇宙の世界、その中央を羽ばたくその鳥は。
 人語を解さないのだが。
 だが、明確にリンカーたちに伝わってくる意志がある。
 人間たちを許さない。
 その思いが痛いほどに伝わってくる。
 その愚神は高い空、それこそ宇宙空間から君たちを見下ろしている。そして全ての銃弾、全ての剣戟が届かない空から鉛のような風を君たちに叩きつけてきた。
 一方的な殺戮、そうなるはずだった。
 けれど。
 その愚神は知らなかったのだ。リンカーの適応力。
 そしてこの世界の法則。
 誰しも飛べる世界。
 誰しも宇宙に手をかけることができる世界。
 君たちの背中に小さな翼が芽生える。
 その翼を大きく広げた時、空を支配する王に。反逆する時となった。



● 大気の翼

 このドロップゾーンは愚神の強大な力の影響で、別世界そのもののルールが移植されているようです。
 その世界では霊力を背中から通して大気を翼とすることができたらしい。
 そのため大気を背中に翼として生やすことができます。
 翼は一つの星です。雨雲や雪と言った天候を左右できるかもしれません。
 あなたの翼は発想次第であなたに力を与えるでしょう。
 たとえば、雪の力を内包した翼は氷雪系のAGWを強化するでしょうし。
 雨の力を宿した翼は周囲に水を振りまくことでしょう。
 この翼によって皆さんは空を羽ばたくことができるのです。

 さらにこの翼の速度は想像を絶する速度を皆さんにもたらします。
 具体的には地球から月まで、皆さんの移動力にもよりますが。低レベルリンカーですら五分で到着できるほどの速度をもたらすのです。
 そのため、星と星を跨いだ戦闘を皆さんには演じていただくことになるでしょう。

● 星の属性について。
 この世界は重力が薄いのか、大気と大気が触れ合えるほどに星の距離が近いです。
 星と星も接触しません。無干渉であれば。
 ですが星ごとに力をもち、その星は皆さんに力を与えることもあれば力を奪うこともあるのです。

・金色の星
 この星では常に砂が吹き荒れています。
 大気圏すれすれまでに砂が吹きつけており、しかも霊力を含んだ金属質なものです。
 この星で戦う場合は、剣と槍と名のつく武装以外は攻撃力が半減します。
 ただし、皆さんの翼の性質によってはこの砂を無効化できるかもしれません。

・青色の星
 水が豊富な星です、環境としては地球に近く生命体が豊富です。
 特にリンカーに向けて影響はありません。

・白色の星
 表面が鉄で覆われた光反射する星です。この星だけサイズが一回り小さく、他の星とぶつかると、他の星を砕いてしまうほどに硬いです。

・赤色の星
 光を生み出す星、炎の星です、太陽が参考となるでしょうか。
 近づくだけで燃焼系のダメージを受けますし。この星のダメージだけは桁外れです。

・緑色の星
 大気が微細な生命体で埋め尽くされた世界です。ここで呼吸をすると、毒のような状態となり継続ダメージを受けますが、クリアレイなどで回復可能です。




 

解説

目標 愚神アトモスフィアの撃破。


 今回の任務の注意点としては、想像を絶する距離を瞬時に移動しながら戦うので。
 普段と違って、長射程の武器が優位となりにくいです。
 そのため近接アタッカーにスポットが当たるかもしれないのですけれども、その場合邪魔になるのが星の特性です。
 戦う場所を選ぶ必要があります。
 また、移動距離は移動力10前後で、地球表面から月にまで届きます。


ケントゥリオ級愚神 アトモスフィア
 大きな翼をもつ鳥の愚神。
 その大きさは翼を広げると50Mにも及ぶ。
 その能力の特出すべきところは移動距離ですが。今回は皆さんも同じ条件で移動できるので関係ないでしょう。
 アトモスフィアの基本攻撃は、大気を叩きつける遠距離攻撃ですが、これは範囲ばかり広く威力命中はさほどではありません。
 翼の使いようによっては無効化できるかもしれません。
 ただスキルが特徴的なので、注意してください。


1惑星吸引砲
 一つ惑星を圧縮し飲み込み、それをビックバン級のエネルギーとして放ちます。
 ほぼ前方にいる全存在にダメージが入るでしょう。
 リンカーに対してのダメージはそうでもないのですが、星は砕けて壊れてしまいます。
 また、吸引した星によって、その星の特徴にあるダメージを与えてきます。

2 高圧縮級
 対象一体をマイクロセンチレベルに圧縮しようとします。
 風の檻で捕えて徐々に圧縮します。
 十ラウンドの間無抵抗だと重体レベルでのダメージを受けますが、誰かが一撃でも攻撃をくわえれば、ちょっとしたダメージで済みます。
 
3 吹き飛ばし
 リンカー一人を何かに衝突するまで吹き飛ばす技です。
 

リプレイ

プロローグ

「惑星間を一瞬で飛ぶなんて、思考が追いつきませんね……」
――非現実的な現象も、ドロップゾーンという夢の中なら思いのままか……。
 『月鏡 由利菜(aa0873)』と『リーヴスラシル(aa0873hero001)』の二人は周囲を見渡した。
 ドロップゾーンの入り口に飛び込んでみれば、あたりには星の瞬くメルヘンチックな世界が広がっていた。
「あはは、星を行き来しながら戦うなんてまるでどこぞの星の戦士みたいだね。みんな輝いて見えるよ」
 そう謳うように告げたのは『白月 アリア(aa5419)』。
「でも私にはそこら辺のモブキャラとか星屑くらいがお似合いだね。せめて星屑らしく大気圏で燃えて流れ星になるのがみんなの為になるのかな、月鏡お嬢様?」
 そんな一行の頭上を大きく羽ばたく音が通過する。
 放たれた風圧は重たく、光を歪ませ景観を崩すほどに強烈だった。
 それを避けるためにリンカーたちは地面を蹴り散開する。
 大気の鎧を持たない鋼の星から外に出て、そして各々が戦闘態勢を整える。
 『志賀谷 京子(aa0150)』は宇宙に放たれようとしていた。
「随分と派手な敵と世界が出てきたね」
――こちらも同種の力は振るえるようですね。
 京子の言葉に『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』が頷く。京子の不敵な表情が光で照らされた。それは背中に押し固められようとするプラズマの光。京子の表情が影と光で彩られ、その瞳の闘争心を際立させる。
「……世界すらもはらむドロップゾーンですか興味深いですね」
 その隣についたのは『構築の魔女(aa0281hero001)』。彼女はすでに『辺是 落児(aa0281)』と共鳴済み。
 その背中に煌くのは真紅に染まった翼だった。
「同じ土俵で戦えるなら、あとは知力と胆力だよ」
――ええ、気後れしてはいられません。
「構築の二つ名が伊達ではないことをお見せしましょう」
 二人は武装を構える。
 遠くに空間を切り裂くような翼の音が聞こえる。敵を迎撃するために二人はほぼ同時にスコープを覗く。

第一章 星をかけた戦い

由利菜は見よう見まねで背中の筋肉に力を入れる。すると肩から下が熱を持つように動き、星々が光の線のように背後に消え去った。
「これが…………」
 由利菜は自分の翼に視線を移す、そこには美しい純白の翼が淡く光を湛えてそこにある。
 その翼の向こうには数多の星が各々の光を湛えて輝いている。
 それらの配置を由利菜は一つ一つ記憶していった。
「ここでは目まぐるしく戦域が変わります……戦い易い星の宙域を覚えておきましょう」
 そうリーヴスラシルに告げると、由利菜は方向転換、敵を見すえる。
 それは50Mの翼をもつ鳥。
 今まで鳥獣愚神を数多く見てきたが、これほどのスケールは初めてと言える。
 その鳥が星々を吹き飛ばしながら由利菜に突進してきた。
 数キロという距離を一瞬で。光の波長が圧縮されて愚神の姿が赤く映る。
 そんな残像のような姿形を由利菜は見事盾でとらえた。
 しかし。
「くぅ」
 その勢いに押されて由利菜は弾かれる。圧倒的に質量が違うのだ。完全に敵を止めきることは難しい。
「させません!」
 その愚神へと赤色の星から銃弾が飛ぶ。
 京子とアリアの連携射撃である。
 二人は赤の星表面から敵を狙い撃っている。煮えたぎった炎も惑星の重力にも捕えられないその距離で。
「電磁場が乱れてフレアが起きると嫌だな」
――起きても避けられるよう注意して戦いますか。
 アリッサの声に頷く京子。
「うーん、もしかしてなんだけどこの星って動かせたりするかな?」
 アリアはそう愚神の動きを眺めながら思う。
「まぁ多分無理なんだろうけどさぁ。そうだよねわたしみたいな何をしてもダメな人間が考える事なんて結局は駄目に決まってるんだろうね。あはは」
 二人の支援を受けながら由利菜は愚神の手から逃れようとする。
 離れ際に斬撃を放とうとするが、愚神の方が動きは早かった。
 そのカギヅメの一撃、二撃それを剣で捌くと翼の羽ばたきで由利菜は吹き飛ばされた。
 体勢を立て直す由利菜。
 その由利菜を見すえて愚神の甲高い威嚇の声が響く。
 そんな愚神の翼に少女がとりついて。そして。
「いっけー」
――こんばんは焼肉だ~。
 その槍の炎を全力で噴出された。
 驚きに声を上げる愚神。
 『餅 望月(aa0843)』はその声に耳をふさいでいったん遠ざかり、器用に翼を翻して由利菜に手を差し出した。
 二人はお互いの遠心力を利用して舞うように愚神から距離をとり、こちらを睨みつけるアトモスフィアを観察する。
 その間も『百薬(aa0843hero001)』が望月の内側で感極まったように声をかみ殺している。
「このドロップゾーンは、まずい、百薬がクセになる」
――真に羽ばたく時が来たんだよ。
 凛と百薬が言い放つと、その翼から風が舞った。
 それはまさに暴風というべき圧力で、周囲の星を少し押しのける。
 その暴風を圧縮した嵐の翼で体制を制御、向かってくる愚神を由利菜と共に押しとどめた。
「普段から言ってるのとは桁が違うんじゃない?」
 望月は百薬にそう問いかける。
――愛の羽ばたきは宇宙も越えられるのよ。
「ここは、合わせる、いや信じるしかないか。」
「「愛の嵐が世界を癒します」」
 告げる二人であったが、愚神が巻き起こした風によって二人は白い星に叩きつけられてしまう。
 そして隙ができるや否や、その翼で星を包むような動作をするアトモスフィア。
 しかし縮尺の違いによって包めているように見えるだけで、実際の星はアトモスフィアの何百倍だ。その大きさの星をどうするのかというと。
 とんでもない風の圧力で圧縮し始めた。鉄でつくられた白い惑星がみるみる小さくなっていく。
「あれはまずそうですね」
 構築の魔女はその挙動を見るや否や青い星から飛び出した、翼を震わせて一瞬のうちに宇宙をかける。
 赤く染まって見える愚神に対して、その銃弾を何発もみまう。
 だが愚神の圧縮行動は止まらない。
――神を、しかも鳥を名乗る実力にたるか。試験といこうじゃないか、覚者よ。
 その愚神に、下側から由利菜、望月。そして上方から『八朔 カゲリ(aa0098)』が来襲する。
 その背に黒い太陽のような翼を背負っているせいでその姿が黒い影のようにしか見えない。
 その姿は虚空の宇宙に在って黒く燃え盛る太陽のようだった。それは彼の意志が強く反映された翼。
 だが。その視線だけははっきりとわかった。愚神を見下ろすその瞳だけは、まるで氷のような鋭い視線。
 それはすなわち何処までも前へと進み、その為なら何を焼き尽くすも厭わないまでの意志力のたまもの。標的はもちろん愚神である。
 そんなカゲリのぶれない姿勢に『ナラカ(aa0098hero001)』は笑みを漏らす。
「堕ちろ。人騒がせな神はもう間に合っている。」
 カゲリはアトモスフィアの目に炎を浴びせた。
 由利菜ががその隙に翼を切り上げ。望月はその槍にて腹をつく。
 だがその巨大な体の前に手ごたえがない。
 ただし、惑星にかかっていた圧力が消え去り周囲に暴風が吹き荒れる。
 それに風の力を宿した翼の、望月は耐えて。そして反撃の一矢を放つ。
 対して怒り狂う愚神その翼で望月をからめ捕ると別の惑星へと突撃した。
――京子。こちらに来ますわ!
「ええ! 嘘! っていうか早すぎ!」
 そう叫んでいる間に京子も絡めとってアトモスフィアは惑星に突撃した。
 そのまま豪炎を翼に纏ったまま貫通し。望月も京子も赤の惑星の影に隠れた別惑星に向けて吹き飛ばされてしまう。
 それは緑色の星。菌に侵された毒の星である。
「このまま突っ込むつもりかな?」
――あの星は嫌~。
 望月の言葉に百薬は悲鳴を上げた。
 京子の腕にも鳥肌がたつ。
――生理的に嫌ですね……
 だが、愚神の好き勝手を許すわけが無い。構築の魔女が弾丸を飴のように浴びせる。
 愚神が悲鳴をあげて動きを止める。
「こっちに手をのばして!」
 斥力そのままに緑の森へ突っ込もうとする望月、と京子。
 京子は望月に手を伸ばして翼を思いきり広げた。
「いっけーーー」
 その翼から目を覆いたくなるような光が瞬いた。それは雷雲を内包したスパーク。神威を宿した雷撃の翼が、緑の惑星の細菌たちを焼きつつ斥力を打ち消す。
「大丈夫ですか?」
「魔女さん!」
――魔女殿。
 アリッサと京子が上空を見あげると、膨大な熱量が三人を包む。
 構築魔女は無色透明の大気の翼。
 それが今は赤の星の熱を内包して真っ赤に染まっている。その熱量で、大気を消毒しているのだ。おかげで毒素の影響はない。
 次いで、アトモスフィアが星にひきつけられるように落ちてきた。 
 カゲリの全速力の一撃を受けて体制を崩し、愚神は吹き飛ばされたのだ。
――京子は雷雲。それに大気と嵐。同じ風邪でもこうも性質が異なるとはね。
 そう面白げにナラカはつぶやいた。
 興味があったのだ、それぞれの力、望む形に。
「ナラカがお前に、贈り物だそうだ」
 カゲリがそう京子に告げると、京子はにやりと笑った。
「全く、毎回試練、試練って……」
 次いで京子が目を見開くと翼の光はさらに大きくなった。
「雷霆は神話じゃ神の業とされてきた。あの相手にぶつけるものとしてはふさわしいでしょ」
――……何か裏がありますね?
「秘密!」
 京子は息を止めて愚神を追い、星の奥地に。
「私の熱の支援もあともって30秒です」
「その間に痛打を与える!」
 その落ちていく背後から銃弾を何度も何度も浴びせる。
「簡単に距離が詰められるといっても長い手は便利だよ」
――京子、これ以上は。
 愚神が体勢を立て直し始めた。
 京子はいったん翼を広げてブレーキをかけると、一瞬でその星の大気圏を突破する。
「これだけの力があればきっとあれができるよね」
 京子が悪戯っぽく告げるとアリッサが言った、そんなふたりに癒しの光が降りかかった。
「星を超える癒しの力です」
 望月の支援を受けて体制を立て直した二人はあたりを見渡しそして、目的の者を見つけると全速力で駆けだした。
――目にものをみせてあげましょう、そのためにいったん仕込みと行きましょう。
 二人は鋼の星を探して飛び出した。

第二章

――ユリナ……その翼に月神マーニの加護を宿せるか?
「可能性を信じましょう……!」
 緑の惑星から躍り出たアトモスフィア。その翼は薄く緑色に染まっていたが一羽ばたきで汚染は散った。
 その眼前に現れたのは由利菜で。
 由利菜はその翼に光の力を集積。光の屈折により、ミラージュシールドの蜃気楼の幻惑効果を増幅させる。
 その由利菜の複製された姿に爪をたてようと伸ばしているアトモスフィア。
 由利菜は斬撃、そのすれ違いざまにその翼が血にまみれていることに気が付く。
 アトモスフィアの背中に銃弾が浴びせられた。アリアの弾丸は由利菜の動きをサポートするように放たれる。
「アトモスフィア、今まで空の王者を気取っていたようですが」
 躍り出た望月は鳥に抱かれる。だが傷ついたその翼では望月を圧縮することができない、それどころか望月の翼の力と拮抗して、膠着状態に陥った。
「その時代も終わりです」
 由利菜とカゲリが背後から来かかる。
 その攻撃に抵抗して、愚神は風を吹き起こす。
 それはあたりに無差別に散らばってリンカーをふきとばした。
「……あの愚神、機動力は流石に凄まじいです。ですが、このゾーンのルールは私達にも適用される……! ラシル、一気に駆けますよ!」
 由利菜がときの声を上げる。それにリーヴスラシルが応じた。
――嘗ての私が神の力を引き出す際にも、背には光の翼があった……。羽ばたけ、マーニの翼!
 そして追いついたのはスナイパー。構築の魔女は速度を維持したまま、衛星のようにアトモスフィアの周囲を回り、その背に、翼に弾丸を撃ちこんでいく。
「急制動の兆候を見逃さないようにですね」
 だが今は望月に愚神が捕えられている、動く心配はしばらく無いように見えた。
「えええい!」
 痛みでアトモスフィアの拘束が鈍ったのと同時に、望月はその翼を食い破って脱出した。
 その槍の穂先で敵を捕らえられる距離を保ちながら、アトモスフィアの周囲を旋回して斬撃を浴びせる。
 その傷口から炎が吹きだし。その横っ面に黒炎が浴びせられた。
 痛みのあまり愚神は先も水に羽を羽ばたかせた。
「とべるって、いいね」
――でしょ?
 望月も柔らかく微笑んだ。自分の両足だけではいけないところに翼があればこうも簡単に行くことができる。
 だが同時にそれは、行きたくもない場所に送られる危険性もはらんでいる。
「魔女さん!」
 京子が叫んだ。彼女を庇ってアトモスフィアの突撃を受けたのだ。構築の魔女は木端のように金色の惑星に吹き飛んで。
 そして見えなくなる。
 アトモスフィアはその星を利用しようと、吸引を開始した。
 その風の圧縮により、惑星はどんどんサイズを返る。
 ただし、それを許す構築の魔女ではない。
 構築の魔女はヤスリのような大気で肌をすり減らし、頭から血を流しながらも、その双銃に力をため込む。
 大気中の金属片を翼の力で束ね、銃を中心に刃を形成。そして。
 構築の魔女は愚神へと飛びかかった。
 斬撃。切り上げからトリガーを引いての一撃。銃の反動を遠心力として蹴り。
 逆手に持った銃のトリガーを小指で引く。
 反動で開店した銃を手に取って十時に敵を切りつけて離脱した。
 直後。カゲリが飛来し、その瞳に刃を突き立てる。
「ん~」
 そんな風にリンカーたちが敵を攻撃している間にアリアはヴュールトーレンTR を持ち出していた。それを縦に構える、それはさながら塔の様に。
 そしてそのジェット噴射と翼の利力で星を一つのロケットに見立て押す。
 白銀の星を愚神に叩きつけるように吹き飛ばした。
 その星から逃げようとするアトモスフィア。
「やらせません」
 素早く対応したのは由利菜だった。
――剣よ描け、月光の軌跡を!
「ムーンライト・ローカス!」
 その一撃を腹部へ。動きを止めた愚神から一気に離れる由利菜、その姿は星の影に消えた。
――覚者よ………………飽きた。
「だと思ったよ」
 先ほどから口数が少ないナラカ、きっとこの戦いに退屈しているのだろうと思えば案の定である。
 ナラカからすれば同じ鳥類という事である程度期待を抱いていたのだが興ざめだった。
 あれでは単なるけだものだ。
 それ故に、ナラカはカゲリに幕引きを求めた。
 カゲリはその刃にありったけの霊力を込める。
 それをナラカは肯定と受け取った。
 ナラカは微笑んだ。

第三章 鉄槌

 構築の魔女はそれを見すえている。愚神の翼が、白い惑星をせき止め、そしてカギヅメで捕える瞬間を。愚神はその星の圧縮を始めた。
「させません」
 構築の魔女は側面から愚神へと弾丸を叩き込む。
「魔女さん、そのまま!」
 だが京子にとってそれは都合のいい構図だった。
 すでに弱点分析はすんでいて、特に弱点らしい部位は見当たらなかったことを考えると、あれを仕留めきるには強大な攻撃力が必要だとわかった。
 であればその攻撃力を作り出そう。
 そう京子はもう片方、生きている愚神の目を銃弾でつぶし。
 そして頭上に手を伸ばした。
 その手に集まる雷撃の力。
 そのまま京子は飛び立っていき、ひとつの白い惑星の周りをグルグルと周回し始めた。
 京子の体がプラズマを帯びる。
――……狙いは?
 アリッサが問いかける。
「雷の翼が放つ磁界で誘導電流を起こしてさ、この星を巨大な電磁石にするの!」
――それで他の鉄の星を引きつけると。
 そのために京子は一際大きな鋼の星を探したのだ。
「速度が大きいほど電流は大きくなる。回転数が全てだ! 全力で表面スレスレを回るよ!」
 その時、ずずずっと周囲の星が蠢く。
――ならば、京子の策に乗ろう。
「意識を奪おう」
 カゲリは無理やりアトモスフィアの前に出る。そして
 その十一の輝きを帯びる刃で愚神の首を切り裂いた。
「こんな所で遭難してたまりますか。必ず帰還します……!」
 告げると由利菜も加速、そして背後をとる。
「遙か宇宙へ向かおうとも、刻まれた思いは我が胸に!」
 翼の煌きがました。光の力が彼女に力を与える。 
 剣をポジションへ。流麗に構えられた切っ先が今解き放たれる。
――この機は逃がさん。逃げられる前に畳みかける……!
「ラシル、半神としての力を私に委ねなさい!」
――承知した! ディバイン・キャリバー!
 同時にカゲリもその剣のすべてを解放。その斬撃は敵に逃走を許さず反撃を許さない、五本の牙となって突き立った。
 二人の剣戟が終わった時、空中に大量の血液が舞う。
 次いで二人は同じ方向を一瞥。バラバラにちった。直後。鋼の星は動きだし。そして京子の惑星へと吸い寄せられていく。
「ファンタジー+物理=最強! この最終方程式のまえにあなたは敗れるのよ」
――意外なほどに理系ですよね」
「自分のわがまま通したいのに知識がなくてどうするの。そこに理系も文系もないよ」
――ああ……欲望にストイックなだけでしたか。
 迫るふたつの星、間に挟まれようとする愚神。
 アトモスフィアはその時最後の力を振り絞って分厚い風の盾をつくり出した。それは二つの鉄の星を削るように衝突を緩和する。
 だがその風の刃も反転させられてしまえば意味をなさなくなる。
 間に入ったのは望月。ライブスミラーによって気流は愚神へと流れ込む。
「その力を、自在に扱えるのが自分だけではないようですよ」
 気流の刃は愚神をズタズタに引き裂き。断末魔が空に高く伸びた。
――うーん、宇宙には美味しいごはんがなかったしね、早く帰ろうよ。
 愚神の消滅を確認した望月はあっけらかんとそう言い放つ。
「翼よりごはんって、まあいいか、年が変わっても手羽先は美味しいしね」
――新年も駆け抜けるし、羽ばたくよ。
 次の瞬間ドロップゾーンが消え去り、一行は草原の真ん中に放りだされた。
「いやー、やっぱり私の様な無能な存在がこんなところに来るものじゃないね。何も出来やしない。でもお嬢様方の突撃の足蹴にしてもらえただけでも光栄だと思うよね」
 そうアリアは微笑んで、救助隊が来るまでに紅茶をふるまおうと、幻想蝶を漁るのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843

重体一覧

参加者

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    白月 アリアaa5419
    人間|18才|女性|攻撃



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